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  • 特開-フェンダーライナ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006737
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】フェンダーライナ
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/18 20060101AFI20250109BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20250109BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B62D25/18 F
B60R13/08
G10K11/172
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107718
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 昌之
【テーマコード(参考)】
3D023
3D203
5D061
【Fターム(参考)】
3D023BA03
3D023BB21
3D023BC01
3D023BD25
3D023BE03
3D023BE20
3D203AA01
3D203AA31
3D203BC23
3D203CB24
5D061CC04
(57)【要約】
【課題】簡易な構成を有し、タイヤが跳ね上げた水や小石等を直ちに排出可能な構造でありながら、走行時にタイヤから発生する騒音を吸音する。
【解決手段】車輪の上方を覆うフェンダーライナ10であって、内側部品1と、内側部品1の外周面111の少なくとも一部に重ね合わされた状態で内側部品1に固定される外側部品2と、を備え、内側部品1と外側部品2の間には、周方向に延びて、車輪側の空間と車体側の空間を連通する連通管7が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の上方を覆うフェンダーライナであって、
内側部品と、前記内側部品の外周面の少なくとも一部に重ね合わされた状態で前記内側部品に固定される外側部品と、を備え、
前記内側部品と前記外側部品の間には、周方向に延びて、前記車輪側の空間と車体側の空間を連通する連通管が形成されていることを特徴とするフェンダーライナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の上方を覆うフェンダーライナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フェンダーライナの外周面に略直方体の形状の空気室を多数形成し、空気室とホイールハウスを貫通孔によって連通させることによって、空気室を共鳴室として貫通孔を共鳴室の開口部としたヘルムホルツ型レゾネータを設けたフェンダーライナが開示されている。このフェンダーライナは、このように設けたヘルムホルツ型レゾネータによって、走行時にタイヤから発生する騒音を吸音することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-008458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車は、エンジン音を生じないため、エンジンを搭載した車両と比較して、車内騒音の中で走行時にタイヤから発生する騒音が占める割合が高くなる。そのため、特に電気自動車では、走行時にタイヤから発生する騒音を低減させることが求められている。
【0005】
特許文献1で開示されたフェンダーライナは、ヘルムホルツ型レゾネータによって、走行時にタイヤから発生する騒音を吸音することができる。しかし、このフェンダーライナは、外周面に多数の空気室を設ける複雑な構成を有するため、コストが増加する。また、このフェンダーライナは、タイヤによって跳ね上げられて貫通孔から空気室に入った水や小石等が空気室から排出され難い構造を有するため、空気室に溜まった水が部品の腐食や錆を発生させたり、空気室に入った小石等が異音を発生させたりすることが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成を有し、タイヤが跳ね上げた水や小石等を直ちに排出可能な構造でありながら、走行時にタイヤから発生する騒音を吸音できるフェンダーライナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフェンダーライナは、車輪の上方を覆うフェンダーライナであって、内側部品と、前記内側部品の外周面の少なくとも一部に重ね合わされた状態で前記内側部品に固定される外側部品と、を備え、前記内側部品と前記外側部品の間には、周方向に延びて、前記車輪側の空間と車体側の空間を連通する連通管が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、簡易な構成を有し、タイヤが跳ね上げた水や小石等を直ちに排出可能な構造でありながら、走行時にタイヤから発生する騒音を吸音することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態のフェンダーライナの斜視図である。
図2図1におけるA-A線断面図である。
図3】第2の実施形態のフェンダーライナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、図1~2を参照しながら、第1の実施形態のフェンダーライナ10について説明する。以下の図面に示す矢印FR、矢印UP、矢印RHは、車両の前方向(進行方向)、上方向、右方向をそれぞれ示している。また、各矢印FR、UP、RHの反対方向は、それぞれ車両後方向、下方向、左方向を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0011】
図1は、フェンダーライナ10の斜視図である。図1に示すように、フェンダーライナ10は、内側部品1と外側部品2を備える。内側部品1は、略半円筒形状のアーチ部11と、車両幅方向内側に配置される側壁部12と、前側フランジ部13で構成される。アーチ部11の外周面111の後端部には、アーチ部11の径方向内側へ向かって凹んで周方向に延びる略半円筒形状の溝14が形成されている。外側部品2は、内側部品1のアーチ部11の外周面111の後端部に重ね合わされた状態で内側部品1に固定される円弧部21と、車両幅方向内側に配置される側壁部22と、後側フランジ部23で構成される。
【0012】
図2は、図1におけるA-A線断面図である。図2には、図1に描かれていないタイヤ3及び車体パネル4も描かれている。図2では、タイヤ3を一点鎖線で示し、車体パネル4を二点鎖線で示している。タイヤ3は、車両の右側の車輪である。フェンダーライナ10は、タイヤ3の上方を覆い、車両の右側のホイールアーチを形成している。フェンダーライナ10の径方向内側には、タイヤ3側の空間としてホイールハウス5が形成されている。フェンダーライナ10の径方向外側には車体パネル4が配置されており、フェンダーライナ10と車体パネル4の間に背後空間6が形成されている。
【0013】
図1に示すように、外側部品2の円弧部21が内側部品1のアーチ部11の外周面111の後端部に重ね合わされた状態で内側部品1に固定されることにより、溝14の上に外側部品2の円弧部21が被さるため、内側部品1と外側部品2の間には、ホイールハウス5と背後空間6を連通する連通管7が形成される。そのため、フェンダーライナ10には、背後空間6を共鳴室として連通管7を共鳴室の開口部としたヘルムホルツ型レゾネータが形成される。フェンダーライナ10は、走行時にタイヤ3の路面接地位置から発生する騒音を連通管7から背後空間6へ進入させて、背後空間6と連通管7をホルムヘルツ型レゾネータとして活用することにより、タイヤ3から発生する騒音を吸音することができる。フェンダーライナ10は、このように走行時にタイヤ3から発生する騒音を吸音することによって、車室内で乗員に聞こえる騒音を低減させることができる。
【0014】
ヘルムホルツ型レゾネータが吸音する周波数fについては、音速をc、共鳴室の容積をV、共鳴室から延びる連通管の通路の断面積をS、連通管の長さをLとすると、以下の式1の関係が成り立つ。
【0015】
【数1】
【0016】
そのため、フェンダーライナ10では、背後空間6の容積の大きさの値と、連通管7の通路の断面積の値と、連通管7の長さの値を適切に設定することによって、ヘルムホルツ型レゾネータで吸音する騒音の周波数を調整することができる。
【0017】
また、走行時にタイヤ3から発生する騒音については、タイヤ3の路面へ接地する位置の付近かつ接地位置より後側の位置で、特に音圧が高くなることが知られている。そのため、フェンダーライナ10は、図1~2に示すように連通管7をフェンダーライナ10の後側の路面に近い位置に設けることによって、吸音の効果を大きくすることができる。
【0018】
更に、このようにフェンダーライナ10の後部に連通管7を設け、内側部品1のアーチ部11の外周面111の後部に外側部品2を重ね合わされた状態で固定することによって、フェンダーライナ10は、後部の剛性を向上することができる。
【0019】
そして、フェンダーライナ10は、内側部品1と外側部品2の2つの部品で構成され、内側部品1に外側部品2を固定して連通管7を形成することによってヘルムホルツ型レゾネータを設けることが可能であるため、特許文献1に開示されたフェンダーライナと比較して簡易な構成を有する。
【0020】
そして、フェンダーライナ10に周方向へ延びるように設けられた連通管7は傾斜しているため、タイヤ3が跳ね上げた水や小石等が連通管7に入ったとしても、連通管7から下方へ直ちに排出することができる。特に、図1~2に示すように連通管7をフェンダーライナ10の後部に設けることにより、連通管7の傾斜が大きくなるため、更に水や小石等を排出し易くなる。また、結露等の要因によって内側部品1のアーチ部11の外周面111に水が溜まった場合でも、連通管7から水を排出することができる。そのため、フェンダーライナ10は、部品の腐食や錆の発生を抑制することができる。
【0021】
このようにフェンダーライナ10は、簡易な構成を有し、タイヤ3が跳ね上げた水や小石等を直ちに排出可能な構造でありながら、走行時にタイヤ3から発生する騒音を吸音することができる。
【0022】
なお、フェンダーライナ10は、内側部品1のアーチ部11の外周面111にシンサレート(登録商標)等の繊維材を貼り付けることによって、吸音効果を更に向上させてもよい。
【0023】
<第2の実施形態>
次に、図3を参照しながら、第2の実施形態のフェンダーライナ20について説明する。第2の実施形態のフェンダーライナ20は、内側部品1aと外側部品2の間に3つの連通管7a~7cが設けられ、内側部品1aのアーチ部11aの外周面111aに仕切り壁15が設けられている点を除いて、第1の実施形態のフェンダーライナ10と同一の構成を有している。そのため、第1の実施形態のフェンダーライナ10と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0024】
図3は、フェンダーライナ20の斜視図である。図3に示すように、フェンダーライナ20は、内側部品1aと外側部品2を備える。内側部品1aは、略半円筒形状のアーチ部11aと、車両幅方向内側に配置される側壁部12と、前側フランジ部13で構成される。アーチ部11aの外周面111aの後端部には、アーチ部11aの径方向内側へ向かって凹んで周方向に延びる略半円筒形状の3つの溝14a~14cが形成されている。3つの溝14a~14cは、互いに平行となるように車両幅方向に並んで配置されている。そして、内側部品1aのアーチ部11aの外周面111aには、仕切り壁15が設けられている。フェンダーライナ20が車体に取り付けられると、仕切り壁15が車体パネル4に接触し、フェンダーライナ20と車体パネル4の間の背後空間6には、3つの共鳴室6a~6cが形成される。
【0025】
外側部品2の円弧部21が内側部品1aのアーチ部11aの外周面111aの後端部に重ね合わされた状態で内側部品1aに固定されることにより、3つの溝14a~14cを外側部品2の円弧部21が覆うため、内側部品1aと外側部品2の間には、ホイールハウス5と共鳴室6aを連通する連通管7aと、ホイールハウス5と共鳴室6bを連通する連通管7bと、ホイールハウス5と共鳴室6cを連通する連通管7cが形成される。そのため、フェンダーライナ20には、共鳴室6aと連通管7aで構成されるヘルムホルツ型レゾネータと、共鳴室6bと連通管7bで構成されるヘルムホルツ型レゾネータと、共鳴室6cと連通管7cで構成されるヘルムホルツ型レゾネータが形成される。
【0026】
フェンダーライナ20は、これらの3つのヘルムホルツ型レゾネータを活用することにより、走行時にタイヤ3から発生する騒音を吸音して、車室内で乗員に聞こえる騒音を低減させることができる。そして、フェンダーライナ20は、このように3つのヘルムホルツ型レゾネータを設けることにより、走行時にタイヤ3から発生する騒音がヘルムホルツ型レゾネータに侵入する度合いを促進させて、吸音の効果を向上させることができる。また、フェンダーライナ20は、共鳴室6a~6cの容積の大きさの値と、連通管7a~7cの通路の断面積の値と、連通管7a~7cの長さの値を適切に設定することによって、ヘルムホルツ型レゾネータで吸音する騒音の周波数を調整することができる。
【0027】
更に、このようにフェンダーライナ20の後部に3つの連通管7a~7cを設け、内側部品1aのアーチ部11aの外周面111aの後部に外側部品2を重ね合わされた状態で固定することによって、フェンダーライナ20は、第1の実施形態のフェンダーライナ10と比較して、後部の剛性を更に向上することができる。
【0028】
そして、フェンダーライナ20は、内側部品1aと外側部品2の2つの部品で構成され、内側部品1aに外側部品2を固定して3つの連通管7a~7cを形成することによってヘルムホルツ型レゾネータを設けることが可能であるため、特許文献1に開示されたフェンダーライナと比較して簡易な構成を有する。
【0029】
そして、フェンダーライナ20に周方向へ延びるように設けられた3つの連通管7a~7cはいずれも傾斜しているため、タイヤ3が跳ね上げた水や小石等が連通管7a~7cに入ったとしても、連通管7a~7cから下方へ直ちに排出することができる。特に、図3に示すように連通管7a~7cをフェンダーライナ20の後部に設けることにより、連通管7a~7cの傾斜が大きくなるため、更に水や小石等を排出し易くなる。また、結露等の要因によって内側部品1aのアーチ部11aの外周面111aに水が溜まった場合でも、3つの連通管7a~7cから水を排出することができる。そのため、フェンダーライナ20は、部品の腐食や錆の発生を抑制することができる。
【0030】
このようにフェンダーライナ20は、簡易な構成を有し、タイヤ3が跳ね上げた水や小石等を直ちに排出可能な構造でありながら、走行時にタイヤ3から発生する騒音を吸音することができる。なお、内側部品1aと外側部品2の間に形成される連通管の数は、例えば2や4など、3以外の数であってもよい。また、内側部品1aのアーチ部11aの外周面111aに仕切り壁15を設けず、ホイールハウス5と背後空間6を複数の連通管で連通させてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1、1a 内側部品、2 外側部品、3 タイヤ、4 車体パネル、5 ホイールハウス、6 背後空間、6a,6b,6c 共鳴室、7,7a,7b,7c 連通管、10,20 フェンダーライナ、11,11a アーチ部、12 側壁部、13 前側フランジ部、14,14a,14b,14c 溝、15 仕切り壁、21 円弧部、22 側壁部、23 後側フランジ部、111,111a 外周面。
図1
図2
図3