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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025066454
(43)【公開日】2025-04-23
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20250416BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20250416BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
G01S7/40 121
G01S7/02 210
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176088
(22)【出願日】2023-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大藪 弘和
(72)【発明者】
【氏名】高畑 利彦
(72)【発明者】
【氏名】山浦 新司
【テーマコード(参考)】
5J021
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021AA05
5J021AA06
5J021AA12
5J021FA13
5J021FA29
5J021GA02
5J021HA04
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC13
5J070AD05
5J070AD08
5J070AE01
5J070AF03
5J070AH25
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK04
(57)【要約】
【課題】複数のアンテナ素子が分散して接続される複数の送受信回路の間で生ずる信号の位相差および振幅差の少なくとも一方を補正可能なレーダ装置を提供する。
【解決手段】レーダ装置1は、複数のアンテナ素子が分散して接続される複数の送受信回路20、30を備える。レーダ装置1は、第1の送受信回路20と第2の送受信回路30との間で生ずる信号の位相差および振幅差を補正対象成分として補正する補正処理部55を備える。レーダ装置1は、第1の送受信回路20に接続されるアンテナ素子および第2の送受信回路30に接続されるアンテナ素子それぞれを用いた仮想アンテナにおけるアンテナ素子の一部が仮想的に重なるように構成されている。補正処理部55は、仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、物標に対応するものを比較信号とし、当該比較信号の比較に基づいて補正対象回路の補正対象成分を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波により物標を検出するレーダ装置であって、
複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナ群(Tx)と、
複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナ群(Rx)と、
複数の前記送信アンテナ素子および複数の前記受信アンテナ素子が分散して接続される複数の送受信回路(20、30)と、
少なくとも1つの前記送信アンテナ素子から送信された送信波に対応する反射波の前記受信アンテナ素子での受信結果に基づいて前記物標を検出する物標検出部(51)と、
複数の前記送受信回路の一部を基準回路とし、前記基準回路を除く他の前記送受信回路を補正対象回路として、前記基準回路と前記補正対象回路との間で生ずる信号の位相差および振幅差の少なくとも一方を補正対象成分として補正する補正処理部(55)と、を備え、
複数の前記送信アンテナ素子および複数の前記受信アンテナ素子は、前記基準回路に接続されるアンテナ素子および前記補正対象回路に接続されるアンテナ素子それぞれを用いた仮想アンテナにおけるアンテナ素子の一部が仮想的に重なるように配置されており、
前記補正処理部は、前記仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、前記物標検出部にて検出される前記物標に対応するものを比較信号とし、前記比較信号の比較に基づいて前記補正対象回路の前記補正対象成分を補正する、レーダ装置。
【請求項2】
前記物標検出部は、前記受信結果に基づいて前記物標との距離に相関性を有する距離情報を求める距離演算部(52)を有し、
前記補正処理部は、前記仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、前記距離情報に基づく前記物標までの距離が基準距離以下であることを示すものを前記比較信号とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記物標検出部は、前記受信結果に基づいて前記物標との相対速度に相関性を有する速度情報を求める速度演算部(53)を有し、
前記補正処理部は、前記仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、前記速度情報に基づく前記物標の相対速度が基準速度以下であることを示すものを前記比較信号とする、請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記物標検出部は、
前記受信結果に基づいて前記物標との距離に相関性を有する距離情報を求める距離演算部(52)と、
前記受信結果に基づいて前記物標との相対速度に相関性を有する速度情報を求める速度演算部(53)と、を有し、
前記補正処理部は、前記仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、前記距離情報に基づく前記物標までの距離が基準距離以下であることを示し、且つ、前記速度情報に基づく前記物標の相対速度が基準速度以下であることを示すものを前記比較信号とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記物標検出部は、前記受信結果に基づいて前記物標の方位を推定する方位推定部(54)を有し、
前記補正処理部は、前記仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、前記方位推定部で推定された前記物標の方位が前記物標の検出可能範囲の両端より中央近くの中央領域にあることを示すものを前記比較信号とする、請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記送信アンテナ群は、所定方向において基準間隔をあけて配置される前記送信アンテナ素子が含まれており、
前記受信アンテナ群は、前記所定方向において前記基準間隔をあけて配置される前記受信アンテナ素子が含まれている、請求項1または2に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波により物標を検出するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダ装置として、多チャンネル化に対応するために複数のアンテナ素子が複数の受信ICに分散して接続されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、異なる受信ICにある受信アンテナ素子の位置が仮想的に重なるように複数の送信アンテナ素子の間隔を所定間隔に設定し、仮想的に重なる受信アンテナ素子での信号の受信結果を比較して各受信IC間で生ずる位相差を補償するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-60732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のレーダ装置において、例えば、レーダ装置の視野角の範囲に物標がない場合に仮想的に重なる受信アンテナそれぞれで受信される受信信号は、物標とは関係のない雑音となる。この雑音には、各受信IC間で生ずる位相差が含まれない。このため、特許文献1の如く、単純に仮想的に重なる受信アンテナでの受信信号を比較しても、各受信IC間で生ずる位相差を補償することはできないことがある。このことは、各受信IC間で生ずる振幅差についても同様である。
【0005】
本開示は、複数のアンテナ素子が分散して接続される複数の送受信回路の間で生ずる信号の位相差および振幅差の少なくとも一方を補正可能なレーダ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
電波により物標を検出するレーダ装置であって、
複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナ群(Tx)と、
複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナ群(Rx)と、
複数の送信アンテナ素子および複数の受信アンテナ素子が分散して接続される複数の送受信回路(20、30)と、
少なくとも1つの送信アンテナ素子から送信された送信波に対応する反射波の受信アンテナ素子での受信結果に基づいて物標を検出する物標検出部(51)と、
複数の送受信回路の一部を基準回路とし、基準回路を除く他の送受信回路を補正対象回路として、基準回路と補正対象回路との間で生ずる信号の位相差および振幅差の少なくとも一方を補正対象成分として補正する補正処理部(55)と、を備え、
複数の送信アンテナ素子および複数の受信アンテナ素子は、基準回路に接続されるアンテナ素子および補正対象回路に接続されるアンテナ素子それぞれを用いた仮想アンテナにおけるアンテナ素子の一部が仮想的に重なるように配置されており、
補正処理部は、仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、物標検出部にて検出される物標に対応するものを比較信号とし、比較信号の比較に基づいて補正対象回路の補正対象成分を補正する。
【0007】
これによると、レーダ装置の視野角の範囲(すなわち、物標の検出可能範囲)に物標が存在しない場合にも位相差を補償する従来技術に比べて、基準回路および補正対象回路の間で生ずる位相差または振幅差といった補正対象成分を適切に補正することができる。
【0008】
したがって、本開示のレーダ装置によれば、複数の送信アンテナ素子および複数の受信アンテナ素子が分散して接続される複数の送受信回路の間で生ずる信号の位相差および振幅差の少なくとも一方を補正することができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るレーダ装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態に係るレーダ装置のアンテナ構成を説明するための説明図である。
図3図2に示すアンテナ構成に基づく仮想アンテナにて仮想的に重なるアンテナ素子を説明するための説明図である。
図4】仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信する受信信号を説明するための説明図である。
図5】物標の検出可能範囲での物標が存在する場合および物標が存在しない場合における仮想的に重なるアンテナ素子で受信する受信信号の比較結果を説明するための説明図である。
図6】第1実施形態に係るレーダ装置の制御部が実行する補正処理の流れを示すフローチャートである。
図7】制御部が実行する距離FFTで求められる距離情報の一例を説明するための説明図である。
図8】制御部が実行する速度FFTで求められる速度情報の一例を説明するための説明図である。
図9】補正対象成分を検出するための比較信号の選定手法を説明するための説明図である。
図10】第2実施形態に係るレーダ装置のアンテナ構成を説明するための説明図である。
図11図10に示すアンテナ構成に基づく仮想アンテナにて仮想的に重なるアンテナ素子を説明するための説明図である。
図12】第2実施形態に係るレーダ装置の制御部が実行する補正処理の流れを示すフローチャートである。
図13】制御部が実行する補正対象成分を検出するための比較信号の選定処理の流れを示すフローチャートである。
図14】比較信号の選定手法を説明するための説明図である。
図15】第3実施形態に係るレーダ装置の一部を示す部分構成図である。
図16】第3実施形態に係るレーダ装置のアンテナ構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態について、図1図9を参照して説明する。本実施形態では、本開示のレーダ装置1を、車両に搭載されて車両の周囲に存在する様々な物標を検出する物標検出装置に適用した例について説明する。
【0013】
レーダ装置1は、車両の前方に向けて電波を出射するとともに、車両の前方にある物標によって反射した電波を受信することで、物標までの距離、自車両に対する相対速度、自車両に対する方位等を求める。
【0014】
レーダ装置1は、信号の変調方式としてFMCW方式が採用されている。レーダ装置1は、電波の動作周波数が、ミリ波に対応する周波数帯(例えば、76.5GHz)とされている。なお、レーダ装置1が送受信する電波の動作周波数は、ミリ波に対応する周波数に限定されず、ミリ波以外の周波数であってもよい。
【0015】
図1に示すように、レーダ装置1は、図示しないセンサ筐体と、複数のレーダユニットRU1、RU2と、制御部50とを備えている。本実施形態では、レーダ装置1が第1レーダユニットRU1および第2レーダユニットRU2を備えるものを例示するが、レーダ装置1は、3つ以上のレーダユニットRUを備える構成とされていてもよい。
【0016】
センサ筐体は、レーダ装置1の外殻を構成する部材である。センサ筐体には、第1レーダユニットRU1、第2レーダユニットRU2、制御部50が設けられている。なお、制御部50については、センサ筐体の外側に設けられていてもよい。
【0017】
第1レーダユニットRU1は、第1送信部21と、実在する送信アンテナ素子Tx1と、実在する複数の受信アンテナ素子Rx11~Rx14と、第1受信部22とを備える。第1送信部21および第1受信部22は、第1の送受信回路20を構成する。第1の送受信回路20は、MMIC等の半導体チップに実装された構成になっている。なお、MMICは、Monolithic Microwave Integrated Circuitの略称である。
【0018】
第2レーダユニットRU2は、第2送信部31と、実在する送信アンテナ素子Tx2と、実在する複数の受信アンテナ素子Rx21~Rx24と、第2受信部32とを備える。第2送信部31および第2受信部32は、第2の送受信回路30を構成する。第2の送受信回路30は、MMIC等の半導体チップに実装された構成になっている。
【0019】
本実施形態では、第1レーダユニットRU1の送信アンテナ素子Tx1と第2レーダユニットRU2の送信アンテナ素子Tx2とが“送信アンテナ群Tx”を構成している。同様に、第1レーダユニットRU1の受信アンテナ素子Rx11~Rx14と第2レーダユニットRU2の受信アンテナ素子Rx21~Rx24とが“受信アンテナ群Rx”を構成している。“送信アンテナ群Tx”および“受信アンテナ群Rx”の詳細については後述する。
【0020】
第1レーダユニットRU1の第1送信部21は、送信アンテナ素子Tx1から送信する信号を生成し、送信アンテナ素子Tx1に伝える。具体的には、第1送信部21は、ローカル信号を生成する局部発振器211を含み、当該局部発振器211にて生成されたローカル信号を第1受信部22に伝える。また、第1送信部21は、連続的に周波数が変化するチャープ信号を生成し、生成したチャープ信号を送信アンテナ素子Tx1に提供する。そして、送信アンテナ素子Tx1は、第1送信部21から提供されたチャープ信号に対応する電波を車両の前方に向けて送信する。
【0021】
また、第1受信部22は、受信アンテナ素子Rx11~Rx14で受信された受信信号および第1送信部21から伝えられたローカル信号に基づいてビート信号を生成し、当該ビート信号をサンプリングして制御部50へ提供する。図示しないが、第1受信部22は、ミキサ、増幅器、AD変換器等を含んで構成されている。
【0022】
第2レーダユニットRU2の第2送信部31は、送信アンテナ素子Tx2から送信する信号を生成し、送信アンテナ素子Tx2に伝える。具体的には、第2送信部31は、ローカル信号を生成する局部発振器311を含み、当該局部発振器311にて生成されたローカル信号を第2受信部32に伝える。また、第2送信部31は、連続的に周波数が変化するチャープ信号を生成し、生成したチャープ信号を送信アンテナ素子Tx2に提供する。そして、送信アンテナ素子Tx2は、第2送信部31から提供されたチャープ信号に対応する電波を車両の前方に向けて送信する。
【0023】
また、第2受信部32は、受信アンテナ素子Rx21~Rx24で受信された受信信号および第2送信部31から伝えられたローカル信号に基づいてビート信号を生成し、当該ビート信号をサンプリングして制御部50へ提供する。図示しないが、第2受信部32は、ミキサ、増幅器、AD変換器等を含んで構成されている。
【0024】
ここで、本例の送信アンテナ群Txおよび受信アンテナ群Rxについて図2を参照しつつ説明する。図2に示すように、本例の送信アンテナ群Txは、実在する2つの送信アンテナ素子Tx1、Tx2を有している。また、本例の受信アンテナ群Rxは、実在する8つの受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24を有している。
【0025】
送信アンテナ群Txを構成する2つの送信アンテナ素子Tx1、Tx2は、レーダ装置1を車両に搭載した状態において、水平方向Uに並んで配置されている。本実施形態では、車両の幅方向に対応する水平方向Uが“所定方向”に対応している。
【0026】
送信アンテナ群Txでは、2つの送信アンテナ素子Tx1、Tx2が所定の基準間隔をあけて水平方向Uに沿って配置されている。水平方向Uに並ぶ送信アンテナ素子Tx1、Tx2は、所定の水平基準距離「dh」の3倍となる「3dh」の間隔をあけて配置されている(本例では基準間隔=3dh)。なお、送信アンテナ素子Tx1、Tx2の間隔は、厳密に水平基準距離「dh」の倍数となっている状態の他、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差が含まれていてもよい。このことは、水平方向Uに並ぶ受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24の間隔についても同様である。
【0027】
本例の水平基準距離「dh」は、レーダ装置1の探知範囲を“±1/2・θfov”としたとき、以下の数式F1を満たすように設定される。本実施形態では、θfovを“180°”とし、水平基準距離「dh」を“1/2・λ”とする。なお、λは、電波の波長である。
【0028】
1/sin(θfov/180・π)・2<dh ・・・(F1)
受信アンテナ群Rxは、送信アンテナ群Txから送信されて物標によって反射した電波等を受信する。本例の受信アンテナ群Rxは、実在する8つの受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24によって構成されている。受信アンテナ群Rxを構成する8つの受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24は、レーダ装置1を車両に搭載した状態において、水平方向Uに並ぶように配置されている。8つの受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~R24は、水平基準距離「dh」の1倍となる「1dh」をあけて等間隔に配置されている。
【0029】
ここで、受信アンテナ群Rxには、図3の上段に示すように、送信アンテナ素子Tx1、Tx2における配置間隔である基準間隔(本例では3dh)と同じ間隔をあけて配置されるものが含まれている。本例では、受信アンテナ素子Rx11、Rx14の間隔が基準間隔をあけて配置されており、受信アンテナ素子Rx11に対する送信アンテナ素子Tx2の配置関係が、受信アンテナ素子Rx14に対する送信アンテナ素子Tx1の配置関係と同等となっている。
【0030】
このように構成されるレーダ装置1では、送信アンテナ素子Tx1の送信波に基づく受信アンテナ素子Rx14の受信信号の位相と、送信アンテナ素子Tx2の送信波に基づく受信アンテナ素子Rx11の受信信号の位相とを、略同相とみなすことができる。
【0031】
例えば、図3の下段のように、第1の送受信回路20に接続されるアンテナ素子および第2の送受信回路30に接続されるアンテナ素子それぞれを用いた仮想アンテナでは、一部のアンテナ素子が仮想的に重なる配置構成と見なすことができる。ここでいう仮想アンテナは、MIMOアレイ技術を用いたMIMOアンテナである。MIMOアンテナは、複数のアンテナ素子から送信した電波を複数のアンテナ素子で受信した際の受信結果に基づいて仮想的に生成されるアレイアンテナである。なお、“MIMO”は、Multi Input Multi Outputの略称である。
【0032】
具体的には、送信アンテナ素子Tx1からの送信波に対応する反射波を受ける受信アンテナ素子Rx14と送信アンテナ素子Tx2からの送信波に対応する反射波を受ける受信アンテナ素子Rx11とが、仮想的に重なる配置構成と見なすことができる。例えば、送信アンテナ素子Tx1からの送信波に対応する反射波を受信アンテナ素子Rx11~Rx14でを受ける第1仮想アンテナは、図3の下段の左側で示すSIMOアンテナとなる。また、送信アンテナ素子Tx2からの送信波に対応する反射波を受信アンテナ素子Rx11~Rx14でを受ける第2仮想アンテナは、図3の下段の右側で示すSIMOアンテナとなる。そして、第1仮想アンテナおよび第2仮想アンテナを含む仮想アンテナ(MIMOアンテナ)は、第1仮想アンテナを構成する受信アンテナ素子Rx14および第2仮想アンテナを構成する受信アンテナ素子Rx11が、仮想的にオーバラップする配置構成となる。なお、“SIMO”は、Single Input Multi Outputの略称である。
【0033】
制御部50は、プロセッサ、メモリMを備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御機器である。メモリMは、例えば、ROM、RAM等である。マイクロコンピュータの各種機能は、プロセッサが非遷移的実体的記憶媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0034】
制御部50には、第1レーダユニットRU1および第2レーダユニットRU2が接続されている。制御部50は、送信アンテナ群Txから送信された電波に対応する反射波を受信アンテナ群Rxで受信した際の電波に基づいて物標に対応する信号を検出する。
【0035】
制御部50は、少なくとも1つの送信アンテナ素子Tx1、Tx2から送信された送信波に対応する反射波の受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24での受信結果に基づいて物標を検出する。本実施形態では、制御部50における物標を検出するソフトウエア、ハードウエアが“物標検出部51”を構成している。
【0036】
本実施形態の物標検出部51は、送信アンテナ素子Tx1、Tx2からの送信波の受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24での受信結果に基づいて物標との距離に相関性を有する距離情報として距離スペクトルを求める。本実施形態では、物標検出部51のうち、距離情報を求めるソフトウエア、ハードウエアが“距離演算部52”を構成している。なお、距離スペクトルは、物標との距離に相関性を有する周波数スペクトルである。
【0037】
物標検出部51は、送信アンテナ素子Tx1、Tx2からの送信波の受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24での受信結果に基づいて物標との相対速度に相関性を有する速度情報として速度スペクトルを求める。本実施形態では、物標検出部51のうち、速度情報を求めるソフトウエア、ハードウエアが“速度演算部53”を構成している。なお、速度スペクトルは、物標との相対速度に相関性を有する周波数スペクトルである。
【0038】
さらに、物標検出部51は、送信アンテナ素子Tx1、Tx2からの送信波の受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24での受信結果に基づいて物標の方位を推定する。本実施形態では、物標検出部51のうち、物標の方位を推定するソフトウエア、ハードウエアが“方位推定部54”を構成している。
【0039】
ここで、本実施形態のレーダ装置1は、第1の送受信回路20および第2の送受信回路30がそれぞれに設けられた局部発振器211、311で生成されたローカル信号に基づいて、チャープ信号およびビート信号を生成する。このため、第1の送受信回路20および第2の送受信回路30の間には、異なる局部発振器211、311を利用することによる位相のズレ(すなわち、位相誤差)が生じ得る。
【0040】
また、レーダ装置1は、第1の送受信回路20および第2の送受信回路30がそれぞれに設けられた増幅器、AD変換器等の機器を利用してチャープ信号およびビート信号を生成する。このため、第1の送受信回路20および第2の送受信回路30の間には、異なる機器を利用することによる振幅のズレ(すなわち、振幅差)が生じ得る。レーダ装置1において、第1の送受信回路20および第2の送受信回路30における位相差および振幅差が大きいことは、物標の検出精度の低下を招くことから好ましくない。
【0041】
これらを踏まえて、レーダ装置1は、一部の送受信回路を“基準部”とし、“基準部”を除く他の送受信回路を“補正対象回路”として、“基準部”に対する“補正対象回路”での位相差および振幅差の一方を補正対象成分として補正するようになっている。
【0042】
具体的には、制御部50は、第1の送受信回路20を基準部とし、第2の送受信回路30を補正対象回路として、第1の送受信回路20と第2の送受信回路30との間で生ずる位相差および振幅差の双方を補正対象成分として補正する。本実施形態では、制御部50における各送受信回路20、30の間で生ずる位相差および振幅差を補正するソフトウエア、ハードウエアが“補正処理部55”を構成している。
【0043】
前述したように、本実施形態のレーダ装置1では、仮想アンテナにおいて受信アンテナ素子Rx14と受信アンテナ素子Rx11とが、仮想的に重なる配置構成となっている。このため、制御部50は、仮想アンテナにおける受信アンテナ素子Rx14と受信アンテナ素子Rx11での受信信号の位相および振幅の比較し、その比較結果に基づいて、各送受信回路20、30の間で生ずる位相差および振幅差を補正する。
【0044】
具体的には、制御部50は、仮想アンテナにおいて仮想的に重なる受信アンテナ素子Rx11、Rx14での受信信号の位相差および振幅差から第2の送受信回路30側の位相および振幅を第1の送受信回路20側の位相および振幅に合致させる補正係数を算出する。そして、制御部50は、物標を検出する際に、補正係数を用いて、第2の送受信回路30側の受信アンテナ素子Rx21~Rx24の受信信号の位相および振幅を補正する。
【0045】
ここで、送信アンテナ素子Tx1からの送信波の受信アンテナ素子Rx14での受信信号X14は、図4の数式F2に示すものとなる。なお、数式F2では、“θ”が方位、“s”が物標に対応する信号成分、“n14”が雑音(すなわち、ノイズ)を示している。
【0046】
また、送信アンテナ素子Tx2からの送信波の受信アンテナ素子Rx11での受信信号X21は、図4の数式F3に示すものとなる。なお、数式F3では、“θ”が方位、“s”が物標に対応する信号成分、“n21”が雑音(すなわち、ノイズ)、“γ”が各送受信回路20、30の間の位相差、“A”が各送受信回路20、30の間の振幅差を示している。
【0047】
レーダ装置1の視野角(すなわち、物標の検出可能範囲)に物標が存在する場合、物標に対応する信号成分である“s”が、ノイズである“n14”、“n21”と比べて充分に大きくなる。この場合、図5の数式F4に示すように、受信アンテナ素子Rx14での受信信号X14および受信アンテナ素子Rx14での受信信号X21を比較することによって位相差を示す“γ”および振幅差を示す“A”を求めることができる。
【0048】
一方、レーダ装置1の視野角に物標が存在しない場合、物標に対応する信号成分である“s”が、ノイズである“n14”、“n21”と比べて小さくなる。この場合、図5の数式F5に示すように、受信アンテナ素子Rx14での受信信号X14および受信アンテナ素子Rx14での受信信号X21を比較しても位相差を示す“γ”および振幅差を示す“A”を求めることが困難となる。
【0049】
そこで、本実施形態の制御部50は、レーダ装置1における物標の検出可能範囲に物標が存在する場合に、各受信アンテナ素子Rx11、Rx14での受信信号X14、X21を比較し、この比較結果に基づいて、補正対象回路の補正対象成分を補正する。つまり、制御部50は、各受信アンテナ素子Rx11、Rx14それぞれで受信される信号のうち、物標に対応するものを比較信号とし、各受信アンテナ素子Rx11、Rx14それぞれでの比較信号の比較に基づいて補正対象回路の補正対象成分を補正する。
【0050】
このような補正対象成分の補正は、レーダ装置1にて物標を検出する物標検出処理の実行されるたびに行われる。以下、レーダ装置1の制御部50が実行する物標検出処理について、図6を参照しつつ説明する。図6に示す処理は、送信アンテナ群Txから所定の送信周期でチャープ信号が送信されると、制御部50によって周期的または不定期に実行される。
【0051】
図6に示すように、制御部50は、ステップS100にて、物標からの反射波を受信アンテナ群Rxで受信する。この受信信号は、各レーダユニットRU1、RU2の各受信部22、32のミキサにてローカル信号と混合される。その後、ローパスフィルタにより所望の周波数成分が抽出されて、当該周波数成分がビート信号として各受信部22、32から制御部50へ提供される。
【0052】
続いて、制御部50は、ステップS110にて、距離FFTの処理を行う。制御部50は、ビート信号をFFTにより周波数解析することで、物標までの距離と相関性を有する距離情報として距離スペクトルを求める。制御部50は、各受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24それぞれでの受信される信号を解析して、例えば、図7に示すように、各受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24毎に距離スペクトルを求める。なお、FFTは、Fast Fourier Transformの略称である。
【0053】
続いて、制御部50は、ステップS120にて、速度FFTの処理を行う。制御部50は、FFTによりビート周波数成分毎にFFTを行ってドップラ周波数を求めるとともに当該ドップラ周波数に基づいて物標の相対速度を求める。制御部50は、各受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24それぞれでの受信される信号を解析して、例えば、図7に示すように、各受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24毎に速度情報として速度スペクトルを求める。
【0054】
続いて、制御部50は、ステップS130にて、物標が検出されたか否かを判定する。例えば、制御部50は、ビート信号のFFTを行った際に物標との距離を示すピークが検出された場合に物標が検出された判定し、物標との距離を示すピークが検出されなかった場合に物標が検出されていないと判定する。
【0055】
制御部50は、物標が検出されなかった場合には以降の処理をスキップして、物標検出処理を抜ける。また、制御部50は、物標が検出された場合にはステップS140に移行して物標検出処理を継続する。
【0056】
制御部50は、ステップS140にて、仮想アンテナにおいて仮想的に重なる受信アンテナ素子Rx11、Rx14それぞれで受信される信号のうち、物標に対応するものを比較信号として選定する。
【0057】
ここで、電波の伝搬(すなわち、受信電力)は、距離の4乗に逆比例して減衰する。このため、距離が近い物標に対応する信号の方が、SN比が高くなり、ノイズの影響が抑えられる。また、例えば、送信アンテナ素子Tx1、Tx2を時分割多重方式によって多重送信する場合等には、電波の送信タイミングが異なることで、ターゲットが移動し、当該ターゲッとの距離の差異による位相変化が加わることがある。
【0058】
これらを考慮し、本実施形態の制御部50は、物標を示す信号のうち、物標との距離が基準距離以下であることを示し、且つ、物標との相対速度が基準速度以下であることを示すものを比較信号として選定する。
【0059】
例えば、図9に示すように、距離および速度の異なる3つのターゲットTrg1~Trg3が存在する場合、制御部50は、距離が近く、且つ、相対速度が小さいターゲットTrg1を示す信号を比較信号として選定する。
【0060】
本実施形態の制御部50は、基準部となる第1の送受信回路20側で受信される受信信号に基づく距離情報および速度情報を用いて比較信号を選定する。これによると、各送受信回路20の相違に起因する距離および相対速度の変化を避けることができる。
【0061】
続いて、制御部50は、ステップS150にて、仮想アンテナにおいて仮想的に重なる受信アンテナ素子Rx14、Rx14それぞれでの受信信号に対応する比較信号を比較することによって位相差および振幅差を補正対象成分として検出する。そして、制御部50は、仮想的に重なる受信アンテナ素子Rx11、Rx14での受信信号の位相差および振幅差から第2の送受信回路30側の位相および振幅を第1の送受信回路20側の位相および振幅に合致させる補正係数を算出する。
【0062】
続いて、制御部50は、ステップS160にて、上述の補正係数を用いて、第2の送受信回路30側の受信アンテナ素子Rx21~Rx24の受信信号の位相および振幅を補正する補正処理を行う。
【0063】
そして、制御部50は、ステップS170にて、ターゲットとなる物標の検出処理を実行する。制御部50は、例えば、ステップS160で補正した受信信号に基づいて、物標との距離に相関性を有する距離情報、物標との相対速度に相関性を有する速度情報、物標の方位を推定する。そして、制御部50は、距離情報、速度情報、物標の方位の推定結果に基づいてターゲットとなる物標を検出する。
【0064】
以上説明したレーダ装置1は、第1の送受信回路20を基準部とし、第2の送受信回路30を補正対象回路として、第1の送受信回路20と第2の送受信回路30との間で生ずる位相差および振幅差の双方を補正対象成分として補正する。具体的には、レーダ装置1は、仮想アンテナにおいて仮想的に重なる受信アンテナ素子Rx11、Rx14で受信される信号のうち、物標に対応するものを比較信号とし、当該比較信号の比較に基づいて補正対象回路の補正対象成分を補正する。
【0065】
これによると、レーダ装置1の視野角の範囲に物標が存在しない場合にも位相差を補償する従来技術に比べて、基準回路および補正対象回路の間で生ずる位相差または振幅差といった補正対象成分を適切に補正することができる。
【0066】
したがって、本実施形態のレーダ装置1によれば、複数のアンテナ素子が分散して接続される複数の送受信回路20、30の間で生ずる信号の位相差および振幅差の少なくとも一方を補正することができる。
【0067】
また、本実施形態のレーダ装置1は、以下の特徴を備える。
【0068】
(1)制御部50は、物標検出部51として、物標との距離に相関性を有する距離情報を求める距離演算部52と、物標との相対速度に相関性を有する速度情報を求める速度演算部53と、を有する。制御部50は、仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、距離情報に基づく物標までの距離が基準距離以下であることを示し、且つ、速度情報に基づく物標の相対速度が基準速度以下であることを示すものを比較信号とする。
【0069】
これによれば、SN比が高く、且つ、複数の送信アンテナ素子Tx1、Tx2での電波の送信タイミングの違いによる位相変化の小さい信号を比較信号として用いることになるので、基準回路および補正対象回路の間で生ずる補正対象成分を適切に求めることができる。この結果、複数の送受信回路20、30の間で生ずる信号の位相差および振幅差の少なくとも一方を補正することができる。
【0070】
(2)具体的には、レーダ装置1は、送信アンテナ群Txには基準間隔をあけて配置される送信アンテナ素子Tx1、Tx2が含まれるとともに、受信アンテナ群Rxにも基準間隔をあけて配置される受信アンテナ素子Rx11、Rx14が含まれている。換言すれば、レーダ装置1は、送信アンテナ素子Tx1、Tx2の間隔と受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24の間隔とが部分的に同じ間隔となるアンテナ構成とされている。これによると、第1仮想アンテナおよび第2仮想アンテナにおいてアンテナ素子の一部が仮想的に重なるアンテナ構成を実現することができる。
【0071】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の制御部50は、各送受信回路20、30の位相および振幅に合致させる補正係数を算出し、当該補正係数を用いて、第2の送受信回路30側の受信アンテナ素子Rx21~Rx24の受信信号の位相および振幅を補正しているが、これに限定されない。制御部50による位相差および振幅差の補正は、例えば、第2の送受信回路30側の位相および振幅を第1の送受信回路20側の位相および振幅に合致するように位相器や増幅器等で変化させることによって実現されていてもよい。このことは、以降の実施形態においても同様である。
【0072】
第1実施形態の如く、レーダ装置1は、各送受信回路20、30の位相差および振幅差の双方を補正対象成分として補正するように構成されていることが望ましいが、これに限定されない。レーダ装置1は、各送受信回路20、30の位相差および振幅差の一方を補正対象成分として補正するようになっていてもよい。このことは、以降の実施形態においても同様である。
【0073】
第1実施形態では、第1の送受信回路20を基準部とし、第2の送受信回路30を補正対象回路としているが、第2の送受信回路30を基準部とし、第1の送受信回路20を補正対象回路としてもよい。このことは、以降の実施形態においても同様である。
【0074】
第1実施形態の如く、仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、物標までの距離が基準距離以下であることを示し、且つ、物標との相対速度が基準速度以下であることを示すものを比較信号とすることが望ましいが、これに限定されない。
【0075】
制御部50は、例えば、仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、物標に対応する信号を、物標までの距離や物標との相対速度を考慮せずに、比較信号とするようになっていてもよい。また、制御部50は、仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、物標までの距離が基準距離以下であることを示すものを比較信号とするようになっていてもよい。さらに、制御部50は、例えば、仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、物標との相対速度が基準距離以下であることを示すものを比較信号とするようになっていてもよい。これらは、以降の実施形態においても同様である。
【0076】
第1実施形態では、補正対象成分の補正をレーダ装置1にて物標を検出する物標検出処理の実行するたびに行うものを例示したが、これに限定されない。レーダ装置1は、物標を検出する物標検出処理とは別に、補正対象成分の補正を行うようになっていてもよい。
【0077】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図10図14を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0078】
第1実施形態の如く、送信アンテナ群Txを構成する2つの送信アンテナ素子Tx1、Tx2の間隔が、受信アンテナ群Rxを構成する8つの受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24の間隔の倍数となっていることが望ましい。
【0079】
しかしながら、実製品では、製造誤差等によって、2つの送信アンテナ素子Tx1、Tx2の間隔と受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24とが異なる間隔となることがある。
【0080】
例えば、図10の上段に示すように、レーダ装置1は、送信アンテナ素子Tx1、Tx2は、水平基準距離「dh」とは異なる基準距離「dt」の3倍となる「3dt」の間隔をあけて配置されている(本例では基準間隔=3dt)。なお、基準距離「dt」は、水平基準距離「dh」に対して製造誤差等の差分αを加えた距離となる。この差分αは、水平基準距離「dh」に対して充分に小さい値である。
【0081】
また、受信アンテナ群Rxは、図10の下段に示すように、送信アンテナ素子Tx1、Tx2における配置間隔である基準間隔(本例では3dt)とは異なる間隔をあけて配置されている。但し、受信アンテナ素子Rx11、Rx14の間隔は、基準間隔に近い間隔をあけて配置されており、受信アンテナ素子Rx11に対する送信アンテナ素子Tx2の配置関係が、受信アンテナ素子Rx14に対する送信アンテナ素子Tx1の配置関係と類似している。
【0082】
このようなレーダ装置1では、図11に示すように、仮想アンテナを構成するアンテナ素子の一部が重なる配置構成と見なすことができる。具体的には、仮想アンテナを構成する受信アンテナ素子Rx11、Rx14が、仮想的に重なる配置構成と見なすことができる。本実施形態では、受信アンテナ素子Rx11、Rx14が“仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子”を構成している。
【0083】
ここで、送信アンテナ素子Tx1からの送信波の受信アンテナ素子Rx14での受信信号X14は、図11の数式F6に示すものとなる。なお、数式F6では、“θ”が方位、“s”が物標に対応する信号成分、“n14”が雑音(すなわち、ノイズ)を示している。
【0084】
また、送信アンテナ素子Tx2からの送信波の受信アンテナ素子Rx11での受信信号X21は、図11の数式F7に示すものとなる。なお、数式F7では、“θ”が方位、“s”が物標に対応する信号成分、“n21”が雑音(すなわち、ノイズ)、“γ”が各送受信回路20、30の間の位相差、“A”が各送受信回路20、30の間の振幅差を示している。
【0085】
本実施形態では、受信アンテナ素子Rx11、14の間隔が基準間隔と一致しないため、図11の数式F6および数式F7に示すように、受信アンテナ素子Rx14での受信信号X14および受信アンテナ素子Rx11での受信信号X21が異なるものとなる。
【0086】
一方、図11の数式F6および数式F7によれば、物標の方位角であるθが実質的にゼロとなる場合(物標の方位が中央位置である場合)に、受信アンテナ素子Rx11、Rx14における受信信号X14、X21の差が小さくなる。すなわち、受信アンテナ素子Rx11、Rx14における受信信号X14、X21の差は、物標が検出可能範囲の両端より中央に近い位置にある場合に小さくなり易い。この場合、図11の数式F8に示すように、受信アンテナ素子Rx14での受信信号X14および受信アンテナ素子Rx14での受信信号X21を比較することによって位相差を示す“γ”および振幅差を示す“A”を求めることが可能となる。
【0087】
これらを考慮して、制御部50は、仮想アンテナにおいて仮想的に重なる受信アンテナ素子Rx11、14それぞれで受信される信号のうち、物標の方位が物標の検出可能範囲の両端より中央近くの中央領域にあることを示すものを比較信号とするようにしている。
【0088】
以下、本実施形態の制御部50が実行する物標検出処理について、図12を参照しつつ説明する。図12に示す処理は、送信アンテナ群Txから所定の送信周期でチャープ信号が送信されると、制御部50によって周期的または不定期に実行される。なお、図12に示す処理のうち、ステップS200~ステップS230までの処理は、第1実施形態で説明した図6のステップS100~ステップS130までの処理と略同じである。このため、本実施形態では、ステップS200~ステップS230までの処理についての詳細な説明を省略する。
【0089】
図12に示すように、制御部50は、ステップS200にて、物標からの反射波を受信アンテナ群Rxで受信する。そして、制御部50は、ステップS210にて、距離FFTの処理を行った後、ステップS220に移行して、速度FFTの処理を行う。
【0090】
続いて、制御部50は、ステップS230にて、物標が検出されたか否かを判定する。制御部50は、物標が検出されなかった場合には以降の処理をスキップして、物標検出処理を抜ける。また、制御部50は、物標が検出された場合にはステップS240に移行して物標検出処理を継続する。
【0091】
続いて、制御部50は、ステップS240にて、各受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24それぞれで受信される信号の中から、物標に対応するものを比較信号として選定する。以下、本実施形態の制御部50が実行する比較信号の選定処理について、図13を参照しつつ説明する。
【0092】
図13に示すように、制御部50は、ステップS241にて、物標として検出された信号の中から距離情報および速度情報により方位推定の対象となる信号を選定する。制御部50は、例えば、距離が短く、相対速度が小さいことを示す信号を優先的に方位推定の対象となる信号として選定する。
【0093】
続いて、制御部50は、ステップS242にて、方位推定の対象として選定された信号に対応する物標の方位推定を実施する。具体的には、制御部50は、基準部となる第1の送受信回路20に接続された受信アンテナ素子Rx11~Rx14での受信信号に基づく簡易な方位推定を実施する。
【0094】
ここで、全ての受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24での受信信号に基づいて物標の方位を推定することも考えられるが、各送受信回路20、30の間の位相差および振幅差によって方位の推定精度が低下する。このため、補正対象成分の補正する前段階での物標の方位推定は、本実施形態の如く、基準部となる第1の送受信回路20に接続された受信アンテナ素子Rx11~Rx14での受信信号に基づく物標の方位推定を行うようになっていることが望ましい。
【0095】
続いて、制御部50は、ステップS243にて、簡易な方位推定にて推定された物標の方位が、物標の検出可能範囲の両端より中央近くの中央領域であるか否かを判定する。ここで、中央領域は、視野角の中央位置(θ=0)を含む領域である。なお、中央領域は、仮想的に重なる受信アンテナ素子Rx11、Rx14での受信信号の比較によって各送受信回路20、30の間の位相差を求めることが可能な範囲に設定される。
【0096】
簡易方位推定の推定結果が、物標が中央領域内にあることを示す場合、制御部50は、ステップS244にて、物標が中央領域内にあることを示す信号を比較信号に設定して、比較信号の選定処理を抜ける。
【0097】
一方、簡易な方位推定の推定結果が、物標が中央領域外にあることを示す場合、制御部50は、ステップS241に戻る。具体的には、制御部50は、簡易な方位推定の推定結果が、物標が中央領域外にあることを示す場合、次に、距離が短く、相対速度が小さいことを示す信号を方位推定の対象となる信号として選定し、選定された信号に対応する物標の方位推定を再び実施する。
【0098】
このような選定処理によって、中央領域内に物標があることを示す信号が比較信号に設定される。例えば、図14に示すように、異なる方位に3つのターゲットTrg1~Trg3が存在する場合、中央領域内にあるターゲットTrg1を示す信号が比較信号として設定される。
【0099】
続いて、制御部50は、図12のステップS250にて、受信アンテナ素子Rx14での受信信号および受信アンテナ素子Rx14での受信信号それぞれに対応する比較信号を比較することによって位相差および振幅差を補正対象成分として検出する。そして、制御部50は、仮想的に重なる受信アンテナ素子Rx11、Rx14での受信信号の位相差および振幅差から第2の送受信回路30側の位相および振幅を第1の送受信回路20側の位相および振幅に合致させる補正係数を算出する。
【0100】
続いて、制御部50は、ステップS260にて、上述の補正係数を用いて、第2の送受信回路30側の受信アンテナ素子Rx21~Rx24の受信信号の位相および振幅を補正する補正処理を行う。その後、制御部50は、ステップS270にて、ターゲットとなる物標の検出処理を実行する。制御部50は、例えば、ステップS260で補正した受信信号に基づいて、物標との距離に相関性を有する距離情報、物標との相対速度に相関性を有する速度情報、物標の方位を推定する。そして、制御部50は、距離情報、速度情報、物標の方位の推定結果に基づいてターゲットとなる物標を検出する。
【0101】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態のレーダ装置1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0102】
また、本実施形態のレーダ装置1は、以下の特徴を備える。
【0103】
(1)本実施形態の制御部50は、仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、簡易な方位推定処理で推定された物標の方位が物標の検出可能範囲の両端より中央近くの中央領域にあることを示すものを比較信号としている。これによれば、アンテナ素子の配置誤差に起因する位相のずれが生じたとしても、基準回路および補正対象回路の間で生ずる位相差や振幅差を適切に求めることが可能となる。
【0104】
(2)本実施形態の制御部50は、距離が短く、相対速度が小さいことを示す信号を優先的に方位推定の対象となる信号として選定する。これによれば、SN比が高く、且つ、複数の送信アンテナ素子Tx1、Tx2での電波の送信タイミングの違いによる位相変化の小さい信号が比較信号として用いられ易くなるので、基準回路および補正対象回路の間で生ずる補正対象成分を適切に求めることができる。
【0105】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の如く、レーダ装置1は、距離が短く、相対速度が小さいことを示す信号を優先的に方位推定の対象となる信号として選定されることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。
【0106】
第2実施形態では、基準部となる第1の送受信回路20に接続された受信アンテナ素子Rx11~Rx14での受信信号に基づく物標の方位推定を簡易方位推定として実施するようになっているが、これに限定されない。レーダ装置1は、補正対象部となる第2の送受信回路30に接続された受信アンテナ素子Rx21~Rx24での受信信号に基づく物標の方位推定を簡易方位推定として実施するようになっていてもよい。
【0107】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図15図16を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0108】
図15に示すように、本実施形態の第1レーダユニットRU1は、第1送信部21と、実在する複数の送信アンテナ素子Tx11~Tx13と、実在する複数の受信アンテナ素子Rx11~Rx14と、第1受信部22とを備える。第1送信部21および第1受信部22は、第1の送受信回路20を構成する。
【0109】
また、第2レーダユニットRU2は、第2送信部31と、実在する複数の送信アンテナ素子Tx21~Tx23と、実在する複数の受信アンテナ素子Rx21~Rx24と、第2受信部32とを備える。第2送信部31および第2受信部32は、第2の送受信回路30を構成する。
【0110】
本例の送信アンテナ群Txおよび受信アンテナ群Rxについて図16を参照しつつ説明する。図16に示すように、本例の送信アンテナ群Txは、実在する6つの送信アンテナ素子Tx11~Tx13、Tx21~Tx23を有している。また、本例の受信アンテナ群Rxは、実在する8つの受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24を有している。
【0111】
図16の上段に示すように、送信アンテナ群Txを構成する6つの送信アンテナ素子Tx11~Tx13、Tx21~Tx23は、レーダ装置1を車両に搭載した状態において、水平方向Uおよび垂直方向Vそれぞれに並んで配置されている。
【0112】
送信アンテナ群Txでは、第1の送受信回路20に接続される送信アンテナ素子Tx11、Tx12および第2の送受信回路30に接続される送信アンテナ素子Tx23が所定の間隔をあけて垂直方向Vに沿って配置されている。垂直方向Vに並ぶ送信アンテナ素子Tx11、Tx12、Tx23は、所定の垂直基準距離「dv」の1倍となる「dv」の間隔をあけて配置されている。また、垂直方向Vの両端にある送信アンテナ素子Tx11、Tx23は、垂直基準距離「dv」の2倍となる「2dv」の間隔をあけて配置されている。なお、送信アンテナ素子Tx11、Tx12、Tx23の間隔は、厳密に垂直基準距離「dv」の倍数となっている状態の他、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差が含まれていてもよい。このことは、垂直方向Vに並ぶ受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24の間隔についても同様である。
【0113】
本例の垂直基準距離「dv」は、レーダ装置1の探知範囲を“±1/2・φfov”としたとき、以下の数式F9を満たすように設定される。本実施形態では、φfovを“180°”とし、垂直基準距離「dv」を“1/2・λ”とする。なお、λは、電波の波長である。
【0114】
1/sin(φfov/180・π)・2<dv ・・・(F9)
加えて、送信アンテナ群Txは、垂直方向Vの略中央にある4つの送信アンテナ素子Tx12、Tx13、Tx21、Tx22が所定の間隔をあけて水平方向Uに沿って配置されている。
【0115】
水平方向Uの一方側にある送信アンテナ素子Tx12、Tx13および水平方向Uの他方側にある送信アンテナ素子Tx21、Tx22は、所定間隔をあけて配置されている。具体的には、水平方向Uの一方側にある送信アンテナ素子Tx12、Tx13は、所定の水平基準距離「dh」の2倍となる「2dh」の間隔をあけて配置されている。また、水平方向Uの他方側にある送信アンテナ素子Tx21、Tx22は、所定の水平基準距離「dh」の2倍となる「2dh」の間隔をあけて配置されている。そして、水平方向Uの中央にある送信アンテナ素子Tx13、Tx21は、受信アンテナ群Rxの水平方向Uにおけるアンテナ開口長である「9dh」と同じ間隔をあけて配置されている。本実施形態の送信アンテナ素子Tx13、Tx21は、所定の水平基準距離「dh」の9倍となる「9dh」の間隔をあけて配置されている。
【0116】
また、本実施形態の受信アンテナ群Rxは、実在する8つの受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24によって構成されている。受信アンテナ群Rxを構成する8つの受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24は、レーダ装置1を車両に搭載した状態において、水平方向Uおよび垂直方向Vに並ぶように配置されている。
【0117】
具体的には、受信アンテナ群Rxは、第1の送受信回路20に接続される4つの受信アンテナ素子Rx11~Rx14を含んでいる。第1の送受信回路20に接続される4つの受信アンテナ素子Rx11~Rx14は、送信アンテナ群Txにおける垂直方向Vの一端となる送信アンテナ素子Tx11に近い位置において水平方向Uに沿って並んで配置されている。
【0118】
また、受信アンテナ群Rxは、第2の送受信回路30に接続される4つの受信アンテナ素子Rx21~Rx24を含んでいる。第2の送受信回路30に接続される4つの受信アンテナ素子Rx21~Rx24は、送信アンテナ群Txにおける垂直方向Vの他端となる送信アンテナ素子Tx23に近い位置において水平方向Uに沿って並んで配置されている。一行目の受信アンテナ素子Rx11~Rx14および二行目の受信アンテナ素子Rx21~Rx24は、水平基準距離「dh」の3倍となる「3dh」の間隔をあけて配置されている。
【0119】
また、一行目の受信アンテナ素子Rx11~Rx14および二行目の受信アンテナ素子Rx21~Rx24は、垂直方向Vにおいて対向するように配置されている。一行目の受信アンテナ素子Rx11~Rx14および二行目の受信アンテナ素子Rx21~Rx24は、垂直基準距離「dv」の2倍となる「2dv」の間隔をあけて配置されている。
【0120】
本実施形態のレーダ装置1は、垂直方向Vに並ぶ受信アンテナ素子Rx11~Rx14同士の間隔が、垂直方向Vの両端にある送信アンテナ素子Tx11、Tx23同士の間隔と同じ間隔(本例では「2dv」)となっている。
【0121】
また、本実施形態のレーダ装置1は、水平方向Uの両端にある受信アンテナ素子Rx11、Rx14同士の間隔が、水平方向Uの中央にある送信アンテナ素子Tx13、Tx21同士の間隔と同じ間隔(本例では「9dh」)となっている。
【0122】
このようなアンテナ構成に基づく仮想アンテナは、図16の下段に示すように、水平方向Uおよび垂直方向Vの双方において、多数の仮想アンテナ素子が並ぶアレイアンテナとして構成される。これにより、異なる2方向における物標の位置、方位を検出可能になっている。
【0123】
本実施形態の受信アンテナ群Rxは、受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24の一部が、水平方向Uおよび垂直方向Vにおいて、送信アンテナ素子Tx11~Tx13、Tx21~Tx23と同じ間隔をあけて配置されている。このため、本実施形態の仮想アンテナは、一部のアンテナ素子Vxが仮想的に重なるアンテナ構成となる。
【0124】
仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子は、その一部が第1の送受信回路20に接続される受信アンテナ素子Rx11~Rx14によって構成されている。このため、仮想アンテナにおいて仮想的に重なるアンテナ素子それぞれで受信される信号のうち、物標に対応するものを比較することで補正対象回路の補正対象成分を補正することができる。
【0125】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態のレーダ装置1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0126】
また、本実施形態のレーダ装置1は、以下の特徴を備える。
【0127】
(1)本実施形態のレーダ装置1は、異なる2方向において、多数の仮想アンテナ素子が並ぶアレイアンテナとして構成されていることで、異なる2方向における物標の位置、方位を検出可能になっている。このようなレーダ装置1においても、第1実施形態と同様に、複数の送受信回路20、30の間で生ずる信号の位相差および振幅差の少なくとも一方を補正することができる。すなわち、仮想アンテナにおけるアンテナ素子の一部が仮想的に重なるようにアンテナ構成とし、仮想的に重なるアンテナ素子で受信される信号のうち、物標に対応するものを比較することで補正対象回路の補正対象成分を補正することができる。
【0128】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態のレーダ装置1は、送信アンテナ素子Tx11~Tx13、Tx21~Tx23および受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24が水平方向Uおよび垂直方向Vそれぞれに並んで配置されているが、これに限定されない。レーダ装置1は、送信アンテナ素子Tx11~Tx13、Tx21~Tx23および受信アンテナ素子Rx11~Rx14、Rx21~Rx24が水平方向Uおよび垂直方向Vとは異なる2方向に並んで配置されていてもよい。
【0129】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0130】
上述の実施形態では、レーダ装置1のアンテナ構成について具体的なものを例示したが、レーダ装置1のアンテナ構成は、上述したものに限定されず、上述したものとは異なるアンテナ構成になっていてもよい。上述のレーダ装置1では、送信アンテナ群Txを構成するアンテナ素子の数が、受信アンテナ群Rxを構成するアンテナ素子の数よりも少なくなっているが、これに限定されない。送信アンテナ群Txを構成するアンテナ素子の数は、受信アンテナ群Rxを構成するアンテナ素子の数よりも多くてもよいし、同数でもよい。
【0131】
上述の実施形態では、車両に搭載されて車両の周囲に存在する様々な物標を検出する物標検出装置に本開示のレーダ装置1を適用した例について説明したが、レーダ装置1の適用対象は、これに限定されない。レーダ装置1は、例えば、車両以外の移動体や据え置き型の機器にも適用することができる。
【0132】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0133】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0134】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0135】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1 レーダ装置
20 第1の送受信回路
30 第2の送受信回路
51 物標検出部
55 補正処理部
Tx 送信アンテナ群
Rx 受信アンテナ群
図1
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