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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006790
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20250109BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20250109BHJP
【FI】
G05D1/02 S
B60W30/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107782
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】日吉 健太
(72)【発明者】
【氏名】山中 和之
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋三
(72)【発明者】
【氏名】興津 俊幸
【テーマコード(参考)】
3D241
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BA60
3D241BC01
3D241CA18
3D241CD08
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301HH18
5H301LL01
5H301LL03
5H301LL07
5H301LL08
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能で、走行方向に障害物が位置している場合に、これを検知して、適切に走行制御する車両を、コストを抑制して実現する。
【解決手段】車両1は、車体部10と、車体部10の周囲に位置した障害物を検知可能とするように複数が設けられた、障害物センサ50と、走行制御部と、を備え、障害物センサ50には、全方位を網羅するように、複数の障害物検知領域Sが予め設定され、障害物センサ50は、複数の障害物検知領域Sの中の、指定された障害物検知領域Sの内側に、障害物が位置しているか否かを出力し、走行制御部は、複数の障害物検知領域Sの中から、走行方向が含まれるような障害物検知領域Sを決定し、この障害物検知領域Sに障害物があると障害物センサ50が出力した際に、車体部10を減速または停止させるように走行制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能な車体部と、
前記車体部の周囲の、前記全方位の中のいずれの方向に障害物が位置した場合でも、当該障害物を検知可能とするように、各々が異なる方向を向くように前記車体部に複数が設けられた、障害物センサと、
走行制御部と、を備え、
前記障害物センサには、前記全方位を網羅するように、複数の障害物検知領域が予め設定され、前記障害物センサは、複数の前記障害物検知領域の中の、指定された前記障害物検知領域の内側に、前記障害物が位置しているか否かを出力し、
前記走行制御部は、複数の前記障害物検知領域の中から、走行方向が含まれるような前記障害物検知領域を決定して、当該障害物検知領域を前記障害物センサに対して指定し、当該障害物検知領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した際に、前記車体部を減速または停止させるように走行制御する、車両。
【請求項2】
複数の前記障害物検知領域の各々は、前記車体部側に位置する内側領域と、前記内側領域よりも前記車体部から離れて位置する外側領域と、に区画され、
前記障害物センサは、指定された前記障害物検知領域の、前記内側領域と前記外側領域の各々に対して、内側に、前記障害物が位置しているか否かを出力し、
前記走行制御部は、前記外側領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した際に、速度が閾値以下となるように減速し、前記内側領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した際に、前記車体部の走行を停止するように制御する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記走行方向が含まれるような前記障害物検知領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した際に、前記走行制御部は、前記障害物が位置していると出力された前記障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、当該走行指令を無効とする、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記走行方向が含まれるような前記障害物検知領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した後、停止した際に、前記走行制御部は、前記全方位において、前記障害物が位置しているか否かを検知可能とするように前記障害物検知領域を決定し、前記障害物センサに、決定された前記障害物検知領域に前記障害物が位置しているか否かを出力させ、前記障害物が位置していると出力された場合には、当該出力がなされた前記障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、当該走行指令を無効とする、請求項1に記載の車両。
【請求項5】
複数の前記障害物検知領域は、前方向に対応する前方領域、後方向に対応する後方領域、右方向に対応する右方領域、左方向に対応する左方領域、右前方に対応して前記前方領域と前記右方領域を含む右前方領域、左前方に対応して前記前方領域と前記左方領域を含む左前方領域、右後方に対応して前記後方領域と前記右方領域を含む右後方領域、及び左後方に対応して前記後方領域と前記左方領域を含む左後方領域を含み、
前記右前方領域、前記左前方領域、前記右後方領域、及び前記左後方領域のいずれかの領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した後、停止した際に、前記走行制御部は、当該領域に含まれる、前記前方領域と前記後方領域のいずれか一方である前後方領域と、前記右方領域と前記左方領域のいずれか一方である右左方領域との各々に対して、前記障害物センサに、前記障害物が位置しているか否かを出力させ、前記前後方領域と前記右左方領域のなかで、前記障害物が位置していると出力された領域に対して、当該領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、当該走行指令を無効とし、前記障害物が位置していないと出力された領域に対して、当該領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合には、当該走行指令を無効としない、請求項1に記載の車両。
【請求項6】
複数の前記障害物検知領域は、前方向に対応する前方領域、後方向に対応する後方領域、右方向に対応する右方領域、及び左方向に対応する左方領域を含み、
前記走行方向が含まれるような前記障害物検知領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した後、停止した際に、前記走行制御部は、前記障害物センサに、前記前方領域、前記後方領域、前記右方領域、及び前記左方領域の各々に、前記障害物が位置しているか否かを、個別に出力させ、前記障害物が位置していると出力された前記障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、当該走行指令を無効とする、請求項1に記載の車両。
【請求項7】
前記車体部を俯瞰表示する、表示部を更に備え、
前記走行制御部は、前記障害物が位置していると出力された前記障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の前記走行指令を受信した場合に、前記表示部の、前記車体部に対して対応する位置に、前記障害物検知領域を表示するとともに、前記表示部に、当該走行指令は無効である旨のメッセージを表示する、請求項3から6のいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
前記車体部の周囲には、互いに異なる方向を向くように、複数の警告灯が設けられ、
前記走行制御部は、前記障害物が位置していると前記障害物センサが出力した際に、前記障害物が位置していると出力された前記障害物検知領域に対応した方向を向くように設けられた前記警告灯を点灯させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両。
【請求項9】
前記車体部とは離間して設けられた操作装置と、
表示部と、
を更に備え、
前記操作装置は、複数の走行指令の各々に対応して設けられた、複数の入力部を備え、複数の前記入力部の各々が操作されることによって、前記操作装置は、当該入力部に対応する前記走行指令の入力を受け付け、入力を受け付けた前記走行指令を前記走行制御部へと送信し、
前記表示部は、前記操作装置の外観と複数の前記入力部を表示し、複数の前記入力部のいずれかが操作された場合には、当該入力部を他の前記入力部に対して識別表示し、
複数の前記走行指令は、
操作有効指令であって、前記操作装置は、当該操作有効指令に対応する前記入力部が操作されているときのみ、他の前記入力部に対応する前記走行指令の入力を受け付ける、前記操作有効指令と、
インチング有効指令であって、当該インチング有効指令に対応する前記入力部が操作されているときには、前記操作装置は、他の前記入力部に対する操作を、非連続な1回の操作と見做して、当該入力部に対応する前記走行指令の入力を受け付ける、前記インチング有効指令と、
複合走行指令であって、複数の前記走行指令の中の、2以上の前記走行指令を含むように構成され、当該複合走行指令に対応する前記入力部が操作されると、当該複合走行指令に含まれる2以上の前記走行指令の各々が、連続的に、前記走行制御部により実行される、前記複合走行指令と、
のいずれか、またはいずれかの組み合わせを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場等の内部における資材の運搬や、自動倉庫等における物品の荷捌き等のために、搬送車やロボット等の、様々な車両が用いられている。このような車両が、自律走行するような場合においては、進路上の障害物を検知し、検知状況に応じて車両を走行制御することが求められる。離間した位置から作業者によって車両が遠隔操作される場合においても、進路上に障害物を検知した場合には、例えば車両を自動的に減速、停止するように、制御されるのが望ましい。
これに関し、例えば特許文献1には、所定の角度範囲毎に検出物体までの距離を測定する非接触式の距離測定器と、無人搬送車の走行中に、現在の走行区間に設定された検出エリアのパターンの範囲内に、所定の角度範囲毎に測定された検出物体までの距離があるとき、障害物検出の出力を発生する判定手段と、を備える無人搬送車の障害物センサが開示されている。
特許文献1においては、検出エリアのパターンは、現在走行中の走行区間に応じて、切り替えられる。また、特許文献1に記載された無人搬送車は、走行方向が基本的には前方のみの1方向である。したがって、障害物センサは、無人搬送車の前方に向けて設けられ、検出エリアのパターンは、無人搬送車の前方に設定されている。
【0003】
特許文献1に記載されたような、走行方向が限られた車両においては、例えば前進しながら右に、あるいは左に向きを変えるようにして、右折、左折することにより、走行方向が変えられる。このような車両においては、走行方向を変える場合に、一定の旋回半径を必要とするため、例えば狭い走行路が複雑に分岐しているような走行路を車両が走行する場合に、走行方向の変更のための旋回半径を走行路上に確保することができない可能性がある。したがって、走行方向を自在に変えることが難しい。
このため、上記のような車両を、姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能とするように実現して、走行方向を自在に変更することができる構成とすることがある。
【0004】
このような、姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能な車両において、進路上の障害物を検知するためには、障害物センサの検知対象を、車両の周囲の、360°の全方位とする必要がある。このために、障害物センサとして、例えば3D-LiDAR(Light Detection And Ranging)等の、周囲360°における障害物を検知することが可能なセンサを、車両に搭載することが考えられる。しかし、このようなセンサは高価であり、コストが嵩む。
姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能で、走行方向に障害物が位置している場合に、これを検知して、適切に走行制御する車両を、コストを抑制して実現することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-215238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能で、走行方向に障害物が位置している場合に、これを検知して、適切に走行制御する車両を、コストを抑制して実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の車両は、姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能な車体部と、前記車体部の周囲の、前記全方位の中のいずれの方向に障害物が位置した場合でも、当該障害物を検知可能とするように、各々が異なる方向を向くように前記車体部に複数が設けられた、障害物センサと、走行制御部と、を備え、前記障害物センサには、前記全方位を網羅するように、複数の障害物検知領域が予め設定され、前記障害物センサは、複数の前記障害物検知領域の中の、指定された前記障害物検知領域の内側に、前記障害物が位置しているか否かを出力し、前記走行制御部は、複数の前記障害物検知領域の中から、走行方向が含まれるような前記障害物検知領域を決定して、当該障害物検知領域を前記障害物センサに対して指定し、当該障害物検知領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した際に、前記車体部を減速または停止させるように走行制御する。
上記のような構成においては、車両には、障害物センサが複数、車体部の周囲の、全方位のいずれの方向に障害物が位置した場合でも、これを検知可能とするように、各々が異なる方向を向くように設けられている。このため、1つの障害物センサのみによって、360°の全方位を対象として、障害物を検知する必要がなくなる。したがって、360°の全方位を検知可能な、高価なセンサを用いる必要がない。
また、例えば障害物センサとして3D-LiDAR等の、結果として対象物までの距離を出力するようなものを使用した場合においては、走行制御部側で、障害物検知領域内に障害物が位置しているか否かを判定するために、障害物センサから出力された結果としての距離の値を閾値と比較する等の、煩雑な内部処理が必要となる。これに対し、上記のような構成においては、障害物センサには、360°の全方位を網羅するように、複数の障害物検知領域が予め設定され、障害物センサは、複数の障害物検知領域の中の、指定された障害物検知領域の内側に、障害物が位置しているか否かを出力する。すなわち、障害物センサは、複数の障害物検知領域の中から障害物検知領域を指定すれば、当該障害物検知領域の中に障害物が位置しているか否かの判定結果を、結果として出力する。このため、走行制御部側では、障害物検知領域内に障害物が位置しているか否かを判定するに際しては、障害物センサの判定結果をそのまま使用すればよく、煩雑な内部処理を必要としない。したがって、このような内部処理を実現するための、LSI(Large Scale Integration(大規模集積回路))や、CPU(Central Processing Unit)等の情報処理部品として、低廉なものを使用することができる。
上記のような効果が相乗し、車両のコストを抑制することができる。
このような障害物センサを用いて、障害物センサに、360°の全方位を網羅するように、複数の障害物検知領域を予め設定したうえで、走行制御部が上記のように、複数の障害物検知領域の中から、走行方向が含まれるような障害物検知領域を決定して、当該障害物検知領域を障害物センサに対して指定し、当該障害物検知領域に障害物があると障害物センサが出力した際に、減速または停止するように走行制御することによって、姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能で、走行方向に障害物が位置している場合に、これを検知して、適切に走行制御する車両を、コストを抑制して実現することが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、複数の前記障害物検知領域の各々は、前記車体部側に位置する内側領域と、前記内側領域よりも前記車体部から離れて位置する外側領域と、に区画され、前記障害物センサは、指定された前記障害物検知領域の、前記内側領域と前記外側領域の各々に対して、内側に、前記障害物が位置しているか否かを出力し、前記走行制御部は、前記外側領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した際に、速度が閾値以下となるように減速し、前記内側領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した際に、前記車体部の走行を停止するように制御する。
上記のような構成によれば、複数の障害物検知領域の各々を、車体部側に位置する内側領域と、内側領域よりも車体部から離れて位置する外側領域と、に区画し、障害物センサが、指定された障害物検知領域の、内側領域と外側領域の各々に対して、その内側に、障害物が位置しているか否かを出力するように構成したうえで、走行制御部が、外側領域に障害物があると障害物センサが出力した際に、速度が閾値以下となるように減速し、内側領域に障害物があると障害物センサが出力した際に、走行を停止するように制御するようにすることで、センサとして3D-LiDAR等の、結果として対象物までの距離を出力するようなものを使用しない場合であっても、障害物との距離に応じた走行制御を、緻密に行うことができる。
【0009】
本発明の別の態様においては、前記走行方向が含まれるような前記障害物検知領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した際に、前記走行制御部は、前記障害物が位置していると出力された前記障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、当該走行指令を無効とする。
上記のような構成によれば、周囲に障害物があると障害物センサが出力した際に、走行制御部は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、当該走行指令を無効とするように制御する。このため、障害物へと接近するような走行を抑制することができる。
【0010】
本発明の別の態様においては、前記走行方向が含まれるような前記障害物検知領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した後、停止した際に、前記走行制御部は、前記全方位において、前記障害物が位置しているか否かを検知可能とするように前記障害物検知領域を決定し、前記障害物センサに、決定された前記障害物検知領域に前記障害物が位置しているか否かを出力させ、前記障害物が位置していると出力された場合には、当該出力がなされた前記障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、当該走行指令を無効とする。
上記のような構成によれば、周囲に障害物があると障害物センサが出力した後、停止した際に、走行制御部は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、当該走行指令を無効とするように制御する。このため、障害物へと接近するような走行を抑制することができる。
ここで、走行制御部は、全方位において、障害物が位置しているか否かを検知可能とするように障害物検知領域を決定し、障害物センサに、決定された障害物検知領域に障害物が位置しているか否かを出力させる。このため、車両が停止した状態において、車両が停止する要因となった障害物が車両の周囲から移動して存在しなければ、障害物センサは対応する障害物検知領域に障害物が位置していないと出力し得る。また、新たな障害物が車両の周囲に侵入してきていれば、障害物センサは、新たな障害物が位置していることを検知して、出力することもできる。このようにして、車両の周囲の全方位において、停止している際の障害物に関する情報が更新される。上記のような、走行指令を無効とするような制御は、このようにして更新された情報を基に行われる。したがって、受信した走行指令において指定された走行方向を、無効とするか否かの判断を、停止の後の始動しようとする時点における障害物の状況に基づいて、適切に行うことができる。
【0011】
本発明の別の態様においては、複数の前記障害物検知領域は、前方向に対応する前方領域、後方向に対応する後方領域、右方向に対応する右方領域、左方向に対応する左方領域、右前方に対応して前記前方領域と前記右方領域を含む右前方領域、左前方に対応して前記前方領域と前記左方領域を含む左前方領域、右後方に対応して前記後方領域と前記右方領域を含む右後方領域、及び左後方に対応して前記後方領域と前記左方領域を含む左後方領域を含み、前記右前方領域、前記左前方領域、前記右後方領域、及び前記左後方領域のいずれかの領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した後、停止した際に、前記走行制御部は、当該領域に含まれる、前記前方領域と前記後方領域のいずれか一方である前後方領域と、前記右方領域と前記左方領域のいずれか一方である右左方領域との各々に対して、前記障害物センサに、前記障害物が位置しているか否かを出力させ、前記前後方領域と前記右左方領域のなかで、前記障害物が位置していると出力された領域に対して、当該領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、当該走行指令を無効とし、前記障害物が位置していないと出力された領域に対して、当該領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合には、当該走行指令を無効としない。
例えば車両が左前方を走行方向として走行する際に、前方領域と左方領域を含む左前方領域が障害物検知領域として設定されるような場合を考える。このような場合において、左前方領域に障害物があると障害物センサが出力し、停止した際に、走行制御部は、例えば左前方領域に含まれる、前方領域と後方領域のいずれか一方である前後方領域(この場合には前方領域)と、右方領域と左方領域のいずれか一方である右左方領域(この場合には左方領域)との各々に対して、障害物センサに、障害物が位置しているか否かを出力させ、前方領域と左方領域のなかで、障害物が位置していると出力された領域に対して、当該領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、当該走行指令を無効とし、障害物が位置していないと出力された領域に対して、当該領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合には、当該走行指令を無効としない。このように、障害物があると障害物センサが出力した障害物検知領域が、他のより小さな複数の障害物検知領域を含むような場合に、これらの小さな複数の障害物検知領域の各々において障害物が位置しているか否かを改めて判定することで、障害物が位置している障害物検知領領域を細分化して限定し、より詳細に、把握することができる。このため、受信した走行指令において指定された走行方向に、実際には障害物が位置していない場合に、走行指令が無効にされてしまう、等といった事態が抑制される。
【0012】
本発明の別の態様においては、複数の前記障害物検知領域は、前方向に対応する前方領域、後方向に対応する後方領域、右方向に対応する右方領域、及び左方向に対応する左方領域を含み、前記走行方向が含まれるような前記障害物検知領域に前記障害物があると前記障害物センサが出力した後、停止した際に、前記走行制御部は、前記障害物センサに、前記前方領域、前記後方領域、前記右方領域、及び前記左方領域の各々に、前記障害物が位置しているか否かを、個別に出力させ、前記障害物が位置していると出力された前記障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、当該走行指令を無効とする。
上記のような構成によれば、周囲に障害物があると障害物センサが出力した後、停止した際に、走行制御部は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、当該走行指令を無効とするように制御する。このため、障害物へと接近するような走行を抑制することができる。
ここで、走行制御部は、障害物センサに、障害物検知領域に含まれる前方領域、後方領域、右方領域、及び左方領域の各々に、障害物が位置しているか否かを、個別に出力させる。このため、車両が停止した状態において、車両が停止する要因となった障害物が車両の周囲から移動して存在しなければ、障害物センサは対応する障害物検知領域に障害物が位置していないと出力し得る。また、新たな障害物が車両の周囲に侵入してきていれば、障害物センサは、この新たな障害物に対応する障害物検知領域に関して、車両が停止する要因となった障害物に対応する障害物検知領域に替えて、あるいは当該障害物検知領域とともに、障害物が位置していると出力することもできる。このようにして、前方領域、後方領域、右方領域、及び左方領域の各々において、停止している際の障害物に関する情報が、個別に、更新される。上記のような、走行指令を無効とするような制御は、このようにして更新された情報を基に行われる。したがって、受信した走行指令において指定された走行方向を、無効とするか否かの判断を、より詳細、かつ適切に行うことができる。
【0013】
本発明の別の態様においては、本発明の車両は、前記車体部を俯瞰表示する、表示部を更に備え、前記走行制御部は、前記障害物が位置していると出力された前記障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の前記走行指令を受信した場合に、前記表示部の、前記車体部に対して対応する位置に、前記障害物検知領域を表示するとともに、前記表示部に、当該走行指令は無効である旨のメッセージを表示する。
上記のような構成によれば、走行制御部は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、表示部の、車体部に対して対応する位置に、障害物検知領域を表示するとともに、表示部に、当該走行指令は無効である旨のメッセージを表示するため、どのような走行指令が無効とされたのかを容易に把握することができる。
【0014】
本発明の別の態様においては、前記車体部の周囲には、互いに異なる方向を向くように、複数の警告灯が設けられ、前記走行制御部は、前記障害物が位置していると前記障害物センサが出力した際に、前記障害物が位置していると出力された前記障害物検知領域に対応した方向を向くように設けられた前記警告灯を点灯させる。
上記のような構成によれば、障害物を検知したことで車両が停止した際に、どの位置に障害物を検知したのかを、車両の周囲にいる作業員等が容易に把握することができる。
【0015】
本発明の別の態様においては、本発明の車両は、前記車体部とは離間して設けられた操作装置と、表示部と、を更に備え、前記操作装置は、複数の走行指令の各々に対応して設けられた、複数の入力部を備え、複数の前記入力部の各々が操作されることによって、前記操作装置は、当該入力部に対応する前記走行指令の入力を受け付け、入力を受け付けた前記走行指令を前記走行制御部へと送信し、前記表示部は、前記操作装置の外観と複数の前記入力部を表示し、複数の前記入力部のいずれかが操作された場合には、当該入力部を他の前記入力部に対して識別表示し、複数の前記走行指令は、操作有効指令であって、前記操作装置は、当該操作有効指令に対応する前記入力部が操作されているときのみ、他の前記入力部に対応する前記走行指令の入力を受け付ける、前記操作有効指令と、インチング有効指令であって、当該インチング有効指令に対応する前記入力部が操作されているときには、前記操作装置は、他の前記入力部に対する操作を、非連続な1回の操作と見做して、当該入力部に対応する前記走行指令の入力を受け付ける、前記インチング有効指令と、複合走行指令であって、複数の前記走行指令の中の、2以上の前記走行指令を含むように構成され、当該複合走行指令に対応する前記入力部が操作されると、当該複合走行指令に含まれる2以上の前記走行指令の各々が、連続的に、前記走行制御部により実行される、前記複合走行指令と、のいずれか、またはいずれかの組み合わせを含む。
上記のような構成によれば、作業者が操作装置の複数の入力部を操作することによって、車両が遠隔から操作される。表示部は、操作装置の外観と複数の入力部を表示し、複数の入力部のいずれかが操作された場合には、当該入力部を他の前記入力部に対して識別表示するため、作業者がどの入力部を操作したのかを、容易に把握することができる。
ここで、走行指令として操作有効指令を含む場合においては、作業者が何らかの操作を入力部に対して行おうとすると、操作有効指令に対応する入力部を意図的に操作する必要があるため、意図せず入力部が操作されて車両が操作されることを抑制することができる。
また、走行指令としてインチング有効指令を含む場合においては、入力部を操作した際の操作時間が長くても、それが非連続な1回の操作として見做されるため、車両を細かく操作することが容易となる。
更に、走行指令として複合走行指令を含む場合においては、複合走行指令に対応する入力部が操作されると、複合走行指令に含まれる2以上の走行指令の各々が、連続的に、走行制御部により実行されるため、作業者は、この2以上の走行指令の各々に対応する複数の入力部を、それぞれ個別に操作する必要がなくなる。したがって、車両の操作が容易となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能で、走行方向に障害物が位置している場合に、これを検知して、適切に走行制御する車両を、コストを抑制して実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る車両の構成を示す側面図である。
図2】車両の車体部の構成を示す平面図である。
図3】車体部に設けられた障害物センサによる、走査範囲を示す平面図である。
図4】障害物センサに設定された、障害物検知範囲の例を示す平面図である。
図5】車体部が前方に走行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図6】車体部が後方に走行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図7】車体部が左方に横行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図8】車体部が右方に横行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図9】車体部が左斜め前方に斜行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図10】車体部が右斜め後方に斜行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図11】車体部が左斜め後方に斜行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図12】車体部が右斜め前方に斜行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図13】車体部を基準とした障害物検知領域の座標系である車体部座標系と、障害物センサの座標系であるセンサ座標系との関係を示す図である。
図14】本実施形態に係る車両の制御部の機能構成を示すブロック図である。
図15】本実施形態に係る車両の走行動作を示すフローチャートである。
図16】本実施形態に係る車両の第2変形例を示す図である。
図17】本実施形態に係る車両の第3変形例を示す図である。
図18】本実施形態に係る車両の第4変形例を示す図である。
図19】本実施形態に係る車両の第5変形例を示す図である。
図20】本実施形態に係る車両の第5変形例において、車体部の前方領域である障害物検知領域で障害物を検知した状態の例を示す図である。
図21】本実施形態に係る車両の第6変形例を示す図である。
図22】本実施形態の第7変形例に係る車両に備えられた操縦装置の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明による車両を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る車両の構成を示す側面図を図1に示す。図2は、車両の車体部の構成を示す平面図である。なお、以下の説明において、車両の車体部の前後方向の一方側を前方F、前後方向の他方側を後方B、前方Fを向いたときの、車体部の左側を左方L、その反対側を右方Rとする。
図1図2に示すように、車両1は、車体部10と、障害物センサ50と、制御部60(図14参照)と、を備えている。
車体部10は、ボギーリンク20と、ロッカーリンク体30と、前輪11、中輪12、及び後輪13と、を備えている。本実施形態において、車体部10は、ロッカーボギー車である。後に説明するように、前輪11、中輪12、及び後輪13として、メカナムホイール(登録商標)とオムニホイール(登録商標)を用いることにより、車体部10は、姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能となるように、構成されている。
車両1は、ロッカーボギー車に限らず、姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能な車体部10を備えるのであれば、他の種類のもの、例えば移動ロボット等であってもよい。また、車体部10が、上記のメカナムホイール(登録商標)とオムニホイール(登録商標)を有する構造とは異なる車輪を有することで、360°の全方位に走行可能な構成が、実現されていても構わない。このような車輪として、例えば、球状の車輪が用いられてもよい。
【0019】
車体部10は、前輪11、中輪12、及び後輪13の各々が、左右に一対設けられ、機台41に載荷された物品を搬送する。
ボギーリンク20は、車両1の車幅方向の両側である左右に一対設けられている。一対のボギーリンク20は、右側に設けられた右ボギーリンク20Rと、左側に設けられた左ボギーリンク20Lと、を有している。右ボギーリンク20Rと左ボギーリンク20Lとは左右対称な構成を有している。以下の説明において、右ボギーリンク20Rと左ボギーリンク20Lとを区別する必要がある場合を除き、右ボギーリンク20R、左ボギーリンク20Lの各々を、単にボギーリンク20と称する。
ボギーリンク20は、前輪11と中輪12の各々を、左右方向に延びる軸周りに回転自在に軸支している。ボギーリンク20は、車体部10の前後方向に延びるアーム21と、アーム21の前後両端部の各々から下方に延びる前脚部23、及び中脚部24と、を一体に有している。前輪11は、ボギーリンク20の前端部に配置された前脚部23に、回転自在に支持されている。中輪12は、ボギーリンク20の後端部に配置された中脚部24に、回転自在に支持されている。
このようにして、ボギーリンク20は、前輪11と中輪12の各々を軸支し、これらを連結している。
【0020】
ロッカーリンク体30は、本体31と、一対のロッカーリンク32と、を有している。
本体31は、車両1の車体の本体である。例えば、後に説明する制御部60は、この本体31に設置され得る。本体31は、左右方向において、一対のロッカーリンク32同士の間に配置されている。本体31は、上方から見て、例えば矩形状に形成されている。
【0021】
一対のロッカーリンク32は、車両1の左右に設けられている。一対のロッカーリンク32は、右側に設けられた右ロッカーリンク32Rと、左側に設けられた左ロッカーリンク32Lと、を有している。右ロッカーリンク32Rと左ロッカーリンク32Lとは、左右対称な構成とされている。
ロッカーリンク32は、前後方向に延びるリンクアーム33と、リンクアーム33の後端部から下方に延びる後脚部34と、を一体に有している。リンクアーム33の前端部は、ボギーリンク20のアーム21の前後方向の中間部21cを、左右方向に延びる駆動軸35を介して、駆動軸35の中心軸回りに回転自在に軸支している。これにより、ボギーリンク20は、リンクアーム33に対し、駆動軸35を中心として揺動可能とされている。後脚部34の下端部には、後輪13が回転自在に支持されている。このように、ロッカーリンク32は、ボギーリンク20の前輪11と中輪12の間の中間部21cと、後輪13と、を軸支し、これらを連結している。
【0022】
車両1が、凹凸のある不整地を走行したり、段差を乗り越えたりする際などにおいて、ロッカーリンク32は傾斜する。本実施形態においては、ロッカーリンク体30は、ロッカーリンク32と一体に、相対移動及び相対変位が不能となるように設けられて、ロッカーリンク32の傾斜に伴って、ロッカーリンク32とともに、ロッカーリンク32と同様に傾斜する、車両1の部分である。
したがって、上記のようにロッカーリンク体30が本体31を含む場合においては、右ロッカーリンク32R及び左ロッカーリンク32Lは、本体31に一体に固定され、ロッカーリンク32が傾斜した場合には、本体31は、ロッカーリンク32とともに傾斜する。図1においては、ロッカーリンク32を本体31とは異なる部位として図示しているが、リンクアーム33と本体31とが一体となり、本体31が直接ボギーリンク20を駆動軸35により軸支しつつ、本体から後脚部34が下方に延びるように設けられた構造となっていてもよい。
これに対し、車両1としては、右ロッカーリンク32R及び左ロッカーリンク32Lが、本体31に軸支され、本体31に対して相対的に回転自在に設けられている場合も考えられ得る。
以下の説明において、右ロッカーリンク32Rと左ロッカーリンク32Lとを区別する必要がある場合を除き、右ロッカーリンク32R、左ロッカーリンク32Lの各々を、単にロッカーリンク32と称する。
【0023】
ボギーリンク20(右ボギーリンク20R、左ボギーリンク20L)は、ロッカーリンク32(右ロッカーリンク32R、左ロッカーリンク32L)に対し、ボギーリンク制御モータ37により、駆動軸35の中心軸回りに相対的に回動するように駆動される。つまり、ボギーリンク20はロッカーリンク32に対し、ボギーリンク制御モータ37により、動的に回転可能とされている。ボギーリンク20とロッカーリンク32とは、駆動軸35回りの相対角度が制御可能となっている。また、ボギーリンク20とロッカーリンク32とは、ボギーリンク制御モータ37による駆動をOFFにすることで、駆動軸35まわりに自由回転可能な状態となる。このようなボギーリンク制御モータ37は、回転駆動力を自在に制御できるアクチュエータ、例えば、トルクモータまたはハーモニックドライブ(登録商標)等により実現可能である。
なお、ロッカーリンク32には角度センサ(図示無し)が設けられている。角度センサは、駆動軸35に取り付けられ、ボギーリンク20に対するロッカーリンク32の相対的な回転角度を検出する。角度センサで検出されたボギーリンク20に対するロッカーリンク32の相対的な回転角度の情報は、後述する制御部60に出力される。
【0024】
車体部10は、このようなボギーリンク20とロッカーリンク32を有しているため、例えばボギーリンク20をボギーリンク制御モータ37によって適宜回転させて、前輪11を任意に上昇、下降させることで、前輪11の高さを変更することができる。これにより、車体部10は、段差を踏破することができる。例えば、段差を上る際には、前輪11を段差の高さまで上昇させて車体部10を前進させ、前輪11を段差に乗せたうえで、前輪11に荷重をかけて中輪12を上昇させるようにボギーリンク20を回転させ、中輪12を前輪11と同じ高さまで上昇させて車体部10を前進させ、中輪12を段差に乗せる、等の手順を踏めばよい。段差を下る際も同様である。
また、ボギーリンク制御モータ37による駆動をOFFにして、駆動軸35まわりに自由回転可能な状態とすれば、ボギーリンク20は路面の形状に追従して動作するようになる。このため、路面に凹凸があるような不整地であっても、前輪11、中輪12、後輪13が路面から離れることが抑制される。
【0025】
前輪11は、車両1の前端部において、左右に一対設けられている。一対の前輪11は、右側に設けられた右前輪11Rと、左側に設けられた左前輪11Lと、を有している。
中輪12は、車両1の前後方向の中間部において、左右に一対設けられている。一対の中輪12は、右側に設けられた右中輪12Rと、左側に設けられた左中輪12Lと、を有している。
後輪13は、車両1の後端部において、左右に一対設けられている。一対の後輪13は、右側に設けられた右後輪13Rと、左側に設けられた左後輪13Lと、を有している。
【0026】
前輪11(右前輪11R、左前輪11L)、及び後輪13(右後輪13R、右後輪13R)の各々は、メカナムホイール(登録商標)である。前輪11、及び後輪13の各々は、主輪と、主輪の外周に設けられ、車軸に対して45°の傾きで回転可能に支持され、周方向に並んだ複数個のフリーホイールと、を有する。
中輪12(右中輪12R、左中輪12L)は、オムニホイール(登録商標)である。中輪12は、主輪と、主輪の外周に設けられ、車軸に対して90°の向きに回転可能に支持され、周方向に並んだ複数個のフリーホイールと、を有する。
【0027】
右前輪11Rの主輪は、モータ14Rによって回転駆動される。左前輪11Lの主輪は、モータ14Lによって回転駆動される。右中輪12Rの主輪は、モータ15Rによって回転駆動される。左中輪12Lの主輪は、モータ15Lによって回転駆動される。右後輪13Rの主輪は、モータ16Rによって回転駆動される。左後輪13Lの主輪は、モータ16Lによって駆動される。これらのモータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lは、各々独立に制御可能である。つまり、前輪11、中輪12、後輪13の各々は、それぞれ独立に駆動制御可能である。
車体部10は、前輪11(右前輪11R、左前輪11L)、中輪12(右中輪12R、左中輪12L)、後輪13(右後輪13R、右後輪13R)の各々を、前進方向または後進方向にそれぞれ回転するよう制御する。
【0028】
以上のような構成により、車体部10は、姿勢、すなわち車体部10が向いている方向を変えずに維持した状態で、前進、後進、横行、斜行といった、360°の全方位に走行することが可能とされている。また、車体部10は、ピボットターン、スピンターン等の旋回走行も可能である。
【0029】
本実施形態において、車体部10は、機台部40を備えている。機台部40は、機台41と、機台支持部材42と、を備えている。機台41は、車体部10の上方に、車体部10から離間して配置されている。機台41は、例えば、上方から見て矩形状をなしている。機台41の形状は、矩形状に限らず、適宜他の形状であってもよい。機台41の上面41tは、物品が載置可能な平面とされている。機台支持部材42は、ロッカーリンク体30と機台41を連結し、機台41を下方から支持している。なお、機台部40の構成については、ここに示した構成に限らず、他の構成に適宜変更可能である。
【0030】
車両1は、車体部10の周囲の障害物を検知可能な障害物センサ50を備えている。障害物センサ50は、車体部10の周囲の、全方位の中のいずれの方向に障害物が位置した場合でも、この障害物を検知可能とするように、各々が異なる方向を向くように車体部10に複数が設けられている。障害物センサ50は、例えば、機台41上に設けられている。本実施形態において、障害物センサ50は、機台41の、前方Fの左方Lに位置する角部と、機台41の、後方Bの右方Rに位置する角部との2箇所に、対角状に配置されている。障害物センサ50は、機台41上に限らず、車体部10の本体31等、他の場所に設けられていてもよい。
【0031】
図3は、車体部に設けられた障害物センサによる、走査範囲を示す平面図である。
図3に示すように、各障害物センサ50は、上方から見た際に、例えば270°の角度範囲θ内を走査し、障害物の有無を検出する。機台41の、前方Fの左方Lに位置する角部に設けられた障害物センサ50Aは、車体部10の前方Fと、車体部10の左方Lを含む、円弧状(扇状)の走査範囲R1を走査する。機台41の、後方Bの右方Rに位置する角部に設けられた障害物センサ50Bは、車体部10の後方Bと、車体部10の右方Rを含む、円弧状(扇状)の走査範囲R2を走査する。走査範囲R1、R2の半径は、走査範囲R1と走査範囲R2とが互いに重なり合っている。このようにして、障害物センサ50の走査範囲R1、R2は、上方から見た際に、全体として、車体部10の、全方位360°を覆うように設定されている。
【0032】
障害物センサ50は、一台で360°の全方位の、上下方向を含めた3次元における、対象物との距離を計測するような、3D-LiDARではない。障害物センサ50の各々は、例えば、対象物(障害物)までの深度(距離)を測定する深度(Depth)センサである。深度センサは、具体的には、ToF(Time of Flight)方式等がある。この場合に、センサ媒体は、レーダ波、レーザ光、超音波、赤外線等であってもよい。このようにした場合においては、低コストで障害物センサ50を実現することができる。
各障害物センサ50は、走査範囲R1、R2の内側に設定された障害物検知領域Sに、障害物が位置しているか否かを検出する。各障害物センサ50は、障害物検知領域Sに、障害物が位置しているか否かを検出し、その検出結果を出力可能である。
【0033】
図4は、障害物センサに設定された、障害物検知範囲の例を示す平面図である。
図4に示すように、障害物センサ50には、車体部10の全方位を網羅するように、障害物検知領域Sが予め設定されている。更に、障害物検知領域Sは、車体部10側に位置する内側領域Bと、内側領域Bよりも車体部10から離れて位置する外側領域Aと、に区画されている。障害物センサ50は、内側領域Bと外側領域Aに対して、その各々の内側に、障害物が位置しているか否かを検出し、その検出結果を出力する。障害物センサ50は、障害物が、外側領域Aの内側に位置しており、かつ内側領域Bの内側に位置していないことを検出できる。また、障害物センサ50は、障害物が、外側領域Aの内側に位置しておらず、かつ内側領域Bの内側に位置していることを検出できる。更には、障害物センサ50は、障害物が、外側領域Aと内側領域Bのいずれの内側にも位置していないことを検出できる。
【0034】
障害物検知領域Sは、車体部10の走行方向が含まれるように設定されている。障害物検知領域Sは、車体部10の走行方向に応じて、それぞれの走行方向における前方(車体部10の前方とは限らない)が含まれるように、設定される。このため、障害物検知領域Sは、後述するように、予め複数の種類が設定されている。本実施形態では、複数種類の障害物検知領域Sとして、例えば、図4図12に示すような障害物検知領域S1~S9が設定されている。なお、以下に示す複数種類の障害物検知領域S1~S9は、あくまでも例示であり、その設定領域、種類の数等は適宜変更可能である。
【0035】
図5は、車体部が前方に走行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図5に示すように、障害物検知領域S1は、前方向に対応する前方領域S1に設定されている。車体部10が前方Fに走行する際に設定される障害物検知領域S1は、車体部10の前方Fを覆うように設定されている。障害物検知領域S1は、車体部10側に位置する内側領域B1と、内側領域B1よりも車体部10から離れて位置する外側領域A1と、に区画されている。障害物検知領域S1において、内側領域B1は、車体部10の前端から前方に長さ寸法E1、左右方向に幅寸法K1の範囲に設定されている。幅寸法K1は、車体部10の左右の幅寸法LAよりも所定寸法大きい。また、内側領域B1の外側に設定された外側領域A1は、車体部10の前端から前方に長さ寸法D1、左右方向に幅寸法L1の範囲に設定されている。長さ寸法D1は、長さ寸法E1よりも所定寸法大きい。幅寸法L1は、幅寸法LA、及び幅寸法K1よりも所定寸法大きい。
【0036】
この場合、障害物検知領域S1内の障害物の検知は、障害物センサ50Aが行う。車体部10の前後方向をy方向、左右方向をx方向とした車体部座標系において、障害物センサ50Aを原点とした、外側領域A1の各部の座標は、以下のようになる。ここで、車体部10を上方から見た際の中心Cから障害物センサ50Aまでの左右方向の距離をML、中心Cから障害物センサ50Aまでの前後方向の距離をMD、車両の前後方向の長さ寸法をDとする。
外側領域A1の右端(右後端)P11の座標は、
x=SL1R=L1/2+ML、y=D/2-MD
となる。
右前端P12の座標は、
x=SL1R=L1/2+ML、y=D/2-MD+D1
となる。
左前端P13の座標は、
x=SL1L=-(L1/2-ML)、y=D/2-MD+D1
となる。
左端(左後端)P14の座標は、
x=SL1L=-(L1/2-ML)、y=D/2-MD
となる。
内側領域B1においても、外側領域A1と同様に、車体部座標系において、障害物センサ50Aを原点とした、各部の座標が計算され得る。
【0037】
図6は、車体部が後方に走行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図6に示すように、障害物検知領域S3は、後方向に対応する後方領域S3に設定されている。車体部10が後方Bに走行する際に設定される障害物検知領域S3は、車体部10の後方Bを覆うように設定されている。障害物検知領域S3は、車体部10側に位置する内側領域B3と、内側領域B3よりも車体部10から離れて位置する外側領域A3と、に区画されている。障害物検知領域S3において、内側領域B3は、車体部10の後端から後方Bに長さ寸法E3、左右方向に幅寸法K3の範囲に設定されている。幅寸法K3は、車体部10の左右の幅寸法LAよりも所定寸法大きい。また、内側領域B3の外側に設定された外側領域A3は、車体部10の後端から後方Bに長さ寸法D3、左右方向に幅寸法L3の範囲に設定されている。長さ寸法D3は、長さ寸法E3よりも所定寸法大きい。幅寸法L3は、幅寸法LA、及び幅寸法K3よりも所定寸法大きい。
【0038】
本実施形態においては、幅寸法K1と幅寸法K3、幅寸法L1と幅寸法L3、長さ寸法E1と長さ寸法E3、長さ寸法D1と長さ寸法D3は、それぞれ、同じであるものとして設定されている。これに替えて、例えば、障害物センサ50A、50Bの取付位置、車体部10の構造、前方への走行速度と後方への走行速度との違い、等の理由により、上記の同じであるものとして設定された各寸法は、異なるように設定されてもよい。例えば、前方への走行速度が後方への走行速度よりも速い場合においては、前方においてはより広い範囲で障害物を検知することが必要となるため、長さ寸法D1、E1を、長さ寸法D3、E3よりも、それぞれ大きく設定するようにしてもよい。
【0039】
障害物検知領域S3内の障害物の検知は、障害物センサ50Bが行う。車体部座標系において、障害物センサ50Bを原点とした、外側領域A3、内側領域B3の各部の座標は、障害物検知領域S1の外側領域A1、内側領域B1の場合と同様な要領で、決定され得る。
【0040】
図7は、車体部が左方に横行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図7に示すように、障害物検知領域S2は、左方向に対応する左方領域S2に設定されている。車体部10が左方Lに横行する際に設定される障害物検知領域S2は、車体部10の左方Lを覆うように設定されている。障害物検知領域S2は、車体部10側に位置する内側領域B2と、内側領域B2よりも車体部10から離れて位置する外側領域A2と、に区画されている。障害物検知領域S2において、内側領域B2は、車体部10の左端から左方に幅寸法K2、前後方向に長さ寸法E2の範囲に設定されている。長さ寸法E2は、車体部10の長さ寸法Dよりも所定寸法大きい。また、内側領域B2の外側に設定された外側領域A2は、車体部10の左端から左方に幅寸法L2、前後方向に長さ寸法D2の範囲に設定されている。長さ寸法D2は、長さ寸法D、及び長さ寸法E2よりも所定寸法大きい。幅寸法L2は、幅寸法K2よりも所定寸法大きい。
【0041】
この場合、障害物検知領域S2内の障害物の検知は、障害物センサ50Aが行う。車体部座標系において、障害物センサ50Aを原点とした、外側領域A2の各部の座標は、以下のようになる。
外側領域A2の右前端P21の座標は、
x=-(LA/2-ML)、y=SD2LF=D2/2-MD
となる。
左前端P22の座標は、
x=-(LA/2-ML+L2)、y=SD2LF=D2/2-MD
となる。
左後端P23の座標は、
x=-(LA/2-ML+L2)、y=SD2LB=-(D2/2+MD)
となる。
右後端P24の座標は、
x=-(LA/2-ML)、y=SD2LB=-(D2/2+MD)となる。
となる。
内側領域B2においても、外側領域A2と同様に、車体部座標系において、障害物センサ50Aを原点とした、各部の座標が計算され得る。
【0042】
図8は、車体部が右方に横行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図8に示すように、障害物検知領域S4は、右方向に対応する右方領域S4に設定されている。車体部10が右方Rに横行する際に設定される障害物検知領域S4は、車体部10の右方Rを覆うように設定されている。障害物検知領域S4は、車体部10側に位置する内側領域B4と、内側領域B4よりも車体部10から離れて位置する外側領域A4と、に区画されている。障害物検知領域S4において、内側領域B4は、車体部10の右端から右方に幅寸法K4、前後方向に長さ寸法E4の範囲に設定されている。長さ寸法E4は、車体部10の長さ寸法Dよりも所定寸法大きい。また、内側領域B4の外側に設定された外側領域A4は、車体部10の右端から右方に幅寸法L4、前後方向に長さ寸法D4の範囲に設定されている。長さ寸法D4は、長さ寸法D、及び長さ寸法E4よりも所定寸法大きい。幅寸法L4は、幅寸法K4よりも所定寸法大きい。
【0043】
本実施形態においては、幅寸法K2と幅寸法K4、幅寸法L2と幅寸法L4、長さ寸法E2と長さ寸法E4、長さ寸法D2と長さ寸法D4は、それぞれ、同じであるものとして設定されている。これに替えて、例えば、障害物センサ50A、50Bの取付位置、車体部10の構造等の理由により、上記の同じであるものとして設定された各寸法は、異なるように設定されてもよい。
【0044】
障害物検知領域S4内の障害物の検知は、障害物センサ50Bが行う。車体部座標系において、障害物センサ50Bを原点とした、外側領域A4、内側領域B4の各部の座標は、障害物検知領域S2の外側領域A2、内側領域B2の場合と同様な要領で、決定され得る。
【0045】
図9は、車体部が左斜め前方に斜行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図9に示すように、障害物検知領域S5は、左前方に対応して前方領域S1(図5参照)と左方領域S2(図7参照)を含む左前方領域S5に設定されている。車体部10が左斜め前方に斜行する際に設定される障害物検知領域S5は、車体部10の前方Fと左方Lを覆うように、設定されている。障害物検知領域S5は、障害物検知領域(前方領域)S1と、障害物検知領域(左方領域)S2と、を組み合わせた形状として設定されている。障害物検知領域S5は、車体部10側に位置する内側領域B5と、内側領域B5よりも車体部10から離れて位置する外側領域A5と、に区画されている。障害物検知領域S5において、内側領域B5は、車体部10の前端から前方Fに長さ寸法E1、幅寸法K1、車体部10の左端から左方に幅寸法K2、長さ寸法E2、の範囲に設定されている。内側領域B5の外側に設定された外側領域A5は、車体部10の前端から前方Fに長さ寸法D1、幅寸法L1、車体部10の左端から左方に幅寸法L2、長さ寸法D2、の範囲に設定されている。
【0046】
この場合、障害物検知領域S5内の障害物の検知は、障害物センサ50Aが行う。車体部座標系において、障害物センサ50Aを原点とした、外側領域A5の各部の座標は、以下のようになる。
外側領域A5の右端(右側後端)P51の座標は、
x=SL1R=L1/2+ML、y=D/2-MD
となる。
右前端P52の座標は、
x=SL1R=L1/2+ML、y=SD2LF=D/2-MD+D1
となる。
左前端P53の座標は、
x=SL1L=-(L1/2-ML)、y=SD2LF=D/2-MD+D1
となる。
なお、左前端P53の座標は、
x=SL1L=-(L1/2-ML)=-((LA/2-ML)+L2)
y=SD2LF=D/2-MD+D1=D2/2-MD
と、幅寸法L1の代わりに幅寸法LA、L2を、及び長さ寸法D1の代わりに長さ寸法D2を、それぞれ用いて表現するようにしてもよい。
左後端P54のx座標は、左前端P53と同じであるから、
x=SL1L=-(L1/2-ML)=-((LA/2-ML)+L2)
となる。左後端P54のy座標は、
y=SD2LB=-(D2/2+MD)
となる。
後側右端P55の座標は、
x=-(LA/2-ML)、y=SD2LB=-(D2/2+MD)
となる。
左前内側角端P56の座標は、
x=-(LA/2-ML)、y=D/2-MD
となる。
内側領域B5においても、外側領域A5と同様に、車体部座標系において、障害物センサ50Aを原点とした、各部の座標が計算され得る。
【0047】
図10は、車体部が右斜め後方に斜行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図10に示すように、障害物検知領域S6は、右後方に対応して後方領域S3(図6参照)と右方領域S4(図8参照)を含む右後方領域S6に設定されている。車体部10が右斜め後方に斜行する際に設定される障害物検知領域S6は、車体部10の後方Bと右方Rを覆うように、設定されている。障害物検知領域S6は、障害物検知領域(後方領域)S3と、障害物検知領域(右方領域)S4と、を組み合わせた形状として設定されている。障害物検知領域S6は、車体部10側に位置する内側領域B6と、内側領域B6よりも車体部10から離れて位置する外側領域A6と、に区画されている。障害物検知領域S6において、内側領域B6は、車体部10の後端から後方Bに長さ寸法E3、幅寸法K3、車体部10の右端から右方に幅寸法K4、長さ寸法E4、の範囲に設定されている。内側領域B6の外側に設定された外側領域A6は、車体部10の後端から後方Bに長さ寸法D3、幅寸法L3、車体部10の右端から右方に幅寸法L4、長さ寸法D4、の範囲に設定されている。
【0048】
障害物検知領域S6内の障害物の検知は、障害物センサ50Bが行う。車体部座標系において、障害物センサ50Bを原点とした、外側領域A6、内側領域B6の各部の座標は、障害物検知領域S5の外側領域A5、内側領域B5の場合と同様な要領で、決定され得る。
【0049】
図11は、車体部が左斜め後方に斜行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図11に示すように、障害物検知領域S7は、左後方に対応して後方領域S3(図6参照)と左方領域S2(図7参照)を含む左後方領域S7に設定されている。車体部10が左斜め後方に斜行する際に設定される障害物検知領域S7は、車体部10の後方Bと左方Lを覆うように、設定されている。障害物検知領域S7は、障害物検知領域(左方領域)S2と、障害物検知領域(後方領域)S3と、を組み合わせた形状として設定されている。障害物検知領域S7は、車体部10側に位置する内側領域B7と、内側領域B7よりも車体部10から離れて位置する外側領域A7と、に区画されている。
障害物検知領域S7は、障害物センサ50に設定される複数の障害物検知領域Sの中のひとつであり、ひとつの障害物検知領域Sとして、障害物センサ50に設定され得る。しかし、本実施形態においては、障害物センサ50は、前方Fの左方Lに位置する角部に設けられた障害物センサ50Aと、後方Bの右方Rに位置する角部に設けられた障害物センサ50Bと、を備えた構成となっており、ひとつの障害物センサ50のみによっては、障害物検知領域S7の全域を網羅して、障害物を検知することはできない。このため、障害物検知領域S7内の障害物の検知は、実際の処理においては、障害物センサ50Aと、障害物センサ50Bとにより行われる。より具体的には、車体部10が左斜め後方に斜行する際においては、障害物センサ50Aが、左方向に対応する左方領域S2に設定された障害物検知領域S2内の検知を行い、障害物センサ50Bが、後方向に対応する後方領域S3に設定された障害物検知領域S3内の検知を行うことで、障害物検知領域S7内の障害物が検知される。
【0050】
車体部座標系において、障害物センサ50A、障害物センサ50Bの各々を原点とした、外側領域A7、内側領域B7の各部の座標は、障害物検知領域S2、S3の外側領域A2、A3、内側領域B2、B3の場合と同様な要領で、決定され得る。
【0051】
図12は、車体部が右斜め前方に斜行する際に設定される障害物検知領域を示す図である。
図12に示すように、障害物検知領域S8は、右前方に対応して前方領域S1(図5参照)と右方領域S4(図8参照)を含む右前方領域S8に設定されている。車体部10が右斜め前方に斜行する際に設定される障害物検知領域S8は、車体部10の前方Fと右方Rを覆うように、設定されている。障害物検知領域S8は、障害物検知領域(前方領域)S1と、障害物検知領域(右方領域)S4と、を組み合わせた形状として設定されている。障害物検知領域S8は、車体部10側に位置する内側領域B8と、内側領域B8よりも車体部10から離れて位置する外側領域A8と、に区画されている。
障害物検知領域S8は、障害物センサ50に設定される複数の障害物検知領域Sの中のひとつであり、ひとつの障害物検知領域Sとして、障害物センサ50に設定され得る。しかし、本実施形態においては、障害物センサ50は、前方Fの左方Lに位置する角部に設けられた障害物センサ50Aと、後方Bの右方Rに位置する角部に設けられた障害物センサ50Bと、を備えた構成となっており、ひとつの障害物センサ50のみによっては、障害物検知領域S8の全域を網羅して、障害物を検知することはできない。このため、障害物検知領域S8内の障害物の検知は、実際の処理においては、障害物センサ50Aと、障害物センサ50Bとにより行われる。より具体的には、車体部10が右斜め前方に斜行する際においては、障害物センサ50Aが、前方向に対応する前方領域S1に設定された障害物検知領域S1内の検知を行い、障害物センサ50Bが、右方向に対応する右方領域S4に設定された障害物検知領域S4内の検知を行うことで、障害物検知領域S8内の障害物が検知される。
【0052】
車体部座標系において、障害物センサ50A、障害物センサ50Bの各々を原点とした、外側領域A8、内側領域B8の各部の座標は、障害物検知領域S1、S4の外側領域A1、A4、内側領域B1、B4の場合と同様な要領で、決定され得る。
【0053】
図4に示すように、車体部10が停止中、及びその場で旋回する際に設定される障害物検知領域S9は、車体部10の全周を囲うように設定されている。障害物検知領域S9は、障害物検知領域(前方領域)S1、障害物検知領域(左方領域)S2、障害物検知領域(後方領域)S3、及び障害物検知領域(右方領域)S4を組み合わせた形状として設定されている。障害物検知領域S9は、障害物検知領域(左前方領域)S5と障害物検知領域(右後方領域)S6を組み合わせた形状ともなっている。また、障害物検知領域S9は、障害物検知領域(左後方領域)S7と障害物検知領域(右前方領域)S8を組み合わせた形状ともなっている。障害物検知領域S9は、車体部10側に位置する内側領域B9と、内側領域B9よりも車体部10から離れて位置する外側領域A9と、に区画されている。
障害物検知領域S9は、障害物センサ50に設定される複数の障害物検知領域Sの中のひとつであり、ひとつの障害物検知領域Sとして、障害物センサ50に設定され得る。しかし、本実施形態においては、障害物センサ50は、前方Fの左方Lに位置する角部に設けられた障害物センサ50Aと、後方Bの右方Rに位置する角部に設けられた障害物センサ50Bと、を備えた構成となっており、ひとつの障害物センサ50のみによっては、障害物検知領域S9の全域を網羅して、障害物を検知することはできない。このため、障害物検知領域S9内の障害物の検知は、実際の処理においては、障害物センサ50Aと、障害物センサ50Bとにより行われる。より具体的には、車体部10が停止中、及びその場で旋回する際においては、障害物センサ50Aが、例えば左前方に対応して前方領域と左方領域を含む左前方領域S5に設定された障害物検知領域S5内の検知を行い、障害物センサ50Bが、例えば右後方に対応して後方領域と右方領域を含む右後方領域S6に設定された障害物検知領域S6内の検知を行うことで、障害物検知領域S9内の障害物が検知される。
【0054】
車体部座標系において、障害物センサ50A、障害物センサ50Bの各々を原点とした、外側領域A9、内側領域B9の各部の座標は、例えば、障害物検知領域S5、S6の外側領域A5、A6、内側領域B5、B6の場合と同様な要領で、決定され得る。
【0055】
図13は、車体部を基準とした障害物検知領域の座標系である車体部座標系と、障害物センサの座標系であるセンサ座標系との関係を示す図である。
図13においては、特に、前方Fで左方Lの角部に設けられた障害物センサ50Aに関して、センサ座標系が図示されている。図13において、車体部座標系は、車体部10の前後方向をy方向、左右方向をx方向としたものとなっている。また、図13において、障害物センサ50Aのセンサ座標系は、x’-y’座標系として示されている。障害物センサ50Aのセンサ座標系は、車体部10の左前方が正面となるように、車体部座標系に対して45°、反時計回りに傾いて設けられている。すなわち、本実施形態においては、障害物センサ50Aのセンサ座標系は、y’軸が、車体部座標系に対して45°、反時計回りに傾いて設けられている。
【0056】
図4図12を用いて説明した、障害物検知領域S1~S9、外側領域A1~A9、内側領域B1~B9における各点の座標値は、車体部座標系における値となっている。しかし、実際には、障害物を検知するのは障害物センサ50である。したがって、これらの車体部座標系における座標値をセンサ座標系における座標値に変換し、変換後の座標値を用いて、障害物センサ50に対して障害物検知領域S1~S9、外側領域A1~A9、内側領域B1~B9を設定しなければならない。
ここで、本実施形態においては、上記のように、障害物センサ50Aのセンサ座標系は、車体部座標系に対して45°、反時計回りに傾いて設けられている。このため、車体部座標系における座標値を、センサ座標系における座標値に変換するには、障害物センサ50が設けられた位置、すなわち車体部座標系とセンサ座標系の各々の原点位置を中心として、時計回りに45°、回転すればよい。
【0057】
具体的には、障害物センサ50Aに関しては、車体部座標系の座標(x、y)を、センサ座標系の座標(x’、y’)に、次のようにして変換する。
x’=x×Cos(-45°)-y×Sin(-45°)
y’=x×Sin(-45°)+y×Cos(-45°)
このようにして変換された値を用いて、障害物センサ50Aに対して、障害物センサ50Aが関係する障害物検知領域S1、S2、S5、S7、S8、S9、外側領域A1、A2、A5、A7、A8、A9、内側領域B1、B2、B5、B7、B8、B9が設定される。
障害物センサ50Bに関しても、同様な処理により、障害物センサ50Bに対して、障害物センサ50Bが関係する障害物検知領域S3、S4、S6、S7、S8、S9、外側領域A3、A4、A6、A7、A8、A9、内側領域B3、B4、B6、B7、B8、B9が設定される。
【0058】
図14は、本実施形態における車両の制御部の機能構成を示すブロック図である。
制御部60は、予め設定されたプログラムに基づいて、車両1の動作を制御する。図14に示すように、制御部60は、センサ設定部61と、走行制御部62と、を機能的に有している。
センサ設定部61は、障害物センサ50Bに対して、上記したような障害物検知領域S(S1~S9)、外側領域A(A1~A9)、内側領域B(B1~B9)の領域設定を行う。
【0059】
走行制御部62は、車体部10が作業者によって遠隔操作される場合には、作業者が操作する操作装置から、車体部10の走行方向、走行速度等に関する走行指令を受信する。また、走行制御部62は、車体部10がSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等により自律走行する場合においては、車体部10の自律走行を制御する部位から、走行指令を受信する。
走行制御部62は、このようにして受信した走行指令に従い、車体部10における走行動作を制御する。走行制御部62は、モータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lを制御することで、前輪11、中輪12、後輪13を回転駆動させ、車体部10を自走させる。走行制御部62は、障害物センサ50によって、障害物検知領域S内で障害物が検出された場合、車体部10における走行動作を制御する。走行制御部62は、車体部10の走行方向に基づいて、複数の障害物検知領域Sの中から、走行方向が含まれるような障害物検知領域Sを決定する。走行制御部62は、決定された障害物検知領域Sを障害物センサ50に対して指定する。障害物センサ50は、指定された障害物検知領域Sに障害物が検知された場合、その検知結果を走行制御部62に出力する。走行制御部62は、指定された障害物検知領域Sに障害物が検知されたことを示す信号を障害物センサ50が出力した際に、車体部10を減速または停止させるように走行制御する。走行制御部62は、指定された障害物検知領域Sにおいて、外側領域Aに障害物があると障害物センサ50が出力した際に、車体部10の走行速度が閾値以下となるように車体部10を減速させる。走行制御部62は、指定された障害物検知領域Sにおいて、内側領域Bに障害物があると障害物センサ50が出力した際に、車体部10の走行を停止するように制御する。
【0060】
図15は、本実施形態に係る車両1の動作を示すフローチャートである。
図15に示すように、車両1が起動すると、走行制御部62が、車体部10の走行状態を、予め設定された時間間隔毎に検出する(ステップS11)。車体部10の走行状態は、例えば、モータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lの動作状態に基づいて検出できる。走行制御部62は、車体部10の走行状態が、例えば、前方向への走行、後方向への走行、右方向への横行、左方向への横行、右前方への斜行、左前方への斜行、右後方への斜行、左後方への斜行、停止、その場での旋回、のいずれであるかを判定する。車体部10の走行状態は、例えば、モータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lに対する最後の動作指示を記憶しておき、この動作指示を基に、車体部10の走行状態を判断(検出)するようにしてもよい。
【0061】
走行制御部62は、検出された車体部10の走行状態に応じて、障害物検知領域Sを決定(選択)する(ステップS12)。
例えば、車体部10が前方向へ走行していた場合、走行制御部62は、障害物を検知する対象となる障害物検知領域Sを障害物検知領域(前方領域)S1に決定し、障害物センサ50Aに障害物検知領域S1における障害物の検知を実行させる。より詳細には、走行制御部62は、障害物センサ50Aに、障害物検知領域S1の内側領域B1と外側領域A1の各々において、障害物を検知させる。
車体部10が後方向へ走行していた場合、走行制御部62は、障害物を検知する対象となる障害物検知領域Sを障害物検知領域(後方領域)S3に決定し、障害物センサ50Bに、障害物検知領域S3における障害物の検知を実行させる。より詳細には、走行制御部62は、障害物センサ50Bに、障害物検知領域S3の内側領域B3と外側領域A3の各々において、障害物を検知させる。
車体部10が左方向へ横行していた場合、走行制御部62は、障害物を検知する対象となる障害物検知領域Sを障害物検知領域(左方領域)S2に決定し、障害物センサ50Aに、障害物検知領域S2における障害物の検知を実行させる。より詳細には、走行制御部62は、障害物センサ50Aに、障害物検知領域S2の内側領域B2と外側領域A2の各々において、障害物を検知させる。
車体部10が右方向へ横行していた場合、走行制御部62は、障害物を検知する対象となる障害物検知領域Sを障害物検知領域(右方領域)S4に決定し、障害物センサ50Bに、障害物検知領域S4における障害物の検知を実行させる。より詳細には、走行制御部62は、障害物センサ50Bに、障害物検知領域S4の内側領域B4と外側領域A4の各々において、障害物を検知させる。
【0062】
車体部10が左前方向へ斜行していた場合、走行制御部62は、障害物を検知する対象となる障害物検知領域Sを障害物検知領域(左前方領域)S5に決定し、障害物センサ50Aに、障害物検知領域S5における障害物の検知を実行させる。より詳細には、走行制御部62は、障害物センサ50Aに、障害物検知領域S5の内側領域B5と外側領域A5の各々において、障害物を検知させる。
車体部10が右後方向へ斜行していた場合、走行制御部62は、障害物を検知する対象となる障害物検知領域Sを障害物検知領域(右後方領域)S6に決定し、障害物センサ50Bに、障害物検知領域S6における障害物の検知を実行させる。より詳細には、走行制御部62は、障害物センサ50Bに、障害物検知領域S6の内側領域B6と外側領域A6の各々において、障害物を検知させる。
車体部10が左後方向へ斜行していた場合、走行制御部62は、障害物を検知する対象となる障害物検知領域Sを障害物検知領域(左後方領域)S7に決定し、障害物センサ50A、50Bに、障害物検知領域S7における障害物の検知を実行させる。より詳細には、走行制御部62は、障害物センサ50Aに、障害物検知領域S2の内側領域B2と外側領域A2の各々において、障害物を検知させるとともに、障害物センサ50Bに、障害物検知領域S3の内側領域B3と外側領域A3の各々において、障害物を検知させる。
車体部10が右前方向へ斜行していた場合、走行制御部62は、障害物を検知する対象となる障害物検知領域Sを障害物検知領域(右前方領域)S8に決定し、障害物センサ50A、50Bに障害物検知領域S8における障害物の検知を実行させる。より詳細には、走行制御部62は、障害物センサ50Aに、障害物検知領域S1の内側領域B1と外側領域A1の各々において、障害物を検知させるとともに、障害物センサ50Bに、障害物検知領域S4の内側領域B4と外側領域A4の各々において、障害物を検知させる。
【0063】
また、車体部10停止、またはその場で旋回していた場合、走行制御部62は、障害物を検知する対象となる障害物検知領域Sを障害物検知領域S9に決定し、障害物センサ50A、50Bに障害物検知領域S9における障害物の検知を実行させる。より詳細には、走行制御部62は、障害物センサ50Aに、障害物検知領域S5の内側領域B5と外側領域A5の各々において、障害物を検知させるとともに、障害物センサ50Bに、障害物検知領域S6の内側領域B6と外側領域A6の各々において、障害物を検知させる。
なお、次に説明するステップS13において、走行制御部62は、障害物センサ50A、50Bから、障害物検知領域Sに障害物が位置していることを示す信号を受け取ったか否かを確認し、信号を受け取っていない場合には(ステップS13のNo)、ステップS11に戻り、上記の処理を繰り返す。ここで、ステップS11において検出された車体部10の走行状態が、直前に(前回)ステップS11を実行した際に検出された車体部10の走行状態と同じである場合においては、上記ステップS12の、検出された車体部10の走行状態に応じた障害物検知領域Sの決定(選択)処理は、実行せず、スキップするようにしてもよい。
【0064】
決定された障害物検知領域S(S1~S9のいずれか)で障害物センサ50A、50Bにより障害物が検知された場合、障害物センサ50A、50Bは、障害物検知領域Sに障害物が位置していることを示す信号を出力する。
走行制御部62は、予め設定された時間間隔毎に、障害物センサ50A、50Bから、障害物検知領域Sに障害物が位置していることを示す信号を受け取ったか否かを確認する(ステップS13)。
障害物センサ50A、50Bから、障害物検知領域Sに障害物が位置していることを示す信号を受け取っていない場合(ステップS13のNo)、ステップS11に戻り、処理を繰り返す。
【0065】
障害物センサ50A、50Bから、障害物検知領域Sに障害物が位置していることを示す信号を受け取った場合(ステップS13のYes)、障害物が検出されたのが、内側領域B(B1~B9)であるか否かを判定する(ステップS14)。
その結果、障害物が検出されたのが、外側領域A(A1~A8)であった場合(ステップS14のNo)、続いて、走行制御部62は、車体部10の走行速度を検出する。更に、検出された車体部10の走行速度が、予め設定された閾値(例えば5m/min)以上であるか否かを判定する(ステップS15)。走行速度が、閾値より低かった場合には(ステップS15のNo)、そのまま走行を継続し、ステップS11に戻る。
また、ステップS15で、走行速度が、閾値以上であると判定された場合には(ステップS15のYes)、走行制御部62は、車体部10を減速させる(ステップS16)。
【0066】
また、ステップS14で、障害物が検出されたのが、内側領域Bであった場合(ステップS14のYes)、更に、走行制御部62は、検出された車体部10の走行速度が、予め設定された閾値(例えば5m/min)以上であるか否かを判定する(ステップS17)。走行速度が、閾値より低かった場合には(ステップS17のNo)、車体部10を停止させる(ステップS18)。また、検出された車体部10の走行速度が、予め設定された閾値以上であった場合(ステップS17のYes)、走行制御部62は、車体部10を減速させた後に停止させる(ステップS19)。
【0067】
なお、上記のような動作を行う際、車体部10は、自律走行するものであってもよいし、作業者が車体部10を遠隔操作して走行させるものであってもよい。
また、ステップS14で、外側領域Aで障害物が検出された場合、それ以降のステップS16、S18、S19における、減速や停止動作と並行して、障害物をよけるような走行を行うこともできる。
【0068】
上述したような車両1によれば、車両1は、姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能な車体部10と、車体部10の周囲の、全方位の中のいずれの方向に障害物が位置した場合でも、この障害物を検知可能とするように、各々が異なる方向を向くように車体部10に複数が設けられた、障害物センサ50と、走行制御部62と、を備え、障害物センサ50には、全方位を網羅するように、複数の障害物検知領域Sが予め設定され、障害物センサ50は、複数の障害物検知領域Sの中の、指定された障害物検知領域Sの内側に、障害物が位置しているか否かを出力し、走行制御部62は、複数の障害物検知領域Sの中から、走行方向が含まれるような障害物検知領域Sを決定して、この障害物検知領域Sを障害物センサ50に対して指定し、この障害物検知領域Sに障害物があると障害物センサ50が出力した際に、車体部10を減速または停止させるように走行制御する。
上記のような構成においては、車両1には、障害物センサ50が複数、車体部10の周囲の、全方位のいずれの方向に障害物が位置した場合でも、これを検知可能とするように、各々が異なる方向を向くように設けられている。このため、1つの障害物センサ50のみによって、360°の全方位を対象として、障害物を検知する必要がなくなる。したがって、360°の全方位を検知可能な、高価なセンサを用いる必要がない。
また、例えば障害物センサとして3D-LiDAR等の、結果として対象物までの距離を出力するようなものを使用した場合においては、走行制御部62側で、障害物検知領域S内に障害物が位置しているか否かを判定するために、障害物センサから出力された結果としての距離の値を閾値と比較する等の、煩雑な内部処理が必要となる。これに対し、上記のような構成においては、障害物センサ50には、360°の全方位を網羅するように、複数の障害物検知領域Sが予め設定され、障害物センサ50は、複数の障害物検知領域Sの中の、指定された障害物検知領域Sの内側に、障害物が位置しているか否かを出力する。すなわち、障害物センサ50は、複数の障害物検知領域Sの中から障害物検知領域Sを指定すれば、この障害物検知領域Sの中に障害物が位置しているか否かの判定結果を、結果として出力する。このため、走行制御部62側では、障害物検知領域S内に障害物が位置しているか否かを判定するに際しては、障害物センサ50の判定結果をそのまま使用すればよく、煩雑な内部処理を必要としない。したがって、このような内部処理を実現するための、LSIやCPU等の情報処理部品として、低廉なものを使用することができる。
上記のような効果が相乗し、車両1のコストを抑制することができる。
このような障害物センサ50を用いて、障害物センサ50に、360°の全方位を網羅するように、複数の障害物検知領域Sを予め設定したうえで、走行制御部62が上記のように、複数の障害物検知領域Sの中から、走行方向が含まれるような障害物検知領域Sを決定して、この障害物検知領域Sを障害物センサ50に対して指定し、この障害物検知領域Sに障害物があると障害物センサ50が出力した際に、減速または停止するように走行制御することによって、姿勢を維持しつつ360°の全方位に走行可能で、走行方向に障害物が位置している場合に、これを検知して、適切に走行制御する車両1を、コストを抑制して実現することが可能となる。
【0069】
また、複数の障害物検知領域Sの各々は、車体部10側に位置する内側領域Bと、内側領域Bよりも車体部10から離れて位置する外側領域Aと、に区画され、障害物センサ50は、指定された障害物検知領域Sの、内側領域Bと外側領域Aの各々に対して、内側に、障害物が位置しているか否かを出力し、走行制御部62は、外側領域Aに障害物があると障害物センサ50が出力した際に、速度が閾値以下となるように減速し、内側領域Bに障害物があると障害物センサ50が出力した際に、車体部10の走行を停止するように制御する。
上記のような構成によれば、複数の障害物検知領域Sの各々を、車体部10側に位置する内側領域Bと、内側領域Bよりも車体部10から離れて位置する外側領域Aと、に区画し、障害物センサ50が、指定された障害物検知領域Sの、内側領域Bと外側領域Aの各々に対して、その内側に、障害物が位置しているか否かを出力するように構成したうえで、走行制御部62が、外側領域Aに障害物があると障害物センサ50が出力した際に、速度が閾値以下となるように減速し、内側領域Bに障害物があると障害物センサ50が出力した際に、走行を停止するように制御するようにすることで、センサとして3D-LiDAR等の、結果として対象物までの距離を出力するようなものを使用しない場合であっても、障害物との距離に応じた走行制御を、緻密に行うことができる。
【0070】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明の車両は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、走行方向が含まれるような障害物検知領域Sに障害物があると障害物センサ50が出力した際に、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、当該走行指令を無効とするようにしてもよい。
上記のような構成によれば、周囲に障害物があると障害物センサ50が出力した際に、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、当該走行指令を無効とするように制御する。このため、障害物へと接近するような走行を抑制することができる。
【0071】
上記のような構成は、車両1が停止している際においても、適用され得る。より具体的には、走行方向が含まれるような障害物検知領域Sに障害物があると障害物センサ50が出力した後、停止した際に、走行制御部62が、どの障害物検知領域Sに障害物があると出力されたかを記憶しておき、停止時に、当該障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、この走行指令を無効とするようにしてもよい。
【0072】
ここで、車両1は、車体部10を俯瞰表示する、表示部を更に備え、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、表示部の、俯瞰表示された車体部10に対して対応する位置に、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sを表示するとともに、表示部68に、この走行指令は無効である旨のメッセージMを表示するようにしてもよい。
上記のような構成によれば、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、表示部の、車体部10に対して対応する位置に、障害物検知領域Sを表示するとともに、表示部に、この走行指令は無効である旨のメッセージMを表示するため、どのような走行指令が無効とされたのかを容易に把握することができる。
【0073】
(実施形態の第2変形例)
図16は、本実施形態に係る車両の第2変形例を示す図である。本変形例は、上記第1変形例の、更なる変形例でもあり、停止中においても、障害物を検出する処理を実施するようにしたものである。
上記実施形態において、障害物が内側領域Bで検出された場合、図15のステップS14、S17を経た後、ステップS18、S19において、車両1は停止する。
これに関し、例えば、図16に示すように、車両1が右方Rに横行し、障害物を検知する対象となる障害物検知領域Sが障害物検知領域(右方領域)S4として設定されているときに、障害物センサ50Bが障害物検知領域S4の内側領域B4で障害物100を検出した場合を考える。この場合、図15のステップS18、S19の処理に基づき、走行制御部62が車両1を停止させる。本変形例では、この場合、走行制御部62が、障害物検知領域S4の内側領域B4で障害物100を検出したことを記憶する。
【0074】
続いて、走行制御部62は、全方位において、障害物が位置しているか否かを検知可能とするように、障害物100を検出したことを記憶した障害物検知領域S4だけでなく、車体部10の全周を囲う障害物検知領域S9を設定し、障害物センサ50により、障害物検知領域S9での障害物検知を継続する。
ただし、障害物センサ50は、実際には、前方Fの左方Lに位置する角部に設けられた障害物センサ50Aと、後方Bの右方Rに位置する角部に設けられた障害物センサ50Bと、を備えた構成となっており、ひとつの障害物センサ50のみによっては、障害物検知領域S9の全域を網羅して、障害物を検知することはできない。このため、走行制御部62は、実際の処理においては、全方位において、複数の障害物センサ50A、50Bによって障害物が位置しているか否かを検知可能とするように、障害物検知領域Sを、例えば左前方領域S5と右後方領域S6として選択し、決定する。すなわち、走行制御部62は、障害物センサ50Aに対して、決定された障害物検知領域(左前方領域)S5に障害物が位置しているか否かを出力させ、障害物センサ50Bに対して、決定された障害物検知領域(右後方領域)S6に障害物が位置しているか否かを出力させる。これにより、車体部10の停止後に、障害物検知領域S9に新たに進入した障害物や、障害物検知領域S9外に移動した障害物等を検知できる。
【0075】
また、本変形例では、車体部10の遠隔操作による操作を行っている場合、車両の停止中、遠隔操作を行う操作装置(例えば、後述する操作装置90)の表示部68に、画像V1を表示させる。この画像V1には、車体部10が俯瞰表示されている。また、画像V1において、その時点で車体部10の周囲に設定されている障害物検知領域S4を表示させる。更に、画像V1に、障害物検知領域S9のうち、障害物100を検出した障害物検知領域S4に対応する部分Kを、他の部分と異なる色で表示したり、フリッカー表示等で表示するようにしてもよい。これにより、車体部10の作業者に、障害物100の存在を認識させることができる。また、障害物センサ50においては、障害物100の具体的な大きさや位置までは検知されないため、画像V1においては、障害物100を仮想的に表示する。
【0076】
その後、走行制御部62は、車体部10が停止した状態から、再び走行を開始する場合には、障害物検知領域S4で障害物100を検出したのであれば、障害物検知領域S4側、つまり右方Rへの車体部10の移動を阻止する。つまり、自律走行、及び遠隔操作による操作のいずれにおいても、走行制御部62は、右方Rに車体部10を走行させる走行指令を無効とする。
ここで、操作装置の表示部68に表示する画像V1に、例えば、「指令無効」といったメッセージMを表示するようにしてもよい。ここで、メッセージMとしては、「指令無効」に限らず、「この方向への移動禁止」、「この方向に障害物があります」等といった主旨であってもよい。このようなメッセージMを確認した作業者は、操作装置で、車体部10を、右方R以外の他の方向に走行させることができる。
【0077】
このように、走行方向が含まれるような障害物検知領域Sに障害物があると障害物センサ50が出力した後、停止した際に、走行制御部62は、全方位において、障害物が位置しているか否かを検知可能とするように障害物検知領域Sを決定し、障害物センサ50に、決定された障害物検知領域Sに障害物が位置しているか否かを出力させ、障害物が位置していると出力された場合には、当該出力がなされた障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、この走行指令を無効とする。
上記のような構成によれば、周囲に障害物があると障害物センサ50が出力した後、停止した際に、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、この走行指令を無効とするように制御する。このため、障害物へと接近するような走行を抑制することができる。
ここで、走行制御部62は、全方位において、障害物が位置しているか否かを検知可能とするように障害物検知領域Sを決定し、障害物センサ50に、決定された障害物検知領域Sに障害物が位置しているか否かを出力させる。このため、車両1が停止した状態において、車両1が停止する要因となった障害物が車両1の周囲から移動して存在しなければ、障害物センサ50は対応する障害物検知領域Sに障害物が位置していないと出力し得る。また、新たな障害物が車両1の周囲に侵入してきていれば、障害物センサ50は、新たな障害物が位置していることを検知して、出力することもできる。このようにして、車両1の周囲の全方位において、停止している際の障害物に関する情報が更新される。上記のような、走行指令を無効とするような制御は、このようにして更新された情報を基に行われる。したがって、受信した走行指令において指定された走行方向を、無効とするか否かの判断を、停止の後の始動しようとする時点における障害物の状況に基づいて、適切に行うことができる。
【0078】
また、本変形例では、車体部10を俯瞰表示する、表示部68を更に備え、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、表示部68の、車体部10に対して対応する位置に、障害物検知領域Sを表示するとともに、表示部68に、この走行指令は無効である旨のメッセージMを表示する。
上記のような構成によれば、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、表示部68の、車体部10に対して対応する位置に、障害物検知領域Sを表示するとともに、表示部68に、この走行指令は無効である旨のメッセージMを表示するため、どのような走行指令が無効とされたのかを容易に把握することができる。
【0079】
(実施形態の第3変形例)
図17は、本実施形態に係る車両の第3変形例を示す図である。本変形例は、上記第2変形例の、更なる変形例でもある。
上記実施形態の第2変形例では、右方Rへ横行している場合に、障害物検知領域S4で障害物100が検知された場合について例示した。ところで、車体部10が左斜め前方、右斜め後方、右斜め前方、左斜め後方に斜行する場合、図9図12に示したような障害物検知領域S5~S8が設定される。障害物検知領域S5~S8は、障害物検知領域S1~S4を組み合わせた形状として設定されている。
例えば、図17に示すように、車体部10が左斜め前方に斜行する際に設定される障害物検知領域(左前方領域)S5の内側領域B5において、障害物100が検知された場合を考える。この場合、走行制御部62は、障害物100が、車体部10の前方Fに位置しているのか、左方Lに位置しているのかを、正確には、認識することができない。したがって、上記第2変形例の処理においては、実際には障害物が図17に示されるように車両1の左方に位置しているとしても、左方への車体部10の移動だけでなく、前方への車体部10の移動をもが、阻止される。すなわち、障害物100の位置する正確な状況がわからないため、斜行しようとした方向(この場合には左前方)を構成する、前方か後方のいずれか一方(この場合には前方)と、左方か右方のいずれか一方(この場合には左方)の、双方において、当該方向への車体部10の移動を阻止するように、走行制御部62は制御せざるを得ない。
【0080】
そこで、走行制御部62は、障害物検知領域S8を、左方領域である障害物検知領域S2と、前方領域である障害物検知領域S1とに分け、障害物センサ50に、個別に障害物100を検知させる。このため、走行制御部62は、障害物センサ50Aに、左方領域である障害物検知領域S2の内側領域B2で障害物検知を実行させる。また、走行制御部62は、障害物センサ50Aに、前方領域である障害物検知領域S1の内側領域B1で障害物検知を実行させる。例えば、図17の例の場合においては、上記の処理によって、障害物検知領域S1には障害物100がないことが検知され、障害物検知領域S2の内側領域B2に障害物100があることが検出される。
【0081】
その後、走行制御部62は、上記第2変形例と同様にして、障害物100を検出したことを記憶した障害物検知領域S2だけでなく、車体部10の全周を囲う障害物検知領域S9を設定し、障害物センサ50A、50Bにより、障害物検知領域S9での障害物検知を継続する。
車両の停止中、操作装置の表示部68に表示する画像V2には、障害物検知領域S9のうち、障害物100を検出した障害物検知領域S2に対応する部分Kを、他の部分と異なる色で表示したり、フリッカー表示等で表示する。
その後、走行制御部62は、車体部10が停止した状態から、再び走行を開始する場合には、障害物検知領域S2側、つまり左方への車体部10の移動を阻止し、左方への走行指令に対し、画像V2に、例えば、「指令無効」といったメッセージMを表示させる。この場合に、前方には障害物が検知されないため、走行制御部62は、障害物検知領域S1側、つまり前方への車体部10の移動は阻止せず、前方への走行指令に対しては、「指令無効」といったメッセージMは、表示させない。このように、左方以外の方向への走行指令に対しては、走行制御部62は、当該方向への車体部10の移動は阻止せず、「指令無効」等のメッセージMは表示させない。
【0082】
このように、本変形例では、複数の障害物検知領域Sは、前方向に対応する前方領域S1、後方向に対応する後方領域S3、右方向に対応する右方領域S4、左方向に対応する左方領域S2、右前方に対応して前方領域S1と右方領域S4を含む右前方領域S8、左前方に対応して前方領域S1と左方領域S2を含む左前方領域S5、右後方に対応して後方領域S3と右方領域S4を含む右後方領域S6、及び左後方に対応して後方領域S3と左方領域S2を含む左後方領域S7を含み、右前方領域S8、左前方領域S5、右後方領域S6、及び左後方領域S7のいずれかの領域に障害物があると障害物センサ50が出力した後、停止した際に、走行制御部62は、この領域に含まれる、前方領域S1と後方領域S3のいずれか一方である前後方領域と、右方領域S4と左方領域S2のいずれか一方である右左方領域との各々に対して、障害物センサ50に、障害物が位置しているか否かを出力させ、前後方領域と右左方領域のなかで、障害物が位置していると出力された領域に対して、この領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、この走行指令を無効とし、障害物が位置していないと出力された領域に対して、この領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合には、この走行指令を無効としない。
例えば車両1が左前方を走行方向として走行する際に、前方領域S1と左方領域S2を含む左前方領域S5が障害物検知領域Sとして設定されるような場合を考える。このような場合において、左前方領域S5に障害物があると障害物センサ50が出力し、停止した際に、走行制御部62は、左前方領域S5に含まれる、前方領域S1と後方領域S3のいずれか一方である前後方領域(この場合には前方領域S1)と、右方領域S4と左方領域S2のいずれか一方である右左方領域(この場合には左方領域S2)との各々に対して、障害物センサ50に、障害物が位置しているか否かを出力させ、前方領域S1と左方領域S2のなかで、障害物が位置していると出力された領域に対して、この領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、この走行指令を無効とし、障害物が位置していないと出力された領域に対して、この領域に含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合には、この走行指令を無効としない。このように、障害物があると障害物センサ50が出力した障害物検知領域S(左前方領域S5)が、他のより小さな複数の障害物検知領域S(前方領域S1と左方領域S2)を含むような場合に、これらの小さな複数の障害物検知領域Sの各々において障害物が位置しているか否かを改めて判定することで、障害物が位置している障害物検知領領域Sを細分化して限定し、より詳細に、把握することができる。このため、受信した走行指令において指定された走行方向に、実際には障害物が位置していない場合に、走行指令が無効にされてしまう、等といった事態が抑制される。
【0083】
また、本変形例では、上記第2変形例と同様に、車体部10を俯瞰表示する、表示部68を更に備え、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、表示部68の、車体部10に対して対応する位置に、障害物検知領域Sを表示するとともに、表示部68に、この走行指令は無効である旨のメッセージMを表示する。
上記のような構成によれば、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、表示部68の、車体部10に対して対応する位置に、障害物検知領域Sを表示するとともに、表示部68に、この走行指令は無効である旨のメッセージMを表示するため、どのような走行指令が無効とされたのかを容易に把握することができる。
【0084】
(実施形態の第4変形例)
図18は、本実施形態に係る車両の第4変形例を示す図である。
上記第2変形例では、走行制御部62は、障害物100を検出したで車体部10が停止しているとき、車体部10の全周を囲う障害物検知領域S9を設定し、障害物センサ50により、障害物検知領域S9での障害物検知を継続した。
これに対し、本変形例では、図18に示すように、右方領域である障害物検知領域S4、前方領域である障害物検知領域S1、左方領域である障害物検知領域S2、後方領域である障害物検知領域S3で、障害物センサ50による検知を順次行う。例えば、車体部10が右斜め前方に斜行する際に設定される障害物検知領域S8の内側領域B8において、障害物100が検知され、車体部10が停止した後、走行制御部62は、障害物センサ50Bに、右方領域である障害物検知領域S4で障害物検知を実行させる。また、走行制御部62は、障害物センサ50Aに、前方領域である障害物検知領域S1で障害物検知を実行させる。走行制御部62は、障害物センサ50Aに、左方領域である障害物検知領域S2で障害物検知を実行させる。また、走行制御部62は、障害物センサ50Bに、後方領域である障害物検知領域S3で障害物検知を実行させる。このような、障害物検知領域S1~S4における障害物検知は、予め設定した時間毎に順次繰り返して行う。なお、障害物検知領域S1~S4における障害物検知の順序は、適宜変更可能である。
その後、走行制御部62は、車体部10が停止した状態から、再び走行を開始する場合には、障害物100が位置していることを検知した障害物検知領域S(図18の場合には、右方領域S4に障害物100が位置しているため、右方領域S4)側への走行指令に対し、この走行指令を無効とし、画像V3に、例えば、「指令無効」といったメッセージMを表示させる。
【0085】
本変形例では、複数の障害物検知領域Sは、前方向に対応する前方領域S1、後方向に対応する後方領域S3、右方向に対応する右方領域S4、及び左方向に対応する左方領域S2を含み、走行方向が含まれるような障害物検知領域Sに障害物があると障害物センサ50が出力した後、停止した際に、走行制御部62は、障害物センサ50に、前方領域S1、後方領域S3、右方領域S4、及び左方領域S2の各々に、障害物が位置しているか否かを、個別に出力させ、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、この走行指令を無効とする。
上記のような構成によれば、周囲に障害物があると障害物センサ50が出力した後、停止した際に、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信しても、この走行指令を無効とするように制御する。このため、障害物へと接近するような走行を抑制することができる。
ここで、走行制御部62は、障害物センサ50に、障害物検知領域Sに含まれる前方領域S1、後方領域S3、右方領域S4、及び左方領域S2の各々に、障害物が位置しているか否かを、個別に出力させる。このため、車両1が停止した状態において、車両1が停止する要因となった障害物が車両1の周囲から移動して存在しなければ、障害物センサ50は対応する障害物検知領域Sに障害物が位置していないと出力し得る。また、新たな障害物が車両1の周囲に侵入してきていれば、障害物センサ50は、この新たな障害物に対応する障害物検知領域Sに関して、車両1が停止する要因となった障害物に対応する障害物検知領域Sに替えて、あるいはこの障害物検知領域Sとともに、障害物が位置していると出力することもできる。このようにして、前方領域S1、後方領域S3、右方領域S4、及び左方領域S2の各々において、停止している際の障害物に関する情報が、個別に、更新される。上記のような、走行指令を無効とするような制御は、このようにして更新された情報を基に行われる。したがって、受信した走行指令において指定された走行方向を、無効とするか否かの判断を、より詳細、かつ適切に行うことができる。
【0086】
また、本変形例では、上記第2変形例と同様に、車体部10を俯瞰表示する、表示部68を更に備え、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、表示部68の、車体部10に対して対応する位置に、障害物検知領域Sを表示するとともに、表示部68に、この走行指令は無効である旨のメッセージMを表示する。
上記のような構成によれば、走行制御部62は、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに含まれる方向へ走行する旨の走行指令を受信した場合に、表示部68の、車体部10に対して対応する位置に、障害物検知領域Sを表示するとともに、表示部68に、この走行指令は無効である旨のメッセージMを表示するため、どのような走行指令が無効とされたのかを容易に把握することができる。
【0087】
(実施形態の第5変形例)
図19は、本実施形態に係る車両の第5変形例を示す図である。
図19に示すように、本変形例における車両1は、車体部10に、警告灯70を備えている。複数の警告灯70は、車体部10の周囲に、互いに異なる方向を向くように設けられている。各警告灯70は、車体部10の走行方向、障害物検知状態等を表示する。本変形例において、警告灯70は、車体部10の前部に設けられた警告灯70F、車体部10の後部に設けられた警告灯70B、車体部10の右側に設けられた警告灯70R、車体部10の左側に設けられた警告灯70Lを備えている。
【0088】
走行制御部62は、障害物が位置していると障害物センサ50が出力した際に、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに対応した方向を向くように設けられた警告灯70を点灯(または点滅)させるようにしてもよい。
例えば、走行制御部62は、車体部10の走行方向が前方Fである場合、警告灯70Fを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が後方Bである場合、警告灯70Bを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が右方Rである場合、警告灯70Rを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が左方Lである場合、警告灯70Lを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が右斜め前方への斜行である場合、警告灯70F、及び70Rを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が左斜め前方への斜行である場合、警告灯70F、及び70Lを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が右斜め後方への斜行である場合、警告灯70B、及び70Rを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が左斜め後方への斜行である場合、警告灯70B、及び70Lを点灯させる。
【0089】
また、走行制御部62は、前方領域である障害物検知領域S1(図5参照)で障害物を検知した場合、警告灯70Fを点滅させる。走行制御部62は、後方領域である障害物検知領域S3(図6参照)で障害物を検知した場合、警告灯70Bを点滅させる。走行制御部62は、左方領域である障害物検知領域S2(図7参照)で障害物を検知した場合、警告灯70Lを点滅させる。走行制御部62は、右方領域である障害物検知領域S4(図8参照)で障害物を検知した場合、警告灯70Rを点滅させる。走行制御部62は、右前方領域である障害物検知領域S8(図12参照)で障害物を検知した場合、警告灯70F、及び70Rを点滅させる。走行制御部62は、左前方領域である障害物検知領域S5(図9参照)で障害物を検知した場合、警告灯70F、及び70Lを点滅させる。走行制御部62は、右後方領域である障害物検知領域S6(図10参照)で障害物を検知した場合、警告灯70B、及び70Rを点滅させる。走行制御部62は、左後方領域である障害物検知領域S7(図11参照)で障害物を検知した場合、警告灯70B、及び70Lを点滅させる。
図20は、本実施形態に係る車両の第5変形例において、車体部の前方領域である障害物検知領域S1で障害物を検知した状態の例を示す図である。この図20に示すように、車体部10の前方領域である障害物検知領域S1で障害物100を検知した場合、車体部10の前部に設けられた警告灯70Fが点灯(点滅)される。
【0090】
ここで、走行方向を示す場合は、警告灯70を点灯させ、障害物検知を示す場合は、警告灯70を点滅させるようにしたが、走行方向を示す場合は、警告灯70を点滅させ、障害物検知を示す場合は、警告灯70を点灯させるようにしてもよい。また、走行方向を示す場合と、障害物検知を示す場合とで、警告灯70の点灯色等を異ならせてもよい。また、内側領域Bで障害物を検知した場合と、外側領域Aで障害物を検知した場合とで、警告灯70の点灯状態を異ならせるようにしても良い。
【0091】
本変形例では、車体部10の周囲には、互いに異なる方向を向くように、複数の警告灯70が設けられ、走行制御部62は、障害物が位置していると障害物センサ50が出力した際に、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに対応した方向を向くように設けられた警告灯70を点灯させる。
上記のような構成によれば、障害物を検知したことで車両1が停止した際に、どの位置に障害物を検知したのかを、車両1の周囲にいる作業員等が容易に把握することができる。
【0092】
(実施形態の第6変形例)
図21は、本実施形態に係る車両の第6変形例を示す図である。
図21に示すように、本変形例における車両1は、車体部10の周囲に、互いに異なる方向を向くように設けられた複数の警告灯71を備えている。各警告灯71は、上記警告灯70と同様、車体部10の走行方向、障害物検知状態等を表示する。本変形例において、警告灯71は、車体部10の右前部に設けられた警告灯71A、車体部10の左前部に設けられた警告灯71B、車体部10の右後部に設けられた警告灯71C、車体部10の左後部に設けられた警告灯71Dを備えている。
【0093】
走行制御部62は、障害物が位置していると障害物センサ50が出力した際に、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに対応した方向を向くように設けられた警告灯71を点灯させるようにしてもよい。走行制御部62は、車体部10の走行方向が前方Fである場合、警告灯71A、71Bを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が後方Bである場合、警告灯71C、71Dを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が右方Rである場合、警告灯71A、71Cを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が左方Lである場合、警告灯71B、71Dを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が右斜め前方への斜行である場合、警告灯71Aを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が左斜め前方への斜行である場合、警告灯71Bを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が右斜め後方への斜行である場合、警告灯71Cを点灯させる。走行制御部62は、車体部10の走行方向が左斜め後方への斜行である場合、警告灯71Dを点灯させる。
【0094】
また、走行制御部62は、前方領域である障害物検知領域S1(図5参照)で障害物を検知した場合、警告灯71A、71Bを点滅させる。走行制御部62は、後方領域である障害物検知領域S3(図6参照)で障害物を検知した場合、警告灯71C、71Dを点滅させる。走行制御部62は、左方領域である障害物検知領域S2(図7参照)で障害物を検知した場合、警告灯71B、71Dを点滅させる。走行制御部62は、右方領域である障害物検知領域S4(図8参照)で障害物を検知した場合、警告灯71A、71Cを点滅させる。走行制御部62は、右前方領域である障害物検知領域S8(図12参照)で障害物を検知した場合、警告灯71Aを点滅させる。走行制御部62は、左前方領域である障害物検知領域S5(図9参照)で障害物を検知した場合、警告灯71Bを点滅させる。走行制御部62は、右後方領域である障害物検知領域S6(図10参照)で障害物を検知した場合、警告灯71Cを点滅させる。走行制御部62は、左後方領域である障害物検知領域S7(図11参照)で障害物を検知した場合、警告灯71Dを点滅させる。
【0095】
本変形例においても、車体部10の周囲には、互いに異なる方向を向くように、複数の警告灯71が設けられ、走行制御部62は、障害物が位置していると障害物センサ50が出力した際に、障害物が位置していると出力された障害物検知領域Sに対応した方向を向くように設けられた警告灯71を点灯させる。
上記のような構成によれば、障害物を検知したことで車両1が停止した際に、どの位置に障害物を検知したのかを、車両1の周囲にいる作業員等が容易に把握することができる。
【0096】
(実施形態の第7変形例)
図22は、本実施形態の第7変形例に係る車両に備えられた操縦装置の外観を示す図である。
図22に示すように、本変形例において、車両1は、操作装置90により遠隔操作される。操作装置90は、車体部10とは離間して設けられている。操作装置90は、Bluetooth(登録商標)、WI-FI、携帯電話通信網等の無線通信手段を介し、車両1との間で信号のやりとりが可能とされている。
また、本変形例において、表示部68が設けられている。表示部68は、コンピュータ本体、キーボード、マウス、モニタを備えた操作卓に備えられていても良いが、後に説明するように、操作装置90に対する作業者の操作状況が表示されるのであれば、いかなる形態のものであってもよい。操作装置90は、表示部68との間においても、無線通信手段を介して信号のやりとりが可能とされている。
【0097】
操作装置90は、複数の走行指令の各々に対応して設けられた、複数の入力部91を備えている。操作装置90は、複数の入力部91の各々が操作された場合に、各々の入力部91に対応する走行指令の入力を受け付け、入力を受け付けた走行指令を、無線通信手段を介して走行制御部62へと送信する。走行制御部62は、この走行指令を受信し、走行指令に従って、車両1を走行制御する。本変形例において、操作装置90は、複数の入力部91として、ボタン911~914、Lボタン915、Rボタン916、アナログスティック917、918、ボタン919~922を備えている。なお、図22に示す操作装置90の構成は、ボタン911~914、Lボタン915、Rボタン916、アナログスティック917、918、ボタン919~922の配置、各入力部91への機能の割り当て等を含め、適宜変更可能である。
ボタン911~914、アナログスティック917、918、ボタン919~922は、操作装置90の上面に配置されている。Lボタン915、Rボタン916は、操作装置90の前部に配置されている。ボタン911~914、Lボタン915、Rボタン916は、操作者が押圧操作する。ボタン919~922は、いわゆる十字ボタンであり、操作者が、ボタン919~922の各々を押圧操作する。アナログスティック917、918は、いわゆるジョイスティック状であり、操作者が、アナログスティック917、918を所望の方向に傾動させる。
【0098】
以下に、各入力部91に割り当てられた操作内容の例を示す。
例えばボタン912を操作すると、前輪11を上昇させる。ボタン913を操作すると、前輪11を下降させる。ボタン914を操作すると、前輪11を初期位置に戻す。
Lボタン915を押下させておくことで、後に操作有効指令として説明するように、操作装置90による操作を可能な状態とする。Rボタン916は、押下させておくことで、後述するインチング機能を有効とする。
アナログスティック917は、車体部10を旋回させる。アナログスティック917を左に操作すると、車体部10を反時計回りに旋回させ、右に操作すると、車体部10を時計回りに旋回させる。アナログスティック917の傾き量で、車体部10の旋回速度を調整する。また、アナログスティック917は、インチングが有効であるときに、車体部10を間欠旋回させる。
アナログスティック918は、車体部10の走行方向を操作する。アナログスティック918を前後左右に傾動させることで、車体部10がその傾動方向に応じた方向に走行する。アナログスティック918の傾き量により、車体部10の走行速度を調整する。
車両1にカメラが備えられている場合、ボタン919は、カメラ位置を上昇させる。ボタン921は、カメラ位置を下降させる。ボタン920は、カメラ位置を初期位置に戻す。
本例においては、ボタン911とボタン922には、特段の操作が割り当てられておらず、未定義となっている。
【0099】
以下に、各ボタンの機能例を示す。
操作装置90は、操作有効指令を有効とする入力部91として、上記のLボタン915を備えている。操作装置90は、この操作有効指令に対応する入力部91(Lボタン915)が押下操作されているときのみ、他の入力部91に対応する走行指令の入力を受け付ける。
【0100】
また、操作装置90は、インチング有効指令を有効とする入力部91として、上記のRボタン916を備えている。操作装置90は、このインチング有効指令に対応する入力部91(Rボタン916)が操作されているときには、他の入力部91に対する操作を、非連続な1回の操作と見做して、この入力部91に対応する走行指令の入力を受け付ける。例えば、前輪11の上げ操作や、所望の走行方向への走行操作を行う場合、各入力部91を微動させて操作する必要がある場合がある。この場合、インチング有効指令を有効化することで、本来の各入力部91を操作したときの走行指令を不連続動作として、走行指令を細切れに出力し、各部を、細かく動作させることができる。
【0101】
また、操作装置90は、複合走行指令機能を有している。複合走行指令は、複数の走行指令の中の、2以上の走行指令を含むように構成されている。例えば、前輪11を上げながら、車体部10を前進させる場合等に、複合走行指令が用いられる。上記の例においては、ボタン911とボタン922には、特段の操作が割り当てられておらず、未定義となっているが、任意の走行指令をまとめて1つの複合走行指令としたものを、このような未定義のボタン911、922に、任意に割り当てることも可能である。この複合走行指令に対応する入力部91(例えば複合走行指令が割り当てられたボタン911、922)が操作されると、操作装置90は、この複合走行指令に含まれる2以上の走行指令の各々を、連続的に、走行制御部62へと送信し、走行制御部62が走行指令の各々を受信するたびに、当該走行指令を実行するようにしてもよい。あるいは、操作装置90が、この複合走行指令を走行制御部62に直接送信し、走行制御部62が受信した複合走行指令に基づいて、複合的に、すなわち複合走行指令に含まれる2以上の走行指令の各々を連続して実行するようにしてもよい。
このように、複合走行指令に対応する入力部91が操作されると、当該複合走行指令に含まれる2以上の走行指令の各々が、連続的に、走行制御部62により実行される。
【0102】
表示部68は、操作装置90の外観と複数の入力部91を表示してもよい。表示部68は、これら複数の入力部91のいずれかが操作された場合に、操作がなされた入力部91を、他の入力部91に対して識別表示する。これにより、表示部68は、各入力部91に対する操作状況を視覚化する。
【0103】
このような変形例の車両1は、車体部10とは離間して設けられた操作装置90と、表示部68と、を更に備え、操作装置90は、複数の走行指令の各々に対応して設けられた、複数の入力部91を備え、複数の入力部91の各々が操作されることによって、操作装置90は、この入力部91に対応する走行指令の入力を受け付け、入力を受け付けた走行指令を走行制御部62へと送信し、表示部68は、操作装置90の外観と複数の入力部91を表示し、複数の入力部91のいずれかが操作された場合には、この入力部91を他の入力部91に対して識別表示し、複数の走行指令は、操作有効指令であって、操作装置90は、この操作有効指令に対応する入力部91が操作されているときのみ、他の入力部91に対応する走行指令の入力を受け付ける、操作有効指令と、インチング有効指令であって、このインチング有効指令に対応する入力部91が操作されているときには、操作装置90は、他の入力部91に対する操作を、非連続な1回の操作と見做して、この入力部91に対応する走行指令の入力を受け付ける、インチング有効指令と、複合走行指令であって、複数の走行指令の中の、2以上の走行指令を含むように構成され、この複合走行指令に対応する入力部91が操作されると、この複合走行指令に含まれる2以上の走行指令の各々が、連続的に、走行制御部62により実行される、複合走行指令と、のいずれか、またはいずれかの組み合わせを含む。
上記のような構成によれば、作業者が操作装置90の複数の入力部91を操作することによって、車両1が遠隔から操作される。表示部68は、操作装置90の外観と複数の入力部91を表示し、複数の入力部91のいずれかが操作された場合には、この入力部91を他の入力部91に対して識別表示するため、作業者がどの入力部91を操作したのかを、容易に把握することができる。
ここで、走行指令として操作有効指令を含む場合においては、作業者が何らかの操作を入力部91に対して行おうとすると、操作有効指令に対応する入力部91を意図的に操作する必要があるため、意図せず入力部91が操作されて車両1が操作されることを抑制することができる。
また、走行指令としてインチング有効指令を含む場合においては、入力部91を操作した際の操作時間が長くても、それが非連続な1回の操作として見做されるため、車両1を細かく操作することが容易となる。
更に、走行指令として複合走行指令を含む場合においては、複合走行指令に対応する入力部91が操作されると、複合走行指令に含まれる2以上の走行指令の各々が、連続的に、走行制御部62により実行されるため、作業者は、この2以上の走行指令の各々に対応する複数の入力部91を、それぞれ個別に操作する必要がなくなる。したがって、車両1の操作が容易となる。
【0104】
なお、本発明の車両は、図面を参照して説明した上述の実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、障害物センサ50A、50Bとして、上方から見た際に、例えば270°の角度範囲内を走査し、障害物の有無を検出するものを、機台41の前方Fで左方Lの角部と、機台41の後方Bで右方Rの角部の各々に設けたが、これに替えて、同様なセンサを、機台41の前方Fで右方Rの角部と、機台41の後方Bで左方Lの角部の各々に設けるようにしてもよい。
これ以外にも、上記各実施形態及び各変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 車両
10 車体部
50、50A、50B 障害物センサ
60 制御部
62 走行制御部
68 表示部
70、71 警告灯
90 操作装置
91 入力部
100 障害物
A、A1~A9 外側領域
B、B1~B9 内側領域
M メッセージ
S、S1~S9 障害物検知領域
S1 前方領域
S2 左方領域
S3 後方領域
S4 右方領域
S5 左前方領域
S6 右後方領域
S7 左後方領域
S8 右前方領域
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