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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025067026
(43)【公開日】2025-04-24
(54)【発明の名称】ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20250417BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20250417BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/02 301Z
F17C13/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176665
(22)【出願日】2023-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔太
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA01
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD03
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA14
3E172EA22
3E172EA23
3E172EA24
3E172EA35
3E172EA48
3E172JA08
3E172KA22
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】効率的な充填作業を行うことができるガス充填装置を提供する。
【解決手段】水素ガス充填装置1は、複数のガス供給管路5A,5Bと、流量計14A,14B、遮断弁13A,13Bおよびノズル7A,7Bと、制御装置22と、を備えている。複数のガス供給管路5A,5Bは、ガス蓄圧器2に接続されている。流量計14A,14B、遮断弁13A,13Bおよびノズル7A,7Bは、複数のガス供給管路5A,5Bにそれぞれ設けられている。制御装置22は、遮断弁13A,13Bの開閉動作を制御することにより、ガスの充填を制御する。さらに、制御装置22は、タンク52へ充填されるガスの流量またはタンク52内のガスの圧力に応じて、一のタンク52への充填に用いられるガス供給管路5A,5Bの本数を増減させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源に接続された複数のガス供給系統と、
前記複数のガス供給系統にそれぞれ設けられた流量計、遮断弁および充填ノズルと、
前記遮断弁の開閉動作を制御することにより、ガスの充填を制御する制御手段と、
を備え、
前記充填ノズルを燃料タンクに接続して充填を行う
ガス充填装置において、
前記制御手段は、一の燃料タンクに対し前記複数のガス供給系統を用いた充填を行っている際に、前記燃料タンクへ充填されるガスの流量または前記燃料タンク内のガスの圧力に応じて、前記一の燃料タンクへの充填に用いられるガス供給系統を増減させる、
ことを特徴とするガス充填装置。
【請求項2】
前記制御手段は、一の燃料タンクに対し前記複数のガス供給系統を用いた充填を行っている際に、前記燃料タンクへ充填されるガスの流量が所定値以下または前記燃料タンク内のガスの圧力が所定値以上の場合に、前記複数のガス供給系統のうちの一部のガス供給系統の前記遮断弁を閉弁させる、ことを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ガス供給源の圧力と前記燃料タンクの圧力との差に応じて、前記一の燃料タンクへの充填に用いられるガス供給系統を増減させる、ことを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項4】
作業者に対し報知する報知手段をさらに備え、
前記制御手段により前記一の燃料タンクへの充填に用いられるガス供給系統を増減させた場合に、前記報知手段により報知させる、ことを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記流量計において計測可能な流量となるように、前記一の燃料タンクへの充填に用いられるガス供給系統を増減させる、ことを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば車両(自動車)のタンク(燃料タンク、被充填タンク)に水素ガス等のガス(燃料ガス)を充填(供給)するガス充填装置(燃料ガス充填装置、燃料ガス供給装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、蓄圧器に接続されたガス供給管路を備え、このガス供給管路を通じて蓄圧器内の燃料ガスを車両の燃料タンクに充填する燃料ガス充填装置が記載されている。特許文献1の燃料ガス充填装置は、ガス供給管路の途中に流量計および遮断弁が設けられており、ガス供給管路の下流端に車両(燃料タンク)に接続される充填ノズルが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-178313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料ガス充填装置として、複数の充填管路(充填系統)を備えた構成とすることが考えられる。即ち、燃料ガス充填装置として、複数のガス供給管路を備えると共に、それぞれのガス供給管路に流量計、遮断弁および充填ノズルを設けた構成とすることが考えられる。このような構成によれば、複数のガス供給管路のそれぞれの充填ノズルを、複数の充填口を有する一の燃料タンクの充填口にそれぞれ接続させて、燃料ガスを充填することができる。これにより、燃料タンクへの燃料ガスの充填時間を短縮させることが可能となる。
【0005】
しかし、複数のガス供給管路を用いて一の燃料タンクに充填を行っているときに、充填に伴いガスの流量が一のガス供給管路で供給しうる流量以下まで低下すると、複数のガス供給管路を用いて充填を行う必要性が低くなる。また、複数のガス供給管路を用いて一の燃料タンクへの充填中は、他の燃料タンクへの充填ができず、効率的な充填作業ができない可能性がある。
【0006】
本発明の目的の一つは、効率的な充填作業を行うことができるガス充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、好ましくは、ガス供給源に接続された複数のガス供給系統と、前記複数のガス供給系統にそれぞれ設けられた流量計、遮断弁および充填ノズルと、前記遮断弁の開閉動作を制御することにより、ガスの充填を制御する制御手段と、を備え、前記充填ノズルを燃料タンクに接続して充填を行うガス充填装置において、前記制御手段は、一の燃料タンクに対し前記複数のガス供給系統を用いた充填を行っている際に、前記燃料タンクへ充填されるガスの流量または前記燃料タンク内のガスの圧力に応じて、前記一の燃料タンクへの充填に用いられるガス供給系統を増減させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効率的な充填作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態によるガス充填装置を模式的に示す全体構成図である。
図2】ディスペンサを示す斜視図である。
図3】2つの充填口を有する燃料タンクが搭載された車両、および、この車両の燃料タンクにガスを充填しているディスペンサ、を示す平面図である。
図4図1中の制御装置による処理を示す流れ図である。
図5図4の「A」に続く処理を示す流れ図である。
図6図4の「B」に続く処理を示す流れ図である。
図7図6の「D」に続く処理を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態によるガス充填装置として、車両(自動車)のタンク(燃料タンク、被充填タンク)に燃料ガス(水素ガス)を充填(供給)する車両用のガス充填装置(水素ガス充填装置)を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図4ないし図7に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
【0011】
図1において、水素ガス充填装置1は、例えば燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車両51の燃料タンク52(以下、タンク52という)に圧縮状態の水素ガス(ガス)を充填(供給)するガス充填装置(ガス供給装置)である。水素ガス充填装置1は、例えば、水素ガス供給ステーション(水素ステーション)と呼ばれる設備(燃料供給所)に設置されている。水素ガス充填装置1は、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部(貯蔵タンク)としてのガス蓄圧器2と、ガス蓄圧器2の水素ガスを車両51のタンク52に充填する充填機構としての水素ディスペンサ3(以下、ディスペンサ3という)と、ガス蓄圧器2からディスペンサ3の筐体4内にわたって延びるガス供給管路5A,5Bと、を含んで構成されている。
【0012】
実施形態では、水素ガス充填装置1は、2つのガス供給管路5A,5B、即ち、一方のガス供給系統(A系統)を構成する第1ガス供給管路5Aと、他方のガス供給系統(B系統)を構成する第2ガス供給管路5Bと、を備えている。ガス蓄圧器2は、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの両方に接続されている。これにより、ガス蓄圧器2は、ディスペンサ3のA系統(第1ガス供給管路5A)およびB系統(第2ガス供給管路5B)に水素ガスを供給できる構成となっている。この場合、図1に示すように、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bは、ディスペンサ3内で分岐している。
【0013】
なお、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの分岐は、ディスペンサ3内でなくてもよい。即ち、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの分岐は、ディスペンサ3よりもガス蓄圧器2側(上流側)でもよい。また、図示は省略するが、第1ガス供給管路に接続されるガス蓄圧器と第2ガス供給管路に接続されるガス蓄圧器とを、それぞれ別々に備える構成としてもよい。即ち、ガス供給管路を途中で分岐させずに、第1ガス蓄圧器を第1ガス供給管路に接続し、第1ガス蓄圧器とは別の第2ガス蓄圧器を第1ガス供給管路とは別の第2ガス供給管路に接続する構成としてもよい。
【0014】
ガス蓄圧器2は、高圧に圧縮された燃料ガス(水素ガス)を貯蔵するガス供給源(水素ガス供給源)である。ガス蓄圧器2は、ガス供給管路5A,5Bの上流側に接続されている。ガス供給管路5A,5Bは、ガス蓄圧器2からディスペンサ3に向けて延びると共に、ディスペンサ3の筐体4内に配設されている。また、ガス供給管路5A,5Bの下流側は、筐体4外に配設されたホース6A,6Bにより構成されている。そして、ホース6A,6Bの下流端には、ノズル7A,7Bが設けられている。ガス供給管路5A,5Bは、ノズル7A,7Bを介して車両51のタンク52に接続される。
【0015】
ガス供給管路5A,5Bは、ガス(水素ガス)を燃料として走行する車両51(より具体的には、車両51に搭載された一のタンク52)にガス(水素ガス)を充填(供給)するための経路(ガス充填経路、ガス供給経路)である。図1の仮想線(二点鎖線)は、A系統を構成する第1ガス供給管路5Aが、A系統の第1ノズル7Aを介して車両51のタンク52に接続された状態を示している。これに対して、図3は、A系統を構成する第1ガス供給管路5AとB系統を構成する第2ガス供給管路5Bとの両方が、A系統の第1ノズル7AとB系統の第2ノズル7Bとを介して車両51のタンク52に接続された状態を示している。図3に示すように、実施形態では、A系統とB系統との両方を通じて2つの充填口52A,52Bを有するタンク52に水素ガスを充填することも可能となっている。
【0016】
ディスペンサ3は、筐体4を備えている。また、ディスペンサ3は、第1ノズル掛け8A、第1流量調整弁12A、第1遮断弁13A、第1流量計14A、第1熱交換器16A、第1圧力センサ20A、および、第1温度センサ21Aを備えている。また、ディスペンサ3は、第2ノズル掛け8B、第2流量調整弁12B、第2遮断弁13B、第2流量計14B、第2熱交換器16B、第2圧力センサ20B、および、第2温度センサ21Bを備えている。さらに、ディスペンサ3は、制御装置22を備えている。
【0017】
筐体4は、ディスペンサ3の外形をなす箱体を構成している。図2および図3に示すように、筐体4は、例えば、正面4Aと背面4Bと一対の側面4C,4Dと上面4Eとを有する略直方体状に形成されている。一対の側面4C,4Dのうち一方の側面4Cは、第1ノズル掛け8Aおよび第2ノズル掛け8Bが設けられた側面4C、即ち、ノズル掛け側面4Cとなっている。
【0018】
また、正面4Aには、充填量等の報知すべき情報を表示する第1表示器23A、および、操作スイッチとなる第1操作ボタン24A(例えば、シングル・ダブル切換ボタン24A1、充填開始ボタン24A2、充填停止ボタン24A3)が設けられている。背面4Bにも、図1に示すように、充填量等の報知すべき情報を表示する第2表示器23B、および、操作スイッチとなる第2操作ボタン24B(例えば、シングル・ダブル切換ボタン24B1、充填開始ボタン24B2、充填停止ボタン24B3)が設けられている。
【0019】
筐体4のノズル掛け側面4Cには、第1ノズル掛け8Aおよび第2ノズル掛け8Bが設けられている。ノズル掛け8A,8Bは、ノズル7A,7Bを保持する保持部に相当する。ノズル7A,7Bは、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)にノズル掛け8A,8Bに掛止めされる。即ち、ノズル掛け8A,8Bは、車両51のタンク52に水素ガスを充填するとき以外、ノズル7A,7Bを保持している。車両51のタンク52に水素ガスを充填するときは、充填作業の作業者(水素ステーションの係員、セルフの作業者等)により、ノズル7A,7Bがノズル掛け8A,8Bから取り外される。
【0020】
図1に示すように、筐体4内には、第1ガス供給管路5A、第1入口弁11A、第1流量調整弁12A、第1遮断弁13A、第1流量計14A、第1熱交換器16A、第1脱圧管路18A、第1脱圧弁19A、第1圧力センサ20A、第1温度センサ21A、第2ガス供給管路5B、第2入口弁11B、第2流量調整弁12B、第2遮断弁13B、第2流量計14B、第2熱交換器16B、第2脱圧管路18B、第2脱圧弁19B、第2圧力センサ20B、第2温度センサ21B、制御装置22等が収容されている。
【0021】
ガス供給管路5A,5Bは、筐体4内に配設されており、加圧状態の水素ガスをガス蓄圧器2から充填対象となる車両51(より具体的には、タンク52)に向けて供給する。ガス供給管路5A,5Bは、ガス蓄圧器2側が上流側となり、車両51(より具体的には、タンク52)側が下流側となっている。第1ガス供給管路5Aの下流側は、筐体4の外側で筐体4の外部に延びる第1ホース6Aにより構成されている。第2ガス供給管路5Bの下流側は、筐体4の外側で筐体4の外部に延びる第2ホース6Bにより構成されている。
【0022】
ホース6A,6Bは、可撓性を有する水素ガス充填用ホースであり、例えば、耐圧ホースが用いられている。充填ホースであるホース6A,6Bは、ガス供給管路5A,5Bの下流側を構成している。この場合、図示は省略するが、ホース6A,6Bの途中、または、ホース6A,6Bの上流側の端部には、緊急離脱カップリングが設けられている。緊急離脱カップリングは、緊急時に分離する安全装置である。緊急離脱カップリングは、例えば、水素ガスの充填中または充填終了後に車両51が誤発進したときに、ホース6A,6Bが強い力で引っ張られることにより分離する。緊急離脱カップリングは、分離したときにホース6A,6Bから水素ガスが放出されることを阻止する弁体(遮断弁)が内部に設けられている。
【0023】
一方、ホース6A,6Bの先端には、タンク52の充填口52A(52B)に連結されるノズル7A,7Bが設けられている。充填ノズルであるノズル7A,7Bは、ホース6A,6Bの先端側に気密状態で接続されており、所謂充填カップリングを構成している。第1ノズル7Aは、第1ホース6A(第1ガス供給管路5A)と接続されている。第2ノズル7Bは、第2ホース6B(第2ガス供給管路5B)と接続されている。ノズル7A,7Bには、開閉弁(図示せず)が内蔵されている。開閉弁は、水素ガスの流通を許可する「開位置」と水素ガスの流通を遮断する「閉位置」とに切換えられる。なお、ノズル7A,7Bには、開閉弁に代えて、または、開閉弁と共に、逆止弁を設けてもよい。逆止弁は、ノズル7A,7Bからタンク52への水素ガスの流通を許容し、タンク52からノズル7A,7Bへの水素ガスの流通を阻止する。
【0024】
ノズル7A,7Bの先端側は、接続カプラ7A1,7B1となっており、タンク52の接続口(レセプタクル)となる充填口52A(52B)に着脱可能に接続される。即ち、ノズル7A,7Bの接続カプラ7A1,7B1は、ノズル7A,7B内の管路(図示せず)を通じて車両51のタンク52に水素ガスを供給するときに、タンク52の充填口52A(52B)に気密状態で着脱可能に接続される。また、ノズル7A,7Bは、タンク52の充填口52A(52B)に対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)を備えている。これにより、ノズル7A,7Bは、水素ガスの充填時に充填口52A(52B)から不用意に外れることを抑制できる。
【0025】
ガス蓄圧器2内の高圧な水素ガスは、ノズル7A,7Bがタンク52の充填口52A(52B)に対してロック機構によりロックされた状態で、ガス供給管路5A,5Bを通じて車両51のタンク52に充填される。即ち、水素ガス充填装置1は、ノズル7A,7Bを備えており、このノズル7A,7Bを用いて車両51のタンク52へ水素ガスを充填する。
【0026】
図1に示すように、ガス供給管路5A,5Bの途中には、例えば、入口弁11A,11B、流量調整弁12A,12B、遮断弁13A,13Bが設けられている。入口弁11A,11Bは、流量調整弁12A,12Bの上流側に位置している。入口弁11A,11Bは、手動操作により開閉される。なお、入口弁11A,11Bは、必要に応じて取り付けられるものであり、不要であればこれを省略してもよい。また、図示は省略するが、入口弁を第1ガス供給管路と第2ガス供給管路との分岐点よりも上流側(ガス蓄圧器側)に設けることにより、第1ガス供給管路と第2ガス供給管路との共通の入口弁としてもよい。
【0027】
流量調整弁12A,12Bは、入口弁11A,11Bの下流側に位置している。流量調整弁12A,12Bは、制御装置22により弁開度が調整されることにより、ガス供給管路5A,5Bを流れる水素ガスの流量を調整可能に制御する。即ち、流量調整弁12A,12Bは、車両51のタンク52への水素ガスの流通を制御する。流量調整弁12A,12Bは、例えば電磁式の弁装置であり、制御装置22からの制御信号Cf1,Cf2に基づいて開弁制御される。この場合、流量調整弁12A,12Bは、制御装置22の制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、ガス供給管路5A,5B内を流れる水素ガスの流量、水素ガス圧を可変に制御する。即ち、流量調整弁12A,12Bは、制御装置22からの制御信号Cf1,Cf2によって弁開度が制御されることにより、必要な開度に調整される。
【0028】
遮断弁13A,13Bは、流量調整弁12A,12Bよりも下流側に位置している。遮断弁13A,13Bは、制御装置22によって開弁、閉弁されることにより、ガス供給管路5A,5B内の水素ガスの流通を許容または遮断する。即ち、遮断弁13A,13Bは、ガス供給管路5A,5Bの途中部位(例えば、熱交換器16A,16Bと温度センサ21A,21Bとの間)に設けられた電磁式または空圧作動式の弁装置である。遮断弁13A,13Bは、制御装置22からの制御信号Cs1,Cs2に基づいて開閉されることにより、ガス供給管路5A,5B内で水素ガスの流通を許容または遮断する。
【0029】
流量計14A,14Bは、流量調整弁12A,12Bよりも上流側に位置している。流量計14A,14Bは、例えば、被測流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計である。流量計14A,14Bは、入口弁11A,11Bと流量調整弁12A,12Bとの間でガス供給管路5A,5B内を流れる水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測結果(検出信号F1,F2)を制御装置22へと出力する。制御装置22は、車両51のタンク52への水素ガスの充填量を演算し、水素ガス燃料の払出し量を表示器23A,23B等に表示する。これにより、例えば顧客等に表示内容を報知する。
【0030】
冷却器15は、ガス供給管路5A,5B内を流れる水素ガスを冷却するための冷却装置である。冷却器15は、タンク52に充填される水素ガスの温度上昇を抑えるため、ガス供給管路5A,5Bの途中位置で水素ガスを冷却する。即ち、冷却器15は、ガス供給管路5A,5Bを介して車両51(タンク52)に供給される水素ガスを冷却する。冷却器15は、ガス供給管路5A,5Bの途中部位(流量調整弁12A,12Bと遮断弁13A,13Bとの間)に設けられた熱交換器16A,16Bと、熱交換器16A,16Bに冷媒管路を介して接続され、例えばコンプレッサ、ポンプ等の駆動機構(図示せず)を備えたチラーユニット(図示せず)と、を含んで構成されている。
【0031】
チラーユニットは、冷媒管路を介して熱交換器16A,16Bとの間に冷媒を循環させる。熱交換器16A,16Bは、ガス供給管路5A,5B内を流れる水素ガスと冷媒との間で熱交換を行う。これにより、冷却器15は、ホース6A,6Bに向けて供給される水素ガスの温度を規定温度(例えば、-33~-40℃)まで低下させる。
【0032】
ガス供給管路5A,5Bの遮断弁13A,13Bよりも下流側には、例えばホース6A,6B側からガス圧力を脱圧するための脱圧管路18A,18Bが分岐して設けられている。脱圧管路18A,18Bの途中には、例えば電磁式または空圧作動式の弁装置である脱圧弁19A,19Bが設けられている。脱圧弁19A,19Bは、ホース6A,6B(ノズル7A,7B)を用いた水素ガスの充填作業が完了し、遮断弁13A,13Bが閉弁されたときに、制御装置22からの制御信号Cd1,Cd2に基づいて開閉される。
【0033】
即ち、ノズル7A,7Bの接続カプラ7A1,7B1をタンク52の充填口52A(52B)から取り外す場合には、ホース6A,6B内の圧力を大気圧レベルまで減圧する必要がある。このため、ガス充填作業の完了時には、脱圧弁19A,19Bを一時的に開弁して脱圧管路18A,18Bの先端側を大気に開放させる。これにより、ホース6A,6B側の水素ガスは、外部に放出されてホース6A,6B内の圧力が大気圧レベルまで減圧される。この結果、ノズル7A,7Bの接続カプラ7A1,7B1は、タンク52の充填口52A(52B)から取り外し可能となる。
【0034】
圧力センサ20A,20Bは、遮断弁13A,13Bよりも下流側(即ち、ノズル7A,7B側)のガス供給管路5A,5Bに設けられている。圧力センサ20A,20Bは、ガス蓄圧器2から供給される水素ガスの圧力(管路途中の圧力、換言すれば、タンク52の圧力)を検知する。圧力センサ20A,20Bは、ノズル7A,7Bの近傍でガス供給管路5A,5B内の圧力を測定し、測定した圧力に応じた検出信号P1,P2を制御装置22へと出力する。
【0035】
温度センサ21A,21Bは、遮断弁13A,13Bと圧力センサ20A,20Bとの間に位置してガス供給管路5A,5Bの途中に設けられている。温度センサ21A,21Bは、ガス供給管路5A,5B内を流れる水素ガスの温度を検出し、その検出結果(検出信号T1,T2)を制御装置22へと出力する。なお、温度センサ21A,21Bと圧力センサ20A,20Bとの配置関係は、図1に示す配置に限るものではなく、例えば互いに逆となる配置にしてもよい。
【0036】
流量調整弁12A,12B、遮断弁13A,13Bおよび脱圧弁19A,19Bは、ガス供給管路5A,5B内の水素ガスの流れ(流量、圧力)を制御する制御機器を構成している。一方、流量計14A,14B、圧力センサ20A,20B、温度センサ21A,21Bは、ガス供給管路5A,5Bを流れる水素ガスの状態(流量、圧力、温度)を計測する計測機器を構成している。なお、ガス供給管路5A,5Bの上流側から下流側に向けて設けられている流量計14A,14B、流量調整弁12A,12B、遮断弁13A,13Bの配置(順番)は、図1中に示した順番に限らない。
【0037】
制御装置22は、流量調整弁12A,12B、遮断弁13A,13B、脱圧弁19A,19B、表示器23A,23B等を制御するコントローラ(コントロールユニット)を構成している。制御装置22は、流量調整弁12A,12Bおよび遮断弁13A,13Bの制御を行うことにより充填対象となるタンク52への燃料供給を制御する。制御装置22は、制御回路であり、例えば、CPU(演算装置)、メモリ22A(記憶装置)、タイマ等を有するマイクロコンピュータにより構成されている。メモリ22Aには、例えば、後述の図4ないし図7に示す処理フローを実行するための処理プログラムが記憶(格納)されている。
【0038】
図1に示すように、制御装置22の入力側には、第1流量計14A、第1圧力センサ20A、第1温度センサ21A、第1操作ボタン24A、第1ノズル検出器25A等が接続されている。また、制御装置22の入力側には、第2流量計14B、第2圧力センサ20B、第2温度センサ21B、第2操作ボタン24B、第2ノズル検出器25B等が接続されている。一方、制御装置22の出力側は、第1流量調整弁12A、第1遮断弁13A、第1脱圧弁19A、第1表示器23A等と接続されている。また、制御装置22の出力側は、第2流量調整弁12B、第2遮断弁13B、第2脱圧弁19B、第2表示器23B等と接続されている。制御装置22は、A系統による水素ガスの充填およびB系統による水素ガスの充填を制御する。
【0039】
なお、図1では、A系統とB系統とで共通の1つの制御装置22を有する構成とした場合を示しているが、例えば、A系統用の第1制御装置とB系統用の第2制御装置との2つの制御装置を有する構成としてもよい。この場合は、第1制御装置と第2制御装置とを通信線で接続することができる。また、第1制御装置と第2制御装置とのうちのいずれか一方の制御装置を、上位の制御装置(メインの制御装置)とすることができる。また、第1制御装置と第2制御装置とは別に、これら第1制御装置および第2制御装置とを統合的に管理する別の制御装置、例えば、管理用の制御装置(上位の制御装置、メインの制御装置)を設ける構成としてもよい。この場合は、第1制御装置および第2制御装置と管理用の制御装置とを通信線で接続することができる。
【0040】
表示器23A,23Bは、筐体4に設けられている。この場合、第1表示器23Aは、筐体4の正面4A側に設けられており、第2表示器23Bは、筐体4の背面4B側に設けられている。表示器23A,23Bは、水素ガスの充填作業を行う作業者が視認し易い高さ位置に配置され、水素ガスの充填作業に必要な情報表示等を行う。表示器23A,23Bは、例えば、モニタ、タッチパネル等の表示装置(ディスプレイ)である。表示器23A,23Bは、制御装置22と接続されている。表示器23A,23Bには、制御装置22からの信号(表示指令)に基づいて必要な情報が表示される。
【0041】
操作ボタン24A,24Bは、筐体4に設けられている。この場合、第1操作ボタン24Aは、筐体4の正面4Aに設けられており、第2操作ボタン24Bは、筐体4の背面4Bに設けられている。操作ボタン24A,24Bは、充填を行う作業者が手動操作可能なスイッチ(ボタンスイッチ)である。操作ボタン24A,24Bは、例えば、シングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1と、充填開始ボタン24A2,24B2と、充填停止ボタン24A3,24B3と、を備えている。
【0042】
シングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1は、シングル充填を行うかダブル充填を行うかを選択する(切り換える)スイッチ(ボタン)である。シングル充填は、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとのうちの一方の供給管路を通じて水素ガスを充填するときに選択される。シングル充填は、単一のガス供給管路5A(5B)を個別に用いる充填(個別充填)である。ダブル充填は、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの両方の供給管路を通じて水素ガスを充填するときに選択される。ダブル充填は、複数のガス供給管路5A,5Bを用いた同一の車両51(タンク52)への充填(同一充填)である。充填開始ボタン24A2,24B2は、水素ガスの充填を開始するときに操作される。充填停止ボタン24A3,24B3は、水素ガスの充填中に充填を停止するときに操作される。なお、操作ボタン24A,24Bは、筐体4の正面4Aと背面4Bとにそれぞれ設けたが、これに限らず、正面4Aと背面4Bとの何れか一方に設けてもよい。
【0043】
例えば、正面4A側のシングル・ダブル切換ボタン24A1によりシングル充填を選択する。この場合に、正面4A側の充填開始ボタン24A2を操作すると、正面4A側に停車した車両51(図1)のタンク52にA系統(第1ガス供給管路5A)を通じて水素ガスを充填することができる。一方、背面4B側のシングル・ダブル切換ボタン24B1によりシングル充填を選択する。この場合に、背面4B側の充填開始ボタン24B2を操作すると、背面4B側に停車した車両のタンクにB系統(第2ガス供給管路5B)を通じて水素ガスを充填することができる。
【0044】
また、例えば、正面4Aの側のシングル・ダブル切換ボタン24A1によりダブル充填を選択する。この場合に、正面4A側の充填開始ボタン24A2を操作すると、正面4A側に停車した2つの充填口52A,52Bを有する車両51(図3)のタンク52に、A系統とB系統との両方を通じて水素ガスを充填することができる。一方、背面4B側のシングル・ダブル切換ボタン24B1によりダブル充填を選択する。この場合に、背面4B側の充填開始ボタン24B2を操作すると、背面4Bに停車した2つの充填口を有する車両のタンクに、A系統とB系統との両方を通じて水素ガスを充填することができる。これにより一の充填系統で充填を行う場合と比べて、車両タンク(一のタンク)への時間当たりの水素ガス充填量を増加させることができ、充填時間を短縮できる。
【0045】
操作ボタン24A,24B(シングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1、充填開始ボタン24A2,24B2、充填停止ボタン24A3,24B3)は、制御装置22に接続されている。操作ボタン24A,24B(シングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1、充填開始ボタン24A2,24B2、充填停止ボタン24A3,24B3)は、ボタン操作に応じた信号を制御装置22に出力する。これにより、制御装置22は、これらの信号に応じて、遮断弁13A,13Bを開弁または閉弁させる。
【0046】
図1に示すように、ノズル検出器25A,25Bは、ノズル掛け8A,8Bに設けられている。ノズル検出器25A,25Bは、ノズル7A,7Bが掛止めされたか否かを検出する。即ち、ノズル検出器25A,25Bは、ノズル7A,7Bの有無を検知するノズル検知手段である。ノズル検出器25A,25Bは、スイッチ(ノズルスイッチ)、例えば2位置切換型のスイッチにより構成されており、制御装置22に接続されている。
【0047】
ノズル検出器25A,25Bは、例えば、ノズル7A,7Bをノズル掛け8A,8Bに掛止めすると、ノズル7A,7Bによって押動され、オフ(OFF)からオン(ON)状態に切換わる。ノズル検出器25A,25Bは、ノズル7A,7Bがノズル掛け8A,8Bから取り出される(または取り外される)と、オン(ON)からオフ(OFF)状態に切換わる。ノズル検出器25A,25Bは、ノズル7A,7Bがノズル掛け8A,8Bに掛止めされたか否かに対応する検出信号N1,N2(ON信号またはOFF信号)を、制御装置22に出力する。
【0048】
なお、オン(ON)とオフ(OFF)との関係は、逆にしてもよい。即ち、ノズル7A,7Bが取り出されたときにオフ(OFF)からオン(ON)になるようにしてもよい。また、ノズル検出器25A,25Bは、筐体4側のノズル掛け8A,8Bに設けるものに限らず、ノズル7A,7B側に設けてもよい。いずれの場合も、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)は、ディスペンサ3のノズル掛け8A,8Bにノズル7A,7Bが保持される。即ち、車両51のタンク52に水素ガスを充填する充填作業が終了すると、ノズル7A,7Bは、ノズル掛け8A,8Bに戻され、収納状態に保持される。
【0049】
水素ガスを燃料として走行駆動される車両51は、例えば図1および図3に示すような4輪自動車(乗用車)である。車両51は、例えば燃料電池と電動モータとを含んで構成される駆動装置(図示せず)、図1中および図3中に破線で示すタンク52等を備えている。タンク52は、水素ガスが充填される耐圧構造をもった容器として構成され、例えば車両51の後部側に搭載されている。なお、タンク52は、車両51の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成としてもよい。タンク52には、ノズル7A(またはノズル7B)の接続カプラ7A1(または接続カプラ7B1)が着脱可能に取り付けられる充填口52A,52B(レセプタクル)が設けられている。
【0050】
図1では、1つの充填口52Aを有する車両51を例示している。そして、図1では、この1つの充填口52Aに第1ノズル7Aが接続された状態を二点鎖線で示している。これに対して、図3では、2つの充填口52A,52Bを有する車両51を例示している。2つの充填口52A,52Bを有する車両51の場合は、2つの充填口52A,52Bに第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとを接続して充填を行うことができる。即ち、図3の車両51は、大容量のタンク52を搭載しており、充填効率を高めるために、タンク52は、2つの充填口52A,52Bを有している。
【0051】
いずれの場合も、車両51のタンク52内には、ノズル7Aおよび/またはノズル7Bが充填口52Aおよび/または充填口52Bに気密に連結(接続)された状態で水素ガスの充填が行われる。このとき、ノズル7Aおよび/またはノズル7Bは、ロック機構により充填口52Aおよび/または充填口52Bに対して不用意に外れることがないようにロックされる。ディスペンサ3は、冷却された水素ガスを車両51のタンク52に差圧を利用して充填する。なお、充填口52A,52Bには内部に逆止弁が設けられている。この逆止弁は、ノズル7A,7Bから車両51のタンク52側への水素ガスの流通を許容し、タンク52からノズル7A,7B側への水素ガスの流通を阻止する。
【0052】
ところで、2系統のガス供給管路を備えたガス充填装置は、一方のガス供給管路を用いて車両の燃料タンクに燃料ガスを充填するだけでなく、両方のガス供給管路を用いて同一車両の燃料タンクに燃料ガスを充填することが可能になる。しかし、複数のガス供給管路を用いて一の燃料タンクに充填を行っているときに、充填に伴いガスの流量が一のガス供給管路で供給しうる流量以下まで低下すると、複数のガス供給管路を用いて充填を行う必要性が低くなる。また、複数のガス供給管路を用いて一の燃料タンクへの充填中は、他の燃料タンクへの充填ができず、効率的な充填作業ができない可能性がある。
【0053】
また、1台の車両に複数のノズルを用いて充填を行う複数充填では、バンク圧力(蓄圧器の圧力)と車両のタンクの圧力との差(差圧)が減少してきたときに、流量計1台あたりの流量が低下する。そして、流量が低下したときに、配管の分岐点以降の圧力損失の影響により、複数系統で流量差が発生する可能性がある。このため、正確に流量を測定するためには、流量計の測定レンジを逸脱しないような制御が必要になる。即ち、流量が低下したときに、その流量が流量計の測定レンジを逸脱してしまうと、流量の測定の正確性、安定性が低下する。
【0054】
そこで、実施形態では、1台の車両(一のタンク)に対して複数のノズルを用いた充填を行うときに、流量が低下すると、または、充填に用いているバンク(蓄圧器)の圧力と車両のタンクの圧力との差(差圧)が減少すると、充填を行っている系統(ガス供給系統の数)を減らす。これにより、流量計の測定レンジ内で充填を継続することを可能にしている。さらに、充填を行っている系統を減らしたときに、充填が行われなくなった系統で、他のタンクに充填することを可能にしている。以下、これらの点について、詳しく説明する。
【0055】
図1ないし図3に示すように、水素ガス充填装置1は、複数のガス供給管路5A,5Bと、流量計14A,14B、遮断弁13A,13Bおよびノズル7A,7Bと、制御手段としての制御装置22と、を備えている。複数のガス供給管路5A,5Bは、ガス供給源としてのガス蓄圧器2に接続されている。流量計14A,14B、遮断弁13A,13Bおよびノズル7A,7Bは、複数のガス供給管路5A,5Bにそれぞれ設けられている。
【0056】
この場合、複数のガス供給管路5A,5Bは、2つのガス供給管路5A,5B、即ち、一方のガス供給系統(A系統)に対応する第1ガス供給管路5A、および、他方のガス供給系統(B系統)に対応する第2ガス供給管路5Bである。そして、第1ガス供給管路5Aには、第1流量計14A、第1遮断弁13Aおよび第1ノズル7Aが設けられている。第2ガス供給管路5Bには、第2流量計14B、第2遮断弁13Bおよび第2ノズル7Bが設けられている。水素ガス充填装置1は、ノズル7A,7Bを車両51のタンク52に接続して充填を行う。
【0057】
制御装置22は、遮断弁13A,13Bの開閉動作を制御することにより、ガス(燃料ガス、水素ガス)の充填を制御する。即ち、制御装置22は、複数のガス供給管路5A,5Bの一方または両方を通じて充填対象となる車両51(タンク52)に水素ガスの充填を行う。この場合、制御装置22は、充填を開始するときに遮断弁13A,13Bを開弁し、充填を終了(停止)するときに遮断弁13A,13Bを閉弁する。
【0058】
また、制御装置22は、充填中に、例えば、第1流量計14A、第1圧力センサ20A、第1温度センサ21Aの測定結果を監視しつつ、第1流量調整弁12Aの開度等を、予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式、定流量制御方式等)で調整する。また、制御装置22は、充填中に、例えば、第2流量計14B、第2圧力センサ20B、第2温度センサ21Bの測定結果を監視しつつ、第2流量調整弁12Bの開度等を、予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式、定流量制御方式等)で調整する。
【0059】
さらに、制御装置22は、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの両方を通じて一のタンク52に充填(ダブル充填)を行っているときは、第1流量計14Aで測定される流量(充填量)と第2流量計14Bで測定される流量(充填量)とを合算する。即ち、制御装置22は、ダブル充填の場合、A系統とB系統との合計の流量(充填量)を算出し、これを表示器23A,23Bに表示する。また、制御装置22は、ダブル充填の場合、A系統とB系統との合計の流量(充填量)で精算を行う。なお、精算は、制御装置22と接続される別の精算装置(精算端末)で行うようにしてもよい。
【0060】
ここで、ディスペンサ3の筐体4の外面(正面4A、背面4B)には、充填を行う作業者が操作するシングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1が設けられている。シングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1は、A系統とB系統との両方の系統による同一の車両51(一のタンク52)への充填(ダブル充填)であるか、A系統とB系統といずれか一方の系統による充填(シングル充填)であるか、を選択するための切り換えボタン(選択ボタン)である。制御装置22は、作業者によるシングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1の操作に基づいて、シングル充填が選択されているかダブル充填が選択されているかを判定する。ダブル充填は、A系統とB系統とにそれぞれ設けられた流量計14A,14Bで計測された流量(充填量)を合算し、この合算した流量(充填量)を表示器23A,23Bに表示させる合算充填に対応する。
【0061】
制御装置22は、車両51(タンク52)に対する充填の終了を圧力により判定する。例えば、制御装置22は、シングル充填のときもダブル充填のときも、圧力センサ20A,20Bにより検出されるガス供給管路5A,5B中の圧力が充填終了条件(充填完了条件)となる目標終了圧力に達したときに、充填を終了する。また、筐体4の表示器23A,23Bには、充填量以外にも、例えば、シングル充填であるかダブル充填(合算充填)であるかが表示される。また、表示器23A,23Bには、いずれの充填経路で充填がなされているかの情報、例えば、「A系統」の充填である旨の情報、「B系統」の充填である旨の情報、または、「A系統」および「B系統」の充填である旨の情報、が表示される。この情報は、例えば、「文字」で表示してもよいし、「充填経路図」で表示してもよい。
【0062】
また、制御装置22は、ガス供給管路5A,5B中の流量または圧力に応じて、複数のガス供給管路5A,5Bのうちの充填を行うガス供給管路5A,5Bの数を切り換える。即ち、制御装置22は、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの両方を通じて同一のタンク52に充填(ダブル充填)を行っているときに、ガス供給管路5A,5B中のガスの流量または圧力に応じて、充填を行うガス供給管路5A,5Bの本数を切り換える。換言すれば、制御装置22は、一のタンク52に対し複数のガス供給管路5A,5Bを用いた充填を行っている際に、タンク52へ充填されるガスの流量またはタンク52内のガスの圧力に応じて、一のタンク52への充填に用いられるガス供給管路5A,5Bを増減させる。この場合、制御装置22は、ガス供給管路5A,5B中の流量が所定値(流量閾値)以下または圧力が所定値(圧力閾値)以上の場合に、複数のガス供給管路5A,5Bのうちの1以上のガス供給管路5B(5A)の遮断弁13B(13A)を閉弁させることにより、充填を行うガス供給管路の本数を切り換える。即ち、制御装置22は、一のタンク52に対し複数のガス供給管路5A,5Bを用いた充填を行っている際に、タンク52へ充填されるガスの流量が所定値(流量閾値)以下またはタンク52内のガスの圧力が所定値(圧力閾値)以上の場合に、複数のガス供給管路5A,5Bのうちの一部のガス供給系統(B系統のガス供給管路5B)の遮断弁(B系統の遮断弁13B)を閉弁させる。これにより、充填に用いられるガス供給系統を減少させる。
【0063】
例えば、制御装置22は、ダブル充填を行っているときに、ガス蓄圧器2の圧力と車両51のタンク52の圧力との差(差圧)が減少することにより、ガス供給管路5A,5B中のガスの流量が低下すると、B系統の充填を停止する。なお、充填を停止する系統は、A系統でもよい。即ち、制御装置22は、A系統とB系統との両方で一の充填対象(一のタンク52)に充填を行っているときに、ガスの流量が所定値以下になると、A系統とB系統とのうちの一方の系統(例えば、B系統)の充填を停止する。流量の所定値(流量閾値)は、例えば、流量計14A,14Bの計測可能な最小流量よりも大きい値として設定することができる。この場合、流量計14A,14Bの計測可能な最小流量をAとした場合、流量の所定値(流量閾値)Tfは、例えば、最小流量Aの1.2倍~1.3倍程度(1.2A≦Tf≦1.3A)とすることができる。
【0064】
A系統とB系統とのうちB系統の充填が停止すると、A系統の第1ガス供給管路5Aには、A系統とB系統との2系統分のガスが流入することになる。これにより、A系統の第1ガス供給管路5Aを流通するガスの流量が増大する。この結果、第1ガス供給管路5Aおよび/または第2ガス供給管路5B中のガスの流量が低下したときに、第2ガス供給管路5B中の第2遮断弁13Bを閉弁することで、第1ガス供給管路5A中のガスの流量が第1流量計14A(または、第2流量計14B)の測定レンジから逸脱しないようにできる。このように、制御装置22は、流量計14A,14Bにおいて計測可能な流量となるように、充填を行うガス供給管路の数を切り換える。即ち、制御装置22は、流量計14A,14Bにおいて計測可能な流量となるように、一のタンク52への充填に用いられるガス供給管路5A,5Bを増減させる。
【0065】
なお、制御装置22は、A系統とB系統との両方で一の充填対象(タンク52)に充填を行っているときに、ガス供給管路5A,5B中のガスの圧力が上昇すると、具体的には、圧力が所定値以上になると、A系統とB系統とのうちの一方の系統(例えば、B系統)の充填を停止してもよい。圧力の所定値は、例えば、流量計14A,14Bの計測可能な最小流量に対応する圧力として設定することができる。また、圧力の所定値は、目標終了圧力との関係で設定することができる。例えば、目標終了圧力をBとした場合、圧力の所定値(圧力閾値)Tpは、例えば、目標終了圧力Bの60%~80%程度(0.6B≦Tp≦0.8B)とすることができる。
【0066】
さらに、制御装置22は、車両51からIR通信(赤外線通信)等の無線通信により車両51のタンク52の圧力を取得でき、かつ、ガス供給管路5A,5B中の圧力(より具体的には、流量計14A,14Bよりも上流側の2次側圧力)を検出する2次圧力センサ(図示せず)がガス供給管路5A,5Bに設けられている場合は、これらの圧力の差(差圧)に応じて、充填を行うガス供給管路の数を切り換えてもよい。2次圧力センサは、ガス供給管路5A,5Bの上流側(流量調整弁12A,12Bよりも上流側)に設けられ、ガス蓄圧器2からガス供給管路5A,5B(流量調整弁12A,12Bよりも上流側)に供給されるガスの圧力(ガス蓄圧器2の圧力)を検出する圧力センサに対応する。なお、2次圧力センサは、ガス蓄圧器2に設けられる圧力センサであってもよい。このように、制御装置22は、ガス蓄圧器2のガスの圧力とタンク52のガスの圧力との差に応じて、一のタンク52への充填に用いられるガス供給管路5A,5Bを増減させてもよい。
【0067】
このような場合、制御装置22は、A系統とB系統との両方で一の充填対象(タンク52)に充填を行っているときに、車両51のタンク52側の圧力とガス蓄圧器2側の圧力との差(差圧)が低下すると、例えば、この差(差圧)が所定値以下になると、A系統とB系統とのうちの一方の系統(例えば、B系統)の充填を停止する。差圧(圧力差)の所定値は、例えば、流量計14A,14Bの計測可能な最小流量に対応する差圧(圧力差)として設定することができる。
【0068】
また、実施形態では、ディスペンサ3は、作業者に対し報知する報知手段としての表示器23A,23Bを備えている。そして、制御装置22により複数のガス供給管路5A,5Bのうちの充填を行うガス供給管路の数が切り換えられた場合に、表示器23A,23Bにより報知される。即ち、制御装置22は、充填を行うガス供給管路の数を切り換えると、この切り換えた旨の情報を表示器23A,23Bに表示する。換言すれば、制御装置22により一の燃料タンク52への充填に用いられるガス供給管路5A,5Bを増減させた場合に、表示器23A,23Bにより報知させる。
【0069】
例えば、制御装置22は、A系統とB系統とによりダブル充填を行っているときに、このうちの一方の系統(例えば、B系統)の充填を停止すると、一方の系統(B系統)による充填を停止した旨の情報を表示器23A,23Bに表示する。これにより、充填作業中の作業者は、表示器23A,23Bの表示に基づいて、充填を行うガス供給管路の数が切り換わったこと、即ち、A系統とB系統とのうちの一方の系統(B系統)の充填が停止したことが分かる。このため、作業者は、表示器23A,23Bの表示に基づいて、充填が行われなくなったガス供給管路を用いて他のタンクに充填を行う作業を開始することができる。
【0070】
次に、図4ないし図7に示す流れ図(フローチャート)について説明する。図4ないし図7は、制御装置22で行われる制御処理を示す流れ図である。図4ないし図7の処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0071】
図4ないし図7の制御処理は、例えば、制御装置22への通電により開始される。制御装置22は、S1およびS2で、シングル充填が選択されているかダブル充填が選択されているかを判定する。この判定は、シングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1により作業者がシングル充填とダブル充填とのいずれを選択しているかに基づいて判定することができる。なお、この判定は、車両51から取得される情報に基づいて行うこともできる。例えば、制御装置22は、ノズル7A,7Bがタンク52の充填口52A,52Bに接続されたとき、または、充填開始ボタン24A2,24B2が操作されたときに、A系統のノズル7Aを介して車両51から取得された車両情報(タンク情報)とB系統のノズル7Bを介して取得された車両情報(タンク情報)とが同じ場合に、ダブル充填と判定し、車両情報(タンク情報)が同じでない場合に、シングル充填と判定してもよい。
【0072】
また、制御装置22は、シングル充填であるかダブル充填であるかを、水素ステーション内の監視カメラ、ディスペンサに設けられる監視カメラ等のカメラ(画像取得装置、映像取得装置)から得た画像(映像)に基づいて判定してもよい。例えば、制御装置22は、カメラから得た画像(映像)を解析し、「同一車両にA系統のノズルとB系統のノズルが接続されている」、「A系統のノズルとB系統のノズルがそれぞれ別々の車両に接続されている」、「A系統とB系統とのうちの一方の系統のノズルのみが車両に接続されている」等を判定することにより、シングル充填であるかダブル充填であるかを自動で選択(切り換え)してもよい。
【0073】
制御装置22は、S1で、シングル充填が選択されているか否かを判定する。S1で「YES」、即ち、シングル充填が選択されていると判定された場合は、図4の「A」および図5の「A」を介して、図5のS11に進む。これに対して、S1で「NO」、即ち、シングル充填が選択されてないと判定された場合は、S2に進む。S2では、S1で、ダブル充填が選択されているか否かを判定する。S2で「YES」、即ち、ダブル充填が選択されていると判定された場合は、S3に進む。これに対して、S2で「NO」、即ち、ダブル充填が選択されていないと判定された場合は、S1の前、即ち、スタートに戻り、S1およびS2の処理を繰り返す。
【0074】
S3では、ダブル充填の表示を行う。即ち、ダブル充填の場合は、A系統(第1ガス供給管路5A)とB系統(第2ガス供給管路5B)との両方の系統を通じて、同一の車両51(一のタンク52)に対する充填が行われる。このため、制御装置22は、S3以降の処理として、表示器23A,23Bにダブル充填である旨を表示すると共に、充填量として、第1流量計14Aで測定されるA系統の流量(充填量)と第2流量計14Bで測定されるB系統の流量(充填量)との合算値を表示する。S3に続くS4では、充填開始スイッチ(充填開始ボタン24A2または充填開始ボタン24B2)が操作されたか否かを判定する。S4で「NO」、即ち、充填開始スイッチ(充填開始ボタン24A2または充填開始ボタン24B2)が操作されていないと判定された場合は、S4の前に戻り、S4の処理を繰り返す。これに対して、S4で「YES」、即ち、充填開始スイッチ(充填開始ボタン24A2または充填開始ボタン24B2)が操作されたと判定された場合は、S5に進む。
【0075】
S5では、A系統の第1遮断弁13Aおよび第1流量調整弁12AとB系統の第2遮断弁13Bおよび第2流量調整弁12Bを開弁する。S5に続くS6では、第1流量計14Aで測定される流量および/または第2流量計14Bで測定される流量が予め設定された所定値(流量閾値)よりも大きいか否かを判定する。所定値(流量閾値)は、例えば、コリオリ式の流量計14A,14Bの計測可能な最小流量Aが0.25kg/minの場合、0.30kg/minに設定することができる。通常時の流量は、約6kg/min以下である。
【0076】
なお、S6では、例えば、車両51からIR通信(赤外線通信)によりタンク52の圧力を取得でき、かつ、ガス蓄圧器2の圧力(2次側圧力)を検出できる場合、これらの圧力の差(差圧)を用いて判定してもよい。即ち、S6では、この圧力の差(差圧)が予め設定された所定値(差圧閾値)よりも大きいか否かを判定してもよい。この場合の所定値(差圧閾値)は、流量計14A,14Bの計測可能な最小流量Aに対応する圧力差として設定することができる。例えば、圧力差の所定値(差圧閾値)は、5MPaに設定することが考えられる。また、S6では、第1圧力センサ20Aで測定される圧力および/または第2圧力センサ20Bで測定される圧力が予め設定された所定値(圧力閾値)よりも大きいか否かを判定してもよい。
【0077】
S6で「YES」、即ち、第1流量計14Aで測定される流量および/または第2流量計14Bで測定される流量が予め設定された所定値(流量閾値)よりも大きいと判定された場合は、S7に進む。この場合は、ダブル充填を継続できる場合に対応する。これに対して、S6で「NO」、即ち、第1流量計14Aで測定される流量および/または第2流量計14Bで測定される流量が予め設定された所定値(流量閾値)以下であると判定された場合は、図4の「B」および図6の「B」を介して、S21に進む。この場合は、ダブル充填を継続できない場合に対応する。なお、圧力の差(差圧)でS6の判定を行う場合は、この圧力の差(差圧)が予め設定された所定値(差圧閾値)よりも大きいと判定された場合にS7に進み、所定値(差圧閾値)以下と判定された場合にS21に進むようにする。また、圧力でS6の判定を行う場合は、この圧力が予め設定された所定値(圧力閾値)よりも小さいと判定された場合にS7に進み、所定値(圧力閾値)以上と判定された場合にS21に進むようにする。
【0078】
S7では、充填完了条件を満たしているか否かを判定する。即ち、S7では、圧力センサ20A,20Bにより検出されるガス供給管路5A,5B中の圧力が充填終了条件となる目標終了圧力に達したか否かを判定する。S7で「NO」、即ち、充填完了条件を満たしていないと判定された場合は、S6の前に戻り、S6以降の処理を繰り返す。これに対して、S7で「YES」、即ち、充填完了条件を満たしていると判定された場合は、S8に進む。S8では、A系統の第1遮断弁13Aおよび第1流量調整弁12AとB系統の第2遮断弁13Bおよび第2流量調整弁12Bを閉弁する。
【0079】
また、S8では、A系統およびB系統の脱圧処理を行う。即ち、制御装置22は、A系統の第1脱圧弁19AおよびB系統の第2脱圧弁19Bを開弁し、第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bの圧力を大気圧レベルに減圧する。これにより、第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bは、タンク52の充填口52Aおよび充填口52Bから取り外し可能となる。さらに、制御装置22は、S8で、精算処理を行う。この場合、制御装置22は、第1流量計14Aで測定されたA系統の流量(充填量)と第2流量計14Bで測定されたB系統の流量(充填量)とを合算し、この合算値を充填量として精算を行う。精算処理が終了したら、リターンを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
【0080】
次に、図5を参照しつつS11以降の処理について説明する。図4のS1でシングル充填が選択されていると判定された場合は、図4の「A」および図5の「A」を介して、図5のS11に進む。図5では、A系統とB系統とで並列に処理が行われる。即ち、シングル充填が選択されている場合は、A系統とB系統とでそれぞれ個別に充填できることが好ましい。そこで、図5の処理では、A系統とB系統とで別々に処理(並列処理)を行うことにより、いずれか一方の系統で個別の充填が行われている場合に、他方の系統でも個別の充填を行うことができるようにしている。また、A系統もB系統も充填が終了した場合は、ダブル充填を行うことができるように、即ち、ダブル充填を選択できるように、図4のスタートに戻るようにしている。
【0081】
図5のS11では、シングル充填の表示を行う。即ち、シングル充填の場合は、A系統(第1ガス供給管路5A)とB系統(第2ガス供給管路5B)とで個別に充填が行われる。このため、制御装置22は、S11以降の処理として、表示器23A,23Bにシングル充填である旨を表示すると共に、第1流量計14Aで測定されるA系統の流量(充填量)を第1表示器23Aに表示し、第2流量計14Bで測定されるB系統の流量(充填量)を第2表示器23Bに表示する。S11以降は、A系統とB系統とでそれぞれ個別に処理が行われる。なお、図5では、A系統で行われる処理に「(A)」を付しており、B系統で行われる処理に「(B)」を付している。
【0082】
例えば、A系統では、S12(A)で、A系統の充填開始スイッチ(充填開始ボタン24A2)が操作されたか否かを判定する。S12(A)で「NO」、即ち、充填開始スイッチ(充填開始ボタン24A2)が操作されていないと判定された場合は、S12(A)の前に戻り、S12(A)の処理を繰り返す。これに対して、S12(A)で「YES」、即ち、充填開始スイッチ(充填開始ボタン24A2)が操作されたと判定された場合は、S13(A)に進む。S13(A)では、A系統の第1遮断弁13Aおよび第1流量調整弁12Aを開弁する。
【0083】
S13(A)に続くS14(A)では、A系統の充填完了条件を満たしているか否かを判定する。即ち、S14(A)では、A系統の第1圧力センサ20Aにより検出される第1ガス供給管路5A中の圧力が充填終了条件となる目標終了圧力に達したか否かを判定する。S14(A)で「NO」、即ち、充填完了条件を満たしていないと判定された場合は、S14(A)の前に戻り、S14(A)の処理を繰り返す。これに対して、S14(A)で「YES」、即ち、充填完了条件を満たしていると判定された場合は、S15(A)に進む。
【0084】
S15(A)では、A系統の第1遮断弁13Aおよび第1流量調整弁12Aを閉弁する。また、S15(A)では、A系統の脱圧処理を行う。即ち、制御装置22は、A系統の第1脱圧弁19Aを開弁し、第1ノズル7Aの圧力を大気圧レベルに減圧する。これにより、第1ノズル7Aは、タンク52の充填口52Aから取り外し可能となる。さらに、制御装置22は、S15(A)で、精算処理を行う。この場合、制御装置22は、第1流量計14Aで測定されたA系統の流量(充填量)を充填量として精算を行う。精算処理が終了したら、S16(A)に進む。なお、精算が終わると、A系統で充填を行っていた車両51は出発できる。
【0085】
S16(A)では、B系統が充填中であるか否かを判定する。即ち、S16(A)では、「シングル充填を継続する」か「ダブル充填の選択を可能にする」かを判定するための処理である。S16(A)で「YES」、即ち、B系統が充填中であると判定された場合は、B系統の充填中にA系統でも個別の充填ができるように、S12(A)の前に戻り、S12(A)の処理を繰り返す。このとき、A系統側に新たな車両51(タンク52)が停車し、この車両51(タンク52)の充填口52Aに第1ノズル7Aが接続され、かつ、充填開始ボタン24A2が操作されると、A系統による充填を開始することができる。即ち、S13(A)以降の処理が行われる。
【0086】
これに対して、S16(A)で「NO」、即ち、B系統が充填中でないと判定された場合は、ダブル充填を選択することができるように、図5のリターンを介して図4のスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。なお、図5のS12(B)からS16(B)のB系統の処理は、系統が異なる以外、図5のS12(A)からS16(A)のA系統の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
次に、図6を参照しつつS21以降の処理について説明する。図4のS6で、第1流量計14Aで測定される流量および/または第2流量計14Bで測定される流量が予め設定された所定値(流量閾値)以下であると判定された場合は、図4の「B」および図6の「B」を介して、S21に進む。図6の処理は、ダブル充填中に流量が所定値(流量閾値)以下となったときの処理である。S21では、ダブル充填中に流量が所定値(流量閾値)以下となったため、B系統の第2遮断弁13Bおよび第2流量調整弁12Bを閉弁する。
【0088】
これにより、A系統のみの充填となる。このように、S21では、一方の充填経路(B系統)を閉路させ、他方の充填経路(A系統)を充填継続させる。これにより、他方の充填経路側の流量を、流量計(第1流量計14A)が計測できない最小流量以下とならない程度に維持、または、そこまで低下させないようにできる。このため、両系統の流量計(第1流量計14Aおよび第2流量計14B)で流量の計測ができなくなってしまうことを抑制できる。なお、S21では、A系統の第1遮断弁13Aおよび第1流量調整弁12Aを閉弁するようにしてもよい。
【0089】
S21に続くS22では、表示器23A,23Bに、「A系統のみで充填を継続している旨」および「シングル充填への切り換えが可能である旨」を表示する。この表示を作業者が確認することにより、作業者は、B系統の充填経路の充填が不可であることを把握できる。また、表示器23A,23Bには、充填量として、「ダブル充填中のA系統とB系統との合算値」に「B系統の第2遮断弁13Bおよび第2流量調整弁12Bを閉弁した以降の第1流量計14Aで測定されるA系統の流量(充填量)」を加算した充填量が表示される。
【0090】
S22に続くS23では、充填完了条件を満たしているか否かを判定する。即ち、S23では、A系統の第1圧力センサ20Aにより検出される第1ガス供給管路5A中の圧力が充填終了条件となる目標終了圧力に達したか否かを判定する。S23で「NO」、即ち、充填完了条件を満たしていないと判定された場合は、S25に進む。これに対して、S23で「YES」、即ち、充填完了条件を満たしていると判定された場合は、S24に進む。
【0091】
S24では、A系統の第1遮断弁13Aおよび第1流量調整弁12Aを閉弁する。また、S24では、A系統およびB系統の脱圧処理を行う。即ち、制御装置22は、A系統の第1脱圧弁19AおよびB系統の第2脱圧弁19Bを開弁し、第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bの圧力を大気圧レベルに減圧する。これにより、第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bは、タンク52の充填口52Aおよび充填口52Bから取り外し可能となる。さらに、制御装置22は、S24で、精算処理を行う。この場合、制御装置22は、第1流量計14Aで測定されたA系統の流量(充填量)と第2流量計14Bで測定されたB系統の流量(充填量)とを合算し、この合算値を充填量として精算を行う。精算処理が終了したら、リターンを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
【0092】
一方、S23で充填完了条件を満たしていないと判定された場合は、S25に進む。S25では、シングル充填が選択されたか否かを判定する。この場合、シングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1がシングル充填に操作されたか否かを判定する。即ち、S25では、S22の「シングル充填への切り換えが可能である旨」の表示に基づいて、作業者がシングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1をシングル充填に操作したか否かを判定する。S25で「YES」、即ち、シングル充填が選択されたと判定された場合は、図6の「D」および図7の「D」を介してS31に進む。
【0093】
これに対して、S25で「NO」、即ち、シングル充填が選択されていないと判定された場合は、S26に進む。S26は、第1流量計14Aで測定される流量が予め設定された所定値(流量閾値)よりも大きいか否かを判定する。S26は、ダブル充填に戻すことが可能か否かを判定するための処理となる。S26の所定値(流量閾値)は、例えば、S6の所定値(流量閾値)と同じ、または、これよりも大きい値に設定することができる。S26の所定値(流量閾値)は、例えば、ダブル充填に再び戻しても、ダブル充填を継続できる流量(流量計14A,14Bの計測範囲を維持できる流量)として設定することができる。
【0094】
S26で「YES」、即ち、第1流量計14Aで測定される流量が予め設定された所定値(流量閾値)よりも大きいと判定された場合は、S27に進む。S27では、S21で閉弁したB系統の第2遮断弁13Bおよび第2流量調整弁12Bを開弁する。これにより、一のタンク52に用いられるガス供給系統について、現在の充填に用いられているA系統に加えてB系統のガス供給管路も追加される。即ち、一のタンク52に用いられるガス供給系統が増加する。S27で、B系統の第2遮断弁13Bおよび第2流量調整弁12Bを開弁したら、図6の「C」および図4の「C」を介してS7に進む。この場合は、一時的にシングル充填となった後、ダブル充填に復帰した場合に対応する。このとき、「A系統のみで充填を継続している旨」および「シングル充填への切り換えが可能である旨」の表示はOFFにする。これに対して、S26で「NO」、即ち、第1流量計14Aで測定される流量が予め設定された所定値(流量閾値)以下であると判定された場合は、S23の前に戻り、S23以降の処理を繰り返す。
【0095】
次に、図7を参照しつつS31以降の処理について説明する。図6のS25でシングル充填が選択されたと判定された場合は、図6の「D」および図7の「D」を介してS31に進む。図7の処理は、ダブル充填中にB系統の充填が中断された後に作業者がシングル充填を選択したときに処理に対応する。図5では、A系統とB系統とで並列に処理が行われる。即ち、図7では、A系統とB系統とでそれぞれ個別に処理が行われる。
【0096】
図7のS31では、ダブル充填の表示からシングル充填の表示に変更する。制御装置22は、S31以降の処理として、表示器23A,23Bにシングル充填である旨を表示すると共に、第1流量計14Aで測定されるA系統の流量(充填量)を第1表示器23Aに表示し、第2流量計14Bで測定されるB系統の流量(充填量)を第2表示器23Bに表示する。この場合、A系統の充填量は、「ダブル充填中のA系統とB系統との合算値」に「B系統の第2遮断弁13Bおよび第2流量調整弁12Bを閉弁した以降の第1流量計14Aで測定されるA系統の流量(充填量)」を加算した値となる。B系統の充填量は、0にリセットする。S31以降は、A系統とB系統とでそれぞれ個別に処理が行われる。
【0097】
B系統では、S34の処理が行われる。S34では、B系統の脱圧処理を行う。即ち、制御装置22は、B系統の第2脱圧弁19Bを開弁し、第2ノズル7Bの圧力を大気圧レベルに減圧する。これにより、第2ノズル7Bは、タンク52の充填口52Bから取り外し可能となる。S34で、B系統の脱圧処理を行ったら、図7の「F」および図5の「F」を介して図5のS12(B)に進む。この場合は、B系統の充填経路を脱圧させて、車両51からノズル7Bを取り外し、他の車両への充填を行うことができる。これにより、作業者による充填作業の効率化を図ることができる。
【0098】
A系統では、S32の処理が行われる。S32では、充填完了条件を満たしているか否かを判定する。即ち、S32では、A系統の第1圧力センサ20Aにより検出される第1ガス供給管路5A中の圧力が充填終了条件となる目標終了圧力に達したか否かを判定する。S32で「NO」、即ち、充填完了条件を満たしていないと判定された場合は、S32の前に戻り、S32の処理を繰り返す。これに対して、S32で「YES」、即ち、充填完了条件を満たしていると判定された場合は、S33に進む。
【0099】
S33では、A系統の第1遮断弁13Aおよび第1流量調整弁12Aを閉弁する。また、S33では、A系統の脱圧処理を行う。即ち、制御装置22は、A系統の第1脱圧弁19Aを開弁し、第1ノズル7Aの圧力を大気圧レベルに減圧する。これにより、第1ノズル7Aは、タンク52の充填口52Aから取り外し可能となる。なお、第2ノズル7Bは、S34の処理により、タンク52の充填口52Bから取り外しが可能になる(既に取り外されている)。さらに、制御装置22は、S33で、精算処理を行う。この場合、制御装置22は、充填量として、「ダブル充填中のA系統とB系統との合算値」に「B系統の第2遮断弁13Bおよび第2流量調整弁12Bを閉弁した以降の第1流量計14Aで測定されるA系統の流量(充填量)」を加算した値で精算を行う。精算処理が終了したら、図7の「E」および図5の「E」を介して図5のS16(A)に進む。
【0100】
実施形態による水素ガス充填装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に、水素ガス充填装置1による水素ガスの充填作業について説明する。
【0101】
まず、シングル充填の充填作業を説明する。例えば、1つの充填口52Aを有する車両51が、ディスペンサ3(筐体4)の正面4A側に停車する。充填作業を行う作業者は、A系統の第1ノズル7Aを第1ノズル掛け8Aから取り外す。そして、図1中に二点鎖線で示すように、第1ノズル7Aをタンク52の充填口52Aに接続し、当該接続部位をロックする。この状態で、充填作業の作業者が、筐体4の正面4A側のシングル・ダブル切換ボタン24A1を操作することによりシングル充填を選択し、さらに、充填開始ボタン24A2をON操作すると、制御装置22は、第1流量調整弁12Aと第1遮断弁13Aに開弁信号を出力する(図4のS1、図5のS11、S12(A)、S13(A))。即ち、制御装置22は、第1流量調整弁12Aおよび遮断弁13Aを開弁させる。
【0102】
これにより、ガス蓄圧器2内の水素ガスは、A系統となる第1ガス供給管路5Aを通じて車両51のタンク52に充填される。制御装置22は、例えば第1流量計14A、第1圧力センサ20A、第1温度センサ21Aの測定結果を監視しつつ、第1流量調整弁12Aの開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式、定流量制御方式等)で調整する。これにより、第1ガス供給管路5A内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
【0103】
このとき、制御装置22は、第1流量計14Aからの流量パルスを積算して水素ガスの充填量(質量)を演算し、水素ガスの充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または第1圧力センサ20Aにより検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力(目標充填圧)に達したか否かを判定する(図5のS14(A))。目標とする充填量(圧力)に達したと判定したときには、制御装置22からの信号により第1流量調整弁12Aおよび第1遮断弁13Aが閉弁され、タンク52への水素ガスの充填が終了される(図5のS15(A))。なお、作業者が充填停止ボタン24A3,24B3を操作した場合にも、充填が終了される。
【0104】
充填が終了すると、制御装置22は充填終了制御処理を実行する(図5のS15(A))。この充填終了制御処理では、制御装置22からの信号により第1脱圧弁19Aを閉弁状態から開弁するように制御する。そして、第1脱圧弁19Aが開弁したときには、第1脱圧管路18Aが大気に開放されることにより、第1ノズル7A側のガスが外部に放出されて第1ノズル7Aの圧力が大気圧レベルに減圧される。この状態で、作業者は第1ノズル7Aの接続カプラ7A1をタンク52の充填口52Aから取り外すことができる。
【0105】
タンク52の充填口52Aから取り外された第1ノズル7Aは、作業者によって第1ノズル掛け8Aに戻され、手動操作により掛止めされる。第1ノズル掛け8Aに設けられた第1ノズル検出器25Aは、第1ノズル7Aが第1ノズル掛け8Aに戻されたか否かを検出する。第1ノズル7Aが第1ノズル掛け8Aに戻されて掛止めされると、第1ノズル検出器25Aからの検出信号が制御装置22に出力される。これにより、制御装置22は、第1ノズル7Aによる充填作業が終了したと判定し、次回の充填作業に対する待機状態となる。
【0106】
なお、このようなシングル充填は、ディスペンサ3(筐体4)の正面4A側に停車した車両51だけでなく、ディスペンサ3の背面4B側に停車した車両に対しても行うことができる。この場合は、ディスペンサ3の背面4B側に停車した車両に対して、B系統となる第2ガス供給管路5Bを通じて充填(シングル充填)を行うことができる。シングル充填は、ディスペンサ3の正面4A側と背面4B側との両方に停車した車両51に対して同時に行うことができる。
【0107】
次に、ダブル充填の充填作業を説明する。図3に示すように、2つの充填口52A,52Bを有する車両51が、ディスペンサ3(筐体4)の正面4A側に停車する。充填作業を行う作業者は、第1ノズル7Aを第1ノズル掛け8Aから取り外す。また、第2ノズル7Bを第2ノズル掛け8Bから取り外す。そして、第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bを車両51の2つの充填口52A,52Bに接続し、当該接続部位をロックする。この状態で、充填作業の作業者が、筐体4の正面4A側のシングル・ダブル切換ボタン24A1を操作することによりダブル充填を選択し、さらに、充填開始ボタン24A2をON操作すると、制御装置22は、第1流量調整弁12A、第2流量調整弁12B、第1遮断弁13Aおよび第2遮断弁13Bに開弁信号を出力する(図4のS1-S5)。即ち、制御装置22は、第1流量調整弁12A、第2流量調整弁12B、第1遮断弁13Aおよび第2遮断弁13Bを開弁させる。
【0108】
これにより、ガス蓄圧器2内の水素ガスは、A系統となる第1ガス供給管路5Aからノズル7Aおよび充填口52Aを通じて車両51のタンク52に充填され、かつ、B系統となる第2ガス供給管路5Bからノズル7Bおよび充填口52Bを通じて車両51のタンク52に充填される。制御装置22は、例えば第1流量計14A、第1圧力センサ20A、第1温度センサ21Aの測定結果を監視しつつ、第1流量調整弁12Aの開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。これと共に、制御装置22は、例えば第2流量計14B、第2圧力センサ20B、第2温度センサ21Bの測定結果を監視しつつ、第2流量調整弁12Bの開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。この場合、制御装置22は、A系統とB系統とで同じ制御方式で充填を行う。これにより、第1ガス供給管路5A内および第2ガス供給管路5B内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
【0109】
このとき、制御装置22は、第1流量計14Aおよび第2流量計14Bからの流量パルスを積算して水素ガスの充填量(質量)を演算し、水素ガスの充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または第1圧力センサ20Aおよび/または第2圧力センサ20Bにより検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力(目標充填圧)に達したか否かを判定する(図4のS7)。目標とする充填量(圧力)に達したと判定したときには、制御装置22からの信号により第1流量調整弁12A、第2流量調整弁12B、第1遮断弁13Aおよび第2遮断弁13Bが閉弁され、タンク52への水素ガスの充填が終了される(図4のS8)。なお、作業者が充填停止ボタン24A3,24B3を操作した場合にも、充填が終了される。
【0110】
充填が終了すると、制御装置22は充填終了制御処理を実行する(図4のS8)。この充填終了制御処理では、制御装置22からの信号により第1脱圧弁19Aおよび第2脱圧弁19Bを閉弁状態から開弁するように制御する。そして、第1脱圧弁19Aの開弁に伴って第1脱圧管路18Aが大気に開放されることにより、第1ノズル7A側のガスが外部に放出されて第1ノズル7Aの圧力が大気圧レベルに減圧される。また、第2脱圧弁19Bの開弁に伴って第2脱圧管路18Bが大気に開放されることにより、第2ノズル7B側のガスが外部に放出されて第2ノズル7Bの圧力が大気圧レベルに減圧される。この状態で、作業者は第1ノズル7Aの接続カプラ7A1および第2ノズル7Bの接続カプラ7B1をタンク52の充填口52A,52Bから取り外すことができる。
【0111】
タンク52の充填口52A,52Bから取り外された第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bは、作業者によって第1ノズル掛け8Aおよび第2ノズル掛け8Bに戻され、手動操作により掛止めされる。ノズル検出器25A,25Bは、ノズル7A,7Bがノズル掛け8A,8Bに戻されたか否かを検出する。ノズル7A,7Bがノズル掛け8A,8Bに戻されて掛止めされると、ノズル検出器25A,25Bからの検出信号が制御装置22に出力される。これにより、制御装置22は、ノズル7A,7Bによるダブル充填の作業が終了したと判定し、次回の充填作業に対する待機状態となる。なお、このようなダブル充填は、ディスペンサ3(筐体4)の背面4B側に停車した車両に対して行うこともできる。
【0112】
また、ダブル充填中に、第1流量計14Aで測定される流量および/または第2流量計14Bで測定される流量が予め設定された所定値(流量閾値)以下になると、B系統の第2遮断弁13Bおよび第2流量調整弁12Bが閉弁する(図4のS6、図6のS21)。これにより、A系統の第1ガス供給管路5Aには、A系統とB系統との2系統分のガスが流入することになり、第1ガス供給管路5Aを流通するガスの流量が増大する。この結果、第1ガス供給管路5A中のガスの流量が第1流量計14Aの測定レンジから逸脱することを抑制できる。
【0113】
また、B系統の第2遮断弁13Bおよび第2流量調整弁12Bが閉弁すると、表示器23A,23Bには、「A系統のみで充填を継続している旨」および「シングル充填への切り換えが可能である旨」が表示される(図6のS22)。この表示に基づいて、作業者がシングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1をシングル充填に操作すると、B系統の脱圧処理が行われる(図6のS25、図7のS34)。これにより、充填が行われなくなったB系統で、別の車両のタンクに充填することが可能となる(図7のS34の処理の後の図5のS12(B))。
【0114】
以上のように、実施形態によれば、制御装置22は、タンク52へ充填されるガスの流量またはタンク52内のガスの圧力に応じて、一のタンク52への充填に用いられるガス供給系統の本数(ガス供給管路5A,5Bの数)を増減させる。このため、ダブル充填中に、流量が低下または圧力が上昇することにより、2本のガス供給管路5A,5Bを用いた充填の必要性が低下したときに、充填を行うガス供給管路5A,5Bの数を少なくできる。これにより、充填が行われなくなったガス供給管路5Bを用いて、他のタンクに充填することが可能になる。この結果、効率的な充填作業を行うことができる。
【0115】
実施形態によれば、制御装置22は、タンク52へ充填されるガスの流量が所定値以下またはタンク52内のガスの圧力が所定値以上の場合に、一部のガス供給系統の遮断弁、即ち、第2ガス供給管路5Bの第2遮断弁13Bを閉弁させる。これにより、充填を行うガス供給管路5A,5Bの数を2本から1本に切り換える。このため、充填に伴い流量が所定値以下または圧力が所定値以上となったときに、充填を行うガス供給管路5A,5Bの数を少なくできる。
【0116】
なお、制御装置22は、ガス蓄圧器2のガスの圧力と車両51のタンク52内のガスの圧力との差(差圧)に応じて、一のタンク52への充填に用いられるガス供給管路5A,5Bの数を2本から1本に切り換えてもよい。この場合、制御装置22は、ガス供給管路5A,5Bの圧力と車両51のタンク52の圧力との差(差圧)が所定値以下の場合に、第2ガス供給管路5Bの第2遮断弁13Bを閉弁させる。この場合は、充填に伴いガス供給源(ガス蓄圧器2)側の圧力と充填対象(車両51のタンク52)側の圧力との差が所定値以下となり、2本のガス供給管路5A,5Bを用いた充填の必要性が低下したときに、充填を行うガス供給管路5A,5Bの数を少なくできる。
【0117】
実施形態によれば、制御装置22により一のタンク52への充填に用いられるガス供給管路5A,5Bを増減させた(2本から1本に切り換えた)場合に、その旨が表示器23A,23Bにより報知される。このため、この報知に基づいて、充填が行われなくなったガス供給管路5Bを用いて他のタンクに充填を行うことができる。
【0118】
実施形態によれば、制御装置22は、流量計14A,14Bにおいて計測可能な流量となるように、一のタンク52への充填に用いられるガス供給管路5A,5Bを増減させる(2本から1本に切り換える)。このため、複数のガス供給管路5A,5Bを用いて一のタンク52へ充填を行っているときに、充填に伴い流量が低下すると、充填を行うガス供給管路5A,5Bの数を少なくすることにより、充填を継続しているガス供給管路5A中の流量を大きくできる。これにより、ガス供給管路5A中の流量が、流量計14Aの計測可能範囲から外れることを抑制できる。この結果、流量計14A,14Bによる流量の計測の正確性、安定性を向上できる。
【0119】
なお、実施形態では、充填流量の低下に伴い流量計14A,14Bの計測可能範囲(計測範囲の下限値)から外れることを抑制するために、充填を行うガス供給管路5A,5Bの数を2本から1本に切り換える制御について説明した。しかし、これに限らず、例えば、複数のガス供給管路5A,5Bを用いて一のタンク52へ充填を行っている際に、一方のガス供給管路にて充填可能である(例えば、ガス供給系統が増加(2倍になったと)しても一方のガス供給系統で供給しうる流量である)と判断した場合に、充填を行うガス供給管路5A,5Bの数を2本から1本に切り換えてもよい。
【0120】
実施形態では、ガス供給源としてのガス蓄圧器2を、1つの蓄圧器として図示しているが、これに限らず、ガス供給源(ガス蓄圧器)は、例えば、使用下限圧力を多段にした複数の蓄圧器により構成される多段蓄圧器としてもよい。例えば、ガス供給源(ガス蓄圧器)を、使用下限圧力が低い低圧バンク(1st.BNK、低圧蓄圧器)と、使用下限圧力が中間の中圧バンク(2nd.BNK、中間蓄圧器)と、使用下限圧力が高い高圧バンク(3rd.BNK、高圧蓄圧器)とにより構成してもよい。
【0121】
この場合には、例えば、多段蓄圧器のいずれかのバンクから複数のガス供給管路を通じて一の充填対象(一のタンク)に充填を行っているときに、タンクへ充填されるガスの流量またはタンク内のガスの圧力に応じて、充填に用いられるガス供給系統を増減させることができる。より具体的には、例えば、低圧バンク(1st.BNK、低圧蓄圧器)から2系統で充填を行っているときに、流量が低下すると、1系統に切り換え、次いで、中圧バンク(2nd.BNK、中間蓄圧器)を用いた充填を開始するときに、再び2系統で充填を行うようにしてもよい。
【0122】
実施形態では、複数のガス供給管路(ガス供給系統、ガス供給経路)として、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの2つの系統(経路)を備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、3つ以上のガス供給管路(ガス供給系統、ガス供給経路)を備える構成としてもよい。この場合も、制御手段は、タンクへ充填されるガスの流量またはタンク内のガスの圧力に応じて、一のタンクへの充填に用いられるガス供給系統を増減させる。具体的には、例えば3つのガス供給管路により一の燃料タンクへ充填を行う際に、ガス供給管路中の流量または圧力に応じて、3つのガス供給管路のうち、1のガス供給管路のみ充填を停止(遮断弁を閉弁)させ、残り2つのガス供給管路により充填を行わせるよう、制御手段が制御してもよい。
【0123】
実施形態では、シングル充填であるかダブル充填であるかを、作業者が操作するシングル・ダブル切換ボタン24A1,24B1により判定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、シングル・ダブル切換ボタンは、省略してもよい。例えば、制御装置は、車両から取得される情報に基づいて、シングル充填であるかダブル充填であるかを判定し、この判定結果に基づいて、シングル充填とダブル充填との選択(切り換え)を自動で行ってもよい。この場合、制御装置は、例えば、ノズルがタンクの充填口に接続されたとき、または、充填開始ボタンが操作されたときに、A系統のノズルを介して取得された車両情報とB系統のノズルを介して取得された車両情報とが同じ場合に、ダブル充填と判定し、車両情報が同じでない場合に、シングル充填と判定してもよい。
【0124】
さらに、制御装置は、シングル充填であるかダブル充填であるかを、水素ステーション内の監視カメラ、ディスペンサに設けられる監視カメラ等のカメラ(画像取得装置、映像取得装置)から得た画像(映像)に基づいて判定してもよい。例えば、制御装置は、カメラから得た画像(映像)を解析し、「同一車両にA系統のノズルとB系統のノズルが接続されている」、「A系統のノズルとB系統のノズルがそれぞれ別々の車両に接続されている」、「A系統とB系統とのうちの一方の系統のノズルのみが車両に接続されている」等を判定することにより、シングル充填であるかダブル充填であるかを自動で選択(切り換え)してもよい。また、このような場合は、流量または圧力に応じて充填を行うガス供給管路の数が切り換わったときに、充填が行われなくなったガス供給管路を用いて他のタンクへの充填を開始できるように、これを開始するためのスイッチ(ボタン)を設ける構成とすることができる。
【0125】
実施形態では、2つの充填口を有する車両として、2つの充填口52A,52Bを有する1つのタンク52が搭載された車両51を例に挙げて説明した。即ち、実施形態では、複数の充填口を有する車両として、複数の充填口を有する1つのタンクを搭載した車両を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、車両は、例えば、複数の充填口を有するタンクを複数搭載した車両としてもよい。
【0126】
実施形態では、表示器23A,23Bを筐体4の正面4A側と背面4B側との両方に設けると共に、ダブル充填(合算充填)の場合に、両方の表示器23A,23Bに充填量の合算値が表示される構成とした場合を例に挙げて説明した。このような構成によれば、充填が行われていない側に位置する作業者(充填者)が、ダブル充填が行われていること(充填ができないこと)を把握することができる。しかし、これに限らず、例えば、表示器に、合算値ではなく、対応する系統の充填量を表示させる構成としてもよい。この場合に、例えば、ダブル充填であれば、それぞれの表示器に表示された充填量を合算した合算値で精算が行われるようにすることができる。
【0127】
実施形態では、タンク52が搭載された車両51として自動車を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、車両は、フォークリフト等の作業車両としてもよい。また、自動車としては、例えば、バス等の乗合自動車でもよいし、トラック等の貨物自動車でもよい。
【0128】
実施形態では、車両51のタンク52に水素ガスを充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車両以外の機械、機器のタンク、タンク以外のガス容器等、各種の充填対象に水素ガスを充填するときに用いることもできる。また、水素ガス充填装置1のディスペンサ3は、他の場所に水素ガスを給送するための管路(水素給送管路)の途中に設置させてもよい。さらに、ガス(燃料ガス)として水素ガスを例に挙げて説明したが、天然ガス(NG)、プロパンガス(LPG)等の水素ガス以外のガス(燃料ガス)を用いる構成(ガス充填装置)としてもよい。
【0129】
以上説明した実施形態によれば、制御手段は、一のタンクに対し複数のガス供給系統を用いた充填を行っているときに、タンクへ充填されるガスの流量またはタンク内のガスの圧力に応じて、一のタンクへの充填に用いられるガス供給系統を増減させる。このため、複数のガス供給系統を用いた一のタンクへの充填中に、例えば流量が低下または圧力が上昇することにより、複数のガス供給系統を用いた充填の必要性が低下したときに、充填を行うガス供給系統を少なくすることができる。これにより、充填が行われなくなったガス供給系統を用いて、他のタンクに充填することが可能になる。この結果、効率的な充填作業を行うことができる。
【0130】
実施形態によれば、制御手段は、一のタンクに対し複数のガス供給系統を用いた充填を行っているときに、タンクへ充填されるガスの流量が所定値以下またはタンク内のガスの圧力が所定値以上の場合に、複数のガス供給系統のうちの一部のガス供給系統の遮断弁を閉弁させる。このため、充填に伴い流量が所定値以下または圧力が所定値以上となったときに、充填を行うガス供給系統を少なくできる。
【0131】
実施形態によれば、制御手段は、ガス供給源の圧力とタンクの圧力との差に応じて、一のタンクへの充填に用いられるガス供給系統を増減させる。このため、複数のガス供給系統を用いた一のタンクへの充填中に、ガス供給源側の圧力とタンク側の圧力との差が小さくなることにより、複数のガス供給系統を用いた充填の必要性が低下したときに、充填を行うガス供給系統を少なくすることができる。
【0132】
実施形態によれば、制御手段により一のタンクへの充填に用いられるガス供給系統を増減させた場合に、報知手段により報知させる。このため、この報知に基づいて、充填が行われなくなったガス供給系統を用いて他のタンクに充填を行うことができる。
【0133】
実施形態によれば、制御手段は、流量計において計測可能な流量となるように、一のタンクへの充填に用いられるガス供給系統を増減させる。このため、複数のガス供給系統を用いて一のタンクへ充填を行っているときに、充填に伴い流量が低下すると、充填を行うガス供給系統を少なくすることにより、充填を継続しているガス供給系統の流量を大きくできる。これにより、ガス供給系統の流量が、流量計の計測可能範囲から外れることを抑制できる。この結果、流量計による流量の計測の正確性、安定性を向上できる。
【符号の説明】
【0134】
1 水素ガス充填装置(ガス充填装置)
2 ガス蓄圧器(ガス供給源)
3 ディスペンサ(充填機構)
5A 第1ガス供給管路(ガス供給系統)
5B 第2ガス供給管路(ガス供給系統)
6A 第1ホース(ガス供給系統)
6B 第2ホース(ガス供給系統)
7A 第1ノズル(充填ノズル)
7B 第2ノズル(充填ノズル)
13A 第1遮断弁(遮断弁)
13B 第2遮断弁(遮断弁)
14A 第1流量計(流量計)
14B 第2流量計(流量計)
22 制御装置(制御手段)
23A 第1表示器(報知手段)
23B 第2表示器(報知手段)
51 車両
52 タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7