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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025067330
(43)【公開日】2025-04-24
(54)【発明の名称】熱源システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20250417BHJP
   F24D 10/00 20220101ALI20250417BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
F24D10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177240
(22)【出願日】2023-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
(57)【要約】
【課題】熱源部で冷却又は加熱された熱源水を熱負荷部に循環させる熱源水循環路と、前記熱源水循環路を循環する熱源水の熱を利用して冷温水を生成可能なチラーと、を備えた熱源システムにおいて、合理的な構成を採用しながらCOPの向上を図る。
【解決手段】チラー50が、冷温水CW,HWの生成に熱源水Xの熱を利用する熱源水利用モードと冷温水CW,HWの生成に空気の熱を利用する空気利用モードとの間で、運転モードを切り替え可能に構成されており、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの状態に基づいてチラー50の運転モードを熱源水利用モードと空気利用モードとの間で切り替えるチラー運転モード切替手段61を備えた。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源部で冷却又は加熱された熱源水を熱負荷部に循環させる熱源水循環路と、
前記熱源水循環路を循環する熱源水の熱を利用して冷温水を生成可能なチラーと、を備えた熱源システムであって、
前記チラーが、前記冷温水の生成に前記熱源水の熱を利用する熱源水利用モードと、前記冷温水の生成に空気の熱を利用する空気利用モードとの間で、運転モードを切り替え可能に構成されており、
前記熱源水循環路を循環する熱源水の状態に基づいて前記チラーの運転モードを前記熱源水利用モードと前記空気利用モードとの間で切り替えるチラー運転モード切替手段を備えた熱源システム。
【請求項2】
前記チラー運転モード切替手段が、前記チラーの運転モードが前記熱源水利用モードであるときにおいて、前記熱源水の温度が所定の空気利用モード切替用設定値以下になった場合に、前記チラーの運転モードを前記空気利用モードに切り替える請求項1に記載の熱源システム。
【請求項3】
前記チラー運転モード切替手段が、前記チラーの運転モードが前記空気利用モードであるときにおいて、前記チラーの冷排熱量が所定の熱源水利用モード切替用設定値以下になった場合に、前記チラーの運転モードを前記熱源水利用モードに切り替える請求項1又は2に記載の熱源システム。
【請求項4】
前記熱源水利用モード切替用設定値が、前記熱負荷部の温排熱量である請求項3に記載の熱源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源部で冷却又は加熱された熱源水を熱負荷部に循環させる熱源水循環路と、前記熱源水循環路を循環する熱源水の熱を利用して冷温水を生成可能なチラーと、を備えた熱源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱源部で冷却又は加熱された熱源水を熱源水循環路を通じて熱負荷部に循環させ、チラーにより熱源水の熱を利用して冷水又は温水である冷温水を生成可能な熱源システムが知られている(例えば特許文献1を参照。)。
かかる特許文献1記載の熱源システムでは、熱源部の作動時において当該熱源部を熱源水循環路に接続し、熱源部の停止時において当該熱源部を熱源水循環路から切り離す所謂熱源部ブリードインを実行可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-166707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の熱源システムでは、熱負荷部側に設けられたチラーは、常に熱源水循環路に接続されて当該熱源水循環を循環する熱源水の熱を利用して冷温水を生成するように構成されている。
従って、熱源水循環路を循環する熱源水において、チラーによる熱利用の負担が大きくなった場合には、熱源水の温度が過剰に上昇又は低下して、熱源部による熱源水の冷却又は加熱の頻度が増加する。このことで、システム全体のエネルギー消費効率(本願において「COP」と呼ぶ場合がある。)の悪化を招くという問題がある。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、熱源部で冷却又は加熱された熱源水を熱源水循環路を通じて熱負荷部に循環させ、チラーにより熱源水の熱を利用して冷水又は温水である冷温水を生成可能な熱源システムにおいて、合理的な構成を採用しながらCOPの向上を図ることができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、熱源部で冷却又は加熱された熱源水を熱負荷部に循環させる熱源水循環路と、
前記熱源水循環路を循環する熱源水の熱を利用して冷温水を生成可能なチラーと、を備えた熱源システムであって、
前記チラーが、前記冷温水の生成に前記熱源水の熱を利用する熱源水利用モードと、前記冷温水の生成に空気の熱を利用する空気利用モードとの間で、運転モードを切り替え可能に構成されており、
前記熱源水循環路を循環する熱源水の状態に基づいて前記チラーの運転モードを前記熱源水利用モードと前記空気利用モードとの間で切り替えるチラー運転モード切替手段を備えた点にある。
【0006】
本構成によれば、チラーが熱源水利用モードで作動しているときに、熱源水循環路を循環する熱源水に対するチラーによる熱利用の負担が大きくなることを熱源水の状態から判定した場合には、適宜チラーの運転モードを熱源水利用モードから空気利用モードに切り替えることができる。そして、チラーの運転モードを熱源水利用モードから空気利用モードに切り替えることで、熱源水循環路を循環する熱源水に対するチラーによる熱利用の負担を無くすことができる。よって、チラーによる熱利用の負担増加に起因する熱源水の温度の過剰な上昇又は低下を回避することができ、結果、熱源部による熱源水の冷却又は加熱の頻度の増加を軽減することができる。
従って、本発明により、熱熱源部で冷却又は加熱された熱源水を熱源水循環路を通じて熱負荷部に循環させ、チラーにより熱源水の熱を利用して冷水又は温水である冷温水を生成可能な熱源システムにおいて、合理的な構成を採用しながらCOPの向上を図ることができる技術を提供することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記チラー運転モード切替手段が、前記チラーの運転モードが前記熱源水利用モードであるときにおいて、前記熱源水の温度が所定の空気利用モード切替用設定値以下になった場合に、前記チラーの運転モードを前記空気利用モードに切り替える点にある。
【0008】
本構成によれば、チラーが熱源水利用モードで作動しているときには、当該チラーが温水を生成することで発生する冷排熱は熱源水循環路を循環する熱源水に放出される。そして、このようにチラーから熱源水に対して冷排熱が放出されている状態において、熱源水の温度が上記空気利用モード切替用設定値以下になった場合には、チラーの運転モードが自動的に熱源水利用モードから空気利用モードに切り替えられる。すると、熱源水循環路を循環する熱源水に対するチラーからの冷排熱の放出が無くなる。このことで、熱源水の温度低下を抑制して、当該熱源水の温度低下に起因するCOPの低下の要因となる熱源部による熱源水の加熱頻度を軽減することができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記チラー運転モード切替手段が、前記チラーの運転モードが前記空気利用モードであるときにおいて、前記チラーの冷排熱量が所定の熱源水利用モード切替用設定値以下になった場合に、前記チラーの運転モードを前記熱源水利用モードに切り替える点にある。
【0010】
本構成によれば、チラーが空気利用モードで作動しているときには、当該チラーが温水を生成することで発生する冷排熱は熱源水循環路を循環する熱源水には放出されず空気に放出される。そして、このようにチラーから熱源水に対して冷排熱が放出されていない状態において、チラーの冷排熱量が上記熱源水利用モード切替用設定値以下になった場合には、チラーの運転モードが自動的に空気利用モードから熱源水利用モードに切り替えられる。すると、チラーから熱源水に対して冷排熱が放出されるようになるが、その冷排熱は比較的小さなものとなる。このことで、熱源水の温度低下を抑制して、当該熱源水の温度低下に起因する熱源部による熱源水の加熱頻度を軽減することができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記熱源水利用モード切替用設定値が、前記熱負荷部の温排熱量である点にある。
【0012】
本構成によれば、チラーが空気利用モードで作動しているときに、チラーの冷排熱量が熱源水に対する熱負荷部の温排熱量に相当する熱源水利用モード切替用設定値以下になった場合には、チラーの運転モードが自動的に空気利用モードから熱源水利用モードに切り替えられる。すると、運転モードが熱源水利用モードに切り替えられたチラーは、実質的に他の熱負荷部から熱源水に放出された温排熱のみを利用して温水を生成する状態となる。このことで、熱源水の温度低下を一層抑制して、熱源水利用モードへの切り替え直後における熱源部による熱源水の加熱を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の熱源システムの構成図
図2】温熱源部ブリードイン制御のフロー図
図3】補助加熱装置の作動制御のフロー図
図4】第1の冷熱源部ブリードイン制御のフロー図
図5】第2の冷熱源部ブリードイン制御のフロー図
図6】チラーの運転モード切り替え制御のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る熱源システムの実施形態について図1に基づいて説明する。
本実施形態の熱源システム(以下「本熱源システム」と呼ぶ)は、熱源水Xを冷却又は加熱する熱源部20,30側と、熱源水Xに含まれる冷熱又は温熱を消費する熱負荷部B側との間で、熱源水Xを循環させて冷熱又は温熱を搬送するシステムとして構成されている。
即ち、本熱源システムには、熱源部20,30で冷却又は加熱された熱源水Xを熱負荷部Bに循環させる熱源水循環路10や、各種機器の作動を制御する制御装置60等が設けられている。熱源部20,30としては、熱源水Xを加熱可能な温熱源部20と、熱源水Xを冷却可能な冷熱源部30が設けられている。
【0015】
熱源水循環路10は、熱源部20,30側から熱負荷部B側へ向けて熱源水Xが通流する熱源水往管路11と、熱負荷部B側から熱源部20,30側に向けて熱源水Xが通流する熱源水還管路12とからなり、熱源水往管路11には、熱源水Xを循環させるための複数の熱源水循環ポンプ5が並列状態で配置されている。
熱源水循環路10の熱源部20,30側には、熱源水Xを一時的に貯留するバッファタンク2が設けられている。具体的には、熱源水往管路11の上流側端部と熱源水還管路12の下流側端部とがバッファタンク2に接続されている。このようなバッファタンク2の設置により、熱源水循環路10における熱源水Xの保有水量が比較的大きくなる。このことで、熱源水Xの急激な温度変化が緩和され、冷熱源部30又は温熱源部20による熱源水Xの冷却又は加熱の頻度の増加が抑制される。
【0016】
熱源水往管路11には、バッファタンク2から熱負荷部B側へ送られる熱源水Xの温度を往温度T14として計測する往温度センサ14が設けられている。
熱源水還管路12には、熱負荷部B側からバッファタンク2へ送られる熱源水Xの温度を還温度T15として計測する還温度センサ15が設けられている。
また、熱源水往管路11には、熱源水循環路10における熱源水Xの循環流量を計測する流量センサ17が設けられている。
【0017】
熱負荷部Bとして、各室内機44において冷房運転又は暖房運転を個別に選択して運転可能な所謂冷暖フリー型のビル用マルチエアコン40が設けられている。ビル用マルチエアコン40は、機械室などの室外に設置された熱源ユニット43と、複数の室内の夫々に設置された複数の室内機44と、それらの間で冷媒を循環させる冷媒回路46と、を有するヒートポンプシステムとして構成されている。
熱源ユニット43は、熱源水往管路11から熱源水取出路41を通じて熱源水Xを取り出し、その熱源水Xとの熱交換により冷媒を冷却又は加熱し、当該熱交換後の熱源水Xを、熱源水戻り路42を通じて熱源水還管路12へ戻す形態で、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの冷熱又は温熱を利用する所謂水熱源式に構成されている。即ち、室内機44全体において冷房負荷が暖房負荷を上回る場合には、熱源ユニット43が熱源水Xの冷熱を利用することから、熱源ユニット43から熱源水Xに対して温排熱が放出されることになる。また、室内機44全体において暖房負荷が冷房負荷を上回る場合には、熱源ユニット43が熱源水Xの温熱を利用することから、熱源ユニット43から熱源水Xに対して冷排熱が放出されることになる。
また、詳細については後述するが、本熱源システムの熱負荷部B側には、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの熱を利用して冷温水CW,HWを生成可能なチラー50が設けられている。
【0018】
本システムは、熱源部20,30の作動時においては当該熱源部20,30を熱源水循環路10に接続し、一方、熱源部20,30の停止時においては当該熱源部20,30を前記熱源水循環路10から切り離すように構成されている。そして、制御装置60は、熱源水循環路10に対する熱源部20,30の接続及び切り離しを行う熱源部ブリードイン制御を実行する熱源部ブリードイン制御手段62,63として、温熱源部20に対する上記熱源部ブリードイン制御である温熱源部ブリードイン制御を実行する温熱源部ブリードイン制御手段62や、冷熱源部30に対する上記熱源部ブリードイン制御である冷熱源部ブリードイン制御を実行する冷熱源部ブリードイン制御手段63として機能する。
【0019】
温熱源部ブリードイン制御手段62が実行する温熱源部ブリードイン制御では、温熱源部20が作動して熱源水Xの加熱を行う場合には、熱源水取出ポンプ23及び加熱水循環ポンプ28が作動する。すると、熱源水取出ポンプ23の作動により、熱源水還管路12を通流する熱源水Xは、熱源水取出路24に取り出され、温熱源部用熱交換器26を通流した後に、熱源水戻り路25を通じてバッファタンク2に戻される。同時に、温熱源部用熱交換器26では、加熱水循環ポンプ28の作動により温熱源部20により加熱された加熱水W20が加熱水循環路27を通じて循環供給されて、結果、温熱源部20が熱源水循環路10に対して接続された状態となる。尚、以下の説明において、温熱源部20を熱源水循環路10に接続して温熱源部20による熱源水Xの加熱を行うことを、温熱源部20のブリードインと呼ぶ。そして、温熱源部20のブリードインの実行中は、温熱源部20により加熱された加熱水W20との熱交換により、熱源水Xが加熱されることになる。
また、温熱源部用熱交換器26にて加熱された熱源水Xは一旦バッファタンク2に流入して適切にミキシングされるので、温熱源部用熱交換器26における熱源水Xの加熱温度幅を比較的大きくして、熱源水取出ポンプ23による熱源水Xの搬送動力を削減することができる。
【0020】
一方、温熱源部ブリードイン制御手段62が実行する温熱源部ブリードイン制御において、温熱源部20が停止して熱源水Xの加熱を行わない場合には、熱源水取出ポンプ23及び加熱水循環ポンプ28が停止する。すると、熱源水還管路12を通流する熱源水Xは、温熱源部用熱交換器26を通流することなく、直接バッファタンク2に流入して、結果、温熱源部20が熱源水循環路10に対して切り離された状態となって、温熱源部20のブリードインが終了される。そして、温熱源部20のブリードインの非実行中は、熱源水Xを熱源水循環路10に循環させる際の圧力損失が低減されて、搬送動力が削減されることになる。
【0021】
温熱源部ブリードイン制御手段62は、図2に示す温熱源部ブリードイン制御を実行する。
即ち、温熱源部ブリードイン制御では、温熱源部20のブリードインの非実行中(ステップ#01のNo)において、熱源水Xの温度として往温度センサ14で計測された往温度T14が取得され、その往温度T14が所定の設定下限温度T14min(例えば20℃)を下回っている場合(ステップ#02のYes)には、温熱源部20のブリードインが開始されて(ステップ#03)、温熱源部20のブリードインが非実行中の状態から実行中の状態に切り替わる。一方、上記往温度T14が上記設定下限温度T14minを下回っていない場合(ステップ#02のNo)には、温熱源部20のブリードインが開始されない。
【0022】
また、温熱源部ブリードイン制御では、温熱源部20のブリードインの実行中(ステップ#01のYes)において、熱源水Xの温度として往温度センサ14で計測された往温度T14が取得され、その往温度T14が所定の設定復帰温度T14a(例えば25℃)以上に達した場合(ステップ#04のYes)には、温熱源部20のブリードインが終了されて(ステップ#05)、温熱源部20のブリードインが実行中の状態から非実行中の状態に切り替わる。一方、上記往温度T14が上記設定復帰温度T14a以上に達していない場合(ステップ#04のNo)には、温熱源部20のブリードインが継続される。
このような構成により、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの温度は、上記設定下限温度以上の中間温度帯(例えば20℃から30℃までの温度帯)に保たれることになる。
【0023】
温熱源部20としては、排熱として温熱を発生する排熱発生部21や、当該排熱発生部21が発生する温熱が熱源水Xの加熱には不足している場合に作動して温熱を発生する補助加熱装置22等が設けられている。これら排熱発生部21及び補助加熱装置22に関して以下に説明を加える。
【0024】
加熱水循環ポンプ28の作動により、排熱発生部21で加熱された加熱水W20が、加熱水循環路27を通じて温熱源部用熱交換器26に供給される。また、加熱水循環路27において、補助加熱装置22は、排熱発生部21から排出された後の加熱水W20を加熱可能に配置されており、その補助加熱装置22を通流した後の加熱水W20が温熱源部用熱交換器26に供給される。
加熱水循環路27において排熱発生部21と補助加熱装置22との間には、排熱発生部21から排出された後の加熱水W20の温度T29を計測する加熱水温度センサ29が設けられている。
【0025】
温熱源部20として排熱発生部21や補助加熱装置22が設けられている場合に、温熱源部ブリードイン制御手段62は、温熱源部20のブリードインの実行中において、図3に示す補助加熱装置22の作動制御を実行する。
即ち、補助加熱装置22の作動制御では、補助加熱装置22の停止中(ステップ#11のNo)において、温熱源部用熱交換器26を通流する熱源水Xの温度として往温度センサ14で計測された往温度T14に対して、加熱水温度センサ29で計測された加熱水W20の温度T29の温度差ΔT1(=T29-T14)が求められる。そして、その温度差ΔT1が所定の補助加熱開始用設定温度差ΔT1a(例えば+2℃)を下回っている場合(ステップ#12のYes)には、補助加熱装置22の作動が開始されて(ステップ#13)、温熱源部用熱交換器26に対して熱源水Xを加熱するのに充分に高温の加熱水W20が供給されるようになる。一方、上記温度差ΔT1が上記補助加熱開始用設定温度差ΔT1aを下回っていない場合(ステップ#12のNo)には、補助加熱装置22の作動が開始されない。尚、本実施形態では、上記温度差ΔT1が補助加熱開始用設定温度差ΔT1aを下回っている場合に補助加熱装置22の作動が開始されるが、別の方法で排熱発生部21による排熱の発生が無くなり当該排熱発生部21による加熱水W20の加熱が行われていないことを検知できる場合には、それを検知した時点で補助加熱装置22の作動を開始しても構わない。
【0026】
また、補助加熱装置22の作動制御では、補助加熱装置22の作動中(ステップ#11のYes)において、上記温度差ΔT1が所定の補助加熱停止用設定温度差ΔT1b(例えば+7℃)以上に達した場合(ステップ#14のYes)には、補助加熱装置22の作動が停止されて(ステップ#15)、排熱発生部21で加熱された加熱水W20のみで熱源水Xが加熱される状態となる。一方、上記温度差ΔT1が上記補助加熱停止用設定温度差ΔT1b以上に達していない場合(ステップ#14のNo)には、補助加熱装置22の作動が継続される。
このような補助加熱装置22の作動制御により、温熱源部20では、補助加熱装置22よりも優先して排熱発生部21により温熱源部用熱交換器26に供給される加熱水W20が加熱されることになるので、補助加熱装置22によるエネルギー消費量が削減されて、省エネルギー性が向上される。
【0027】
尚、本実施形態では、温熱源部ブリードイン制御手段62による温熱源部ブリードイン制御において、温熱源部20のブリードインの開始及び終了の判断や、補助加熱装置22の作動開始及び終了の判断を、熱源水Xの温度として往温度センサ14で計測された往温度T14に基づいて行ったが、熱源水Xの温度として還温度センサ15で計測された還温度T15に基づいて行っても構わない。
【0028】
本実施形態において、上記排熱発生部21としては、加熱水W20の加熱に利用できる排熱を発生する一又は複数の設備を利用することができる。更に、後述する空気利用モードで作動しているチラー50で生成された温水HWそのものを温熱源部20の加熱水循環路27に供給して上記加熱後の加熱水W20として利用したり、当該温水HWとの熱交換により加熱水循環路27を循環する加熱水W20を加熱したり、などの形態で、チラー50を排熱発生部21として利用することもできる。
また、温水HWを生成するチラー50に余力がある時間帯のみ、チラー50を排熱発生部21として利用することが望ましい。例えば、チラー50に余力がある時間帯としては、冷温水利用部58における温水HWの利用が開始される直前の早朝などにおいてチラー50を起動させて余熱を行う余熱時間帯とすることができる。即ち、その余熱時間帯にチラー50が生成した温水HWを上記温熱源部20の加熱水W20そのものとして又はその加熱に利用することができ、このことでチラー50における熱負荷のピーク分散が可能となる。
【0029】
冷熱源部ブリードイン制御手段63が実行する冷熱源部ブリードイン制御では、冷熱源部30が作動して熱源水Xの冷却を行う場合には、熱源水取出ポンプ33及び冷却水循環ポンプ38が作動する。すると、熱源水取出ポンプ33の作動により、熱源水還管路12を通流する熱源水Xは、熱源水取出路34に取り出され、冷熱源部用熱交換器36を通流した後に、熱源水戻り路35を通じてバッファタンク2に戻される。同時に、冷熱源部用熱交換器36では、冷却水循環ポンプ38の作動により冷熱源部30により冷却された冷却水W30が冷却水循環路37を通じて循環供給されて、結果、冷熱源部30が熱源水循環路10に対して接続された状態となる。尚、以下の説明において、冷熱源部30を熱源水循環路10に接続して冷熱源部30による熱源水Xの冷却を行うことを、冷熱源部30のブリードインと呼ぶ。そして、冷熱源部30のブリードインの実行中は、冷熱源部30により冷却された冷却水W30との熱交換により、熱源水Xが冷却されることになる。
また、冷熱源部用熱交換器36にて冷却された熱源水Xは一旦バッファタンク2に流入して適切にミキシングされるので、冷熱源部用熱交換器36における熱源水Xの冷却温度幅を比較的大きくして、熱源水取出ポンプ33による熱源水Xの搬送動力を削減することができる。
【0030】
一方、冷熱源部ブリードイン制御手段63が実行する冷熱源部ブリードイン制御において、冷熱源部30が停止して熱源水Xの冷却を行わない場合には、熱源水取出ポンプ33及び冷却水循環ポンプ38が停止する。すると、熱源水還管路12を通流する熱源水Xは、冷熱源部用熱交換器36を通流することなく、直接バッファタンク2に流入して、結果、冷熱源部30が熱源水循環路10に対して切り離された状態となって、冷熱源部30のブリードインが終了される。そして、冷熱源部30のブリードインの非実行中は、熱源水Xを熱源水循環路10に循環させる際の圧力損失が低減されて、搬送動力が削減されることになる。
【0031】
冷熱源部30としては、外気Aとの熱交換により冷却水W30を冷却する開放式冷却塔31が設けられている。この開放式冷却塔31に関して以下に説明を加える。
冷却水循環ポンプ38の作動により、開放式冷却塔31で冷却された冷却水W30が、冷却水循環路37を通じて冷熱源部用熱交換器36に供給される。開放式冷却塔31には、外気Aの湿球温度T39を計測する外気湿球温度センサ39が設けられている。
【0032】
冷熱源部30として開放式冷却塔31が設けられている場合において、冷熱源部ブリードイン制御手段63は、図4に示す第1の冷熱源部ブリードイン制御を実行して、外気Aの状態を考慮して開放式冷却塔31のブリードインの開始及び終了の判断を行うことができる。
即ち、第1の冷熱源部ブリードイン制御では、開放式冷却塔31のブリードインの非実行中(ステップ#21のNo)において、冷熱源部用熱交換器36を通流する熱源水Xの温度として還温度センサ15で計測された還温度T15に対する外気湿球温度センサ39で計測された外気Aの湿球温度T39の温度差ΔT2(=T15-T39)が求められる。そして、その温度差ΔT2が所定の冷却開始用設定温度差ΔT2a(例えば+10℃)を上回っている場合(ステップ#22のYes)には、開放式冷却塔31のブリードインが開始されて(ステップ#23)、開放式冷却塔31のブリードインが非実行中の状態から実行中の状態に切り替わる。一方、上記温度差ΔT2が上記冷却開始用設定温度差ΔT2aを上回っていない場合(ステップ#22のNo)には、開放式冷却塔31のブリードインが開始されない。
【0033】
また、第1の冷熱源部ブリードイン制御では、開放式冷却塔31のブリードインの実行中(ステップ#21のYes)において、冷熱源部用熱交換器36を通流する熱源水Xの温度として還温度センサ15で計測された還温度T15に対する外気湿球温度センサ39で計測された外気Aの湿球温度T39の温度差ΔT2(=T15-T39)が求められる。そして、その温度差ΔT2が所定の冷却終了用設定温度差ΔT2b(例えば+2℃)以下に達した場合(ステップ#24のYes)には、開放式冷却塔31のブリードインが終了されて(ステップ#25)、開放式冷却塔31のブリードインが実行中の状態から非実行中の状態に切り替わる。一方、上記温度差ΔT2が上記冷却終了用設定温度差ΔT2b以下に達していない場合(ステップ#24のNo)には、開放式冷却塔31のブリードインが継続される。
【0034】
上述のように第1の冷熱源部ブリードイン制御では、冷熱源部30として開放式冷却塔31が設けられている場合において、外気湿球温度センサ39で計測された外気Aの湿球温度T39を用いて開放式冷却塔31のブリードインの開始及び終了の判断をしたが、冷熱源部30として開放式冷却塔31が設けられている場合に限らず、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの温度のみで開放式冷却塔31のブリードインの開始及び終了の判断をすることもできる。
また、冷熱源部ブリードイン制御手段63は、図5に示す第2の冷熱源部ブリードイン制御を実行することもできる。尚、この第2の冷熱源部ブリードイン制御は、上記第1の冷熱源部ブリードイン制御とは異なり、冷熱源部30として開放式冷却塔31が設けられた場合に限定されたものではなく、他の形式の冷熱源部30にも適用可能である。
【0035】
即ち、第2の冷熱源部ブリードイン制御では、冷熱源部30のブリードインの非実行中(ステップ#31のNo)において、熱源水Xの温度として還温度センサ15で計測された還温度T15が取得され、その還温度T15が所定の設定上限温度T15max(例えば30℃)を上回っている場合(ステップ#32のYes)には、冷熱源部30のブリードインが開始されて(ステップ#33)、冷熱源部30のブリードインが非実行中の状態から実行中の状態に切り替わる。一方、還温度T15が所定の設定上限温度T15maxを上回っていない場合(ステップ#32のNo)には、冷熱源部30のブリードインが開始されない。
【0036】
また、第2の冷熱源部ブリードイン制御では、冷熱源部30のブリードインの実行中(ステップ#31のYes)において、熱源水Xの温度として還温度センサ15で計測された還温度T15が取得され、その還温度T15が所定の設定復帰温度T15a(例えば25℃)以下に達した場合(ステップ#34のYes)には、冷熱源部30のブリードインが終了されて(ステップ#35)、冷熱源部30のブリードインが実行中の状態から非実行中の状態に切り替わる。一方、還温度T15が所定の設定復帰温度T15a以下に達していない場合(ステップ#34のNo)には、冷熱源部30のブリードインが継続される。
このような構成により、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの温度は、上記上限温度以下の中間温度帯(例えば20℃から30℃までの温度帯)に保たれることになる。
【0037】
尚、本実施形態では、冷熱源部ブリードイン制御手段63による冷熱源部ブリードイン制御において、冷熱源部30(開放式冷却塔31)のブリードインの開始及び終了の判断を、熱源水Xの温度として還温度センサ15で計測された還温度T15に基づいて行ったが、熱源水Xの温度として往温度センサ14で計測された往温度T14に基づいて行っても構わない。
【0038】
以下、本熱源システムにおいて、熱負荷部B側に設けられたチラー50に関する構成について説明を加える。
チラー50は、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの熱を利用して冷温水CW,HWを生成可能に構成されている。
即ち、チラー50は、熱源水Xの熱を利用する場合には、熱源水往管路11から熱源水取出路51を通じて熱源水Xを取り出し、その熱源水Xとの熱交換により冷水CW又は温水HWを生成し、当該熱交換後の熱源水Xを、熱源水戻り路52を通じて熱源水還管路12へ戻す形態で、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの冷熱又は温熱を利用する。即ち、チラー50が熱源水Xを利用して冷水CWを生成する際には、熱源水循環路10を通流する熱源水Xに対してチラー50から温排熱が放出されることになり、一方、チラー50が熱源水Xを利用して温水HWを生成する際には、熱源水循環路10を通流する熱源水Xに対してチラー50から冷排熱が放出されることになる。
チラー50により生成された冷水CW又は温水HWは、冷温水供給路57を通じて、外気処理空調装置などの冷温水利用部58に供給されて、室内に供給される外気の冷却又は加熱等に利用される。
【0039】
熱源水循環路10を循環する熱源水Xにおいて、チラー50による熱利用の負担が大きくなった場合には、熱源水Xの温度が過剰に上昇又は低下して冷熱源部30又は温熱源部20による熱源水Xの冷却又は加熱の頻度が増加することで、システム全体のCOPの悪化を招く。特に、エネルギー消費量が大きい補助加熱装置22が設けられた温熱源部20による熱源水Xの加熱頻度が増加すると、システム全体のCOPが悪化する。
そこで、本熱源システムでは、合理的な構成を採用しながらCOPの向上を図るための構成を採用しており、その詳細について以下に説明を加える。
【0040】
チラー50は、冷温水CW,HWの生成に熱源水Xの熱を利用する熱源水利用モードと、冷温水CW,HWの生成に外気Aの熱を利用する空気利用モードとの間で、運転モードを切り替え可能に構成されている。そして、制御装置60は、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの状態に基づいてチラー50の運転モードを、上記熱源水利用モードと上記空気利用モードとの間で切り替えるチラー運転モード切替手段61として機能する。
チラー運転モード切替手段61は、熱源水Xをチラー50に取り込むための熱源水取出路51に設けられた開閉弁53を開放させると共に外気Aをチラー50に取り込むため送風ファン54を停止させることで、チラー50の運転モードを、熱源水往管路11から取り込まれた熱源水Xとの熱交換により冷水CW又は温水HWを生成する熱源水利用モードに設定することができる。また、チラー運転モード切替手段61は、熱源水Xをチラー50に取り込むための熱源水取出路51に設けられた開閉弁53を閉鎖させると共に外気Aをチラー50に取り込むため送風ファン54を作動させることで、チラー50の運転モードを、送風ファン54から取り込まれた外気Aとの熱交換により冷水CW又は温水HWを生成する空気利用モードに設定することができる。
【0041】
更に、チラー運転モード切替手段61は、チラー50が熱源水利用モードで作動しているときに、熱源水循環路10を循環する熱源水Xに対するチラー50による熱利用の負担が大きくなることを熱源水Xの状態から判定した場合には、適宜チラー50の運転モードを熱源水利用モードから空気利用モードに切り替える。すると、熱源水循環路10を循環する熱源水Xに対するチラー50による熱利用の負担が無くなる。このことで、チラー50による熱利用の負担増加に起因する熱源水Xの温度の過剰な上昇又は低下が回避され、結果、冷熱源部30又は温熱源部20による熱源水Xの冷却又は加熱の頻度の増加が軽減されることになる。
【0042】
チラー運転モード切替手段61によるチラー50の運転モードの切り替え制御については、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの状態として、熱源水Xの温度やチラー50の冷排熱量等に基づいて実行される。以下、その具体的なチラー50の運転モードの切り替え制御について、図6を参照して説明する。
【0043】
チラー50が熱源水利用モードで作動しているとき(ステップ#41のYes)に、熱源水Xの温度として還温度センサ15で計測された還温度T15が所定の空気利用モード切替用設定値T15b(例えば20℃)以下になった場合(ステップ#42のYes)には、開閉弁53が開放状態から閉鎖状態に切り替えられると共に送風ファン54が停止状態から作動状態に切り替えられる形態で、チラー50の運転モードが熱源水利用モードから空気利用モードに切り替えられる(ステップ#43)。一方、上記還温度T15が上記空気利用モード切替用設定値T15b以下になっていない場合(ステップ#42のNo)には、チラー50の運転モードが熱源水利用モードに維持される。
即ち、チラー50が熱源水利用モードで温水HWを生成しているときには、チラー50が温水HWを生成することで発生する冷排熱が、熱源水循環路10を循環する熱源水Xに放出されて当該熱源水Xの温度低下の要因となる。そして、このようにチラー50から熱源水Xに対して冷排熱が放出されている状態において、還温度T15が上記空気利用モード切替用設定値以下になると、チラー50の運転モードが自動的に熱源水利用モードから空気利用モードに切り替えられる。すると、熱源水循環路10を循環する熱源水Xに対するチラー50からの冷排熱の放出が無くなる。このことで、熱源水Xの温度低下が抑制されて、当該熱源水Xの温度低下に起因するCOPの低下の要因となる温熱源部20による熱源水Xの加熱頻度が軽減されることになる。
【0044】
一方、チラー50が空気利用モードで作動しているとき(ステップ#41のNo)に、チラー50の冷排熱量Qが所定の熱源水利用モード切替用設定値Qa以下になった場合(ステップ#44のYes)には、開閉弁53が閉鎖状態から開放状態に切り替えられると共に送風ファン54が作動状態から停止状態に切り替えられる形態で、チラー50の運転モードが空気利用モードから熱源水利用モードに切り替えられる(ステップ#45)。一方、上記冷排熱量Qが上記熱源水利用モード切替用設定値Qa以下になっていない場合(ステップ#44のNo)には、チラー50の運転モードが空気利用モードに維持される。
【0045】
空気利用モードから熱源水利用モードへの切り替えの判断で参照する上記チラー50の冷排熱量Qは、熱源水利用モードに切り替えた場合に熱源水Xに放出されると予測される冷排熱量として、空気利用モードで作動中のチラー50の熱負荷から算出することができる。
即ち、チラー50が空気利用モードで温水HWを生成しているときには、チラー50が温水HWを生成することで発生する冷排熱が、熱源水循環路10を循環する熱源水Xには放出されずに外気Aに放出される。そして、このようにチラー50から熱源水Xに対して冷放熱が放出されていない状態において、チラー50の冷排熱量が上記熱源水利用モード切替用設定値以下になった場合には、チラー50の運転モードが自動的に空気利用モードから熱源水利用モードに切り替えられる。すると、チラー50から熱源水Xに対して冷放熱が放出されるようになるが、その冷排熱は比較的小さなものとなる。このことで、熱源水Xの温度低下が抑制されて、当該熱源水Xの温度低下に起因する温熱源部20による熱源水Xの加熱頻度が軽減されることになる。
【0046】
更に、空気利用モードから熱源水利用モードへの切り替えの判断指標に用いる上記熱源水利用モード切替用設定値Qaは、経験的にCOPの向上につながると考えられる固定値とすることができるが、本実施形態では、冷熱源部30の熱源水Xに対する冷却量に相当する熱負荷部Bの熱源水Xに対する温排熱量を、上記熱源水利用モード切替用設定値Qaとしている。
即ち、チラー運転モード切替手段61によるチラー50の運転モードの切り替え制御では、チラー50が空気利用モードで作動しているときに、チラー50の冷排熱量Qが、熱源水Xに対する熱負荷部Bの温排熱量に相当する熱源水利用モード切替用設定値Qa以下になった場合には、冷熱源部30の熱源水Xに対する冷却量に余裕があると判断されて、チラー50の運転モードが自動的に空気利用モードから熱源水利用モードに切り替えられる。すると、運転モードが熱源水利用モードに切り替えられたチラー50は実質的に他の熱負荷部Bから熱源水Xに放出された温排熱のみを利用して温水HWを生成する状態となる。よって、チラー50からの冷排熱の放出による熱源水Xの温度低下が一層抑制されて、熱源水利用モードへの切り替え直後における温熱源部20による熱源水Xの加熱が回避されることになる。
尚、上記熱負荷部Bの熱源水Xに対する温排熱量は、チラー50が空気利用モードで作動しているときに、還温度センサ15で計測された熱源水Xの還温度T15から往温度センサ14で計測された熱源水Xの往温度T14を差し引いた熱源水Xの温度差(=T15-T14)に対して、流量センサ17で計測された熱源水Xの循環流量を乗じた値として求めることができる。
【0047】
空気利用モードから熱源水利用モードへの切り替えの判断に用いるチラー50の冷排熱量や熱負荷部Bの温排熱量は、瞬時値を用いることもできるが、本実施形態では、1日などの一定期間の積分値を用いて空気利用モードから熱源水利用モードへの切り替えを判断することもできる。このことで、チラー50の冷排熱量や熱負荷部Bの温排熱量の一時的な増減による無用な運転モードの切り替えを回避することができる。
【0048】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0049】
(1)上記実施形態では、チラー運転モード切替手段61は、熱源水Xの温度が所定の空気利用モード切替用設定値以下になった場合にチラー50の運転モードを熱源水利用モードから空気利用モードに切り替え、チラー50の冷排熱量が所定の熱源水利用モード切替用設定値以下になった場合にチラー50の運転モードを空気利用モードから熱源水利用モードに切り替えたが、これらチラー50の運転モードの切り替えの判断は、熱源水循環路10を循環する熱源水Xの状態を示す熱源水Xの温度やチラー50の冷排熱量以外の指標に基づいて行うように構成することもできる。
【符号の説明】
【0050】
10 熱源水循環路
20 温熱源部(熱源部)
30 冷熱源部(熱源部)
40 ビル用マルチエアコン(熱負荷部)
50 チラー
61 チラー運転モード切替手段
A 外気(空気)
B 熱負荷部
CW 冷水
HW 温水
T14 往温度(熱源水の温度)
T15 還温度(熱源水の温度)
X 熱源水
図1
図2
図3
図4
図5
図6