(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006716
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】吸着フィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/30 20060101AFI20250109BHJP
B01J 20/08 20060101ALI20250109BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20250109BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20250109BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B01J20/30
B01J20/08 A
B01J20/18 A
B01J20/18 E
B01J20/20 E
B01J20/20 D
B01J20/10 D
B01J20/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107691
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 知樹
(72)【発明者】
【氏名】下川 晃太朗
【テーマコード(参考)】
4G066
【Fターム(参考)】
4G066AA05B
4G066AA20B
4G066AA22B
4G066AA61B
4G066AC01D
4G066AC02D
4G066AC12D
4G066AC14D
4G066AC21D
4G066BA03
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA24
4G066BA26
4G066BA28
4G066BA38
4G066BA42
4G066FA28
4G066FA37
4G066FA38
(57)【要約】
【課題】揮発性有機化合物を始めとする汚染物質の高い除去性能を有するとともに、圧力損失の低い吸着フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】平均粒子長径が200μm~1000μmの吸着剤Aと平均粒子長径が0.1μm~100μmの吸着剤Bと基材とを準備するステップと、吸着剤Bを吸着剤Aの表面に固着させて吸着剤を得るステップと、吸着剤を前記基材に担持させるステップと、を有しており、吸着剤Aの重量W
Aと吸着剤Bの重量W
Bの比W
A/W
Bの値Pは、0.3以上150以下であり、吸着剤Bの全数を100%としたとき、65%以上の吸着剤Bが吸着剤Aの表面に固着している吸着フィルタの製造方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子長径が200μm~1000μmの吸着剤Aと平均粒子長径が0.1μm~100μmの吸着剤Bと基材とを準備するステップと、
前記吸着剤Bを前記吸着剤Aの表面に固着させて吸着剤を得るステップと、
前記吸着剤を前記基材に担持させるステップと、を有しており、
前記吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pは、0.3以上150以下であり、
前記吸着剤Bの全数を100%としたとき、65%以上の前記吸着剤Bが前記吸着剤Aの表面に固着している吸着フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記吸着剤Aの平均粒子長径RAと前記吸着剤Bの平均粒子長径RBの比RB/RAは、1/5000~1/5である請求項1に記載の吸着フィルタの製造方法。
【請求項3】
前記吸着剤Aの平均粒子長径RA、前記吸着剤Bの平均粒子長径RB、及び前記吸着剤Aと前記吸着剤Bの重量比P((吸着剤Aの重量WA)/(吸着剤Bの重量WB))は、P=RA
3/[{(RA+2RB)3-RA
3}×X]の関係を満たし、Xは0.1以上10以下である請求項1又は2に記載の吸着フィルタの製造方法。
【請求項4】
前記吸着剤Bを前記吸着剤Aの表面に固着させて吸着剤を得るステップは、前記吸着剤Aと前記吸着剤Bと結着剤を混合するステップを含む請求項1又は2に記載の吸着フィルタの製造方法。
【請求項5】
前記結着剤は、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ酢酸ビニル、及びこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項4に記載の吸着フィルタの製造方法。
【請求項6】
前記吸着剤Aは、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライトのいずれかである請求項1又は2に記載の吸着フィルタの製造方法。
【請求項7】
前記吸着剤Bは、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライトのいずれかである請求項1又は2に記載の吸着フィルタの製造方法。
【請求項8】
前記基材は不織布である請求項1又は2に記載の吸着フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質を除去する吸着フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策の一つとして、臭気公害対策への関心が高まっている。臭気公害としては、例えば排ガスによる公害が挙げられる。排ガスの中でも、トルエンやアセトアルデヒドを代表とする揮発性有機化合物は、シックハウス症候群の原因物質とされており、当該臭気物質の除去及び消臭が大きな課題である。これら排ガスは、空気清浄機やエアコンなどの空気浄化装置に取り付けて使用するフィルタによって除去することが知られている。このフィルタは、低い圧力損失、即ち高い通気性を有するものが好ましい。
【0003】
上記のような汚染物質を除去するフィルタとして、高い汚染物質除去性能と低い圧力損失を有するフィルタへの要望が高い。この要望に対し、例えば特許文献1では、同粒子直径の活性炭同士を熱可塑性樹脂で接着凝集し、不規則な凝集体とすることで凝集体間に空隙を作る事により低圧力損失を実現している。また、特許文献2では、平均粒子直径1μm以下の粒子を不織布に担持させることにより、揮発性有機化合物の高い除去性能を発現させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3612329号
【特許文献2】特開2015-157250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のフィルタでは、吸着剤をシート化する際に加わる外力によって凝集体が崩壊し、空隙が埋まることで圧力損失が高くなると言う問題点や、成形した凝集体が不規則な構造であることにより性能にばらつきが大きいといった問題点があった。また、特許文献2のフィルタでは、使用する粒子の粒子直径が小さく、吸着剤粒子が不織布繊維間の空隙を埋めることで圧力損失が高まるという問題点があった。
【0006】
上記の事情に鑑み本発明は、揮発性有機化合物を始めとする汚染物質の高い除去性能を有するとともに、圧力損失の低い吸着フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し得た本発明の実施形態に係る吸着フィルタの製造方法は以下の通りである。
[1]平均粒子長径が200μm~1000μmの吸着剤Aと平均粒子長径が0.1μm~100μmの吸着剤Bと基材とを準備するステップと、前記吸着剤Bを前記吸着剤Aの表面に固着させて吸着剤を得るステップと、前記吸着剤を前記基材に担持させるステップと、を有しており、前記吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pは、0.3以上150以下であり、前記吸着剤Bの全数を100%としたとき、65%以上の前記吸着剤Bが前記吸着剤Aの表面に固着している吸着フィルタの製造方法。
【0008】
上記吸着フィルタの製造方法によれば、平均粒子長径が0.1μm~100μmと小さな吸着剤Bを用いることにより、汚染物質を吸着する表面積を大きくすることができるため、汚染物質の除去率を高くできる。また、平均粒子長径の小さな吸着剤Bが、平均粒子長径が200μm~1000μmと大きな吸着剤Aの表面に固着しており、吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが0.3以上150以下であることにより、吸着剤粒子間に空隙を作ることが容易になる。また、吸着剤Bの全数100%のうち65%以上の吸着剤Bが吸着剤Aの表面に固着しているため、吸着剤Aの表面から遊離して存在する吸着剤Bが少なく、基材の隙間に吸着剤Bが充填されて目詰まりすることを防止できる。これにより、圧力損失の低い吸着フィルタを製造することが可能である。
【0009】
本発明の実施形態に係る吸着フィルタの製造方法は、以下の[2]~[8]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記吸着剤Aの平均粒子長径RAと前記吸着剤Bの平均粒子長径RBの比RB/RAは、1/5000~1/5である[1]に記載の吸着フィルタの製造方法。
[3]前記吸着剤Aの平均粒子長径RA、前記吸着剤Bの平均粒子長径RB、及び前記吸着剤Aと前記吸着剤Bの重量比P((吸着剤Aの重量WA)/(吸着剤Bの重量WB))は、P=RA
3/[{(RA+2RB)3-RA
3}×X]の関係を満たし、Xは0.1以上10以下である[1]又は[2]に記載の吸着フィルタの製造方法。
[4]前記吸着剤Bを前記吸着剤Aの表面に固着させて吸着剤を得るステップは、前記吸着剤Aと前記吸着剤Bと結着剤を混合するステップを含む[1]~[3]のいずれかに記載の吸着フィルタの製造方法。
[5]前記結着剤は、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ酢酸ビニル、及びこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つである[4]に記載の吸着フィルタの製造方法。
[6]前記吸着剤Aは、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライトのいずれかである[1]~[5]のいずれかに記載の吸着フィルタの製造方法。
[7]前記吸着剤Bは、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライトのいずれかである[1]~[6]のいずれかに記載の吸着フィルタの製造方法。
[8]前記基材は不織布である[1]~[7]のいずれかに記載の吸着フィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
上記吸着フィルタの製造方法によれば、揮発性有機化合物を初めとする汚染物質の除去率を高められるとともに圧力損失を低くして、汚染物質の除去性能が向上した吸着フィルタを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例2で得られた吸着剤を観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例2で得られた吸着フィルタから基材を剥がして観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【
図3】比較例4で得られた吸着フィルタから基材を剥がして観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【
図4】実施例1~16及び比較例1~6の吸着フィルタのトルエン除去率と圧力損失の関係を表すグラフである。
【
図5】実施例17及び比較例7の吸着フィルタのトルエン除去率と圧力損失の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0013】
本発明の実施形態に係る吸着フィルタの製造方法は、平均粒子長径が200μm~1000μmの吸着剤Aと平均粒子長径が0.1μm~100μmの吸着剤Bと基材とを準備するステップと、吸着剤Bを吸着剤Aの表面に固着させて吸着剤を得るステップと、吸着剤Aと吸着剤Bからなる吸着剤を基材に担持させるステップと、を有している。
【0014】
吸着とは、気相、液相、固相と吸着剤の界面で引き起こされるため、吸着剤と被吸着物質の界面での接触確率を上げることで、被吸着物質は高効率で吸着剤に吸着されることができる。本発明の実施形態に係る吸着フィルタの製造方法は、平均粒子長径が0.1μm~100μmと小さい吸着剤Bを用いることにより、製造された吸着フィルタにおいて吸着剤の単位体積あたりの表面積が大きくなり、汚染物質の高い除去率を有する吸着フィルタを製造することができる。また、吸着剤粒子の粒径が小さいと空隙が埋まって充填密度が高くなり、そのために圧力損失が高くなってしまうが、その点、本発明の実施形態に係る吸着フィルタの製造方法では、平均粒子長径の小さな吸着剤Bを平均粒子長径が200μm~1000μmと大きな吸着剤Aの表面に固着させて吸着剤を得るステップを有しており、吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが0.3以上150以下となるように吸着剤Aと吸着剤Bを用いる。これにより、吸着フィルタにおいて吸着剤粒子間に空隙が形成され易いため充填密度が高くなり過ぎない。さらに、吸着剤Bの全数100%のうち65%以上の吸着剤Bが吸着剤Aの表面に固着しているため、吸着剤Aの表面から遊離して存在する吸着剤Bが少なく、基材の隙間に吸着剤Bが充填されて目詰まりすることを防止できる。その結果、低い圧力損失を有する吸着フィルタとすることができる。本発明の実施形態に係る製造方法で製造された吸着フィルタは、空気清浄機やエアコンなどの空気浄化装置に取り付けて使用した際に、吸着フィルタの上流側と下流側の差圧が小さくなり、吸着性能が向上するとともに省エネにも寄与できる。
【0015】
平均粒子長径が200μm~1000μmの吸着剤Aと平均粒子長径が0.1μm~100μmの吸着剤Bは、吸着剤粒子をメッシュでふるうことにより得ることができる。平均粒子長径が大きい吸着剤Aは、例えば、18番メッシュを通過することができる粒子であって65番以上のメッシュを通過することのできる粒子は除かれたものとしたり、平均粒子長径が小さい吸着剤Bは160番以上のメッシュでふるうことにより得たりする等、得たい粒子の長径によりメッシュの番手を選択することができる。
【0016】
吸着剤Aの平均粒子長径は、200μm以上であり、250μm以上が好ましく、300μm以上がより好ましく、350μm以上がさらに好ましく、375μm以上が特に好ましく、400μm以上であってもよい。吸着剤Aの平均粒子長径の下限が上記範囲であれば、吸着フィルタの圧力損失を低くすることができる。また、吸着剤Aの平均粒子長径は、1000μm以下であり、900μm以下が好ましく、850μm以下がより好ましく、800μm以下がさらに好ましく、750μm以下であってもよい。吸着剤Aの平均粒子長径の上限が上記範囲であれば、吸着フィルタの厚みが厚くなり過ぎずに製造が容易になるという利点がある。
【0017】
吸着剤Bの平均粒子長径は、0.1μm以上であり、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。吸着剤Bの平均粒子長径の下限が上記範囲であれば、吸着剤Bの凝集力が強くなり過ぎず、吸着剤Bを吸着剤Aの表面に均一に固着させることができる。また、吸着剤Bの平均粒子長径は、100μm以下であり、75μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。吸着剤Bの平均粒子長径の上限が上記範囲であれば、吸着剤Aの表面への吸着剤Bの固着力を確保でき、吸着剤Aから吸着剤Bが脱落しないようにすることが容易となる。吸着剤Bの平均粒子長径が上記範囲であることで、吸着剤Aの表面に均一かつ強い固着力で吸着剤Bを固着させることが可能である。
【0018】
吸着剤Bを吸着剤Aの表面に固着する方法としては、特に限定されないが、例えば、水溶性高分子を溶解させた水溶液に吸着剤Aと吸着剤Bを浸漬して攪拌し、次いで乾燥させる方法や、水溶性高分子を溶解させた水溶液を霧状やミスト状にして吸着剤A及び吸着剤Bに吹き付け、次いで乾燥させる方法等の方法が挙げられる。
【0019】
吸着剤Bを吸着剤Aの表面に固着するステップは、吸着剤Aと吸着剤Bと結着剤を混合するステップを含むことが好ましい。吸着剤Aと吸着剤Bと結着剤を混合する事により、吸着剤Bを吸着剤Aの表面に固着させ易くなる。
【0020】
結着剤としては、吸着剤Bを吸着剤Aの表面に固着できるものであれば特に限定されないが、例えば、水溶性高分子や熱可塑性樹脂、水分散性高分子が例示できる。特に、結着剤は水溶性高分子であることが好ましい。水溶性高分子は、20℃、1気圧における水への溶解度が1g以上であり、分子量10000以上であることが好ましい。結着剤は、水溶性高分子であることが好ましく、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ酢酸ビニル、及びこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0021】
結着剤として水溶性高分子を使用することにより、結着剤の添加量が少量でも吸着剤Bを吸着剤Aの表面に容易に固着させることができる。
【0022】
結着剤の溶液濃度は、0.1重量%~10重量%が好ましく、1重量%~5重量%がより好ましい。結着剤の溶液濃度が0.1重量%以上であることにより、吸着剤Bの吸着剤Aの表面への固着力を確保することができる。結着剤の溶液濃度が10重量%以下であることにより、結着剤の溶液濃度が10重量%を超えると結着剤が吸着剤粒子を被覆するという問題が生じるが、このような問題を回避できる。上記結着剤の溶液濃度は、水溶性高分子の溶液濃度であってもよい。
【0023】
吸着剤Aと吸着剤Bからなる吸着剤を基材に担持させる方法としては、特に限定されず公知の加工方法を用いることができる。例えば、(a)基材を構成する繊維とともに吸着剤Aと吸着剤Bを水中に分散させ脱水することにより得られる湿式シート化法、(b)基材を構成する繊維とともに吸着剤Aと吸着剤Bを気中分散させることにより得られるエアレイド法、(c)二層以上の不織布、織布、ネット状物、フィルム、膜等の層間に熱接着により吸着剤Aと吸着剤Bを充填する方法、(d)エマルジョン接着剤、溶剤系接着剤を利用して不織布、織布、発泡ウレタン等の通気性材料に吸着剤Aと吸着剤Bを結合担持させる方法、(e)熱可塑性樹脂の熱可塑性を利用して不織布、織布、発泡ウレタン等の通気性材料に吸着剤Aと吸着剤Bを結合担持させる方法、(f)吸着剤Aと吸着剤Bを繊維又は樹脂に練り込むことにより混合一体化する方法等、用途に応じて適当な方法を用いることができる。特に、界面活性剤を用いる必要がなく、吸着剤が界面活性剤により被覆されることを防止できるため、上記加工法のうち加工法(b)、(c)、(e)を用いることが好ましい。
【0024】
吸着剤Aと吸着剤Bからなる吸着剤を基材に担持させるステップは、吸着剤Bを吸着剤Aの表面に固着させて吸着剤を得るステップの後に行われることが好ましい。即ち、吸着剤Bが表面に固着された吸着剤Aを基材に担持させることが好ましく、上記方法(a)~(f)において、「吸着剤Aと吸着剤B」を「吸着剤Bが表面に固着した吸着剤A」と読み替えることができる。これにより、吸着剤Bを吸着剤Aの表面に容易に固着することができる。これにより、吸着剤Bを吸着剤Aの表面に容易に固着するステップを容易に行うことができる。或いは、吸着剤Bを吸着剤Aの表面に固着させて吸着剤を得るステップと、吸着剤を基材に担持させるステップは同時に行われてもよい。この場合、「吸着剤を基材に担持させるステップ」は、「吸着剤Aと吸着剤Bを基材に担持させるステップ」と理解することができる。
【0025】
基材は、平面状、プリーツ状、ハニカム状に成型されていることが好ましい。プリーツ状は直交流型フィルタとしての使用において、また、ハニカム状は平交流型フィルタとしての使用において、処理する気体との接触面積を大きくして汚染物質の除去率を向上させるとともに、フィルタの低圧力損失化を同時に実現することができる。
【0026】
基材は、不織布であることが好ましい。不織布の種類は特に限定されないが、突起の付いた針(ニードル)を突き刺して繊維同士を絡ませることにより形成できるニードルパンチ不織布、繊維を高圧水流により交絡することにより形成できるスパンレース不織布、長繊維により形成したウェブをシート状に結合させることにより形成できるスパンボンド不織布、又はこれらの積層体であることが好ましい。不織布を積層する場合には、例えばニードルを用いて各層を接合することが好ましい。基材は、不織布を帯電させたエレクトレット不織布であってもよい。言うまでもないが、基材は不織布以外の材料であってもよいし、不織布の基材に編布や織布等の別の材料が含まれていてもよい。
【0027】
吸着剤Aの重量WAと吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pは、0.3以上であり、0.5以上、1以上、2以上、3以上、5以上、7以上、10以上等とすることができる。また、比WA/WBの値Pは、150以下であり、120以下、100以下、90以下、80以下、70以下、50以下等とすることができる。比WA/WBの値Pが上記範囲であれば、吸着剤Bにより汚染物質を吸着する表面積を大きくして汚染物質の除去率を高められるとともに、吸着剤Aにより空隙を確保して吸着フィルタの圧力損失を低く抑えることが可能である。
【0028】
吸着剤Bの全数を100%としたとき、吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの数は65%以上である。吸着剤Aの表面に固着していない吸着剤Bは、基材の空隙を埋めて吸着フィルタの圧力損失を高めてしまうことがあるが、吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの数が吸着剤Bの全数100%のうち65%以上であることにより、吸着剤Aの表面に固着せず遊離して基材の空隙を埋める吸着剤Bの数が少なくなるため、吸着フィルタの圧力損失を低く抑えることができる。吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの割合は、70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましく、80%以上がよりさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの割合の下限が上記範囲であれば、吸着フィルタの圧力損失を低くすることができる。吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの割合は、理想的には100%であるが、現実的には、99%以下、98%以下、96%以下、95%以下であってもよい。
【0029】
吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの割合は、走査型電子顕微鏡(SEM)等の顕微鏡写真から得ることができる。吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの割合は、例えば、吸着剤A及び吸着剤Bが観察できるように基材の少なくとも一部を除去した上で、少なくとも10個の吸着剤Aが一視野に入るようにSEMで観察し、当該視野中で吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bと吸着剤Aの表面に固着せず吸着剤Aの隙間に存在する吸着剤Bの数を計測することで求めることができる。計測は、吸着剤Bの数を実際に数えてもよいし、吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bと吸着剤Aの表面に固着せず吸着剤Aの隙間に存在する吸着剤Bの数を目測により決定してもよい。
【0030】
吸着剤Aの1個あたりに固着している吸着剤Bの数は、500個以上が好ましく、600個以上がより好ましく、800個以上がさらに好ましく、1000個以上がよりさらに好ましく、2000個以上が特に好ましい。吸着剤Aの1個あたりに固着している吸着剤Bの数の下限が上記範囲であれば、吸着剤Bにより汚染物質を吸着する表面積を大きくすることができるため、汚染物質の除去率を向上できる。吸着剤Aの1個あたりに固着している吸着剤Bの数の上限は特に制限されないが、例えば、2,000,000個以下が好ましく、1,000,000個以下がより好ましく、500,000個以下がさらに好ましく、100,000個以下が特に好ましく、80,000個以下、50,000個以下、30,000個以下、10,000個以下、9,000個以下、8,000個以下であってもよい。吸着剤Bが吸着剤Aの表面に固着できる数は、吸着剤Aの表面積に対する吸着剤Bの大きさに依存するが、吸着剤Aの1個あたりに固着している吸着剤Bの上限が上記範囲であれば、吸着剤Bが吸着剤Aの表面から脱落しにくく、脱落した吸着剤による目詰まりを防止できるため、吸着フィルタの圧力損失を低くすることができる。
【0031】
吸着剤吸着剤Aの1個あたりに固着している吸着剤Bの数は、走査型電子顕微鏡(SEM)等の顕微鏡写真から得られる。吸着剤Aの1個あたりに固着している吸着剤Bの数は、例えば、吸着剤A及び吸着剤Bが観察できるように基材の少なくとも一部を除去した上で、10個の吸着剤粒子をSEMで観察し、それぞれにおいて吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの数を数え、観察面とは反対側の面にも同じ数の吸着剤Bが固着しているとしてその数を2倍し、得られた10個の計測値の平均を求めて得ることができる。
【0032】
吸着剤Aの平均粒子長径RAと前記吸着剤Bの平均粒子長径RBの比RB/RAは、1/5000~1/5であることが好ましく、1/1000~1/10であることがより好ましく、1/500~1/20であることが更に好ましく、1/100~1/30であることが最も好ましい。比RB/RAが1/5000以上であることで、吸着剤Bの凝集力が強くなり過ぎず、吸着剤Aの表面に吸着剤Bが均一に固着できる。また、比RB/RAが1/5以下であることで、吸着剤Aの表面積に対する吸着剤Bの大きさが大きくなり過ぎないため、吸着剤Aの表面への吸着剤Bの固着力を確保し易く、吸着剤Aから吸着剤Bが脱落することを防止できる。
【0033】
吸着剤Aの平均粒子長径RA、前記吸着剤Bの平均粒子長径RB、及び前記吸着剤Aと前記吸着剤Bの重量比P((吸着剤Aの重量)/(吸着剤Bの重量))は、下記式(1)の関係を満たしていることが好ましい。
P=RA
3/[{(RA+2RB)3-RA
3}×X] ・・・式(1)
【0034】
式(1)は、重量比P((吸着剤Aの重量)/(吸着剤Bの重量))が、(吸着剤Aの体積)/(吸着剤Bの体積)に相当することを表している。ここで、吸着剤Aの体積は概ねRA
3としている。また、吸着剤Cでは吸着剤Bが吸着剤Aの両側に固着しているとして吸着剤Aの長径RAに吸着剤Bの長径RBの2倍を足したものを3乗して吸着剤の体積(RA+2RB)3とし、これから吸着剤Aの体積RA
3を減じることで、吸着剤Bの体積[{(RA+2RB)3-RA
3}]としている。Xが小さいほど吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの量が少なく、Xが大きいほど吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの量が多いことを意味している。
【0035】
Xは、0.1以上10以下が好ましく、0.2以上8.0以下がより好ましく、0.4以上5.0以下がさらに好ましく、0.5以上2.0以下が最も好ましい。Xがこの範囲であれば、吸着剤Aの表面に吸着剤Bを均一に固着させることができる。Xが0.1未満であれば、吸着剤Bの量が少なすぎて、本発明の効果が得られにくい。また、Xが10より大きければ、吸着剤Aの表面に複数層の吸着剤Bが堆積すると考えられ、Xが10より大きくなるように吸着剤Bの量を増やしても吸着フィルタの圧力損失を低くする効果はXが0.1以上10以下の場合と比べて向上するとは考えにくい。逆に、Xが大きすぎると、吸着剤Aの表面から吸着剤Bが離脱し易くなるため、吸着フィルタの圧力損失を高めてしまうと考えられる。その観点から、Xは15以下が好ましく、12以下がより好ましい。
【0036】
吸着剤A及び吸着剤Bは、気相中に含まれる例えばトルエンやアセトアルデヒド等の汚染物質のイオンや分子を取り込むことにより、気相中からそれらを除去できる材料から構成されていることが好ましい。
【0037】
吸着剤Aは、上記材料であれば特に限定されないが、例えば、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライトのいずれかであることが好ましい。これらは、一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。トルエンやアルデヒドを代表とする揮発性有機化合物を除去するには、吸着剤Aは活性炭やシリカゲルで構成されていることが好ましい。
【0038】
吸着剤Bは、上記材料であれば特に限定されないが、例えば、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライトのいずれかであることが好ましい。これらは、一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。トルエンやアルデヒドを代表とする揮発性有機化合物を除去するには、吸着剤Bは活性炭やシリカゲルで構成されていることが好ましい。
【0039】
吸着剤Aを構成する材料と吸着剤Bを構成する材料は、互いに同じであっても異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。これにより、吸着剤Aの表面に対する吸着剤Bの固着力を確保することができる。
【0040】
上記活性炭は、特に限定されないが、ヤシ殻系活性炭、石炭系活性炭、木質系活性炭、合成樹脂系活性炭等の一般的な活性炭を用いることが性能面、入手の容易性の面で好ましい。
【0041】
上記活性炭のBET比表面積は、特に限定されないが、800m2/g~1500m2/gが好ましく、850m2/g~1300m2/gがより好ましい。活性炭のBET比表面積が800m2/g以上であることにより、脱臭効果が得られ易い。また、活性炭のBET比表面積が1500m2/g以下であることにより、一旦吸着された汚染物質が脱離することを防止できる。
【0042】
活性炭の細孔容積は、特に限定されないが、0.30cm3/g~0.70cm3/gが好ましく、0.40cm3/g~0.55cm3/gがより好ましい。活性炭の細孔容積が0.30cm3/g以上であることにより、脱臭効果が得られ易い。また、活性炭の細孔容積が0.70cm3/g以下であることにより、一旦吸着された汚染物質が脱離することを防止できる。
【0043】
活性炭の平均細孔径については、吸着対象により適宜調整が可能である。例えば、吸着対象がトルエンである場合、平均細孔径は15Å~19Åが好ましく、16Å~18Åがより好ましい。
【0044】
上記シリカゲルのBET比表面積は、特に限定されないが、20m2/g~1000m2/gが好ましく、50m2/g~700m2/gがより好ましい。シリカゲルのBET比表面積が20m2/g以上であることにより、脱臭効果が得られ易い。また、シリカゲルのBET比表面積が1000m2/g以下であることにより、一旦吸着された汚染物質が脱離することを防止できる。
【0045】
本発明の実施形態に係る製造方法で製造された吸着フィルタは、気相中に含まれるイオンや分子、例えば、トルエンやアセトアルデヒドをその中に取り込むことで対象となる気相中からそれらを除去することができ、様々な用途に使用可能である。特に限定するわけではないが、吸着フィルタは、屋内、乗り物内等で使用でき、壁紙、家具、内装材、樹脂成形体、電気機器等において用いられることが好ましい。
【実施例0046】
以下、実施例に従って本発明を説明する。本発明は実施例に限定され解釈されるものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
(吸着剤Aに固着している吸着剤Bの割合)
各実施例及び比較例において得られた吸着フィルタから片面の不織布を剥がし、少なくとも10個の吸着剤Aが一視野に入るように走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEMの観察写真に撮像された吸着剤Bの全数100%のうち、吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bと吸着剤Aの表面に固着せず吸着剤Aの隙間に存在する吸着剤Bの数を目測により決定し、吸着剤Aに固着している吸着剤Bの割合を求めた。
【0048】
(トルエン除去率)
断面積36cm2のカラムに、シート化された吸着剤(吸着フィルタ)を挟んで配置した。トルエン蒸気濃度80ppmの空気を通過線速度20cm/秒、温度25℃、湿度50%RHの条件でカラムに供給した。カラム出口のトルエン濃度を1分後に測定し、下記式(2)で表される除去率(η)を算出した。下記式(2)において、Ci(ppm)はトルエン入口濃度であり、Co(ppm)はトルエン出口濃度である。なお、トルエン濃度は炭化水素系を使用して測定した。
除去率η(%)=[1-(Co/Ci)]×100 ・・・(2)
【0049】
(圧力損失)
シート化された吸着剤(吸着フィルタ)をダクト内に設置し、フィルタ通過線速度が10.4cm/秒になるようにコントロールし、フィルタ上流と下流での静圧差を圧力計で読み取ることで圧力損失(mmaq)を求めた。
【0050】
<実施例1>
吸着剤Aとして粒状活性炭(平均粒子長径300μm、比表面積1000m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径17Å)と、吸着剤Bとして粉末活性炭(平均粒子長径15μm、比表面積1000m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径17Å)を3:1の重量比、即ち吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが3となるように混合し、粒状活性炭と粉末活性炭の総重量に対して0.46倍のアルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液を投入し混合した。アルギン酸ナトリウム(ALG-Na)の分子量は55000であり、アルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液の濃度は4.4重量%であった。これを乾燥することで粒状活性炭の表面に粉末活性炭を固着させた吸着剤を得た。
【0051】
サーマルボンド不織布を下流層とし、上記で得られた吸着剤と、接着剤として熱可塑性粉末樹脂を20:1の重量比で混合したものを目付200g/m2になるように散布した。上流層としてエレクトレット不織布を用いて加熱し、不織布に吸着剤が担持された吸着フィルタを得た。この吸着フィルタについて、上記方法により、吸着剤Aに固着している吸着剤Bの数、吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの割合、トルエン除去率、及び圧力損失を測定した。製造条件及び測定結果を表1に示す。
【0052】
<比較例1>
粒状活性炭(平均粒子長径300μm、比表面積1000m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径17Å)を吸着剤とし、これをシート化して吸着フィルタを作製した。サーマルボンド不織布を下流層とし、上記吸着剤と、接着剤として熱可塑性粉末樹脂を20:1の重量比で混合したものを目付200g/m2になるように散布した。上流層としてエレクトレット不織布を用いて加熱し、不織布に吸着剤が担持された吸着フィルタを得た。この吸着フィルタについて、上記方法によりトルエン除去率と圧力損失を測定した。製造条件及び測定結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
実施例1と比較例1では、用いた粒状活性炭(吸着剤A)の平均粒子長径が同じであるため圧力損失は同等であったが、比較例1は粉末活性炭(吸着剤B)を用いていないため、実施例1に比べてトルエン除去率が低くなった。
【0055】
<実施例2>
吸着剤Aとして粒状活性炭(平均粒子長径600μm、比表面積1000m
2/g、細孔容積0.46cm
3/g、平均細孔径17Å)と、吸着剤Bとして粉末活性炭(平均粒子長径15μm、比表面積1000m
2/g、細孔容積0.46cm
3/g、平均細孔径17Å)を7:1の重量比、即ち吸着剤Aの重量W
Aと前記吸着剤Bの重量W
Bの比W
A/W
Bの値Pが7となるように混合し、粒状活性炭と粉末活性炭の総重量に対して0.46倍のアルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液を投入し混合した。アルギン酸ナトリウム(ALG-Na)の分子量は55000であり、アルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液の濃度は4.4重量%であった。これを乾燥することで粒状活性炭の表面に粉末活性炭を固着させた吸着剤を得た。得られた吸着剤のSEM写真を
図1に示す。
【0056】
サーマルボンド不織布を下流層とし、上記吸着剤と、接着剤として熱可塑性粉末樹脂を20:1の重量比で混合したものを目付200g/m
2になるように散布した。上流層としてエレクトレット不織布を用いて加熱し、不織布に吸着剤が担持された吸着フィルタを得た。この吸着フィルタについて、上記方法により、吸着剤Aに固着している吸着剤Bの数、吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの割合、トルエン除去率、及び圧力損失を測定した。製造条件及び測定結果を表2に示す。また、片側の不織布を剥がして撮影したSEM写真を
図2に示す。
【0057】
<実施例3>
吸着剤Aと吸着剤Bの重量比を50:1、即ち吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが50となるように変更した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0058】
<実施例4>
吸着剤Aと吸着剤Bの重量比を1:1、即ち吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが1となるように変更した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0059】
<実施例5>
吸着剤Aと吸着剤Bの重量比を1:2、即ち吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが0.5となるように変更した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0060】
<実施例6>
粒状活性炭と粉末活性炭に混合するアルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液の濃度を9.0重量%に変更した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0061】
<実施例7>
粒状活性炭と粉末活性炭に混合するアルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液の濃度を2.0重量%に変更した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0062】
<実施例8>
粒状活性炭と粉末活性炭に混合するアルギン酸ナトリウム(ALG-Na)の分子量を80000に変更した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0063】
<実施例9>
粒状活性炭と粉末活性炭に混合するアルギン酸ナトリウム(ALG-Na)の分子量を100000に変更した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0064】
<実施例10>
粒状活性炭と粉末活性炭に、アルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液に代えて4.4重量%の濃度のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を混合した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。ポリビニルアルコール(PVA)の分子量は90000であった。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0065】
<実施例11>
粒状活性炭と粉末活性炭に、アルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液に代えて4.4重量%の濃度のポリアクリルアミド(PAM)水溶液を混合した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0066】
<実施例12>
粒状活性炭と粉末活性炭に、アルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液に代えて4.4重量%の濃度のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を混合した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。カルボキシメチルセルロース(CMC)の分子量は120000であった。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0067】
<実施例13>
粒状活性炭と粉末活性炭に、アルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液に代えて4.4重量%の濃度のポリビニルピロリドン(PVP)水溶液を混合した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。ポリビニルピロリドン(PVP)の分子量は360000であった。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0068】
<実施例14>
吸着剤Aとして粒状活性炭(平均粒子長径900μm、比表面積1000m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径17Å)を用い、吸着剤Aと吸着剤Bを10:1の重量比、即ち吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが10となるように混合した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0069】
<実施例15>
吸着剤Bとして粉末活性炭(平均粒子長径50μm、比表面積1000m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径17Å)を用い、吸着剤Aと吸着剤Bを2:1の重量比、即ち吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが2となるように混合した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0070】
<実施例16>
吸着剤Bとして粉末活性炭(平均粒子長径1μm、比表面積1000m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径17Å)を用い、吸着剤Aと吸着剤Bを100:1の重量比、即ち吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが100となるように混合した以外は、実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0071】
【0072】
<比較例2>
サーマルボンド不織布を下流層とし、粒状活性炭(平均粒子長径600μm、比表面積1000m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径17Å)と、接着剤として熱可塑性粉末樹脂を20:1の重量比で混合したものを目付200g/m2になるように散布した。上流層としてエレクトレット不織布を用いて加熱し、不織布に粒状活性炭が担持された吸着フィルタを得た。この吸着フィルタについて、上記方法によりトルエン除去率と圧力損失を測定した。製造条件及び測定結果を表3に示す。
【0073】
<比較例3>
粒状活性炭(平均粒子長径900μm、比表面積1000m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径17Å)を用いた以外は、比較例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表3に示す。
【0074】
<比較例4>
サーマルボンド不織布を下流層とし、吸着剤Aとして粒状活性炭(平均粒子長径600μm、比表面積1000m
2/g、細孔容積0.46cm
3/g、平均細孔径17Å)と、吸着剤Bとして粉末活性炭(平均粒子長径15μm、比表面積1000m
2/g、細孔容積0.46cm
3/g、平均細孔径17Å)と、接着剤として熱可塑性粉末樹脂を7:1:0.4の重量比で混合したものを目付200g/m
2になるように散布した。吸着剤Aの重量W
Aと前記吸着剤Bの重量W
Bの比W
A/W
Bの値Pは7であった。上流層としてエレクトレット不織布を用いて加熱し、不織布に吸着剤が担持された吸着フィルタを得た。この吸着フィルタについて、上記方法により、吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの数、吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの割合、トルエン除去率、及び圧力損失を測定した。製造条件及び測定結果を表3に示す。また、片側の不織布を剥がして撮影したSEM写真を
図3に示す。
【0075】
<比較例5>
吸着剤Aと吸着剤Bの重量比を200:1、即ち吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが200となるように変更した以外は実施例2と同様にして吸着フィルタを製造した。製造条件及び測定結果を表3に示す。
【0076】
<比較例6>
サーマルボンド不織布を下流層とし、粒状活性炭(平均粒子長径150μm、比表面積1000m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径17Å)と、接着剤として熱可塑性粉末樹脂を20:1の重量比で混合したものを目付200g/m2になるように散布した。上流層としてエレクトレット不織布を用いて加熱し、不織布に吸着剤が担持された吸着フィルタを得た。この吸着フィルタについて、上記方法によりトルエン除去率と圧力損失を測定した。製造条件及び測定結果を表3に示す。
【0077】
【0078】
表2からわかるように、実施例2~16の吸着フィルタは、トルエン除去率が高いとともに圧力損失が低く抑えられた。
【0079】
これに対し、表3からわかるように、吸着剤Bを用いなかった比較例2及び3では、トルエン除去率が低くなった。吸着剤Aと吸着剤Bを重量比が7:1、即ち吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが7となるように混合したものの、吸着剤Aの表面に固着している吸着剤Bの割合が少ない比較例4では、トルエン除去率は高かったが、吸着フィルタの圧力損失が高くなった。これは、吸着剤Aに固着せず遊離している吸着剤Bの割合が高いため、吸着剤Bが不織布繊維間の空隙を埋めて目詰まりを起こしたためであると考えられる。吸着剤Bを用いたものの、吸着剤Aと吸着剤Bの重量比が200:1、即ち吸着剤Aの重量WAと前記吸着剤Bの重量WBの比WA/WBの値Pが200であった比較例5は、吸着剤Bの数が少ないためトルエン除去率が低くなった。吸着剤Aにも吸着剤Bにも該当しない平均粒子長径150μmの活性炭を単独で用いた比較例6では、トルエン除去率は高かったが、吸着フィルタの圧力損失が高くなった。
【0080】
実施例1~16及び比較例1~6の吸着フィルタのトルエン除去率と圧力損失の関係を表すグラフを
図4に示す。横軸は圧力損失(mmaq)であり、縦軸はトルエン除去率(%)である。
図4から、実施例1~16の吸着フィルタは、圧力損失に対してトルエン除去率が高く、比較例1~6の吸着フィルタは、圧力損失に対してトルエン除去率が低いことがわかる。
【0081】
上記のように、本発明の吸着フィルタは、トルエン除去率が高いとともに圧力損失を低下させることが可能である。
【0082】
<実施例17>
吸着剤Aとしてシリカゲル(平均粒子長径600μm、比表面積600m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径24Å)と、吸着剤Bとして粉末活性炭(平均粒子長径15μm、比表面積1000m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径17Å)を7:1の重量比で混合し、シリカゲルと粉末活性炭の総重量に対して0.46倍のアルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液を投入し混合した。アルギン酸ナトリウム(ALG-Na)の分子量は55000であり、アルギン酸ナトリウム(ALG-Na)水溶液の濃度は4.4重量%であった。これを乾燥することでシリカゲルの表面に粉末活性炭を固着させた吸着剤を得た。また、実施例2と同様にして、得られた吸着剤を用いて吸着フィルタを作製した。吸着剤の製造条件及び測定結果を表4に示す。
【0083】
<比較例7>
粒状活性炭に代えてシリカゲル(平均粒子長径600μm、比表面積600m2/g、細孔容積0.46cm3/g、平均細孔径24Å)を吸着剤とした以外は、比較例2と同様にして吸着フィルタを得た。吸着剤の製造条件及び測定結果を表4に示す。
【0084】
【0085】
吸着剤Aとしてシリカゲルを用いた実施例17と比較例7の吸着剤を用いて吸着フィルタとしたときのトルエン除去率と圧力損失の関係を表すグラフを
図5に示す。横軸は圧力損失(mmaq)であり、縦軸はトルエン除去率(%)である。表4及び
図5から、実施例17の吸着剤を用いたフィルタは、圧力損失に対してトルエン除去率が高く、比較例7の吸着剤を用いた吸着剤を用いたフィルタは、圧力損失に対してトルエン除去率が低いことがわかる。このことから、吸着剤の種類に関わらず、吸着剤Aの表面に吸着剤Bが固着することにより本発明の効果を奏することがわかる。
本発明の吸着フィルタの製造方法であれば、トルエンやアルデヒド等の揮発性有機化合物を始めとする汚染物質を効率的にかつ低い圧力損失で除去することが可能な吸着フィルタを製造できる。これにより、産業界に大きく寄与することが期待できる。