(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006755
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】天板付き家具
(51)【国際特許分類】
A47B 83/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A47B83/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107739
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】明石 隆一
(72)【発明者】
【氏名】長町 圭祐
【テーマコード(参考)】
3B260
【Fターム(参考)】
3B260AB01
3B260AB06
3B260AC02
(57)【要約】
【課題】基本形態を変えることが可能な天板付き家具において、構造の簡略化や設計の自由度を高めることができる天板付き家具を提供する。
【解決手段】天板11を有する家具本体1と、面一な床板21、31を有し家具本体1の天板下空間S1に対して前後に出没可能に配された上方のスライド構体2及び下方のスライド構体3とを備えた天板付き家具Tである。
下方のスライド構体3の床板31は、前縁側に座席領域31xを備えるとともに、後縁側に通路領域31yを備えたものである。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に床板を有し前記家具本体の天板下空間に対して前後に出没可能に配されたスライド構体とを備え、床板の高さが相互に異なる複数のスライド構体をテレスコープ状に配してなる天板付き家具であって、
全部又は一部のスライド構体が前記家具本体の天板下空間に没入した没入モードと、全てのスライド構体の床板が前記天板下空間の外に突出した展開モードとをとり得るように構成されたものであり、
前記各スライド構体は、面一な床板をそれぞれ有したものであって、少なくとも最下段のスライド構体の床板が、前縁側に座席領域を備えるとともに、後縁側に通路領域を備えたものである天板付き家具。
【請求項2】
前記複数のスライド構体が、下方のスライド構体と、この下方のスライド構体の床板よりも高い位置に床板を有した上方のスライド構体であり、下方のスライド構体の床板には、前記座席領域と前記通路領域とが前後に隣接配置されており、上方のスライド構体の床板には座席領域のみが配されている請求項1記載の天板付き家具。
【請求項3】
前記下方のスライド構体の奥行き寸法は、前記上方のスライド構体の奥行き寸法より大きく設定されている請求項2記載の天板付き家具。
【請求項4】
前記展開モードにおいて下方のスライド構体の床板における前記家具本体から外に突出した突出寸法は、上方のスライド構体の床板における前記家具本体から外に突出した突出寸法より大きく設定されている請求項2又は3記載の天板付き家具。
【請求項5】
前記下方のスライド構体における前記座席領域にはソファーが配されており、その座席領域に隣接する通路領域が、前記ソファーの座面よりも低い位置に設けられている請求項2記載の天板付き家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスやロビーの共有スペース等において好適に使用される天板付き家具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の天板付き家具として、天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に段床を有し前記家具本体の天板下空間に対して前後に出没可能に配された上、下2台のスライド構体とを備え、それらのスライド構体をテレスコープ状に配してなるものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかして、この天板付き家具は、全てのスライド構体が前記家具本体の天板下空間に没入する没入モードと、全てのスライド構体の床板が前記天板下空間の外に突出して階段状に並ぶ展開モードとをとり得るようになっており、使用態様に応じて全体形状を変化させることができる家具として好評を博している。
【0004】
ところが、従来のものは、各スライド構体に、段差のある2つの段床がそれぞれ設けられており、前の段床に座席領域が形成するとともに、後の段床に通路領域が形成されている。そのため、各スライド構体の構造が比較的複雑なものとなるとともに、前、後の段床に段差があることに起因してスライド構体群が背の高いものにならざるを得ない。そのため、構造の簡略化を図りたい、あるいは、家具本体の天板高さの設計自由度を高めたい等という要望に応えることが難しいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スライド構体の構造の簡略化や小型化を図ることが可能であり、家具全体のコンパクト化や設計の自由度を高めることができる天板付き家具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る天板付き家具は、天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に床板を有し前記家具本体の天板下空間に対して前後に出没可能に配されたスライド構体とを備え、床板の高さが相互に異なる複数のスライド構体をテレスコープ状に配してなる天板付き家具であって、全部又は一部のスライド構体が前記家具本体の天板下空間に没入した没入モードと、全てのスライド構体の床板が前記天板下空間の外に突出した展開モードとをとり得るように構成されたものであり、前記各スライド構体は、面一な床板をそれぞれ有したものであって、少なくとも最下段のスライド構体の床板が、前縁側に座席領域を備えるとともに、後縁側に通路領域を備えたものである。
【0008】
ここで、「面一な床板」とは、上面が段差のない面一なものであればよく、一体品に限られず、同一材質の板材を継ぎ合わせたものや、異なった材質の板材を継ぎ合わせたもの等も含まれる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る天板付き家具は、請求項1記載のものであって、前記複数のスライド構体が、下方のスライド構体と、この下方のスライド構体の床板よりも高い位置に床板を有した上方のスライド構体であり、下方のスライド構体の床板には、前記座席領域と前記通路領域とが前後に隣接配置されており、上方のスライド構体の床板には座席領域のみが配されているものである。
【0010】
請求項3記載の発明に係る天板付き家具は、請求項2記載のものであって、前記下方のスライド構体の奥行き寸法は、前記上方のスライド構体の奥行き寸法より大きく設定されているものである。
【0011】
請求項4記載の発明に係る天板付き家具は、請求項2又は3記載のものであって、前記展開モードにおいて下方のスライド構体の床板における前記家具本体から外に突出した突出寸法は、上方のスライド構体の床板における前記家具本体から外に突出した突出寸法より大きく設定されているものである。
【0012】
請求項5記載の発明に係る天板付き家具は、請求項2記載のものであって、前記下方のスライド構体における前記座席領域にはソファーが配されており、その座席領域に隣接する通路領域が、前記ソファーの座面よりも低い位置に設けられているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基本形態を変え用途変更に対応することができる天板付き家具において、構造の簡略化や設計の自由度を高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る天板付き家具の没入モード(ソファーモード)を示す全体斜視図。
【
図2】同実施形態に係る天板付き家具のソファーモードを示す右側面図。
【
図3】
図4におけるA-A線に沿う模式的な断面図。
【
図4】
図3におけるB-B線に沿う模式的な断面図。
【
図5】同実施形態に係る天板付き家具のソファーモードを示す平面図。
【
図6】同実施形態に係る天板付き家具のソファーモードを示す底面図。
【
図7】同実施形態に係る天板付き家具の展開モード(スタジアムモード)を示す全体斜視図。
【
図8】同実施形態に係る天板付き家具のスタジアムモードを示す右側面図。
【
図9】
図10におけるC-C線に沿う模式的な断面図。
【
図10】同実施形態に係る天板付き家具のスタジアムモードを示す正面面
【
図11】同実施形態に係る天板付き家具のスタジアムモードを示す平面図。
【
図12】同実施形態に係る天板付き家具のスタジアムモードを示す底面図。
【
図13】同実施形態に係る天板付き家具を分解して側面から模式的に示す分解説明図。
【
図14】従来の天板付き家具R「
図14(a)」と、同実施形態に係る天板付き家具T「
図14(b)」とを比較するための説明図。
【
図15】本発明の他の実施形態を示す模式的な側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図14を参照して説明する。
【0016】
この実施形態の天板付き家具Tは、
図1~
図12に示すように、天板11を有する家具本体1と、前記天板11よりも低位置に床板21、31を有し前記家具本体1の天板下空間S1に対して前後に出没可能に配されたスライド構体(この実施形態では、上方のスライド構体2と、下方のスライド構体3)を備え、これら床板21、31の高さが相互に異なる複数のスライド構体2、3をテレスコープ状に配してなるものである。なお、この明細書において「前後方向」とは、スライド構体2,3が出没する方向を意味しており、「奥行方向」と記載することもある。
【0017】
そして、この天板付き家具Tは、一部のスライド構体2が前記家具本体1の天板下空間S1に没入した没入モード(以下、「ソファーモードP」と称する)と、全てのスライド構体2、3の床板21、31が前記天板下空間S1の外に突出した展開モード(以下、「スタジアムモードQ」と称する)とをとり得るように構成されたものである。この実施形態におけるソファーモードPは、一部のスライド構体である上方のスライド構体2が、前記天板下空間S1に没入しているとともに、下方のスライド構体3が、ソファーを有する座席を外部に露出させた状態で天板下空間S1に没入している。この実施形態における没入モード(ソファーモードP)では、両スライド構体2,3が、いずれも最後退位置に停止している。
【0018】
前記各スライド構体2、3は、面一な床板21、31をそれぞれ有したものであって、少なくとも最下段のスライド構体3の床板31が、前縁側に座席領域31xを備えるとともに、後縁側に通路領域31yを備えたものである。
【0019】
すなわち、この天板付き家具Tは、
図1~
図6に示すようなソファーモードPと、
図7~
図12に示すようなスタジアムモード(Q)とを選択的に採り得るように構成されている。
【0020】
以下、具体的に説明するが、その説明においてはスライド構体2、3が突没する側を「正面」とし、スライド構体2、3が突出する動作を「前進」、没入する動作を「後退」と認識して記述を行う。この実施形態の場合、家具本体1の下に、上方のスライド構体2と下方のスライド構体3とがテレスコープ状に配されている。
【0021】
ここで、
図1~
図6は、ソファーモードPを示しており、
図1は、ソファーモードPにおける天板付き家具Tの斜視図、
図2は、側面図、
図3は、側断面図である。この
図3は、
図4におけるA-A線に沿った断面を示す模式図であり、後述する脚ベース12、22、32、支柱13、23、33、天板支持フレーム14、24、34等は通常のものであるため図示を省略している。
図4は、同天板付き家具Tの正断面図である。この
図4は、
図3におけるB-B線に沿った断面を示す模式図であり、同じく脚ベース12、22、32、支柱13、23、33、天板支持フレーム14、24、34等は省略してある。
図5は、同天板付き家具Tの平面図、
図6は、底面図である。
【0022】
図7~
図12は、スタジアムモードQを示しており、
図7は、スタジアムモードQにおける天板付き家具Tの斜視図、
図8は、側面図、
図9は、側断面図である。この
図9は、
図10におけるC-C線に沿った断面を示す模式図であり、脚ベース12、22、32、支柱13、23、33、天板支持フレーム14、24、34等は省略してある。
図10は、同天板付き家具Tの正面図、
図11は、平面図、
図12は、底面図である。
【0023】
図13は、天板付き家具Tを分解して示す模式的な側断面図である。この
図13では、後述する家具本体1の脚ベース12、支柱13、天板支持フレーム14、及び補助フレーム19は、太線で模式的に示してある。同様に、
図13では、上方のスライド構体2の脚ベース22、支柱23、床板支持フレーム24、及び補助フレーム28は、太線で模式的に示してある。さらに、この
図13では、下方のスライド構体3の脚ベース32、支柱33、床板支持フレーム34、及び補助フレーム39も、太線で模式的に示してある。
図14は、本実施形態に係る天板付き家具の作用効果を説明するための説明図であり、側断面図として模式的に示してある。
図14(a)は、従来の天板付き家具Rを示し、
図14(b)は、本実施形態の天板付き家具Tを示している。
【0024】
これらの図面1~14に示された本実施形態の天板付き家具Tは、前述した複数のスライド構体が、下方のスライド構体3と、この下方のスライド構体の床板31よりも高い位置に床板21を有した上方のスライド構体2に相当するものである。そして、下方のスライド構体3の床板31には、座席領域31xと通路領域31yとが前後に隣接配置されており、上方のスライド構体2の床板21には座席領域21xのみが配されている。以下詳述する。
【0025】
家具本体1は、
図6、
図12及び
図13に示すように、平行に配された左右一対の脚ベース12と、これら脚ベース12の基端部(後端部)にそれぞれ立設された左右一対の支柱13と、これら支柱13の上端部から前方に向けて片持ち的に延設された天板支持フレーム14と、これら天板支持フレーム14上に配設された天板11とを具備してなる。脚ベース12は床面F上に載置される盤状のものであり、前後方向に延びている。左右の支柱13は、それぞれ角柱パイプ状のもので、例えば図示しない下横架材や上横架材等の補強枠材によって相互に剛結されている。天板は、前記天板支持フレーム14や、図示しない補強枠材にビス等により止着され支持されている。
【0026】
家具本体1は、天板11の下に上方のスライド構体2を収容可能な天板下空間S1を有しており、脚ベース12、支柱13、天板支持フレーム14、及び図示しない補強枠材は、この天板下空間S1を確保し得るように配置されている。そして、この家具本体1には、天板11の左右両側縁から垂下する側板15と、天板11の前縁から垂下する前板16と、天板11の後縁近傍部から垂下する背板17が設けられている。側板15、前板16、背板17は、天板11やこの天板11を支持する補強枠材にねじ等の止着具を介して止着されている。側板15の上端面は、
図1や
図7等に示すように、天板11の上面よりも上方に突出させてあってもよいが、
図3や
図9に示すように同一高さに揃えてあってもよい。
【0027】
また、家具本体1の左、右に配された側板15の前端部には、
図2、6、8、9、10、12、13に示されるように、床面Fに接地するアジャスタ18が配されているとともに、前板16の下端部近傍には、
図1~4、
図7~10、
図12、13に示されるように、スライド構体2の床板21に転接する補助車輪1cが配されている。補助車輪1cは、
図13に示すように、天板11或いは補強枠材から垂下させた補助フレーム19の下端に軸着されたもので、床板21の左右両端部と、左右方向中央部にそれぞれ転接し得る位置に設けられている。
【0028】
天板11の後縁は、使用端11aとなっており、背板17を天板11の使用端11aよりも前方に偏移させて配することによって、その天板11の下に下肢空間S2が形成されている。すなわち、天板11の使用端11a側はオーバーハングしており、その下に使用者が脚を侵入させることができる下肢空間S2が常時形成されている。天板11の上面は、床面Fから700mm~1050mm程度の高さ位置に設定するのが望ましいが、この実施形態では、起立姿勢やハイタイプの椅子に着座した姿勢で使用することを想定して1050mmに定めている。
【0029】
上方のスライド構体2は、
図2、3、6、
図8~13に示すように、面一な床板21を備えたもので、その床板21上にソファー271を有する座席27が形成されている。具体的には、このスライド構体2は、
図13に示すように、平行に配された左右一対の脚ベース22と、これら脚ベース22の基端部(後端部)にそれぞれ立設された左右一対の支柱23と、これら支柱23の上端位置から前方に向けて片持ち的に延設された床板支持フレーム24と、これら両床板支持フレーム24上に支持された床板21とを具備してなる。脚ベース22は前後方向に転動する走行車輪2aを備えている。左右の支柱23は、それぞれ角柱パイプ状のもので、例えば図示しない下横架材や上横架材等の補強枠材によって相互に剛結されている。床板21は、床板支持フレーム24や、図示しない補強枠材にビス等により止着され支持されている。
【0030】
上方のスライド構体2は、床板21の下に下方のスライド構体3を収容可能な空間を有しており、脚ベース22、支柱23、床板支持フレーム24、及び図示しない補強枠材は、この空間を確保し得るように配置されている。そして、この上方のスライド構体2には、床板21の左右両側縁から垂下する側板25と、床板21の前縁から垂下する前板26とが設けられている。側板25、前板26、は、床板21やこの床板21を支持する補強枠材等にねじ等の止着具を介して止着されている。
【0031】
また、上方のスライド構体2の脚ベース22には、床面F上を転動する走行車輪2aが軸着されているとともに、前板26の下端部近傍に、
図1~4、
図7~10、
図12、13に示されるように、下方のスライド構体3の床板31に転接する補助車輪2cが配されている。補助車輪2cは、床板21或いは補強枠材から垂下させた補助フレーム28の下端に軸着されたもので、床板31の左右両端部と左右方向中央部にそれぞれ転接し得る位置に設けられている。
【0032】
上方のスライド構体2上には、
図7~11に示すように、座席27が設けられている。すなわち、スライド構体2の面一な床板21は、座席領域21xのみが形成された奥行寸法の小さなものであり、この座席領域21x上にソファー271を載設することによって座席27が形成されている。この実施形態における座席領域21の奥行寸法は、例えば、450mm程度に設定している。なお、この実施形態では、前記ソファー271の前端部271aを床板21の前縁21aよりも前方に若干寸法(50mm程度)だけ突出させている。そのため、ソファーモードPにした場合に、
図2や
図3に示すように、そのソファー271の前端部271aが家具本体1の前端よりも前方にはみ出すことなる。その結果、前記ソファー271の前端部271aが、下方のスライド構体3の座席37に着座する者の腰付近をサポートする腰当てとして機能し得ることになる。
【0033】
下方のスライド構体3は、
図1~5、
図7~11及び
図13、14に示すように、面一な床板31を備えたもので、その床板21上にソファー371を有する座席37と、通路38とが形成されている。具体的には、このスライド構体3は、
図6、12、13に示すように、平行に配された左右一対の脚ベース32と、これら脚ベース32の基端部(後端部)にそれぞれ立設された左右一対の支柱33と、これら支柱33の上端位置から前方に向けて延設された床板支持フレーム34と、これら両床板支持フレーム34上に支持された床板31とを具備してなる。脚ベース32は前後方向に転動する走行車輪3aを備えている。左右の支柱33は、それぞれ角柱パイプ状のもので、例えば図示しない下横架材や上横架材等の補強枠材によって相互に剛結されている。床板21は、床板支持フレーム24や、図示しない補強枠材にビス等を用いて止着され支持されている。
【0034】
下方のスライド構体3には、床板31の左右両側縁から垂下する側板35と、床板31の前縁から垂下する前板36とが設けられている。側板35、前板36、は、床板31やこの床板31を支持する補強枠材等にねじ等の止着具を介して止着されている。
【0035】
また、下方のスライド構体3の脚ベース32には、
図6,12に示すように、床面F上を転動する複数の走行車輪3aがそれぞれ軸着されているとともに、脚ベース32以外の部位にも、床面Fに転接する複数の走行車輪3bが配されている。これらの走行車輪3bも床板31の上載荷重を床面Fに受けさせるためのものであり、床板31の左右両端部や左右方向中央部に配されている。
【0036】
下方のスライド構体3の奥行き寸法は、上方のスライド構体2の奥行き寸法より大きく設定されている。そして、下方のスライド構体3も、段差を有しない面一な床板31を有したものであり、前縁側に座席領域31xを備えるとともに、後縁側に通路領域31yを備えたものである。そして、座席領域31xにソファー371を載設することによって座席37を構成するとともに、通路領域31yを通路38として使用し得るようにしている。この実施形態の場合には、座席領域31xの奥行寸法を450mm程度に設定するとともに、通路領域31yの奥行寸法(通路幅寸法)を550mm程度に設定している。この通路幅寸法は、上方のスライド構体2の座席27に着座している着座者Pが足を置くスペースと、その着座者P以外の他者がその前を通過するのに必要なスペースの両方を確保することができる寸法として設定されたものであり、従来のものとは大きく異ならせてある。
【0037】
以上のようにしてなる上方のスライド構体2と、下方のスライド構体3とは、
図7~9に示すように、テレスコープ状に組み合わされて家具本体1の天板下空間S1に突没可能に配されている。そして、家具本体1と上方のスライド構体2との間には、家具本体1に対するスライド構体2の最後退位置と最前進位置を規定する図示しないストッパが設けられている。また、上方のスライド構体2と下方のスライド構体3との間には、上方のスライド構体2に対する下方のスライド構体3の最後退位置と最前進位置とを規定する図示しないストッパ機構が設けられている。
【0038】
そのため、スライド構体2が家具本体1に対して最後退位置にあり、スライド構体3がスライド構体2に対して最後退位置にあるソファーモードP(
図1~
図6参照)においては、上方のスライド構体2が家具本体1の天板下空間S1に没入しているとともに、下方のスライド構体3が座席37を残して天板下空間S1に没入している。このソファーモードPから、下方のスライド構体3を前方に牽引して前方に引き出してゆくと、このスライド構体3が上方のスライド構体2に対する最前進位置に達した段階から当該スライド構体2も追従して前進を始める。そして、上方のスライド構体2が最前進位置に達した段階でこれら両スライド構体2、3の前進が家具本体1により係止されスタジアムモードQ(
図7~
図12参照)となる。
【0039】
そして、このスタジアムモードQから下方のスライド構体3を後方に押し込んでゆくと、下方のスライド構体3がスライド構体2に対する最後退位置に達した段階から当該スライド構体2が追従して後退を始め、このスライド構体2が家具本体1に対する最後退位置に達した段階ですべてのスライド構体2,3の後退が係止される。すなわち、この天板付き家具Tは、元のソファーモードPに復帰することになる。なお、下方のスライド構体3の前板36に設けられた切欠部36aは、図示しない牽引具を装着するためのものである。
【0040】
このような構成の天板付き家具Tであれば、その基本形態を大きく変化させることができ、その変化によって、従来の専用家具では応えられない用途変更に対応することができることができる。そのため、複数種類の専用家具を用意して適宜取替使用するのと同等の使用感を一種類の天板付き家具Tにより確保することができる。しかも、このようなものであれば、スライド構体2、3を家具本体1に対してスライド移動させるだけで、その基本形態を変更することができるため、専用家具を取り替える場合のような手間や時間は要しない。
【0041】
しかも、本天板付き家具Tは、各スライド構体2、3に、複数の段床を設ける代わりに、それぞれ面一な床板21、31を設け、その面一な床板21、31上に座席領域21x、31xや通路領域31yを形成しているので、段差のある座席用の段床と通路用の段床をそれぞれ設けるものに比べてスライド構体2、3の構造を簡素化することができる。すなわち、各スライド構体に段差のある複数の段床を設ける場合には、高さの異なる段床支持フレームが必要になるが、面一な床板21、31を有する本願のスライド構体2、3では、直線的な床板支持フレーム24、34を設ければよく、構造がシンプルなものとなる。
【0042】
また、
図14(b)に示す本願の天板付き家具Tでは、最下段のスライド構体3の面一な床板31に、座席領域31xと通路領域31yとを設けているため、通路38の高さ寸法kを低くすることができる。すなわち、
図14(a)に示すような座席用の段床と通路用の段床とを交互に階段状に設けた従来の天板付き家具Rでは、最下段の通路138でも比較的大きな高さ寸法jとなるため、天板付き家具Rの側部に落下防止用の手摺りや補助家具等を配置することが望ましくなるが、本願の天板付き家具Tでは、このような配慮も必須ではなくなる。したがって、このような天板付き家具Tであれば、側面から通路38上に登り降りすることが可能となり、安全性や使い勝手が格段に向上する。
【0043】
さらに、従来の家具Rでは、通路用の段床の奥行寸法が比較的小さく設定されているため、前後の着座者u1、u2の離間距離mが比較的小さくなってしまうが、本願の天板付き家具Tでは、通路38の奥行寸法を例えば550mm程度の値に設定している。そのため、この通路38は、着座者q2が足を置くスペースと、着座者q2以外の他者が通行するスペースの両方を確保することができる。この天板付き家具Tの通路38の奥行寸法は、下方のスライド構体3の上方のスライド構体2に対する相対的な前後移動寸法を変えることによって、容易に変更することができる。ちなみに、
図14の実施形態では、例えば、従来の天板付き家具Rの着座者u1、u2間の離間距離mが219mm程度になる一方、本願天板付き家具Tおける着座者q1、q2間の離間距離nが429mm程度になるように設定されている。
【0044】
また、この実施形態の天板付き家具Tによれば、下方のスライド構体3の通路38が、座席37の座面よりも低くなるため、上方のスライド構体2の座席27の位置も、従来の家具Rにおける座席127の位置よりも低く設定することができる。そのため、上方のスライド構体2と家具本体1の天板11との間に形成される余裕空間S3を広く確保することが可能になる。したがって、家具本体1の天板11の高さ寸法hの設定範囲が広がることになり、設計の自由度が高くなるという効果が得られる。そして、天板11の高さ寸法hが従来に近い値である場合等には、この余裕空間S3を、収納空間として利用することも可能となる。
【0045】
なお、本発明は、以上説明した実施形態のものに限定されないのは勿論であり、次のような形態も含まれる。
【0046】
すなわち、請求項1に係る発明においては、スライド構体は、前記実施形態のように上下2台設けるものに限定されるものではなく、家具本体の天板高さを高位置に配してもよい事情がある場合、例えば、天板の使用端側の建築床面が反使用端側の建築床面よりも高い場合等には、スライド構体を3台以上設けてもよい。
スライド構体を2台にする場合でも、例えば、上、下両スライド構体の床板に、それぞれ座席領域と通路領域を設ける態様も考えられる。この態様を採用する場合には、家具本体の天板の反使用端側に座席領域を設け、その座席領域にソファー等の座席要素を着脱可能に載設するのが望ましい。
【0047】
また、前記通路領域の前後幅寸法は、上方のソファーの着座者が足を置くスペースと着座者の前を他の者が往来し得るスペースの両方を確保できる値に設定するのが好ましいが、他の寸法に設定することも可能である。すなわち、本発明によれば、座席領域と通路領域とが面一な1枚の床板上に形成されているため、座席領域と通路領域の寸法割合は、スライド構体のスライド態様を適宜選定することによって比較的自由に設定し変更することができる。
【0048】
さらに、前記実施形態では、上方のスライド構体が天板下空間に没入するとともに、下方のスライド構体が座席部分を外部に残して天板下空間に後退する没入モード(ソファーモード)と、全てのスライド構体の床板が天板下空間の外に突出した展開モード(スタジアムモード)とを取り得る態様について説明したが、全部のスライド構体が、略完全に天板下空間に没入する没入モード(テーブルモード)を追加してもよい。この場合、ソファーモードとスタジアムモードとの組み合わせ、テーブルモードとスタジアムモードとの組み合わせ、或いは、テーブルモードとソファーモードとスタジアムモードとの組み合わせ等、種々の態様が考えられる。
【0049】
また、天板の高さhも、床面から700mm~1050mmに限定されないが、この範囲に設定しておけば、使い勝手を犠牲にすることなく、複数のスライド構体を収納することができるという効果が得られる。すなわち、700mm未満に設定すると、スライド構体を2台以上収納するのが難しくなり、1050mmを上回ると起立姿勢でも高すぎて使い難くなる使用者が多くなる。
【0050】
図1~
図14に示す一実施形態では、家具本体1の天板11の高さhを1050mmに設定した場合について説明したが、例えば、
図15に示すようなもの(他の実施形態)にしてもよい。すなわち、
図15に示す他の実施形態の天板付き家具1は、前述した一実施形態の余裕空間S3を極限まで小さくすることにより実現可能になったもので、家具本体1の天板11の高さhを、通常のデスク天板の高さである700mm程度に設定している。
図15に示す他の実施形態の構成は、基本的に前記一実施形態のものと同じであり、同一又は相当する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
なお、
図15は、他の実施形態の天板付き家具Tを概略的に示す側面図であり、走行車輪等は図示を省略してある。この実施形態における寸法関係を具体的に説明すれば、次の通りである。
図15の天板付き家具1における天板11の奥行寸法vは1000mm程度に設定され、家具本体1に対する上方のスライド構体2の最大突出寸法wは450mm程度に設定され、上方のスライド構体2に対する下方のスライド構体3の最大突出寸法xは1000mm程度に設定されている。以上の設定は前述した一実施形態に準じたものである。一方、スライド構体3の通路38の床面Fからの高さkは280mm程度と一実施形態のものに比べてより低く設定されている。そして、スライド構体2、3の各座席27、37における座面高さy、zは、400mm程度に抑制されている。
【0052】
そして、天板付き家具全体の幅寸法も図示例のようなものに限られないのはもちろんであり、種々変更が可能である。また、所定の幅寸法を有する本発明に係る複数台の天板付き家具を幅方向に連結して使用することを可能なものにしてもよい。
【0053】
また、前記実施形態では、家具本体を床面に対してスライド移動しないものにしているが、家具本体も前後にスライド移動できるようにしてもよい。しかしながら、前記実施形態のように、家具本体を非スライドタイプのものにするとともに、各スライド構体を面一な床板を備えたものにし、さらに、選択態様をソファーモードとスタジアムモードとに限定することによって、構造のシンプル化や全体のコンパクト化を特に促進することが可能となる。
【0054】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
T…天板付き家具
P…没入モード(ソファーモード)
Q…展開モード(スタジアムモード)
F…床面
1…家具本体
11…天板
11a…使用端
11b…半使用端
S1…天板下空間
S2…下肢空間
2…(上方の)スライド構体
21…床板
21x…座席領域
27…(上方の)座席
271…ソファー
3…(下方の)スライド構体
31…(下方の)床板
31x…座席領域
31y…通路領域
37…(下方の)座席
371…ソファー
38…(下方の)通路