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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006767
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】シャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20250109BHJP
   B05B 1/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A47K3/28
B05B1/18 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107752
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾関 康弘
【テーマコード(参考)】
2D132
4F033
【Fターム(参考)】
2D132FA03
2D132FC04
2D132FJ11
2D132FJ21
2D132FK03
4F033AA11
4F033BA04
4F033CA12
4F033DA05
4F033EA01
4F033FA00
4F033GA10
4F033KA02
4F033LA12
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】快適な浴び心地を実現できるシャワーヘッドを提供する。
【解決手段】シャワーヘッドは、流体が流通可能な流路を有するヘッド本体と、ヘッド本体に取り付けられ、流路から供給された流体をミスト状とするミスト発生部材と、を備え、ミスト発生部材が、ノズル部材と、ノズル部材に装着される装着部材と、を備え、ノズル部材が、流路に面する一面と、一面とは異なる他面と、一面に第1の流入口を有し、他面に吐出口を有するミスト形成孔であって、一面を基準として凹み、第1の流入口の開口縁から他面に向かって延びる内面で規定される凹部と、内面に第2の流入口を有し、第2の流入口から吐出口まで延びるノズル孔と、を有するミスト形成孔と、内面に配され、流路およびノズル孔と連通する溝と、を有し、装着部材が凹部の内部に収容されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通可能な流路を有するヘッド本体と、
前記ヘッド本体に取り付けられ、前記流路から供給された前記流体をミスト状とするミスト発生部材と、を備え、
前記ミスト発生部材が、ノズル部材を備え、
前記ノズル部材が、
前記流路に面する一面と、
前記一面とは異なる他面と、
前記一面に第1の流入口を有し、前記他面に吐出口を有するミスト形成孔であって、
前記一面を基準として凹み、前記第1の流入口の開口縁から前記他面に向かって延びる内面で規定される凹部と、
前記内面に第2の流入口を有し、前記第2の流入口から前記吐出口まで延びるノズル孔と、
を有するミスト形成孔と、
前記内面に配され、前記流路および前記ノズル孔と連通する溝と、
を有し、
前記凹部の内部に、前記内面に接する当接面を有する装着部が収容されている、
シャワーヘッド。
【請求項2】
前記内面が、
前記第2の流入口を有する底面と、
前記底面から前記第1の流入口まで延びる内周面と、
を有し、
前記溝が、
前記内周面に配される第1の溝と、
前記底面に配され、前記第1の溝および前記ノズル孔に連通する第2の溝と、
を有する、
請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項3】
前記第2の溝の幅が、前記第1の溝の幅よりも小さい、
請求項2に記載のシャワーヘッド。
【請求項4】
前記第2の溝が、前記第2の流入口の開口縁を構成する曲線の接線に沿って延びている、
請求項2または請求項3に記載のシャワーヘッド。
【請求項5】
前記第1の溝が、前記底面に対して垂直に延びている、
請求項2または請求項3に記載のシャワーヘッド。
【請求項6】
前記第1の溝および前記第2の溝を、それぞれ4本以上有する、
請求項2または請求項3に記載のシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、シャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミスト状の水を吐出する機能を備えたシャワーヘッドが知られている。水をミスト状にするための技術として、例えば、散水ノズル板に形成されるミスト絞り穴(ミスト形成孔)の内部に、らせん状の渦巻き面を有するミストガイドを装着する技術が提案されている(特許文献1)。このような構成によれば、ミストガイドの渦巻き面とミスト絞り穴の内周面との間の隙間が、らせん状のミスト流路となる。水がミスト流路を流れ下ることでらせん流が発生し、このらせん流が吐出口から噴射されることで、水が微粒子化し、ミストとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-11034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成のシャワーヘッドでは、ミストガイドの寸法が安定しないため、ミストに含まれる液滴の粒径がばらついて、粒径が大きい液滴が発生することがある。それにより、浴び心地が低下してしまうことがある。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本明細書に開示されるシャワーヘッドは、流体が流通可能な流路を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体に取り付けられ、前記流路から供給された前記流体をミスト状とするミスト発生部材と、を備え、前記ミスト発生部材が、ノズル部材を備え、前記ノズル部材が、前記流路に面する一面と、前記一面とは異なる他面と、前記一面に第1の流入口を有し、前記他面に吐出口を有するミスト形成孔であって、前記一面を基準として凹み、前記第1の流入口の開口縁から前記他面に向かって延びる内面で規定される凹部と、前記内面に第2の流入口を有し、前記第2の流入口から前記吐出口まで延びるノズル孔と、を有するミスト形成孔と、前記内面に配され、前記流路および前記ノズル孔と連通する溝と、を有し、前記凹部の内部に、前記内面に接する当接面を有する装着部が収容されている。
【0007】
上記の構成によれば、溝を精度よく形成させることができ、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させるための溝の設計が容易となる。これにより、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させることができ、快適な浴び心地を実現できる。
【0008】
(2)上記(1)に記載のシャワーヘッドにおいて、前記内面が、前記第2の流入口を有する底面と、前記底面から前記第1の流入口まで延びる内周面と、を有し、前記溝が、前記内周面に配される第1の溝と、前記底面に配され、前記第1の溝および前記ノズル孔に連通する第2の溝と、を有していても構わない。
【0009】
このような構成によれば、第1の溝と第2の溝との形状を異ならせることによって、求められる性能に応じた溝の形状を容易に設計することができ、設計の自由度が高まる。
【0010】
(3)上記(2)に記載のシャワーヘッドにおいて、前記第2の溝の幅が、前記第1の溝の幅よりも小さくても構わない。
【0011】
このような構成によれば、第1の溝の幅よりも第2の溝の幅が狭いことにより、流路が絞られるため、流体は第2の溝の内部を高速で通過し、ノズル孔に供給される。これにより、ノズル孔の内部で流体をより高速で旋回させることができ、粒子サイズの小さなミストを発生させることができる。
【0012】
(4)上記(2)または(3)に記載のシャワーヘッドにおいて、前記第2の溝が、前記第2の流入口の開口縁を構成する曲線の接線に沿って延びていても構わない。
【0013】
このような構成によれば、流体が第1の溝からノズル孔の内面に沿って流入するため、ノズル孔の内部で流体をより円滑に旋回させることができる。これにより、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させることができる。
【0014】
(5)上記(2)から(4)のいずれか1つに記載のシャワーヘッドにおいて、前記第1の溝が、前記底面に対して垂直に延びていても構わない。
【0015】
このような構成によれば、例えば第1の溝が底面に対して斜めに延びている場合と比較して、ノズル部材を製造するための金型の作成が容易となり、第1の溝をいっそう精度よく形成させることができる。これにより、粒子サイズの小さなミストを、より安定的に発生させることができる。
【0016】
(6)上記(2)から(5)のいずれか1つに記載のシャワーヘッドが、前記第1の溝および前記第2の溝を、それぞれ4本以上有していても構わない。
【0017】
このような構成によれば、流体が四方からノズル孔の内部に流入することとなるため、ノズル孔の内部で流体をより円滑に旋回させることができる。これにより、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させることができる。また、各ミスト形成孔に流れ込む流体の流量を十分な量とすることができ、シャワーヘッドからの吐出量を確保できる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、シャーヘッドおよびその吐出方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態のシャワーヘッドの斜視図
図2】実施形態のシャワーヘッドの分解斜視図
図3】実施形態のシャワーヘッドの部分拡大正面図
図4図3のIV-IV線断面図
図5】実施形態のノズル部材においてミスト形成孔の周辺部分を示す部分拡大図
図6】実施形態のミスト発生部材において装着凹部の内部に装着部材が装着された状態を示す部分拡大図
図7図3のVII-VII線断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.実施形態:
A-1.シャワーヘッド10の構成:
実施形態を、図1から図7を参照しつつ説明する。本実施形態のシャワーヘッド10は、複数の放出モードに対応する複数の流路を切り替えて、水(流体の一例)の放出状態を変更できるように構成されている。複数の放出モードは、例えば「ミストモード」「ストレートモード」「ピュアストレートモード」「ジェットモード」「マッサージモード」である。ミストモードは、ミスト状の水を放出するモードであり、ストレートモードは、ミストモードよりも水圧が高く、勢いのある水を放出するモードであり、ピュアストレートモードは、ストレートモードよりも密度の高い水を放出するモードである。ジェットモードは、最も水圧の高い水を放出するモードであり、マッサージモードは、断続的に水を放出するモードである。シャワーヘッド10は、放出モードとして「ミストモード」が選択されているときにミスト状の水を吐出する機能を備えている。本実施形態において、「水」は、温水と冷水とを含む。
【0021】
(シャワーヘッド10の全体構成)
シャワーヘッド10は、図2に示すように、ヘッド本体100と、ヘッド本体100に取り付けられ、ミストを発生するためのミスト発生部材500と、複数の放出モードを切り替えるための操作リング600と、カバー700と、を備えている。
【0022】
ヘッド本体100は、図2に示すように、カバー部材200と、カバー部材200の内部に固定される固定流路部材300と、固定流路部材300に対して回転可能に組み付けられる可動流路部材400と、を備えている。固定流路部材300と可動流路部材400とは、水が流通可能な流路を構成する部材である。可動流路部材400と、ミスト発生部材500と、カバー700とは、操作リング600の内側に、固定流路部材300に近い側からこの順に配されており、操作リング600の回転に連動して、固定流路部材300に対して回転するように構成されている。なお、以下の説明では、シャワーヘッド10においてカバー700が配されている側を前方として説明する。
【0023】
(カバー部材200)
カバー部材200は、図2および図4に示すように、カバー本体210と、カバー本体210に連なるグリップ部220と、を備えている。カバー部材200の材質としては、例えば、ASA樹脂(アクリロニトリル‐スチレン‐アクリレート共重合樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)等の合成樹脂、ステンレス等の金属、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成ゴムが挙げられる。カバー本体210は、前側に開口部を有するドーム形をなしている。グリップ部220は、略円筒状をなし、内部に通水管230が収容されている。通水管230は、シャワーホースを介して給湯器に接続されている。
【0024】
(固定流路部材300)
固定流路部材300は、図2に示すように、ベース部310と、取付軸320と、継手部330と、を備えている。固定流路部材300の材質としては、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)等の合成樹脂、ステンレス等の金属、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成ゴムが挙げられる。ベース部310は、全体として厚みのある円盤状をなしており、カバー本体210の内部に固定されている。取付軸320は、円柱状をなし、ベース部310の中央から前方に突出している。継手部330は、筒状をなし、ベース部310から延びて通水管230に接続されている。図4に示すように、取付軸320は、前端面に開口するねじ孔322を有している。
【0025】
固定流路部材300は、図4に示すように、内部にベース流路340を有している。ベース流路340は、継手部330の内部空間と連通しており、図2に示すように、固定流路部材300の前面に開口するベース流出口340outを有している。ベース流出口340outの周囲には、図2に示すように、ゴム製のパッキン350が配されている。
【0026】
(可動流路部材400)
可動流路部材400は、図2に示すように、ベース部310の前方に配されている。可動流路部材400の材質としては、例えば、ASA樹脂(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合樹脂)等の合成樹脂、ステンレス等の金属、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成ゴムが挙げられる。可動流路部材400は、流路形成部410と、抜け止め部440と、を備えている。
【0027】
流路形成部410は、図2に示すように、全体として厚みのある円盤状をなしており、中央に貫通孔411を有する。図4に示すように、貫通孔411に取付軸320が挿入されることにより、可動流路部材400が、固定流路部材300に対して、取付軸320を回転中心として回転可能に支持されている。流路形成部410は、上記した複数の放出モードのそれぞれに対応する複数の流路を有している。複数の流路は、図7に示すように、放出モードとして「ミストモード」が選択されているときに水が流れるミスト流路412を含む。ミスト流路412は、ベース部310の方を向く後面にミスト用流入口(図示せず)を有し、その反対側の前面に複数のミスト流出口412outを有している。
【0028】
抜け止め部440は、図2に示すように、流路形成部410の前面からミスト発生部材500に向かって突出する円柱状の基部441と、基部441からミスト発生部材500に向かって突出し、基部441よりも外径の小さな円柱状の抜け止め突起442と、を備えている。ミスト流出口412outは、各抜け止め部440の周りに複数個ずつが配されている。
【0029】
(ミスト発生部材500)
ミスト発生部材500は、図2に示すように、可動流路部材400の前方に配されている。ミスト発生部材500の材質としては、例えば、ASA樹脂(アクリロニトリル‐スチレン‐アクリレート共重合樹脂)などの合成樹脂、ステンレス等の金属、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成ゴムが挙げられる。ミスト発生部材500は、ノズル部材510と、ノズル部材510に装着される複数の装着部材570(装着部の一例)と、を備えている。
【0030】
ノズル部材510は、図2図4図5および図7に示すように、ノズル板511と、複数のミスト突部520と、複数のミスト筒512と、を備えている。ノズル板511は、全体として円板状をなし、中央に貫通孔515を有する。ミスト突部520は、ノズル板511から前方に突出している。ミスト筒512は、円筒状をなし、ノズル板511から可動流路部材400に向かって延びている。
【0031】
複数のミスト突部520は、図2および図3に示すように、ノズル部材510の外周縁に沿って円を描くように並んで配されている。各ミスト突部520は、図7に示すように、ノズル板511に近い基端部が円柱状をなしており、基端部よりも前側の先端部が、ノズル板511から離れるほど径が小さくなる略円錐台状をなしている。
【0032】
複数のミスト筒512のそれぞれは、複数のミスト突部520のそれぞれに対応する位置に配されている。図7に示すように、各ミスト筒512は、抜け止め部440よりも一回り大きな筒状をなしており、内部に抜け止め部440を受け入れ可能となっている。ミスト筒512の後端縁は、可動流路部材400の前面に接している。各ミスト筒512の開口縁は、各抜け止め部440の周りに配される複数のミスト流出口412outを囲むように位置しており、ミスト流出口412outから流出した水がミスト筒512の内部に流れ込むようになっている。各ミスト筒512の内部には、ノズル板511に隣接する位置に、装着部材570を保持するための保持部513が配されている。保持部513において、可動流路部材400に対向する対向面514(一面の一例)は、ミスト流路412(より具体的には、ミスト流出口412out)に面している。
【0033】
ノズル部材510は、図5および図7に示すように、複数のミスト形成孔530を有している。各ミスト形成孔530は、対向面514に第1の流入口531を有し、ミスト突部520の先端面521(他面の一例)に吐出口533を有する貫通孔であり、対向面514を基準として凹む装着凹部540(凹部の一例)と、装着凹部540に連通するミストノズル孔550(ノズル孔の一例)とで構成されている。各ミスト形成孔530は、ミスト筒512の内部空間を介してミスト流路412と連通している。給湯器が着火可能な程度の吐水量を確保するという観点からは、ノズル部材510が10個以上のミスト形成孔530を有することが好ましい。
【0034】
装着凹部540は、対向面514に平行な底面541(内面の一例)と、底面541の周縁から第1の流入口531の開口縁まで延び、底面541に対して垂直な第1の内周面542(内面、内周面の一例)と、で規定される凹部である。ミストノズル孔550は、底面541に配され、装着凹部540の内径よりも小さい径を有する第2の流入口532を有しており、第2の流入口532の開口縁から吐出口533の開口縁まで延びる第2の内周面551によって規定される孔である。ミストノズル孔550は、第2の流入口532から延び、内径が一定の大径部550Aと、吐出口533に連なり、内径が一定であり、かつ、大径部550Aよりも内径が小さい小径部550Cと、大径部550Aと小径部550Cとを接続し、大径部550Aから小径部550Cに向かって縮径する縮径部550Bと、を有している。吐出口533の内径は、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させるという観点からは小さい方が好ましく、例えば1.2mm以下であることが好ましい。
【0035】
図5および図7に示すように、第1の内周面542には、複数(本実施形態では4つ)の第1の溝543(溝の一例)が配され、底面541には、複数(本実施形態では4つ)の第2の溝544(溝の一例)が配されている。
【0036】
複数の第1の溝543のそれぞれは、第1の流入口531の開口縁から底面541の外周縁まで、底面541に対して垂直に延びる溝である。複数の第2の溝544は、底面541の外周縁から第2の流入口532の開口縁まで直線的に延びる溝であって、複数の第1の溝543のそれぞれと接続されている。図5に示すように、複数の第2の溝544は、それぞれ、第2の流入口532の開口縁を構成する曲線の接線Tに沿って延びている。第1の溝543の2つの側縁間の距離で規定される第1の溝543の幅W1は、第2の溝544の2つの側縁間の距離で規定される第2の溝544の幅W2よりも大きくなっている。図7に示すように、複数の第1の溝543のそれぞれは、複数のミスト流出口412outからまっすぐ前進した位置に配されており、水が各ミスト流出口412outから第1の溝543の内部にまっすぐに流れ込むようになっている。
【0037】
装着部材570は、装着凹部540の内部に圧入されている。装着部材570の材質としては、例えば、ASA樹脂(アクリロニトリル‐スチレン‐アクリレート共重合樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)等の合成樹脂、ステンレス等の金属、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成ゴムが挙げられる。装着部材570は、図6および図7に示すように、円柱状をなし、底面541に密着する前面571(当接面)と、第1の内周面542に密着する側面573(当接面)と、を有している。装着部材570は、中央に、前面571とは反対側の後面572に開口する抜け止め孔574を有している。抜け止め孔574の内部に抜け止め突起442の先端部が挿入されることで、装着部材570の装着凹部540からの脱落が抑止されている。本実施形態では、装着凹部540の内部に配される装着部が、独立した部材である装着部材570となっており、抜け止め部441によって押圧されているので、装着部材570を底面541にしっかりと密着させることができる。
【0038】
(カバー700)
カバー700は、図2に示すように、全体として円板状をなし、ミスト発生部材500の前方に配されている。カバー700の材質としては、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)などの合成樹脂、ステンレス等の金属、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成ゴムが挙げられる。カバー700の前面には、美観を高めるために、めっき加工が施されていても構わない。カバー700は、複数のノズル突部を挿通可能な複数のノズル挿通孔を有する。図2および図3に示すように、ノズル挿通孔は、複数のミスト用挿通孔701を含む。各ミスト用挿通孔701の内部には、各ミスト突部520が挿入されている。
【0039】
(操作リング600)
操作リング600は、図2および図4に示すように、ヘッド本体100の外径と略等しい外径を有するリング状をなしている。操作リング600の材質としては、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)などの合成樹脂、ステンレス等の金属、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成ゴムが挙げられる。操作リング600は、ヘッド本体100の開口縁に隣接して配され、可動流路部材400の一部と、ミスト発生部材500と、カバー700と、を囲んでいる。
【0040】
取付軸320には、ねじ頭SHとねじ部STとを有するねじSがねじ付けられている。ねじ頭SHと取付軸320との間には、取付軸320よりも一回り大きな外径を有するワッシャWSが挟み込まれており、可動流路部材400における貫通孔411の周縁部分にワッシャWSが係合することにより、可動流路部材400が取付軸320に対して回転可能に取り付けられている。可動流路部材400、ミスト発生部材500、およびカバー700が、操作リング600の回転に連動して回転するように構成されている。
【0041】
A-2.シャワーヘッド10の動作:
ユーザが水栓を開栓操作すると、給湯器から供給される水がシャワーホースおよび通水管230を通ってベース流路340内に供給される。
【0042】
ユーザによって操作リング600が回転操作されると、可動流路部材400、ミスト発生部材500、およびカバー700が、操作リング600の回転に連動して、固定流路部材300に対して回転する。操作リング600は、各放出モードのそれぞれに対応する複数の指定位置の間で変位可能となっており、これにより、複数の放出モードの切り替えが行われる。例えば、操作リング600が、ミストモードを指定する位置に回転操作された場合には、ミスト用流入口が、ベース流出口340outの位置と整合する位置に配され、他の流路の流入口は、パッキン350によって閉塞される。これにより、水がミスト流路412に流入する。図7に実線で示すように、ミスト流路412を通過した水は、ミスト流出口412outからミスト筒512の内部に進入し、第1の溝543、第2の溝544、およびミストノズル孔550の内部を順に通過して吐出口533から外部に排出される。
【0043】
第1の溝543の幅W1は、第2の溝544の幅W2よりも大きくなっている。つまり、第2の溝544は、第1の溝543およびミストノズル孔550よりも狭い絞り流路となっている。絞り流路である第2の溝544の内部を通過した水がミストノズル孔550内に流入すると、水はミストノズル孔550の内部を、渦を巻きながら流れる。高速で旋回しながら吐出口533から吐出された水は、微粒子化し、ミストとなる。
【0044】
ここで、従来のように、ミスト絞り孔の内部に装着されるミストガイドに流路形成のための溝が配される場合、このミストガイドが小さな部材であるため、加工精度を保つことが難しく、溝の寸法にばらつきが生じやすい。このような溝の寸法のばらつきに起因して、ミストに含まれる液滴の粒径がばらつき、粒径が大きい液滴が発生することがある。また、シャワーヘッド10から吐出される水の流量にもばらつきが生じることがある。これに対し、本実施形態では、ノズル部材510に第1の溝543および第2の溝544が配されている。ある程度の大きさを有するノズル部材510に溝543、544を設ける加工を行うことは、小さなミストガイドに溝を設けるよりも容易であるから、溝543、544を精度よく形成できる。これにより、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させることができ、快適な浴び心地を実現できる。また、シャワーヘッド10から吐出される水の流量のばらつきを抑え、設計した流量の水を吐出させることが容易となる。
【0045】
給湯器から供給される温水をシャワーヘッドから吐出する場合、給湯器が着火するために、一定以上の流量で水が吐出される必要がある。各ミスト形成孔530に流れ込む水の量を十分に確保し、給湯器が着火可能な程度の吐水量を確保するという観点からは、ノズル部材510が有する第1の溝543および第2の溝544は、それぞれ4本以上であることが好ましい。
【0046】
また、第2の溝544が、第2の流入口532の開口縁を構成する曲線の接線Tに沿って延びている。このような構成によれば、水が四方から、ミストノズル孔550の内面に沿って流入するから、ミストノズル孔550の内部で水がより円滑に旋回する。これにより、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させることができる。
【0047】
また、第1の溝543が、底面541に対して垂直に延びている。このような構成によれば、例えば溝が底面に対して斜めに延びている場合と比較して、ノズル部材510を製造するための金型の作成が容易となり、第1の溝543をいっそう精度よく形成させることができる。これにより、粒子サイズの小さなミストを、より安定的に発生させることができる。
【0048】
A-3.本実施形態の効果:
以上のように本実施形態によれば、シャワーヘッド10は、水が流通可能なミスト流路412を有するヘッド本体100と、ヘッド本体100に取り付けられ、ミスト流路412から供給された水をミスト状とするミスト発生部材500と、を備え、ミスト発生部材500が、ノズル部材510備え、ノズル部材510が、ミスト流路412に面する対向面514と、対向面514とは異なる先端面521と、対向面514に第1の流入口531を有し、先端面521に吐出口533を有するミスト形成孔530であって、対向面514を基準として凹み、第1の流入口531の開口縁から先端面521に向かって延びる底面541および第1の内周面542で規定される装着凹部540と、底面541に第2の流入口532を有し、第2の流入口532から吐出口533まで延びるミストノズル孔550と、を有するミスト形成孔530と、底面541および第1の内周面542にそれぞれ配され、ミスト流路412およびミストノズル孔550と連通する第1の溝543および第2の溝544と、を有し、装着凹部540の内部に、底面541に接する前面571と、第1の内周面542に接する側面573と、を有する装着部材570が収容されている。
【0049】
上記の構成によれば、ミスト流路412から供給された水をミスト状とするための溝543、544を精度よく形成させることができ、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させるための溝543、544の設計が容易となる。このため、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させることができ、快適な浴び心地を実現できる。
【0050】
また、第1の溝543と第2の溝544との形状を変えることによって、求められる性能に応じた溝543、544の形状を容易に設計することができ、設計の自由度が高まる。
【0051】
また、第2の溝544の幅W2が、第1の溝543の幅W1よりも小さい。
【0052】
このような構成によれば、第1の溝543の幅W1よりも第2の溝544の幅W2が狭いことにより、流路が絞られるため、水は第2の溝544の内部を高速で通過し、ミストノズル孔550に供給される。これにより、ミストノズル孔550の内部で水をより高速で旋回させることができ、粒子サイズの小さなミストを発生させることができる。
【0053】
また、第2の溝544が、第2の流入口532の開口縁を構成する曲線の接線Tに沿って延びている。
【0054】
このような構成によれば、水が第1の溝543からミストノズル孔550の内面に沿って流入するため、ミストノズル孔550の内部で水をより円滑に旋回させることができる。これにより、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させることができる。
【0055】
また、第1の溝543が、第1の内周面542に対して垂直に延びている。
【0056】
このような構成によれば、例えば第1の溝543が第1の内周面542に対して斜めに延びている場合と比較して、ノズル部材510を製造するための金型の作成が容易となり、第1の溝543をいっそう精度よく形成させることができる。これにより、粒子サイズの小さなミストを、より安定的に発生させることができる。
【0057】
また、ノズル部材510が、第1の溝543および第2の溝544を、それぞれ4本以上有する。
【0058】
このような構成によれば、水が四方からミストノズル孔550の内部に流入することとなるため、ミストノズル孔550の内部で水をより円滑に旋回させることができる。これにより、粒子サイズの小さなミストを安定的に発生させることができる。また、各ミスト形成孔530に流れ込む水の流量を十分な量とすることができ、シャワーヘッド10からの吐出量を確保できる。
【0059】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
(1)上記実施形態では、シャワーヘッド10に設定されている複数の放出モードとして、「ミストモード」「ストレートモード」「ピュアストレートモード」「ジェットモード」「マッサージモード」を例示したが、放出モードの設定は任意である。例えば、シャワーヘッドが有する放出モードの数は4つ以下でもよいし、6つ以上でも構わない。また、シャワーヘッドが有する放出モードの種類には、バブルモードや止水モードが含まれていても構わない。
(2)上記実施形態では、第1の溝543、第2の溝544がそれぞれ4本であったが、第1の溝543、第2の溝544はそれぞれ3本以下、または5本以上であっても構わない。
(3)上記実施形態では、第2の溝544の幅W2が、第1の溝543の幅W1よりも小さくなっていたが、例えば、第1の溝の幅と第2の溝の幅は互いに等しくても構わない。また、第2の溝の幅が第1の溝の幅よりも大きくなっていても構わない。
(4)ミスト形成孔の数や配置は任意である。
(5)上記実施形態では、第1の溝543および第2の溝544は、それぞれ直線状に延びていたが、溝は、直線状に延びていなくてもよく、例えば湾曲していても構わない。
(6)上記実施形態では、装着凹部540が、底面541と第1の内周面542とで規定される凹部であったが、凹部の形状は任意であり、例えば半球状の内面で規定される凹部であってもよく、前方に向かって徐々に縮径する凹部であっても構わない。
(7)上記実施形態では、ノズル部材510が第1の溝543と第2の溝544を有していたが、第2の流入口からノズル孔まで延びる溝が、第1の溝と第2の溝とに分かれていなくても構わない。
(8)上記実施形態では、可動流路部材400と、ミスト発生部材500と、カバー700とが、操作リング600の回転に連動して、固定流路部材300に対して回転するように構成されていたが、ミスト発生部材500とカバー700との少なくとも1つが、ヘッド本体100に対して回転しない構成でも構わない。例えば、可動流路部材400だけがヘッド本体100に対して回転する構成でもよいし、可動流路部材400およびミスト発生部材500だけがヘッド本体100に対して回転する構成でも構わない。
(9)上記実施形態では、複数の第1の溝543のそれぞれが、複数のミスト流出口412outからまっすぐ前進した位置に配されており、水が各ミスト流出口412outから第1の溝543の内部にまっすぐに流れ込むようになっていたが、第1の溝の位置がミスト流出口に対してずれて配されており、水がミスト流出口から第1の溝の内部にまっすぐに流れ込まないように構成されていても構わない。
(10)ミスト発生部材は、例えばシリコーンゴムなどの軟質の材料により形成されていても構わない。ミスト形成孔が詰まった際に、ミスト発生部材を手で変形させてミスト形成孔の内部を掃除することが可能になるためである。
(11)上記実施形態では、ミストノズル孔550が、大径部550Aと、縮径部550Bと、小径部550Cと、を有していたが、ミストノズル孔の形状は任意であり、例えば、大径部と縮径部とに代えて、第2の流入口から延び、ドーム状の内周面によって規定されるドーム部を有していても構わない。ドーム部の内周面と小径部の内周面とで形成される角部には、面取りが施されていてもよく、面取りが施されていなくても構わない。
(12)上記実施形態では、装着部が、独立した部材である装着部材570であったが、装着部は、例えばヘッド本体の流路形成部からノズル部材に向かって突出し、凹部の内部に圧入される突部であっても構わない。このような構成によれば、部品点数を削減できる。
【符号の説明】
【0060】
10:シャワーヘッド 100:ヘッド本体 200:カバー部材 210:カバー本体 220:グリップ部 230:通水管 300:固定流路部材 310:ベース部 320:取付軸 322:ねじ孔 330:継手部 340:ベース流路 340out:ベース流出口 350:パッキン 400:可動流路部材 410:流路形成部 411:貫通孔 412:ミスト流路 412out:ミスト流出口 440:抜け止め部 441:基部 442:抜け止め突起 500:ミスト発生部材 510:ノズル部材 511:ノズル板 512:ミスト筒 513:保持部 514:対向面(一面) 515:貫通孔 520:ミスト突部 521:先端面(他面) 530:ミスト形成孔 531:第1の流入口 532:第2の流入口 533:吐出口 540:装着凹部(凹部) 541:底面(内面) 542:第1の内周面(内面、内周面) 543:第1の溝(溝) 544:第2の溝(溝) 550:ミストノズル孔(ノズル孔) 551:第2の内周面 570:装着部材(装着部) 571:前面(当接面) 572:後面 573:側面(当接面) 574:抜け止め孔 600:操作リング 700:保護カバー 701:ミスト用挿通孔 S:ねじ SH:ねじ頭 ST:ねじ部 T:接線 W1:第1の溝の幅 W2:第2の溝の幅 WS:ワッシャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7