(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006641
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60N 2/06 20060101AFI20250109BHJP
B60N 2/26 20060101ALI20250109BHJP
A47C 1/024 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60N2/06
B60N2/26
A47C1/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107561
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 史弥
(72)【発明者】
【氏名】小池 洋平
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BD03
3B087CE01
3B087DE08
3B099AA05
3B099BA04
3B099CB02
(57)【要約】
【課題】後席に取り付けられたチャイルドシートに着座する乳児や小児の安全性を高める。
【解決手段】車両10は、車体14に対する位置を電動で調整するための位置調整部20を有する前席16と、チャイルドシート34を取付可能な後席18と、後席18へのチャイルドシート34の取付状態を検知するチャイルドシートセンサと、チャイルドシートセンサが上記取付状態を検知している場合、位置調整部20による後席18側への前席16の位置調整を制限する制御ECUと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対する位置を電動で調整するための位置調整部を有する前席と、
チャイルドシートを取付可能な後席と、
前記後席へのチャイルドシートの取付状態を検知する検知部と、
前記検知部が前記取付状態を検知している場合、前記位置調整部による前記後席側への前記前席の位置調整を制限する制御部と、
を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前席の位置調整が可能で且つ後席にチャイルドシートを取付可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された車両用座席装置では、後席に設置された着座センサと、後席に照準を合わせて設置され、後席に着座した対象物の温度を検知する赤外線センサとによって、後席乗員の有無を判定し、後席に乗員がいる場合には前席の前後位置調整を制限する。これにより、前席を車両後方に大きく動かす際、後席の乗員に不快感を与えたり、怪我をさせたりするのを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の後席にはチャイルドシートが取り付けられる場合がある。チャイルドシートに着座する乳児や小児は身体が小さいため、上記の着座センサや赤外線センサでは検知が不十分となる虞がある。特に乳児や小児は、前席の位置調整の際に前席乗員に対して警告ができない場合があるため、安全性を高める観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、後席に取り付けられたチャイルドシートに着座する乳児や小児の安全性を高めることができる車両を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両は、車体に対する位置を電動で調整するための位置調整部を有する前席と、チャイルドシートを取付可能な後席と、前記後席へのチャイルドシートの取付状態を検知する検知部と、前記検知部が前記取付状態を検知している場合、前記位置調整部による前記後席側への前記前席の位置調整を制限する制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前席は、車体に対する位置を電動で調整するための位置調整部を有しており、後席は、チャイルドシートを取付可能とされている。検知部は、後席へのチャイルドシートの取付状態を検知する。制御部は、検知部が前記取付状態を検知している場合、位置調整部による後席側への前席の位置調整を制限する。これにより、後席に取り付けられたチャイルドシートに着座する乳児や小児の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る車両の車室内の構成を示す側面図である。
【
図2】実施形態に係る車両の前席を示す側面図である。
【
図3】実施形態に係る車両が備える後席乗員挟み込み防止システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る車両の構成が有するチャイルドシート固定部と、チャイルドシートのコネクタ部を示す斜視図である。
【
図5】
図4のF5-F5線に沿った切断面に対応する断面図である。
【
図6】チャイルドシートのコネクタ部がチャンバシート固定部に固定された状態を示す
図5に対応した断面図である。
【
図7】前席の位置調整可能範囲について説明するための側面図である。
【
図8】前席の位置調整制限範囲について説明するための側面図である。
【
図9】後席乗員挟み込み防止システムの制御ECUが実施する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】後席の車体への連結部付近に設けられる荷重センサによってチャイルドシートの取付状態を検知する場合について説明するための斜視図である。後席図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図9を参照して本発明の一実施形態に係る車両10について説明する。なお、各図においては、図面を見易くするため、符号の一部を省略している場合がある。また、各図中に適宜記す矢印FR、矢印LH、矢印UPは、車両の前方向(進行方向)、左方向及び上方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両に対する方向を示すものとする。
【0010】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両10は、例えばセダンタイプであり、車室12内の前部に配置された前席16と、車室12内の後部に配置された後席18とを備えている。
図1及び
図2に示されるように、前席16は、車体14に対する前席16の前後方向の位置を調整(
図2の矢印S参照)するためのスライド機構22と、車体14に対する前席16の上下方向の位置を調整(
図2の矢印L参照)するためのリフタ機構24と、シートクッション16Aに対するシートバック16Bのリクライニング位置を調整(
図2の矢印R参照)するためのリクライニング機構26とを有している。スライド機構22、リフタ機構24及びリクライニング機構26は、車体14に対する前席16の位置を電動で調整するための位置調整部20を構成している。
【0011】
図3に示されるように、スライド機構22の駆動源であるスライドモータ22A、リフタ機構24の駆動源であるリフタモータ24A、及びリクライニング機構26の駆動源であるリクラモータ26Aはそれぞれ、制御部である制御ECU28と電気的に接続されている。制御ECU28は、CPU(Central Processing Unit)28A、ROM(Read Only Memory)28B、RAM(Random Access Memory)28C、ストレージ28D及び入出力インターフェース(I/F)28Eを含んで構成されている。CPU28A、ROM28B、RAM28C、ストレージ28D及び入出力インターフェース28Eは、バス28Fを介して相互に通信可能に接続されている。
【0012】
CPU28Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU28Aは、ROM28Bからプログラムを読み出し、RAM28Cを作業領域としてプログラムを実行する。本実施形態では、ROM28Bにプログラムが記憶されている。入出力インターフェース28Eには、上記のスライドモータ22A、リフタモータ24A、リクラモータ26Aの他、スライドスイッチ22B、リフタスイッチ24B、リクラスイッチ26B、スライドセンサ22C、リフタセンサ24C、リクラセンサ26C、検知部であるチャイルドシートセンサ30、及び車両の電源32が電気的に接続されている。なお、
図3では、チャイルドシートセンサを「CRSセンサ」と記載している。前席16、後席18、制御ECU28及びチャイルドシートセンサ30は、後席乗員挟み込み防止システムを構成している。
【0013】
スライドスイッチ22B、リフタスイッチ24B及びリクラスイッチ26Bは、例えば前席16に設けられており、前席16に着座した乗員P1が操作可能とされている。制御ECU28のCPU28A(以下、単に「制御ECU28」と称する)は、スライドスイッチ22Bが操作されるとスライドモータ22Aを作動させ、リフタスイッチ24Bが操作されるとリフタモータ24Aを作動させ、リクラスイッチ26Bが操作されるとリクラモータ26Aを作動させるように構成されている。
【0014】
スライドセンサ22Cは、スライド機構22に設けられており、車体14に対する前席16の前後方向の位置を検知する。リフタセンサ24Cは、リフタ機構24に設けられており、車体14に対する前席16の上下方向の位置を検知する。リクラセンサ26Cは、リクライニング機構26に設けられており、シートクッション16Aに対するシートバック16Bのリクライニング位置を検知する。制御ECU28は、スライドセンサ22C、リフタセンサ24C及びリクラセンサ26Cからの出力に基づいて、車体14に対する前席16の位置を検知可能とされている。
【0015】
チャイルドシートセンサ30は、ISOFIXタイプのチャイルドシート34を取り付け可能な後席18に設けられている。この後席18は、
図1及び
図4に示されるように、チャイルドシート34が有する左右のコネクタ部34Bが固定されるチャイルドシート固定部36(
図1及び
図4参照)を有している。
【0016】
チャイルドシート固定部36は、後席18のシートクッション18Aの後端部で且つ後席18のシートバック18Bの下方に配置されている。シートクッション18A及びシートバック18Bは、車体14に直接固定されており、チャイルドシート固定部36は、シートクッション18Aのフレーム38に固定された左右一対の固定金具40を有している。左右の固定金具40は、例えば金属の線材が曲げ加工されたものであり、上下方向視で後方側が開放された略U字状をなしている。左右の固定金具40の後端部は、フレーム38に固定されている。
【0017】
チャイルドシート34が有する左右のコネクタ部34Bは、チャイルドシート34の本体部34Aの下端部から後方側へ延出されている。左右のコネクタ部34Bの後端部(先端部)には、左右の固定金具40を差し込み可能な溝35が形成されている。
図6に示されるように、左右のコネクタ部34Bの各溝35に左右の固定金具40が挿入されると、左右のコネクタ部34Bに設けられた図示しないラッチが左右の固定金具40に引っ掛かり、各溝35からの左右の固定金具40の抜け出しが規制される。これにより、チャイルドシート34がチャイルドシート固定部36に固定される。
【0018】
左右の固定金具40の一方である左側の固定金具40には、チャイルドシートセンサ30が有する移動部材30Bが係合している。移動部材30Bは、フレーム38に対して所定の範囲で前後方向にスライド可能に支持されており、付勢部材である圧縮コイルスプリング30Cによって前方側へ付勢されている。この移動部材30Bには、左側の固定金具40が挿入された溝31が形成されている。また、この移動部材30Bには、二つの配線30D、30Eが配索されている。一方の配線30Dは、車両の電源32及びチャイルドシートセンサ30のセンサ本体30Aと電気的に接続されており、他方の配線30Eは、車体14に接地に接続されている。センサ本体30Aは、制御ECU28の入出力インターフェース28Eと電気的に接続されている。
【0019】
図4及び
図5に示されるように、左側のコネクタ部34Bが左側の固定金具40に固定されていない状態では、配線30D、30Eが左側の固定金具40を介して電気的に接続され、配線30D、30Eに電流が流れる。この電流がセンサ本体30Aによって検知されている状態では、制御ECU28は、後席18にチャイルドシート34が取り付けられていない「非取付状態」であると判断する。一方、
図6に示されるように、左側のコネクタ部34Bの溝35に左側の固定金具40が挿入されると、左側のコネクタ部34Bによって移動部材30Bが後方側へスライドされる。これにより、左側の固定金具40を介いた配線30D、30Eの接続状態が解除され、配線30D、30Eに電流が流れなくなる。このように、配線30D、30Eに電流が流れていないことをセンサ本体30Aが検知している状態では、制御ECU28は、後席18にチャイルドシート34が取り付けられた「取付状態」であると判断する。
【0020】
制御ECU28は、非取付状態であると判断している状態では、スライド機構22による前席16の前後位置調整可能範囲、リフタ機構24による前席16の上下位置調整可能範囲、及びリクライニング機構26によるシートバック16Bのリクライニング位置調整可能範囲を制限しないように構成されている。その場合、前席16の前後位置調整可能範囲及び上下位置調整可能範囲は、
図7に実線で示される位置調整可能範囲X1となる。
【0021】
一方、制御ECU28は、取付状態であると判断している状態では、スライド機構22による前席16の前後位置調整可能範囲、リフタ機構24による前席16の上下位置調整可能範囲、及びリクライニング機構26によるシートバック16Bのリクライニング位置調整可能範囲を制限するように構成されている。その場合、前席16の前後位置調整可能範囲及び上下位置調整可能範囲は、
図8に実線で示される位置調整可能範囲X2となり、前席16の前後位置調整制限範囲及び上下位置調整制限範囲は、
図8に破線で示される位置調整制限範囲Yとなる。この位置調整制限範囲Yでは、前席16の位置調整が制限される。上記の位置調整可能範囲X2及び位置調整制限範囲Yは、シートバック16Bのリクライニング位置毎に設定される。このように、本実施形態では、チャイルドシートセンサ30が後席18へのチャイルドシート34の取付状態を検知している場合、位置調整部20による後席18側への前席16の位置調整が制限される構成になっている。
【0022】
以下、
図9を参照して、制御ECU28が実施する制御処理の一例について説明する。なお
図9では、チャイルドシートを「CRS」と記載し、スイッチを「SW]と記載している。制御ECU28は、例えば車両のイグニッションスイッチがオンにされると、
図9に示される制御処理を開始する。制御ECU28は、先ずステップS1において、チャイルドシート34が後席18に取り付けられた取付状態であるか否かを判断する。この判断が肯定された場合、ステップS2に移行し、この判断が否定された場合、ステップS3に移行する。
【0023】
ステップS2では、制御ECU28は、前席16の位置調整可能範囲を変更し、前席16の位置調整を制限する。このステップS2での処理が完了すると、次のステップS3に移行する。
【0024】
ステップS3では、制御ECU28は、シート調整スイッチであるスライドスイッチ22B、リフタスイッチ24B及びリクラスイッチ26Bの何れかがONになったか否かを判断する。この判断が肯定された場合、次のステップS4に移行し、この判断が否定された場合、ステップS1に戻って前述の処理を繰り返す。
【0025】
ステップS4では、制御ECU28は、スライドモータ22A、リフタモータ24A及びリクラモータ26Aのうち、上記ONになったスイッチに対応するモータを作動させる。このモータの作動に応じて前席16が移動される。このステップS4での処理が完了すると、次のステップS5に移行する。
【0026】
ステップS5では、制御ECU28は、前席16の位置が位置調整可能範囲内であるか否かを判断する。この判断が肯定された場合、次のステップS6に移行し、この判断が否定された場合、ステップS7に移行する。
【0027】
ステップS6では、制御ECU28は、シート調整スイッチであるスライドスイッチ22B、リフタスイッチ24B及びリクラスイッチ26Bの何れかがONからOFFになったか否かを判断する。この判断が肯定された場合、次のステップS7に移行し、この判断が否定された場合、ステップS4に戻って前述の処理を繰り返す。
【0028】
ステップS7では、制御ECU28は、スライドモータ22A、リフタモータ24A及びリクラモータ26Aのうち、上記ONからOFFになったスイッチに対応するモータを停止させる。これにより、前席16の移動が停止される。このステップS7での処理が完了すると、次のステップS8に移行する。
【0029】
ステップS8では、制御ECU28は、車両のイグニッションスイッチがOFFになったか否かを判断する。この判断が肯定された場合、制御ECU28による制御処理が終了され、この判断が否定された場合、ステップS1に戻って前述の処理を繰り返す。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御ECU28は、チャイルドシートセンサ30が後席18へのチャイルドシート34の取付状態を検知している場合、位置調整部20による後席18側への前席16の位置調整を制限する。これにより、チャイルドシート34に着座した乳児や小児等の乗員P2等に後席18が干渉すること(
図1に二点鎖線で示される前席16参照)を防止できる。その結果、乳児や小児等の乗員P2の安全性を高めることができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、後席18のチャイルドシート固定部36に設けられたチャイルドシートセンサ30が検知部である場合について説明したが、これに限るものではない。検知部の構成は適宜変更可能である。例えば
図10に示されるように、後席18’がスライド機構18Cを介して車体に連結される場合、後席18’の車体への連結部付近(
図10において符号LSが付された領域)に設けられる荷重センサを検知部としてもよい。その場合、後席18’上のチャイルドシートの荷重を荷重センサによって検知することにより、後席18’へのチャイルドシートの取付状態を検知する構成となる。
【0032】
その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
10 車両
14 車体
16 前席
18 後席
20 位置調整部
28 制御ECU(制御部)
30 チャイルドシートセンサ(検知部)
34 チャイルドシート