特開 2025-6656 車両用ファーサイドエアバッグ装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025006656

(43)【公開日】2025-01-17

(54)【発明の名称】車両用ファーサイドエアバッグ装置

(51)【国際特許分類】

   B60R 21/2338 20110101AFI20250109BHJP

   B60R 21/207 20060101ALI20250109BHJP

【ＦＩ】

B60R21/2338

B60R21/207

【審査請求】未請求

【請求項の数】2

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023107579

(22)【出願日】2023-06-29

(71)【出願人】

【識別番号】000005348

【氏名又は名称】株式会社ＳＵＢＡＲＵ

(74)【代理人】

【識別番号】100122426

【弁理士】

【氏名又は名称】加藤 清志

(72)【発明者】

【氏名】大橋 道史

【テーマコード（参考）】

3D054

【Ｆターム（参考）】

3D054AA02

3D054AA03

3D054AA07

3D054AA23

3D054CC11

3D054DD14

3D054FF16

(57)【要約】

【課題】乗員に対する拘束性能を向上する。
【解決手段】車両用ファーサイドエアバッグ装置２０では、エアバッグ２２が、環状に膨張展開するエアバッグ本体２４を有し、エアバッグ本体２４は、運転席乗員Ｐ１側へ開放された凹状に膨張展開される上下一対の第１膨張部２４Ａと、一対の第１膨張部２４Ａの端部を連結する前後一対の第２膨張部２４Ｂと、を有している。また、第１拘束布２６によって、前後一対の第２膨張部２４Ｂを連結しており、エアバッグ本体２４によって囲まれた空間が第２拘束布２８により閉塞されている。すなわち、エアバッグ本体２４がエアバッグ２２の一部として構成され、エアバッグ２２を全体として筒状に膨張展開させることができる。これにより、エアバッグ２２におけるガスが供給される部分の容量を小さくできる。したがって、エアバッグ２２を早期に膨張展開させて、運転席乗員Ｐ１及び助手席乗員Ｐ２の頭部及び上体を拘束できる。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

乗員が着座する車両用シートのシートバックに設けられ、作動することでガスを発生するインフレータと、
前記シートバックに設けられ、前記インフレータからガスの供給を受けることで前記シートバックから車幅方向内側に膨張展開して前記乗員の車幅方向内側で且つセンタコンソールの車両上側に配置されるファーサイドエアバッグと、
を備え、
前記ファーサイドエアバッグは、
環状に膨張展開されると共に、平面視で前記乗員側へ開放された凹状に膨張展開される上下一対の第１膨張部と、車両上下方向に延在された状態に膨張展開され且つ上下一対の前記第１膨張部の端部を連結する前後一対の第２膨張部と、を有するエアバッグ本体と、
前後一対の前記第２膨張部を連結すると共に、前記ファーサイドエアバッグの膨張展開状態において前記乗員の頭部及び上体と車幅方向に対向する拘束面を有する第１布と、
外周部が前記エアバッグ本体に結合され、前記ファーサイドエアバッグの膨張展開状態において前記エアバッグ本体に囲まれる空間を閉塞する第２布と、
を含んで構成されている車両用ファーサイドエアバッグ装置。

【請求項2】

車両後側の前記第２膨張部の長手方向中間部には、前記ガスが供給されるガス供給部が設けられている請求項１に記載の車両用ファーサイドエアバッグ装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、車両用ファーサイドエアバッグ装置に関するものである。

【背景技術】

【0002】

下記特許文献１に記載の車両用乗員拘束システムでは、ファーサイドエアバッグの下部がサブバッグによって構成され、ファーサイドエアバッグの上部がメインバッグによって構成されている。車両用乗員拘束システムの作動時には、インフレータからのガスがサブバッグを経由してメインバッグに供給されて、ファーサイドエアバッグが膨張展開される。具体的には、サブバッグが、乗員の腰部とセンターコンソールボックスとの間に配置されると共に、センターコンソールボックスの上側に配置される。これにより、サブバッグがセンターコンソールボックスの上面によって下側から支持されて、ファーサイドエアバッグが保持される。したがって、側面衝突時に車幅方向中央側へ移動する乗員をファーサイドエアバッグによって拘束して、乗員を保護することができる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１４－１０８７４０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ここで、エアバッグ装置では、例えば、エアバッグの容量を小さくすることで、エアバッグが早期に膨張展開されるため、乗員に対する拘束性能を向上することができる。

【0005】

これに対して、上記車両用乗員拘束システムのファーサイドエアバッグは、上述のように、メインバッグ及びサブバッグによって構成されており、ファーサイドエアバッグが比較的大型化している。このため、上記車両用乗員拘束システムでは、ファーサイドエアバッグを早期に膨張展開させて、乗員に対する拘束性能を向上するという点において改善の余地がある。

【0006】

本発明は、上記事実を考慮して、乗員に対する拘束性能を向上することができる車両用ファーサイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明の１又はそれ以上の実施形態は、乗員が着座する車両用シートのシートバックに設けられ、作動することでガスを発生するインフレータと、前記シートバックに設けられ、前記インフレータからガスの供給を受けることで前記シートバックから車幅方向内側に膨張展開して前記乗員の車幅方向内側で且つセンタコンソールの車両上側に配置されるファーサイドエアバッグと、を備え、前記ファーサイドエアバッグは、環状に膨張展開されると共に、平面視で前記乗員側へ開放された凹状に膨張展開される上下一対の第１膨張部と、車両上下方向に延在された状態に膨張展開され且つ上下一対の前記第１膨張部の端部を連結する前後一対の第２膨張部と、を有するエアバッグ本体と、前後一対の前記第２膨張部を連結すると共に、前記ファーサイドエアバッグの膨張展開状態において前記乗員の頭部及び上体と車幅方向に対向する拘束面を有する第１布と、外周部が前記エアバッグ本体に結合され、前記ファーサイドエアバッグの膨張展開状態において前記エアバッグ本体に囲まれる空間を閉塞する第２布と、を含んで構成されている車両用ファーサイドエアバッグ装置である。

【発明の効果】

【0008】

本発明の１又はそれ以上の実施形態によれば、乗員に対する拘束性能を向上することができる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】本実施形態に係る車両用ファーサイドエアバッグ装置が適用された車両のキャビンの前部を示す車両上側から見た平面図であり、ファーサイドエアバッグが膨張展開された状態で示す図である。

【図2】図１に示される車両用ファーサイドエアバッグ装置の車両左側から見た側面図である。

【図3】図１に示される車両用ファーサイドエアバッグ装置の周辺を拡大して示す平面図である。

【図4】図３に示されるファーサイドエアバッグの車両左斜め後方から見た斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下、図面を用いて、本実施形態に係る車両用ファーサイドエアバッグ装置２０について説明する。なお、図面に適宜示される矢印ＦＲ、矢印ＵＰ、矢印ＬＨは、それぞれ車両用ファーサイドエアバッグ装置２０が適用された車両（自動車）Ｖの車両前側、車両上側、車両左側（車幅方向一方側）を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両上下方向、車両前後方向、車両左右方向を示すものとする。

【0011】

図１には、車両用ファーサイドエアバッグ装置２０が適用された車両ＶのキャビンＣＡの前部が模式的な平面図にて示されている。なお、図１では、車両用ファーサイドエアバッグ装置２０のファーサイドエアバッグ２２が膨張展開された状態で図示している。以下、先に、キャビンＣＡの内部の概略構成を説明し、その後に車両用ファーサイドエアバッグ装置２０について説明する。

【0012】

（キャビンＣＡの内部の概略構成について）
キャビンＣＡの前部における左側部には、車両用シートとしての運転席シート１０が設けられている。この運転席シート１０は、着座する乗員Ｐ１（以下、運転席乗員Ｐ１という）の尻部を支持するシートクッション１０Ａと、運転席乗員Ｐ１の背部を支持するシートバック１０Ｂと、を含んで構成されており、シートバック１０Ｂの下端部がシートクッション１０Ａの後端部に連結されている。

【0013】

キャビンＣＡの前部における右側部には、車両用シートとしての助手席シート１２が設けられている。助手席シート１２は、運転席シート１０と同様に、着座する乗員Ｐ２（以下、助手席乗員Ｐ２という）の尻部を支持するシートクッション１２Ａと、助手席乗員Ｐ２の背部を支えるシートバック１２Ｂと、を含んで構成されており、シートバック１２Ｂの下端部がシートクッション１２Ａの後端部に連結されている。

【0014】

キャビンＣＡの前部における車幅方向中央部には、運転席シート１０と助手席シート１２との間において、前後方向に延在されたセンタコンソール１４が設けられており、センタコンソール１４によって運転席シート１０と助手席シート１２との間が仕切られている。センタコンソール１４の前端部は、キャビンＣＡの前端部に設けられたインストルメントパネル１６に接続されている。

【0015】

（車両用ファーサイドエアバッグ装置２０について）
図１～図４に示されるように、車両用ファーサイドエアバッグ装置２０は、運転席シート１０におけるシートバック１０Ｂの車幅方向内側端部内に設けられている。車両用ファーサイドエアバッグ装置２０は、ファーサイドエアバッグ２２（以下、単にエアバッグ２２という）と、作動することでガスを発生してエアバッグ２２にガスを供給するインフレータ３０（ガス発生装置）と、インフレータ３０を作動させるためのエアバッグＥＣＵ３２と、を含んで構成されている。

【0016】

エアバッグ２２は、図示しないバッグケース内に折り畳み状態で収容されており、バッグケースは、シートバック１０Ｂの骨格部材であるシートバックフレーム（図示省略）等に固定されている。エアバッグ２２は、エアバッグ本体２４と、第１布としての第１拘束布２６と、第２布としての第２拘束布２８と、を含んで構成されている。

【0017】

エアバッグ本体２４は、１枚又は複数の基布を縫製することで略中空環状に形成されており、エアバッグ本体２４の内部が、インフレータ３０からのガスの供給を受ける気室として構成されている。そして、インフレータ３０からエアバッグ本体２４にガスが供給されると、エアバッグ本体２４が、シートバック１０Ｂから車幅方向中央側（内側）へ膨張展開して、運転席乗員Ｐ１と助手席乗員Ｐ２との間で且つセンタコンソール１４の上側に配置される設定になっている。すなわち、エアバッグ本体２４は、シートバック１０Ｂよりも前側に突出して、運転席シート１０と助手席シート１２との間に配置される。

【0018】

膨張展開状態のエアバッグ本体２４は、上下方向に延在されている。具体的には、エアバッグ本体２４は、エアバッグ本体２４の上端部及び下端部を構成する上下一対の第１膨張部２４Ａと、上下一対の第１膨張部２４Ａを連結する前後一対の第２膨張部２４Ｂと、を含んで構成されている。第１膨張部２４Ａは、平面視で運転席乗員Ｐ１側（車幅方向外側であり、左側）へ開放された凹状（略Ｕ字形状）に形成されている。第２膨張部２４Ｂは、上下方向に延在されて、上下の第１膨張部２４Ａの前端部同士及び後端部同士をそれぞれ連結している。つまり、エアバッグ２２の膨張展開状態では、エアバッグ本体２４が、矩形環状に膨張展開されると共に、平面視で左側へ開放された略Ｕ字形状に屈曲された形状に膨張展開される。そして、下側の第１膨張部２４Ａがセンタコンソール１４の上側に配置されて、エアバッグ本体２４（エアバッグ２２）がセンタコンソール１４によって下側から支持されるようになっている。

【0019】

後側の第２膨張部２４Ｂの上下方向中間部には、ガス供給部２４Ｃが設けられている。ガス供給部２４Ｃは、左右方向を軸方向とする略円筒状に形成されて、第２膨張部２４Ｂから車幅方向外側へ突出しており、エアバッグ本体２４内とガス供給部２４Ｃ内とが連通している。

【0020】

第１拘束布２６は、左右方向を厚み方向とする略矩形シート状に形成されている。第１拘束布２６の前端部が、エアバッグ本体２４における前側の第２膨張部２４Ｂに縫合され、第１拘束布２６の後端部がエアバッグ本体２４における後側の第２膨張部２４Ｂに縫合されて、第１拘束布２６によって前後一対の第２膨張部２４Ｂを連結している。すなわち、第１拘束布２６によって一対の第２膨張部２４Ｂの前後方向外側への変位が制限されている。また、エアバッグ２２の膨張展開状態では、第１拘束布２６が前後一対の第２膨張部２４Ｂによって前後方向外側へ引っ張られた状態になっており、第１拘束布２６がエアバッグ２２の左側端部を構成するようになっている。第１拘束布２６の左面は拘束面２６Ａとされており、拘束面２６Ａが運転席乗員Ｐ１の頭部及び上体と車幅方向に対向している（図２参照）。すなわち、車幅方向から見て、エアバッグ２２と運転席乗員Ｐ１及び助手席乗員Ｐ２の頭部及び上体が重なるように、エアバッグ２２の前後寸法及び上下寸法が設定されている。これにより、側面衝突時に車幅方向内側（中央側）へ移動する運転席乗員Ｐ１の頭部及び上体を第１拘束布２６によって受け止めて拘束するようになっている。なお、本実施の形態では、運転席乗員Ｐ１及び助手席乗員Ｐ２をＡＭ５０（米国人成人男性の５０パーセンタイル）のダミー人形としている。

【0021】

第２拘束布２８は、略矩形シート状に形成されて、第２拘束布２８の外周部がエアバッグ本体２４に縫合されて、エアバッグ本体２４によって囲まれた空間を第２拘束布２８で閉塞している。すなわち、エアバッグ２２の膨張展開状態では、第２拘束布２８が平面視で第１拘束布２６側へ開放されたＵ字形状に屈曲されて、エアバッグ２２が全体として上下方向を軸方向とする筒状に展開される。そして、側面衝突時に車幅方向内側（中央側）へ移動する助手席乗員Ｐ２の頭部及び上体をエアバッグ本体２４の第１膨張部２４Ａ及び第２拘束布２８によって受け止めて拘束するようになっている。

【0022】

インフレータ３０は、所謂シリンダタイプのガス発生装置である。インフレータ３０は、左右方向を軸方向とする略円柱状に形成され、シートバック１０Ｂのシートバックフレーム等に固定されている。インフレータ３０の右端部がエアバッグ本体２４のガス供給部２４Ｃ内に挿入されて、インフレータ３０がガス供給部２４Ｃに接続されている。インフレータ３０は、エアバッグＥＣＵ３２に電気的に接続されており、エアバッグＥＣＵ３２の制御によって、インフレータ３０が作動する。インフレータ３０の作動時には、インフレータ３０の右端部に形成されたガス噴出口から噴出されるガスが、エアバッグ本体２４内に供給され、エアバッグ２２が膨張展開されるようになっている。なお、エアバッグ２２の膨張展開時には、エアバッグ２２の膨張圧によってシートバック１０Ｂにおける表皮の車幅方向内側部分が開裂させて、エアバッグ２２が運転席乗員Ｐ１と助手席乗員Ｐ２との間で膨張展開される。

【0023】

また、エアバッグＥＣＵ３２には、車両Ｖの側面衝突を検出するための衝突センサ３４が電気的に接続されており、衝突センサ３４は検出信号をエアバッグＥＣＵ３２に出力する構成になっている。エアバッグＥＣＵ３２は、衝突センサ３４からの情報に基づいて、車両Ｖに対する側面衝突を検知又は予測すると、インフレータ３０を作動させる設定になっている。

【0024】

（作用効果）
次に、本実施の形態の作用及び効果を説明する。

【0025】

上記のように構成された車両用ファーサイドエアバッグ装置２０では、エアバッグＥＣＵ３２が、衝突センサ３４からの信号に基づいて車両Ｖの側面衝突を検知又は予測すると、インフレータ３０を作動させる。これにより、インフレータ３０から噴出したガスが、エアバッグ２２のエアバッグ本体２４内に供給され、エアバッグ２２が、シートバック１０Ｂの表皮を開裂して、シートバック１０Ｂの車幅方向内側に膨張展開される。具体的には、エアバッグ２２が、全体として上下方向を軸方向とする筒状に展開されて、センタコンソール１４の上側で且つ運転席乗員Ｐ１と助手席乗員Ｐ２との間に配置される。より詳しくは、エアバッグ本体２４における下側の第１膨張部２４Ａがセンタコンソール１４の上側に配置される。また、エアバッグ２２における第１拘束布２６が、運転席乗員Ｐ１の車幅方向内側において展開されて、第１拘束布２６の拘束面２６Ａと運転席乗員Ｐ１の頭部及び上体とが車幅方向に対向して配置される。また、エアバッグ２２における第２拘束布２８が、エアバッグ本体２４によって囲まれた空間内を閉塞するように展開される。

【0026】

そして、側面衝突時に運転席乗員Ｐ１が車幅方向内側へ移動するときには、運転席乗員Ｐ１の頭部及び上体が第１拘束布２６の拘束面２６Ａに当接して、第１拘束布２６による運転席乗員Ｐ１の頭部及び上体への拘束が開始される。運転席乗員Ｐ１が車幅方向内側へさらに移動すると、平面視で第１拘束布２６が車幅方向外側（運転席シート１０側）へ開放された凹状に湾曲しつつ、エアバッグ本体２４の第２膨張部２４Ｂが互いに接近するようにエアバッグ本体２４が変形する。すなわち、第１拘束布２６が運転席乗員Ｐ１の頭部及び上体を前後方向両側から包み込むように拘束する。また、このときには、センタコンソール１４から下側の第１膨張部２４Ａに上側への反力が作用して、センタコンソール１４によってエアバッグ２２が下側から支持されると共に、エアバッグ本体２４の変形により、エアバッグ本体２４の内圧が上昇する。したがって、エアバッグ２２によって、車幅方向内側へ移動する運転席乗員Ｐ１を良好に拘束しつつ、運転席乗員Ｐ１の衝突エネルギを吸収することができる。

【0027】

一方、側面衝突時に助手席乗員Ｐ２が車幅方向内側へ移動するときには、助手席乗員Ｐ２の頭部及び上体がエアバッグ２２における上側の第１膨張部２４Ａ及び第２拘束布２８に当接して、エアバッグ２２による助手席乗員Ｐ２の頭部及び上体への拘束が開始される。助手席乗員Ｐ２が車幅方向内側へさらに移動すると、第１膨張部２４Ａ及び第２拘束布２８が窪むように変形する。すなわち、第１膨張部２４Ａ及び第２拘束布２８によって助手席乗員Ｐ２の頭部及び上体を包み込むように拘束する。また、このときには、上述と同様に、センタコンソール１４から下側の第１膨張部２４Ａに上側への反力が作用して、センタコンソール１４によってエアバッグ２２が支持されると共に、エアバッグ本体２４の変形により、エアバッグ本体２４の内圧が上昇する。したがって、エアバッグ２２によって、車幅方向内側へ移動する助手席乗員Ｐ２を良好に拘束しつつ、助手席乗員Ｐ２の衝突エネルギを吸収することができる。

【0028】

ここで、車両用ファーサイドエアバッグ装置２０では、エアバッグ２２が、環状に膨張展開するエアバッグ本体２４を有している。エアバッグ本体２４は、運転席乗員Ｐ１側へ開放された凹状に膨張展開される上下一対の第１膨張部２４Ａと、上下方向に延在され且つ上下一対の第１膨張部２４Ａの端部を連結する前後一対の第２膨張部２４Ｂと、を有している。また、エアバッグ２２では、第１拘束布２６によって、前後一対の第２膨張部２４Ｂを連結しており、第１拘束布２６は運転席乗員Ｐ１の頭部及び上体と車幅方向に対向する拘束面２６Ａを有している。さらに、エアバッグ本体２４には、第２拘束布２８が結合されて、エアバッグ本体２４によって囲まれた空間が第２拘束布２８により閉塞されている。すなわち、エアバッグ２２の一部をエアバッグ本体２４として構成して、エアバッグ本体２４にガスを供給することで、エアバッグ２２を全体として上下方向を軸方向とする筒状に膨張展開させることができる。換言すると、エアバッグ２２では、エアバッグ本体２４がエアバッグ２２の骨格を成すように構成されている。これにより、仮に、エアバッグを上下方向に延在する中空円柱状に構成する場合と比べて、エアバッグ２２（エアバッグ本体２４）におけるガスを供給する部分の容量を大幅に小さくすることができる。その結果、エアバッグ２２を早期に膨張展開させて、側面衝突時において運転席乗員Ｐ１及び助手席乗員Ｐ２の頭部及び上体を拘束することができる。したがって、運転席乗員Ｐ１及び助手席乗員Ｐ２に対する拘束性能を向上することができる。

【0029】

また、上述のように、エアバッグ２２は、センタコンソール１４の上側に配置されて、運転席シート１０と助手席シート１２との間に配置される。このため、運転席乗員Ｐ１のみが車両Ｖに搭乗する場合、又は、運転席乗員Ｐ１及び助手席乗員Ｐ２が車両Ｖに搭乗する場合、の２つの搭乗態様に対して、側面衝突時における乗員保護を１つのエアバッグ２２によって実現することができる。

【0030】

また、上述のように、車両用ファーサイドエアバッグ装置２０の作動時には、エアバッグ２２が全体として上下方向を軸方向とする筒状に膨張展開されると共に、エアバッグ本体２４の下端部を構成する第１膨張部２４Ａが車幅方向外側へ開放された凹形状（Ｕ字形状）に膨張展開される。したがって、エアバッグ本体２４の容量を小さくしても、第１膨張部２４Ａによってセンタコンソール１４からの反力を良好に受けて、エアバッグ２２の膨張展開状態を良好に保持することができる。

【0031】

また、上述のように、エアバッグ２２が、環状に膨張展開されるエアバッグ本体２４と、第１拘束布２６と、第２拘束布２８と、によって構成されているため、折り畳み状態のエアバッグ２２の体格の小型化に寄与することができる。これにより、搭載スペースの狭いシートバック１０Ｂに車両用ファーサイドエアバッグ装置２０を良好に搭載して、エアバッグ２２をセンタコンソール１４の上側に膨張展開させることができる。

【0032】

また、ガス供給部２４Ｃが、エアバッグ本体２４における後側の第２膨張部２４Ｂの上下方向中間部に設けられており、インフレータ３０からのガスがガス供給部２４Ｃからエアバッグ本体２４内に供給される。これにより、上下一対の第１膨張部２４Ａの膨張展開タイミングを合わせつつ、エアバッグ２２の全体を良好に膨張展開させることができる。

【0033】

なお、本実施の形態では、エアバッグ本体２４における第１膨張部２４Ａ及び第２膨張部２４Ｂの断面積等については特に規定していないが、第１膨張部２４Ａ及び第２膨張部２４Ｂの断面積をエアバッグ２２の支持状態等に合わせて適宜変更してもよい。例えば、下側の第１膨張部２４Ａの断面積を上側の第１膨張部２４Ａの断面積と比べて大きく設定してもよい。これにより、下側の第１膨張部２４Ａの容量が上側の第１膨張部２４Ａの容量と比べて大きくなるため、センタコンソール１４によるエアバッグ本体２４の支持性能を向上することができる。

【0034】

また、本実施の形態では、ガス供給部２４Ｃが第２膨張部２４Ｂの上下方向中間部に位置しているが、ガス供給部２４Ｃの上下位置をエアバッグ２２の膨張展開タイミング等に合わせて適宜変更してもよい。例えば、ガス供給部２４Ｃを第２膨張部２４Ｂの下端側に配置して、下側の第１膨張部２４Ａを早期に膨張展開させるように構成してもよい。これにより、センタコンソール１４に支持されるエアバッグ本体２４の支持性能を向上することができる。

【0035】

また、本実施の形態では、エアバッグ２２において第１拘束布２６と第２拘束布２８とが別々の布によって構成されているが、第１拘束布２６及び第２拘束布２８を１枚の布で構成して、エアバッグ本体２４に結合してもよい。

【0036】

また、本実施の形態では、車両用ファーサイドエアバッグ装置２０が運転席シート１０のシートバック１０Ｂに設けられているが、車両用ファーサイドエアバッグ装置２０を助手席シート１２のシートバック１２Ｂに設けてもよい。この場合には、側面衝突時に車幅方向内側へ移動する助手席乗員Ｐ２を第１拘束布２６によって拘束し、側面衝突時に車幅方向内側へ移動する運転席乗員Ｐ１をエアバッグ本体２４及び第２拘束布２８によって拘束することができる。

【符号の説明】

【0037】

１０ 運転席シート（車両用シート）
１０Ｂ シートバック
１２ 助手席シート（車両用シート）
１２Ｂ シートバック
１４ センタコンソール
２０ 車両用ファーサイドエアバッグ装置
２２ ファーサイドエアバッグ
２４Ａ 第１膨張部
２４Ｂ 第２膨張部
２４Ｃ ガス供給部
２６ 第１拘束布（第１布）
２６Ａ 拘束面
２８ 第２拘束布（第２布）
３０ インフレータ
Ｐ１ 乗員
Ｐ２ 乗員

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】