IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社カネカの特許一覧

特開2025-67874再生コラーゲン繊維処理方法、並びに改質再生コラーゲン繊維及びそれを含む頭飾製品
<>
  • 特開-再生コラーゲン繊維処理方法、並びに改質再生コラーゲン繊維及びそれを含む頭飾製品 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025067874
(43)【公開日】2025-04-24
(54)【発明の名称】再生コラーゲン繊維処理方法、並びに改質再生コラーゲン繊維及びそれを含む頭飾製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20250417BHJP
   D06M 15/233 20060101ALI20250417BHJP
   D06M 11/45 20060101ALI20250417BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20250417BHJP
   A41G 3/00 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
D06M15/263
D06M15/233
D06M11/45
D06M11/83
A41G3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024178371
(22)【出願日】2024-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2023177063
(32)【優先日】2023-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】川村 光平
(72)【発明者】
【氏名】大平 和宇
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031BA04
4L031BA13
4L033AC15
4L033CA13
4L033CA18
(57)【要約】
【課題】高分子化合物を繊維内に浸透可能な再生コラーゲン繊維処理方法を提供すること。
【解決手段】下記工程(i)を含む、再生コラーゲン繊維処理方法。
工程(i) 成分(A)を含有してなる繊維処理剤に、下記式(1)により算出される水中繊維膨潤率が200%以上である再生コラーゲン繊維を浸漬する工程
(A)カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体であって、酸価が100mgKOH/g以上であり、かつ重量平均分子量が1500~15000である共重合体
水中繊維膨潤率(%)=[(w1-w2)/w2]×100 (1)
〔式中、
w1は、イオン交換水100gを充填した容器に繊維1.0gを入れ容器を密閉し、40℃のウォーターバスに容器ごと30分間浸漬した後、繊維を容器から取り出し、遠心力220[×g]にて1分間遠心脱水した後に測定した繊維の質量(g)を示す。
w2は、質量(w1)を測定した繊維を濾紙上に載置し105℃にて3時間乾燥した後に測定した繊維の質量を示す。〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(i)を含む、再生コラーゲン繊維処理方法。
工程(i) 成分(A)を含有してなる繊維処理剤に、下記式(1)により算出される水中繊維膨潤率が200%以上である再生コラーゲン繊維を浸漬する工程
(A)カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体であって、酸価が100mgKOH/g以上であり、かつ重量平均分子量が1500~15000である共重合体
水中繊維膨潤率(%)=[(w1-w2)/w2]×100 (1)
〔式中、
w1は、イオン交換水100gを充填した容器に繊維1.0gを入れ容器を密閉し、40℃のウォーターバスに容器ごと30分間浸漬した後、繊維を容器から取り出し、遠心力220[×g]にて1分間遠心脱水した後に測定した繊維の質量(g)を示す。
w2は、質量(w1)を測定した繊維を濾紙上に載置し105℃にて3時間乾燥した後に測定した繊維の質量を示す。〕
【請求項2】
前記再生コラーゲン繊維が、下記の成分(B)を含有する、請求項1に記載の再生コラーゲン繊維処理方法。
(B)多価金属、又はその塩若しくはその錯体
【請求項3】
成分(B)が、アルミニウム、又はその塩若しくはその錯体である、請求項2に記載の再生コラーゲン繊維処理方法。
【請求項4】
工程(i)の前に、家畜動物の床皮を原料とする不溶性コラーゲン繊維を可溶化処理して得られたコラーゲン水溶液を紡糸ノズル又はスリットを通して吐出し、無機塩水溶液に浸漬する再生コラーゲン繊維製造工程を含む、請求項1に記載の再生コラーゲン繊維処理方法。
【請求項5】
再生コラーゲン繊維中に、成分(A)を含有してなる、改質再生コラーゲン繊維。
(A)カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体であって、酸価が100mgKOH/g以上であり、かつ重量平均分子量が1500~15000である共重合体
【請求項6】
成分(A)の含有量が、0.1~70質量%である、請求項5に記載の改質再生コラーゲン繊維。
【請求項7】
さらに、下記の成分(B)を含有する、請求項5に記載の改質再生コラーゲン繊維。
(B)多価金属、又はその塩若しくはその錯体
【請求項8】
成分(B)がアルミニウム、又はその塩若しくはその錯体である、請求項7に記載の改質再生コラーゲン繊維。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の再生コラーゲン繊維処理方法によって、再生コラーゲン繊維を処理する工程を含む、改質再生コラーゲン繊維の製造方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の再生コラーゲン繊維処理方法によって、再生コラーゲン繊維を処理する工程を含む、頭飾製品の製造方法。
【請求項11】
請求項5~8のいずれか1項に記載の改質再生コラーゲン繊維を構成要素として含む、頭飾製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生コラーゲン繊維処理方法に関し、好適にはかつら、エクステンション等の頭飾製品等繊維製品に用いられる再生コラーゲン繊維の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生コラーゲン繊維は、一般に、合成繊維とは異なって、天然素材から来る自然な風合いや外観を有する。再生コラーゲン繊維は、通常、酸可溶性コラーゲンあるいは不溶性コラーゲンをアルカリや酵素で可溶化して紡糸原液とし、これを紡糸ノズルから凝固浴に吐出して繊維化した後、最終工程において繊維状コラーゲンを乾燥することにより製造される。
【0003】
しかし、再生コラーゲン繊維は、一般的に、合成繊維に比べて親水性が高いため吸水率が高く、多くの水を含んだ状態においては機械的強度が極めて低い。このため、洗浄時には高い吸水率のために機械強度が著しく低下し、その後の乾燥時に破断するなど、頭飾製品等繊維製品としての適性低下につながっている。また、再生コラーゲン繊維には、耐熱性の低さという問題もあり、例えば、ヘアアイロン等を使用した熱セットにおいては、人毛と同じような高い温度でセットした場合には収縮や縮れを発生し見栄えを損なってしまう。さらに、プラスチック製の合成繊維ではアイロン等による熱セット時における形状がその後の洗浄を経ても記憶され続ける(熱形状記憶能がある)が、再生コラーゲン繊維は、アイロン等による熱セット時における形状がその後の一度の洗浄で失われてしまう(熱形状記憶能がない)ため、従来のプラスチック製の合成繊維に比べて形状セットの自由度の観点で劣る部分があった。
【0004】
そこで、再生コラーゲン繊維等の天然由来繊維における上記した課題を解決すべく、種々の検討が行われている。例えば、羊毛を少なくとも10重量%含有する布帛において、羊毛をアクリル樹脂で架橋することで、洗濯時の摩擦による損耗(モモケ)を抑制できることが報告されている(特許文献1)。また、再生コラーゲン繊維を、特定のメチロール化合物と特定のフェノール化合物を含有する繊維処理剤で処理することで、再生コラーゲン繊維に特有の上記した耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能に関する課題を解決できることが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-260062号公報
【特許文献2】特開2022-103113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、高分子量化合物により繊維を改質する技術を提案するものであるが、羊毛に高分子化合物を架橋させて表面被覆しているに過ぎない。即ち、本願出願前において、再生コラーゲン繊維等の天然由来繊維内に高分子化合物が浸透しないという課題があったからである。一方、特許文献2は、高分子化合物により繊維を改質するために、再生コラーゲン繊維内にメチロール化合物及びフェノール化合物を浸透させて、繊維内でフェノール性水酸基を配位させるとともに、フェノール化合物同志をメチロール化合物で縮合させるという手法により、高分子化した縮合物によって繊維内部から改質する技術である。しかし、このような技術により繊維内部から改質するには、繊維内へのモノマーの浸透、繊維内でのモノマーの高分子化というステップが必須不可欠であるため、処理工程が煩雑になり、大量の再生コラーゲン繊維を処理することに限界があった。
したがって、本発明は、高分子化合物を繊維内に浸透可能な再生コラーゲン繊維処理方法及び改質再生コラーゲン繊維に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記した課題に鑑み研究を進めた結果、特定の特性基を含む高分子化合物が、特定性状を有する再生コラーゲン繊維に対して特異的に浸透し、しかも特定の特性基が繊維に配位するため、再生コラーゲン繊維に特有の上記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、次の〔1〕~〔11〕を提供するものである。
〔1〕 下記の工程(i)を含む、再生コラーゲン繊維処理方法。
工程(i) 下記の成分(A)を含有してなる繊維処理剤に、下記式(1)により算出される水中繊維膨潤率が200%以上である再生コラーゲン繊維を浸漬する工程
(A)カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物単量体由来の構造単位を含む共重合体であって、酸価が100mgKOH/g以上であり、かつ重量平均分子量が1500~15000である共重合体
水中繊維膨潤率(%)=[(w1-w2)/w2]×100 (1)
〔式中、
w1は、イオン交換水100gを充填した容器に繊維1.0gを入れ容器を密閉し、40℃のウォーターバスに容器ごと30分間浸漬した後、繊維を容器から取り出し、遠心力220[×g]にて1分間遠心脱水した後に測定した繊維の質量(g)を示す。
w2は、質量(w1)を測定した繊維を濾紙上に載置し105℃にて3時間乾燥した後に測定した繊維の質量を示す。〕
〔2〕 前記再生コラーゲン繊維が、下記の成分(B)を含有する、前記〔1〕に記載の再生コラーゲン繊維処理方法。
(B)多価金属、又はその塩若しくはその錯体
〔3〕 成分(B)が、アルミニウム、又はその塩若しくはその錯体である、前記〔2〕に記載の再生コラーゲン繊維処理方法。
〔4〕 工程(i)の前に、家畜動物の床皮を原料とする不溶性コラーゲン繊維を可溶化処理して得られたコラーゲン水溶液を紡糸ノズル又はスリットを通して吐出し、無機塩水溶液に浸漬する再生コラーゲン繊維製造工程を含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法。
〔5〕 再生コラーゲン繊維中に、下記の成分(A)を含有してなる、改質再生コラーゲン繊維。
(A)カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体であって、酸価が100mgKOH/g以上であり、かつ重量平均分子量が1500~15000である共重合体
〔6〕 成分(A)の含有量が、0.1~70質量%である、前記〔5〕に記載の改質再生コラーゲン繊維。
〔7〕 さらに、下記の成分(B)を含有する、前記〔5〕又は〔6〕に記載の改質再生コラーゲン繊維。
(B)多価金属、又はその塩若しくはその錯体
〔8〕 成分(B)が、アルミニウム、又はその塩若しくはその錯体である、前記〔7〕に記載の改質再生コラーゲン繊維。
〔9〕 前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法によって、再生コラーゲン繊維を処理する工程を含む、改質再生コラーゲン繊維の製造方法。
〔10〕 前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法によって、再生コラーゲン繊維を処理する工程を含む、頭飾製品の製造方法。
〔11〕 前記〔5〕~〔8〕のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維を構成要素として含む、頭飾製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の処理方法によれば、簡便な工程により、特定範囲内の分子量を有する高分子化合物を再生コラーゲン繊維内に浸透できるだけなく、保持させることもできる。本発明の改質再生コラーゲン繊維は、耐水性及び熱形状記憶能が優れており、かつら、エクステンション等の頭飾製品に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例19で得られた改質再生コラーゲン繊維断面の蛍光イメージング画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔再生コラーゲン繊維処理方法〕
本発明の再生コラーゲン繊維処理方法は、下記の工程(i)を含むものである。これにより、成分(A)の再生コラーゲン繊維への浸透及び配位が促進され、再生コラーゲン繊維に特有の課題である耐水性及び熱形状記憶能を改善することができる。
【0012】
工程(i) 下記の成分(A)を含有してなる繊維処理剤に、下記式(1)により算出される水中繊維膨潤率が200%以上である再生コラーゲン繊維を浸漬する工程
【0013】
(A)カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体であって、酸価が100mgKOH/g以上であり、かつ重量平均分子量が1500~15000である共重合体
【0014】
水中繊維膨潤率(%)=[(w1-w2)/w2]×100 (1)
【0015】
〔式中、
w1は、イオン交換水100gを充填した容器に繊維1.0gを入れ容器を密閉し、40℃のウォーターバスに容器ごと30分間浸漬した後、繊維を容器から取り出し、遠心力220[×g]にて1分間遠心脱水した後に測定した繊維の質量(g)を示す。
w2は、質量(w1)を測定した繊維を濾紙上に載置し105℃にて3時間乾燥した後に測定した繊維の質量を示す。〕
【0016】
なお、本明細書において、上記式(1)中の「遠心力[×g]」は、下記式により算出される値である。
【0017】
遠心力[×g]=1.118×遠心半径(m)×[回転数(min-1)]2×10-3
【0018】
<再生コラーゲン繊維>
本発明で使用する再生コラーゲン繊維は、上記式(1)により算出される水中繊維膨潤率が200%以上であることを要する。
【0019】
市場に一般に流通し、容易に入手可能な再生コラーゲン繊維は、高分子化合物を含む繊維処理剤を適用したとしても、当該高分子化合物が繊維表面を被覆するに過ぎず、繊維内部にまで浸透することができなかった。この課題は、当該技術分野の当業者に長期にわたって認識されており、本願出願前においてもなお未解決であった。そこで、本発明者らは、再生コラーゲン繊維の水中での最大膨潤率に着目し、繊維内部にまで浸透可能な再生コラーゲン繊維を探索したところ、上記式(1)により算出される水中繊維膨潤率が200%以上という特定性状を有する再生コラーゲン繊維であれば、高分子量化合物であったとしても繊維内部にまで浸透できることを見出した。さらに、当該高分子化合物の分子量を1500~15000とし、カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体とすることで、浸透後に繊維中に当該化合物を保持することができ、かつ、再生コラーゲン繊維に特有の上記した課題を解決できることを見出した。
【0020】
本発明で使用する再生コラーゲン繊維は水中繊維膨潤率が200%以上であるが、繊維への浸透促進の観点から、好ましくは250%以上、より好ましくは300%以上、更に好ましくは350%以上である。また、過剰な膨潤により繊維処理工程で繊維が容易に破断するのを避ける観点(繊維処理工程の作業性の観点)から、好ましくは1000%以下、より好ましくは800%以下、更に好ましくは600%以下、更により好ましくは500%以下である。即ち、再生コラーゲン繊維の水中繊維膨潤率は、好ましくは250~1000%、より好ましくは300~800%、更に好ましくは350~600%、より更に好ましくは350~500%である。
【0021】
再生コラーゲン繊維は、水中繊維膨潤率が上記した範囲内であれば、コラーゲン100%である必要はなく、品質改良のための天然あるいは合成ポリマーや添加剤が含まれていてもよい。更には、再生コラーゲン繊維を後加工したものであってもよい。再生コラーゲン繊維の形態としてはフィラメントが好ましい。フィラメントは一般にボビン巻きしたものや箱詰めした状態から取り出される。
【0022】
好適な再生コラーゲン繊維は、コラーゲン由来のポリマーやオリゴマーを原料として人工的に製造された繊維、即ち、コラーゲンを原料とする再生コラーゲン繊維であって、水中繊維膨潤率が上記した範囲内である再生コラーゲン繊維である。
再生コラーゲン繊維は、通常、可溶化したコラーゲン原料を紡糸原液とし、これを紡糸ノズルから凝固浴に吐出して繊維化した後、最終工程において繊維状コラーゲンを乾燥することにより製造されるが、乾燥工程前の未乾燥再生コラーゲン繊維は、上記した水中繊維膨潤率の要件を満たす。このような未乾燥再生コラーゲン繊維は、乾燥工程前まで公知の方法を採用して製造することが可能である。例えば、家畜動物の床皮を原料とする不溶性コラーゲン繊維を可溶化処理して得られたコラーゲン水溶液を紡糸ノズル又はスリットを通して吐出し、無機塩水溶液に浸漬した後、乾燥せずに回収した未乾燥再生コラーゲン繊維を挙げることができる。以下、具体的に説明する。
【0023】
コラーゲン原料としては、床皮の部分を用いるのが好ましい。床皮は、例えば、牛などの家畜動物を屠殺して得られるフレッシュな床皮や塩漬けした生皮より得られる。これら床皮などは、大部分が不溶性コラーゲン繊維からなるが、通常網状に付着している肉質部分を除去し、腐敗・変質防止のために用いた塩分を除去したのちに用いられる。
【0024】
この不溶性コラーゲン繊維には、グリセライド、リン脂質、遊離脂肪酸等の脂質、糖タンパク質、アルブミン等のコラーゲン以外のタンパク質などの不純物が存在している。これらの不純物は、繊維化するにあたって紡糸安定性、光沢や強伸度などの品質、臭気などに多大な影響を及ぼす。したがって、例えば、石灰漬けにして不溶性コラーゲン繊維中の脂肪分を加水分解し、コラーゲン繊維を解きほぐした後、酸・アルカリ処理、酵素処理、溶剤処理などの従来一般に行われている皮革処理を施し、あらかじめこれらの不純物を除去しておくことが好ましい。
【0025】
このような処理の施された不溶性コラーゲンは、架橋しているペプチド部を切断するために、可溶化処理が施される。かかる可溶化処理の方法としては、一般に採用されている公知のアルカリ可溶化法、酵素可溶化法等を適用することができる。さらに、アルカリ可溶化法及び酵素可溶化法を併用してもよい。
【0026】
アルカリ可溶化法を適用する場合には、例えば、塩酸等の酸で中和することが好ましい。なお、従来知られているアルカリ可溶化法の改善された方法として、例えば、特公昭46-15033号公報に記載された方法を用いてもよい。
【0027】
酵素可溶化法は、分子量が均一な可溶化コラーゲンを得ることができるという利点を有するものであり、本発明において好適に採用しうる方法である。かかる酵素可溶化法としては、例えば、特公昭43-25829号公報、特公昭43-27513号公報等に記載された方法を採用することができる。
【0028】
このように可溶化処理を施したコラーゲンに、pHの調整、塩析、水洗、溶剤処理等の操作を更に施した場合には、品質などに優れた再生コラーゲン繊維を得ることが可能なため、これらの処理を施すことが好ましい。
【0029】
可溶化コラーゲンは、例えば、塩酸、酢酸、乳酸等の酸で溶解し、pHが2~4.5であり、コラーゲンの濃度が1質量%以上、好ましくは2質量%以上、また15質量%以下、好ましくは10質量%以下であるコラーゲン水溶液になるように調整する。コラーゲン水溶液は、必要に応じて減圧攪拌下で脱泡を施したり、水不溶分である細かいゴミを除去したりするために濾過を行ってもよい。また、コラーゲン水溶液には、さらに必要に応じて、例えば、機械的強度の向上、耐水・耐熱性の向上、光沢性の改良、紡糸性の改良、着色の防止、防腐等を目的として、安定剤、水溶性高分子化合物等の添加剤を適量配合してもよい。
【0030】
コラーゲン水溶液を、例えば、紡糸ノズルやスリットを通して吐出し、無機塩水溶液に浸漬することにより、未乾燥再生コラーゲン繊維が得られる。無機塩水溶液としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム等の水溶性無機塩の水溶液が用いられる。通常、これらの無機塩水溶液中の無機塩の濃度は10~40質量%に調整する。無機塩水溶液のpHは、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、また、好ましくは13以下、より好ましくは12以下である。このpHの調整には、例えば、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の金属塩や、塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウムを用いることができる。無機塩水溶液のpHが上記範囲内であると、コラーゲンのペプチド結合が加水分解を受けにくく、目的とする繊維が得られやすくなる。また、無機塩水溶液の温度は特に限定されないが、可溶性コラーゲンが変性することもなく、紡糸した繊維の強度が低下せず、安定した糸の製造が容易となる点から、通常35℃以下であることが望ましい。なお、無機塩水溶液の温度の下限は特に限定されないが、通常無機塩の溶解度に応じて適宜調整することができる。
【0031】
未乾燥再生コラーゲン繊維を、エポキシ化合物モノマーあるいはその溶液に浸漬して再生コラーゲン繊維を前処理(架橋処理)してもよい。エポキシ化合物モノマーの量は、アミノ酸分析法により測定した再生コラーゲン繊維中におけるエポキシ化合物モノマーが含むエポキシ基と反応可能なアミノ基の量に対し、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.5当量以上、更に好ましくは1当量以上であり、また、好ましくは500当量以下、より好ましくは100当量以下、更に好ましくは50当量以下である。エポキシ化合物モノマーの量が前記範囲であることにより、再生コラーゲン繊維に水に対する不溶化効果を充分付与し得る上、工業的な取扱い性や環境面でも好ましい。
【0032】
エポキシ化合物モノマーはそのままあるいは各種溶剤に溶解して用いる。溶剤としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系有機溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の中性有機溶媒等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてよい。溶剤として水を用いる場合、必要に応じて硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム等の無機塩の水溶液を用いてもよい。通常、無機塩の水溶液中の無機塩の濃度は、10~40質量%に調整される。また、水溶液のpHを、例えば、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の金属塩や、塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウムなどにより、調整してもよい。この場合、水溶液のpHは、エポキシ化合物モノマーのエポキシ基とコラーゲンのアミノ基との反応が遅くならず、水に対する不溶化が十分となる観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上である。また、無機塩の水溶液のpHは時間とともに低下していく傾向にあるため、必要により緩衝剤を使用してもよい。
【0033】
エポキシ化合物モノマーによる未乾燥の再生コラーゲン繊維の処理温度は、再生コラーゲン繊維が変性することがなく、得られる繊維の強度が低下せず、安定的な糸の製造が容易となる観点から、50℃以下が好ましい。
【0034】
本発明で使用する再生コラーゲン繊維は、耐水性向上の観点から、多価金属、又はその塩若しくはその錯体を含有するものが好ましい。例えば、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、クロム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、アンチモン、鉄、及び銅から選ばれる1以上の多価金属、又はその塩若しくはその錯体を挙げることができる。中でも、耐水性向上、及び、繊維の着色低減や、環境への影響低減、経済性向上の観点から、好ましくはアルミニウム、ジルコニウム及びチタンから選ばれる1以上の多価金属、又はその塩若しくはその錯体、より好ましくはアルミニウム又はその塩若しくはその錯体が用いられる。再生コラーゲン繊維中における多価金属、又はその塩若しくはその錯体の含有量は、耐水性向上の観点から、金属元素量として、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、更により好ましくは5.0質量%以上であり、また、繊維表面の感触の向上の観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更により好ましくは10質量%以下である。即ち、再生コラーゲン繊維中の多価金属、又はその塩若しくはその錯体の含有量は、前記観点から、金属元素量として、好ましくは1.0~40質量%、より好ましくは2.0~30質量%、更に好ましくは3.0~20質量%、更により好ましくは5.0~10質量%である。なお、本明細書において「金属元素量」は、ICP発光分光分析で定量するものとする。ICP発光分光分析には、ICP発光分析装置として、例えば、iCAP6500Duo(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用することができる。また、ICP発光分光分析の測定条件は以下のとおりであり、波長は、スペクトルプロファイルを確認して対象金属に最適な分析波長を選択すればよい。例えば、アルミニウムは、396.152nmである。なお、分析試料は、実施例に記載の方法により前処理を行い、対象金属ごとに検量線を作成するものとする。
【0035】
<測定条件>
・RFパワー:1150W
・クーラントガス流量:12L/min
・ネブライザー流量:0.70L/min
・補助ガス :0.5L/min
・ポンプ流量:50rpm
【0036】
また、未乾燥再生コラーゲン繊維は、水又は無機塩の水溶液で膨潤した状態になっている。この膨潤は再生コラーゲン繊維の質量に対して4~15倍の水又は無機塩の水溶液を含有した状態がよい。水又は無機塩の水溶液の含有量が4倍未満では再生コラーゲン繊維中のアルミニウム塩含有量が少なく、耐水性が不充分となる傾向があり、また15倍を越える場合には繊維の強度が弱くなって取扱いが困難となる傾向がある。そのため、金属元素量が上記範囲内となるように金属を含有させても構わない。例えば、次の処理を行うことができる。
【0037】
先ず、未乾燥再生コラーゲン繊維を、アルミニウム塩の水溶液に浸漬する。アルミニウム塩としては、次の式で表される塩基性塩化アルミニウム又は塩基性硫酸アルミニウムが好ましい。
【0038】
Al(OH)n Cl3-n、又は
Al2 (OH)2n(SO43-n
【0039】
[式中、nは0.5~2.5である。]
【0040】
具体例としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ミョウバンを挙げることができる。アルミニウム塩は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルミニウム塩水溶液中のアルミニウム塩濃度としては、酸化アルミニウムに換算して0.3~5質量%であることが好ましい。アルミニウム塩の濃度が0.3質量%未満では再生コラーゲン繊維中のアルミニウム塩含有量が少なく、耐水性が不充分となる傾向があり、また5質量%を超える場合には処理後の繊維が硬くなって風合いを損なう傾向がある。
【0041】
アルミニウム塩水溶液のpHは、通常2.5~5である。例えば、塩酸、硫酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を用いて調整することができる。pHが2.5未満ではコラーゲンの構造を壊して変性させる傾向があり、また5を超える場合にはアルミニウム塩の沈殿を生じるようになり、繊維に浸透し難い傾向がある。pHは、最初は2.2~3.5に調整して充分にアルミニウム塩水溶液を再生コラーゲン繊維内に浸透させ、その後に、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を添加して3.5~5に調整して処理を完結させることが好ましい。塩基性の高いアルミニウム塩を用いる場合には、2.5~5の最初のpH調整だけでも構わない。
【0042】
また、アルミニウム塩水溶液の液温は特に限定されないが、50℃以下が好ましい。液温が50℃を超える場合には、再生コラーゲン繊維が変性する傾向がある。
【0043】
アルミニウム塩水溶液に未乾燥再生コラーゲン繊維を浸漬する時間は、通常3時間以上、好ましくは6~25時間である。浸漬時間が3時間未満ではアルミニウム塩の反応が進み難く、再生コラーゲン繊維の耐水性が不充分となる傾向がある。また、浸漬時間の上限には特に制限はないが、25時間以内でアルミニウム塩の反応は充分に進行し、耐水性も良好となる。
【0044】
なお、アルミニウム塩が再生コラーゲン繊維中に急激に吸収されて濃度むらを生じないようにするため、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩を適宜アルミニウム塩の水溶液に添加してもよい。
【0045】
エポキシ化合物モノマー又はアルミニウム塩で再生コラーゲン繊維を処理した後、水洗してもよい。水洗は、例えば、10分間から4時間流水水洗することにより行うことができる。
【0046】
<繊維処理剤>
繊維処理剤は、成分(A)として特定の共重合体を含み、当該共重合体は、カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含むものである。
各構造単位を与える単量体の結合状態は、ブロック結合でも、ランダム結合でもよく、これらの組み合わせでも構わない。なお、成分(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸又はそれらの塩を挙げることができる。不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、シクロペンテニル酢酸が挙げられ、不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、メチレンコハク酸を挙げることができる。また、不飽和ジカルボン酸は、不飽和ジカルボン酸無水物を使用し、アルカリ等による加水分解で酸型として使用することもできる。不飽和ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸を挙げることができる。カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を挙げることができる。アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩が挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩を挙げることができる。中でも、分散性の観点から、ナトリウム塩が好ましい。
なお、カルボキシ基又はその塩は、カルボキシアニオンに解離していても構わない。
【0049】
また、芳香族ビニル化合物としては、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物であれば特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、3-ビニルトルエン、ジメチルスチレン、エチルビニルベンゼン、クロルメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンを挙げることができる。芳香族ビニル化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
成分(A)に係る共重合体は、上記において説明した構造単位以外の他の構造単位を含むものであっても構わない。
他の構造単位としては、例えば、不飽和脂肪族炭化水素化合物由来の構造単位を挙げることができるが、これに限定されない。他の構造単位は、1種又は2種以上を有しても構わない。
不飽和脂肪族炭化水素化合物は、鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でも構わない。
鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、トリプロピレン、テトラプロピレンを挙げることができる。
環状の不飽和脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテンを挙げることができる。
【0051】
成分(A)の好適な態様としては、例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸及びそれらの塩から選択される1以上に由来する構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体を挙げることができる。具体的には、例えば、繊維への浸透及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、ビニル安息香酸-マレイン酸共重合体、ビニル安息香酸-アクリル酸共重合体、ビニル安息香酸-メタクリル酸共重合体、スチレン-4-ビニル安息香酸共重合体及びそれらの塩から選択される1種又は2種以上が好ましく、スチレン-マレイン酸共重合体又はその塩が更に好ましい。成分(A)に係る共重合体が塩の形態である場合、塩の対イオンは特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。
なお、スチレン-マレイン酸共重合体は、スチレン-無水マレイン酸共重合体を使用し、アルカリ等でスチレン-マレイン酸共重合体を生成して使用することもできる。
【0052】
成分(A)に係る共重合体は、カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位(u1)と、芳香族ビニル化合物単量体由来の構造単位(u2)との割合が、繊維への浸透及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、モル比(u1/u2)で、好ましくは1/5~5/1、より好ましくは1/3~3/1、更に好ましくは1/2~2/1である。
【0053】
成分(A)の酸価は100mgKOH/g以上であるが、繊維への浸透及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、好ましくは200mgKOH/g以上、より好ましくは300mgKOH/g以上、更に好ましくは400mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは1000mgKOH/g以下、より好ましくは800mgKOH/g以下、更に好ましくは600mgKOH/g以下である。即ち、かかる酸価は、好ましくは200~1000mgKOH/g、より好ましくは300~800mgKOH/g、更に好ましくは400~600mgKOH/gである。ここで、本明細書において「酸価」とは、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム (mg) 数を意味し、JIS K 0070に従って電位差滴定法により求めることができる。成分(A)が塩の場合は、遊離酸(非解離型の酸)の酸価を用いる。
【0054】
酸価が上記範囲内である成分(A)の具体例としては、例えば、下記の化合物を挙げることができる。
・スチレン-マレイン酸共重合体
(スチレン/マレイン酸(モル比)=1/1) 475mgKOH/g
・スチレン-マレイン酸共重合体
(スチレン/マレイン酸(モル比)=2/1) 355mgKOH/g
・スチレン-マレイン酸共重合体
(スチレン/マレイン酸(モル比)=3/1) 285mgKOH/g
【0055】
成分(A)は重量平均分子量が1500~15000であるが、繊維への浸透及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、そして、好ましくは12000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは8000以下、より更に好ましくは7000以下である。即ち、かかる重量平均分子量は、好ましくは2000~12000、より好ましくは3000~12000である。また、好ましくは1500~10000、より好ましくは2000~8000、更に好ましくは3000~8000、より更に好ましくは4000~7000であってもよい。ここで、本明細書において「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量をいい、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0056】
繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、繊維への浸透及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.3質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である。即ち、繊維処理剤中の成分(A)の含有量は、好ましくは0.3~60質量%、より好ましくは1.0~50質量%、更に好ましくは2.3~40質量%、更により好ましくは2.3~30質量%である。なお、本明細書において、成分(A)が塩である場合、成分(A)の含有量は遊離酸に換算した値とする。
【0057】
繊維処理剤のpHは、繊維への浸透及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.5以上であり、そして、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、更に好ましくは9.0以下、更により好ましくは6.5以下である。即ち、繊維処理剤のpHは、好ましくは2.0~11.0、より好ましくは3.0~10.0、更に好ましくは3.5~9.0、更により好ましくは3.5~6.5である。なお、本明細書において「pH」は、25℃のときの値であり、pHメータにより測定することができる。
【0058】
また、本工程で使用する繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、繊維処理剤のpH範囲により、以下に示す範囲としてもよい。
【0059】
繊維処理剤のpHが5.5未満の場合、繊維への浸透及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、繊維処理剤中の成分(A)の含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1.3質量%以上、より更に好ましくは2.3質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。即ち、繊維処理剤のpHが5.5未満の場合、繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、好ましくは0.3~30質量%、より好ましくは0.8~20質量%、更に好ましくは1.3~10質量%、より更に好ましくは2.3~10質量%である。
【0060】
また、繊維処理剤のpHが5.5以上の場合、繊維への浸透及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、繊維処理剤中の成分(A)の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。即ち、繊維処理剤のpHが5.5以上の場合、繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、好ましくは1.0~60質量%、より好ましくは2.0~50質量%、更に好ましくは3.0~40質量%である。
【0061】
また、本工程で使用する繊維処理剤は、水を媒体とする。繊維処理剤中の水の含有量は、成分(A)及び後述する任意的に配合される成分を除いた残部である。例えば、繊維処理剤中の水の含有量は、繊維処理剤中に、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更により好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下、更により好ましくは95質量%以下、更により好ましくは90質量%以下、更により好ましくは85質量%以下である。即ち、繊維処理剤中の水の含有量は、好ましくは10~98質量%、より好ましくは20~97質量%、更に好ましくは30~96質量%、更により好ましくは40~95質量%、更により好ましくは40~90質量%、更により好ましくは40~85質量%である。
【0062】
<浸漬>
浸漬方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、繊維処理剤を充填した液槽に再生コラーゲン繊維を投入して、繊維処理剤と接触させる方法を挙げることができる。
浸漬処理は、2回以上行うことが可能である。その場合、同一の繊維処理剤を使用しても、異種の繊維処理剤を使用しても構わない。
異種の繊維処理剤を使用する場合、例えば、pHの異なる繊維処理剤を使用することができる。具体的には、成分(A)を含有する第1の繊維処理剤(以下、「第1剤」とも称する)で処理した後、成分(A)を含有する第2の繊維処理剤であって、第1の繊維処理剤よりもpHを1.0以上低く調整した第2の繊維処理剤(以下、「第2剤」とも称する)で処理する工程を含む2ステップ処理方法、前記第1剤による処理を2回乃至3回以上繰り返し、最後に前記第2剤で処理する工程を含むマルチステップ処理方法が挙げられる。前記2ステップ処理後に、更に、成分(C)として安息香酸又はその塩を含む追加繊維処理剤(以下、「第3剤」とも称する)で処理する工程を行ってもよい。また、前記第1剤で処理する工程と、前記第3剤で処理する工程を備える処理方法を挙げることができる。なお、安息香酸の塩としては、アルカリ金属塩が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩を挙げることができる。また、各剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜選択することができる。
【0063】
(C)安息香酸又はその塩を含む追加繊維処理剤(第3剤)において、(C)安息香酸又はその塩の含有量は、繊維の耐水性、耐熱性の改善の観点から、当該追加繊維処理剤(第3剤)中に、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である。即ち、第3剤における(C)安息香酸又はその塩の含有量は、当該追加繊維処理剤(第3剤)中に、好ましくは0.1~60質量%、より好ましくは1~55質量%、更に好ましくは5~50質量%、より更に好ましくは10~40質量%、より更に好ましくは20~35質量%である。なお、本明細書において、安息香酸が塩である場合、その含有量は安息香酸(遊離酸)に換算した値とする。
【0064】
再生コラーゲン繊維を浸漬する繊維処理剤の量は、再生コラーゲン繊維の質量に対する浴比で(繊維処理剤の質量/再生コラーゲン繊維の質量)で、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更により好ましくは10以上、更により好ましくは20以上であり、また、好ましくは500以下、より好ましくは250以下、更に好ましくは100以下、更により好ましくは50以下である。即ち、上記浴比は、好ましくは2~500であり、より好ましくは3~250であり、更に好ましくは5~100であり、更により好ましくは10~100であり、更により好ましくは20~100であり、更により好ましくは20~50である。
【0065】
本工程における繊維処理剤への再生コラーゲン繊維の浸漬は、常温(20℃±15℃)で行うことが可能であり、加熱しても構わない。この加熱は繊維処理剤を加温することで行われる。なお、この加熱は、加熱状態の繊維処理剤に再生コラーゲン繊維を浸漬することで行ってもよいが、低温の繊維処理剤に再生コラーゲン繊維を浸漬した後加熱することで行ってもよい。繊維処理剤の温度は、成分(A)を再生コラーゲン繊維内に浸透させ、当該繊維の繊維構成分子、例えばタンパク質分子との相互作用を大きくすることで本発明の効果を得るため、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、また、再生コラーゲン繊維が熱により変性を起こし劣化するのを防ぐため、好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下、より更に好ましくは50℃以下である。即ち、上記温度は、好ましくは20℃以上100℃未満であり、より好ましくは25~80℃であり、更に好ましくは30~70℃であり、更により好ましくは30~60℃であり、より更に好ましくは30~50℃である。
【0066】
本工程における浸漬時間は、加熱温度によって適宜調整されるが、例えば、再生コラーゲン繊維に対する伸縮性向上効果を発現させる観点から、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間以上、より更に好ましくは3時間以上、より更に好ましくは5時間以上、より更に好ましくは10時間以上であり、また、再生コラーゲン繊維のダメージ抑制のため、好ましくは48時間以下、より好ましくは33時間以下、更に好ましくは30時間以下である。即ち、浸漬時間は、好ましくは15分以上48時間以下、より好ましくは30分以上33時間以下、更に好ましくは1時間以上30時間以下、より更に好ましくは3時間以上30時間以下、より更に好ましくは5時間以上30時間以下、より更に好ましくは10時間以上30時間以下である。
【0067】
本工程は、水分の蒸発が抑制される環境下で行われることが好ましい。水分の蒸発を抑制する具体的手段としては、再生コラーゲン繊維が浸漬されている繊維処理剤の容器を、水蒸気を透過しない素材でできたフィルム状物質、キャップ、フタ等で覆う方法が挙げられる。
【0068】
本工程後、再生コラーゲン繊維をすすいでもよく、また、すすがなくてもよいが、余剰の成分(A)による再生コラーゲン繊維表面の感触低下を防ぐ観点から、すすぐ方が好ましい。
【0069】
本工程の処理によって、再生コラーゲン繊維内に成分(A)が浸透し、繊維内の金属、例えば多価金属に強く配位することで、種々の効果を生じるものと思われる。即ち、工程(i)を含む再生コラーゲン繊維処理方法によって、繊維内に成分(A)を含有する改質再生コラーゲン繊維を製造することができ、得られた改質再生コラーゲン繊維は、再生コラーゲン繊維に特有の課題である耐水性及び熱形状記憶能を改善された繊維となる。
【0070】
〔改質再生コラーゲン繊維〕
本発明の改質再生コラーゲン繊維は、下記の成分(A)を含有するものである。
(A)カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体であって、酸価が100mgKOH/g以上であり、かつ重量平均分子量が1500~15000である共重合体
【0071】
カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位は、例えば、不飽和モノカルボン酸又はその塩に由来するものでも、不飽和ジカルボン酸又はその塩に由来するものでもよく、これらの組み合わせであっても構わない。不飽和モノカルボン酸又はその塩、及び不飽和ジカルボン酸又はその塩の具体例は、上記において説明したとおりである。カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来する構造単位は、1種又は2種以上含有することができる。
芳香族ビニル化合物由来の構造単位としては、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物に由来するものであれば特に限定されない。芳香族ビニル化合物の具体例は、上記において説明したとおりである。芳香族ビニル化合物由来の構造単位は、1種又は2種以上含有することができる。
各構造単位を与える単量体の結合状態は、ブロック結合でも、ランダム結合でもよく、これらの組み合わせでも構わない。なお、成分(A)は、1種又は2種以上含有することができる。
【0072】
成分(A)は、上記において説明した不飽和単量体以外の他の構造単位を含むものであっても構わない。他の構造単位は、1種又は2種以上含有することができる。
他の構造単位としては、例えば、不飽和脂肪族炭化水素化合物由来の構造単位を挙げることができるが、これに限定されない。不飽和脂肪族炭化水素化合物は、鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でも構わない。不飽和脂肪族炭化水素化合物の具体例は、上記において説明したとおりである。
【0073】
成分(A)の好適な態様としては、例えば、不飽和モノカルボン酸又はその塩、及び不飽和ジカルボン酸又はその塩から選択される1以上に由来する構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体を挙げることができる。具体例としては、繊維中への保持及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、ビニル安息香酸-マレイン酸共重合体、ビニル安息香酸-アクリル酸共重合体、ビニル安息香酸-メタクリル酸共重合体、スチレン-4-ビニル安息香酸共重合体又はそれらの塩が好ましく、スチレン-マレイン酸共重合体又はその塩が更に好ましい。成分(A)に係る共重合体が塩の形態である場合、塩の対イオンは特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。
【0074】
成分(A)は、カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位(u1)と、芳香族ビニル化合物単量体由来の構造単位(u2)との割合が、繊維中での保持及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、モル比(u1/u2)で、好ましくは1/5~5/1、より好ましくは1/3~3/1、更に好ましくは1/2~2/1である。
【0075】
成分(A)の酸価は100mgKOH/g以上であるが、繊維中での保持及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、好ましくは200mgKOH/g以上、より好ましくは300mgKOH/g以上、更に好ましくは400mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは1000mgKOH/g以下、より好ましくは800mgKOH/g以下、更に好ましくは600mgKOH/g以下である。即ち、かかる酸価は、好ましくは200~1000mgKOH/g、より好ましくは300~800mgKOH/g、更に好ましくは400~600mgKOH/gである。
【0076】
酸価が上記範囲内である成分(A)の具体例としては、例えば、下記の化合物を挙げることができる。
・スチレン-マレイン酸共重合体
(スチレン/マレイン酸(モル比)=1/1) 475mgKOH/g
・スチレン-マレイン酸共重合体
(スチレン/マレイン酸(モル比)=2/1) 355mgKOH/g
・スチレン-マレイン酸共重合体
(スチレン/マレイン酸(モル比)=3/1) 285mgKOH/g
【0077】
成分(A)は重量平均分子量が1500~15000であるが、繊維中での保持及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の改善の観点から、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、そして、好ましくは12000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは8000以下、更に好ましくは7000以下である。即ち、かかる重量平均分子量は、好ましくは2000~12000、より好ましくは3000~12000である。また、好ましくは1500~10000、より好ましくは2000~8000、更に好ましくは3000~8000、更に好ましくは4000~7000であってもよい。
【0078】
本発明の改質再生コラーゲン繊維中の成分(A)の含有量は、より高い耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能を発現する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更により好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更により好ましくは55質量%以下、更により好ましくは50質量%以下、更により好ましくは45質量%以下である。即ち、本発明の改質再生コラーゲン繊維中の成分(A)の含有量は、好ましくは0.1~70質量%、より好ましくは0.5~65質量%、更に好ましくは1.0~60質量%、更により好ましくは3.0~55質量%、更により好ましくは5.0~50質量%、更により好ましくは10~45質量%である。
なお、本明細書において、成分(A)の定量は、成分(A)を分解せずかつ再生コラーゲン繊維を溶解可能な適切な方法を選択し、繊維を溶解して抽出する。そして、抽出溶液を適切に希釈後、例えば、紫外可視近赤外分光光度計(例えばV-560 (日本分光株式会社製))により、成分(A)の定量に適した吸光波長を用いて吸光度を測定し、その吸光度から成分(A)の含有量を算出する。あるいは、HPLC/UV又はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、成分(A)の定量に適した吸光波長で作図したクロマトグラムのピーク面積を測定し、そのピーク面積から成分(A)の含有量を算出するものとする。
【0079】
本発明の改質再生コラーゲン繊維は、耐水性向上の観点から、更に成分(B)として多価金属、又はその塩若しくはその錯体を含有することが好ましい。例えば、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、クロム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、アンチモン、鉄、及び銅から選ばれる1以上の多価金属、又はその塩若しくはその錯体を挙げることができる。中でも、耐水性向上、及び、繊維の着色低減や、環境への影響低減、経済性向上の観点から、好ましくはアルミニウム、ジルコニウム及びチタンから選ばれる1以上の多価金属、又はその塩若しくはその錯体、より好ましくはアルミニウム、又はその塩若しくはその錯体が用いられる。これらはいずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
本発明の改質再生コラーゲン繊維中における成分(B)の含有量は、耐水性向上の観点から、金属元素量として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更により好ましくは2.0質量%以上であり、また、繊維表面の感触の向上観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更により好ましくは10質量%以下である。すなわち、本発明の改質再生コラーゲン繊維中における成分(B)の含有量は、金属元素量として、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.5~30質量%、更に好ましくは1.0~20質量%、更により好ましくは2.0~10質量%である。
なお、改質再生コラーゲン繊維中の成分(B)の定量は、例えば、以下のように行う。再生コラーゲン繊維を灰化、アルカリ溶融し、酸で溶解して溶液を調製する。そして、この溶液を適切に希釈し測定試料を調製し、ICP発光分光分析装置にて、金属元素の定量を行う。
【0081】
本発明の改質再生コラーゲン繊維は、繊維中での保持及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の向上の観点から、更に成分(C)として安息香酸又はその塩を含有することが好ましい。本発明の改質再生コラーゲン繊維における(C)安息香酸又はその塩の含有量は、繊維中での保持及び配位の促進、並びに耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能の向上の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。即ち、本発明の改質再生コラーゲン繊維中における(C)安息香酸又はその塩の含有量は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~40質量%、更に好ましくは10~30質量%である。
【0082】
本発明の改質再生コラーゲン繊維は、当該繊維内に保持された成分(A)のカルボキシ基又はその塩が繊維に配位することで、熱セットにより形状を付与することができ、耐水性を高度に改善した繊維である。なお、成分(A)の繊維断面内の分布は、成分(A)の特性に応じて、繊維横断面をミクロトーム、ナイフ、剃刀等で切り出した後、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光イメージング法、TOF-SIMS、EPMA、TEM/SEM-EDS、顕微IR、顕微レーザーラマン分光等で、当該横断面の線分析或いは面分析により、評価することができる。より具体的には、例えば、次の方法により評価することができる。
改質再生コラーゲン繊維の断面について、共焦点レーザー顕微鏡を用いて蛍光イメージング法により測定することで、未処理の再生コラーゲン繊維と比べて、蛍光イメージング画像の繊維内部の蛍光強度に明らかな差異が認められた場合には繊維内部にまで成分(A)が浸透していると判断することができる。例えば、成分(A)としてスチレン-マレイン酸共重合体又はその塩を用いて処理した改質再生コラーゲン繊維は、400nmにスチレン-マレイン酸共重合体に特有の波長を有することから、励起波長400nm、検出波長425~475nmにて蛍光イメージングを行えばよい。共焦点レーザー顕微鏡としては、例えば、AIRHD25(株式会社ニコン製)を用いることができる。
【0083】
〔改質再生コラーゲン繊維の製造方法〕
本発明の改質再生コラーゲン繊維の製造方法は、再生コラーゲン繊維処理方法によって、再生コラーゲン繊維を処理する工程を含むものである。再生コラーゲン繊維を処理する工程の具体的な態様は、再生コラーゲン繊維処理方法において説明したとおりである。
本発明の改質再生コラーゲン繊維は、頭飾製品用繊維として好適に利用することができる。
【0084】
〔頭飾製品及びその製造方法〕
本発明の頭飾製品は、本発明の改質再生コラーゲン繊維を構成要素として含むものである。本発明の改質再生コラーゲン繊維は、単独で頭飾製品として用いてもよく、他の繊維と混合して頭飾製品としてもよい。他の繊維としては、頭飾製品に用いることができる繊維であればよく、特に限定されない。他の繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維等が挙げられ、なかでも、耐熱性、難燃性及びカール保持性に優れるという観点から、ポリエステル系繊維が好ましく、難燃性ポリエステル系繊維がより好ましい。
【0085】
難燃性ポリエステル系繊維は、特に限定されないが、難燃性の観点から、ポリアルキレンテレフタレート、及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる一つ以上のポリエステル樹脂100質量部に対して臭素化エポキシ系難燃剤を5~40質量部含むことが好ましい。本発明において、「主体とする」とは、50モル%以上含有されることを意味し、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを50モル%以上含有する共重合ポリエステルをいう。好ましくは、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上含有する。前記難燃性ポリエステル系繊維は、さらに、ポリエステル樹脂100質量部に対し、アンチモン化合物を0~5質量部含むことが好ましい。アンチモン化合物を含むことにより、ポリエステル系繊維の難燃性が向上する。
【0086】
本発明において好適な頭飾製品としては、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等が挙げられる。
本発明の頭飾製品の製造方法は、上記において説明した再生コラーゲン繊維処理方法によって、再生コラーゲン繊維を処理する工程を含むものである。これにより、各種の頭飾製品を製造することができる。なお、再生コラーゲン繊維を処理する工程の具体的な態様は、再生コラーゲン繊維処理方法において説明したとおりである。また、改質再生コラーゲン繊維を用いた頭飾製品の製造方法は、頭飾製品の種類により従来公知の方法を採用することが可能であり、特に限定されない。
【0087】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0088】
<1> 下記の工程(i)を含む、再生コラーゲン繊維処理方法。
【0089】
<2> 下記の工程(i)を含む再生コラーゲン繊維処理方法によって、再生コラーゲン繊維を処理する工程を含む、改質再生コラーゲン繊維の製造方法。
【0090】
<3> 下記の工程(i)を含む再生コラーゲン繊維処理方法によって、再生コラーゲン繊維を処理する工程を含む、頭飾製品の製造方法。
【0091】
工程(i) 下記の成分(A)を含有してなる繊維処理剤に、下記式(1)により算出される水中繊維膨潤率が200%以上である再生コラーゲン繊維を浸漬する工程
(A)カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物単量体由来の構造単位を含む共重合体であって、酸価が100mgKOH/g以上であり、かつ重量平均分子量が1500~15000である共重合体
水中繊維膨潤率(%)=[(w1-w2)/w2]×100 (1)
〔式中、
w1は、イオン交換水100gを充填した容器に繊維1.0gを入れ容器を密閉し、40℃のウォーターバスに容器ごと30分間浸漬した後、繊維を容器から取り出し、遠心力220[×g]にて1分間遠心脱水した後に測定した繊維の質量(g)を示す。
w2は、質量(w1)を測定した繊維を濾紙上に載置し105℃にて3時間乾燥した後に測定した繊維の質量を示す。〕
【0092】
<4> 水中繊維膨潤率が、好ましくは250%以上、より好ましくは300%以上、更に好ましくは350%以上であり、そして、好ましくは1000%以下、より好ましくは800%以下、更に好ましくは600%以下、更により好ましくは500%以下である、前記<1>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>記載の頭飾製品の製造方法。
<5> 水中繊維膨潤率が、好ましくは250~1000%、より好ましくは300~800%、更に好ましくは350~600%、より更に好ましくは350~500%である、前記<1>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>記載の頭飾製品の製造方法。
【0093】
<6> 再生コラーゲン繊維が、好ましくは、下記の成分(B)を含有する、前記<1>、<4>及び<5>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>及び<5>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<5>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
(B)多価金属、又はその塩若しくはその錯体
【0094】
<7> 成分(B)が、好ましくはカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、クロム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、アンチモン、鉄、及び銅から選ばれる1以上の多価金属、又はその塩若しくはその錯体であり、より好ましくはアルミニウム、ジルコニウム及びチタンから選ばれる1以上の多価金属、又はその塩若しくはその錯体であり、更に好ましくはアルミニウム又はその塩若しくはその錯体である、前記<6>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<6>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<6>記載の頭飾製品の製造方法。
【0095】
<8> 再生コラーゲン繊維中の成分(B)の含有量が、金属元素量として、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、更により好ましくは5.0質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更により好ましくは10質量%以下である、前記<6>若しくは<7>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<6>若しくは<7>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<6>若しくは<7>記載の頭飾製品の製造方法。
<9> 再生コラーゲン繊維中の成分(B)の含有量が、金属元素量として、好ましくは1.0~40質量%、より好ましくは2.0~30質量%、更に好ましくは3.0~20質量%、更により好ましくは5.0~10質量%である、前記<6>若しくは<7>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<6>若しくは<7>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<6>若しくは<7>記載の頭飾製品の製造方法。
【0096】
<10> 工程(i)の前に、好ましくは、家畜動物の床皮を原料とする不溶性コラーゲン繊維を可溶化処理して得られたコラーゲン水溶液を紡糸ノズル又はスリットを通して吐出し、無機塩水溶液に浸漬する再生コラーゲン繊維製造工程を含む、前記<1>、<4>~<9>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<9>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<9>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0097】
<11> 好ましくは、再生コラーゲン繊維製造工程の後、再生コラーゲン繊維をエポキシ化合物モノマー又はその溶液に浸漬する架橋処理工程を含む、前記<10>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<10>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<10>記載の頭飾製品の製造方法。
【0098】
<12> 好ましくは、再生コラーゲン繊維製造工程の後、再生コラーゲン繊維をアルミニウム塩の水溶液に浸漬する工程を含む、前記<10>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<10>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<10>記載の頭飾製品の製造方法。
【0099】
<13> 成分(A)が、好ましくは不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸及びそれらの塩から選択される1以上に由来する構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体である、前記<1>、<4>~<12>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<12>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<12>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0100】
<14> 成分(A)が、好ましくは不飽和脂肪族炭化水素化合物由来の構造単位を更に含む、前記<1>、<4>~<13>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<13>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<13>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0101】
<15> 成分(A)が、好ましくはスチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、ビニル安息香酸-マレイン酸共重合体、ビニル安息香酸-アクリル酸共重合体、ビニル安息香酸-メタクリル酸共重合体、スチレン-4-ビニル安息香酸共重合体及びそれらの塩から選択される1種又は2種以上であり、更に好ましくはスチレン-マレイン酸共重合体又はその塩である、前記<1>、<4>~<14>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<14>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<14>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0102】
<16> カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位(u1)と、芳香族ビニル化合物単量体由来の構造単位(u2)との割合が、モル比(u1/u2)で、好ましくは1/5~5/1であり、より好ましくは1/3~3/1であり、更に好ましくは1/2~2/1である、前記<1>、<4>~<15>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<15>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<15>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0103】
<17> 成分(A)の酸価が、好ましくは200mgKOH/g以上、より好ましくは300mgKOH/g以上、更に好ましくは400mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは1000mgKOH/g以下、より好ましくは800mgKOH/g以下、更に好ましくは600mgKOH/g以下である、前記<1>、<4>~<16>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<16>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<16>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<18> 成分(A)の酸価が、好ましくは200~1000mgKOH/g、より好ましくは300~800mgKOH/g、更に好ましくは400~600mgKOH/gである、前記<1>、<4>~<16>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<16>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<16>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0104】
<19> 成分(A)の重量平均分子量が、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、そして、好ましくは12000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは8000以下、より更に好ましくは7000以下である、前記<1>、<4>~<18>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<18>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<18>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<20> 成分(A)の重量平均分子量が、好ましくは2000~12000、より好ましくは3000~12000であり、また好ましくは1500~10000、より好ましくは2000~8000、更に好ましくは3000~8000、より更に好ましくは4000~7000であってよい、前記<1>、<4>~<18>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<18>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<18>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0105】
<21> 繊維処理剤中の成分(A)の含有量が、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.3質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である、前記<1>、<4>~<20>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<20>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<20>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<22> 繊維処理剤中の成分(A)の含有量が、好ましくは0.3~60質量%、より好ましくは1.0~50質量%、更に好ましくは2.3~40質量%、更により好ましくは2.3~30質量%である、記<1>、<4>~<20>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<20>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<20>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0106】
<23> 繊維処理剤のpHが、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.5以上、更により好ましくは4.0以上であり、そして、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、更に好ましくは9.0以下であり、更により好ましくは7.0以下、更により好ましくは6.5以下である、前記<1>、<4>~<22>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<22>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<22>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<24> 繊維処理剤のpHが、好ましくは2.0~11.0、より好ましくは3.0~10.0、更に好ましくは3.5~9.0、更により好ましくは3.5~6.5である、前記<1>、<4>~<22>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<22>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<22>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0107】
<25> 繊維処理剤のpHが5.5未満の場合、繊維処理剤中の成分(A)の含有量が、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1.3質量%、より更に好ましくは2.3質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である、前記<1>、<4>~<24>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<24>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<24>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<26> 繊維処理剤のpHが5.5未満の場合、繊維処理剤中の成分(A)の含有量が、好ましくは0.3~30質量%、より好ましくは0.8~20質量%、更に好ましくは1.3~10質量%、より更に好ましくは2.3~10質量%である、前記<1>、<4>~<24>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<24>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<24>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0108】
<27> 繊維処理剤のpHが5.5以上の場合、繊維処理剤中の成分(A)の含有量が、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である、前記<1>、<4>~<24>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<24>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<24>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<28> 繊維処理剤のpHが5.5以上の場合、繊維処理剤中の成分(A)の含有量が、好ましくは1.0~60質量%、より好ましくは2.0~50質量%、更に好ましくは3.0~40質量%である、前記<1>、<4>~<24>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<24>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<24>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0109】
<29> 繊維処理剤が、好ましくは水を媒体とし、繊維処理剤中における水の含有量が、好ましくは成分(A)及び任意的に配合される成分を除いた残部である、前記<1>、<4>~<28>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<28>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<28>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<30> 繊維処理剤が、好ましくは水を媒体とし、繊維処理剤中における水の含有量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更により好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下、更により好ましくは95質量%以下、更により好ましくは90質量%以下、更により好ましくは85質量%以下である、前記<1>、<4>~<28>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<28>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<28>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<31> 繊維処理剤が、好ましくは水を媒体とし、繊維処理剤中における水の含有量が、好ましくは10~98質量%、より好ましくは20~97質量%、更に好ましくは30~96質量%、更により好ましくは40~95質量%、更により好ましくは40~90質量%、更により好ましくは40~85質量%である、前記<1>、<4>~<28>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<28>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<28>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0110】
<32> 工程(i)において、好ましくは再生コラーゲン繊維を、繊維処理剤で2回以上浸漬処理する、前記<1>、<4>~<31>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<31>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<31>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0111】
<33> 好ましくは、下記の成分(A)を含有する第1の繊維処理剤で処理した後、下記の成分(A)を含有する第2の繊維処理剤であって、第1の繊維処理剤よりもpHを1.0以上低く調整した第2の繊維処理剤で処理する2ステップ処理工程を含む、前記<32>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<32>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<32>記載の頭飾製品の製造方法。
<34> 好ましくは、2ステップ処理工程後に、さらに、成分(C)として安息香酸又はその塩を含有する追加繊維処理剤で処理する工程を含む、前記<33>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<33>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<33>記載の頭飾製品の製造方法。
<35> 好ましくは、下記の成分(A)を含有する第1の繊維処理剤で2回乃至3回以上処理した後、下記の成分(A)を含有する第2の繊維処理剤であって、第1の繊維処理剤よりもpHを1.0以上低く調整した第2の繊維処理剤で処理するマルチステップ処理工程を含む、前記<32>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<32>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<32>記載の頭飾製品の製造方法。
<36> 好ましくは、下記の成分(A)を含有する第1の繊維処理剤で処理する工程と、成分(C)として安息香酸又はその塩を含有する追加繊維処理剤で処理する工程を含む、前記<32>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<32>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<32>記載の頭飾製品の製造方法。
【0112】
(A)カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体であって、酸価が100mgKOH/g以上であり、かつ重量平均分子量が1500~15000である共重合体。
【0113】
<37> 追加繊維処理剤中の(C)安息香酸又はその塩の含有量が、安息香酸として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である、前記<34>若しくは<36>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<34>若しくは<36>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<34>若しくは<36>記載の頭飾製品の製造方法。
<38> 追加繊維処理剤中の(C)安息香酸又はその塩の含有量が、安息香酸として、好ましくは0.1~60質量%、より好ましくは1~55質量%、更に好ましくは5~50質量%、より更に好ましくは10~40質量%、より更に好ましくは20~35質量%である、前記<34>若しくは<36>記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<34>若しくは<36>記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<34>若しくは<36>記載の頭飾製品の製造方法。
【0114】
<39> 繊維処理剤の量が、再生コラーゲン繊維の質量に対する浴比(繊維処理剤の質量/再生コラーゲン繊維の質量)で、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更により好ましくは10以上、更により好ましくは20以上であり、そして、好ましくは500以下、より好ましくは250以下、更に好ましくは100以下、更により好ましくは50以下である、前記<1>、<4>~<38>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<38>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<38>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<40> 繊維処理剤の量が、再生コラーゲン繊維の質量に対する浴比(繊維処理剤の質量/再生コラーゲン繊維の質量)で、好ましくは2~500、より好ましくは3~250、更に好ましくは5~100、更により好ましくは10~100、更により好ましくは20~100、更により好ましくは20~50である、前記<1>、<4>~<38>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<38>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<38>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0115】
<41> 繊維処理剤への再生コラーゲン繊維の浸漬温度が、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下、より更に好ましくは50℃以下である、前記<1>、<4>~<40>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<40>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<40>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<42> 繊維処理剤への再生コラーゲン繊維の浸漬温度が、好ましくは20℃以上100℃未満、より好ましくは25~80℃、更に好ましくは30~70℃、更により好ましくは30~60℃、より更に好ましくは30~50℃である、前記<1>、<4>~<40>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<40>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<40>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0116】
<43> 浸漬時間が、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間以上、より更に好ましくは3時間以上、より更に好ましくは5時間以上、より更に好ましくは10時間以上であり、そして、好ましくは48時間以下、より好ましくは33時間以下、更に好ましくは30時間以下である、前記<1>、<4>~<42>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<42>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<42>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<44> 浸漬時間が、好ましくは15分以上48時間以下、より好ましくは30分以上33時間以下、更に好ましくは1時間以上30時間以下、より更に好ましくは3時間以上30時間以下、より更に好ましくは5時間以上30時間以下、より更に好ましくは10時間以上30時間以下である、前記<1>、<4>~<42>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<42>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<42>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0117】
<45> 好ましくは、工程(i)を水分の蒸発が抑制される環境下で行う、前記<1>、<4>~<44>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<44>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<44>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0118】
<46> 繊維処理剤が、繊維浸透型である、前記<1>、<4>~<45>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<45>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<45>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0119】
<47> 成分(A)に係る共重合体が塩の形態である場合、塩が、好ましくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩であり、更に好ましくはナトリウム塩である、前記<1>、<4>~<46>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<2>、<4>~<46>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<3>~<46>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
<48> 成分(C)が塩の形態である場合、塩が、好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩であり、更に好ましくはナトリウム塩である、前記<34>~<38>のいずれか一に記載の再生コラーゲン繊維処理方法、前記<34>~<38>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維の製造方法、又は前記<34>~<38>のいずれか一に記載の頭飾製品の製造方法。
【0120】
<49> 再生コラーゲン繊維中に、下記の成分(A)を含有してなる、改質再生コラーゲン繊維。
(A)カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体であって、酸価が100mgKOH/g以上であり、かつ重量平均分子量が1500~15000である共重合体
【0121】
<50> 成分(A)が、好ましくは不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸及びそれらの塩から選択される1以上に由来する構造単位と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む共重合体含む共重合体である、前記<49>記載の改質再生コラーゲン繊維。
【0122】
<51> 成分(A)が、好ましくはスチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、ビニル安息香酸-マレイン酸共重合体、ビニル安息香酸-アクリル酸共重合体、ビニル安息香酸-メタクリル酸共重合体、スチレン-4-ビニル安息香酸共重合体及びそれらの塩から選択される1種又は2種以上であり、更に好ましくはスチレン-マレイン酸共重合体又はその塩である、前記<49>又は<50>記載の改質再生コラーゲン繊維。
【0123】
<52> 成分(A)が、好ましくは不飽和脂肪族炭化水素化合物由来の構造単位を更に含む、前記<49>~<51>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維。
【0124】
<53> カルボキシ基又はその塩を有する不飽和単量体由来の構造単位(u1)と、芳香族ビニル化合物単量体由来の構造単位(u2)との割合が、モル比(u1/u2)で、好ましくは1/5~5/1、より好ましくは1/3~3/1、更に好ましくは1/2~2/1である、前記<49>~<52>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維。
【0125】
<54> 成分(A)に係るカルボキシ基が塩の形態である場合、塩が、好ましくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩であり、更に好ましくはナトリウム塩である、前記<49>~<53>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維。
【0126】
<55> 成分(A)の酸価が、好ましくは200mgKOH/g以上、より好ましくは300mgKOH/g以上、更に好ましくは400mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは1000mgKOH/g以下、より好ましくは800mgKOH/g以下、更に好ましくは600mgKOH/g以下である、前記<49>~<54>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維。
<56> 成分(A)の酸価が、好ましくは200~1000mgKOH/g、より好ましくは300~800mgKOH/g、更に好ましくは400~600mgKOH/gである、前記<49>~<54>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維。
【0127】
<57> 成分(A)の重量平均分子量が、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、そして、好ましくは12000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは8000以下、更に好ましくは7000以下である、前記<49>~<56>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維。
<58> 成分(A)の重量平均分子量が、好ましくは2000~12000、より好ましくは3000~12000である。また好ましくは2000~8000、より好ましくは3000~8000、更に好ましくは4000~7000であってもよい、前記<49>~<56>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維。
【0128】
<59> 成分(A)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更により好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更により好ましくは55質量%以下、更により好ましくは50質量%以下、更により好ましくは45質量%以下である、前記<49>~<58>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維。
<60> 成分(A)の含有量が、好ましくは0.1~70質量%、より好ましくは0.5~65質量%、更に好ましくは1.0~60質量%、更により好ましくは3.0~55質量%、更により好ましくは5.0~50質量%、更により好ましくは10~45質量%である、前記<49>~<58>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維。
【0129】
<61> 好ましくは、さらに、下記の成分(B)を含有する、前記<49>~<60>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維。
(B)多価金属、又はその塩若しくはその錯体
【0130】
<62> 成分(B)が、好ましくはカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、クロム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、アンチモン、鉄、及び銅から選ばれる1以上の多価金属、又はその塩若しくはその錯体であり、より好ましくはアルミニウム、ジルコニウム及びチタンから選ばれる1以上の多価金属、又はその塩若しくはその錯体であり、更に好ましくはアルミニウム又はその塩若しくはその錯体である、前記<61>記載の改質再生コラーゲン繊維。
【0131】
<63> 成分(B)の含有量が、金属元素量として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更により好ましくは2.0質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更により好ましくは10質量%以下である、前記<61>又は<62>記載の改質再生コラーゲン繊維。
<64> 成分(B)の含有量が、金属元素量として、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.5~30質量%、更に好ましくは1.0~20質量%、更により好ましくは2.0~10質量%である、前記<61>又は<62>記載の改質再生コラーゲン繊維。
【0132】
<65> <49>~<64>のいずれか一に記載の改質再生コラーゲン繊維を構成要素として含む頭飾製品。
【0133】
<66> 当該頭飾製品が、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー及びドールヘアーから選ばれるものである、前記<65>記載の頭飾製品。
【実施例0134】
<分析方法>
1.再生コラーゲン繊維の水中繊維膨潤率の測定
下記式(1)により、水中繊維膨潤率を算出した。
【0135】
水中繊維膨潤率S(%)=[(w1-w2)/w2]×100 (1)
【0136】
式(1)中の各記号の定義は、次のとおりである。
w1:1.0gの再生コラーゲン繊維を100gのイオン交換水が入った容器に浸漬し、容器の口を密閉し、容器ごと40℃設定のウォーターバス(型番:TBS221FA、製造元:株式会社東洋製作所)に浸漬して30分間加熱した後、再生コラーゲン繊維を容器から取り出し、小型遠心分離機 (H-112、株式会社コクサン)に入れ、遠心力220[×g](回転速度ダイヤル「4」(2000rpm)で1分間遠心脱水した後で取り出し、直ちに重量測定を行い、これを重量w1とした。
w2:重量w1を測定した後の再生コラーゲン繊維を濾紙に乗せて105℃に設定した乾燥機(SOFW-450SB、アズワン株式会社製)に入れて3時間乾燥した後で取り出し、直ちに重量測定を行い、これを重量w2とした。
【0137】
2.成分(A)の重量平均分子量の測定
下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を測定した。
(1)試薬
・超純水:超純水製造装置ミリQ製造水、ミリポア社製
・ジメチルホルムアミド(DMF):特級、関東化学株式会社製
・臭化リチウム一水和物(LiBr):特級、関東化学株式会社製
・りん酸:特級、シグマアルドリッチ社製
(2)試料前処理方法
試料約50mgを精密に量り、超純水を0.5mL加え、後述の移動相を10mL加えて溶解した液をフィルターろ過したものを試料溶液とした。
(3)測定
試料溶液及び標準溶液を用いて、以下の条件でGPC測定を行い、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。
・流速 :1mL/min
・移動相:60mMリン酸、50mMLiBr含有DMF
・カラム:TSKgelα(アルファ)カラム (東ソー株式会社製)
・検出器;RI(示差屈折検出器)
・標準物質:単分散ポリスチレン
【0138】
3.繊維中のアルミニウム定量法
処理後の再生コラーゲン繊維中に含有されるアルミニウム量を、以下の方法によって定量した。
(1)試薬
・硫酸 :精密分析用、富士フイルム和光純薬社製
・塩酸 :金属分析用、関東化学社製
・炭酸ナトリウム:特級、富士フイルム和光純薬社製
・ほう酸:特級、富士フイルム和光純薬社製
・アルミニウム標準液:原子吸光分析用1000mg/L、関東化学社製
・超純水:超純水製造装置ミリQ製造水、ミリポア社製
(2)試料前処理方法
繊維束を60℃に設定された乾燥機(SOFW-450SB、アズワン株式会社)内につるし、繊維束の下端に250gのおもりを取り付け、繊維全体に張力がかかった状態で1時間乾燥した。
試料0.1gを白金ルツボに精秤し、白煙が出なくなるまで加熱した後、硫酸を数滴添加し、再び白煙が出なくなるまで加熱し、550℃電気炉で十分灰化処理を行った。その後、アルカリ融剤(炭酸ナトリウム:ほう酸=1:0.4)1gを添加し、950℃の電気炉で溶融した。時計皿をかぶせ、超純水及び塩酸(6mol/L)5mLを添加して、70~80℃のホットプレートで加熱溶解し、冷後、超純水で50mLに定容とした液を測定溶液とした。
(3)検量線溶液調製
アルミニウム標準液(1000mg/L)を用いて、0.1~20mg/Lの検量線溶液を調製した。それぞれの溶液には試料と同程度となるようにアルカリ融剤及び塩酸を添加した。
(4)測定
調製した試料を、ICP発光分光分析装置にて、以下の条件で各元素の測定を行った。
・分析装置:iCAP6500Duo(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
・波長 :Al 396.152nm
・RFパワー:1150W
・クーラントガス流量:12L/min
・ネブライザー流量:0.70L/min
・補助ガス:0.5L/min
・ポンプ流量:50rpm
【0139】
4.酸価の測定
JIS K 0070にしたがって電位差滴定法により測定した。
【0140】
5.pHの測定
25℃において、各組成物をそのままpHメーター(F-52、HORIBA社製)で測定した。
【0141】
6.繊維中の成分(A)の定量法
以下、成分(A)としてスチレン-マレイン酸共重合体を使用した場合の改質再生コラーゲン繊維中の成分(A)の定量方法を示す。
(1)試薬
・1mol/L水酸化ナトリウム水溶液:容量分析用、富士フイルム和光純薬株式会社製
・超純水:超純水製造装置ミリQ製造水、ミリポア社製
・ジメチルホルムアミド(DMF):特級、関東化学株式会社製
・臭化リチウム一水和物(LiBr):特級、関東化学株式会社製
・りん酸:特級、シグマアルドリッチ社製
(2)試料溶液
試料は、20℃相対湿度65%で24時間調湿後、細かく裁断し、約50mgを精密に量り、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を10mL添加し、50℃で3時間加温溶解した。溶液のpHを4.7~5.3に調整し、凍結乾燥した試料に対して、超純水を0.5mL加え、後述の移動相を9.5mL加えて希釈した液をフィルターろ過したものを試料溶液とした。
(3)検量線溶液調製
別にスチレン-マレイン酸共重合体を後述の移動相に溶解し、非解離型のスチレン-マレイン酸共重合体として、0.25~5.0mg/mLの濃度になるように調製し、検量線作図のための標準溶液とした。
(4)測定
試料溶液及び標準溶液を用いて、以下の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行い、試料溶液のピーク面積並びに標準溶液のピーク面積を求めた。また、標準溶液のピーク面積の結果を基に検量線を作成した。
・流速:0.8mL/min
・移動相;60mMリン酸、50mMLiBr含有DMF
・カラム:TSKgelα(アルファ)カラム (東ソー株式会社製)
・検出器; 紫外可視分光検出器
・測定波長:267nm
(5)スチレン-マレイン酸共重合体量の算出
改質再生コラーゲン繊維に含有されるスチレン-マレイン酸共重合体由来のピーク面積を基に作成した検量線を用いて、繊維質量当たりのスチレン-マレイン酸共重合体量を算出した。
【0142】
7.繊維中の成分(C)の定量法
処理後の再生コラーゲン繊維中に含有される成分(C)量を、以下の方法によって定量する。
(1)試薬
・6N塩酸:容量分析用滴定液、関東化学社製
・酢酸ナトリウム:特級、富士フイルム和光純薬社製
・酢酸 :特級、富士フイルム和光純薬社製
・アセトニトリル:LC/MS用、関東化学社製
・安息香酸ナトリウム:特級、富士フイルム和光純薬社製
・超純水 :超純水製造装置ミリQ製造水、ミリポア社製
(2)試料前処理方法
試料は細かく裁断し、約10mgを精密に量り、6N塩酸を3mL添加し、50℃で15時間加温溶解する。放冷後、フィルターろ過したものを試料溶液とする。
(3)検量線溶液調製
別に成分(A)を移動相に溶解し、酸基のように解離部位があるものは非解離型の成分(A)として0.1~100μg/mLの濃度になるように調製し、検量線作図のための標準溶液とする。
(4)測定
試料溶液及び標準溶液を、以下の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、試料溶液のピーク面積並びに標準溶液のピーク面積を測定する。
・検出器 :紫外可視分光光度計
・測定波長:230nm
・カラム :内径21mm、長さ150mmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填する。
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相 :酢酸ナトリウムを約0.68gと酢酸0.91gに超純水を750mL加え溶解し、アセトニトリルを250mL加え、混和する。
(5)HPLC/UV条件
・装置 :UltiMate3000システム(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
・カラム :L-column2 ODS、粒子径5μm、2.1×150mm(化学物質評価研究機構)
・カラム温度:40℃
・移動相 :20mM酢酸アンモニウム25%アセトニトリル緩衝液
・分析時間:10分
・検出器 :DAD(ダイオードアレイ検出器)
・検出波長:230nm
・流速 :0.3mL/min(アイソクラティック溶出)
・注入量 :10μL
【0143】
<使用原料>
本実施例で使用した材料は、下記のとおりである。
(1)再生コラーゲン繊維
(i)再生コラーゲン繊維A
製造例1
牛の床皮を常法にしたがってアルカリで可溶化して紡糸原液とし、これを紡糸ノズルから凝固浴に吐出して繊維化し、エポキシ化合物処理を行って再生コラーゲン繊維を製造した。この再生コラーゲン繊維を、当該繊維の乾燥重量換算1質量部に対して、硫酸アルミニウム・14~18水和物5.0質量%、クエン酸・1水和物0.65質量%、水酸化ナトリウム1.3質量%を含む水溶液30質量部を30℃に温度調整して液循環を行いながら浸漬処理し、更に1~5時間程度をかけて5%水酸化ナトリウム水溶液を分割添加して5時間後の溶液の最終pHを4.5~5.0に調整し、更に同溶液中に3時間保持した後、十分水洗処理を行って、再生コラーゲン繊維Aを得た。
再生コラーゲン繊維Aは、水中繊維膨潤率が435%であった。なお、凝固浴の調製は国際公開第2017/159565号に、エポキシ化合物処理は国際公開第2014/132889号に、それぞれしたがって行った。
【0144】
(ii)再生コラーゲン繊維B
再生コラーゲン繊維Aから、長さ30cmの繊維束(60℃、1時間乾燥後、20℃、65%RHで12時間放置したときに、重量が1.5gとなる量)を300束作製した。各繊維束を1束ずつ60℃に設定された乾燥機(SOFW-450SB、アズワン株式会社)内につるし、それぞれの繊維束の下端に250gのおもりを取り付け、繊維全体に張力がかかった状態で1時間乾燥を行ったものを再生コラーゲン繊維Bとして使用した。
・形状 :ストレート
・水中繊維膨潤率:113%
・アルミニウム含有量:6.8質量%
【0145】
(iii)再生コラーゲン繊維C
製造例2
牛の床皮を常法にしたがってアルカリで可溶化して紡糸原液とし、これを紡糸ノズルから凝固浴に吐出して繊維化し、エポキシ化合物処理を行った後、十分水洗処理を行って、再生コラーゲン繊維Cを得た。
再生コラーゲン繊維Cは、水中繊維膨潤率が692%であった。なお、凝固浴の調製は国際公開第2017/159565号に、エポキシ化合物処理は国際公開第2014/132889号に、それぞれしたがって行った。
【0146】
(2)スチレン-マレイン酸共重合体
(i)スチレン-マレイン酸共重合体ナトリウム塩 A
XIRAN1000HNa(Polyscope社製)を使用した。
・重量平均分子量(Mw):9195
・酸価:475mgKOH/g
・スチレン/マレイン酸のモル比:1/1
【0147】
(ii)スチレン-マレイン酸共重合体ナトリウム塩 B
XIRAN2000HNa(Polyscope社製)を使用した。
・重量平均分子量(Mw):8143
・酸価:355mgKOH/g
・スチレン/マレイン酸のモル比:2/1
【0148】
(iii)スチレン-マレイン酸共重合体ナトリウム塩 C
XIRAN3000HNa(Polyscope社製)を使用した。
・重量平均分子量(Mw):13803
・酸価:285mgKOH/g
・スチレン/マレイン酸のモル比:3/1
【0149】
(iv)スチレン-マレイン酸共重合体ナトリウム塩 D
文献(郡司ら、色材、75(10)、463-460(2002))にしたがってスチレン-無水マレイン酸共重合体を合成し、これを水酸化ナトリウムで加水分解して使用した。
・重量平均分子量(Mw):7049
・ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH値:11.5
・酸価:475mgKOH/g
・スチレン/マレイン酸のモル比:1/1
【0150】
(v)スチレン-マレイン酸共重合体ナトリウム塩 E
文献(郡司ら、色材、75(10)、463-460(2002))にしたがってスチレン-無水マレイン酸共重合体を合成し、これを水酸化ナトリウムで加水分解して使用した。
・重量平均分子量(Mw):3829
・ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH値:11.5
・酸価:475mgKOH/g
・スチレン/マレイン酸のモル比:1/1
【0151】
(vi)スチレン-マレイン酸共重合体ナトリウム塩 F
文献(郡司ら、色材、75(10)、463-460(2002))にしたがってスチレン-無水マレイン酸共重合体を合成し、これを水酸化ナトリウムで加水分解して使用した。
・重量平均分子量(Mw):10530
・ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH値:11.5
・酸価:475mgKOH/g
・スチレン/マレイン酸のモル比:1/1
【0152】
(vii)スチレン-マレイン酸共重合体ナトリウム塩 G
文献(郡司ら、色材、75(10)、463-460(2002))にしたがってスチレン-無水マレイン酸共重合体を合成し、これを水酸化ナトリウムで加水分解して使用した。
・重量平均分子量(Mw):3288
・ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH値:11.5
・酸価:475mgKOH/g
・スチレン/マレイン酸のモル比:1/1
【0153】
(3)安息香酸ナトリウム
和光特級Wako Special Grade試薬(富士フイルム和光純薬株式会社製)を使用した。
・分子量(M):122
・酸価:460mgKOH/g
【0154】
実施例1~15及び比較例1~3
表1、2に示す処方の組成物を用い、下記方法に従って再生コラーゲン繊維を処理し、各種評価を行った。なお、比較例1においては、下記の処理方法Aの(手順1)と(手順6)のみを行い、評価した。実施例1~11及び比較例1~2の結果を表1に示し、実施例12~15及び比較例3の結果を、比較例1の結果とともに表2に示す。
【0155】
<処理方法>
(1)処理方法A
再生コラーゲン繊維Aを、以下の手順で処理した。
(手順1)
再生コラーゲン繊維Aから、長さ30cmの繊維束(60℃、1時間乾燥後、20℃、65%RHで12時間放置したときに、重量が1.5gとなる量)を各実施例及び比較例につき10束作製した。
(手順2)
繊維束を、表中に示す浴比(浴比は、上記手順1の乾燥後重量1.5gをもとに算出)となる量の繊維処理剤に、一束ずつ一つの容器を用いて浸漬し、それぞれの容器の口を密閉した。
(手順3)
容器ごと表中に示す温度に設定されたウォーターバス(TBS221FA、株式会社東洋製作所)に浸漬して5分間静置し、容器内の液温を表中に示す温度まで昇温させた後、容器をウォーターバスから取り出した。
(手順4)
表中に示す温度に設定された乾燥機(SOFW-450SB、アズワン株式会社)内に設置された撹拌用ローター(VMR-5R、アズワン株式会社)の上に、繊維束の入った容器を置き、回転速度80rpmで容器を回転し、表中に示す時間加熱撹拌した。
(手順5)
繊維束の入った容器を乾燥機から取り出し、室温に戻した後、繊維束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、クシで毛流れを整えた。
(手順6)
繊維束を一束ずつ表中に記載の温度に設定された乾燥機内につるし、それぞれの繊維束の下端に250gのおもりを取り付け、繊維全体に張力がかかった状態で表中に記載の時間乾燥を行った。
(手順7)
繊維束を乾燥機から取り出し、室温に戻し、おもりを取り外した。
【0156】
(2)処理方法B
再生コラーゲン繊維Bを、以下の手順で処理した。
(手順1)
再生コラーゲン繊維Bから、1.5g(20℃、65%RHで12時間放置後、測定)の長さ30cmの繊維束を各実施例及び比較例につき10束作製した。
(手順2)
繊維束を、表中に示す浴比(浴比は、上記手順1の繊維重量1.5gをもとに算出)となる量の繊維処理剤に、一束ずつ一つの容器を用いて浸漬し、それぞれの容器の口を密閉した。
(手順3)
容器ごと表中に示す温度に設定されたウォーターバス(TBS221FA、株式会社東洋製作所)に浸漬して5分間静置し、容器内の液温を表中に示す温度まで昇温させた後、容器をウォーターバスから取り出した。
(手順4)
表中に示す温度に設定された乾燥機(SOFW-450SB、アズワン株式会社)内に設置された撹拌用ローター(VMR-5R、アズワン株式会社)の上に、繊維束の入った容器を置き、回転速度80rpmで容器を回転し、表中に示す時間加熱撹拌した。
(手順5)
繊維束の入った容器を乾燥機から取り出し、室温に戻した後、繊維束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、クシで毛流れを整えた。
(手順6)
繊維束を一束ずつ60℃に設定された乾燥機内につるし、それぞれの繊維束の下端に250gのおもりを取り付け、繊維全体に張力がかかった状態で1時間乾燥を行った。
(手順7)
繊維束を乾燥機から取り出し、室温に戻し、おもりを取り外した。
【0157】
<評価>
1.定量
(i)重量増加(%)
処理後の繊維束重量(W)を、20℃、65%RHに12時間放置後測定し、初期の繊維束重量1.5gからの重量増加率を計算した。
【0158】
重量増加[%]=[(W-1.5)/1.5]×100
【0159】
重量増加(%)が大きいほど多くの成分(A)が繊維内部に浸透したことを示しており、重量増加(%)0%は、繊維内部への成分(A)の浸透が実質的に起こらなかったと考えられる。
【0160】
(ii)繊維内部に含まれる成分(A)(Mw1500~15000)の量(%)
<分析方法>の「6.繊維中の成分(A)の定量法」で説明したGPC測定により得られたクロマトグラムに基づいて、改質再生コラーゲン繊維中の成分(A)の量「GPC定量値Y(%)」を算出した。なお、「GPC定量値Y(%)」は、成分(A)の繊維中の質量%であり、実測した重量増加(%)とは一致しない。即ち、ここでいう「GPC定量値Y(%)」は、成分(A)に係る共重合体の重量平均分子量が1500~15000であるから、GPCクロマトグラムにおける分子量1500~15000の画分の量ではなく、分子量1500未満及び15000超の画分も含んだ成分(A)に係る共重合体全体の定量値を意味する。したがって、重量平均分子量が1500未満又は15000超である共重合体の場合、当該共重合体は成分(A)に該当しないから、成分(A)としての定量値は0となる。
そして、「GPC定量値Y(%)」から求めた「理論上の重量増加X(%)」を下記の方法で求めた。
【0161】
(iii)理論上の重量増加(%)
上記(ii)により算出されたGPC定量値Y(%)に基づいて、下記式により理論上の重量増加X(%)を算出した。なお、理論上の重量増加X(%)は、繊維から溶出などで失われた成分がないと仮定した時の最大値である。
【0162】
重量増加X[%]=100Y/(100-Y)
【0163】
2.耐水性
(1)水中での繊維引張時の弾性率(MPa)
水中での繊維引張時の弾性率は、次のように測定した。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の繊維束を用いて行った。また、数値としては複数本(5本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。数値が高いほど、ハリコシがあって外力による延伸に強く、耐久性にも優れることを示す。評価は、以下の手順で行った。
(手順1)
繊維束から繊維5本を切り取り、それぞれから3cmの繊維片を採取し、合計で5個の3cmの繊維片を得た。
(手順2)
繊維片を繊維自動引張り試験機(MTT690、DIA-STRON limited社製)にセットした。繊維が水に浸漬した状態で30分放置した後で自動引張測定を開始し、水中での繊維引張時の弾性率を求めた。弾性率を求める上で必要となる水中での繊維断面積については別途、光学顕微鏡観察により直接計測した。
【0164】
(2)繊維引張時の平均破断伸度の増加率(%)
繊維引張時の耐水性、及び伸縮性(粘り強さ)の指標として、平均破断伸度、即ち引張で繊維が延伸されていったときに元の繊維長に対して何%延伸されたところで破断が起こるかについて、複数本(10本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の繊維束を用いて、以下の手順で行った。
(手順1)
繊維束の根本から、繊維10本を切り取った。それぞれの繊維の根本と毛先の中間付近から3cmの繊維片を採取し、合計で10個の3cmの毛髪片を得た。
(手順2)
繊維片を、繊維自動引張り試験機(MTT690、DIA-STRON limited社製)にセットした。水に浸漬した状態で30分放置後自動測定を開始し、繊維が水に浸漬された状態での平均破断伸度を求めた。数値が高いほど、伸縮性が高く粘り強さに優れ、耐久性にも優れることを示す。
【0165】
次式にしたがい、再生コラーゲン繊維Aに薬剤処理を行わずに乾燥だけを行った状態(上記した処理方法Aの(手順1)と(手順6)のみを行ったものであり、以下「未処理繊維(比較例1)」とも称する。)での繊維引張時の平均破断伸度(A%)を基準とし、処理後の繊維束の平均破断伸度(B%)が、未処理の状態からどの程度(C%)増加したかを、表中に「繊維引張時の平均破断伸度の増加率(%)」として記載した。
【0166】
繊維引張時の平均破断伸度の増加率C(%)=B(%)-A(%)
【0167】
(3)繊維引張時の平均破断荷重の増加量(gf)
繊維引張時の耐水性の指標として、繊維引張時の平均破断荷重を用いた。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の繊維束を用いて行った。また、数値としては複数本(10本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。評価は、以下の手順で行った。
(手順1)
繊維束の根本から、繊維10本を切り取った。それぞれの繊維の根本と毛先の中間付近から3cmの繊維片を採取し、合計で10個の3cmの毛髪片を得た。
(手順2)
繊維片を繊維自動引張り試験機(MTT690、DIA-STRON limited社製)にセットした。水に浸漬した状態で30分放置後自動測定を開始し、繊維が水に浸漬された状態で延伸したときの破断荷重を求めた。数値が高いほど、外力により破断しにくく、耐久性にも優れることを示す。
【0168】
次式にしたがい、再生コラーゲン繊維Aに薬剤処理を行わずに乾燥だけを行った状態〔未処理繊維(比較例1)〕での繊維引張時の平均破断荷重(W0(gf))を基準とし、処理後の繊維束の平均破断荷重(W1(gf))が、未処理の状態からどの程度(Y(gf))増加したかを、表中に「繊維引張時の平均破断荷重の増加量 [gf]」として記載した。
【0169】
Y(gf)=W1(gf)-W0(gf)
【0170】
(4)繊維洗浄液中の成分(A)の濃度(ppm)
繊維洗浄液中の成分(A)の濃度を、次の手順で測定した。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の繊維束であって、実施例1と比較例3で得られた繊維束を用いて行った。
(i)繊維洗浄液の作製
繊維束の根本から繊維を切り取り、1.0gの繊維束を作製した。この1.0gの繊維束を100gのイオン交換水が入った容器に浸漬し、容器の口を密閉し、容器ごと40℃設定のウォーターバス(型番:TBS221FA、製造元:株式会社東洋製作所)に浸漬して1時間加熱した後、繊維を容器から取り出した。容器に残ったイオン交換水を繊維洗浄液とした。
(ii)繊維洗浄液中の成分(A)の定量
紫外可視近赤外分光光度計により適した波長の吸光度を測定して定量した。例えば、成分(A)がスチレン-マレイン酸共重合体ナトリウム塩(XIRAN1000HNa、Polyscope社製)の場合、紫外可視近赤外分光光度計(V-560、日本分光株式会社製)により258nmにおける吸光度を測定し、その吸光度から成分(A)の濃度を算出した。検量線は、Polyscope社製の「XIRAN1000HNa」をイオン交換水で希釈して作製した。
【0171】
3.熱形状記憶能
熱形状記憶能の評価は、上記<処理方法>で処理された直後の繊維束を用いて行った。繊維束の根元から繊維を0.5g切り取り、長さ22cmの繊維束を作製した。なお、「(I)形状付与(カール)」の評価において、カールアップ率Iが7%以下であった場合は、効果なしとして、以降の処理、評価は行わなかった。
(I)形状付与(カール)
(手順1)
作製した長さ22cmの繊維束を30℃の水道水で30秒間濡らした後、濡れた繊維束を直径14mmのプラスチック製ロッドに巻き付け、クリップで固定した。
(手順2)
ロッドに巻き付けられた繊維束ごと60℃のウォーターバス(TBS221FA、株式会社東洋製作所)に浸漬し1分間加熱した。
(手順3)
繊維束をウォーターバスから取り出し、20℃の水に1分間浸漬し、水から取り出して室温に戻した。
(手順4)
繊維束をロッドから外し、クシを3回通した後、水から取り出した時点から起算して3分後に、吊した状態で真横から写真を撮った。
(手順5)
写真から、繊維束を垂直に吊したときの長さL(繊維束の上端を起点として最も遠い1点までの距離)を測定した。
【0172】
(評価基準)
直線に引き延ばしたときの繊維束の長さをL0、形状付与操作後の繊維束長さをLとして、次式にしたがって求められるカールアップ率=繊維束長さ減少率(I)(%)をカールの巻き強さと定義した。
【0173】
カールアップ率I(%)=[(L0-L)/L0]×100
【0174】
(II)再形状付与(ストレート)
(手順1)
上記(1)で評価した繊維束にクシを通して毛流れを整えた後、180℃設定のフラットアイロン(AHI-938、三木電器産業株式会社製)で5cm/secの速度で6回スライドした。
(手順2)
水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルドライした。
(手順3)
吊るして20℃、65%RHで12時間自然乾燥し、クシを3回通した後、吊した状態で真横から写真を撮った。
(手順4)
写真から、繊維束を垂直に吊したときの長さL(繊維束の上端を起点として最も遠い1点までの距離)を測定した。
【0175】
(評価基準)
直線に引き延ばしたときの繊維束の長さをL0、形状付与操作後の繊維束長さをLとして、次式に従って求められるストレート化率(ST)(%)をストレート化の達成度合いと定義した。ST=100%のとき、繊維束は完全にストレート化されている。
【0176】
ストレート化率ST(%)=[1-[(L0-L)/L0]]×100
【0177】
(III)再再形状付与(カール)
(手順1)
上記(2)で評価した繊維束を30℃の水道水で30秒間濡らした後、濡れた繊維束を直径14mmのプラスチック製ロッドに巻き付け、クリップで固定した。
(手順2)
ロッドに巻き付けられた繊維束ごと60℃のウォーターバス(TBS221FA、株式会社東洋製作所)に浸漬し1分間加熱した。
(手順3)
繊維束をウォーターバスから取り出し、20℃の水に1分間浸漬し、水から取り出して室温に戻した。
(手順4)
繊維束をロッドから外し、クシを3回通した後、水から取り出した時点から起算して3分後に、吊した状態で真横から写真を撮った。
(手順5)
写真から、繊維束を垂直に吊したときの長さL(繊維束の上端を起点として最も遠い1点までの距離)を測定した。
【0178】
(評価基準)
直線に引き延ばしたときの繊維束の長さをL0、形状付与操作後の繊維束長さをLとして、次式に従って求められるカールアップ率=繊維束長さ減少率(I)(%)をカールの巻き強さと定義した。
【0179】
カールアップ率I(%)=[(L0-L)/L0]×100
【0180】
4.水中繊維膨潤率(%)
下記式(1)により、水中繊維膨潤率を算出した。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の繊維束を用いて行った。
【0181】
水中繊維膨潤率S(%)=[(w1-w2)/w2]×100 (1)
【0182】
式(1)中の各記号の定義は、次のとおりである。
w1:繊維束の根本から繊維を切り取り、1.0gの繊維束を作製した。この1.0gの繊維束を100gのイオン交換水が入った容器に浸漬し、容器の口を密閉し、容器ごと40℃設定のウォーターバス(型番:TBS221FA、製造元:株式会社東洋製作所)に浸漬して30分間加熱した後、繊維を容器から取り出し、小型遠心分離機(H-112、株式会社コクサン)に入れ、遠心力220[×g](回転速度ダイヤル「4」(2000rpm)で1分間遠心脱水した後で取り出し、直ちに重量測定を行い、これを重量w1とした。
w2:重量w1を測定した後の繊維を濾紙に乗せて105℃に設定した乾燥機(SOFW-450SB、アズワン株式会社製)に入れて3時間乾燥した後で取り出し、直ちに重量測定を行い、これを重量w2とした。
【0183】
5.表面感触の良さ
表面の感触の評価は<処理方法>で処理された直後の繊維束を用い、手で触れた際の感触の滑らかさについて、専門パネラー5名が下記基準によって評価し、5名の合計値を評価結果とした。
【0184】
(評価基準)
5:未処理繊維(比較例1)に比べてきわめて滑らかな手触りである
4:未処理繊維(比較例1)に比べて滑らかな手触りである
3:未処理繊維(比較例1)に比べてわずかに滑らかな手触りである
2:未処理繊維(比較例1)の手触りと変わらない
1:未処理繊維(比較例1)よりもざらつき・きしみがあり手触りが劣る
【0185】
6.耐熱性
(1)110℃水蒸気接触後の収縮率(%)
110℃水蒸気接触後の収縮率は、次の手順で測定した。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の繊維束を用いて行った。
(手順1)
繊維束から繊維を切り取り、繊維5本束の両端をそれぞれテープ(スコッチテープ、3M社製)で固定したサンプルを作製した。このとき、テープ間にある繊維の長さが10.0cmになるようにした。
(手順2)
サンプルをオートクレーブ(型番:LSX-700、トミー工業株式会社製)に入れ、110℃設定で10分間加熱した。
(手順3)
サンプルを取り出し、テープ間にある繊維の長さhを測定し、加熱前の長さに比べて何%収縮したかを計算し、これを110℃水蒸気接触後の収縮率H(%)とした。Hが0%に近いほど、熱による収縮が起こりづらく、耐熱性に優れることを示す。
【0186】
110℃水蒸気接触後の収縮率H(%)=[(10-h)/10]×100
【0187】
〔式中、hは、110℃で10分間加熱した後のサンプルの長さ(cm)を示す。〕
【0188】
そして、繊維の耐熱性について、以下の基準で判定した。
再生コラーゲン繊維Aに薬剤処理を行わずに乾燥だけを行った状態〔未処理繊維(比較例1)〕での110℃水蒸気接触後の収縮率H0(%)を基準としたとき、ΔH=H0-Hに算出されるΔHの数値によってA~Eのスコアで評価した。
【0189】
(評価基準)
A: 6 < ΔH
B: 4 < ΔH ≦ 6
C: 2 < ΔH ≦ 4
D: 0 < ΔH ≦ 2
E: ΔH ≦ 0
【0190】
7.繊維への着色抑制
繊維への着色抑制は、次の手順で評価した。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の繊維束を用いて行った。
(手順1)
繊維束の表裏それぞれについて、根本付近、中間付近、毛先付近の繊維の色彩を分光測色計(色彩色差計CR-400、コニカミノルタ社製)で測定し、合計6点の平均値を測色値とした(L,a,b)。
(手順2)
着色の程度は、白い未処理繊維(比較例1)を基準としてΔE*abで評価した。また、処理を行ったその日のうちに測色した。
【0191】
ΔE*abは、白い未処理繊維(比較例1)の測定値を(L0,a0,b0)、処理繊維束の測定値を(L1,a1,b1)としたとき、〔(L1-L0)2+(a1-a0) 2+(b1-b0) 21/2で定義され、着色抑制効果を以下の基準で判定した。
【0192】
(評価基準)
5: ΔE*ab ≦ 5.0
4: 5.0 < ΔE*ab ≦ 10.0
3: 10.0 < ΔE*ab ≦ 15.0
2: 15.0 < ΔE*ab ≦ 20.0
1: 20.0 < ΔE*ab
【0193】
8.蛍光イメージング測定
実施例19の組成物で処理した改質再生コラーゲン繊維を樹脂に包埋後切断し、露出面を共焦点レーザー顕微鏡(A1RHD25, 株式会社ニコン製)により蛍光イメージング測定(励起波長400nm、蛍光検出波長425~475nm)を行った。その結果を図1に示す。
【0194】
【表1】
【0195】
【表2】
【0196】
実施例16~19及び比較例4
表3に示す処方の組成物を用い、下記方法に従って再生コラーゲン繊維を処理し、各種評価を行った。なお、安息香酸又はその塩を含む追加繊維処理剤(第3剤)がある場合は、第2剤で処理した後、更に第3剤を用いて(手順2)~(手順5)を再度行ってから、(手順7)を行った。
【0197】
<処理方法>
(1)処理方法C
再生コラーゲン繊維A、又は再生コラーゲン繊維Cを、以下の手順で処理した。
(手順1)
再生コラーゲン繊維から、長さ30cmの繊維束(60℃、1時間乾燥後、20℃、65%RHで12時間放置したときに、重量が1.5gとなる量)を各実施例につき10束作製した。
まず、表中に示す第1剤を用いて、以下の(手順2)~(手順5)を行った。
(手順2)
繊維束を、表中に示す浴比(浴比は、上記手順1の乾燥後重量1.5gをもとに算出)となる量の繊維処理剤又は追加繊維処理剤に、一束ずつ一つの容器を用いて浸漬し、それぞれの容器の口を密閉した。
(手順3)
容器ごと表中に示す温度に設定されたウォーターバス(TBS221FA、株式会社東洋製作所)に浸漬して5分間静置し、容器内の液温を表中に示す温度まで昇温させた後、容器をウォーターバスから取り出した。
(手順4)
表中に示す温度に設定された乾燥機(SOFW-450SB、アズワン株式会社)内に設置された撹拌用ローター(VMR-5R、アズワン株式会社)の上に、繊維束の入った容器を置き、回転速度80rpmで容器を回転し、表中に示す時間加熱撹拌した。
(手順5)
繊維束の入った容器を乾燥機から取り出し、室温に戻した後、繊維束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、クシで毛流れを整えた。
(手順6)
表中に示す第2剤を用いて、(手順2)~(手順5)を再度行った。
(手順7)
繊維束を一束ずつ表中に記載の温度に設定された乾燥機内につるし、それぞれの繊維束の下端に250gのおもりを取り付け、繊維全体に張力がかかった状態で表中に記載の時間乾燥を行った。
(手順8)
繊維束を乾燥機から取り出し、室温に戻し、おもりを取り外した。
【0198】
<評価>
上記した「1.重量増加」、「2.耐水性」の(1)~(3)、「3.熱形状記憶能」、「4.水中繊維膨潤率」、「5.表面感触の良さ」、「6.耐熱性」及び「7.繊維への着色抑制」に準拠して評価を行った。
【0199】
【表3】
図1