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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006682
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/063 20060101AFI20250109BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20250109BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20250109BHJP
   B62D 21/18 20060101ALI20250109BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20250109BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20250109BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60K15/063 B
B60K1/04 Z
B62D21/00 A
B62D21/18 C
B62D25/06 A
B62D25/20 A
B60K8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107639
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 貴大
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D038CA14
3D038CB06
3D038CB09
3D038CC14
3D038CC20
3D038CD09
3D203AA22
3D203AA23
3D203AA26
3D203AA34
3D203BA03
3D203BA14
3D203BA16
3D203BB32
3D203CA03
3D203CA07
3D203CB29
3D203DA05
3D203DA26
3D203DB05
3D203DB07
3D203DB09
3D203DB11
3D235AA12
3D235AA14
3D235AA19
3D235BB02
3D235BB03
3D235BB10
3D235BB22
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC14
3D235CC23
3D235CC24
3D235CC29
3D235DD12
3D235DD16
3D235DD32
3D235FF05
3D235FF13
3D235FF25
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH12
3D235HH42
3D235HH44
(57)【要約】
【課題】燃料電池モジュールを備えた作業車両において、タンクケースによって水素タンクを的確に保護する。
【解決手段】作業車両10は、車体11と、車体11に搭載されたモータ31及び燃料電池24と、車体11に搭載された運転席15と、運転席15の周囲に配置されたキャビン16と、燃料電池24に水素を供給する配管22及びタンク13と、キャビン16の上方に配置され、タンク13を収容するタンクケース211と、を備え、タンクケース211は、タンク13を下方より覆う下板221、側方より覆う前側板222、後側板223、左側板224及び右側板225、及び上方より覆う上板226を含み、下板221に開口される第1の通気口215を有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に搭載される運転席、電動モータ及び燃料電池モジュールと、
前記運転席の周囲に配置されるキャビンと、
前記燃料電池モジュールに水素を供給する水素配管及び水素タンクと、
前記キャビンの上方に配置され、前記水素タンクを収容するタンクケースと、
を備え、
前記タンクケースは、
前記水素タンクを下方より覆う下板、側方より覆う側板、及び上方より覆う上板を含み、
前記下板に開口される第1の通気口を有する、作業車両。
【請求項2】
前記タンクケースは、
前記側板の上部に開口される第2の通気口をさらに有する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
水素センサをさらに備え、
前記水素センサは、前記タンクケースの内部の前記第2の通気口に隣接する位置に配置される、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記上板は、前記下板に対して傾斜を有して配置され、
前記上板の前記下板から最も離間した位置に隣接する前記側板の上部において前記第2の通気口が開口される、請求項2又は請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記タンクケースは、
2つの対面する前記側板において、前記第2の通気口をそれぞれ有する、請求項2又は請求項3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータとバッテリとを備えた作業車両が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された作業車両は、ボンネットの内部にバッテリが配置されている。特許文献1に開示された作業車両は、トラクタである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-060655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、水素を燃料として発電する燃料電池モジュールを用いて、電力によって電動モータを駆動して走行する作業車両が検討されている。このような作業車両は、水素を貯留する水素タンクが搭載される。従来、このような水素タンクを外部からの衝撃や温度の上昇等から的確に保護することができるタンクケースの開発が望まれている。
【0005】
本開示は、燃料電池モジュールを備えた作業車両において、タンクケースによって水素タンクを的確に保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の作業車両は、車体と、前記車体に搭載される運転席、電動モータ及び燃料電池モジュールと、前記運転席の周囲に配置されるキャビンと、前記燃料電池モジュールに水素を供給する水素配管及び水素タンクと、前記キャビンの上方に配置され、前記水素タンクを収容するタンクケースと、を備え、前記タンクケースは、前記水素タンクを下方より覆う下板、側方より覆う側板、及び上方より覆う上板を含み、前記下板に開口される第1の通気口を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、燃料電池モジュールを備えた作業車両において、タンクケースによって水素タンクを的確に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の作業車両の実施の一形態を示す斜視図である。
図2図2は、本開示の作業車両の実施の一形態を示す正面図である。
図3図3は、本開示の作業車両の実施の一形態を示す背面図である。
図4図4は、本開示の作業車両の実施の一形態を示す右側面図である。
図5図5は、本開示の作業車両の実施の一形態を示す左側面図である。
図6図6は、本開示の作業車両の実施の一形態を示す平面図である。
図7図7は、本開示の作業車両の実施の一形態を示す底面図である。
図8図8は、本開示の作業車両の一部を分解して示す斜視図である。
図9図9は、一部を外した状態の作業車両の左側面図である。
図10図10は、タンクケースの斜視図である。
図11図11は、作業車両におけるタンクケースの設置状況の説明図である。
図12図12は、タンク及びタンクケースの断面模式図である。
図13図13は、開閉扉を開けた状態のタンクケース及び内部のタンクを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本開示の作業車両は、車体と、前記車体に搭載される運転席、電動モータ及び燃料電池モジュールと、前記運転席の周囲に配置されるキャビンと、前記燃料電池モジュールに水素を供給する水素配管及び水素タンクと、前記キャビンの上方に配置され、前記水素タンクを収容するタンクケースと、を備え、前記タンクケースは、前記水素タンクを下方より覆う下板、側方より覆う側板、及び上方より覆う上板を含み、前記下板に開口される第1の通気口を有する。
【0010】
前記構成の作業車両によれば、外部からの衝撃や温度の上昇等から水素タンクを的確に保護することができる。これにより、燃料電池モジュールを備えた作業車両において、タンクケースによって水素タンクを的確に保護することができる。
【0011】
(2)前記(1)の形態に係る作業車両において、前記タンクケースは、前記側板の上部に開口される第2の通気口をさらに有すると好ましい。このような構成の作業車両によれば、タンクケースの内部の温度上昇を確実に抑制することができる。これにより、水素タンクを的確に保護することができる。水素タンクのメンテナンス性を確保しつつ、水素タンクを的確に保護することができる。
【0012】
(3)前記(2)の形態に係る作業車両は、水素センサをさらに備え、前記水素センサは、前記タンクケースの内部の前記第2の通気口に隣接する位置に配置されると好ましい。このような構成の作業車両によれば、水素センサによって、タンクケース内で生じた水素の漏えいを確実に検知することができる。これにより、水素タンクを的確に保護することができる。
【0013】
(4)前記(2)又は(3)の形態に係る作業車両において、前記上板は、前記下板に対して傾斜を有して配置され、前記上板の前記下板から最も離間した位置に隣接する前記側板の上部において前記第2の通気口が開口されると好ましい。このような構成の作業車両によれば、タンクケース内で漏洩した水素を確実にタンクケースの外部に放出させることができる。これにより、水素タンクを的確に保護することができる。
【0014】
(5)前記(2)~(4)の何れかの形態に係る作業車両において、前記タンクケースは、2つの対面する前記側板において、前記第2の通気口をそれぞれ有すると好ましい。このような構成の作業車両によれば、第1の通気口からタンクケース内に入った空気が自然対流によって第2の通気口から排気され、タンクケース内を自然に換気することができる。そして、タンクケース内で漏えいした水素をタンクケースの外部へ確実に排気することができる。これにより、水素タンクを的確に保護することができる。
【0015】
<本開示の発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0016】
〔作業車両の全体構成〕
図1は、本開示の作業車両の実施の一形態を示す斜視図である。図2から図7は、図1に示す作業車両の正面図、背面図、側面図(左側面図)、側面図(右側面図)、平面図、及び底面図である。
本実施形態の作業車両10は、農作業に用いることが可能である車両であり、図1に示す作業車両10は、トラクタである。作業車両は、トラクタに限定されない。例えば、本発明に係る作業車両は、トラクタ以外の農業機械、建設機械、ユーティリティビーグルビークル等であってもよい。
【0017】
本開示の作業車両10の方向について定義する。作業車両10が前進する方向を前、作業車両10が後退する方向を後ろ、前方を向いて左側を左、前方を向いて右側を右と定義する。前後方向に直交する左右方向を車幅方向と定義する。前後方向及び車幅方向(左右方向)の双方に直交する方向を上下方向と定義する。上下方向は、高さ方向とも呼ばれる。
各図において、直交三次元座標系が示されていて、前の方向を、矢印X1で示し、後ろの方向を、矢印X2で示す。左の方向を、矢印Y1で示し、右の方向を、矢印Y2で示す。上の方向を、矢印Z1で示し、下の方向を、矢印Z2で示す。
【0018】
図1に示す作業車両10は、車体11、車体11を走行可能に支持する走行装置12、運転席15、キャビン16、燃料を貯蔵するタンク13を有するタンクユニット21、及び、タンク13に貯蔵された燃料により駆動する駆動装置14を有する。前記燃料は水素であり、タンク13は、水素ガスを貯蔵する水素タンクである。本実施形態の作業車両10は、燃料電池車両(FCV;Fuel Cell Vehicle)であり、水素と酸素とを用いて燃料電池(燃料電池モジュール)24が発生する電力を用いて走行する。
【0019】
作業車両10は、駆動装置14として、燃料電池24、電池ユニット30、及び電動のモータ31とを有する。電池ユニット30は、燃料電池24が発生する電力を蓄積する電池300を有し、蓄電した電力を、モータ31に供給する。作業車両10は、水素ガス用の配管(水素配管)22、及び充填部25(図3参照)を有する。充填部25は、作業車両10と別である水素ガス供給機(図示せず)の充填ノズルを接続する充填口(レセプタクル)26を有する。水素ガスは、充填口26から供給され、配管22(後ろ配管22r)を通じて、タンク13に供給される。タンク13の水素ガスは、配管22(前配管22f)を通じて、燃料電池24に供給される。充填部25、及び配管22の具体的構成については、後に説明する。
【0020】
作業車両10は(図1参照)、搭載フレーム17、及び支持構造部37を有する。搭載フレーム17は、車体11にタンクユニット21(タンク13)を搭載するためのフレームである。支持構造部37は、電池ユニット30を車体11に支持させるための部品である。作業車両10は(図7参照)、排出経路35を有する。排出経路35は、燃料電池24の動作により発生した水又は水蒸気を外部に排出する。搭載フレーム17、支持構造部37、及び排出経路35の具体的構成については、後に説明する。
【0021】
〔車体11〕
車体11は、シャーシ41、ボンネット34、カバー111、後輪122を上から覆うフェンダ47を有する。
シャーシ41は、走行装置12、駆動装置14、及びキャビン16を支持する。図8は、図1に示す作業車両10の一部を分解して示す斜視図である。シャーシ41は、車幅方向の中央に位置し、車両前後方向に長い形状を有する。シャーシ41は、シャーシ41の前部を構成する前フレーム32と、シャーシ41の後部を構成するギアケース33とを有する。前フレーム32は、金属製のフレーム材などを組み合わせて構成される。ギアケース33は、金属製の箱体を有して構成される。ギアケース33は、前フレーム32の後部と結合されていて、ギアケース33と前フレーム32とにより車体11の骨格が形成される。
【0022】
前フレーム32は、モータ31を搭載する。ギアケース33は、内部にトランスミッション、クラッチ、デファレンシャルギヤ等の動力伝達機構333を有する。動力伝達機構333は、モータ31の出力軸の回転を、減速又は増速し、走行装置12(前輪121及び後輪122の一方又は双方)に出力する。
【0023】
動力伝達機構333は、モータ31の動力の一部を、PTO軸334(図3参照)に出力する。PTO軸334は、ギアケース33の後部に設けられている出力軸である。作業車両10は、車体11の後ろに別機器を連結するための連結装置43を有する。PTO軸334は、連結装置43に連結された前記別機器にモータ31の動力を伝達する。前記別機器は、作業装置(図示せず)であり、インプルメントとも呼ばれる。作業装置は、モータ31の動力によって動作する。作業装置は、例えば、耕運機等である。
【0024】
図9は、作業車両10の左側面図であるが、ボンネット34、カバー111、タンクユニット21が有するタンクケース211の一部を外した状態を示す。車両前方から順に、第一ラジエータ48、燃料電池24、及び第二ラジエータ49が、この順で並んで、シャーシ41に搭載される。
図4及び図9に示すように、ボンネット34、及びカバー111は、車体11の前寄りに位置する搭載品を覆う。ボンネット34は、燃料電池24及び第一ラジエータ48を、上から及び車幅方向の両側から覆う。カバー111は、燃料電池24の後ろに位置する第二ラジエータ49を、上から及び車幅方向の両側から覆う。
【0025】
第一ラジエータ48の上面48aは、燃料電池24の上面24aよりも低い。燃料電池24の上面24aは、第二ラジエータ49の上面49aよりも低い。
カバー111の上面111aは、ボンネット34の上面34aよりも高いが、運転席15に座る作業者が操舵のために操作するステアリング151の上端よりも低い。ボンネット34の上面34aは、前に向かうにしたがって低くなる。このため、運転席15に座る作業者にとって、視界が妨げられ難い。
【0026】
〔運転席15及びキャビン16〕
運転席15及びキャビン16は、シャーシ41の上であって後ろ寄りの位置に設けられている(図1参照)。キャビン16は、運転席15を内部に有する。
キャビン16は、運転席15よりも前方に位置する前柱162と、運転席15よりも後ろに位置する後ろ柱163と、運転席15よりも上に位置するルーフ164とを有する。前柱162は、運転席15の左前方及び右前方に設けられている。後ろ柱163は、運転席15の左後方及び右後方に設けられている。ルーフ164は、前柱162及び後ろ柱163によって支持される。
【0027】
キャビン16は、運転席15の前に位置するフロントガラス165を有する。フロントガラス165は、左右の前柱162の間に設けられている。キャビン16は、車幅方向両側に、開閉可能なドア166を有する。ドア166は、前柱162と後ろ柱163との間に設けられている。
【0028】
キャビン16の車体幅方向の一方側(左側)に、ステップ167が設けられている(図5参照)。ステップ167は、キャビン16に乗降する作業者が足を掛ける部材である。
キャビン16の前に、カバー111及びボンネット34が設けられる。図2及び図6に示すように、カバー111及びボンネット34それぞれの車幅方向の寸法は、キャビン16の車幅方向の寸法よりも小さい。ボンネット34の車幅方向の寸法は、カバー111の車幅方向の寸法よりも小さい。
【0029】
本実施形態の作業車両10は、キャビン16を有するが、キャビン16を有していなくてもよい。作業車両10は、キャビン16の代わりに、キャノピやロプスを有していてもよい。作業車両10がキャビン16を有さない場合、タンクユニット21は、搭載フレーム17に支持されて運転席15の上方に位置する。
【0030】
〔走行装置12〕
走行装置12は、前輪121と後輪122とを有する(図6参照)。前輪121は、車体11の前部の左右に設けられている。後輪122は、車体11の後部の左右に設けられている。左右の後輪122の車幅方向の最大寸法は、左右の前輪121の車幅方向の最大寸法よりも大きい。左右の後輪122の車幅方向の最大寸法が、作業車両10の最大車幅寸法となる。
前輪121及び後輪122のうちの一方又は双方が、モータ31の動力によって回転する。モータ31の動力により回転する前輪121及び後輪122のうちの一方又は双方(駆動輪)は、クローラ(無限軌道)であってもよい。
【0031】
〔駆動装置14〕
前記のとおり、駆動装置14は、燃料電池24、電池ユニット30、及びモータ31を有して構成される。
燃料電池24は、車体11の前寄りにおいて、シャーシ41の上に位置する(図9参照)。モータ31は、燃料電池24の後ろに位置する(図8参照)。電池ユニット30は、車体11の車幅方向の外側寄りに位置する(図1参照)。電池ユニット30は、支持構造部37によって、シャーシ41に取り付けられる。
【0032】
燃料電池24は、水素ガスにより発電し、モータ31を回転させるための電力を得る。燃料電池24は(図9参照)、略矩形箱状の電池ケーシング241と、電池ケーシング241の内部に設けられている燃料電池スタック242とを有する。燃料電池スタック242は、複数の電池セルを有する。電池セルは、正極の電極と負極の電極とを有する。複数の単セルが積層状態にある。電池セルそれぞれで発電した電力は、集約され、電池ユニット30に出力される。
【0033】
モータ31は、回転するロータと、複数のコイルを有するステータとを有する。モータ31の出力軸は、ギアケース33内の動力伝達機構333に連結される(図8参照)。モータ31は、燃料電池24の後ろで、かつ、第二ラジエータ49の下に位置する。
【0034】
〔タンクユニット21〕
タンクユニット21は(図9照)、タンク13と、タンク13を収容するタンクケース211とを有する。タンク13は、略円筒状の高圧容器である。タンク13は、炭素繊維又はガラス繊維により強化された繊維強化樹脂等によって構成される。本実施形態の場合、3つのタンク13が、その円筒部の軸方向を車幅方向に平行として、タンクケース211に固定されている。タンク13の数は、3つに限定されない。
【0035】
タンクケース211は、単数又は複数のタンク13を収容可能な箱体である。タンクケース211は、収容するタンク13の全体を覆う箱形状を有する。タンクケース211は、開閉扉213(図1参照)を車幅方向の一方又は両方に有し、車幅方向で開口する。タンクケース211は、ルーフ164の上方において、ルーフ164と上下方向に間隔をあけて設置される。タンクケース211は、搭載フレーム17が有する上フレーム部171に固定される。タンクケース211は、アルミ又は鋼等の金属製であり、外部からの熱的及び物理的な影響に対して、タンク13を保護する。
【0036】
タンク13は、キャビン16(運転席15)の上方に配置される。このため、車体11における、燃料電池24、充填部25、モータ31、電池ユニット30の配置の自由度が高い。従来の内燃機関による作業車両を、本実施形態のような燃料電池24及びモータ31を有する作業車両10に改造する場合、各機器の配置構成を大幅に変更する必要がない。
【0037】
タンク13は、バルブユニット212(図9参照)を介して後ろ配管22r及び前配管22fに連結される。後ろ配管22rは(図3参照)、水素ガスの充填口26とバルブユニット212とを繋ぐガス導入管路であり、充填口26に導入される水素ガスをタンク13へ導く。前配管22fは(図2参照)、燃料電池24とバルブユニット212とを繋ぐガス導出管路であり、タンク13内に貯蔵された水素ガスを燃料電池24へ導く。タンク13は、車両外部から充填口26に導入される水素ガスを貯蔵し、燃料電池24に供給する。バルブユニット212は、開閉弁や減圧弁等を有しており、タンク13に貯蔵された水素ガスを所定の流量に調整し、前配管22fを通じて燃料電池24に導出する。
【0038】
〔搭載フレーム17〕
搭載フレーム17は(図1参照)、車体11にタンク13を搭載するためのフレーム構造体である。本実施形態の搭載フレーム17は、タンク13を支持する上フレーム部171と、上フレーム部171を支持するためのフレームとして、第一前フレーム部172、第二前フレーム部175、及び後ろフレーム部173を有する。上フレーム部171に、タンクケース211が取り付けられている。つまり、上フレーム部171は、タンクケース211を介してタンク13を支持する。搭載フレーム17の具体的構成については、後に説明する。
【0039】
後ろフレーム部173に、充填部25が設けられている(図3参照)。充填部25は、タンク13に水素ガスを充填する際に、車両外部に設置された水素ガス供給機(図示せず)のガス充填ノズルを接続するガス充填口26を有する。
【0040】
〔ラジエータ〕
作業車両10は(図4及び図5参照)、燃料電池24、モータ31、昇圧回路80、インバータ81、及びDC/DCコンバータ82,83等を冷却液により冷却させる冷却システムを有する。前記冷却システムの一部として、作業車両10は、第一ラジエータ48と、第二ラジエータ49とを有する。図9に示すように、第一ラジエータ48は、燃料電池24の前に位置し、第二ラジエータ49は、燃料電池24の後ろに位置する。
【0041】
第一ラジエータ48は、燃料電池24以外の機器を冷却するためのラジエータである。第二ラジエータ49は、燃料電池24を冷却するためのラジエータである。
第一ラジエータ48は、循環ポンプを有する第一冷却流路(図示せず)を介して、モータ31、昇圧回路80、インバータ81、及びDC/DCコンバータ82,83の冷却を要する電装品(発熱部品)に接続される。第一ラジエータ48は、前記第一冷却流路を通じて供給される冷却液を、外部空気との熱交換により冷却する。
第二ラジエータ49は、循環ポンプを有する第二冷却流路(図示せず)を介して、燃料電池24に接続される。第二ラジエータ49は、前記第二冷却流路を通じて供給される冷却液を、外部空気との熱交換により冷却する。
【0042】
第一ラジエータ48は、第一ファン481を有する。第二ラジエータ49は、第二ファン491を有する。第一ファン481及び第二ファン491は、回転することによって、第一ラジエータ48及び第二ラジエータ49に空気を通過させ、冷却液との熱交換を促進する。
【0043】
〔電池ユニット30〕
電池ユニット30は、モータ31に供給する電力を蓄積する。電池ユニット30は(図9参照)、電池(バッテリパック)300と、電池300を収容する筐体307とを有する。電池300は、燃料電池24が発生する電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力をモータ31等の電機品に出力する。電池300は、複数の電池セルにより構成される。電池300は、リチウムイオン電池又は鉛蓄電池等の充放電型の二次電池である。
【0044】
〔電気系統〕
作業車両10は、ジャンクションボックス75を有する。ジャンクションボックス75は、電池ユニット30から出力される電力の中継接続、及び分配を行うための電機接続箱である。
燃料電池24は、昇圧回路を介してインバータ81(図5参照)に接続される。電池ユニット30は、ジャンクションボックス75を通じて、インバータ81に接続される。インバータ81は、モータ31と電気的に接続される。インバータ81は、昇圧回路から出力される直流電力を三相交流電力に変換してモータ31に出力する。
【0045】
作業車両10は、モータ31よりも低電圧で作動する弱電の電装品を有する。その弱電の電装品に対して、ジャンクションボックス75を通じて、降圧回路により降圧された電力が供給される。本実施形態の作業車両10は、上記弱電の電装品として、電池ユニット30、ラジエータ48,49、及び空調装置74である。作業車両10は、前記降圧回路として、第一DC/DCコンバータ82、及び第二DC/DCコンバータ83を有する。
【0046】
[タンクケースについて]
図10は、タンクケースを示す斜視模式図である。図11は、作業車両におけるタンクケースの設置状況の説明図である。図12は、タンク及びタンクケースの断面模式図である。図10及び図11に示すように、本開示の作業車両10は、タンクケース211を備える。タンクケース211は、略直方体状の箱体であり、下板221、前側板222、後側板223、左側板224、右側板225、及び、上板226を有する。上板226は、前上板226a及び後上板226bを含んでいる。前上板226aは、前方側(X1側)に向かって先下がりとなる傾斜を有する。後上板226bは、後方側(X2側)に向かって先下がりとなる傾斜を有する。タンクケース211は、前上板226aと後上板226bとの接続位置226cにおいて、高さが最も高くなっている。このため、タンクケース211は、内部で水素の漏えいがあった場合、その水素は自然と接続位置226cの下部に集められる。
【0047】
図10図12に示すように、タンクケース211は、下板221において、第1の通気口215が形成されている。第1の通気口215は、下向きに開口されているため、タンクケース211に雨がかかった場合であっても、第1の通気口215からタンクケース211内に雨が浸入する可能性が低い。第1の通気口215は、虫等の侵入を抑制するカバー235が設けられる。本開示のタンクケース211は、下板221の前端部に第1の通気口215が形成されているが、第1の通気口215の形成位置はこれに限定されず、例えば、下板221の後端部であってもよく、下板221の前端部と後端部の両方に形成されていてもよい。
【0048】
タンクケース211において、前上板226aにかかった雨は、自然と前方に流れ落ち、後上板226bにかかった雨は、自然と後方に流れ落ちる。このため、タンクケース211は、上板226の上に雨が溜まりにくい。なお、本開示の作業車両10は、タンクケース211の上板226の傾斜が前後方向について設けられているが、上板226の傾斜方向は左右方向であってもよい。
【0049】
タンクケース211は、左側板224及び右側板225の上部において、第2の通気口216が形成されている。左側板224及び右側板225は、接続位置226cと接する位置において、高さ方向の寸法が最も大きくなっている。
【0050】
タンクケース211は、タンクケース211内に収容されたタンク13を基準とした場合、タンク13の下方に下板221が配置され、前方に前板222が配置され、後方に後板223が配置され、左側方に左側板224が配置され、右側方に右側板225が配置され、上方に上板226が配置される。
【0051】
タンクケース211において、第1の通気口215は、タンクケース211内に収容されたタンク13よりさらに下方の位置で、下板221に開口される。なお、本実施形態のタンクケース211において、第1の通気口215は、最も前側に配置されたタンク13よりさらに前側において、左側板224寄りと、右側板225寄りの合計2箇所に形成されている。
【0052】
タンクケース211において、第2の通気口216は、タンクケース211内に収容されたタンク13よりさらに高い位置で、左側板224及び右側板225に開口されている。第2の通気口216は、左側板224及び右側板225の上部における接続位置226cに隣接する位置に開口されている。第2の通気口216は、虫等の侵入を抑制する網付きのカバー236が設けられる。なお、タンクケース211は、下板221の前側において、前配管22f、及び、燃料電池24につながる配線を通すための複数の貫通孔214をさらに備える。タンクケース211は、後側板223の右側下部において、後ろ配管22rを通すための貫通孔219をさらに備える。
【0053】
このような構成のタンクケース211において、空気は、第1の通気口215から流入され、タンク13に触れたあと自然対流によってタンクケース211内を上昇し、最終的に第2の通気口216から外部へ流出される。このような空気の流れは、タンクケース211内を換気するとともに、タンク13の温度上昇の抑制に寄与する。
【0054】
仮にタンクケース211の内部で水素の漏えいがあった場合、接続位置226cの下部に自然と集められた水素は、前記換気の流れに沿って、効率よく外部に排気される。このため、タンクケース211は、仮にその内部で水素の漏えいがあった場合であっても、内部に滞留する水素の量を少なく抑えることができる。換言すると、タンクケース211は、第1の通気口215から第2の通気口216へ自然と流れる空気によって、タンクケース211内で漏えいした水素を速やかにタンクケース211の外部へ排出することができる。
【0055】
本開示の作業車両10は、タンクケース211の内部で発生した水素の漏えいを検知する水素センサ230をさらに備える。水素センサ230は、タンクケース211の内部の第2の通気口216に隣接する位置に設けられている。水素センサ230は、タンクケース211の内部の第2の通気口216より下方に設けられると好ましい。タンクケース211内で水素の漏えいが生じた場合、漏えいした水素は、タンクケース211内を上昇し、接続位置226cの下部に自然と集められ、その後第2の通気口216からタンクケース211の外部へ流出する。第2の通気口216より下方となる位置で、かつ、第2の通気口216と隣接する位置に配置された水素センサ230は、第2の通気口216から外部へ流出する直前の水素を確実に検知することができる。このため、本開示の作業車両10は、タンクケース211の内部で水素の漏えいがあった場合、水素センサ230によって、漏えいした水素を確実に検出することができる。なお、本実施形態では、第2の通気口216に隣接する下方に水素センサ230を設けた場合を例示しているが、第2の通気口216に対する水素センサ230の配置はこれに限定されず、第2の通気口216に隣接する側方であってもよく、第2の通気口216に隣接する上方であってもよい。本実施形態で示すように、タンクケース211が2つの第2の通気口216を備える場合、それぞれの第2の通気口216に対応させて、2つの水素センサ230を配置すると好ましい。なお、本開示の作業車両10は、タンクケース211の左右両側に第2の通気口216が設けられているが、本開示の作業車両10における第2の通気口216は、1つであってもよい。
【0056】
[開閉扉]
図10図13に示すように、タンクケース211は、左側板224の一部及び右側板225の一部が、開閉扉213により構成される。左側の開閉扉213は、複数のヒンジ217を介して、左側板224によって開閉可能に支持される。右側の開閉扉213は、複数のヒンジ217を介して、右側板225によって開閉可能に支持される。なお、タンクケース211は、左側板224及び右側板225の全体が、開閉扉213により構成されてもよい。また、タンクケース211は、前側板222の一部及び後側板223の一部が、開閉扉213により構成されてもよい。なお、本実施形態において、開閉扉213の開き勝手は、上下方向であるが、開閉扉213の開き勝手は、左右方向であってもよい。
【0057】
開閉扉213は、複数の固定金具218によって、左側板224及び右側板225に対してワンタッチで固定される(閉じた状態に保持される)とともに、ワンタッチで開けることができる。なお、本実施形態の開閉扉213は、ヒンジ217及び固定金具218を備えていて、容易に開閉することができる。なお、本開示の作業車両10において、開閉扉213は、ヒンジ217及び固定金具218を用いずに、左側板224及び右側板225に対してボルト止めされていてもよい。この場合、ボルトを締結することで、開閉扉213を閉めることができ、ボルトを外すことで、開閉扉213を開けることができる。
【0058】
図13に示すように、タンクケース211は、右側板225の一部である開閉扉213を開けると、ユーザーの眼前にバルブユニット212が現れる。このため、本開示の作業車両10は、右側の開閉扉213を開けることによって、バルブユニット212回りの保守点検を容易に行うことができる。さらに、タンクケース211は、左側板224の一部である開閉扉213を開けることができる。このため、本開示の作業車両10は、左右の開閉扉213を両方開けることによって、タンク13の全体確認、及び、タンク13の周囲に設けた配管22(前配管22f及び後ろ配管22r)の保守点検を容易に行うことができる。
【0059】
〔本実施形態の作用及び効果について〕
(1)上記実施形態の作業車両10は、車体11と、車体11に搭載された運転席15、モータ31及び燃料電池24と、運転席15の周囲に配置されたキャビン16と、燃料電池24に水素を供給する配管22及びタンク13と、キャビン16の上方に配置され、タンク13を収容するタンクケース211と、を備える。作業車両10において、タンクケース211は、タンク13を下方より覆う下板221と、側方より覆う前側板222、後側板223、左側板224及び右側板225、及び上方より覆う上板226を含んでいる。タンクケース211は、下板221に開口される第1の通気口215を有している。
【0060】
本実施形態の作業車両10によれば、外部からの衝撃や温度の上昇等からタンク13を的確に保護することができる。これにより、燃料電池24を備えた作業車両10において、タンクケース211によってタンク13を的確に保護することができる。
【0061】
(2)上記実施形態の作業車両10において、タンクケース211は、側板224,225の上部に開口される第2の通気口216をさらに有する。このような構成の作業車両10によれば、タンクケース211の内部の温度上昇を確実に抑制することができる。これにより、タンク13を的確に保護することができる。タンク13のメンテナンス性を確保しつつ、タンク13を的確に保護することができる。
【0062】
(3)上記実施形態の作業車両10は、水素センサ230をさらに備え、水素センサ230が、タンクケース211の内部の第2の通気口216に隣接する位置に配置される。このような構成の作業車両10によれば、水素センサ230によって、タンクケース211内で生じた水素の漏えいを確実に検知することができる。これにより、タンク13を的確に保護することができる。
【0063】
(4)上記実施形態の作業車両10において、上板226(前上板226a及び後上板226b)が下板221に対して傾斜を有して配置されている。作業車両10において、上板226の下板221から最も離間した接続位置226cに隣接する各側板224,225の上部において第2の通気口216が開口されている。このような構成の作業車両10によれば、タンクケース211内で漏えいした水素を確実にタンクケース211の外部に放出させることができる。これにより、タンク13を的確に保護することができる。
【0064】
(5)上記実施形態の作業車両10において、タンクケース211は、2つの対面する左側板224及び右側板225において、第2の通気口216をそれぞれ有している。このような構成の作業車両10によれば、第1の通気口215からタンクケース211内に入った空気が自然対流によって第2の通気口216から排気され、タンクケース211内を自然に換気することができる。そして、タンクケース211内で漏えいした水素をタンクケース211の外部へ確実に排気することができる。これにより、タンク13を的確に保護することができる。
【0065】
前記実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、前記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0066】
10 作業車両
11 車体
13 タンク(水素タンク)
15 運転席
16 キャビン
22 配管(水素配管)
24 燃料電池(燃料電池モジュール)
31 モータ(電動モータ)
211 タンクケース
215 第1の通気口
216 第2の通気口
221 下板
222 前側板(側板)
223 後側板(側板)
224 左側板(側板)
225 右側板(側板)
226 上板
230 水素センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13