(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006632
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】沈泥桝及び沈泥桝の設置方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/10 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
E03F5/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107549
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】393013618
【氏名又は名称】光海陸産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(72)【発明者】
【氏名】蔵治 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】井田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和男
(72)【発明者】
【氏名】小宇佐 友徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】赤城 寿哉
(72)【発明者】
【氏名】上甲 信
(72)【発明者】
【氏名】波多野 改都
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063DA07
2D063DB01
(57)【要約】
【課題】例えば、集中豪雨の発生時において道路に設置される排水桝から雨水等が溢れるのを抑制可能な沈泥桝及び沈泥桝の設置方法を提供する。
【解決手段】沈泥桝1は、排水桝本体10と、排水桝本体10の上側開口に取り付けられるとともに、路面からの排水を排水桝本体10内に流入させることが可能な開口部6dを有する桝蓋6と、第1底壁部3aに接続されるとともに、排水桝本体10内に流入した前記排水を排水桝本体10の外部に流出させる排水管部5と、を有する排水桝2の第1底壁部3aに設置することが可能である。沈泥桝1は、前記排水に含まれる異物を溜める異物溜まり部14を有する沈泥桝本体11と、沈泥桝本体11の底面から下方に突出するように設けられる脚部12と、を備えている。脚部12は、沈泥桝本体11の底面から下方への突出量を調整可能に構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水桝本体と、前記排水桝本体の上側開口に取り付けられるとともに、路面からの排水を前記排水桝本体内に流入させることが可能な開口部を有する蓋部と、前記排水桝本体の底壁に接続されるとともに、前記排水桝本体内に流入した前記排水を前記排水桝本体の外部に流出させる排水管部と、を有する排水桝の前記底壁に設置することが可能な沈泥桝であって、
前記排水に含まれる異物を溜める異物溜まり部を有する沈泥桝本体と、
前記沈泥桝本体の底面から下方に突出するように設けられる脚部と、を備え、
前記脚部は、前記底面から下方への突出量を調整可能に構成されていることを特徴とする沈泥桝。
【請求項2】
請求項1に記載の沈泥桝において、
前記脚部は、上下方向に延びかつ外面に雄螺子部を有するボルトと、前記雄螺子部と螺合する雌螺子部を有するナットと、を有していることを特徴とする沈泥桝。
【請求項3】
請求項2に記載の沈泥桝において、
前記ボルト及びナットは、樹脂材で構成されていることを特徴とする沈泥桝。
【請求項4】
請求項3に記載の沈泥桝において、
前記沈泥桝本体の底壁には、その底面から下方に突出するようにナットポケットが設けられ、
前記ナットポケットは、前記ナットを収容した状態において該ナットの回転を規制するように構成され、
前記沈泥桝本体の底壁における前記ナットポケットに対応する位置には、前記ボルトを挿通可能な挿通孔が設けられていることを特徴とする沈泥桝。
【請求項5】
請求項4に記載の沈泥桝において、
前記沈泥桝本体には、前記蓋部を前記排水桝本体に固定する状態と固定しない状態とを切り換え可能なロック機構を収容する収容部が設けられ、
前記沈泥桝本体の底壁における前記収容部に対応する部分には、上下方向に貫通する排水孔部が設けられ、
前記ナットポケットは、前記沈泥桝本体の底壁における前記異物溜まり部に対応する部分に設けられていることを特徴とする沈泥桝。
【請求項6】
請求項5に記載の沈泥桝において、
前記排水孔部には、網状部材が取り付けられていることを特徴とする沈泥桝。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の沈泥桝の設置方法であって、
前記沈泥桝とは異なる他の沈泥桝を前記排水桝から取り出す取出工程と、
前記取出工程の後、前記沈泥桝を前記排水桝本体の底壁にセットするセット工程と、
前記セット工程の前後の少なくとも一方において、前記排水桝の深さに応じて前記沈泥桝の高さを調整する調整工程と、を有することを特徴とする沈泥桝の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈泥桝及び沈泥桝の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高速道路等の道路の路肩には、該道路の雨水等を排水するための排水口(例えば、集水桝)が設置されている。該排水口の上側開口には、例えば、グレーチングが嵌められており、該グレーチングの開口部分を介して路面の雨水等が排水口内に流入されるようになっている。また、排水口の底壁には、排水管の上流端が接続されており、排水口に流入した雨水等が排水管を介して排水されるようになっている。例えば、特許文献1では、排水口の底壁に夾雑物分離槽が載置されている。そして、夾雑物分離槽において、雨水に含まれる土砂等の夾雑物が雨水と分離されるようになっている。これにより、排水管には、夾雑物が取り除かれた雨水が排水されるようになるので、該排水管が夾雑物により閉塞されるのを抑制することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の如き夾雑物分離槽(沈泥桝)が排水桝の底壁に設置されている場合、該沈泥桝により、排水桝の底壁に接続された排水管への雨水等の流れが阻害されることがある。これにより、例えば、集中豪雨の発生時のように道路の路面から排水桝に流入する雨水等の量が多くなると、該排水桝から雨水等が溢れてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、例えば、集中豪雨の発生時において道路に設置される排水桝から雨水等が溢れるのを抑制可能な沈泥桝及び沈泥桝の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、排水桝本体と、前記排水桝本体の上側開口に取り付けられるとともに、路面からの排水を前記排水桝本体内に流入させることが可能な開口部を有する蓋部と、前記排水桝本体の底壁に接続されるとともに、前記排水桝本体内に流入した前記排水を前記排水桝本体の外部に流出させる排水管部と、を有する排水桝の前記底壁に設置することが可能な沈泥桝であって、前記排水に含まれる異物を溜める異物溜まり部を有する沈泥桝本体と、前記沈泥桝本体の底面から下方に突出するように設けられる脚部と、を備え、前記脚部は、前記底面から下方への突出量を調整可能に構成されていることを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、沈泥桝本体の底面から下方への脚部の突出量を増やすことで、沈泥桝本体と排水桝本体の底壁との上下方向の間隙を大きくすることが可能となる。これにより、沈泥桝本体と排水桝本体の底壁との間の流路断面積が増えるので、排水桝本体から底壁に接続された排水管部への雨水等の流出量を増加させることができる。したがって、例えば、集中豪雨の発生時に排水桝から雨水等が溢れるのを抑制することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、前記脚部は、上下方向に延びかつ外面に雄螺子部を有するボルトと、前記雄螺子部と螺合する雌螺子部を有するナットと、を有していることを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、雄螺子部と雌螺子部との螺進動作或いは螺退動作を利用して、沈泥桝本体の底面から下方へのボルトの突出量を調整することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、前記ボルト及びナットは、樹脂材で構成されていることを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、雨水等によりボルト及びナットに錆が生じるのを防ぐことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記沈泥桝本体の底壁には、その底面から下方に突出するようにナットポケットが設けられ、前記ナットポケットは、前記ナットを収容した状態において該ナットの回転を規制するように構成され、前記沈泥桝本体の底壁における前記ナットポケットに対応する位置には、前記ボルトを挿通可能な挿通孔が設けられていることを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、ナットがナットポケットに収容された状態では、ナットポケットによりナットが回転規制されているので、例えば、作業者が沈泥桝本体の底壁の挿通孔から上方に飛び出ているボルトの上側部分をつまんで該ボルトを回転させるだけで、ボルトとナットとにより構成される螺子機構を螺進動作或いは螺退動作させることが可能となる。これにより、例えば、沈泥桝が排水桝本体の底壁に設置された状態において、作業者がボルトの上側部分をつまんで該ボルトを回転させるだけで、沈泥桝本体の底面から下方へのボルトの突出量を調整することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記沈泥桝本体には、前記蓋部を前記排水桝本体に固定する状態と固定しない状態とを切り換え可能なロック機構を収容する収容部が設けられ、前記沈泥桝本体の底壁における前記収容部に対応する部分には、上下方向に貫通する排水孔部が設けられ、前記ナットポケットは、前記沈泥桝本体の底壁における前記異物溜まり部に対応する部分に設けられていることを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、異物溜まり部の底面にナットポケットを設けることで、該ナットポケットが収容部の底面に設けられる場合に比べて、排水孔部の開口面積を大きくすることが可能となる。これにより、沈泥桝本体の下側に位置する排水管部への排水能力を確保することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記排水孔部には、網状部材が取り付けられていることを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、雨水等に含まれる枯れ葉等が網状部材により捕集されるようになる。これにより、排水管部が枯れ葉等により閉塞してしまうのを抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、沈泥桝の設置方法であって、前記沈泥桝とは異なる他の沈泥桝を前記排水桝から取り出す取出工程と、前記取出工程の後、前記沈泥桝を前記排水桝本体の底壁にセットするセット工程と、前記セット工程の前後の少なくとも一方において、前記排水桝の深さに応じて前記沈泥桝の高さを調整する調整工程と、を有することを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、例えば、集中豪雨の発生時に雨水等が溢れた排水桝から他の沈泥桝を取り出した後、該排水桝本体の底壁に沈泥桝が設置されるようになる。その際、例えば、排水桝から沈泥桝が飛び出さない範囲内において沈泥桝の高さが最大となるように調整することが可能となる。これにより、排水桝の深さに応じて沈泥桝本体と排水桝本体の底壁との間の流路断面積を最大となるように、沈泥桝本体の高さを調整することが可能となるので、例えば、次回の集中豪雨の際に排水桝から雨水等が溢れてしまうのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
例えば、集中豪雨の発生時において道路に設置される排水桝から雨水等が溢れるのを抑制可能な沈泥桝及び沈泥桝の設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る沈泥桝を備える排水桝を示す平面図である。
【
図3】
図1のIII-IIIにおける断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る沈泥桝を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る沈泥桝の設置方法(設置手順)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る沈泥桝1を備える排水桝2を示す。排水桝2は、図示しない道路(例えば、高速道路、橋梁)の路肩に埋設されており、道路の路面の雨水等を排水するのに用いられるようになっている。また、排水桝2は、
図2に示すように、下桝3と、上桝4と、排水管部5と、桝蓋6とを備えている。本実施形態では、下桝3と上桝4とが排水桝本体10を構成している。なお、説明の便宜上、
図2における沈泥桝1及び桝蓋6は、
図1の矢視Aを示している。
【0017】
下桝3は、上方に開口する略U字状の断面形状をなしている。また、下桝3は、水平方向に延びる第1底壁部3aと、第1底壁部3aの外周端部から上方に延びる第1側壁部3bと、第1側壁部3bの上端の一部から外側に略水平方向に延びる下側フランジ部3cと、第1底壁部3aを上下方向に貫通形成された排水孔3dと、下側フランジ部3cを上下方向に貫通形成された下側ボルト孔3eとを備えている。排水孔3dには、略上下方向に延びる排水管部5の一端(上流端)が接続されている。排水管部5の他端(下流端)は、図示しない排水路に接続されており、該排水路から河川や下水道に排水することが可能となっている。これにより、排水桝2内に流入した道路の路面の雨水等が排水管部5を介して河川等に適切に排水されるようになっている。
【0018】
上桝4は、平面視で略矩形枠状をなしている(
図1参照)。また、上桝4は、該上桝4の内周端部から下方に延びるスカート部4aを備えている。該スカート部4aは、下桝3の第1側壁部3b内に挿入されるようになっている。さらに、上桝4には、スカート部4aの上端の一部から外側に略水平方向に延びる上側フランジ部4bと、上側フランジ部4bを上下方向に貫通形成された上側ボルト孔4cと、スカート部4aの上側部分に設けられた段部4dとを備えている。
【0019】
下側フランジ部3cと上側フランジ部4bとの上下方向間には、調整ライナ7が介設されている。該調整ライナ7には、切り欠き7aが設けられている。そして、該切り欠き7a、下側ボルト孔3e及び上側ボルト孔4cには、固定用ボルト8が挿通されることで、下桝3と上桝4とが固定されるようになっている。
【0020】
上桝4の段部4dには、桝蓋6が上方から取り付けられるようになっている。該桝蓋6には、
図1に示すように、略矩形枠状をなす枠部6aと、水平方向に延び、かつ、各端部が枠部6aの内周面に固定された複数の板状部材6bとを備えている。
【0021】
また、桝蓋6には、枠部6aと、複数の板状部材6bとが互いに所定の間隔を空けて配設されることで、枠部6aと板状部材6bとの間、及び、隣り合う板状部材6bとの間に、道路の路面から排水桝2内に雨水等を流入させることが可能な開口部6dが形成されるようになっている。
【0022】
さらに、桝蓋6には、ロック機構9が備えられている。該ロック機構9は、複数の板状部材6bのうち内側に位置する一部の板状部材6bの下端に取り付けられている(
図2参照)。また、ロック機構9は、一対のスライドアーム9aと、鍵穴9bを有する旋回機構部9cとを備えている。そして、ロック機構9は、図示しない工具の鍵部(不図示)が鍵穴9bに差し込まれた状態で該工具を回転させることにより、旋回機構部9cが工具による回転運動をスライドアーム9aの直線運動に変換することが可能となっている。
【0023】
鍵穴9bに鍵部が差し込まれた状態で工具を一側に回転させてスライドアーム9aを
図3に示すロック位置にすると、該スライドアーム9aの一部とスカート部4aとが平面視で重なる(上下方向において双方が重なる)ロック状態となる。該ロック状態では、桝蓋6が上方移動しようとすると、スライドアーム9aがスカート部4aの下端に当接する。これにより、桝蓋6の上方移動が規制されるようになるので、該桝蓋6の跳ね上がりが防止されるようになっている。
【0024】
一方、鍵穴9bに鍵部が差し込まれた状態で工具を他側に回転させてスライドアーム9aを図示しない非ロック位置にすると、該スライドアーム9aの一部とスカート部4aとが平面視で重ならない(上下方向において双方が重ならない)非ロック状態となる。該非ロック状態では、桝蓋6が上方移動しようとしても、スライドアーム9aがスカート部4aの下端に当接しない。したがって、桝蓋6の上方移動がスカート部4aにより規制されないので、桝蓋6を上桝4の段部4dから取り外すことが可能となる。なお、説明の便宜上、
図3における沈泥桝1及び桝蓋6は、
図1の矢視Bを示している。
【0025】
また、下桝3の第1底壁部3aと桝蓋6との上下方向間には、雨水等に含まれる異物(例えば、土砂、枯れ葉など)を受けるための沈泥桝1が配設されている。本実施形態では、沈泥桝1は、第1底壁部3aに載置されることにより、排水桝2の内部に設置されるようになっている。
【0026】
該沈泥桝1は、鋼材(例えば、SPCC等の炭素鋼)で構成された沈泥桝本体11と、該沈泥桝本体11の下部に備えられ、かつ、樹脂材(例えば、繊維強化プラスチック)で構成された脚部12とを備えている。本実施形態では、沈泥桝本体11には、防錆のためのメッキ処理(例えば、亜鉛メッキ)が施されている。
【0027】
沈泥桝本体11は、
図4に示すように、平面視で略矩形状をなしている。また、沈泥桝本体11は、水平方向に延び、かつ、略矩形板状をなす第2底壁部11aと、第2底壁部11aの外側端部から上方に延びる第2側壁部11bとを備えている。さらに、平面視において沈泥桝本体11の長手方向の中央領域には、ロック機構9を収容するための収容部13が設けられている(
図4参照)。
【0028】
第2底壁部11aにおける収容部13に対応する部分には、上下方向に貫通形成された排水孔部11cが設けられている。該排水孔部11cは、その孔形状が略矩形状をなしている。また、排水孔部11cには、上方から網状部材13a(例えば、エキスパンドメタル)が取り付けられている。これにより、開口部6dから排水桝2内に流入した路面の雨水等が排水孔部11cを介して沈泥桝本体11の下方に排水される際に、網状部材13aによって、雨水等に含まれる異物(例えば、枯れ葉)が捕集されるようになっている。したがって、排水孔部11cを介して沈泥桝本体11の下方に流れた雨水等に含まれる異物が排水管部5に流れ込み、該排水管部5を閉塞してしまうのを抑制することができる。また、第2側壁部11bにおける収容部13に対応する部位には、スライドアーム9aとの干渉を防止するための切り欠き11dが設けられている(
図5参照)。また、切り欠き11dは、収容部13に流れ込んだ路面の雨水等を沈泥桝本体11の下方に排水する機能を有している。
【0029】
沈泥桝本体11における収容部13の長手方向両側には、異物溜まり部14がそれぞれ設けられている。収容部13と異物溜まり部14との間には、上下方向に延びる仕切壁部15がそれぞれ設けられている。
【0030】
異物溜まり部14は、有底状、つまり、断面形状が略U字状をなしている。これにより、開口部6dから排水桝2内に流入した路面の雨水等が異物溜まり部14内に入り込むと、該雨水等に含まれる比較的重い土砂等(異物)が異物溜まり部14の底部に溜まるようになっている。これにより、上記雨水等に含まれる土砂等(異物)が排水管部5に流れ込み、排水管部5を閉塞してしまうのを抑制することができる。
【0031】
第2底壁部11aにおける異物溜まり部14に対応する部分には、上下方向に貫通する第1貫通孔部11eが設けられている(
図6参照)。なお、本実施形態では、第1貫通孔部11eは4つ設けられ、各第1貫通孔部11eが平面視において第2底壁部11aの四隅付近にそれぞれ設けられている。
【0032】
また、第2底壁部11aにおける各第1貫通孔部11e(異物溜まり部14)に対応する部分の底面には、該底面から下方に突出するようにナットポケット16が設けられている(
図5参照)。該ナットポケット16は、上方に開口する略U字状をなしており、第3底壁部16aと、該第3底壁部16aの各端部からそれぞれ上側に延びる第3側壁部16bとを備えている。また、ナットポケット16の第3底壁部16aには、上下方向に貫通する第2貫通孔部16cが設けられており、平面視において第2貫通孔部16cの位置と第1貫通孔部11eの位置とが略一致するようにそれぞれ設けられている。換言すると、第2底壁部11aにおけるナットポケット16に対応する位置に第1貫通孔部11eが設けられている。さらに、各第3側壁部16bの上端が第2底壁部11aの底面に、例えば、溶接等により固定されている。
【0033】
脚部12は、ナットポケット16と同じ数(本実施形態では4つ)備えられている。各脚部12は、
図6に示すように、ボルト17と、ナット18とを備えている。
【0034】
ボルト17は、頭部17aと、軸部17bとを備え、該軸部17bの外面には螺子山部17cが設けられている。沈泥桝1が排水桝2の第1底壁部3aに載置されている状態では、頭部17aが沈泥桝本体11の異物溜まり部14内に位置しており、かつ、軸部17bが第2底壁部11aから下方に突出するとともに、その下端が第1底壁部3aの上面に接するようになっている。
【0035】
ナット18は、例えば、六角ナットであり、その対角距離がナットポケット16の第3側壁部16b間の距離よりも若干短くなっている。これにより、ナットポケット16にナット18がセット(収容)された状態では、該ナット18が中心軸まわりに回転しようとした場合、該ナット18の外周面と双方の第3側壁部16bの内側面とが干渉するようになるので、ナット18が上記中心軸まわりに回転するのが規制されるようになっている。換言すると、ナットポケット16は、ナット18の回転規制部材としての機能を有しており、かつ、ナット18をセット(収容)した状態において、ナット18の回転を規制するように構成されている。
【0036】
また、ナット18は、ボルト17の螺子山部17cと螺合可能な螺子孔部18aが設けられている。つまり、ボルト17の螺子山部17cとナット18の螺子孔部18aとで螺子機構を構成している。本実施形態では、螺子機構が螺進動作及び螺退動作することで、第2底壁部11aの底面から下方へのボルト17の突出量を調整可能、つまり、沈泥桝1の高さ(重力方向の長さ)を調整可能に構成されている。
【0037】
そして、ナットポケット16にナット18をセットした状態でボルト17を一側に回転させると、沈泥桝本体11及びナット18に対してボルト17が下方に移動するようになる。換言すると、第2底壁部11aの底面から下方へのボルト17の突出量が大きくなることで、沈泥桝1の高さが高くなる。
【0038】
一方、ナットポケット16にナット18をセットした状態でボルト17を他側に回転させると、沈泥桝本体11及びナット18に対してボルト17が上方に移動するようになる。換言すると、第2底壁部11aの底面から下方へのボルト17の突出量が小さくなることで、沈泥桝1の高さが低くなる。
【0039】
ここで、排水桝2の深さは、一定ではなく、例えば、排水桝2に要求される排水能力に応じてその深さが異なっている。そのため、同一の道路(例えば、高速道路)であっても、設置場所毎に排水桝2の深さが異なる場合がある。本実施形態では、排水桝2の深さに応じて沈泥桝1の高さ(脚部12の突出量)を調整することが可能となっているので、設置場所毎に異なる排水桝2の深さに合わせて沈泥桝1の高さを最大限高くすることができる。これにより、排水桝2の深さに応じて沈泥桝本体11と第1底壁部3aとの間の流路断面積を最大にすることが可能となっている。
【0040】
次に、
図7を用いて、本実施形態に係る沈泥桝1の設置方法(設置手順)について説明する。本実施形態では、例えば、集中豪雨の際に雨水等が溢れた排水桝2に対して沈泥桝1の設置を行うものとする。
【0041】
ステップS1では、作業者が図示しない工具を用いて桝蓋6のロック機構9をロック状態から非ロック状態にする。
【0042】
ステップS2では、作業者が桝蓋6を上桝4から取り外す。
【0043】
ステップS3(取出工程)では、作業者が本実施形態に係る沈泥桝1とは異なる他の沈泥桝(不図示)を排水桝2から取り出す。該他の沈泥桝は、本実施形態に係る沈泥桝1とは異なり、例えば、特許文献1の夾雑物分離槽のように高さ調整が不能となっている。
【0044】
ステップS4(セット工程)では、作業者が沈泥桝1を排水桝2にセットする。より詳細には、ボルト17(脚部12)の下端が排水桝2の第1底壁部3aの上面に接する姿勢となるように沈泥桝1を排水桝2の第1底壁部3aに載置(設置)する。
【0045】
ステップS5(調整工程)では、作業者が排水桝2の深さに応じて沈泥桝1の高さを調整する。より詳細には、作業者が第1底壁部3aに沈泥桝1にセットした状態において、頭部17aをつまんでボルト17を回転させる。この際、ボルト17の螺子山部17cは、ナットポケット16にセットされたナット18の螺子孔部18aと螺合しているので、ボルト17を回転させるだけで、第2底壁部11aから下方へのボルト17の突出量が調整することが可能となる。例えば、作業者は、上方から排水桝2内を覗き込んで、排水桝2の深さに対する沈泥桝1の高さを視認しながらボルト17を回転させる(沈泥桝1の高さを調整する)ことが可能となる。これにより、排水桝2から沈泥桝1から飛び出さない範囲、或いは、上桝4に桝蓋6を取り付けた際に該桝蓋6と沈泥桝1とが干渉しない範囲で沈泥桝1の高さを最も高くすることが可能となる。したがって、沈泥桝本体11の第2底壁部11aと下桝3の第1底壁部3aとの上下方向の間隙、つまり、沈泥桝本体11と第1底壁部3aとの間の流路断面積を比較的大きくすることが可能となるので、排水管部5への排水能力を充分に確保することができる。
【0046】
ステップS6では、作業者が桝蓋6を上桝4の段部4dに取り付ける。
【0047】
ステップS7では、作業者が図示しない工具を用いて桝蓋6のロック機構9を非ロック状態からロック状態にすることで、排水桝2への沈泥桝1の設置が完了する。道路上に雨水等が溢れた排水桝2が複数箇所存在する場合には、その箇所毎に
図7に示す手順で沈泥桝1を設置する。
【0048】
以上より、本実施形態によれば、沈泥桝本体11の底面から下方への脚部12の突出量を増やすことで、沈泥桝本体11と排水桝本体10の底壁との上下方向の間隙を大きくすることが可能となる。これにより、沈泥桝本体11と第1底壁部3aとの間の流路断面積が増えるので、排水桝本体10内から第1底壁部3aに接続された排水管部5への雨水等の流出量を増加させることができる。したがって、例えば、集中豪雨の発生時に排水桝2から雨水等が溢れるのを抑制することができる。
【0049】
また、螺子山部17cと螺子孔部18aとの螺進動作或いは螺退動作を利用して、沈泥桝本体11の底面から下方へのボルト17の突出量を調整することができる。
【0050】
また、雨水等によりボルト17及びナット18に錆が生じるのを防ぐことができる。
【0051】
また、ナット18がナットポケット16に収容された状態では、ナットポケット16によりナット18が回転規制されているので、例えば、作業者が第2底壁部11aの第1貫通孔部11eから上方に飛び出ているボルト17の上側部分をつまんで該ボルト17を回転させるだけで、ボルト17とナット18とにより構成される螺子機構を螺進動作或いは螺退動作させることが可能となる。これにより、例えば、沈泥桝1が第1底壁部3aに設置された状態において、作業者がボルト17の上側部分をつまんで該ボルト17を回転させるだけで、沈泥桝本体11の底面から下方へのボルト17の突出量を調整することができる。
【0052】
また、異物溜まり部14の底面にナットポケット16を設けることで、該ナットポケット16が収容部13の底面に設けられる場合に比べて、排水孔部11cの開口面積を大きくすることが可能となる。これにより、沈泥桝本体11の下側に位置する排水管部5への排水能力を確保することができる。
【0053】
また、雨水等に含まれる枯れ葉等が網状部材13aにより捕集されるようになる。これにより、排水管部5が枯れ葉等により閉塞してしまうのを抑制することができる。
【0054】
また、例えば、集中豪雨の発生時に雨水等が溢れた排水桝2から他の沈泥桝(不図示)を取り出した後、第1底壁部3aに沈泥桝1が設置されるようになる。その際、例えば、排水桝2から沈泥桝1が飛び出さない範囲内において沈泥桝1の高さが最大となるように調整することが可能となる。これにより、排水桝2の深さに応じて沈泥桝本体11と第1底壁部3aとの間の流路断面積を最大となるように、沈泥桝本体11の高さを調整することが可能となるので、例えば、次回の集中豪雨の際に排水桝2から雨水等が溢れてしまうのを抑制することができる。
【0055】
また、近年、ゲリラ豪雨と称される集中豪雨が発生する頻度が増えている。該集中豪雨の際には、局所的に急激に雨量が増大するので、集中豪雨が発生した領域にある道路の排水桝2から雨水等が溢れてしまう場合がある。さらに、集中豪雨ほどの雨量ではなくても、道路の形状や傾斜等の関係で路面からの排水が一部の排水桝2に集中することで、該排水桝2から雨水等が溢れてしまうことが道路を新設した後に判明する場合がある。これらの理由で雨水等が溢れてしまった排水桝2の他の沈泥桝に代えて、本実施形態に係る沈泥桝1を設置することで、次回の集中豪雨発生時等において雨水等が上記排水桝2から溢れるのを抑制することができる。さらに、雨水等が溢れた排水桝2に本実施形態に係る沈泥桝1を設置することで、雨水等が溢れていない排水桝2には沈泥桝1よりも低コストかつ高さ調整が不要な他の沈泥桝が設置されるようになる。これにより、道路の新設工事等にかかるコストの低減及び工事期間の短縮化を図ることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、排水孔部11cは1つ設けられていたが、2以上設けるようにしてもよい。また、排水孔部11cの開口面積を枯れ葉等の異物よりも小さくすることで、網状部材13aを備えないようにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、脚部12がボルト17及びナット18により構成されていたが、螺子軸、ナット及びボールにより構成されるボール螺子機構により構成してもよい。また、第2底壁部11aの底面から下方への突出量を調整(変更)可能であれば、螺子機構以外の手段(例えば、上下方向に延びるラックと該ラックと噛合するピニオンとを有するラックアンドピニオン機構、上下方向に延びかつ外面に複数の凹部を有する棒状部材と該複数の凹部に選択的に係合可能な爪とを有する機構)であってもよい。
【0058】
また、本実施形態では、脚部12は4つ設けられていたが、3以下、或いは、4以上であってもよい。
【0059】
また、本実施形態では、収容部13が設けられていたが、ロック機構9を備えない場合は収容部13を沈泥桝本体11に設けなくてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、ナットポケット16は、異物溜まり部14の底面に設けられていたが、収容部13における排水孔部11cが設けられていない部位の底面に設けるようにしてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、ナットポケット16には第2貫通孔部16cが設けられていたが、ボルト17の下端部をナットポケット16の下方に突出させることが可能であれば、第2貫通孔部16cに代えてスリット等を設けてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、ナットポケット16が設けられていたが、ナットポケット16を設けなくてもよい。例えば、ボルト17及びナット18が金属材で構成される場合は、ナット18を沈泥桝本体11の第2底壁部11aの底面又は上面に固定するようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、異物溜まり部14が2つ設けられていたが、1つ或いは、3つ以上設けるようにしてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、セット工程(
図7のステップS4)の後に調整工程(
図7のステップS5)を行うようにしたが、セット工程の前工程において調整工程を行うようにしてもよく、セット工程の前工程及び後工程において調整工程を行うようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態の
図7では、排水桝2に設置されている他の沈泥桝を該排水桝2から取り出した後、排水桝2に沈泥桝1を設置する例について説明したが、例えば、道路の路肩に新設された当初から他の沈泥桝が設置されていない排水桝2に沈泥桝1を設置するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、沈泥桝及び沈泥桝の設置方法に適している。
【符号の説明】
【0067】
1 沈泥桝
2 排水桝
3 下桝(排水桝本体)
3a 第1底壁部(排水桝本体の底壁)
4 上桝(排水桝本体)
5 排水管部
6 桝蓋(蓋部)
6d 開口部
9 ロック機構
10 排水桝本体
11 沈泥桝本体
11a 第2底壁部(沈泥桝本体の底壁)
11c 排水孔部
11e 第1貫通孔部(挿通孔)
12 脚部
13 収容部
13a 網状部材
14 異物溜まり部
16 ナットポケット
17 ボルト
17c 螺子山部(雄螺子部)
18 ナット
18a 螺子孔部(雌螺子部)
S3 取出工程
S4 セット工程
S5 調整工程