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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006746
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】接合部材
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
E04C5/18 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107728
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】川上 浩史
(72)【発明者】
【氏名】南野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】市岡 大幸
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164BA23
2E164BA27
(57)【要約】
【課題】一方の鉄筋にナットを螺合させた状態でも、装着できる接合部材を提供する。
【解決手段】接合部材1は、一方の鉄筋81の端部およびこの鉄筋81の先端雄螺子部81aに螺合されたナット83が嵌る空間部111と、ナット83が対向する対向面112aおよび先端雄螺子部81aが挿通される第1挿通孔112bを有する対向壁部112と、を有する第1嵌合凹部11と、他方の鉄筋81の端部およびこの鉄筋81の先端雄螺子部81aに螺合されたナット83が嵌る空間部121と、ナット83が位置するナット側の面122aおよびナット83が挿通できる第2挿通孔122bを有する対向壁部122と、を有する第2嵌合凹部12と、対向壁部112,122を繋ぐ繋ぎ部13と、第2嵌合凹部12内のナット83が第2挿通孔122bに戻り入るのを、当該ナット83に当たることで阻止する後付け当り板14と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面側を向かい合わせて配置されるプレキャストコンクリート部材の互いの突出する鉄筋同士を接合させる接合部材であって、
一方の上記鉄筋の端部およびこの鉄筋の先端雄螺子部に螺合されたナットが嵌る空間部と、上記ナットが対向する対向面および上記鉄筋の端部が挿通される第1挿通孔を有する対向壁部と、を有する第1嵌合凹部と、
他方の上記鉄筋の端部およびこの鉄筋の先端雄螺子部に螺合されたナットが嵌る空間部と、上記ナットが位置する側であるナット側の面および上記ナットが挿通できる第2挿通孔を有する対向壁部と、を有する第2嵌合凹部と、
上記第1嵌合凹部の上記対向壁部と上記第2嵌合凹部の上記対向壁部とを繋ぐ繋ぎ部と、
上記第2嵌合凹部内の上記ナットが上記第2挿通孔に戻り入るのを、当該ナットに当たることで阻止する当たり手段と、を備えることを特徴とする接合部材。
【請求項2】
請求項1に記載の接合部材において、上記繋ぎ部は、上側に開口部を有しており、上記当たり手段は、切欠き部を有する後付け当り板からなり、この後付け当り板は、上記第2挿通孔に上記ナットが挿通された状態で、上記ナット側の面と上記ナットとの間で上記開口部から差し込まれて上記鉄筋の端部に嵌め込まれていることを特徴とする接合部材。
【請求項3】
請求項2に記載の接合部材において、上記後付け当り板の差し込みをガイドするガイド溝を有することを特徴とする接合部材。
【請求項4】
請求項1に記載の接合部材において、上記当たり手段は、上記第2挿通孔よりも小径且つ上記鉄筋の端部が通る内径を有し上記第1挿通孔と中心が一致し、上記第2挿通孔に連通して形成された隣接孔部であることを特徴とする接合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレキャストコンクリート部材同士の接合に用いることができる接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、端部をネジとした鉄筋の端を接合金物に貫通させ、この鉄筋の端に螺合するナットで接合金物を前後から挟み込んで固定し、該接合金物を介して鉄筋の相互を同一向きに接続する継手構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-94429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された接合構造では、2本の鉄筋を接合金物の貫通孔に差し込んだ後に、各鉄筋の先端にナットを螺合させる必要があり、作業の効率化が図れるものではなかった。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、一方の鉄筋にナットを螺合させた状態でも装着できる接合部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の接合部材は、上記の課題を解決するために、端面側を向かい合わせて配置されるプレキャストコンクリート部材の互いの突出する鉄筋同士を接合させる接合部材であって、
一方の上記鉄筋の端部およびこの鉄筋の先端雄螺子部に螺合されたナットが嵌る空間部と、上記ナットが対向する対向面および上記鉄筋の端部が挿通される第1挿通孔を有する対向壁部と、を有する第1嵌合凹部と、
他方の上記鉄筋の端部およびこの鉄筋の先端雄螺子部に螺合されたナットが嵌る空間部と、上記ナットが位置する側であるナット側の面および上記ナットが挿通できる第2挿通孔を有する対向壁部と、を有する第2嵌合凹部と、
上記第1嵌合凹部の上記対向壁部と上記第2嵌合凹部の上記対向壁部とを繋ぐ繋ぎ部と、
上記第2嵌合凹部内の上記ナットが上記第2挿通孔に戻り入るのを、当該ナットに当たることで阻止する当たり手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成の接合部材であれば、上記第1挿通孔に一方の上記鉄筋の端部を差し込んで、上記第1嵌合凹部の上記空間部内において、上記鉄筋の先端雄螺子部に上記ナットを螺合させることができる。そして、他方の上記鉄筋には上記ナットを螺合しておき、上記接合部材を他方の上記鉄筋の側に移動させて、上記第2挿通孔に上記ナットを通すことで、両ナットを上記接合部材の両空間部内に位置させることができる。この状態は、上記当たり手段によって、上記第2嵌合凹部内の上記ナットが上記第2挿通孔に戻り入るのが阻止されることで維持される。
【0008】
上記繋ぎ部は、上側に開口部を有しており、上記当たり手段は、切欠き部を有する後付け当り板からなり、この後付け当り板は、上記第2挿通孔に上記ナットが挿通された状態で、上記ナット側の面と上記ナットとの間で上記開口部から差し込まれて上記鉄筋の端部に嵌め込まれてもよい。これによれば、当該接合部材の構造の複雑化を回避しつつ、後付け当り板の後装着で簡単に上記阻止が行える。また、このような接合を、上記開口部を通して目視しながら容易に行うことができる。
【0009】
上記後付け当り板の差し込みをガイドするガイド溝を有してもよい。これによれば、上記後付け当り板を、適切な位置に容易に取り付けることができる。
【0010】
上記当たり手段は、上記第2挿通孔よりも小径且つ上記鉄筋の端部が通る内径を有し上記第1挿通孔と中心が一致し、上記第2挿通孔に連通して形成された隣接孔部であってもよい。これによれば、当該接合部材を傾けた状態で他方の上記鉄筋の側に移動させて、上記第2挿通孔に上記ナットを通すことで、両鉄筋間に上記接合部材を位置させることができ、この後に、当該接合部材の傾きを解消させて上記隣接孔部の中心を上記第1挿通孔の中心に一致させ、当該隣接孔部に他方の上記鉄筋を導入することで、上記第2嵌合凹部の上記空間部内の上記ナットが上記第2挿通孔に戻り入るのを阻止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明であれば、一方の鉄筋にナットを螺合させた状態でも、接合部材を両鉄筋間に位置させることができるので、プレキャストコンクリート部材の互いの突出する鉄筋同士を接合させる作業の効率化が図れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】端面側を向かい合わせて配置されるプレキャストコンクリート基礎の互いの突出する鉄筋同士(接合箇所)を示す概略の説明図である。
図2】実施形態の接合部材を示した、概略の平面図、左側面図、右側面図および斜視図である。
図3】プレキャストコンクリート基礎の接合箇所における鉄筋のナット螺合箇所に実施形態の接合部材を装着する手順を示した説明図である。
図4】プレキャストコンクリート基礎の接合箇所における鉄筋のナット螺合箇所に実施形態の接合部材を装着する手順を示した斜視図による説明図である。
図5】実施形態の変形例である接合部材を示した、概略の平面図、左側面図、右側面図および斜視図である。
図6】プレキャストコンクリート基礎の接合箇所における鉄筋のナット螺合箇所に上記変形例の接合部材を装着する手順を示した説明図である。
図7】プレキャストコンクリート基礎の接合箇所における鉄筋のナット螺合箇所に上記変形例の接合部材を装着する手順を示した斜視図による説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、一方の鉄筋81と他方の鉄筋81とが互いの先端部を突き合わせて位置する状態を示している。各鉄筋81は、プレキャストコンクリート基礎80の端面の上面側に形成されたグラウト材充填凹部82内に突き出ている。プレキャストコンクリート基礎80は、例えば、クレーンで吊られて、図示しないフーチング部上に配置される。
【0014】
各鉄筋81は、例えば、各プレキャストコンクリート基礎80の上端筋に重ね継ぎされたアンカー筋であり、先端部に先端雄螺子部81aを有している。そして、各先端雄螺子部81aには、六角形のナット83が螺合されている。なお、一方の鉄筋81にワッシャ付きのナット83が螺合され、他方の鉄筋81にワッシャ付きでないナット83が螺合された例が示されている。
【0015】
図2は、プレキャストコンクリート基礎80の鉄筋81同士を接合する接合部材1を示している。この接合部材1は、第1嵌合凹部11と、第2嵌合凹部12と、繋ぎ部13と、後付け当り板(当たり手段)14と、を有する。
【0016】
第1嵌合凹部11は、一方の鉄筋81の端部およびこの鉄筋81の先端雄螺子部81aに螺合されたナット83が収容される空間部111と、ナット83が対向する対向面112aおよび一方の鉄筋81の端部が挿通される第1挿通孔112bを有する対向壁部112と、を備える。対向壁部112は、鋼製の四角形板材からなる。
【0017】
第2嵌合凹部12は、他方の鉄筋81の端部およびこの鉄筋81の先端雄螺子部81aに螺合されたナット83が収容される空間部121と、ナット83が位置する側となるナット側の面122aおよびナット83が挿通される第2挿通孔122bを有する対向壁部122と、を備える。対向壁部122は鋼製の四角形板材からなる。
【0018】
繋ぎ部13は、第1嵌合凹部11の対向壁部112と第2嵌合凹部12の対向壁部122とを繋ぐ部材である。繋ぎ部13は、例えば、対向面112aとナット側の面122aの縁側を相互に繋ぐ2枚の鋼製の長方形板材131,131からなり、接合部材1の上下両面に開口部13aが形成される。
【0019】
繋ぎ部13は、後付け当り板14の差し込みをガイドするガイド溝132を有している。このガイド溝132は、第2嵌合凹部12のナット側の面122aに接して形成されている。
【0020】
後付け当り板14は、他方の鉄筋81の端部が導入される切欠き部14aを有する。後付け当り板14は、鋼製の四角形板材からなり、この四角形板材の略中央位置に切欠き部14aの終端の半円孔部が位置している。この半円孔部は、他方の鉄筋81が収まる部位である。切欠き部14aの幅はナット83が通らない幅となっている。
【0021】
後付け当り板14は、ナット83が第2挿通孔122bに挿通されて空間部121内に位置する状態で、ナット側の面122aとナット83との間でガイド溝132に入れられて他方の鉄筋81の端部に嵌め込まれる。後付け当り板14は、この嵌め込み状態において、第2嵌合凹部12内のナット83が第2挿通孔122bに戻り入るのを、当該ナット83に当たることで阻止する。
【0022】
次に、接合部材1の装着手順を、図3および図4に基づいて説明する。作業者は、例えば、接合部材1を、一方の鉄筋81に、第1挿通孔112bを用いて、プレキャストコンクリート基礎80の設置の位置合わせ前に予め装着し、一方の鉄筋81の先端雄螺子部81aにナット83を螺合する。そして、このように一方の鉄筋81に接合部材1を仮留めしたプレキャストコンクリート基礎80を、他の鉄筋81を有するプレキャストコンクリート基礎80の端面側に配置する。
【0023】
次に、接合部材1をずらし、他の鉄筋81に螺合されているナット83を第2挿通孔122bから導入して、このナット83を、第2嵌合凹部12の空間部121に位置させる。
【0024】
次に、後付け当り板14を、上側の開口部13aから、ガイド溝132に沿って他方の鉄筋81の端部に嵌め込み、ナット83を締める。
【0025】
上記の構成の接合部材1であれば、第1挿通孔112bに一方の鉄筋81の端部を差し込んで、第1嵌合凹部11の空間部111内において、鉄筋81の先端雄螺子部81aにナット83を螺合させることができる。そして、他方の鉄筋81にはナット83を螺合しておき、当該接合部材1を他方の鉄筋81の側に移動させて、第2挿通孔122bにナット83を通すことで、両ナット83,83を接合部材1の両空間部111,121内に位置させることができる。この状態は、後付け当り板14の差し込みによって、第2嵌合凹部12の空間部121内のナット83が第2挿通孔122bに戻り入るのが阻止されることで維持される。
【0026】
また、当たり手段として後付け当り板14が用いられると、接合部材1の構造の複雑化を回避しつつ、後付け当り板14の後装着で簡単に上記戻り入りの阻止が行える。なお、後付け当り板14の差し込み忘れが検知され易いように、後付け当り板14の表面を、当該後付け当り板14以外の接合部材1の部分の色や反射率と異なる色や反射率としてもよい。
【0027】
接合部材1がガイド溝132を有すると、後付け当り板14を、適切な位置に容易に取り付けることができる。なお、このようなガイド溝は、第2嵌合凹部12の対向壁部122に形成することも可能である。また、このようなガイド溝を有しない構造とすることもできる。
【0028】
次に、接合部材1の変形例を図5図6および図7に基づいて説明する。なお、この例では、一方の鉄筋81および他方の鉄筋81のいずれにもワッシャ付きのナット83が螺合される。この変形例にかかる接合部材1は、当たり手段として、隣接孔部122cを有する。
【0029】
隣接孔部122cは、第2嵌合凹部12の対向壁部122に形成されており、第2挿通孔122bよりも小径で鉄筋81の端部が通る内径を有し、第2挿通孔122bに連通している。隣接孔部122cの中心を通る線は、第1嵌合凹部11の第1挿通孔112bの中心を通る線に一致しており、第2挿通孔122bの中心は、第1嵌合凹部11の第1挿通孔112bに対して下側の開口部13a側にずれている。一方、第2挿通孔122bは、第1嵌合凹部11の第1挿通孔112bの中心よりも下側に中心を有するように、対向壁部122の下側にずれて形成される。
【0030】
このような構成であれば、接合部材1を他方の鉄筋81の側に移動させる際に第2挿通孔122bの上記ずれに応じて第2嵌合凹部12側を持ち上げて接合部材1を傾けることで、第2挿通孔122bにナット83を通し、このナット83が第2挿通孔122bを通った後に、第2嵌合凹部12側を降ろして上記傾けを解消し、隣接孔部122cの中心を第1挿通孔112bの中心に一致させ、他方の鉄筋81を隣接孔部122c内に導入し、ナット83を締める。これにより、第2嵌合凹部12内のナット83が第2挿通孔122bに戻り入るのが阻止される。
【0031】
以上の例では、プレキャストコンクリート基礎80の上側の箇所において接合部材1を適用したが、これに限らず、プレキャストコンクリート基礎80の下側の一方の鉄筋81と他方の鉄筋81とが互いの先端部を突き合わせて位置している箇所においても接合部材1を適用することができる。また、上側の開口部13aを有することで、プレキャストコンクリート基礎80の下側での接合を、目視しながら容易に行うこともできる。
【0032】
また、上記した接合部材1では、上下両方に開口部13aが形成されたが、下側の開口部13aを鋼製板材で閉鎖した構造とすることもできる。この鋼製板材は、グラウト充填時の空気を抜くための孔を有するのがよい。
【0033】
また、上記の例では、対向壁部112,122は、四角形板材からなっていたが、これに限らず、円形板材等からなっていてもよい。
【0034】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 :接合部材
11 :第1嵌合凹部
12 :第2嵌合凹部
13 :繋ぎ部
13a :開口部
14 :後付け当り板
14a :切欠き部
80 :プレキャストコンクリート基礎
81 :鉄筋
81a :先端雄螺子部
82 :グラウト材充填凹部
83 :ナット
111 :空間部
112 :対向壁部
112a :対向面
112b :第1挿通孔
121 :空間部
122 :対向壁部
122a :ナット側の面
122b :第2挿通孔
122c :隣接孔部
131 :長方形板材
132 :ガイド溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7