(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025067045
(43)【公開日】2025-04-24
(54)【発明の名称】ドリルビットの先端構造及びそれを備えるドリルビット
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20250417BHJP
B23B 51/00 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
B28D1/14
B23B51/00 L
B23B51/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176706
(22)【出願日】2023-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000137845
【氏名又は名称】株式会社ミヤナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 典英
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大生
【テーマコード(参考)】
3C037
3C069
【Fターム(参考)】
3C037BB00
3C037DD01
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069BB02
3C069BB03
3C069BC01
3C069CA01
3C069CA07
3C069DA07
3C069EA01
3C069EA02
(57)【要約】
【課題】ドリルビットの先端構造において、穿孔速度を向上させつつ、穿孔精度を良好にする。
【解決手段】本開示の一態様に係るドリルビットの先端構造は、前記ドリルビットの径方向の中心部に位置する第1刃先と、前記中心部から前記径方向の外側に延びる稜線である切刃と、を含む主刃と、前記第1刃先よりも前記径方向の外側に位置する第2刃先を含む副刃と、を備え、前記主刃の前記稜線は、前記径方向の外側かつ前記ドリルビットの軸線方向の基端側へと斜めに傾斜しており、前記第2刃先は、前記軸線方向の位置に関し、前記稜線上の任意の点と同じ位置に配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルビットの先端構造であって、
前記ドリルビットの径方向の中心部に位置する第1刃先と、前記中心部から前記径方向の外側に延びる稜線である切刃と、を含む主刃と、
前記第1刃先よりも前記径方向の外側に位置する第2刃先を含む副刃と、を備え、
前記主刃の前記稜線は、前記径方向の外側かつ前記ドリルビットの軸線方向の基端側へと斜めに傾斜しており、
前記第2刃先は、前記軸線方向の位置に関し、前記稜線上の任意の点と同じ位置に配置される、ドリルビットの先端構造。
【請求項2】
前記副刃は、前記軸線方向の先端側に突出する突部を更に含み、
前記第2刃先は、前記副刃の前記突部の先端である、請求項1に記載のドリルビットの先端構造。
【請求項3】
ドリルビットの先端構造であって、
前記ドリルビットの径方向の中心部に位置する第1刃先と、前記中心部から前記径方向の外側に延びる稜線である切刃と、を含む主刃と、
前記第1刃先よりも前記径方向の外側に位置する第2刃先を含む副刃と、を備え、
前記主刃の前記稜線は、前記径方向の外側かつ前記ドリルビットの軸線方向の基端側へと斜めに傾斜しており、
前記副刃は、前記軸線方向の先端側に突出する突部を更に含み、
前記第2刃先は、前記副刃の前記突部の先端である、ドリルビットの先端構造。
【請求項4】
前記副刃の前記突部は、前記径方向において前記副刃の中央部に位置する、請求項2又は3に記載のドリルビットの先端構造。
【請求項5】
前記主刃は、前記径方向の前記中心部において、前記軸線方向の先端側に突出する突部を更に含み、
前記第1刃先は、前記主刃の前記突部の先端である、請求項1乃至3のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
【請求項6】
前記主刃は、前記軸線方向の先端側から見て、前記径方向の前記中心部から前記径方向の両側に直線状に延びる、請求項1乃至3のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
【請求項7】
前記副刃は、前記主刃と別個に設けられる、請求項1乃至3のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
【請求項8】
前記軸線方向において、前記主刃の基端は、前記副刃の基端よりも前記ドリルビットの基端側に位置する、請求項1乃至3のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
【請求項9】
前記径方向における前記第1刃先から前記第2刃先までの距離を特定距離と定義し、前記第1刃先から前記特定距離だけ離れた前記稜線上の点を特定点と定義したとき、
前記軸線方向における前記第2刃先の位置は、前記軸線方向における前記特定点の位置と同じである、請求項1乃至3のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
【請求項10】
前記第2刃先は、前記副刃における前記軸線方向の先端側の所定部分にあり、
前記副刃は、前記軸線方向の先端側から見て、前記副刃の長手方向に沿って前記所定部分から延びる稜線を更に含み、
前記副刃の前記稜線は、前記主刃の前記稜線よりも前記軸線方向の基端側に配置されている、請求項1乃至3のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
【請求項11】
請求項1乃至3のいずれかに記載のドリルビットの先端構造と、
前記ドリルビットの軸線方向に延び、その先端部に前記ドリルビットの先端構造が配置されるビットシャフト部と、を備える、ドリルビット。
【請求項12】
前記ビットシャフト部は、
穿孔対象の被穿孔箇所を穿孔した際に生じる切屑を前記軸線方向の基端側に向けて排出する切屑排出溝と、
前記切屑排出溝を画定するつる巻線部と、を有し、
前記切屑排出溝及び前記つる巻線部は、それぞれ、その前記軸線方向の先端部が前記軸線方向と平行に延びる、請求項11に記載のドリルビット。
【請求項13】
前記軸線方向の先端側から見て、前記ドリルビットの周方向における前記副刃の一側と前記主刃とのなす角度は、前記周方向における前記副刃の他側と前記主刃とのなす角度よりも大きく、
前記切屑排出溝の前記先端部は、前記副刃の前記一側と前記主刃との間の領域に臨んでいる、請求項12に記載のドリルビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドリルビットの先端構造及びそれを備えるドリルビットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドリルビットの先端構造が開示されている。前記ドリルビットの先端構造は、前記ドリルビットの先端中心から前記径方向の外側に延びる3つの刃部を備える。3つの前記刃部は、それぞれ、前記先端中心から前記径方向の外側に延びる稜線である切刃を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ドリルビットの先端構造は、穿孔途中の穴の底に3つの刃部の切刃が接触し続けるので、当該穴の底から比較的大きな摩擦力を受ける。このような摩擦力を小さくすることで、穿孔速度を向上させる余地があった。また、前記ドリルビットの先端構造は、穿孔作業中に先端中心が径方向に位置ずれする場合がある。この位置ずれを抑制することで、穿孔精度を改善する余地があった。
【0005】
そこで、本開示は、ドリルビットの先端構造において、穿孔速度を向上させつつ、穿孔精度を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るドリルビットの先端構造は、ドリルビットの先端構造であって、前記ドリルビットの径方向の中心部に位置する第1刃先と、前記中心部から前記径方向の外側に延びる稜線である切刃と、を含む主刃と、前記第1刃先よりも前記径方向の外側に位置する第2刃先を含む副刃と、を備え、前記主刃の前記稜線は、前記径方向の外側かつ前記ドリルビットの軸線方向の基端側へと斜めに傾斜しており、前記第2刃先は、前記軸線方向の位置に関し、前記稜線上の任意の点と同じ位置に配置される。
【0007】
本開示の一態様によれば、副刃の第2刃先が主刃の稜線と共に穿孔対象の穿孔途中の穴の底に到達する。したがって、従来のように穿孔途中の穴の底に3つの刃部の稜線が接触し続ける場合と比較して、ドリルビットの先端構造と穴の底との接触面積が小さくなる。これにより、ドリルビットの先端構造が穴の底から受ける摩擦力が小さくなるので、穿孔速度が向上する。また、副刃の第2刃先が、径方向において主刃の第1刃先から離れた位置で穿孔対象の穿孔途中の穴の底に接触するので、穿孔作業中に主刃の第1刃先が径方向に位置ずれすることを抑制できる。これにより、穿孔精度を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るドリルビット及び当該ドリルビットに連結されたドリル駆動装置を用いて穿孔作業を行っている様子を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るドリルビットを示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るドリルビットを軸線方向の先端側から見たときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明では、ドリルビット1の軸線AXが延びる方向を軸線方向とし、それに直交する方向を径方向とし、かつそれ周りの方向を周方向と定義する。
【0010】
図1は、実施形態に係るドリルビット1及び当該ドリルビット1に連結されたドリル駆動装置4を用いて穿孔作業を行っている様子を示す概略図である。
図1に示すように、ドリルビット1は、その基端部であるシャンク部10(
図2参照)がドリル駆動装置4の把持部40に把持されることで、ドリル駆動装置4に連結される。ドリルビット1は、作業者によりそのスイッチ41が押下されると、その筐体42内に配置された電気モータに駆動されることで、軸線AX周りに回転しかつ当該軸線AXに沿って振動する。この状態で、ビット先端部3(ドリルビット1の先端構造)を穿孔対象Pの被穿孔箇所Paに押し当てることで、当該被穿孔箇所Paに対して穿孔作業を行うことができる。
【0011】
図2は、実施形態に係るドリルビット1を示す概略図である。
図2に示すように、ドリルビット1は、軸線方向に延びるビットシャフト部2と、ビットシャフト部2の先端部に配置されるビット先端部3と、を備える。ドリルビット1の軸線方向において、ビット先端部3が存在する側が先端側であり、その反対側すなわちシャンク部10が存在する側が基端側である。
【0012】
ビットシャフト部2は、その基端部に配置されるシャンク部10と、当該シャンク部10の先端側に配置される主シャフト部13と、を有する。シャンク部10及び主シャフト部13は一体物である。ビットシャフト部2は、金属製であり得る。
【0013】
主シャフト部13の外周部は、切屑排出溝11と、切屑排出溝11を画定する螺旋凸条部である複数(例えば2つ)のつる巻線部12と、を含む。切屑排出溝11は、穿孔対象P(
図1参照)の被穿孔箇所Pa(
図1参照)を穿孔した際に生じる切屑を軸線方向の基端側に向けて排出するために設けられる。
【0014】
複数のつる巻線部12は、それぞれ、その軸線方向の先端部12aが当該軸線方向と平行に延びる。これにより、切屑排出溝11も、その軸線方向の先端部11aが当該軸線方向と平行に延びる。一方のつる巻線部12の先端部12aは、周方向において、後述する主刃20の径方向の一端部から後述する一方の副刃30までの領域に配置される。当該一方のつる巻線部12の先端部12aには、当該主刃20の径方向の一端部及び当該一方の副刃30が固定される。他方のつる巻線部12の先端部12aは、周方向において、後述する主刃20の径方向の他端部から後述する他方の副刃30までの領域に配置される。当該他方のつる巻線部12の先端部12aには、当該主刃20の径方向の他端部及び当該他方の副刃30が固定される。
【0015】
図3は、実施形態に係るドリルビット1を軸線方向の先端側から見たときの概略図である。
図4は、
図3のIV矢視図である。
図3及び
図4に示すように、ビット先端部3は、主刃20及び複数(例えば2つ)の副刃30を備える。複数の副刃30は、主刃20とは別体であり、主刃20と別個に設けられる。主刃20及び複数の副刃30は、それぞれ、ビットシャフト部2の先端面から軸線方向の基端側へと当該ビットシャフト部2に埋め込まれるようにして当該ビットシャフト部2に固定される。主刃20及び複数の副刃30は、それぞれ、電気抵抗による溶着、ろう付け溶接、又はレーザ溶接等の接合手法によってビットシャフト部2に接合して固定され得る。主刃20及び複数の副刃30の材料は、それぞれ、メタルボンドダイヤモンド砥石、又は、超硬合金であり得る。
【0016】
軸線方向の先端側から見て、主刃20は、ドリルビット1の径方向の中心部1aから当該径方向の両側に直線状に延びる。軸線方向の先端側から見て、一方の副刃30は当該中心部1aを基準として径方向の一方側に直線状に延び、他方の副刃30は当該中心部1aを基準として径方向の他方側に直線状に延びる。軸線方向の先端側から見て、一方の副刃30と他方の副刃30とは、同一直線上に配置される。軸線方向の先端側から見て、主刃20は、一方の副刃30のうち中心部1a側の端部と他方の副刃30のうち中心部1a側の端部との間の隙間を通り抜けるように配置される。軸線方向の先端側から見て、周方向における副刃30の一側30bと主刃20とのなす角度αは、周方向における副刃30の他側30cと主刃20とのなす角度βよりも大きく、切屑排出溝11の先端部11aは、副刃30の一側30bと主刃20との間の領域に臨んでいる。軸線方向において、主刃20の基端20aは、副刃30の基端30aよりもドリルビット1の基端側に位置する。
【0017】
主刃20は、ドリルビット1の径方向の中心部1aに位置する第1刃先21と、当該中心部1aから径方向の外側に延びる一対の稜線である切刃22(以下「稜線22」とも言う。)と、を含む。主刃20の稜線22は、径方向の外側かつ軸線方向の基端側へと斜めに傾斜している。主刃20の稜線22は、軸線方向の先端側から見て、径方向に対して傾斜している。主刃20は、中心部1aにおいて、軸線方向の先端側に突出する突部23を更に含む。第1刃先21は、当該突部23の先端である。当該突部23は、円弧面状又は半球面状の突起である。
【0018】
副刃30は、第1刃先21よりも径方向の外側に位置する第2刃先31と、径方向に延びる一対の稜線である切刃32(以下「稜線32」とも言う。)と、を含む。第2刃先31は、副刃30における軸線方向の先端側の所定部分30dにある。当該所定部分30dは、径方向において副刃30の中央部30dである。副刃30は、軸線方向の先端側に突出する突部33を更に含む。当該突部33は、径方向において当該副刃30の中央部30dに位置する。第2刃先31は、当該突部33の先端である。当該突部33は、円弧面状又は半球面状の突起である。
【0019】
副刃30の稜線32は、軸線方向の先端側から見て、当該副刃30の長手方向に沿って中央部30dから延びる。副刃30の一対の稜線32の一方は、中央部30dから径方向の内側かつ軸線方向の基端側へと斜めに傾斜しており、副刃30の一対の稜線32の他方は、中央部30dから径方向の外側かつ軸線方向の基端側へと斜めに傾斜している。副刃30の稜線32は、軸線方向の先端側から見て、径方向に対して傾斜している。副刃30の稜線32は、主刃20の稜線22よりも軸線方向の基端側に配置されている。
【0020】
第2刃先31は、軸線方向の位置に関し、主刃20の稜線22上の任意の点と同じ位置に配置される。径方向における第1刃先21から第2刃先31までの距離を特定距離と定義し、第1刃先21から特定距離だけ離れた稜線22上の点を特定点22aと定義する。
図3において、二点鎖線で示した円Cは、第1刃先21を中心とした仮想円である。円Cが、径方向における第1刃先21から前記特定距離だけ離れた位置である。このとき、軸線方向における第2刃先31の位置は、軸線方向における特定点22aの位置と同じである。主刃20の稜線22の長さ領域に関し、径方向における主刃20の中心(すなわち、第1刃先21)を0%と定義しかつ径方向における主刃20の外端を100%と定義する。このとき、副刃30の第2刃先31は、軸線方向の位置に関し、主刃20の20%以上80%以下の領域、好ましくは30%以上70%以下の領域、更に好ましくは40%以上60%以下の領域内の稜線22上の点(本実施形態では特定点22a)と同じ位置に配置されている。
【0021】
以上に説明した構成によれば、第2刃先31は、軸線方向の位置に関し、主刃20の稜線22上の任意の点と同じ位置に配置されるので、副刃30の第2刃先31が主刃20の稜線22と共に穿孔対象P(
図1参照)の被穿孔箇所Pa(
図1参照)の穿孔途中の穴の底B(
図1参照)に到達する。したがって、従来のように穿孔途中の穴の底Bに3つの刃部の稜線が接触し続ける場合と比較して、ビット先端部3と穴の底Bとの接触面積が小さくなる。これにより、ビット先端部3が穴の底Bから受ける摩擦力が小さくなるので、穿孔速度が向上する。また、副刃30の第2刃先31が、径方向において主刃20の第1刃先21から離れた位置で穿孔途中の穴の底Bに接触するので、穿孔作業中に主刃20の第1刃先21が径方向に位置ずれすることを抑制できる。これにより、穿孔精度を良好にできる。
【0022】
副刃30が軸線方向の先端側に突出する突部33を含み、第2刃先31が当該副刃30の突部33の先端であるので、従来のように刃部が突部を備えない場合と比較して、穿孔作業中に主刃20の第1刃先21が径方向に位置ずれすることを抑制できる。これにより、いっそう穿孔精度を良好にできる。
【0023】
例えば、副刃30の突部33が当該副刃30のうちドリルビット1の径方向の中心部1a側の端部に位置する場合、副刃30の第2刃先31が主刃20の第1刃先21と径方向において比較的近い位置で穿孔途中の穴の底B(
図1参照)に接触するので穿孔精度向上の効果を得にくくなる。また、副刃30の突部33が当該副刃30のうちドリルビット1の径方向の中心部1aとは反対側の端部に位置する場合、副刃30が穿孔途中の穴の底Bに到達しにくく、穿孔精度向上の効果を得にくくなる。そこで、上記のように、副刃30の突部33が、径方向において当該副刃30の中央部に位置することで、穿孔精度向上の効果を好適に得ることができる。
【0024】
主刃20がドリルビット1の径方向の中心部1aにおいて軸線方向の先端側に突出する突部23を更に含み、第1刃先21が主刃20の突部23の先端であるので、従来のように刃部が突部を備えない場合と比較して、穿孔作業中に主刃20の第1刃先21が径方向に位置ずれすることを抑制できる。これにより、いっそう穿孔精度を良好にできる。
【0025】
主刃20が、軸線方向の先端側から見てドリルビット1の径方向の中心部1aから径方向の両側に直線状に延びるので、従来のように軸線方向の先端側から見て約120°の間隔で3つの刃部が配置される場合と比較して、ビット先端部3の径方向における摩耗量を例えばノギス等の測定機器により簡単に測定できる。
【0026】
副刃30が主刃20と別個に設けられるので、ビットシャフト部2への取付け態様を容易に変更でき、かつメンテナンスを容易に行うことができる。
【0027】
軸線方向において、主刃20の基端が副刃30の基端よりもドリルビット1の基端側に位置するので、穿孔作業中において、主刃20及び副刃30からドリルビット1に加わる負荷を軸線方向において分散できる。これにより、ドリルビット1の破損を防止できる。
【0028】
主刃20の稜線22(すなわち、切刃22)上の特定点22aの回転軌跡上に副刃30の第2刃先31があるため、副刃30の第2刃先31が主刃20の稜線22上の特定点22aと共に穿孔途中の穴の底B(
図1参照)に到達する。これにより、穿孔力を部分的に向上させることができる。
【0029】
副刃30の稜線32が主刃20の稜線22よりも軸線方向の基端側に配置されているので、副刃30と穿孔途中の穴の底B(
図1参照)との接触面積が小さくなる。これにより、ビット先端部3が穴の底Bから受ける摩擦力が小さくなるので、穿孔速度が向上する。
【0030】
2つのつる巻線部12の先端部12aが軸線方向と平行に延びるので、一方のつる巻線部12の先端部12aに対して主刃20の径方向の一端部及び一方の副刃を固定でき、他方のつる巻線部12の先端部12aに対して主刃20の径方向の一端部及び他方の副刃30を固定できる。これにより、ビットシャフト部2に対してビット先端部3を容易かつ強固に固定することができる。
【0031】
切屑排出溝11の先端部11aが副刃30の一側30bと主刃20との間の領域に臨んでいるので、切屑排出溝11の幅を広くでき、切屑の排出性能を高めることができる。
【0032】
主刃20の突部23が円弧面状又は半球面状の突起であるので、当該突部23の破損を抑制できる。副刃30の突部33も同様の形状を有するので同様の効果を得ることができる。
【0033】
なお、本開示の技術は、前述した構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、主刃20の稜線22が軸線方向の先端側から見て径方向に対して傾斜している場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、主刃20の稜線22が軸線方向の先端側から見て径方向に対して傾斜していなくてもよい。同様に、副刃30の稜線32も軸線方向の先端側から見て径方向に対して傾斜していなくてもよい。
【0034】
上記実施形態では、主刃20の突部23が円弧面状又は半球面状の突起である場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、主刃20の突部23が軸線方向の先端側に頂点を有する円錐状又は多角錐状の突起であってもよいし、又は他の形状の突起であってもよい。同様に、副刃30の突部33も軸線方向の先端側に頂点を有する円錐状又は多角錐状の突起であってもよいし、又は他の形状の突起であってもよい。
【0035】
上記実施形態では、主刃20が突部23を有する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、主刃20が突部23を有さず、軸線方向の先端側から見て主刃20の稜線22上に第1刃先21が配置されてもよい。同様に、副刃30も突部33を有さず、軸線方向の先端側から見て副刃30の稜線32上に第2刃先31が配置されてもよい。
【0036】
上記実施形態では、1つの副刃30が1つの突部33を有する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、1つの副刃30が複数の突部33を有してもよい。
【0037】
上記実施形態では、副刃30の第2刃先31が位置する所定部分30dが、副刃30の径方向の中央部30dである場合について説明した。しかし、この場合限定されず、当該所定部分30dが、副刃30のうちドリルビット1の径方向の中心部1a側の端部に位置してもよいし、又は副刃30のうち当該中心部1aとは反対側の端部に位置してもよい。
【0038】
上記実施形態では、主刃20の基端20aが副刃30の基端30aよりもドリルビット1の基端側に位置する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、副刃30の基端30aが主刃20の基端20aよりもドリルビット1の基端側に位置してもよいし、主刃20の基端20aと副刃30の基端30aが軸線方向において同じ位置に設けられてもよい。
【0039】
上記実施形態では、軸線方向の先端側から見て、周方向における副刃30の一側30bと主刃20とのなす角度αが周方向における副刃30の他側30cと主刃20とのなす角度βよりも大きい場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、当該角度αが当該角度βよりも小さくてもよいし、又は当該角度αと当該角度βが同じ大きさであってもよい。
【0040】
上記実施形態では、ビット先端部3が2つの副刃30を備える場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、ビット先端部3が1つ又は3つ以上の副刃30を備えてもよい。
【0041】
上記実施形態では、主刃20と複数の副刃30が別個に設けられる場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、主刃20と副刃30が一体物であってもよい。
【0042】
上記実施形態では、ビットシャフト部2が2つのつる巻線部12を備える場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、ビットシャフト部2が1つ又は3つ以上のつる巻線部12を備えてもよい。
【0043】
以下の態様のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
[態様1]
ドリルビットの先端構造であって、
前記ドリルビットの径方向の中心部に位置する第1刃先と、前記中心部から前記径方向の外側に延びる稜線である切刃と、を含む主刃と、
前記第1刃先よりも前記径方向の外側に位置する第2刃先を含む副刃と、を備え、
前記主刃の前記稜線は、前記径方向の外側かつ前記ドリルビットの軸線方向の基端側へと斜めに傾斜しており、
前記第2刃先は、前記軸線方向の位置に関し、前記稜線上の任意の点と同じ位置に配置される、ドリルビットの先端構造。
[態様2]
前記副刃は、前記軸線方向の先端側に突出する突部を更に含み、
前記第2刃先は、前記副刃の前記突部の先端である、態様1に記載のドリルビットの先端構造。
[態様3]
ドリルビットの先端構造であって、
前記ドリルビットの径方向の中心部に位置する第1刃先と、前記中心部から前記径方向の外側に延びる稜線である切刃と、を含む主刃と、
前記第1刃先よりも前記径方向の外側に位置する第2刃先を含む副刃と、を備え、
前記主刃の前記稜線は、前記径方向の外側かつ前記ドリルビットの軸線方向の基端側へと斜めに傾斜しており、
前記副刃は、前記軸線方向の先端側に突出する突部を更に含み、
前記第2刃先は、前記副刃の前記突部の先端である、ドリルビットの先端構造。
[態様4]
前記副刃の前記突部は、前記径方向において前記副刃の中央部に位置する、態様2又は3に記載のドリルビットの先端構造。
[態様5]
前記主刃は、前記径方向の前記中心部において、前記軸線方向の先端側に突出する突部を更に含み、
前記第1刃先は、前記主刃の前記突部の先端である、態様1乃至4のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
[態様6]
前記主刃は、前記軸線方向の先端側から見て、前記径方向の前記中心部から前記径方向の両側に直線状に延びる、態様1乃至5のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
[態様7]
前記副刃は、前記主刃と別個に設けられる、態様1乃至6のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
[態様8]
前記軸線方向において、前記主刃の基端は、前記副刃の基端よりも前記ドリルビットの基端側に位置する、態様1乃至7のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
[態様9]
前記径方向における前記第1刃先から前記第2刃先までの距離を特定距離と定義し、前記第1刃先から前記特定距離だけ離れた前記稜線上の点を特定点と定義したとき、
前記軸線方向における前記第2刃先の位置は、前記軸線方向における前記特定点の位置と同じである、態様1乃至8のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
[態様10]
前記第2刃先は、前記副刃における前記軸線方向の先端側の所定部分にあり、
前記副刃は、前記軸線方向の先端側から見て、前記副刃の長手方向に沿って前記所定部分から延びる稜線を更に含み、
前記副刃の前記稜線は、前記主刃の前記稜線よりも前記軸線方向の基端側に配置されている、態様1乃至9のいずれかに記載のドリルビットの先端構造。
[態様11]
態様1乃至10のいずれかに記載のドリルビットの先端構造と、
前記ドリルビットの軸線方向に延び、その先端部に前記ドリルビットの先端構造が配置されるビットシャフト部と、を備える、ドリルビット。
[態様12]
前記ビットシャフト部は、
穿孔対象の被穿孔箇所を穿孔した際に生じる切屑を前記軸線方向の基端側に向けて排出する切屑排出溝と、
前記切屑排出溝を画定するつる巻線部と、を有し、
前記切屑排出溝及び前記つる巻線部は、それぞれ、その前記軸線方向の先端部が前記軸線方向と平行に延びる、態様11に記載のドリルビット。
[態様13]
前記軸線方向の先端側から見て、前記ドリルビットの周方向における前記副刃の一側と前記主刃とのなす角度は、前記周方向における前記副刃の他側と前記主刃とのなす角度よりも大きく、
前記切屑排出溝の前記先端部は、前記副刃の前記一側と前記主刃との間の領域に臨んでいる、態様12に記載のドリルビット。
【符号の説明】
【0044】
1 ドリルビット
1a ドリルビットの径方向の中心部
2 ビットシャフト部
3 ビット先端部(ドリルビットの先端構造)
4 ドリル駆動装置
11 切屑排出溝
12 つる巻線部
20 主刃
20a 主刃の基端
21 第1刃先
22 主刃の切刃(又は稜線)
22a 特定点
23 主刃の突部
30 副刃
30a 副刃の基端
30b 周方向における副刃の一側
30c 周方向における副刃の他側
30d 所定部分(又は副刃の径方向の中央部)
31 第2刃先
32 副刃の切刃(又は稜線)
33 副刃の突部
α 周方向における副刃の一側と主刃とのなす角度
β 周方向における副刃の他側と主刃とのなす角度