(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006760
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】サージ防護デバイス分離装置
(51)【国際特許分類】
H02H 7/00 20060101AFI20250109BHJP
H02H 9/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02H7/00 C
H02H9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107744
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207300
【氏名又は名称】大東通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 俊介
【テーマコード(参考)】
5G013
5G053
【Fターム(参考)】
5G013AA01
5G013BA03
5G013DA01
5G053AA01
5G053AA10
5G053BA01
5G053BA04
5G053CA03
5G053CA05
5G053EC04
5G053EC05
5G053FA01
(57)【要約】
【課題】小型でありつつ、大サージ電流耐量性能と小定格電流性能とを両立できるサージ防護デバイス分離装置を提供する。
【解決手段】サージ防護デバイス分離装置1は、被保護装置2を過電圧サージに対し保護するサージ防護デバイス3に対し直列に接続される。サージ防護デバイス分離装置1は、電流遮断器20と抵抗21との直列回路と、この直列回路に対し並列に接続された電圧スイッチング形サージ防護部品22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保護装置を過電圧サージに対し保護するサージ防護デバイスに対し直列に接続されるサージ防護デバイス分離装置であって、
電流遮断器と抵抗との直列回路と、
この直列回路に対し並列に接続された電圧スイッチング形サージ防護部品と、
を備えることを特徴とするサージ防護デバイス分離装置。
【請求項2】
電圧スイッチング形サージ防護部品は、電源電圧以下では動作せず、サージ印加時のサージ電流による電流遮断器と抵抗との降下電圧の合計が、被保護装置の耐電圧以下の所定電圧に達すると動作する
ことを特徴とする請求項1記載のサージ防護デバイス分離装置。
【請求項3】
電流遮断器の電流二乗時間積は、電圧スイッチング形サージ防護部品が動作するまでに前記電流遮断器を流れるサージの電流二乗時間積より大きい
ことを特徴とする請求項1又は2記載のサージ防護デバイス分離装置。
【請求項4】
電流遮断器は、ヒューズ又はブレーカである
ことを特徴とする請求項1又は2記載のサージ防護デバイス分離装置。
【請求項5】
電圧スイッチング形サージ防護部品は、ガス入り放電管又はサージ防護サイリスタである
ことを特徴とする請求項1又は2記載のサージ防護デバイス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被保護装置を過電圧サージに対し保護するサージ防護デバイスに対し直列に接続されるサージ防護デバイス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低電圧配電系統において、落雷時に発生する非直撃雷による過渡過電圧サージから電気・電子機器、通信装置等の被保護装置を保護するデバイスとして、電源用サージ防護デバイス(Surge Protective Device、SPD)が設置される。サージ防護デバイスは、代表的には、内部分離器と、金属酸化物バリスタ(Metal Oxide Varistor、MOV)と、ガス入り放電管(Gas Discharge Tube、GDT)と、の直列回路で構成される。
【0003】
このようなSPDのMOVは、電源の充電線と中性線との間に接続されることから、常時商用電源の電圧が印加される課電状態にあること、及び、雷サージが複数回加わって繰り返し動作すること、等により経時劣化する。MOVの劣化は、漏れ電流の増加及び自己発熱を生じさせ、好ましくない。
【0004】
また、MOVに過大サージ電流が流れ瞬時に短絡故障すると、電源の充電線と中性線とが短絡状態となり、その短絡状態が継続すると、配電系統におけるSPDの上位にあるブレーカ等の電流遮断器が動作して電源供給が遮断されることにより、被保護装置が停電し、装置動作が停止する。
【0005】
そこで、SPDが故障した場合に、上位の電流遮断器の動作より先に、当該SPDを速やかに切り離すことが必要である。このようなSPDの切り離しに用いられるSPD分離装置として、従来の電流ヒューズの可溶体に低融点合金を溶着させサージ電流耐量を上げる一方、故障電流が流れた際、低融点金属の拡散を利用して可溶体を溶断させ故障したSPDを電源の充電線から切り離すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、SPDが劣化して生じる故障電流に対して、遮断できる電流を、より小さな値まで引き下げることのできるSPD分離器用電流ヒューズが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
さらに、電圧スイッチング形サージ防護部品(Surge Protective Component、SPC)と、抵抗素子と、温度ヒューズと、を備えた複数の部品による回路で構成されて、電源の短絡電流が抵抗素子を流れた際に発生する抵抗素子の自己発熱を利用して温度ヒューズを遮断する機構が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
上記のようなSPD分離装置の性能には、小定格電流性能と大サージ電流耐量性能との両方が求められる。すなわち、SPDが故障した場合、安全面から、できるだけ小さな短絡電流で速やかに故障したSPDを健全な電源系統から切り離すことと、雷サージ防護面から、レベルの高い雷サージに対しても被保護装置を保護できるようにすることと、が求められる。
【0009】
しかしながら、SPD分離装置としてヒューズ又はブレーカ単体を使用する場合、これらの性能は比例関係にあるため、相反する小定格電流性能と大サージ電流耐量性能とを両立させることが困難である。
【0010】
例えば、特許文献1の電流ヒューズは、定格電流21Aで公称放電電流(In)の最大値が6.7kAであるものの、一般家庭用のSPDは最大放電電流(Imax)10kAが要求されることを考慮すると、より一層の大サージ電流耐量性能が求められる。
【0011】
また、特許文献2の場合には、ヒューズの可溶体の直流抵抗が大きく、可溶体長が長くなることにより端子方向への放熱が抑えられ溶断電流が30Aであるものの、一般家庭における最小定格電流のブレーカが15Aであることを考慮すると、ヒューズとブレーカとの協調が取れないおそれがある。
【0012】
さらに、特許文献3の場合には、SPD故障時に電源の短絡電流が抵抗を流れる際の抵抗の自己発熱を利用して温度ヒューズで遮断する動作機構であるため、抵抗が発熱してその熱が温度ヒューズに伝わり、温度ヒューズが切れる温度まで上昇する時間が必要であり、動作が遅いという課題がある。
【0013】
この点、電流遮断器とインピーダンス素子であるコイルとの直列回路に対し、サージ防護部品を並列に接続することで、小定格電流性能と大サージ電流耐量性能とを両立したSPD分離装置又はSPDが知られている(特許文献4及び5参照。)。
【0014】
しかしながら、特許文献4及び5の場合には、電流遮断器と接続されるインピーダンス素子としてコイルを使用していることから、必要なインダクタンスを得るために大きなコイルが必要であり、全体として大型化するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2011-3350号公報
【特許文献2】特開2014-36013号公報
【特許文献3】特開2012-210009号公報
【特許文献4】特開2012-65461号公報
【特許文献5】実開昭54-6537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、小型で、かつ、大サージ電流耐量性能と小定格電流性能とを両立できるサージ防護デバイス分離装置が求められる。
【0017】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、小型でありつつ、大サージ電流耐量性能と小定格電流性能とを両立できるサージ防護デバイス分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1記載のサージ防護デバイス分離装置は、被保護装置を過電圧サージに対し保護するサージ防護デバイスに対し直列に接続されるサージ防護デバイス分離装置であって、電流遮断器と抵抗との直列回路と、この直列回路に対し並列に接続された電圧スイッチング形サージ防護部品と、を備えるものである。
【0019】
請求項2記載のサージ防護デバイス分離装置は、請求項1記載のサージ防護デバイス分離装置において、電圧スイッチング形サージ防護部品は、電源電圧以下では動作せず、サージ印加時のサージ電流による電流遮断器と抵抗との降下電圧の合計が、被保護装置の耐電圧以下の所定電圧に達すると動作するものである。
【0020】
請求項3記載のサージ防護デバイス分離装置は、請求項1又は2記載のサージ防護デバイス分離装置において、電流遮断器の電流二乗時間積は、電圧スイッチング形サージ防護部品が動作するまでに前記電流遮断器を流れるサージの電流二乗時間積より大きいものである。
【0021】
請求項4記載のサージ防護デバイス分離装置は、請求項1又は2記載のサージ防護デバイス分離装置において、電流遮断器は、ヒューズ又はブレーカであるものである。
【0022】
請求項5記載のサージ防護デバイス分離装置は、請求項1又は2記載のサージ防護デバイス分離装置において、電圧スイッチング形サージ防護部品は、ガス入り放電管又はサージ防護サイリスタであるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、小型でありつつ、大サージ電流耐量性能と小定格電流性能とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施の形態に係るサージ防護デバイス分離装置の回路図である。
【
図2】(a)は同上サージ防護デバイス分離装置の一例を示す回路図、(b)は同上サージ防護デバイス分離装置の他の例を示す回路図である。
【
図3】
図2(a)の例に基づく一実施例におけるクラスIII試験のシミュレーションの応答特性を(a)ないし(d)に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1において、1はサージ防護デバイス分離装置(以下、分離装置1という)を示す。本実施の形態の分離装置1は、低電圧配電系統において、落雷時に発生する非直撃雷による過渡過電圧サージから被保護装置2を保護するサージ防護デバイス3(以下、SPD3という)又はその一部を、その故障時に低電圧配電系統から切り離す外部分離器である。分離装置1が接続される低電圧配電系統の上位には、電流遮断器4が接続される。電流遮断器4は、異常時に電源側から被保護装置2を切り離す装置である。電流遮断器4としては、例えばブレーカが用いられる。
【0027】
被保護装置2としては、例えば電気・電子機器等が用いられる。被保護装置2は、所定の耐電圧を有する。被保護装置2の電源線は、低電圧配電系統の充電線5及び中性線6と電気的に接続され、接地端子は接地線7で接地(アース)8と電気的に接続される。
【0028】
SPD3は、低電圧配電用のものである。SPD3は、代表的には、内部分離器10と、金属酸化物バリスタ11(以下、MOV11という)と、ガス入り放電管12(以下、GDT12という)と、の直列回路で構成され、通常3つの端子13,14,15を有する。
【0029】
内部分離器10としては、例えばMOV11が故障した場合に発生する熱を利用して、故障したSPD3を電源系統から切り離す熱切り離し機構が用いられる。内部分離器10としては、例えば温度ヒューズ、あるいは、低融点金属とばねとを使用した接点開放機構等による、遮断機構が用いられる。内部分離器10は、例えばMOV11と密着されて一体化されている。
【0030】
端子13は、分離装置1と電気的に接続される外部分離器接続端子である。また、端子14は、接地8と電気的に接続される接地接続端子である。端子13,14間に、内部分離器10とMOV11とGDT12との直列回路が電気的に接続されている。さらに、端子15は、電源の中性線6と電気的に接続される中性線接続端子である。端子15には、MOV11とGDT12との接続点が電気的に接続されている。したがって、MOV11は、内部分離器10及び分離装置1を通して電源の充電線5と中性線6との間に接続されるため、常時商用電源の電圧が印加される課電状態にある。
【0031】
そして、分離装置1は、複数の部品及び器具を組み合わせて装置化されている。分離装置1は、電流遮断器20と、抵抗21と、電圧スイッチング形サージ防護部品22(以下、SPC22という)と、で構成され、2つの端子23,24を有する。
【0032】
電流遮断器20は、インピーダンスを有する。電流遮断器20は、端子23と電気的に接続されている。
【0033】
また、抵抗21は、電流遮断器20と電気的に直列に接続されて、端子23,24間に電流遮断器20との直列回路を構成する。本実施の形態では、抵抗21は、電流遮断器20と端子24との間に電気的に接続されるが、これに限らず、抵抗21が端子23と電気的に接続され、電流遮断器20が抵抗21と端子24との間に電気的に接続されていてもよい。抵抗21は、その直列回路の両端間に、SPC22が電気的に並列に接続されている。すなわち、SPC22は、端子23,24間に電気的に接続されている。
【0034】
そして、本実施の形態において、分離装置1は、電流遮断器20が小定格電流機能を担い、SPC22が大サージ電流耐量機能を担い、抵抗21が、サージ電流が印加された際に、電流遮断器20からSPC22にサージ電流が流れる経路を切り換えるタイミング設計の役割を担う。
【0035】
すなわち、SPC22は、商用電源の電圧以下では動作せず、雷サージが印加された際に、最初は電流遮断器20と抵抗21とにサージ電流が流れ、それぞれの電圧降下の和(合計)が、被保護装置2の耐電圧以下の所定電圧であるSPC22の放電開始電圧に達すると動作して、低電圧状態に遷移しアーク電流としてサージ電流が流れるため、SPC22が持つ大サージ電流耐量特性を示す。つまり、抵抗21の抵抗値に応じて、雷サージに対し、SPC22が動作されるタイミングが決定される。分離装置1を通過したサージ電流は、SPD3を介して接地8に逃がされる。
【0036】
一方、SPC22の動作電圧を配電系の電源のピーク電圧より高く設計することにより、SPD3のMOV11が仮に故障して低インピーダンスになった際、SPC22は動作せず、電流遮断器20に電源の定格電流が流れると、電流遮断器20が直ちに遮断動作して故障したSPD3を電源系から分離する電源電流遮断特性を示す。
【0037】
このように、本実施の形態の分離装置1は、SPC22による大サージ電流耐量機能、電流遮断器20による小定格電流機能をそれぞれ分担して持たせることができる。
【0038】
ここで、雷サージ印加時に雷サージ電流で電流遮断器20が分離動作せず、雷サージをSPC22に雷サージ電流を分流させるために、電流遮断器20の電流二乗時間積I2t(ヒューズの場合は溶断特性)は、電流遮断器20からSPC22に切り換えるタイミングにおいて、印加されたサージ電流の電流二乗時間積I2tより大きいことが必須であり、大きくすることで複数回のサージ電流に耐えることができる。
【0039】
図2(a)に示す例では、分離装置1aは、電流遮断器20が電流ヒューズ20aであり、SPC22がGDT22aである。
【0040】
電流遮断器20として電流ヒューズ20aを用いる場合には、適用する交流電源の半波周波時間(例えば50Hzでは10ms)以下では本質的に遮断できないブレーカを用いる場合と比較して、動作しない時間が存在せず、10ms以下でも動作可能となって、動作速度を高めることができる。
【0041】
また、電流遮断器20と直列回路を構成するインピーダンス素子として抵抗21を用いることにより、コイルを用いる場合と比較して、分離装置1を小型に構成できる。例えば、低圧配電系に適用するSPD3の具体的設計事例として「クラスIISPD」とすると、サージ耐量In=5kA、8/20μsが要求される。ここで、分離装置1におけるSPC22をGDTとして、その放電開始電圧を400Vと仮定すると、必要なコイルのインダクタンスLは、400V/(5kV/8μs)=0.64μH以上が必要になる。一方、インダクタンスLは、aをコイルの半径(m)、bをコイルの長さ(m)、nをコイルの巻き数、kを長岡係数、μ0を非透磁率(空気≒1)とすると、L=k×μ0×π×a2×n2/bで求められ、0.64μH以上のインダクタンスの場合、非透磁率μ0を1とした場合、下記の通り、直径2cm、長さ5cm、10ターンの巻き数が必要(長岡係数k=0.8498517532738905)となり、物的に形状が大きくなる。
【0042】
L=0.8498517532738905×1×π×(0.01)2×102/0.05=0.67μH
SPC22としてGDT22aを用いる場合には、サージ耐量が大きなものを採用することによって、分離装置1のサージ耐量を大きくできる。
【0043】
上記の
図2(a)に示す例が、分離装置1として優れたパフォーマンスを示す特性を有する電流遮断器20とSPC22との最も好ましい組み合わせであるが、この組み合わせに限定されるものではない。例えば、
図2(b)に示す分離装置1bの例では、電流遮断器20がブレーカ20bであり、SPC22がサージ防護サイリスタ(Thyristor Surge Suppressor、TSS)22bである。
【0044】
電流遮断器20としてブレーカ20bを用いる場合には、ブレーカ20bの動作後の復旧を迅速に行える。
【0045】
また、SPC22としてTSS22bを用いる場合には、GDTを用いる場合と比べて動作速度を高めることができる。
【0046】
このように、本実施の形態の分離装置1は、小型でありつつ、大サージ電流耐量性能と小定格電流性能とを両立できる。そのため、レベルの高い雷サージに対しても被保護装置2を保護できるとともに、小さな短絡電流で速やかに故障したSPD3を健全な電源系統から切り離すことができる。また、単なる電流ヒューズ等を用いるSPD分離器と比較して、本実施の形態の分離装置1はその切り離し動作が速い。そこで、SPD3が故障した際にSPD3の上位の電流遮断器4が動作して被保護装置2への電源供給が遮断されることがなく、正常な電源系統の健全性を確保し、この正常な電源系統に接続されている被保護装置2を不必要に停止させることがない。
【0047】
なお、分離装置1を構成する電流遮断器20、及び、SPC22は、これらの例に示したものに限らない。例えば、電流遮断器20は、ヒューズ、ブレーカ等に限定されるものではなく、電流遮断器として機能する部品又は器具であれば何を用いてもよい。同様に、SPC22は、電圧スイッチング形サージ防護部品として機能する部品又は器具であれば、GDTやTSSに限定されるものではない。また、これら部品及び器具の自由な組み合わせにより、それぞれの部品又は器具の特徴を活かした分離装置1が構成可能である。
【0048】
また、分離装置1は、商用交流電源系のみならず、同様に給電を伴う通信系への適用も可能である。つまり、被保護装置2としては、通信装置等でもよい。
【0049】
本実施の形態の
図2(a)に示す例についての一実施例を示す。本実施例では、回路定数として、例えば電流遮断器20である電流ヒューズ20aの定格電流が1A、溶断電流二乗時間積I
2tが0.3A
2s、抵抗値が0.85Ωとする。また、抵抗21の抵抗値は47Ω、SPC22であるGDT22aの直流放電開始電圧は400Vとする。
【0050】
この回路定数において、JIS C 5381-11に規定するSPD3のクラスIII試験のコンビネーション波形である電流波形8/20μs、電圧波形1.2/50μs、公称放電電流In:5kA印加時における回路解析シミュレーションの応答特性を
図3に示す。
図3には、(a)SPD分離装置1全体、(b)SPC22であるGDT、(c)電流遮断器20である電流ヒューズ及び(d)抵抗21のそれぞれにおける電圧と電流波形を示している。
【0051】
SPC22であるGDTは、104nsで放電している。放電時における各端子電圧は、それぞれGDT:800V、電流ヒューズ:14V、抵抗:786Vである。
【0052】
また、GDTは直流放電開始電圧400Vであるが、サージ応答における放電電圧はV-t特性を有するため急峻な波形が加わると上昇し、本実施例では、電流ヒューズ14V及び抵抗786Vの電圧降下の和である約800VでGDTが放電し、放電した104ns以降はサージ電流の殆どがGDTを流れている。
【0053】
また、
図3(c)及び
図3(d)に示すように、電流遮断器20である電流ヒューズ20a及び抵抗21には、SPC22であるGDTが放電する104nsまで電流が流れ、その最大電流値は約16.7Aである。この時点における電流ヒューズ20aを流れるサージ電流の電流二乗時間積I
2tは2.9×10
―5A
2sであり、ヒューズ溶断電流二乗時間積I
2tの公称値である0.3A
2sに比べて十分小さいため、電流ヒューズ20aはサージ電流で溶断しない。電流ヒューズ20aを流れるサージ電流の電流二乗時間積I
2t値は、印加されるサージ電流のレベルによって変化する。
【0054】
したがって、想定される全入力サージ電流の範囲において、電流ヒューズ20aに加わるサージ電流の電流二乗時間積I2t値が、ヒューズ溶断電流二乗時間積I2tの公称値より小さく設計することが重要である。
【0055】
本実施例では、分離装置1のサージ電流耐量は、使用するGDTの最大放電電流耐量に等しいため、その選定により公称放電電流In:10kAが実現できた。
【0056】
一方、SPD3が故障した際には電源の短絡電流が電流ヒューズ20aに流れ、定格電流1Aで電流ヒューズ20aが溶断する。電流ヒューズ20aの定格電流は、配電系に設置される上位の電流遮断器4の最小遮断容量である20Aより小さいため、十分な動作協調特性を得ることができる。
【0057】
このように、本実施例では、相反する小定格電流1Aと大サージ電流耐量10kA(8/20μs)が、両立できることが示された。
【符号の説明】
【0058】
1 サージ防護デバイス分離装置
2 被保護装置
3 サージ防護デバイス
20 電流遮断器
21 抵抗
22 電圧スイッチング形サージ防護部品