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  • 特開-ガス発生剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006718
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ガス発生剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C06D 5/00 20060101AFI20250109BHJP
   C06B 31/00 20060101ALI20250109BHJP
   C06B 23/00 20060101ALI20250109BHJP
   B60R 21/264 20060101ALI20250109BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C06D5/00 Z
C06B31/00
C06B23/00
B60R21/264
B01J7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107693
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】富奥 祐二
(72)【発明者】
【氏名】矢口 和明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝美
(72)【発明者】
【氏名】東 英子
【テーマコード(参考)】
3D054
4G068
【Fターム(参考)】
3D054DD07
3D054DD30
3D054FF16
4G068DA08
4G068DB13
(57)【要約】
【課題】圧力指数が小さいガス発生剤組成物等を提供する。
【解決手段】燃料成分として含窒素有機化合物と、酸化剤として塩基性金属硝酸塩と、合成ハイドロタルサイトとの合計含有量が、99質量%以上である、ガス発生剤組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料成分として含窒素有機化合物と、酸化剤として塩基性金属硝酸塩と、合成ハイドロタルサイトとの合計含有量が、99質量%以上である、ガス発生剤組成物。
【請求項2】
前記含窒素有機化合物の質量(A)と、前記塩基性金属硝酸塩の質量(B)と、前記合成ハイドロタルサイトの質量(C)との質量比(A):(B):(C)が、42.6~46.6:48.1~52.1:3.3~7.3である請求項1に記載のガス発生剤組成物。
【請求項3】
前記含窒素有機化合物が硝酸グアニジン(GN)であり、前記塩基性金属硝酸塩が塩基性硝酸銅(BCN)である請求項1に記載のガス発生剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のガス発生剤組成物の成形体。
【請求項5】
請求項4に記載の成形体をガス発生剤として有する、ガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に代表される車両の衝突事故に対する搭乗員保護のための安全装置として、エアバッグ装置やシートベルトプリテンショナー装置が採用されている。エアバッグ装置は、車両が衝突事故を起こした場合、衝突検知センサーから電気信号がエアバッグ展開用ガス発生器に送られ、該ガス発生器内に装填されているガス発生剤を燃焼させてガスを生成させ、そのガス圧力によりエアバッグを展開させるものである。
【0003】
一方、シートベルトプリテンショナー装置は、車両の衝突をセンサーが検知すると、電気信号によりシートベルトプリテンショナー用ガス発生器に装填したガス発生剤を燃焼させてガスを生成させ、そのガス圧力によりシートベルト巻取り機構を作動させるものである。このようなエアバッグ装置等に採用されているガス発生器の性能の重要な構成となる各種のガス発生剤組成物が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体又はそれらの混合物、塩基性金属硝酸塩及びバインダ及び/又はスラグ形成剤を含有するガス発生剤組成物を開示するものである。また、特許文献2は、燃料としての有機化合物および含酸素酸化剤、水酸化マグネシウム、又は水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムの混合物を含有し、必要に応じて更にバインダ、金属酸化物、金属炭酸化物から選ばれる添加剤、比表面積が100~500m2/gである二酸化ケイ素等を含有するガス発生剤組成物を開示するものである。
【0005】
また、特許文献3は、燃料としての有機化合物および、含酸素酸化剤、水酸化アルミニウム、必要に応じて更にバインダ、金属酸化物、金属炭酸化物から選ばれる添加剤等を含有するガス発生剤組成物を開示するものである。また、特許文献4は、燃料、酸化剤、並びにリン酸類及びリン酸類の塩から選ばれるものを含有するガス発生剤組成物を開示するものである。
【0006】
特許文献5は、燃焼成分と酸化剤とこれらを結合するバインダとを含有するエアバッグ用火薬組成物であって、前記バインダが所定の式で表されるハイドロタルサイト類である火薬組成物であるその製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献6は、燃料(A)として硝酸グアニジン、酸化剤(B)として塩基性金属硝酸塩、並びにバインダー(C)としてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を含有し、該カルボキシメチルセルロース塩は1%(w/w)水溶液の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が1,000mPa・s以上であるガス発生剤組成物を開示するものである。更に、当該ガス発生剤組成物は、燃焼調整剤(D)を含有しており、前記燃焼調整剤(D)はその含有量が4~10質量%であるガス発生剤組成物を開示している。そして、更に、燃焼調整剤(D)として合成ハイドロタルサイト、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、三酸化二鉄、四酸化三鉄、水酸化酸化アルミニウム、カオリン、酸性白土からなる群から選択される1種以上を含有することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-12493号公報
【特許文献2】特開2005-126262号公報
【特許文献3】特開2004-155645号公報
【特許文献4】特開2006-076824号公報
【特許文献5】WO97/05087
【特許文献6】特開2016-160152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ガス発生剤組成物について、その圧力指数を小さくする試みが行われている。燃焼成分として硝酸グアニジン、酸化剤として塩基性金属硝酸塩を主成分とするようなガス発生剤においても、圧力指数を下げるために各種添加剤を配合させることで解決が図られている。
【0010】
圧力指数とは、燃焼系内の圧力変動に対する燃焼速度変化の指標である。一般に、燃焼速度は温度や圧力に依存し、これらが高くなるとそれに伴い高くなる。よって、インフレータ内で燃焼時の圧力変動に対して安定した燃焼速度を得るためには、ガス発生剤組成物の圧力指数が低いことが好ましい。
かかる状況下、本発明は、圧力指数が小さいガス発生剤組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0012】
<1> 燃料成分として含窒素有機化合物と、酸化剤として塩基性金属硝酸塩と、合成ハイドロタルサイトとの合計含有量が、99質量%以上である、ガス発生剤組成物。
<2> 前記含窒素有機化合物の質量(A)と、前記塩基性金属硝酸塩の質量(B)と、前記合成ハイドロタルサイトの質量(C)との質量比(A):(B):(C)が、42.6~46.6:48.1~52.1:3.3~7.3である前記<1>に記載のガス発生剤組成物。
<3> 前記含窒素有機化合物が硝酸グアニジン(GN)であり、前記塩基性金属硝酸塩が塩基性硝酸銅(BCN)である前記<1>または<2>に記載のガス発生剤組成物。
<4> 前記<1>~<3>のいずれかに記載のガス発生剤組成物の成形体。
<5> 前記<4>に記載の成形体をガス発生剤として有する、ガス発生器。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガス発生剤組成物は、圧力指数が小さく、ガス発生器等に適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例等にかかる圧力指数を把握するための実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0016】
[本発明のガス発生剤組成物]
本発明のガス発生剤組成物は、燃料成分として含窒素有機化合物と、酸化剤として塩基性金属硝酸塩と、合成ハイドロタルサイトとの合計含有量が、99質量%以上である。
【0017】
本発明者らは、ガス発生剤組成物の組成を検討した結果、特定の組成としたときに圧力指数を低減できることを見出し、本発明を着想した。
【0018】
[燃焼成分(可燃剤)]
本発明は燃料成分として、含窒素有機化合物を含有する。本願において含窒素有機化合物を「成分(A)」と記載する場合がある。該含窒素有機化合物としては、特に限定されず、車両搭乗者安全装置用ガス発生器用ガス発生剤組成物に通常使用される含窒素有機化合物を好適に使用できる。用いることが好ましい例としては、グアニジン又はその誘導体又はその塩(グアニジン化合物)、トリアゾール又はその誘導体又はその塩、テトラゾール又はその誘導体又はその塩、ビトリアゾール又はその誘導体又はその塩、ビテトラゾール又はその誘導体又はその塩、アゾジカルボンアミド又はその誘導体又はその塩、ヒドラジン又はその誘導体又はその塩、及びヒドラジド誘導体又はその塩が挙げられる。
【0019】
より具体的には、5-オキソ-1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、5-アミノテトラゾール、硝酸アミノテトラゾール、ニトロアミノテトラゾール、ビテトラゾール(5,5'-ビ-1H-テトラゾール)、5,5'-ビ-1H-テトラゾールジアンモニウム塩、アゾビステトラゾール、5,5'-アゾビステトラゾールジグアニジウム塩、グアニジン、アミノグアニジン、ジアミノグアニジン、トリアミノグアニジン、ニトログアニジン、アミノニトログアニジン、シアノグアニジン、硝酸グアニジン、硝酸アミノグアニジン、硝酸ジアミノグアニジン、硝酸トリアミノグアニジン、ニトログアニジン、アミノニトログアニジン、ビウレット、アゾジカルボンアミド、カルボヒドラジド、カルボヒドラジド硝酸塩錯体、シュウ酸ヒドラジド、ヒドラジン硝酸塩錯体、アンミン錯体等が好適に挙げられる。
【0020】
グアニジン化合物は、グアニジン、グアニジン誘導体及びグアニジン塩を含む概念であり、ガス発生剤組成物の燃料成分である。グアニジン化合物として、具体的には、グアニジン、アミノグアニジン、ジアミノグアニジン、トリアミノグアニジン、ニトログアニジン、アミノニトログアニジン及びこれらの塩(硝酸塩、炭酸塩、過塩素酸塩等)が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
この中でも、硝酸グアニジン、硝酸アミノグアニジン、硝酸ジアミノグアニジン、硝酸トリアミノグアニジン、ニトログアニジン、アミノニトログアニジンから選択される1種以上が好適であり、特に硝酸グアニジンが好適である。
【0022】
[硝酸グアニジン(GN)]
本発明のガス発生剤組成物は、燃料成分として硝酸グアニジンを含有することが好ましい。硝酸グアニジンは、比較的燃焼性が高く有害ガスの発生も少ないとされ、広くガス発生剤組成物の燃料成分として利用されている。また、硝酸グアニジンは低圧で燃焼する。よって、これを用いるガス発生器は、そのハウジングの耐圧性を低く設計し得ることから、ガス発生器の肉厚を薄くし、軽量化しやすい。
【0023】
[酸化剤]
本発明は、酸化剤として、塩基性金属硝酸塩を含有する。本願において塩基性金属硝酸塩を「成分(B)」と記載する場合がある。該塩基性金属硝酸塩としては、具体的には、塩基性硝酸銅、塩基性硝酸コバルト、塩基性硝酸亜鉛、塩基性硝酸マグネシウム、塩基性硝酸鉄等が挙げられる。これらの中でも、燃焼温度が低く、熱安定性が良い塩基性硝酸銅が特に好ましい。
【0024】
[塩基性硝酸銅(BCN)]
本発明のガス発生剤組成物は、酸化剤として塩基性硝酸銅を含有することが好ましい。ガス発生剤組成物には、着火性や燃焼持続性を向上させるために、酸化剤が用いられる。本発明においては、この酸化剤として塩基性硝酸銅(BCN:Cu(NO32・3Cu(OH)2)を含有することが好ましい。塩基性硝酸銅は、着火性が高く酸素供給性が優れていることから硝酸グアニジンと組み合わせたとき、より一酸化炭素の生成量なども低減することができる。
【0025】
[合成ハイドロタルサイト(HTS)]
本発明のガス発生剤組成物は、合成ハイドロタルサイトを含有する。本願において合成ハイドロタルサイトを「成分(C)」と記載する場合がある。ハイドロタルサイトは、Cl-などの陰イオン交換機能を有する層状水酸化物で、一般的な組成式は下記式で表される。合成ハイドロタルサイトは、制酸剤や吸着剤、樹脂安定化剤や難燃剤などにも利用されている。
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2
【0026】
[ガス発生剤組成物]
本発明のガス発生剤組成物は、成分(A)として含窒素有機化合物、成分(B)として塩基性金属硝酸塩、成分(C)として合成ハイドロタルサイトを含有し、これらの成分(A)~(C)の含有量が99%以上である。より好ましくは、99.5質量%以上とすることができる。また、ガス発生剤組成物における成分(A)~(C)の含有量は、100質量%、すなわち実質的にこれらの成分(A)~(C)のみからなるものとすることもできる。
【0027】
本発明のガス発生剤組成物に配合される添加物は、燃焼性を調整し、燃焼速度や圧力指数、生成ガス組成などを制御するために成分(A)~(C)の残部として任意に添加して良い。一方、ガス発生剤組成中の添加剤の含有量が高いと、燃焼性の低下や燃焼で生じる残渣量が増加する問題が生じる。このため、他の成分の含有量は、1質量%未満や、0.5質量%未満のように少ないほうが好ましい。
【0028】
[含窒素有機化合物:塩基性金属硝酸塩の質量比]
本発明のガス発生剤組成物は、成分(A)である含窒素有機化合物と、成分(B)である塩基性金属硝酸塩との質量比(A:B)が、70:30~45:55であることが好ましい。成分(A)、(B)について、代表的な含窒素有機化合物として硝酸グアニジンを用いて、塩基性金属硝酸塩として塩基性硝酸銅を用いる場合、硝酸グアニジンと塩基性硝酸銅との質量比(硝酸グアニジン(GN):塩基性硝酸銅(BCN))が、70:30~45:55であることが好ましい。硝酸グアニジンと塩基性硝酸銅とが、ガス発生剤組成物の主要成分となる。ガス発生剤を燃焼した時、これらの比率によって、燃焼ガス中のガス成分が変化する。硝酸グアニジンと塩基性硝酸銅との酸素バランスは、GN/BCNのモル比が9/4(質量比で53/47)でほぼ0となる。これを基準とする範囲で設計したとき、特に燃焼ガス中の有害ガスが低減されやすい。
【0029】
なお、本発明者らの知見によれば、酸素バランスがプラス(BCN比率が多い)になるほど、CO,NH3の発生量が少ない。また、酸素バランスがマイナス(GN比率が多い)になるほど、NOxの発生量が少ない。特に有害ガスとしての全量を制御すべきCOとNOxの合計量を低減するためには、GN:BCN(質量比)を、70:30~45:55とすることが好ましい。CO、NOxといった排ガス量を低減する観点からは、65:35~50:50とすることがより好ましく、57:43~53:47とすることが特に好ましい。
【0030】
本発明のガス発生剤組成物における成分(C)である合成ハイドロタルサイトの含有量の質量比(成分(C)/ガス発生剤組成物の全量)は、1~10質量%が好ましく、3~7質量%がより好ましく、4~6質量%が特に好ましい。
【0031】
また、成分(A)~(C)の含有量の比率として、含窒素有機化合物の質量(A)と、塩基性金属硝酸塩の質量(B)と、合成ハイドロタルサイトの質量(C)との質量比(A):(B):(C)が、42.6~46.6:48.1~52.1:3.3~7.3であることが好ましい。
【0032】
[圧力指数]
圧力指数は、以下に示す、「Vieilleの式」などで示すことができる。この圧力指数は、後述する実施例の手法のように、複数の圧力で燃焼速度を測定した結果から、算出することができる。
r=aPn
r:燃焼速度、a:定数、P:雰囲気圧力、n:圧力指数
【0033】
本発明のガス発生剤組成物は、「GN/BCN」のみの組み合わせによる圧力指数よりも、小さい圧力指数を示す。例えば、0.5~5MPaや、1~3MPa程度の範囲から複数の圧力下で、燃焼挙動を把握して、その結果からVielleの式にあてはめて、圧力指数を得る。より具体的には、GN/BCNの2成分のみによるガス発生剤組成物の圧力指数よりも、本発明のガス発生剤組成物の圧力指数は低いものとすることができる。
【0034】
本発明のガス発生剤組成物は、所望の形状に成形して成形体とし、ガス発生器に組み込むガス発生剤として使用される。以下、ガス発生剤組成物の成形体を「ガス発生剤」と称する場合がある。
【0035】
[ガス発生剤]
本発明のガス発生剤は、燃焼性能、ガス発生器の燃焼特性に合わせて様々な形状に成形することができる。本発明のガス発生剤の形状は、特に限定されず、ペレット状、ディスク状、球状、棒状、円柱状、円筒状、金平糖状、テトラポット状等が挙げられる。また、該成形体は、無孔のものでもよいし、単孔又は多孔といった有孔のもの(例えば、単孔円筒状又は多孔円筒状)でもよい。更に、ペレット状、ディスク状の成形体は、片面又は両面に1個乃至複数個程度の突起を設けてもよい。突起の形状は特に制限されず、例えば、円柱状、円筒状、円錐状、多角錘状等が挙げられる。
【0036】
本発明のガス発生剤の成形は、従来公知の方法で行えばよく、例えば、本発明のガス発生剤組成物に押出成型する方法や、打錠機等を用いて圧縮成型する方法が挙げられる。
【0037】
本発明のガス発生器は、ガス発生剤を装填したガス発生器において、前記ガス発生剤として上述したガス発生剤組成物からなる成形体(ガス発生剤)を用いたものである。
【0038】
[ガス発生器]
本発明のガス発生器は、自動車をはじめとする各種車両用のガス発生器として好適である。車両用のガス発生器としては、エアバック用ガス発生器、プリテンショナー用ガス発生器等が挙げられる。
【0039】
本発明のガス発生器において、本発明のガス発生剤組成物から得られる成形体以外は、従来公知のガス発生器と同様の構成とすることができ、特に特定の構成に制限されず、通常、車両に搭載される構造のインフレータであれば特に限定されるものではなく採用することができる。代表的なガス発生器は、内容積を有する外殻シェルの内部に点火装置及び必要に応じてフィルター材を装備し、併せてガス発生剤(ガス発生剤組成物から得られる成形体)を充填して構成されている。
【0040】
なお、本発明のガス発生器は、ガスの供給がガス発生剤のみであるパイロタイプと、アルゴン等の圧縮ガスとガス発生剤の両方であるハイブリッドタイプのいずれでもよい。
【実施例0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
1.原料試料
(a)燃料成分
・硝酸グアニジン(GN):硝酸グアニジン(GN)を篩にかけて、粒径をおよそ100~212μmに調製したものを、実施例および比較例のガス発生剤組成物用の硝酸グアニジン(GN)として使用した。
(b)酸化剤
・塩基性硝酸銅(BCN)
(c)添加剤
添加剤は、以下のものをそれぞれの実施例、比較例の組成比に合わせて用いた。なお、いずれの添加剤も、ガス発生剤組成物の試料の成形前に粒径100μmのものとして適宜原料選択や篩分けを行って使用した。
(c-1)合成ハイドロタルサイト
・合成ハイドロタルサイト(HTS)
(c-2)酸化鉄
・酸化鉄(Fe23
(c-3)カルボキシメチルセルロースナトリウム
・カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)
【0043】
2.ガス発生剤組成物の製造
硝酸グアニジン(GN)、塩基性硝酸銅(BCN)、適宜添加剤を混合し、ペレタイザに導入して圧縮成形することでガス発生剤組成物(ガス発生剤組成物の成形体)を製造した。なお、GN・BCNのみで製造する場合、合計量約4.0gを一つのガス発生剤組成物として秤量して、ペレタイザに導入して、30MPaで圧縮成形した。また、さらに添加剤を用いる場合、GN・BCN・添加剤の合計量4.0gを一つのガス発生剤組成物として秤量して圧縮成形した。
圧縮後の試料は、φ約9.5mm、長さ約30mmの円筒状とした。
【0044】
3.評価方法
3.1 チムニ型ストランド燃焼装置
チムニ型ストランド燃焼装置内でニクロム線により試料に着火し燃焼速度を測定した(ブレイクワイヤ法、高速度カメラ)。
実験条件:窒素雰囲気(流通)、雰囲気圧力1.0~3.0MPaの範囲で測定
高速度カメラ条件:解像度1280×720, フレームレート500FPS、露光時間1900μs(AMETEK社製PHANTOM MIRO C110)
【0045】
4.ガス発生剤組成物の組成比
ガス発生剤組成物は、下記および表1に示す配合成分の成分比(質量%)で混合した。
・実施例1:GN/BCN/HTS
・比較例1:GN/BCN
・比較例2:GN/BCN/Fe23
・比較例3:GN/BCN/CMCNa
・比較例4:GN/BCN/Fe23/CMCNa
・比較例5:GN/BCN/HTS/CMCNa
・比較例6:GN/BCN/HTS/Fe23
【0046】
表1に記載の成分を混合してガス発生剤組成物を成形し、燃焼試験を行った。図1および表1に、試験結果と圧力指数の解析結果を示す。図1は、実施例1と比較例1の雰囲気圧力(Pressure)(測定範囲1MPa~3MPa)と、燃焼速度(Burning rate)との測定結果と、圧力指数nの解析例を示すグラフである。
【0047】
比較例1の組成に対して、配合物質を1種類、或いは2種類を組み合わせて試験すると、HTSだけを配合した実施例1の場合にのみ圧力指数の顕著な低減効果が認められた。この実施例1は、成分が少ないため燃焼残渣も少ない。
【0048】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のガス発生剤組成物は、ガス発生器に利用することができ、産業上有用である。
図1