(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006741
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】流体処理装置、マイクロバブル発生装置およびシャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
B01F 23/23 20220101AFI20250109BHJP
B01F 23/2373 20220101ALI20250109BHJP
B01F 25/10 20220101ALI20250109BHJP
B01F 25/4314 20220101ALI20250109BHJP
B01F 25/452 20220101ALI20250109BHJP
B01F 35/53 20220101ALI20250109BHJP
A47K 3/28 20060101ALI20250109BHJP
B05B 1/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B01F23/23
B01F23/2373
B01F25/10
B01F25/4314
B01F25/452
B01F35/53
A47K3/28
B05B1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107723
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敏達
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 公介
(72)【発明者】
【氏名】樋江井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川上 友季子
【テーマコード(参考)】
2D132
4F033
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
2D132FC04
2D132FJ16
4F033AA11
4F033BA04
4F033DA05
4F033EA01
4F033KA01
4F033LA12
4F033NA01
4G035AB04
4G035AC08
4G035AC26
4G035AC44
4G035AE13
4G037DA30
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】ベンチュリー管を有する流体処理装置において流体の処理効率を十分に向上させる。
【解決手段】流体処理装置は、喉部を有するベンチュリー管と、旋回流発生部とを備える。旋回流発生部は、ベンチュリー管の上流側に配置され、供給される流体に、喉部における軸方向の流速uに対する旋回方向の流速vの比(v/u)が1未満である旋回流を発生させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体処理装置であって、
喉部を有するベンチュリー管と、
前記ベンチュリー管の上流側に配置され、供給される流体に、前記喉部における軸方向の流速uに対する旋回方向の流速vの比(v/u)が1未満である旋回流を発生させる旋回流発生部と、
を備える、流体処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体処理装置であって、
前記旋回流発生部は、供給される前記流体に、前記旋回流発生部における軸方向の流速Uに対する旋回方向の流速Vの比(V/U)が1未満である旋回流を発生させる、流体処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体処理装置であって、
前記旋回流発生部は、
管状部と、
前記管状部内に収容され、前記旋回流が発生するように前記軸方向に対する傾きが設定された表面を有する少なくとも1つのベーンを備える、流体処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流体処理装置であって、
前記ベーンは、tmax/Dmin<1/5(ただし、tmaxは前記ベーンの板厚の最大値であり、Dminは前記旋回流発生部の内径の最小値である。)という関係を満たすように構成されている、流体処理装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の流体処理装置であって、
前記ベーンの少なくとも1つの縦断面において、前記ベーンの下流端の輪郭線は鋭角に折れ曲がった部分を有する、流体処理装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の流体処理装置であって、
前記旋回流発生部は、
前記旋回流発生部の中心に位置し、前記軸方向に伸びる円柱状部と、
前記ベーンおよび前記円柱状部の下流側に配置され、下流側に向かって縮径する砲弾状部を有する、流体処理装置。
【請求項7】
請求項3または請求項4に記載の流体処理装置であって、
前記ベーンの下流端から前記ベンチュリー管の上流端までの距離Lswは、Dmin・cotθ超である(ただし、Dminは前記旋回流発生部の内径の最小値である。)、流体処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の流体処理装置であって、
前記ベンチュリー管のテーパー角ψは10度以上である、流体処理装置。
【請求項9】
請求項1に記載の流体処理装置を有するマイクロバブル発生装置。
【請求項10】
請求項9に記載のマイクロバブル発生装置を備えるシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、流体処理装置、マイクロバブル発生装置およびシャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
シャワーヘッド用のマイクロバブル発生装置として、ベンチュリー管を利用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ベンチュリー管を利用したマイクロバブル発生装置では、ベンチュリー管の喉部(最小流路断面積を有する部分)において流速の上昇に伴い圧力が低下してキャビテーションが発生し、水中に溶存する空気がマイクロバブルとなる。なお、本明細書において、マイクロバブルとは、直径100μm以下の微細な気泡を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベンチュリー管を利用した従来のマイクロバブル発生装置では、ベンチュリー管の喉部における圧力を十分に低下させることができず、マイクロバブルを十分に発生させることができない、という課題がある。
【0005】
このような課題は、マイクロバブル発生装置に限らず、ベンチュリー管を利用して流体に何らかの処理を行う流体処理装置に共通の課題である。すなわち、ベンチュリー管を利用した従来の流体処理装置では、ベンチュリー管の喉部における圧力を十分に低下させることができず、流体の処理効率を十分に向上させることができない、という課題がある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される流体処理装置は、喉部を有するベンチュリー管と、旋回流発生部とを備える。旋回流発生部は、前記ベンチュリー管の上流側に配置され、供給される流体に、前記喉部における軸方向の流速uに対する旋回方向の流速vの比(v/u)が1未満である旋回流を発生させる。
【0009】
このように本流体処理装置では、ベンチュリー管の上流側に旋回流発生部が配置されており、旋回流発生部は、供給される流体に比較的弱い旋回流(上記比(v/u)が1未満である旋回流)を発生させる。そのため、比較的弱い旋回流の存在により、ベンチュリー管のテーパー角を比較的大きくしても、ベンチュリー管における内壁面からの流体の流れの剥離を抑制することができる。そのため、本流体処理装置によれば、ベンチュリー管におけるディフューザーの効果を増大させて喉部における圧力を効果的に低下させることができ、その結果、流体の処理を効率的に実行することができる。
【0010】
(2)上記流体処理装置において、前記旋回流発生部は、供給される前記流体に、前記旋回流発生部における軸方向の流速Uに対する旋回方向の流速Vの比(V/U)が1未満である旋回流を発生させる構成としてもよい。本構成を採用すれば、さらに弱い旋回流の存在により、ベンチュリー管における内壁面からの流体の流れの剥離を効果的に抑制しつつ、ベンチュリー管のテーパー角を比較的大きくすることができ、ベンチュリー管の喉部における圧力を効果的に低下させることができ、その結果、流体の処理をさらに効率的に実行することができる。
【0011】
(3)上記流体処理装置において、前記旋回流発生部は、管状部と、前記管状部内に収容され、前記旋回流が発生するように前記軸方向に対する傾きが設定された表面を有する少なくとも1つのベーンを備える構成としてもよい。本構成を採用すれば、比較的弱い旋回流をシンプルな構成で確実に発生させることができる。
【0012】
(4)上記流体処理装置において、前記ベーンは、tmax/Dmin<1/5(ただし、tmaxは前記ベーンの板厚の最大値であり、Dminは前記旋回流発生部の内径の最小値である。)という関係を満たすように構成されていてもよい。本構成を採用すれば、ベーンの板厚が比較的薄く、旋回流発生部の圧損を小さくすることができ、ベンチュリー管の喉部における圧力をさらに効果的に低下させることができ、流体の処理をさらに効率的に実行することができる。
【0013】
(5)上記流体処理装置において、前記ベーンの少なくとも1つの縦断面において、前記ベーンの下流端の輪郭線は鋭角に折れ曲がった部分を有する構成としてもよい。本構成を採用すれば、ベーンの下流端でのキャビテーションを促進させることができ、流体の処理をさらに効率的に実行することができる。
【0014】
(6)上記流体処理装置において、前記旋回流発生部は、前記旋回流発生部の中心に位置し、前記軸方向に伸びる円柱状部と、前記ベーンおよび前記円柱状部の下流側に配置され、下流側に向かって縮径する砲弾状部を有する構成としてもよい。本構成を採用すれば、砲弾状部の存在により、ベーンの下流側での圧力低下を抑制することができ、ベンチュリー管の喉部における圧力をさらに効果的に低下させることができ、流体の処理をさらに効率的に実行することができる。
【0015】
(7)上記流体処理装置において、前記ベーンの下流端から前記ベンチュリー管の上流端までの距離Lswは、Dmin・cotθ超である(ただし、Dminは前記旋回流発生部の内径の最小値である。)構成としてもよい。本構成を採用すれば、ベーンをベンチュリー管から比較的遠くに配置することにより、ベンチュリー管の上流側において旋回流を安定して形成することができ、ベンチュリー管の喉部における圧力をさらに効果的に低下させることができ、流体の処理をさらに効率的に実行することができる。
【0016】
(8)上記流体処理装置において、前記ベンチュリー管のテーパー角ψは10度以上である構成としてもよい。通常のベンチュリー管において、マイクロバブルの量を増やすには、テーパー角度ψを大きくする必要があるが、テーパー角ψを10度以上に設定すると、喉部の下流側のテーパー部で流体が剥離してしまい、喉部における圧力を十分に低下させることができず、マイクロバブルを多量に発生させることができない。本構成を採用すれば、ベンチュリー管のテーパー角ψを10度以上に設定しても、旋回流によって流体の剥離が抑制されるため、喉部における圧力を十分に低下させることができ(テーパー角ψが10度未満の形態と同等程度に圧力を十分に低下させることができ)、マイクロバブルの発生量を増やすことができる。
【0017】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、流体処理装置、マイクロバブル発生装置、シャワーヘッド、流体混合装置、それらの製造方法および使用方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態のシャワーヘッド10の構成を概略的に示す説明図
【
図2】第1実施形態のマイクロバブル発生装置100の縦断面構成を示す説明図
【
図3】比較例のマイクロバブル発生装置100Xの構成を示す説明図
【
図4】第2実施形態のマイクロバブル発生装置100aの縦断面構成を示す説明図
【
図5】第2実施形態の旋回流発生部110aの正面構成を示す説明図
【
図6】旋回流発生部110のベーン113のベーン角θについての性能評価結果を示す説明図
【
図7】ベンチュリー管120のテーパー角ψについての性能評価結果を示す説明図
【
図8】ベンチュリー管120のテーパー角ψについての性能評価結果を示す説明図
【
図9】旋回流発生部110の砲弾状部117についての性能評価結果を示す説明図
【
図10】マイクロバブル発生の性能評価結果を示す説明図
【
図11】マイクロバブル発生の性能評価結果を示す説明図
【
図12】マイクロバブル発生の性能評価結果を示す説明図
【
図13】マイクロバブル発生の性能評価結果を示す説明図
【
図14】流体処理装置としての流体混合装置102の構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態:
A-1.シャワーヘッド10の構成:
図1は、第1実施形態のシャワーヘッド10の構成を概略的に示す説明図である。
図1には、シャワーヘッド10の断面構成(一部については側面構成)を示している。シャワーヘッド10は、図示しないシャワーホース(給水管)の先端に接続され、シャワーホースを介して供給された水(温水を含む)をシャワー水として吐出する装置である。
【0020】
シャワーヘッド10は、ヘッド部11と、グリップ部12と、ホース接続部13とを含む。グリップ部12は、使用者により把持される略棒状の部分である。ホース接続部13は、グリップ部12の一端に設けられている。ホース接続部13には、図示しないシャワーホースが接続される。ヘッド部11は、グリップ部12の他端に設けられている。ヘッド部11は吐水面14を有し、吐水面14には多数の吐水孔15が形成されている。
【0021】
シャワーヘッド10は、さらに、マイクロバブル発生装置100と、マイクロバブル発生装置100の上流側に接続された上流側通水部16と、マイクロバブル発生装置100の下流側に接続された下流側通水部17とを有する。
【0022】
マイクロバブル発生装置100は、上流側通水部16を介して供給された水にマイクロバブルを発生させ、マイクロバブルを含む水を下流側通水部17を介して吐水孔15に向けて排出する装置である。マイクロバブル発生装置100は、流体処理装置の一例である。本実施形態では、マイクロバブル発生装置100は、グリップ部12に収容されている。ただし、マイクロバブル発生装置100は、ヘッド部11に配置されていてもよい。
【0023】
図2は、第1実施形態のマイクロバブル発生装置100の縦断面構成を示す説明図である。マイクロバブル発生装置100は、ベンチュリー管120と、旋回流発生部110とを含む。ベンチュリー管120および旋回流発生部110は、同軸に並べて配置されている。
図2には、マイクロバブル発生装置100(旋回流発生部110およびベンチュリー管120)の中心軸Axを示している。以下では、マイクロバブル発生装置100において上流側から下流側に向かう方向(中心軸Axに平行な方向)を軸方向ともいう。
【0024】
ベンチュリー管120は、上流側から供給された流体の流れを絞ることによって流速を増加させ、これにより、流れを絞った部分に低い圧力を発生させる管状の機構である。ベンチュリー管120は、上流側テーパー部121と、喉部122と、下流側テーパー部123とを有する。
【0025】
上流側テーパー部121は、上流側から下流側に向けて流路断面積が徐々に小さくなるテーパー状の部分である。喉部122は、上流側テーパー部121の下流端に接続され、ベンチュリー管120における最小流路断面積を有する部分である。喉部122は、軸方向に所定の長さを有していてもよいし、軸方向の長さを実質的に有さない部分であってもよい。下流側テーパー部123は、喉部122の下流端に接続され、上流側から下流側に向けて流路断面積が徐々に大きくなるテーパー状の部分である。以下、マイクロバブル発生装置100の中心軸Axを含む縦断面(例えば
図2に示す断面)において、ベンチュリー管120の下流側テーパー部123の内壁面124の開き角ψ(本実施形態では、内壁面124と中心軸Axとのなす角の2倍)を、ベンチュリー管120のテーパー角ψという。ベンチュリー管120のテーパー角ψは、比較的大きい値に設定されており、例えば10度以上に設定されている。ベンチュリー管120のテーパー角ψは、20度以上であってもよいし、30度以上であってもよいし、45度以上であってもよい。また、ベンチュリー管120のテーパー角ψは、80度未満であってもよいし、70度未満であってもよいし、60度未満であってもよい。
【0026】
ベンチュリー管120は、上流側から供給された水にマイクロバブルを発生させる。すなわち、ベンチュリー管120の喉部122において流速の上昇に伴い圧力が低下してキャビテーションが発生し、水中に溶存する空気がマイクロバブルとなる。ベンチュリー管120はマイクロバブル発生装置100の下流側に配置された下流側通水部17(
図1)に接続されており、ベンチュリー管120において発生したマイクロバブルを含む水は、下流側通水部17を介して吐水孔15に供給される。
【0027】
旋回流発生部110は、上流側から供給された流体に旋回流を発生させる装置である。旋回流は、マイクロバブル発生装置100の中心軸Axの周りを回転するような流体の流れである。旋回流発生部110は、ベンチュリー管120の上流端に接続されている。旋回流発生部110において旋回流が付与された水流が、ベンチュリー管120に供給される。旋回流発生部110の内径Dは、ベンチュリー管120の喉部122の内径dより大きい。
【0028】
本実施形態の旋回流発生部110は、上流側から供給される水に、比較的弱い旋回流を発生させるように構成されている。具体的には、旋回流発生部110は、上流側から供給される水に、ベンチュリー管120の喉部122における中心軸Ax方向の流速uに対する旋回方向の流速vの比(v/u)が1未満である旋回流を発生させるように構成されている。また、旋回流発生部110は、上流側から供給される水に、さらに弱い旋回流を発生させるように構成されていてもよい。具体的には、旋回流発生部110は、上流側から供給される水に、旋回流発生部110における中心軸Ax方向の流速Uに対する旋回方向の流速Vの比(V/U)が1未満である旋回流を発生させるように構成されていてもよい。なお、質量および角運動量の保存則から、比(v/u)<比(V/U)の関係が成り立つ。以下、中心軸Ax方向の流速に対する旋回方向の流速の比を、スワールパラメータSwともいう。
【0029】
旋回流発生部110は、略円筒状の管状部111と、管状部111内に収容された翼体112とを含む。翼体112は、少なくとも1つのベーン113を有する。ベーン113は、中心軸Axの方向に対して傾いた表面114を有する翼である。ベーン113の表面114は、上流側の部分において中心軸Axに略平行であり、下流側の部分において中心軸Axの方向に対して傾いている。以下、マイクロバブル発生装置100の中心軸Axを含む縦断面(例えば
図2に示す断面)において、ベーン113の表面114と中心軸Axとのなす角の最大値を、ベーン113のベーン角θという。本実施形態では、翼体112は、4枚のベーン113を有する。各ベーン113は、中心軸Ax周りに略均等に配置されている。また、各ベーン113のベーン角θは互いに略同一である。
【0030】
翼体112の各ベーン113のベーン角θが大きいほど、旋回流発生部110におけるスワールパラメータSw(中心軸Ax方向の流速Uに対する旋回方向の流速Vの比(V/U))が大きくなり、ひいては、ベンチュリー管120の喉部122におけるスワールパラメータSw(中心軸Ax方向の流速uに対する旋回方向の流速vの比(v/u))が大きくなる。すなわち、翼体112の各ベーン113のベーン角θが大きいほど、比較的強い旋回流が発生する。反対に、翼体112の各ベーン113のベーン角θが小さいほど、比較的弱い旋回流が発生する。本実施形態では、各ベーン113のベーン角θは、供給される水に上述した比較的弱い旋回流(ベンチュリー管120の喉部122におけるスワールパラメータSwが1未満である旋回流)が発生するように、設定されている。また、各ベーン113のベーン角θは、供給される水に、旋回流発生部110におけるスワールパラメータSwが1未満である旋回流が発生するように、設定されていてもよい。ベーン角θは、20度以上であってもよいし、30度以上であってもよい。また、ベーン角θは、60度未満であってもよいし、45度未満であってもよい。
【0031】
本実施形態では、翼体112の各ベーン113は、比較的薄い板状である。具体的には、各ベーン113は、以下の式(1)を満たすように構成されている。
tmax/Dmin<1/5 ・・・(1)
(ただし、tmaxはベーン113の板厚tの最大値、Dminは旋回流発生部110の内径の最小値。)
【0032】
また、本実施形態では、翼体112の各ベーン113の下流端は、鋭いエッジを構成している。具体的には、ベーン113の少なくとも1つの縦断面において、ベーン113の下流端の輪郭線は、鋭角に折れ曲がった部分115を有する。
【0033】
また、本実施形態では、翼体112の各ベーン113とベンチュリー管120との間に、所定距離以上の離隔が確保されている。具体的には、ベーン113の下流端からベンチュリー管120の上流端までの距離Lswは、Dmin・cotθ超となっている。
【0034】
A-2.シャワーヘッド10の動作:
シャワーヘッド10のホース接続部13(
図1)に接続された図示しないシャワーホースを介してシャワーヘッド10に水が供給されると、該水は上流側通水部16を介してマイクロバブル発生装置100内に流入する。
【0035】
マイクロバブル発生装置100内に流入した水には、旋回流発生部110において旋回流が付与される。このように旋回流が付与された水がベンチュリー管120に供給されると、上流側テーパー部121から喉部122に流れる際に流速の上昇に伴い圧力が低下してキャビテーションが発生し、水中に溶存する空気がマイクロバブルとなり、下流側テーパー部123を介してマイクロバブルを含む水が吐出される。
【0036】
ベンチュリー管120から吐出されたマイクロバブルを含む水は、下流側通水部17を介して吐水面14に至り、吐水面14に形成された複数の吐水孔15から外部に吐出される。
【0037】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のシャワーヘッド10を構成するマイクロバブル発生装置100は、ベンチュリー管120と、旋回流発生部110とを備える。旋回流発生部110は、ベンチュリー管120の上流側に配置されている。旋回流発生部110は、供給される水に、ベンチュリー管120の喉部122における軸方向の流速uに対する旋回方向の流速vの比(v/u)が1未満である旋回流を発生させる。そのため、以下に詳述するように、本実施形態のマイクロバブル発生装置100によれば、ベンチュリー管120の喉部122における圧力を効果的に低下させることができ、マイクロバブルを効果的に発生させることができる。
【0038】
図3は、比較例のマイクロバブル発生装置100Xの構成を示す説明図である。比較例のマイクロバブル発生装置100Xは、旋回流発生部110を有していない点が、本実施形態のマイクロバブル発生装置100と異なる。比較例のマイクロバブル発生装置100Xでは、本実施形態のマイクロバブル発生装置100と同様に、ベンチュリー管120のテーパー角ψは比較的大きい値(例えば10度以上)に設定されている。
【0039】
比較例のマイクロバブル発生装置100Xでは、ベンチュリー管120に対して実質的に旋回流を含まないストレート状の水流が供給される。このとき、本実施形態のマイクロバブル発生装置100と同様に、上流側テーパー部121から喉部122に流れる際に流速の上昇に伴い圧力が低下してキャビテーションが発生し、水中に溶存する空気がマイクロバブルとなり、下流側テーパー部123を介してマイクロバブルを含む水が吐出される。しかしながら、ベンチュリー管120に供給される水流に旋回流が実質的に含まれないため、ベンチュリー管120の下流側テーパー部123において内壁面124からの水の流れFLの剥離が発生する。そのため、比較例のマイクロバブル発生装置100Xでは、ベンチュリー管120の喉部122における圧力を効果的に低下させることができず、マイクロバブルを効果的に発生させることができない。
【0040】
これに対し、本実施形態のマイクロバブル発生装置100では、ベンチュリー管120の上流側に旋回流発生部110が配置されている。旋回流発生部110は、供給される水に比較的弱い旋回流(上記比(v/u)が1未満である旋回流)を発生させる。そのため、
図2に示すように、本実施形態のマイクロバブル発生装置100では、比較的弱い旋回流の存在により、ベンチュリー管120のテーパー角ψを比較的大きくしても(例えば、10度以上にしても)、ベンチュリー管120の下流側テーパー部123における内壁面124からの水の流れFLの剥離を抑制することができる。そのため、本実施形態のマイクロバブル発生装置100によれば、ベンチュリー管120におけるディフューザーの効果を増大させて喉部122における圧力を効果的に低下させることができ、その結果、ベンチュリー管120によるマイクロバブルの発生効率を向上させることができる。なお、ベンチュリー管120に供給する水流に旋回流を付与することによってベンチュリー管120の下流側テーパー部123における内壁面124からの水の流れFLの剥離を抑制することができるメカニズムは必ずしも明らかではないが、旋回流ジェットが壁面に引き寄せられるコアンダ効果が作用するためであると考えられる。
【0041】
また、本実施形態のマイクロバブル発生装置100では、旋回流発生部110は、供給される流体に、旋回流発生部110における軸方向の流速Uに対する旋回方向の流速Vの比(V/U)が1未満である旋回流を発生させるように構成されている。そのため、本実施形態のマイクロバブル発生装置100によれば、さらに弱い旋回流の存在により、ベンチュリー管120の下流側テーパー部123における内壁面124からの水の流れFLの剥離を効果的に抑制しつつ、ベンチュリー管120のテーパー角ψを比較的大きくすることができ、ベンチュリー管120の喉部122における圧力をさらに効果的に低下させることができ、その結果、マイクロバブルをさらに効果的に発生させることができる。
【0042】
また、本実施形態のマイクロバブル発生装置100では、旋回流発生部110は、管状部111と、管状部111内に収容された少なくとも1つのベーン113とを含む。ベーン113は、上述した比較的弱い旋回流が発生するように中心軸Axの方向に対する傾きが設定された表面114を有する。そのため、本実施形態のマイクロバブル発生装置100によれば、比較的弱い旋回流をシンプルな構成で確実に発生させることができる。
【0043】
また、本実施形態のマイクロバブル発生装置100では、ベーン113は、tmax/Dmin<1/5(ただし、tmaxはベーン113の板厚tの最大値であり、Dminは旋回流発生部110の内径の最小値である。)という関係を満たすように構成されている。そのため、本実施形態のマイクロバブル発生装置100によれば、ベーン113の板厚tが比較的薄く、旋回流発生部110の圧損を小さくすることができる。従って、ベンチュリー管120の喉部122における圧力をさらに効果的に低下させることができ、マイクロバブルをさらに効果的に発生させることができる。
【0044】
また、本実施形態のマイクロバブル発生装置100では、ベーン113の少なくとも1つの縦断面において、ベーン113の下流端の輪郭線は鋭角に折れ曲がった部分115を有する。そのため、本実施形態のマイクロバブル発生装置100によれば、ベーン113の下流端でのキャビテーションを促進させることができ、マイクロバブルをさらに効果的に発生させることができる。
【0045】
また、本実施形態のマイクロバブル発生装置100では、旋回流発生部110のベーン113の下流端からベンチュリー管120の上流端までの距離Lswは、Dmin・cotθ超である。そのため、本実施形態のマイクロバブル発生装置100によれば、ベーン113をベンチュリー管120から比較的遠くに配置することにより、ベンチュリー管120の上流側において旋回流を安定して形成することができる。従って、ベンチュリー管120の喉部122における圧力をさらに効果的に低下させることができ、マイクロバブルをさらに効果的に発生させることができる。
【0046】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態のマイクロバブル発生装置100aの縦断面構成を示す説明図である。
図5は、第2実施形態の旋回流発生部110aの正面構成を示す説明図である。以下では、第2実施形態のマイクロバブル発生装置100aの構成のうち、上述した第1実施形態のマイクロバブル発生装置100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0047】
第2実施形態のマイクロバブル発生装置100aは、旋回流発生部110aの構成が第1実施形態のマイクロバブル発生装置100と異なる。具体的には、第2実施形態のマイクロバブル発生装置100aでは、旋回流発生部110aが、円柱状部116と、砲弾状部117とを有する。円柱状部116は、旋回流発生部110aの中心に位置し、中心軸Axの方向に伸びる円柱状の部分である。各ベーン113は円柱状部116の外周面に固定されている。砲弾状部117は、ベーン113および円柱状部116の下流側に配置され、下流側に向かって縮径する砲弾状の部分である。
【0048】
第2実施形態のマイクロバブル発生装置100aでは、砲弾状部117の存在により、ベーン113の下流側での圧力低下を抑制することができる。そのため、第2実施形態のマイクロバブル発生装置100aによれば、ベンチュリー管120の喉部122における圧力をさらに効果的に低下させることができ、マイクロバブルをさらに効果的に発生させることができる。
【0049】
C.性能評価:
上述した各実施形態のマイクロバブル発生装置を試作し、各種性能評価を行った。
【0050】
図6は、旋回流発生部110のベーン113のベーン角θについての性能評価結果を示す説明図である。
図6には、旋回流発生部110として円柱状部116および砲弾状部117を有さない構成(第1実施形態の構成)を採用し、旋回流発生部110の内径Dを3mmに固定し、かつ、ベンチュリー管120のテーパー角ψを10度に固定し、ベーン角θを変動させたときの、マイクロバブル発生装置100の上流側圧力(ゲージ圧)P0と流量(体積流量)Qとの関係を示している。なお、本明細書に記載した性能評価においては、旋回流発生部110の内径Dとベンチュリー管120の喉部122の内径dとを、D=2dの関係となるように設定した。
【0051】
図6に示すように、ベーン角θにかかわらず、上流側圧力P0が大きいほど流量Qは増加する。また、ベーン角θが大きいほど、ある上流側圧力P0における流量Qは低下する傾向にある。これは、ベーン角θが大きいほど、旋回流発生部110における圧損が増加するためであると考えられる。
図6を参照すると、ベーン角θが45度未満であれば、ある上流側圧力P0における流量Qはあまり変わらないが、ベーン角θが45度以上であると、ある上流側圧力P0における流量Qの低下度合いが大きくなることが読み取れる。この結果を参照すると、ベーン角θは、60度未満であることが好ましく、45度未満であることがさらに好ましいと言える。
【0052】
図7および
図8は、ベンチュリー管120のテーパー角ψについての性能評価結果を示す説明図である。
図7および
図8には、それぞれ、旋回流発生部110として砲弾状部117を有さない構成(第1実施形態の構成)を採用した場合、および、旋回流発生部110として砲弾状部117を有する構成(第2実施形態の構成)を採用した場合において、旋回流発生部110の内径Dを3mmに固定し、旋回流発生部110のベーン角θを30度に固定し、かつ、テーパー角ψを変動させたときの、マイクロバブル発生装置100の上流側圧力P0と喉部122の圧力P1との関係を示している。
【0053】
図7および
図8に示すように、テーパー角ψにかかわらず、ベンチュリー管120の喉部122の圧力P1は十分に小さい値となっている。この結果を参照すると、ベンチュリー管120の上流側に旋回流発生部110を配置すれば、テーパー角ψにかかわらず、ベンチュリー管120の喉部122の圧力P1を効果的に低下させることができ、その結果、マイクロバブルを効果的に発生させることができると言える。
【0054】
図9は、旋回流発生部110の砲弾状部117についての性能評価結果を示す説明図である。
図9には、旋回流発生部110として砲弾状部117を有さない構成を採用した場合(第1実施形態の構成、
図9において「E1」として示す)、および、旋回流発生部110として砲弾状部117を有する構成を採用した場合(第2実施形態の構成、
図9において「E2」として示す)において、旋回流発生部110の内径Dを3mmに固定し、旋回流発生部110のベーン角θを30度に固定し、かつ、ベンチュリー管120のテーパー角ψを変動させたときの、マイクロバブル発生装置100の上流側圧力P0と流量Qとの関係を示している。
【0055】
図9に示すように、テーパー角ψにかかわらず、旋回流発生部110として砲弾状部117を有する構成を採用した場合(E2)は、旋回流発生部110として砲弾状部117を有さない構成を採用した場合(E1)と比較して、ある上流側圧力P0における流量Qが大きい(すなわち、旋回流発生部110における圧損が小さい)傾向にある。この結果を参照すると、旋回流発生部110として砲弾状部117を有する構成を採用すれば、ベーン113の下流側での圧力低下を抑制することができ、ベンチュリー管120の喉部122における圧力をさらに効果的に低下させることができ、マイクロバブルをさらに効果的に発生させることができると言える。
【0056】
図10から
図13は、マイクロバブル発生の性能評価結果を示す説明図である。各図には、以下の構成のマイクロバブル発生装置を動作させたときのマイクロバブル発生状況を示す写真を示している。
図10は、旋回流発生部110を有さない比較例のマイクロバブル発生装置によるマイクロバブル発生状況を示しており、
図11は、ベンチュリー管120のテーパー角ψが10度、旋回流発生部110のベーン角θが30度、砲弾状部117無しのマイクロバブル発生装置(
図2参照)によるマイクロバブル発生状況を示しており、
図12は、ベンチュリー管120のテーパー角ψが10度、旋回流発生部110のベーン角θが30度、砲弾状部117ありのマイクロバブル発生装置(
図4参照)によるマイクロバブル発生状況を示しており、
図13は、ベンチュリー管120のテーパー角ψが14度、旋回流発生部110のベーン角θが30度、砲弾状部117ありのマイクロバブル発生装置(
図4参照)によるマイクロバブル発生状況を示している。各図において、上段、中段、下段は、それぞれ、ベンチュリー管120の喉部122の内径dが1.5mm、2mm、3mmのときのマイクロバブル発生状況を示している。なお、流量は9L/minとし、装置の上流端の水圧を0.15MPaとし、給気無しの条件とした。
【0057】
旋回流発生部110を有するマイクロバブル発生装置によるマイクロバブル発生状況(
図11から
図13)は、旋回流発生部110を有さないマイクロバブル発生装置によるマイクロバブル発生状況(
図10)と比較して、白濁度が高く、マイクロバブル発生量が多いことが看取される。また、ベンチュリー管120のテーパー角ψが10度以上であっても、多量のマイクロバブルが発生していることから、ベンチュリー管120の喉部122の下流のテーパー部123における流体の剥離の発生が抑制されているものと認められる。この結果を参照すると、ベンチュリー管120の上流側に旋回流発生部110を配置すれば、テーパー角ψが10度以上であっても、ベンチュリー管120の喉部122の圧力P1を十分に低下させることができ、その結果、マイクロバブルを効果的に発生させることができると言える。
【0058】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0059】
上記実施形態におけるシャワーヘッド10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態におけるベーン113の板厚tやベーン113の下流端からベンチュリー管120の上流端までの距離Lswは、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0060】
上記実施形態では、ベーン113の少なくとも1つの縦断面において、ベーン113の下流端の輪郭線は鋭角に折れ曲がった部分115を有するが、ベーン113がそのような部分を有さなくてもよい。
【0061】
上記実施形態では、旋回流発生部110としてベーン113を有する翼体112を用いているが、旋回流発生部110として他の構成を採用してもよい。
【0062】
上記実施形態のマイクロバブル発生装置100において、ベンチュリー管120の喉部122から給気する構成を採用してもよい。このような構成においても、本明細書に開示される技術を適用すれば、ベンチュリー管120の喉部122における圧力を効果的に低下させることができ、喉部122からの給気量を増加させることができ、マイクロバブルを効果的に発生させることができる。
【0063】
上記実施形態ではマイクロバブル発生装置100について説明したが、本明細書に開示される技術は、マイクロバブル発生装置100に限らず、流体に対して何らかの処理を行う流体処理装置一般に適用可能である。
図14は、流体処理装置としての流体混合装置102の構成を示す説明図である。流体混合装置102は、
図2に示すマイクロバブル発生装置100と同様の構成を有するが、ベンチュリー管120の喉部122に給気管230が接続されている点が異なる。流体混合装置102では、旋回流発生部110の上流側から供給される流体(例えば、第1のガス)に、給気管230を介して喉部122に供給される流体(例えば、第2のガス)を混合する処理が行われ、混合後の流体がベンチュリー管120から下流側に吐出される。このような構成の流体混合装置102においても、ベンチュリー管120の上流側に旋回流発生部110が配置されているため、旋回流発生部110において付与される比較的弱い旋回流の存在により、ベンチュリー管120のテーパー角ψを比較的大きくしても(例えば、10度以上にしても)、ベンチュリー管120の下流側テーパー部123における内壁面124からの流体の流れFLの剥離を抑制することができ、ベンチュリー管120におけるディフューザーの効果を増大させて喉部122における圧力を効果的に低下させることができ、その結果、流体の混合を効果的に実行することができる。
【符号の説明】
【0064】
10:シャワーヘッド 11:ヘッド部 12:グリップ部 13:ホース接続部 14:吐水面 15:吐水孔 16:上流側通水部 17:下流側通水部 100:マイクロバブル発生装置 102:流体混合装置 110:旋回流発生部 111:管状部 112:翼体 113:ベーン 114:表面 115:部分 116:円柱状部 117:砲弾状部 120:ベンチュリー管 121:上流側テーパー部 122:喉部 123:下流側テーパー部 124:内壁面 230:給気管