(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006740
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電力変換装置、系統連系電力変換システムおよびその地絡検出方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250109BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107722
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】毛利 江鳴
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770CA01
5H770CA10
5H770DA22
5H770DA30
5H770HA03W
5H770HA03Y
5H770JA17Y
5H770LA06W
5H770LA10Y
5H770LB05
(57)【要約】
【課題】系統低圧側が接地をしても各系統連系する電力変換装置の地絡検出回路間での干渉がなく、漏電遮断器等のシステムの誤動作を発生させない高い信頼性を得ることを目的とする。
【解決手段】直流地絡を検出するための電源周期を基準としたタイミングを前記電力変換装置1、2間で異なる順番に割り当て、各MCU104、204では、電力変換装置1,2間の電源周期を同期させ、その同期した電源周期が地絡検出のタイミングに到達した電力変換装置から順に直流地絡を検出するように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力変換装置で構成され、複数の直流電源を共通の交流電源に連系する系統連系電力変換システムの電力変換装置であって、
直流地絡を検出する地絡検出部と、
直流地絡の検出を有効または無効に切り換えるスイッチ部と、
電源周期を有し、前記スイッチ部の切り換えを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、直流地絡を検出するための電源周期を基準としたタイミングが前記他の電力変換装置とは異なる順番に割り当てられており、前記電力変換装置間で前記電源周期を同期させ、当該同期した電源周期が前記割り当てたタイミングに到達した場合に前記スイッチ部を有効に切り換えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、前記各電力変換装置には少なくとも自身の前記地絡検出部の動作に必要な電源周期のカウント数が割り当てられており、前記制御部は前記すべての電力変換装置のカウント数を合計した総数を一周期として当該一周期毎に前記スイッチ部の有効と無効の切り換えを繰り返すことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、前記制御部は前記他の電力変換装置の電源周期の基準として自身の電源周期を同期補正することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置において、前記制御部は前記地絡検出部が直流地絡を検出した場合に前記系統連系電力変換システムの解列を制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電力変換装置において、前記制御部は前記地絡検出部が直流地絡を検出した場合に前記電力変換装置自体の動作を停止制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電力変換装置において、前記制御部は電源周期の検出を位相ロックループで行うことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
複数の直流電源を共通の交流電源に連系する系統連系電力変換システムであって、
第1直流電源に接続され、当該第1直流電源における直流地絡を検出する第1地絡検出部と、
第2直流電源に接続され、当該第2直流電源における直流地絡を検出する第2地絡検出部と、
電源周期を基準に異なるタイミングで前記第1、第2地絡検出部による直流地絡の検出を切り換え制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする系統連系電力変換システム。
【請求項8】
請求項7に記載の系統連系電力変換システムにおいて、前記第1地絡検出部、前記第2地絡検出部にそれぞれ1対1で前記制御部が配置され、前記制御部間で前記電源周期を同期させて直流地絡を検出することを特徴とする系統連系電力変換システム。
【請求項9】
各々で直流地絡を検出する複数の電力変換装置で構成され、複数の直流電源を共通の交流電源に連系する系統連系電力変換システムの地絡検出方法であって、
直流地絡を検出するための電源周期を基準としたタイミングを前記電力変換装置間で異なる順番に割り当て、前記電力変換装置間で前記電源周期を同期させ、当該同期した電源周期が前記割り当てたタイミングに到達した前記電力変換装置から順に直流地絡の検出に切り換えることを特徴とする系統連系電力変換システムの地絡検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力変換装置、系統連系電力変換システムおよびその地絡検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全量売電PCS(Power Conditioning System)の発電設備において、連系用に混触防止版を備え、低圧側接地を不要とした非接地方式が多い。余剰売電の発電設備では、連系用の低圧側に接地が施されたケースが多い。
【0003】
保守管理を行う上では、連系用変圧器の低圧側全てにおいて、安定的、かつ、確実な地絡検出は不可欠である。交流側地絡保護に関しては、系統側に漏電遮断器を使用して電路を切り離すのが一般的である。
【0004】
直流側地絡保護に関しては、系統連系電力変換装置直流電路のプラス側とマイナス側の間に高抵抗を2本挿入し、その中間点が抵抗を通じて接地し、対地間中心点を作り出し、直流側の地絡により生ずる中心点電位の変化により、地絡を検出する手法が多く使われている。
【0005】
複数の直流電源を共通の交流電源に連携するインバータを用いて地絡を検出して系統安定性を確保する技術は特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の直流電源を共通の交流電源に連系する系統連系電力変換システムの場合、連系動作する際に、各電力変換装置に設けた直流地絡検出回路は互いに干渉する。特に、連系用変圧器の系統低圧側が接地する場合、地絡電流の流れるルートが複雑となり、系統連系する際に直流地絡を検出することが困難になる。特許文献1では、系統が接地する場合の計算方法については明確な記載はない。
【0008】
また、前述の連系用変圧器に連系電力変換装置の数が多くなると、直流地絡が発生しなくても直流地絡検出回路を経由する電流が大きくなり、交流側の漏電遮断器が誤動作しやすくなる。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、系統低圧側が接地をしても各系統連系する電力変換装置の地絡検出回路間での干渉がなく、漏電遮断器等のシステムの誤動作を発生させない高い信頼性を得ることが可能な電力変換装置、系統連系電力変換システムおよびその地絡検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、上記目的を達成するため、本発明の一実施態様は、複数の電力変換装置で構成され、複数の直流電源を共通の交流電源に連系する系統連系電力変換システムの電力変換装置であって、直流地絡を検出する地絡検出部と、直流地絡の検出を有効または無効に切り換えるスイッチ部と、電源周期を有し、前記スイッチ部の切り換えを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、直流地絡を検出するための電源周期を基準としたタイミングが前記他の電力変換装置とは異なる順番に割り当てられており、前記電力変換装置間で前記電源周期を同期させ、当該同期した電源周期が前記割り当てたタイミングに到達した場合に前記スイッチ部を有効に切り換えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の実施態様は、複数の直流電源を共通の交流電源に連系する系統連系電力変換システムであって、第1直流電源に接続され、当該第1直流電源における直流地絡を検出する第1地絡検出部と、第2直流電源に接続され、当該第2直流電源における直流地絡を検出する第2地絡検出部と、電源周期を基準に異なるタイミングで前記第1、第2地絡検出部による直流地絡の検出を切り換え制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の実施態様は、各々で直流地絡を検出する複数の電力変換装置で構成され、複数の直流電源を共通の交流電源に連系する系統連系電力変換システムの地絡検出方法であって、直流地絡を検出するための電源周期を基準としたタイミングを前記電力変換装置間で異なる順番に割り当て、前記電力変換装置間で前記電源周期を同期させ、当該同期した電源周期が前記割り当てたタイミングに到達した前記電力変換装置から順に直流地絡の検出に切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、系統低圧側が接地をしても各系統連系する電力変換装置の地絡検出回路間での干渉がなく、漏電遮断器等のシステムの誤動作を発生させない高い信頼性を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による地絡検出装置の一構成例を示す回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態による電源位相同期を説明する波形図である。
【
図3】本発明の一実施形態による電源周期カウンタの周期を説明する波形図である。
【
図4】本発明の一実施形態による電源周期を同期させる動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態による地絡検出の動作の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は本発明を説明するための例示に過ぎず、説明の明確化のため、適宜、省略や簡略化がなされている。また、本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。また、とくに限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0016】
まず、
図1を用いて本実施形態の系統連系電力変換システムについて説明する。本実施形態の系統連系電力変換システムは、例えば
図1に示したように、複数の直流電源51、52を共通の交流電源に連系され、直流から交流への電力変換を系統連系電力変換装置(以下、電力変換装置という)1および2により行う構成である。また、漏電を検出した場合に遮断動作する漏電遮断器3と電力変換装置1、2の出力を交流電源に系統連系するステップアップ変圧器4が各電力変換装置1、2の後段に接続される。
【0017】
電力変換装置1は、例えば
図1に示すように、交流電圧検出器101,DC/DC変換器102、DC/AC変換器103、制御部であるMCU(Micro Controller Unit)104、地絡検出部である直流地絡検出回路105、地絡回路電圧検出器106、スイッチ部であるスイッチ107、開閉器108などにより構成される。
【0018】
同様に、電力変換装置2は、例えば
図1に示すように、交流電圧検出器201、DC/DC変換器202、DC/AC変換器203、制御部であるMCU204、地絡検出部である直流地絡検出回路205、地絡回路電圧検出器206、スイッチ部であるスイッチ207、開閉器208などにより構成される。
【0019】
電力変換装置1および2は同様の構成を有しているので、各部の説明は電力変換装置1を用いて行う。交流電圧検出器101は交流電源に出力する交流電圧を検出する。DC/DC変換器102は直流電源51の出力をDC/DC変換して昇圧/降圧を制御する、DC/AC変換器103はDC/DC変換された直流電圧を交流電圧に変換する。
【0020】
MCU104は、CPU、DSP、メモリ、I/Oなどの回路により構成され、電力変換及び地絡検出にかかる動作制御を司る。直流地絡検出回路105は直流電源51側で直流地絡を検出する。地絡回路電圧検出器106は直流地絡検出回路105の出力から直流電圧を検出する。スイッチ107はMCU104の制御に応じて直流地絡検出回路105の有効/無効を切り換え、開閉器108はMCU104の制御で地絡検出の有無に応じて開閉を切り換える。
【0021】
つぎに、
図2および
図3を用いて、直流地絡検出回路105および205があらかじめ設定された順番に従って地絡検出するための原理について説明する。
図2は本発明の一実施形態による電源位相同期を説明する波形図であり、
図3は本発明の一実施形態による電源周期カウンタの周期を説明する波形図である。
【0022】
MCU104は電源周期を検出するための位相ロックループ(PLL)を持っている。MCU104は、
図2に示すように、電源周期を基準として自身のクロック周波数の位相と基準周波数(系統交流電圧周波数)の位相とを比較して、この2つの周波数間の位相差を低減する方向に、自身のクロック周波数の位相を調節し、系統電圧の位相Φを検出する。
【0023】
直流地絡検出回路105は、直流電路のプラス側とマイナス側の間に高抵抗を挿入し、その中間点が抵抗を通じて接地し、対地間中心点を作り出す。直流地絡が発生する場合、直流地絡検出回路105の中間点の電位が変化し、この電位変化を監視する地絡回路電圧検出器106が直流地絡を検出し、MCU104がDC/AC変換器103の動作を停止させ、また開閉器108を解列させる等の異常処理を行う。ここで、電力変換装置2も上述の電力変換装置1と同様の機能とする。
【0024】
各電力変換装置1、2において、MCU104、204は電源周期を検出するための位相ロックループ(PLL)を有している。電力変換装置1、2では、各クロック周波数の位相と基準周波数(電源電圧周波数)の位相とを比較して、この2つの周波数間の位相差を低減する方向に電力変換装置側の位相を調節する処理が実施される。
【0025】
各電力変換装置1、2は、
図3に示すように、電源周期をカウントする電源周期カウンタを有しており、MCU104、204によって制御する。この電源周期カウンタの特徴としては、電源が遮断されたときも、従来の周期のままに自律的にカウントが続く。各電力変換装置10、20の電源周期カウンタは同じ基準周期(電源電圧周期)を持っているため、カウントのスタート時刻が共有されると電力変換装置1、2間においてカウントの同期を可能とする。
【0026】
上述のスタート時刻は外部から基準信号として受け取ってもよいが、ここでは電源変換装置1のMCU104がベースとなる基準信号を発生するものとする。この場合、MCU104で発生した基準信号は、連系される電力変換装置のすべてに供給され、
図1の構成例ではMCU205に供給される。
【0027】
このように、複数の電力変換装置中のひとつを基準信号発生装置とする。ここで、各電力変換装置がこの基準信号を同時に受け取る必要はない。現時点の電源カウント数N_Kを受ければよい。受けた後、電力変換装置が各自に電源周期をカウントする。もちろん、各電力変換装置のもつ時刻にずれがないことを前提としており、電源周期の遅れがある場合にはその時補正が系統連系電力変換システム1の稼働後ではなく稼働前(事前)に実施される。
【0028】
各電力変換装置1、2において、基準信号との比較で信号の遅れが電源周期より大きい場合には、各電力変換装置1、2が正しく同期できない可能性がある。この場合は、電力変換装置2が外部基準信号発生装置である電力変換装置1の時刻・年月日などの情報も受け、自身が持っている時刻情報を用いて、開始カウント数N_Kを下記の式(1)のように求める。
[年・月・日・時・分・秒・ミリ秒・電源周期のカウンタ数]
【0029】
【0030】
ここで、外部装置基準時刻はN_K0とし、演算子%は剰余演算子とする。N_MAXはすべての電力変換装置を直流地絡検出回路が順番に有効する周期で電源周期カウンタ周期とする。電源周期カウンタ周期(N_MAX)はすべての電力変換装置が直流地絡を検出する総時間と異常処理時間との合計より大きく設定する。
【0031】
各電力変換装置は上位装置に各自の検出動作時間と地絡検出された場合の異常処理時間を申請する。上位装置はすべて申請された時間の合計t_allを計算する。その後、電源周期カウンタ周期(N_MAX)を次式(2)に満足するように設定する。
【0032】
【0033】
この電源周期カウンタ周期(N_MAX)は電力変換装置が連系時に図示せぬ上位装置から受けとる。手動で各連電力変換装置に設定することももちろん問題はない。
【0034】
各電力変換装置の地絡検出タイミングはあらかじめ設定する必要がある。例えば地絡検出開始および終了タイミングを下記のように設定する。
【0035】
開始タイミング:電源周期カウント数N_S・位相Φ_S
終了タイミング:電源周期カウント数N_E・位相Φ_E
このタイミングは電力変換装置が連系時に上位装置から受けるものとするが、手動で各電力変換装置に設定することももちろん問題はない。
【0036】
つぎに、
図3および
図4を用いて動作について説明する。まず、
図3を用いて電源周期の同期について説明する。
図3は本発明の一実施形態による電源周期カウンタの周期を説明する波形図である。まず、電力変換装置1、2にそれぞれ電源が投入されると、各装置全体が起動する(ステップS411、S421)。
【0037】
本実施形態では、電力変換装置1の電源周期が同期の基準となるため、各装置の起動後にMCU104からMCU204に対して電源周期の基準信号が送信される(ステップS412)。MCU204では、その基準信号が受信されると(ステップS422)、自身の電源周期が読み出されて周期に遅れがあるかどうか確認される。ここでは、周期の遅れが電源周期以上となった場合(ステップS424)、その基準信号に基づいて電源周期の同期補正がなされ(ステップS425)、MCU104、204間の電源周期が同期する。
【0038】
つづいて、
図4を用いて本実施形態の直流地絡検出について説明する。
図4は本実施形態による直流地絡検動作を説明するフローチャートである。本実施形態においては、
図1に示したように、系統連系電力変換システムでは電力変換装置は2台となっており、直流地絡検出の順番は電力変換装置10、20の順序となる。以下の説明は、各MCU104、204によって実行される。
【0039】
まず、各電力変換装置10、20の電源周期カウンタは、前述の電源周期カウンタの周期(N_MAX)、開始カウントするN_Kおよび検出タイミングを設定した後に、
図4のフローチャートのように開始する。電力変換装置1と2は同様の動作をおこなうので、以下の説明では電力変換装置1について説明する。
図4には電力変換装置2の構成を括弧して示す。
【0040】
電力変換装置1では、自身の周期カウンタから現在の周期ナンバーN_n(nは自然数)が取得される(ステップS501)。ここで、電力変換装置1はn=1となり、電力変換装置2はn=2となる。
【0041】
電力変換装置1では、すでに同期されている電源周期に基づく時刻に基づいて周期ナンバーN_nが確認され、地絡検出タイミングかどうかの判断がなされる(ステップS502)。電源周期のカウントで周期ナンバーN_1の地絡検出タイミングという判断は直流地絡検出回路105を有効にするという判断となって(ステップS502のYesルート)、スイッチ107がターンオンされ、直流地絡検出回路105が有効に切り換えられる。直流地絡の検出タイミングに到達していない場合には、スイッチ107がオフ状態のまま保持される。
【0042】
直流地絡検出回路105が有効に作動しているときに直流地絡が検出された場合には(ステップS504のYesルート)、スイッチ107がターンオフされ(ステップS506)、直流地絡の検出は停止される。続いて、ゲートブロックにより電力変換装置1自身の運転停止(ステップS507)と系統連系するコンダクタの遮断(解列処理:ステップS508)が実施され、さらに、直流地絡除去(ステップS509)等の異常処理が開始される。
【0043】
また、上述した処理の流れでステップS504において、直流地絡が検出されなかった場合には(Noルート)、スイッチ107がターンオフされ(ステップS505)、直流地絡検出回路105に与えられた時間内の直流地絡検出は終了する。そして、本処理は最初のステップS501に戻り、続いて、電力変換装置2のMCU204において、自身の周期ナンバーN_2が確認されて、直流地絡の検出タイミングであるという判断がなされる(ステップS502)。以降、MCU104と同様の
図5の処理が実行される。
【0044】
このように、各電力変換装置1、2では、同期作動している電源周期のカウントが自身の周期ナンバーに割り当てられたタイミングに到達すると、地絡検出を行うタイミング(順番)になったものと判断してスイッチ107、207がMCU104、204の制御で切り換えられる。この切換制御が電源周期カウンタ周期を一周期として繰り返し実施されるので、その一周期毎に直流地絡検出回路105、205では順番に相互に干渉することなく地絡検出を行うことが可能となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、各直流地絡検出回路が自律的に基準信号に基づく順番が割り当てられたことから複数の直流地絡検出回路を自律的に順番通り動作させることができるので、直流地絡検出回路間で互いに干渉することはない。これにより、系統低圧側接地しても電力変換装置の直流地絡検出回路の影響が最小となって、漏電等による誤動作の発生もなく、高い信頼性を得ることが可能となる。特に、直流地絡検出回路を高速に順番に検出動作させるためコストを抑える点でもメリットがある。このようなことから、全量売電PCSの発電設備において信頼性のある電力変換システムは産業上有用である。
【0046】
また、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 電力変換装置
2 電力変換装置
3 漏電遮断器
51 直流電源
52 直流電源
101 交流電圧検出器
102 DC/DC変換器
103 DC/AC変換器
104 MCU
105 直流地絡検出回路
106 地絡回路電圧検出器
107 スイッチ
108 開閉器
201 交流電圧検出器
202 DC/DC変換器
203 DC/AC変換器
204 MCU
205 直流地絡検出回路
206 地絡回路電圧検出器
207 スイッチ
208 開閉器