(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006634
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】衝撃吸収積層構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20250109BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20250109BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20250109BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20250109BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20250109BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B32B7/022
F16F7/00 B
B60K1/04 Z
B62D21/15 B
B62D25/20 N
B62D29/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107551
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】三枝 善博
(72)【発明者】
【氏名】河津 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】高田 幹生
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
3J066
4F100
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203AA31
3D203BA16
3D203BB03
3D203CA40
3D235AA01
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3J066AA22
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3J066BD05
4F100AB02A
4F100AB02C
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4F100AB10A
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4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】物品の外部から受ける衝撃を吸収して、物品の内部に設置された部品又は部材等を衝撃から保護するための衝撃吸収積層構造体を提供する。
【解決手段】第1のプレート部材、衝撃吸収部材、及び第2のプレート部材をこの順に積層して含む、衝撃吸収積層構造体であって、前記衝撃吸収部材の平均厚みtと、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間のスペースのうち前記衝撃吸収部材が存在する部分の平均距離Xの比(t/X)が、t/X≧0.3である、衝撃吸収積層構造体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプレート部材、
衝撃吸収部材、及び
第2のプレート部材
をこの順に積層して含む、衝撃吸収積層構造体であって、
前記衝撃吸収部材の平均厚みtと、
前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間のスペースのうち前記衝撃吸収部材が存在する部分の平均距離Xの比(t/X)が、
t/X≧0.3である、
衝撃吸収積層構造体。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材の少なくとも一部の表面に凹凸形状を有する、請求項1に記載の衝撃吸収積層構造体。
【請求項3】
前記衝撃吸収部材の少なくとも一部が、前記第1のプレート部材及び前記第2のプレート部材のいずれか一方又は両方に取り付けられている、請求項1に記載の衝撃吸収積層構造体。
【請求項4】
前記衝撃吸収部材は、圧縮弾性率が30MPa以上であり、かつ50%圧縮応力が1MPa以上10MPa以下である、請求項1に記載の衝撃吸収積層構造体。
【請求項5】
前記衝撃吸収部材の圧縮弾性率Pの-40℃から60℃の温度依存変化率(P(60℃)/P(-40℃))が0.5以上である、請求項1に記載の衝撃吸収積層構造体。
【請求項6】
前記衝撃吸収部材が、ビーズ発泡成形体を含む、請求項1に記載の衝撃吸収積層構造体。
【請求項7】
前記第1のプレート部材が、自動車の下部に装着されるパネルであり、
前記第2のプレート部材が、自動車に積載されたバッテリーのベースプレート又は前記ベースプレートに取り付けられた自動車用プレート部材であり、
前記衝撃吸収積層構造体が、自動車に積載されたバッテリーを衝撃から保護するために用いられる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の衝撃吸収積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体の下側には、アンダーカバーが取り付けられている(特許文献1~3)。近年の自動車の電気自動車(EV)化の潮流から、アンダーカバーの上側に取り付けられた板状部材上にリチウムイオン二次電池等の蓄電池が積載された設計が検討されている。特許文献4には、車載用としても用いられるバッテリーパックが記載されている。
【0003】
一方、車両の走行中には、小石などのアンダーカバーへの跳ね返りや、アンダーカバーと路面突起の接触等により、アンダーカバーに衝撃を受ける場合が考えられ、その際にアンダーカバーの上側に板状部材を介して積載された蓄電池に対する衝撃を抑制することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-188569号公報
【特許文献2】特開2021-133623号公報
【特許文献3】特開2014-159219号公報
【特許文献4】特開2021-118051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、物品の外部から受ける衝撃を吸収して、物品の内部に設置された部品又は部材等を衝撃から保護するための衝撃吸収積層構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、第1のプレート部材、衝撃吸収材、及び第2のプレート部材をこの順に積層して含み、前記衝撃吸収部材の衝撃吸収積層構造体中に配置されている時の平均厚みと、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間のスペースのうち前記衝撃吸収部材が存在する部分の平均距離の比が、所定値以上である積層構造体であれば、物品の外部から受ける衝撃を吸収して、物品の内部に設置された部品又は部材等を衝撃から保護することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
[1]
第1のプレート部材、
衝撃吸収部材、及び
第2のプレート部材
をこの順に積層して含む、衝撃吸収積層構造体であって、
前記衝撃吸収部材の平均厚みtと、
前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間のスペースのうち前記衝撃吸収部材が存在する部分の平均距離Xの比(t/X)が、
t/X≧0.3である、
衝撃吸収積層構造体。
[2]
前記衝撃吸収部材の少なくとも一部の表面に凹凸形状を有する、[1]に記載の衝撃吸収積層構造体。
[3]
前記衝撃吸収部材の少なくとも一部が、前記第1のプレート部材及び前記第2のプレート部材のいずれか一方又は両方に取り付けられている、[1]又は[2]に記載の衝撃吸収積層構造体。
[4]
前記衝撃吸収部材は、圧縮弾性率が30MPa以上であり、かつ50%圧縮応力が1MPa以上10MPa以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の衝撃吸収積層構造体。
[5]
前記衝撃吸収部材の圧縮弾性率Pの-40℃から60℃の温度依存変化率(P(60℃)/P(-40℃))が0.5以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の衝撃吸収積層構造体。
[6]
前記衝撃吸収部材が、ビーズ発泡成形体を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の衝撃吸収積層構造体。
[7]
前記第1のプレート部材が、自動車の下部に装着されるパネルであり、
前記第2のプレート部材が、自動車に積載されたバッテリーのベースプレート又は前記ベースプレートに取り付けられた自動車用プレート部材であり、
前記衝撃吸収積層構造体が、自動車に積載されたバッテリーを衝撃から保護するために用いられる、
[1]~[6]のいずれかに記載の衝撃吸収積層構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、物品の外部から受ける衝撃を吸収して、物品の内部に設置された部品又は部材等を衝撃から保護するための衝撃吸収積層構造体を提供することができ、特に、自動車の下部に装着され、自動車に積載されたバッテリーを衝撃から保護するためのアンダーカバーとして、好適に用いることができる。さらに、第1のプレート部材のみによる衝撃吸収の場合、第1のプレートの厚みを大きくすることが必要であり重量増が生じることに加え、荷重による変形で第2のプレートと接触した場合に荷重が急激に立ち上がるため、第2のプレートの破損につながる。衝撃吸収部材を適切な厚みで、第一のプレート部材と第2のプレート部材の間に配置すると、第1のプレートと第2のプレート距離を短くすることも可能であり、従来の設計よりも少ない空間で同等のエネルギーを吸収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の衝撃吸収積層構造体の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の衝撃吸収積層構造体の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の衝撃吸収積層構造体の一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の衝撃吸収積層構造体の一例を示す模式図である。
【
図5】実施例での評価方法を示す模式図(a:上面図、b:側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(衝撃吸収積層構造体)
本発明の衝撃吸収積層構造体(1)は、第1のプレート部材(2)、衝撃吸収部材(3)、及び第2のプレート部材(4)をこの順に積層して含み、ここで、前記衝撃吸収部材(3)の平均厚みtと、前記第1のプレート部材(2)と前記第2のプレート部材(4)との間のスペースのうち前記衝撃吸収部材(3)が存在する部分の平均距離Xの比(t/X)が、t/X≧0.3である。本発明の衝撃吸収積層構造体(1)の幾つかの例を、
図1~4に示す。
【0011】
<第1及び第2のプレート部材>
本発明の衝撃吸収積層構造体(1)において、第1のプレート部材(2)及び第2のプレート部材(4)は、並行面に配置される板状の部材であり、衝撃吸収積層構造体(1)の外装を形成する。「第1のプレート部材」及び「第2のプレート部材」の用語は、衝撃吸収積層構造体(1)に含まれる2つのプレート部材を区別するための便宜的な呼び方にすぎないが、特に、「第1のプレート部材」を、衝撃を受け得る側のプレート部材(例、自動車の下部に装着されるパネル)を指し、「第2のプレート部材」とは、衝撃から保護されるべき部品又は部材等(例、自動車に積載されたバッテリー(11))が設置され得る側のプレート部材(例、ベースプレート又はプレート部材)を指すことがある。
【0012】
<<プレート部材の形状、寸法、及び配置>>
第1のプレート部材(2)及び第2のプレート部材(4)(以下、まとめて「プレート部材」という。)は、板状の形状を有する。プレート部材は、穴を有していてもよい。プレート部材は、凹凸を有していてもよい。第1のプレート部材(2)及び第2のプレート部材(4)は、互いに接触して接合する部分(例、ボルト固定部(5、6)等)を有していてもよい。プレート部材の厚みは、特に限定されないが、強度、剛性の観点から、例えば、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、軽量化の観点から、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましい。
【0013】
第1のプレート部材(2)と第2のプレート部材(4)との間のスペースのうち衝撃吸収部材(3)が存在する部分の平均距離Xは、特に限定されないが、荷重分散の観点・エネルギー吸収(EA)の観点から、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、スペースや重量低減の観点から、30mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましい。
【0014】
<<プレート部材の材質>>
プレート部材の材質は、剛性材料が好ましく、剛性金属又は剛性樹脂がより好ましい。剛性金属としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅等を含有する材料が挙げられる。剛性樹脂としては、例えば、炭素繊維やガラス繊維を用いた強化繊維材料が挙げられる。
【0015】
<<プレート部材の諸物性>>
プレート部材の曲げ弾性率は、特に限定されないが、例えば、30GPa以上が好ましく、50GPa以上がより好ましく、500GPa以下が好ましく、400GPa以下がより好ましい。プレート部材の面密度は、特に限定されないが、例えば、1.0kg/m2以上が好ましく、1.5kg/m2以上がより好ましく、15.0kg/m2以下が好ましく、10.0kg/m2以下がより好ましい。
【0016】
<衝撃吸収部材>
本発明の衝撃吸収積層構造体(1)に用いる衝撃吸収部材(3)は、第1のプレート部材(2)と第2のプレート部材(4)との間に存在し、第1のプレート部材(2)から受けた衝撃を吸収して、第2のプレート部材(4)への衝撃荷重を分散することにより、第2のプレート部材(4)に取り付けられた部品又は部材等を衝撃から保護する役割を有する。
【0017】
<<衝撃吸収部材の形状、寸法、及び配置>>
衝撃吸収部材(3)は、板状の形状を有する。衝撃吸収部材(3)は、凹形状及び/又は凸形状を有していてもよく、例えば、衝撃吸収部材(3)の少なくとも一部の表面に凹形状を有していてもよい。
【0018】
衝撃吸収部材(3)は、厚みが均一な形状(例、
図1、2)であってもよく、厚みが異なる形状であってもよい(例、
図3、4)。厚みが異なる形状としては、例えば、段階的に厚みが異なる形状(例、
図3)、厚みに傾斜がある形状(例、
図4)が挙げられる。衝撃吸収積層構造体(1)が、第1のプレート部材(2)と第2のプレート部材(4)との接合部(例、ボルト固定部(5、6)等)を両端に有する場合、接合部から離れて中央部に近くなるほど衝撃吸収能力が低くなるので、衝撃吸収部材(3)は、中央部に近いほど厚みが増加する形状(例、
図3、4)を有することが好ましい。また、第1のプレート、または、第2のプレートに凹凸構造がある場合は、衝撃吸収部材(3)の圧縮変形量が変化するため、圧縮変形を加味した形状にすることが好ましい(例:プレートが凸形状の場合は衝撃吸収部材(3)を凹形状にすることにより、部分的に応力が集中することを抑える)。
【0019】
衝撃吸収部材(3)は、第1のプレート部材(2)または、第2のプレート部材(4)に接合していてもよく、第1のプレート部材(2)と第2のプレート部材(4)のいずれにも接合していなくてもよい。衝撃吸収積層構造体(1)が衝撃を受けた場合、衝撃吸収部材(3)の脱落や破損、第1のプレート部材(2)の変形や破損が発生することがあり、第1のプレート部材(2)や衝撃吸収部材(3)の交換が必要となることがある一方で、第2のプレート部材(4)は衝撃による破損等が発生せず、第2のプレート部材(4)の交換は不要となることがある。そこで、このような場合に第1のプレート部材(2)や衝撃吸収部材(3)を交換する際に、第1のプレート部材(2)や衝撃吸収部材(3)を、第2のプレート部材(4)と一緒にまとめて修理・交換するのではなく、第1のプレート部材(2)と衝撃吸収部材(3)のみを取り外して交換することで対応可能とするために、衝撃吸収部材(3)は、第2のプレート部材(4)には接合せず、かつ第1のプレート部材(2)に接合していることが好ましい。
【0020】
衝撃吸収部材(3)の平均厚みtと、第1のプレート部材(2)と第2のプレート部材(4)との間のスペースのうち衝撃吸収部材(3)が存在する部分の平均距離Xの比(t/X)は、t/X≧0.3であり、t/X≧0.4であることが好ましく、t/X≧0.5であることがより好ましい。なお、t/X比は、上限としてt/X≦1である。t/X比の上記範囲については、衝撃吸収積層構造体(1)の1箇所の断面で上記範囲を満たしていればよく、衝撃吸収積層構造体(1)の任意の幾つかの箇所の断面で上記範囲を満たしていることが好ましい。t/X比が上記範囲にあることにより、衝撃吸収部材(3)は、第1のプレート部材(2)が受ける衝撃を吸収して、第2のプレート部材(4)に取り付けられた部品又は部材等を衝撃から保護することができる。
【0021】
衝撃吸収部材(3)の平均厚みtは、特に限定されないが、例えば、衝撃吸収部材(3)が、第1のプレート部材(2)が受ける衝撃を吸収して、第2のプレート部材(4)に取り付けられた部品又は部材等を衝撃から保護することが可能になる程度に十分な厚みを有することが好ましく、そのような厚みを確保する観点から3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、衝撃吸収部材(3)が占めるスペースの低減や衝撃吸収部材(3)の重量の低減の観点から30mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましい。
<<衝撃吸収部材の諸物性>>
【0022】
衝撃吸収部材(3)は、衝撃吸収効率を高める観点から、圧縮弾性率が30MPa以上であることが好ましく、40MPa以上であることがより好ましく、300MPa以下であることが好ましく、200MPa以下であることがより好ましい。衝撃吸収部材(3)は、衝撃吸収効率を高める観点から、50%圧縮応力が1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることが好ましく、第2のプレート保護の観点から、10MPa以下であることが好ましく、8MPa以下であることが好ましい。
【0023】
衝撃吸収部材(3)の圧縮弾性率Pの-40℃から60℃の温度依存変化率(P(60℃)/P(-40℃))は、衝撃吸収効率を高める観点から、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、1.0以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましい。高温時の圧縮弾性率と低温時の圧縮弾性率の比が1に近い方が、温度変化によるエネルギー吸収効率のムラを低減することができる。
【0024】
<<衝撃吸収部材の材質>>
衝撃吸部収材の材質は、通常弾性材料が用いられ、上記の諸物性を有する弾性材料であることが好ましい。衝撃吸部収材の材質は、ビーズ発泡成形体を含むことが好ましい。ビーズ発泡成形体は、樹脂を材料とするビーズ発泡成形体が挙げられる。ビーズ発泡成形体の原料となる樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、並びに、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ABS樹脂、ポリエチレン(高密度、低密度)、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニリデン共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、およびそれらの混合物等の汎用の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0025】
(衝撃吸収積層構造体の用途)
本発明の衝撃吸収積層構造体(1)は、例えば、物品の外部から受ける衝撃を吸収して、物品の内部に設置された部品又は部材等を衝撃から保護するための部材である。本発明の衝撃吸収積層構造体(1)は、特に、自動車の下部に装着され、自動車に積載されたバッテリー(11)を衝撃から保護するためのアンダーカバーとして、好適に用いることができる。
【0026】
自動車に積載されたバッテリー(11)を衝撃から保護するためのアンダーカバーとして用いる場合、本発明の衝撃吸収積層構造体(1)は、上記第1のプレート部材(2)を、自動車の下部に装着されるパネルとして用い、上記第2のプレート部材(4)を、自動車に積載されたバッテリー(11)のベースプレート又は前記ベースプレートに取り付けられた自動車用プレート部材として用いる構成とすることができる。
【実施例0027】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において適用した測定・評価方法を下記に示す。
【0028】
※1 樹脂種については、次のとおりである。
PPE系:旭化成株式会社製「サンフォース(登録商標)BE」、PE系:旭化成株式会社製「メフ(登録商標)」、PP系:株式会社JSP製「ミラドレン(登録商標)」、PUR系株式会社イノアックコーポレーション製「カームフレックス(登録商標)F140」
なお、上記PPE系、PE系のビーズについては、表1及び表2に示した密度となるように成形を行い、指定サイズの発泡成形体を作製した。
【0029】
※2、※3 厚み(mm)、密度(g/cm3)、面密度(kg/m2)については、以下の通り算出した。
衝撃吸収部材の質量W(g)を測定した後、ノギス(ミツトヨ製)を用いて面積S(m2)、体積V(cm3)を測定し、W/S(kg/m2)を衝撃吸収部材の面密度とし、W/V(g/cm3)を衝撃吸収部材の密度とした。
【0030】
※4 衝撃吸収部材の独立気泡率は、衝撃吸収部材から、縦20mm、横20mm、表1に記載の厚み(mm)、の直方体の衝撃吸収部材を切り出し、試料とし、独立気泡率を測定した。
S(%)={(Vx-W/ρ)/(Va-W/ρ)}×100 ・・・(1)
式(1)中、Vxは、発泡体の真の容積(cm3)であり、Vaは、発泡体の見かけの容積(cm3)であり、Wは、発泡体の重量(g)であり、ρは、発泡体の基材樹脂の密度(g/cm3)である。発泡体の真の容積はピクノメータにより算出される。
【0031】
※5 衝撃吸収部材の圧縮弾性率、50%圧縮応力は、JIS K 7220(2006)に準拠して測定した。指定温度下での圧縮弾性率については、指定温度状況下で3時間以上保管して指定温度条件下で常温時と同様の手法により測定した。
【0032】
※6 複合体の面密度は、質量W(g)を測定した後、ノギス(ミツトヨ製)を用いて接着部の面積S(m2)を測定し、W/S(kg/m2)を複合体の面密度とした。
【0033】
※7 第1と第2のプレート間の距離は、
図5に記載の治具の距離を指定の数値で設計した。
【0034】
※8 t/Xは、衝撃吸収部材の厚みtをノギスで測定し、プレート間距離Xで除することで算出した。
【0035】
<荷重、エネルギー吸収(EA)、変位量の評価>
図5に示すように、ベースプレート(第2のプレート部材(4)に相当)を土台として、ベースプレート上に衝撃吸収材を置き、衝撃吸収部材の上を覆うように、パネル(第1のプレート部材(2)に相当)を被せてベースプレートに固定して試験用試料(21)を作成した。試験用試料(21)のパネルの上から測定装置の測定治具(圧子)(31)で荷重をかけ、各評価値を測定した。株式会社島津製作所製UH-500kNIRを用いた。
【0036】
重量当たりの50%変位時のEAは、得られた50%変位時のEAを荷重-変位曲線の面積から算出し、算出値を複合体の面密度で除することにより算出した。
【0037】
(実施例1~15、比較例1~5)
表1に示す衝撃吸収材及びパネル(第1のプレート部材に相当)を用いて試験用試料を作成し、各評価値を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
【0039】
本発明によれば、物品の外部から受ける衝撃を吸収して、物品の内部に設置された部品又は部材等を衝撃から保護するための衝撃吸収積層構造体を提供することができ、特に、自動車の下部に装着され、自動車に積載されたバッテリーを衝撃から保護するためのアンダーカバーとして、好適に用いることができる。