(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006636
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電力需要調整方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20250109BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20250109BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20250109BHJP
G06F 1/28 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 130
H02J3/38 120
G06Q50/06
G06F1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107554
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 聡
(72)【発明者】
【氏名】小澤 洋司
(72)【発明者】
【氏名】弓 莉梅
(72)【発明者】
【氏名】藤村 仁
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 雄一
(72)【発明者】
【氏名】清水 大樹
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 聡一郎
【テーマコード(参考)】
5B011
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B011DA02
5B011DA11
5B011DA12
5B011EA02
5B011EA10
5B011EB01
5B011GG03
5B011GG06
5B011GG13
5B011KK12
5B011LL05
5B011MB14
5G066AA02
5G066AA05
5G066HB06
5G066KA01
5G066KA04
5G066KA12
5G066KB01
5G066KB03
5G066KB07
5G066KD04
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】データセンタが調整力を安定して提供できるようにした電力需要調整方法およびシステムを提供すること。
【解決手段】複数の業務用電気機器を備えるデータセンタ3000における電力需要を計算機により調整する電力需要調整方法であって、計算機は、電力の調整要求を受信すると、データセンタの稼働状況に基づいて電力需要の調整量があらかじめ設定された調整配分情報と調整要求とを用いて、データセンタが備える複数の業務用電気機器ごとの調整量を算出する第1ステップと、調整量を実現するためにあらかじめ設定された制御ルールと算出された複数の業務用電気機器ごとの調整量とに基づいて、複数の業務用電気機器のうち少なくとも一部の業務用電気機器に適用する制御ルールを決定する第2ステップと、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の業務用電気機器を備えるデータセンタにおける電力需要を計算機により調整する電力需要調整方法であって、
前記計算機は、
電力の調整要求を受信すると、前記データセンタの稼働状況に基づいて電力需要の調整量があらかじめ設定された調整配分情報と前記調整要求とを用いて、前記データセンタが備える前記複数の業務用電気機器ごとの調整量を算出する第1ステップと、
前記調整量を実現するためにあらかじめ設定された制御ルールと前記算出された複数の業務用電気機器ごとの調整量とに基づいて、前記複数の業務用電気機器のうち少なくとも一部の業務用電気機器に適用する制御ルールを決定する第2ステップと、
を実行する電力需要調整方法。
【請求項2】
前記第2ステップの次に、前記算出された調整量および前記決定された制御ルールのいずれかにしたがって前記データセンタの電力需要を調整する第3ステップを実行する
請求項1に記載の電力需要調整方法。
【請求項3】
前記複数の業務用電気機器には、前記データセンタの提供する価値を実現するために使用される第1電気機器と、前記第1電気機器の稼働を支援するために使用される第2電気機器とが含まれており、
前記制御ルールは、前記第2電気機器に対して適用される
請求項2に記載の電力需要調整方法。
【請求項4】
前記第1電気機器は情報処理機器であり、前記第2電気機器は前記第1電気機器の稼働環境を維持するための設備である
請求項3に記載の電力需要調整方法。
【請求項5】
前記第1電気機器は、サーバ、ストレージ、ネットワーク機器の少なくともいずれか一つを含んでおり、
前記第2電気機器は、空調設備、蓄電装置、電源装置の少なくともいずれか一つを含んでいる、
請求項4に記載の電力需要調整方法。
【請求項6】
前記データセンタへ供給される電力には、少なくとも再生可能エネルギに由来する電力が含まれている
請求項2に記載の電力需要調整方法。
【請求項7】
前記調整配分情報は、前記第1電気機器に対する調整量よりも前記第2電気機器に対する調整量の方が大きくなるように設定される
請求項3に記載の電力需要調整方法。
【請求項8】
前記データセンタにあらかじめ設定された制御ポリシと前記調整要求が適合する場合に、前記第1~第3ステップを実行する
請求項2に記載の電力需要調整方法。
【請求項9】
前記制御ポリシには、前記調整要求の実現を優先するポリシと、前記調整要求を実現したときに予測される電気代の低減を優先するポリシと、前記調整要求を実現したときに予測される再生可能エネルギに由来する電力の消費量の増大を優先するポリシとの、少なくともいずれか1つが含まれている
請求項8に記載の電力需要調整方法。
【請求項10】
前記第1ステップは、前記第1電気機器にあらかじめ設定された電力需要計画が満たされるように、前記調整要求を受信した際に算出された調整量と、前記調整要求に応じて電力需要を調整した後に算出される調整量とをバランスさせる
請求項3に記載の電力需要調整方法。
【請求項11】
前記制御ルールの組合せの制限を規定する制約条件に基づいて、前記第2電気機器へ適用される制御ルールの組合せを算出し、算出された制御ルールの組合せに応じて前記調整配分情報は生成される
請求項3に記載の電力需要調整方法。
【請求項12】
前記制約条件は、前記第1電気機器の稼働状況により決定される
請求項11に記載の電力需要調整方法。
【請求項13】
前記第1ステップは、前記調整要求に示された調整量の一部だけを満たすことができる場合に、前記調整要求の発行元に対して問い合わせ、前記発行元からの承認を得た場合に前記調整要求に示された調整量を変更する
請求項1に記載の電力需要調整方法。
【請求項14】
前記第3ステップの後に実行される第4ステップをさらに備え、
前記第4ステップでは、ユーザに情報を提供する情報提供画面を出力し、
前記情報提供画面は、
前記調整要求に基づいて前記データセンタでの電力需要を調整しない場合の電力需要の時間毎の予測値を示す第1表示部と、
前記調整要求に基づいて前記データセンタでの電力需要を調整する時間毎の計画値と前記予測値とを含んで表示させる第2表示部と、
前記調整要求に基づいて前記データセンタで実現された電力需要の時間毎の実績値と前記予測値と前記計画値とを含んで表示させる第3表示部とを備え、
前記各表示部のうち少なくともいずれか一つの表示部には、再生可能エネルギに由来する電力量であって前記データセンタで利用可能な電力量の値も時間毎に表示される
請求項2に記載の電力需要調整方法。
【請求項15】
複数の業務用電気機器を備えるデータセンタにおける電力需要を調整する電力需要調整システムであって、
電力の調整要求を受信すると、前記データセンタの稼働状況に基づいて電力需要の調整量があらかじめ設定された調整配分情報と前記調整要求とを用いて、前記データセンタが備える前記複数の業務用電気機器ごとの調整量を算出する第1ステップと、
前記調整量を実現するためにあらかじめ設定された制御ルールと前記算出された複数の業務用電気機器ごとの調整量とに基づいて、前記複数の業務用電気機器のうち少なくとも一部の業務用電気機器に適用する制御ルールを決定する第2ステップと、
を実行する電力需要調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需要調整方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
気候変動への対策として、再生可能エネルギの利用が進んでいる。再生可能エネルギの調達方法は、従来、非化石証書といった証書の購入が一般的であった。近年は、再生可能エネルギ流通量の増加を狙って、PPA(Power Purchase Agreement)等により、発電事業者から直接再生可能エネルギを購入し、購入に伴う証書譲渡により環境価値を取得するケースが増加している。この傾向は、電力を大量に消費する需要家においても同様である。電力の大口需要家であるデータセンタ(以下、DCと略記する場合がある。)においても、PPAによる電力調達が普及しつつある。
【0003】
さらに、先進的な一部の事業者では、再生可能エネルギの利用率向上を目指して、年間単位の再生可能エネルギ利用率から、再生可能エネルギの発電と消費を1時間単位で合致させる時間単位の再生可能エネルギ利用率の向上へ努力している。このように、企業によって再生可能エネルギの目標が多様化している。
【0004】
ここで、エネルギ供給量が不安定な再生可能エネルギの調整力として、データセンタの活用が期待されている。データセンタが有するIT(Information Technology)機器、空調設備、電源設備などの分散電源リソース(以下、DER(Distributed Energy Resource)と呼ぶ場合がある。)を制御することで、データセンタが消費する大量の電力を電力系統に状況に合わせて調整することが求められている。
【0005】
一方で、データセンタの消費電力は、データセンタで処理される計算処理の量に依存するため、再生可能エネルギの供給状態と電力需要の調整要求とに合わせて、データセンタでの計算処理量を制御する必要がある。特許文献1では、再生可能エネルギの需給情報に基づきデータセンタごとに設定されたタスク実行優先度を用いて、タスク実行場所を調整する。これにより特許文献1では、データセンタの消費電力を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、時刻毎に消費電力を増減させる、のような詳細な消費電力調整要求に充分対応することが難しい。調整可能なタスクが調整要求に対して足りないことがあるため、タスクの状況によっては調整要求に答えることができない。このため、データセンタが調整力を安定して提供することが難しいという問題がある。
【0008】
本開示は、データセンタが調整力を安定して提供できるようにした電力需要調整方法およびシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本開示の一つの観点に従う電力需要調整方法は、複数の業務用電気機器を備えるデータセンタにおける電力需要を計算機により調整する電力需要調整方法であって、計算機は、電力の調整要求を受信すると、データセンタの稼働状況に基づいて電力需要の調整量があらかじめ設定された調整配分情報と調整要求とを用いて、データセンタが備える複数の業務用電気機器ごとの調整量を算出する第1ステップと、調整量を実現するためにあらかじめ設定された制御ルールと算出された複数の業務用電気機器ごとの調整量とに基づいて、複数の業務用電気機器のうち少なくとも一部の業務用電気機器に適用する制御ルールを決定する第2ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、複数の業務用電気機器ごとの調整量を算出し、複数の業務用電気機器のうち少なくとも一部の業務用電気機器に適用する制御ルールを決定することができ、電力の調整要求の安定した提供に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施例のDER管理システムの全体構成を示す。
【
図2】
図2は、DER管理計算機の論理構成を示す。
【
図3】
図3は、DC設備管理計算機の論理構成を示す。
【
図4】
図4は、IT機器管理計算機の論理構成を示す。
【
図5】
図5は、DC設備制御ルールテーブルで管理するデータの例を示す。
【
図6】
図6は、調整配分定義テーブルで管理するデータの例を示す。
【
図7】
図7は、電力需要の調整計画を作成するコンピュータプログラムにより実行される処理全体を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、IT機器の電力需要を制御する処理を示すフロー図である。
【
図9】
図9は、DC設備の電力需要を制御する処理を示すフロー図である。
【
図10】
図10は、電力需要調整に関する情報をユーザへ提供する画面である。
【
図11】
図11は、第2実施例に係り、
図7中の一部のステップの詳細を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本開示を説明する。本開示で述べる電力需要調整方法は、調整力の要求に合わせて、データセンタ(適宜DCと略記する。)における電力需要を調整することができる。
【0013】
本開示では、データセンタの有する複数の業務用電気機器に調整量を配分するとともに、複数の業務用電気機器のうち少なくとも一部の業務用電気機器に制御ルールを設定することにより、調整量要求の達成に貢献する。本開示では、過去の制御実績データと各DCの稼働状況とに基づいて、「調整配分情報」としての調整配分定義テーブルをあらかじめ定義する。そして、電力需要(消費電力とも言う。)の調整要求と調整配分定義テーブルと用いて、IT機器またはDC設備における、時間単位での調整量を決定する。本開示では、「制御ルール」を管理する制御ルールテーブルをあらかじめ用意する。本開示では、配分が決定された調整量と制御ルールテーブルとを用いて、配分された調整量を実現するための制御方法を決定する。
【0014】
データセンタは、「業務用電気機器」の例として、第1電気機器と第2電気機器とを備えている。第1電気機器は、データセンタの提供する役務の価値を実現するために使用される業務用電気機器である。第2電気機器は、第1電気機器の稼働を支援するために使用される業務用電気機器である。例えば、第2電気機器は、データセンタの室温などの、第1電気機器が正常に稼働できる環境を維持するための設備である。
【0015】
例えば、データセンタで実行される情報処理サービスが「役務」に該当する。この場合の第1電気機器は、「情報処理機器」である。情報処理機器は、例えば情報処理に使用されるサーバ、ストレージ、ネットワーク機器などである。
この場合の第2電気機器は、例えば、空調設備、蓄電装置(蓄電設備)、電源装置、照明装置、エレベータなどである。
【0016】
本開示が適用されるデータセンタは、商品と役務の両方を提供してもよい。商品と役務の両方またはいずれか一方を示す場合に、「商品等」と呼ぶこともできる。第1電気機器として例示した複数の装置の全てがデータセンタで使用される必要はなく、それらの一部が使用されていればよい。同様に、第2電気機器として例示した複数の装置の全てがデータセンタで使用される必要はなく、それらの一部が使用されていればよい。
【0017】
本開示では、データセンタに対して再生可能エネルギに由来する電力が供給される。データセンタは、必要に応じて、再生可能エネルギに由来する電力を消費できる。データセンタは、再生可能エネルギに由来する電力と従来の電源系統からの電力との両方を消費することもできる。ここで、「再生可能エネルギ」とは、例えば、水力発電、太陽光発電、太陽熱発電、地熱発電、波力発電、潮力発電、風力発電、バイオマス発電、燃料電池発電などで生産されるエネルギである。再生可能エネルギで発電する発電システムは、送配電網を介して、データセンタへ電力を供給することができる。あるいは、再生可能エネルギで発電する発電システムは、送配電網を介さずに、データセンタへ直接電力を供給してもよい。
【0018】
本開示では、調整要求を第1電気機器と第2電気機器に配分する際に、第1電気機器に対する調整量よりも第2電気機器に対する調整量の方を大きく設定してもよい。これにより、データセンタによる価値の提供を優先させつつ、調整要求に応えることができる。第1電気機器に対する調整量よりも第2電気機器に対する調整量の方を小さくすることもできる。
【0019】
本開示では、データセンタにあらかじめ設定された制御ポリシと、データセンタに対する電力の調整要求とが適合する場合に、そのデータセンタでの電力需要を調整してもよい。
【0020】
制御ポリシには、例えば、調整要求の実現を優先するポリシと、調整要求を実現したときに予測される電気代の低減を優先するポリシと、調整要求を実現したときに予測される再生可能エネルギに由来する電力の消費量の増大を優先するポリシなどがある。本開示では、これらの制御ポリシのうち少なくともいずれか一つが含まれていればよい。制御ポリシは、データセンタごとに個別に設定されてもよいし、複数のデータセンタをグループとして扱い、グループ単位で設定されてもよい。データセンタに設定される制御ポリシは、途中で変更することもできる。上述した制御ポリシ以外の制御ポリシを採用してもよい。
【0021】
本開示では、第1電気機器にあらかじめ設定された電力需要計画が満たされるように、調整要求を受信した際に算出された調整量と、調整要求に応じて電力需要を調整した後に算出される調整量とをバランスさせることもできる。例えば、調整要求を受信した際に算出された調整開始時の調整量が当初の電力需要よりも大きい場合、調整要求に応じて電力需要を調整した調整後の調整量を、当初の電力需要よりも小さくすることにより、バランスを取ることもできる。これにより、所定期間内でデータセンタの提供する価値をあまり変化させずに、電力の調整要求に応える(電力の調整要求を実現する)ことができる。
【0022】
本開示では、制御ルールの組合せの制限を規定する制約条件をあらかじめ用意する。本開示では、制約条件に基づいて、第2電気機器へ適用される制御ルールの組合せを算出し、算出された制御ルールの組合せに応じて調整配分情報を生成することができる。例えば、データセンタの有する電源装置の能力以上に電源を供給することはできないため、同時に使用可能な第2電気機器の種類と数には制限がある。気温上昇に応じて施設内の温度を低下させる場合、空調設備の稼働率または稼働台数を増加させる必要がある。この場合、空調設備への電源供給を制限することはできない。このように、第2電気機器の間で制約条件が設定されることがある。
【0023】
一方、制約条件は、第1電気機器の稼働状況から決定されてもよい。例えば、第1電気機器の稼働台数が多い場合、周囲の温度が上昇する。この温度上昇を放置すると、第1電気機器の能力が低下する可能性がある。したがって、この場合は、第2電気機器の一例としての空調設備の稼働率または稼働台数も増加させる必要がある。空調設備の稼働率は、設定温度の変更によって変化する。
【0024】
本開示では、電力の調整要求に示された調整量の一部だけを満たすことができる場合に、調整要求の発行元に対して問い合わせ、発行元からの承認を得た場合に調整要求に示された調整量を変更することもできる。電力の調整要求は、データセンタごとに与えられるが、各データセンタの事情は様々であるため、常に、与えられた調整要求を完全に満たすことができるとは限らない。本開示では、調整要求を完全に満たすことができない場合であっても、その調整要求を拒否するのではなく、一部の調整要求の実現でよいかを調整要求の発行元へ確認することができる。これにより、本開示では、各データセンタはでき得る範囲で、電力の調整要求に応えることができる。
【0025】
本開示では、調整要求に対する電力需要計画の変化を可視化してユーザへ提供することもできる。
【0026】
前記情報提供画面は、調整要求に対する貢献の程度、再生可能エネルギに由来する電力の使用などをユーザへ提供する。
【0027】
情報提供画面は、例えば、第1表示部と、第2表示部と、第3表示部とを含む。第1表示部は、調整要求に基づいてデータセンタでの電力需要を調整しない場合の電力需要の時間毎の予測値を示す。第2表示部は、調整要求に基づいてデータセンタでの電力需要を調整する時間毎の計画値と前記予測値とを含んで表示させる。第3表示部は、調整要求に基づいてデータセンタで実現された電力需要の時間毎の実績値と予測値と計画値とを含んで表示させる。第1~3表示部のうち少なくともいずれか一つの表示部には、再生可能エネルギに由来する電力量であってデータセンタで利用可能な電力量の値も時間毎に表示させることができる。
【実施例0028】
図1~
図11を用いて第1実施例を説明する。以下に説明する実施例は、特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、実施例の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0029】
以下の説明では、「aaaテーブル」の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、テーブル以外のデータ構造で表現されていてもよい。データ構造に依存しないことを示すために「aaaテーブル」を「aaa情報」と呼ぶことができる。また、以下の説明では、計算機を主語として処理を説明する場合があるが、これらの処理は、計算機が備える制御デバイスが有するプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit))によって、実行されていることを示す。
【0030】
同様に、単に装置を主語として処理を説明する場合には、装置が備えるコントローラが実行していることを示す。また、上記制御デバイス及びコントローラのうちの少なくとも1つは、プロセッサそれ自体であってもよいし、制御デバイス又はコントローラが行う処理の一部又は全部を行うハードウェア回路を含んでもよい。プログラムは、プログラムソースから各計算機或いは装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバ又は記憶メディアであってもよい。
【0031】
以下の説明では、要素の識別情報として、IDが使用されることがあるが、それに代えて又は加えて他種の識別情報が使用されてもよい。
【0032】
実施例1では、データセンタ電力需要調整計画プログラム2430がデータセンタ3000の消費電力(電力需要)を調整するための、DER制御計画を立案する方法の一例を開示する。さらに、実施例1では、可視化プログラム2440による、電力需要の制御に関わる行動案を提示する例も開示する。
【0033】
図1は、実施例1のDER管理システムの全体構成を示す。アグリゲーションコーディネータ(以下、ACとも呼ぶ。)2050は、送配電システム/電力市場システム5000から電力需要制御の要求を受領する。AC2050は、送配電システム/電力市場システム5000または発電システム4000から、再生可能エネルギにより発電される電力の供給計画(再生可能エネルギ供給計画とも呼ぶ。)を受領する。
【0034】
AC2050は、自らが関与しているデータセンタでの電力需要を制御することで、要求に答える。あるいはAC2050は、再生可能エネルギ供給計画に対応した需給調整を実施する。AC2050は、リソースアグリゲータ(以下、RAとも呼ぶ。)1500、データセンタ(DC)3000、電力送配電網6000、発電システム4000、とそれぞれ連携する。
【0035】
図1に示す例では、電力送配電網6000に含まれる配電網6100ごとに、DC3000とRA1500とが設けられている。そして、1つのAC2050が複数のDC3000とRA1500とを管理する。しかし、「電力需要調整システム」の例としてのDER管理システムは、
図1の例に限定されない。
【0036】
AC2050は、電力需要制御の要求(電力の調整要求)を受領すると、一つ以上のRA1500に対して電力需要制御を要求する。RA1500は、自らが担当しているDC3000に対して、さらに電力需要制御を要求する。AC2050とRA1500とは、需要制御の計画をDER管理計算機2000により作成する。DER管理計算機2000は、DC3000と発電事業者である発電システム4000とから、DC3000の電力需給の情報を取得する。
【0037】
DC3000と発電システム4000とは電力送配電網6000で接続されており、発電システム4000からDC3000へ電力が供給される。図中、電力送配電網6000以外の線で示す接続形態は、LAN(Local Area Network)などの通信形態である。通信形態は、
図1に示す例に限定されない。電力送配電網6000を用いてデータ通信を行う構成でもよい。
【0038】
DER管理計算機2000は、AC2050とRA1500とに分散して、配置されている。すなわち、AC2050にはDER管理計算機2000(1)が配置されており、各RA1500にはDER管理計算機2000(2)が配置されている。しかし、本実施例は、図示の形態に限定されない。例えば、いずれかのサーバにDER管理計算機2000を集約し、集約されたDER管理計算機2000が一括して全データセンタの電力需給を管理することもできる。DER管理計算機2000をDC3000に設置し、DC3000がAC2050とRA1500を介さずに、送配電システム/電力市場システム5000から直接電力需要制御の要求を受領してもよい。
【0039】
あるいは、各RA1500に設けられたDER管理計算機2000のいずれか一つをマスターに設定し、他のDER管理計算機2000をスレーブに設定して運用する構成でもよい。
【0040】
DC3000は、例えば、DC設備管理計算機3100とIT機器管理計算機3200を備える。これらの管理計算機3100,3200の詳細は後述する。
【0041】
図2は、DER管理計算機2000の構成例を示す。DER管理計算機2000は、例えば、管理ネットワークインターフェース2100、プロセッサ2200、入出力デバイス2300、ローカルディスク2400、メモリ2500を備えており、これら各装置2100-2500は通信線2600で相互に接続されている。
【0042】
管理ネットワークインターフェース2100は、DER管理計算機と、DC設備管理計算機3100とIT機器管理計算機3200と発電システム4000と送配電システム/電力市場システム5000などとを接続させる。
【0043】
入出力デバイス2300は、例えば、モニタディスプレイ、キーボード、マウス、タッチパネルといったユーザインタフェース装置である。図示は省略するが、仮想空間内でDER管理計算機2000を操作する構成としてもよい。
【0044】
ローカルディスク2400は、比較的大容量の記憶装置であり、各種のデータおよびコンピュータプログラムを非一時的に記憶する。ローカルディスク2400は、例えば、DC設備制御ルールテーブル2410、調整配分定義テーブル2420、DC電力需要調整計画プログラム2430、可視化プログラム2440、再生可能エネルギ供給計画2450を格納する。
【0045】
設備制御ルールテーブル2410と調整配分定義テーブル2420は、管理情報に含まれる。再生可能エネルギ供給計画2450も管理情報に含まれる。管理情報の一部及び下記における対応する処理、例えば設備制御ルールテーブル2410及び設備制御ルールに関する処理が省略されてもよい。再生可能エネルギ供給計画2450には、再生可能エネルギに由来する電力の供給計画が示されている。
【0046】
DC電力需要調整計画プログラム2430と可視化プログラム2440とは、メモリ2500へロードされ、プロセッサ2200によって実行される。DC電力需要調整計画プログラム2430の処理と可視化プログラム2440の処理は、後述する。
【0047】
調整配分定義テーブル2420や設備制御ルールテーブル2410は、メモリ2500にロードされ、DC電力需要調整計画プログラム2430に利用される。これらのテーブルの詳細は後述する。
【0048】
DER管理計算機2000は、物理的な計算機システム(一つ以上の物理的な計算機)でもよいし、クラウド基盤のような計算リソース群(複数の計算リソース)上に構築されたシステムでもよい。計算機システムあるいは計算リソース群は、1以上のインタフェース装置、1以上の記憶装置(例えば、主記憶装置及び補助記憶装置を含む)、及び、1以上の演算装置を含む。
【0049】
プログラムが演算装置によって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/またはインタフェース装置等を用いながら行われるため、機能は演算装置の少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、演算装置あるいはそのプロセッサを有するシステムが行う処理としてもよい。
【0050】
プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機または計算機が読み取り可能な記憶媒体MM(例えば計算機読み取り可能な非一過性記憶媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0051】
図3は、IT機器管理計算機3200の構成例を示す。コンピュータハードウェア資源としては共通するため、
図2と
図3および
図4では、コンピュータハードウェア資源に対して共通の符号を使用する。
【0052】
IT機器管理計算機3200は、管理ネットワークインターフェース2100を介して、
図1で述べた他のシステムと通信可能に接続されている。ローカルディスク2400には、IT機器制御プログラム3210が格納されている。
【0053】
IT機器制御プログラム3210は、メモリ2500にロードされ、プロセッサ2200によって実行される。IT機器制御プログラム3210は、「第1電気機器」または「情報処理機器」の例としてのIT機器3211の動作を制御する。IT機器3211は、例えば、サーバ、ストレージ、ネットワーク機器などである。IT機器制御プログラム3210の処理は後述する。
【0054】
IT機器管理計算機3200は、物理的な計算機システム(一つ以上の物理的な計算機)でもよいし、クラウド基盤のような計算リソース群(複数の計算リソース)上に構築されたシステムでもよい。計算機システムあるいは計算リソース群は、1以上のインタフェース装置、1以上の記憶装置(例えば、主記憶装置及び補助記憶装置を含む)、及び、1以上の演算装置を含む。記憶媒体MMとの間でコンピュータプログラムまたはデータの一部または全部を送受信することもできる。
【0055】
図4は、DC設備管理計算機3100の構成例を示す。DC設備管理計算機3100は、管理ネットワークインターフェース2100を用いて、
図1で述べた他のシステムと通信可能に接続されている。
【0056】
ローカルディスク2400には、消費電力予測プログラム3120とDC設備制御プログラム3110とが格納されている。消費電力予測プログラム3120とDC設備制御プログラム3110とは、メモリ2500にロードされ、プロセッサ2200によって実行される。DC設備制御プログラム3110は、「第2電気機器」または「設備」の例としてのDC設備3111の動作を制御する。DC設備3111は、例えば、空調設備、蓄電設備、電源装置などである。DC設備制御プログラム3110の処理は後述する。
【0057】
消費電力予測プログラム3120は、DC3000内の、IT機器3211の消費電力とDC設備3111の消費電力とを予測し、予測結果を出力する。この予測結果は、DER管理計算機2000のDC電力需要調整計画プログラム2430および可視化プログラム2440により利用される。
【0058】
IT機器管理計算機3200は、物理的な計算機システム(一つ以上の物理的な計算機)でもよいし、クラウド基盤のような計算リソース群(複数の計算リソース)上に構築されたシステムでもよい。計算機システムあるいは計算リソース群は、1以上のインタフェース装置、1以上の記憶装置(例えば、主記憶装置及び補助記憶装置を含む)、及び、1以上の演算装置を含む。記憶媒体MMとの間でコンピュータプログラムまたはデータの一部または全部を送受信することもできる。
【0059】
図5は、「制御ルール」を含む情報の例であるDC設備制御ルールテーブル2410を示す。このテーブル2410は、DER管理計算機2000の管理下にあるDC3000毎に定義されており、各DC3000内の機器が提供可能な調整力のパタン情報を含んでいる。
【0060】
調整力の情報は、DC3000内のIT機器3211の消費電力の実績値とDC設備機器3111の消費電力の実績値とから定義される。例えばDC3000内のIT機器3211が全台数の80%で動作しているときの消費電力の観測値が300kWであり、IT機器3211全体台数の50%で動作しているときの消費電力の観測値が200kWであった場合を検討する。この場合、動作させるIT機器3211の台数を80%から50%へ削減することで、マイナス100kWの消費電力を抑制することができる。
【0061】
DC設備機器3111に関しても、例えば、サーバの稼働状況と外気温と設定温度といった情報と、消費電力との関係情報に基づいて、設定値によるDC設備3111の消費電力の変化を、提供可能な調整力としてパタン定義することができる。これらの調整力のデータは、IT機器3211またはDC設備3111の、消費電力に関するカタログ性能から定義されてもよい。テーブル2410の作成方法は問わない。
【0062】
カラム2411は、設備制御ルールのIDを示す。カラム2412は、ルールに関するデータセンタのIDを示す。カラム2413は、調整量を示す。調整量とは、消費電力(電力需要)である。カラム2414は、調整量を提供する設備のIDを示す。カラム2415は、設備を制御するためのコマンドを示す。
【0063】
図5の各行は、任意の調整量を提供するための設備制御ルールを示している。例えば行241Aは、ルールIDが「1」であり、データセンタIDが「1」であり、当該ルールで提供する調整量が「1kW」であり、当該ルールで制御する対象の設備のIDが「1」であり、当該設備に対する制御コマンドが「設定温度を2℃下げること」であること、を示している。
【0064】
行241Bは、ルールIDが「2」であり、データセンタIDが「1」であり、ルールで提供する調整量が「1kW」であり、ルールで制御する対象の設備のIDが「2」であり、当該設備に対する制御コマンドが「蓄電池に対して1kWで充電すること」を示している。
【0065】
行241Cは、ルールIDが「5」であり、データセンタIDが「2」であり、ルールで提供する調整量が「-20kW」であり、ルールで制御する対象の設備のIDが「3」であり、当該設備に対する制御コマンドが「IDが1と2と3と4のPDU(Power Distribution Unit)の電源を落としてIT機器の電源を落とすこと」、を示している。
【0066】
図6は、「調整配分情報」の一例である調整配分定義テーブル2420を示す。このテーブル2420は、DER管理計算機2000の管理下にあるDC3000毎に定義された、提供可能な調整力のパタン情報を含んでいる。
【0067】
調整力のパタン情報は、DC設備制御ルールテーブル2410に記憶された情報に基づいて生成できる。例えば、設備制御ルールテーブル2410に定義された複数の設備が提供可能な調整量の組み合わせとして、DC全体で提供可能な調整量を定義する。
【0068】
DC設備制御ルールテーブル2410に定義された制御ルールの組み合わせの作成方法の例を説明する。例えば、任意の調整量(2423)を定義し、その調整量を満たすまで対象のデータセンタ(
図5の符号2412,2422)について、調整量(
図5の符号2413)の昇順でDC設備制御ルールを選出してもよい。これとは逆に、任意のデータセンタ(2412,2422)が提供可能な調整量(2413)の総量から、調整配分定義テーブル2420の調整量2423を定義してもよい。これら以外の方法でもよい。
【0069】
複数のDC設備制御ルールを組み合わせる際に、同時に制御可能か否かの制約条件への抵触有無を確認し、制約条件に抵触しないように選出する。制約条件とは例えば、「サーバの稼働台数がA台以上B台未満であれば、空調装置の温度設定はC度からD度まで設定可能」、といったものである。このような制約条件を満たす組み合わせのみを選出し、調整配分定義テーブル2420を作成する。
【0070】
カラム2421は、調整パタンのIDを示す。カラム2422は、調整パタンを持つデータセンタのIDを示す。カラム2423は、パタンの調整量を示す。カラム2424は、調整量のうちIT機器3211が提供する調整量の割合を示す。カラム2425は、調整量のうちDC設備3111が提供する調整量の割合を示す。
【0071】
テーブル2420の各行は、調整パタンの情報を示している。例えば行242Aは、パタンIDが「1」であり、パタンの対象であるデータセンタのIDが「1」であり、パタンが提供する調整量が「100kW」であり、調整量のうちIT機器3211が提供する調整量が「40kW」であり、DC設備3111が提供する調整量が「60kW」であることを示している。
【0072】
IT機器3211が提供する調整量は、DC設備制御ルールテーブル2410の行241Cで例示したように、IT機器単位で電源を落とす制御により実現されてもよい。または、これ以外の方法として、IT機器3211の上で動作させる計算処理の量を変動させることで、調整力を提供する方法でもよい。後者の方法は、IT機器管理計算機3200のIT機器制御プログラム3210が提供する。詳細は後述する。
【0073】
図6では、IT機器3211に対する調整量よりもDC設備3111に対する調整量の方が大きくなるように設定される。これにより、DC3000が提供する価値(情報処理サービスの価値)をできるだけ維持しつつ、調整要求に応えることができる。これとは逆に、第1電気機器に対する調整量よりも第2電気機器に対する調整量の方を小さくすることもできる。例えば、効率よく温度管理されているDC3000の場合は、DC設備3111よりも台数の多いIT機器3211に対する調整量を増やした方がDC3000に割り当てられた調整量を実現できる。
【0074】
図7は、DC電力需要調整計画プログラム2430により実行される処理のフロー図である。
図7は、DC電力需要調整計画プログラム2430が、調整力提供のイベントをトリガとして、要求された調整力を実現するための、DC3000の各機器3111,3211の制御計画を作成するフローを示す。
【0075】
ステップS1:
【0076】
DC電力需要調整計画プログラム2430は、送配電システム及び電力市場システム5000を監視したり分析したりしており、その結果に基づいて、調整力を提供するための計画の作成を開始する(S1)。
【0077】
調整力提供計画を作成するトリガとしては、送配電システムから直接依頼が来るケースや、電力市場における電力の価格が閾値を下回った場合、などである。調整力提供計画を作成するトリガは、上述したケース以外のケースでもよい。
【0078】
調整要求には、例えば、電力需要を調整する時間帯と調整する電力量の値とが含まれている。例えば、「翌日14:00-16:00に消費電力を100kW増加させる」、といった内容である。
【0079】
ステップS2:
【0080】
DC電力需要調整計画プログラム2430は、自らが管理する拠点にあるDC3000の制御ポリシを確認する(S2)。DC3000の制御ポリシとは、調整力提供の要求に対する制約条件であり、要求を受けるかどうかの判定条件である。制御ポリシの内容については、ステップS3で後述する。ステップS2の回答が「調整力優先」の場合、ステップS4へ進む。ステップS2の回答が「コスト優先、または再生可能エネルギの利用を最大化」であった場合、ステップS3へ進む。
【0081】
ステップS3:
【0082】
DC電力需要調整計画プログラム2430は、調整力提供の要求に応えた結果、コスト優先の制御ポリシ、または再生可能エネルギ利用の最大化を優先する制御ポリシのいずれの条件を満たすか判定する(S2)。ステップS2の確認の結果、制御ポリシがコスト優先であった場合、調整力の提供により変化する電気代を計算し、任意の期間で設定された電力消費に伴う予算を満たすか否か、を判定する(S3)。一方、ステップS2の確認の結果、制御ポリシが再生可能エネルギの利用を最大化することであった場合、調整力の提供により変化する再生可能エネルギ利用率を計算し、任意の期間で設定された再生可能エネルギ利用率の目標を満たすか否か、を判定する(S3)。
【0083】
データセンタ(DC)は、脱炭素化のために再生可能エネルギを電力として利用する場合がある。再生可能エネルギの調達方法には、自ら再生可能エネルギを発電し利用する自家発電のケース、電力小売事業者から調達するケースがある。いずれのケースにおいても、再生可能エネルギの発電量と電力消費量とを時間単位で一致させることで、再生可能エネルギに由来する電力を無駄なく消費することができ、社会全体への再生可能エネルギの利用促進を図ることができる。この取組は、24/7 Carbon Free Energyと呼ばれる国連主体のイニシアチブとなっている。
【0084】
DC3000もこの取組に向けて、時間単位の再生可能エネルギ利用率向上を目標にする場合がある。DC3000が利用する再生可能エネルギの供給状況とステップS1で検出される電力の調整要求とは独立して発生する。ある時間帯における消費電力の増加を要求する調整要求がステップS1で受領された場合に、その調整要求による消費電力の増加分がその時間帯での再生可能エネルギの発電量を超過したとすると、その時間帯で目標とされていた再生可能エネルギの利用率を達成できないことがあり得る。したがって、再生可能エネルギの利用を最大化するという制御ポリシがDC3000に設定されている場合は、この条件を満たさない(S3:NO)、という判定結果になる。
【0085】
ステップS3の回答が「YES」の場合、ステップS4へ進む。ステップS3の回答が「NO」の場合、DC電力需要調整計画プログラム2430は、本処理を終了する。ステップS2,S3における確認の結果、要求された調整量の一部を提供可能な場合、調整力要求元に対して、一部の調整力に対して貢献できる旨を回答し、調整力を変更するか問合せてもよい。この問合せの結果が「YES」の場合、その一部の調整力を要求として、後述のステップS4に進んでもよい。なお、調整要求の一部の実現に貢献する場合の他の例は、後述する。
【0086】
ステップS4:
【0087】
DC電力需要調整計画プログラム2430は、調整配分定義テーブル2420を参照し、要求された調整力に対応する任意のパタンを決定する(S4)。DC電力需要調整計画プログラム2430は、要求された調整量と一致する調整量(2423)を持つパタン(2421)の中からいずれか一つのパタンを選択する。これにより、所定の時間ごとの、IT機器3211の調整量とDC設備3111の調整量とが算出される。
【0088】
ステップS5:
【0089】
DC電力需要調整計画プログラム2430は、ステップS4で決定したパタンを構成する調整力がIT機器調整量(2424)を含むか、DC設備調整量(2425)を含むかを判定する(S5)。ステップS5の回答が「YES」の場合、ステップS6へ進む。ステップS5の回答が「NO」の場合、ステップS7へ進む。
【0090】
ステップS6:
【0091】
DC電力需要調整計画プログラム2430は、ステップS5で確認されたIT機器3211による調整量を、IT機器管理計算機3200のIT機器制御プログラム3210へ送信する(S6)。
【0092】
ステップS7:
【0093】
DC電力需要調整計画プログラム2430は、設備制御ルールテーブル2410を参照し、ステップS5で確認されたDC設備3111による調整量を提供可能な、設備制御コマンド(2415)を選出する(S7)。例えば、DC設備3111による調整量が60kWの場合、60kWの調整量を満たすまで、DCID(2412)と調整量(2413)とを参照して、対象DCに適用する制御ルールを選出する。DC設備3111の調整量が大きい順に選出してもよいし、要求調整量を満たすような組合せを最適化手法により選出してもよいし、それ以外の方法でもよい。制御ルール(DC設備を制御するルール)の選出方法は問わない。
【0094】
ステップS8:
【0095】
DC電力需要調整計画プログラム2430は、ステップS7で確認されたDC設備3111の制御ルールを全て、DC設備管理計算機3100のDC設備制御プログラム3110へ送信する(S8)。
【0096】
ステップS9:
【0097】
DC電力需要調整計画プログラム2430は、IT機器制御プログラム3210またはDC設備制御プログラム3110からackデータを受領したか判定する(S9)。ステップS9の回答が「YES」の場合、DC電力需要調整計画プログラム2430は、ステップS10で情報提供画面を表示させて、本処理を終了する。
【0098】
ステップS9の回答が「NO」の場合、ステップS4へ戻る。処理対象の調整要求に対して、新たな任意のパタンを選出し、ステップS5以降の処理を再び実行する。つまり、対象の日時において指定された制御が実行不可能と回答された場合に、他の制御方法(制御ルール)による需要調整計画の立案を試行する。
【0099】
図示は省略するが、ステップS9の回答が「NO」の場合は、ステップS7へ進み、処理対象の調整要求に対して、新たな任意の制御ルールを選出し、ステップS8以降の処理を行ってもよい。調整要求を満たす任意のルールを選出できない場合、ステップS4へ進み、調整要求に対して新たな任意の調整配分を選出し、ステップS5以降の処理を実行してもよい。
【0100】
以上述べた処理により、要求された調整力への対応が可能となる。なお、ステップS4は「第1ステップ」の例に該当する。ステップS7は「第2ステップ」の例に該当する。
図8および
図9で述べる各ステップS101-S105,S201-S205は、「第3ステップ」の例に該当する。ステップS10は、「第4ステップ」の例に該当する。
【0101】
なお、上記では、任意の時間帯に対する電力需要調整計画の作成処理を説明したが、調整力の要求は複数時間帯について要求されうるため、その場合、前述の処理を時間帯ごとに実施する。
【0102】
上記の説明では、IT機器3211の消費電力を制御する方法として、IT機器自体の電源を制御する方法と、IT機器の上で動作する計算処理を制御する方法とを例示したが、後者の場合、IT機器3211による計算処理の総量が減少すると、本来実行される予定であった計算処理の結果生み出される利益を享受できなくなる恐れがある。
【0103】
そこで、IT機器3211に関する電力需要調整の増加分と減少分との総量が差し引きゼロとなるような制約条件を定義し、この制約条件を満たすように前述の処理を行ってもよい。例えば、各時間帯についてステップS4で決定したIT機器3211の調整量の総量が差し引きゼロとなるように、各時間帯の調整配分を決定する。各時間帯の調整配分の決定方法は、組合せ最適化手法により選出してもよいし、それ以外の方法でもよい。
【0104】
図8は、IT機器制御プログラム3210により実行される処理のフロー図である。IT機器制御プログラム3210は、DC電力需要調整計画プログラム2430からの要求を受けて、IT機器3211を制御する計画を立案する。
【0105】
ステップS101:
【0106】
IT機器制御プログラム3210は、DC電力需要調整計画プログラム2430からIT機器に対する制御要求を受信する(S101)。すなわち、IT機器制御プログラム3210は、
図7のステップS6で指定された時間帯と調整量とを受信する。
【0107】
ステップS102:
【0108】
IT機器制御プログラム3210は、DC電力需要調整計画プログラム2430から要求された調整力に対応可能か否かを判定する(S102)。ステップS102の回答が「YES」の場合、ステップS103へ進む。ステップS102の回答が「NO」の場合、ステップS104へ進む。
【0109】
DC電力需要調整計画プログラム2430からの要求に対応可能か否かの判定は、指定された時間帯のIT機器3211の状態の予測に基づいてなされてもよいし、それ以外の方法でもよい。IT機器3211の状態としては、例えば計算リソースの利用率を挙げることができる。指定された時間帯に残計算リソースが少ないことが予想される場合、期待されている計算処理を全て処理できないと言ったケースが起こりえる。
【0110】
ステップS103:
【0111】
IT機器制御プログラム3210は、DC電力需要調整計画プログラム2430に対してackデータを送信する(S103)。
【0112】
ステップS104:
【0113】
IT機器制御プログラム3210は、DC電力需要調整計画プログラム2430に対してerrorデータを送信する(S104)。
【0114】
ステップS105:
【0115】
IT機器制御プログラム3210は、DC電力需要調整計画プログラム2430から要求された調整量を目標消費電力に加算して、IT機器3211の制御計画を作成する(S105)。IT機器制御プログラム3210は、例えば、目標消費電力を満たすような計算処理の実行計画を作成する。計算処理の実行計画の作成方法は、計算処理のスケジューリングによってなされてもよいし、それ以外の方法でもよい。
【0116】
以上に示すステップにより、IT機器3211に対して割り当てられた調整力に対応することができる。
【0117】
図9は、DC設備制御プログラム3110のフローチャートを示す。DC設備制御プログラム3110は、DC電力需要調整計画プログラム2430からの要求を受けて、DC設備3111を制御する計画を立案する。
【0118】
ステップS201:
【0119】
DC設備制御プログラム3110は、DC電力需要調整計画プログラム2430からDC設備制御要求を受信する(S201)。DC設備制御プログラム3110は、例えば、上述のステップS8で指定された時間帯と制御コマンドとを受信する。
【0120】
ステップS202:
【0121】
DC設備制御プログラム3110は、要求された制御コマンドが指定された時間帯に実行可能か否かを判定する(S202)。ステップS202の回答が「YES」の場合は、ステップS203へ進む。ステップS202の回答が「NO」の場合は、ステップS204へ進む。DC電力需要調整計画プログラム2430から指定された制御コマンド(制御ルールの内容)を実行可能か否かの判定は、指定された時間帯のDC設備3111の状態の予測に基づいてなされてもよいし、それ以外の方法でもよい。DC設備3111の状態には、例えば、蓄電池の充電状態を挙げることができる。指定された時間帯に充電量が少ないと予測された場合は、蓄電池から放電させることができないケースがあり得る。逆に、指定された時間帯において蓄電池が満充電であると予測された場合、蓄電池に充電させることができないケースがあり得る。
【0122】
ステップS203:
【0123】
DC設備制御プログラム3110は、DC電力需要調整計画プログラム2430に対してackデータを送信する(S203)。
【0124】
ステップS104:
【0125】
DC設備制御プログラム3110は、DC電力需要調整計画プログラム2430に対して、errorデータを送信する(S204)。
【0126】
ステップS205:
【0127】
DC設備制御プログラム3110は、DC電力需要調整計画プログラム2430から指定された制御コマンドを、各DC設備に設定する(S205)。制御コマンドの設定方法は、制御コマンドのスケジューリング定義によってなされてもよいし、それ以外の方法でもよい。
【0128】
以上に示すステップにより、DC設備3111に割り当てられた調整力へ対応することができる。
【0129】
図10は、可視化プログラム2440により可視化されるDC3000の消費電力の時間変化の一例である。
【0130】
「情報提供画面」の例であるGUI(Graphical User Interface)画面G1は、DC電力需要調整計画プログラム2430が、ユーザであるAC2050及びRA1500に提示する画面の一例である。
【0131】
画面G1は、電力需要を調整しない場合の消費電力の予測値GP11と、電力需要の調整計画値を含んだ消費電力の予測値GP12と、電力需要の調整計画値を含んだ消費電力の予測値GP12に実績値を上書きしたデータGP13との、3種類の情報を含む。
【0132】
これら3種類の情報は、時間帯ごとの棒グラフとして可視化されている。横軸は、時間を示しており、一つの棒グラフが各時間の電力量の平均値を示している。実線の四角E2は、電力需要である消費電力を示す。破線の四角E1は、電力供給である再生可能エネルギの供給量を示す。各棒グラフの上辺が実線の場合は、電力需要が再生可能エネルギ供給量を上回っていることを示し、上辺が破線の場合はその逆を示す。
【0133】
電力需要の調整計画値を含んだ消費電力の予測値GP12では、黒で塗りつぶされた四角E3が調整予定の電力量を示す。黒の四角内の上向きの矢印は、電力を増加させる調整を示し、下向きの矢印は電力を減少させる調整を示す。上向きの矢印の場合は、黒の四角E3の上辺が電力需要量を示す。下向きの矢印の場合は、黒の四角E3の下辺が電力需要量を示す。
【0134】
電力需要の調整計画値を含んだ消費電力の予測値GP12に実績値を上書きしたデータGP13では、斜線部E4が実績値である。
【0135】
以上に示す画面G1の例により、消費電力が再生可能エネルギの供給に対してどの程度追随しているのか、電力需要調整がいつ行われるのか、実際の消費電力がどうなったのか、をユーザは視覚的に容易に理解することができる。
【0136】
図10の画面例では省略しているが、電力の数値情報を併せて表示してもよい。電力需要を調整しない場合の消費電力の予測値GP11と、電力需要の調整計画値を含んだ消費電力の予測値GP12と、電力需要の調整計画値を含んだ消費電力の予測値GP12に実績値を上書きしたデータGP13との3種類の情報を重ね合わせて、比較しやすい形で表示してもよい。
【0137】
このように構成される本実施例によれば、複数種類の業務用電気機器を用いるデータセンタが電力の調整要求に応えるための計画立案が容易となる。
【0138】
本実施例によれば、データセンタが、複数の業務用電気機器の動作を制御することにより、電力の調整要求に応えることができる。
【0139】
本実施例によれば、データセンタの提供する役務の価値を実現するために使用される第1電気機器の制御と、第1電気機器の稼働を支援するために使用される第2電気機器の制御とを組み合わせることで、データセンタの提供する価値を維持しつつ、調整要求の実現を図ることができる。
【0140】
本実施例によれば、再生可能エネルギにより発電された電力を積極的に利用する制御ポリシを設定することができ、データセンタの脱炭素化に貢献できる。
【0141】
本実施例では、IT機器3211に対する調整量よりもDC設備3111に対する調整量の方が大きくなるように設定される。これにより、DC3000が提供する価値(情報処理サービスの価値)をできるだけ維持しつつ、調整要求に応えることができる。
【0142】
本実施例では、DC3000にあらかじめ設定された制御ポリシと調整要求とが適合する場合に、DC3000の電力需要を調整する計画を立案する。これにより、DC3000の設置趣旨に反する電力需要計画の立案を防止でき、使い勝手が向上する。
DC電力需要調整計画プログラム2430は、送配電システム/電力市場システム5000を監視および分析し(S11)、電力の調整要求を検出する(S12)。ステップS12で「NO」と判定されると、ステップS11へ戻る。
ステップS12で「YES」と判定された場合、DC電力需要調整計画プログラム2430は、要求された調整量の全てを、管理下のDCだけで実現可能であるか判定する(S13)。
管理下のDC3000だけでは調整要求を実現できない場合(S13:NO)、DC電力需要調整計画プログラム2430は、調整要求の発行元に対して、部分的な協力でもよいか問い合わせる(S14)。部分的な協力とは、当初要求された調整量の一部についてのみ対応することである。
DC電力需要調整計画プログラム2430は、調整要求の発行元が前記問い合わせに対して承諾した場合、要求された調整量を変更する(S15)。DC電力需要調整計画プログラム2430は、現状で可能な限りの調整量を、要求された調整量として使用することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されず、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換することが可能である。さらに、各実施例は、明らかに矛盾しない限り、適宜組み合わせることができる。