(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006808
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】二次性高血圧の可能性の程度を決定する方法、システム、装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20250109BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20250109BHJP
【FI】
G16H50/20
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107810
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】516305053
【氏名又は名称】株式会社CureApp
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100228337
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 綾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晋
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA22
(57)【要約】
【課題】血圧を下げるための行動変容を実施したにもかかわらず血圧の低下が見られない患者に対して、二次性高血圧の可能性の程度を決定するシステムを提供すること。
【解決手段】二次性高血圧の可能性の程度を決定する方法であって、一以上のコンピュータに、測定された血圧値を示す血圧値データ及びユーザが行った行動を示す行動記録データを含むユーザ関連データを取得する段階と、取得したユーザ関連データ、ユーザの行動を示す行動スコアに基づく本態性高血圧予測モデル、及び、二次性高血圧予測モデルに基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する段階と、を実行させることを特徴とする方法。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次性高血圧の可能性の程度を決定する方法であって、一以上のコンピュータに、
測定された血圧値を示す血圧値データ及びユーザが行った行動を示す行動記録データを含むユーザ関連データを取得する段階と、
前記取得したユーザ関連データ、ユーザの行動を示す行動スコアに基づく本態性高血圧予測モデル、及び、二次性高血圧予測モデルに基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する段階と、
を実行させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する段階は、
前記取得したユーザ関連データに基づいて、本態性高血圧予測モデルにおける誤差項及び二次性高血圧予測モデルにおける誤差項を計算する段階と、
前記計算された本態性高血圧予測モデルにおける誤差項に基づいて、本態性高血圧であると仮定した際の尤度を計算し、
前記計算された二次性高血圧予測モデルにおける誤差項に基づいて、二次性高血圧であると仮定した際の尤度を計算し、
前記計算された本態性高血圧であると仮定した際の尤度及び二次性高血圧であると仮定した際の尤度に基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する段階と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記決定された本態性高血圧の可能性と比較した二次性高血圧の可能性の程度を決定する段階を前記一以上のコンピュータに更に実行させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ユーザ又は医療従事者の端末への要求操作入力に応じて、前記決定された本態性高血圧の可能性と比較した二次性高血圧の可能性の程度を示す情報を前記端末において提示する段階を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記本態性高血圧予測モデルは、行動スコアに関する項を含み、前記二次性高血圧予測モデルは、行動スコアに関する項を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記行動記録データは、前記ユーザの運動量、体重、及び塩分摂取量の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ユーザ関連データは所定期間において取得され、2以上の血圧値データ及び2以上の行動記録データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ユーザ関連データは、前記ユーザによって前記ユーザの端末に入力された血圧値及び前記ユーザが行った行動を示す情報を含み、前記ユーザの端末によって送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を一以上のコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項10】
二次性高血圧の可能性の程度を決定するシステムであって、
測定された血圧値を示す血圧値データ及びユーザが行った行動を示す行動記録データを含むユーザ関連データを取得し、
前記取得したユーザ関連データ、ユーザの行動を示す行動スコアに基づく本態性高血圧予測モデル、及び、二次性高血圧予測モデルに基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する、
ことを実行させることを特徴とするシステム。
【請求項11】
二次性高血圧の可能性の程度を決定する装置であって、
測定された血圧値を示す血圧値データ及びユーザが行った行動を示す行動記録データを含むユーザ関連データを取得し、
前記取得したユーザ関連データ、ユーザの行動を示す行動スコアに基づく本態性高血圧予測モデル、及び、二次性高血圧予測モデルに基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する、
ことを実行させることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次性高血圧の可能性の程度を決定する方法、システム、装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧には本態性高血圧と二次性高血圧の二種類がある。本態性高血圧は、高血圧の原因となるような基礎疾患をもたない、原因が明らかでない高血圧をいう。本態性高血圧の原因には、食事や生活習慣などの多様な要素が絡んでいることが知られている。これに対して、二次性高血圧は、甲状腺や副腎などの病気が原因で高血圧を起こすものをいう。
【0003】
本態性高血圧に関し、スマートフォンにインストールして本態性高血圧の治療を補助することができる治療アプリがある。患者がこの治療アプリを用いて、在宅での血圧測定結果(家庭血圧値)の入力と、行動変容を実施して食事や生活習慣の改善を継続することで、降圧効果を得ることができる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】CureApp HT 高血圧治療補助アプリの製品概要サイト(患者向け)(URL: https://cureapp.co.jp/productsite/ht/forpatient/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の治療アプリを用いた場合、二次性高血圧の患者については十分な降圧効果を得ることができないにも関わらず、二次性高血圧の可能性について考慮することなく、治療アプリの使用が継続されるおそれがあった。血圧を下げるための行動を実施したにもかかわらず血圧の降下が見られない患者に対して、二次性高血圧の可能性の程度を決定するシステムはこれまで実現されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、以下のような特徴を有している。すなわち、本発明の一実施態様における方法は、二次性高血圧の可能性の程度を決定する方法であって、一以上のコンピュータに、測定された血圧値を示す血圧値データ及びユーザが行った行動を示す行動記録データを含むユーザ関連データを取得する段階と、取得したユーザ関連データ、ユーザの行動を示す行動スコアに基づく本態性高血圧予測モデル、及び、二次性高血圧予測モデルに基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する段階と、を実行させる。
【0007】
2.項1に記載された方法において、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する段階は、取得したユーザ関連データに基づいて、本態性高血圧予測モデルにおける誤差項及び二次性高血圧予測モデルにおける誤差項を計算する段階と、計算された本態性高血圧予測モデルにおける誤差項に基づいて、本態性高血圧であると仮定した際の尤度を計算し、計算された二次性高血圧予測モデルにおける誤差項に基づいて、二次性高血圧であると仮定した際の尤度を計算し、計算された本態性高血圧であると仮定した際の尤度及び二次性高血圧であると仮定した際の尤度に基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する段階と、を含むようにしてもよい。
【0008】
3.項1又は2に記載された方法において、決定された本態性高血圧の可能性と比較した二次性高血圧の可能性の程度を決定する段階を含むようにしてもよい。
【0009】
4.項3に記載された方法において、ユーザ又は医療従事者の端末への要求操作入力に応じて、決定された本態性高血圧の可能性と比較した二次性高血圧の可能性の程度を示す情報を端末において提示する段階を更に含むようにしてもよい。
【0010】
5.項1~4のいずれか一項に記載された方法において、本態性高血圧予測モデルは、行動スコアに関する項を含み、二次性高血圧予測モデルは、行動スコアに関する項を含まないようにすることができる。
【0011】
6.項1~5のいずれか一項に記載された方法において、行動記録データは、ユーザの運動量、体重、及び塩分摂取量の少なくとも一つを含むようにしてもよい。
【0012】
7.項1~6のいずれか一項に記載された方法において、ユーザ関連データは所定期間において取得され、2以上の血圧値データ及び2以上の行動記録データを含むことができる。
【0013】
8.項1~7のいずれか一項に記載された方法において、ユーザ関連データは、ユーザによってユーザの端末に入力された血圧値及びユーザが行った行動を示す情報を含み、ユーザの端末によって送信することができる。
【0014】
9.本発明の一実施態様におけるコンピュータプログラムは、項1~8のいずれか一項の方法を一以上のコンピュータに実行させる。
【0015】
10.本発明の一実施態様におけるシステムは、二次性高血圧の可能性の程度を決定するシステムであって、測定された血圧値を示す血圧値データ及びユーザが行った行動を示す行動記録データを含むユーザ関連データを取得し、取得したユーザ関連データ、ユーザの行動を示す行動スコアに基づく本態性高血圧予測モデル、及び、二次性高血圧予測モデルに基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する、ことを実行させる。
【0016】
11.本発明の一実施態様における装置は、二次性高血圧の可能性の程度を決定する装置であって、測定された血圧値を示す血圧値データ及びユーザが行った行動を示す行動記録データを含むユーザ関連データを取得し、取得したユーザ関連データ、ユーザの行動を示す行動スコアに基づく本態性高血圧予測モデル、及び、二次性高血圧予測モデルに基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する、ことを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明を用いることにより、血圧を下げるための行動変容を実施したにもかかわらず血圧の低下が見られない患者に対して、二次性高血圧の可能性の程度を決定することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るクライアント装置及びサーバのハードウェア構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る決定サーバの機能ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る患者端末の機能ブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る医師端末の機能ブロック図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係るユーザ関連データの一例である。
【
図8A】本発明の一実施形態に係る本態性高血圧及び二次性高血圧予測モデルの各変数の値の一例である。
【
図8B】本発明の一実施形態に係る
図7及び8Aの値より算出される本態性高血圧及び二次性高血圧予測モデルの各変数の値である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るシーケンスチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係るシーケンスチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態に係る患者端末画面の一例である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る患者端末画面の一例である
【
図13】本発明の一実施形態に係る患者端末画面の一例である
【
図14】本発明の一実施形態に係る患者端末画面の一例である
【
図15】本発明の一実施形態に係る医師端末画面の一例である
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明のシステム構成図の一例を示す。システム100は二次性高血圧の可能性の程度を決定するために使用されるものであり、ネットワーク101、決定サーバ102、患者端末103、及び医師端末104を備える。更に、本実施形態においては患者端末103に接続される血圧測定に関連する血圧測定器105を含むものとする。例えば、血圧測定器105は、治療アプリの指示に従って血圧測定を行うことができる。また、例えば、血圧測定器105は、患者端末103と無線接続されることにより、治療アプリと協働して動作することができる。
【0020】
また、本実施形態において治療アプリ(治療アプリケーション)は、ユーザの高血圧に関連する認知や行動を改善したり、高血圧の治療に用いられるアプリケーションを意味するが、ユーザの高血圧を改善するために用いられるアプリケーションであればどのようなアプリケーションであってもかまわない。本明細書においては治療アプリと治療用アプリとは同じ意味で用いられる。また、本明細書においては高血圧を改善するために治療アプリを使用するユーザのことをユーザ又は患者という。本明細書において高血圧とは医学上の高血圧症だけでなく、健康上、改善した方が好ましい程度に血圧が高い状態を含み、治療は医療従事者の指示のもと行うものに限定されず、健康改善のために行うものを含んでもよい。また、本明細書の実施形態において、医療従事者の一例として医師と記載するが、医師以外の医療従事者であっても同様に本発明を実施可能である。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態による患者端末103及び医師端末104として使用することができるクライアント装置200、並びに決定サーバ102として使用することができるサーバ250のハードウェア構成を示すブロック図である。クライアント装置200は、処理装置201、表示装置202、入力装置203、記憶装置204、及び通信装置205を備える。これらの各構成装置はバス210によって接続される。なお、バス210と各構成装置との間には必要に応じてインタフェースが介在しているものとする。本実施形態において、患者端末としてのクライアント装置200はスマートフォンとし、医師端末は医師によって使用される端末であり、医師端末としてのクライアント装置200はパーソナルコンピュータとする。ただし、クライアント装置200は、上記の構成を備えるものであれば、タブレット型コンピュータ、タッチパッドなどのその他の情報処理装置とすることができる。
【0022】
サーバ250もまた同様に、処理装置251、表示装置252、入力装置253、記憶装置254、及び通信装置255を備える。これらの各構成装置はバス260によって接続される。なお、バス260と各構成装置との間には必要に応じてインタフェースが介在しているものとする。本実施形態においてサーバ250はサーバとして動作するコンピュータやその他の情報処理装置によって実現される。
【0023】
処理装置201、251は、クライアント装置200及びサーバ250全体の動作を制御するものであり、例えばCPUである。処理装置201、251は、記憶装置204、254に格納されているプログラムやデータを読み込んで実行することにより、様々な処理を実行する。1つの例では、処理装置201、251は、複数のプロセッサから構成される。
【0024】
表示装置202、252は、処理装置201、251の制御に従って、アプリケーション画面などをクライアント装置200のユーザ(患者又は医師)、サーバ250のユーザ(管理者)に表示する。表示装置は、液晶ディスプレイ、有機ELを用いたディスプレイやプラズマディスプレイ等とすることができる。
【0025】
入力装置203、253は、クライアント装置200及びサーバ250に対するユーザからの入力を受け付けるユーザインタフェースであり、例えば、タッチパネル、タッチパッド、キーボード、又はマウスである。本実施形態において患者端末としてのクライアント装置200はスマートフォンであるため、クライアント装置200は入力装置203としてタッチパネルを備え、タッチパネルは表示装置202としても機能し、表示装置202と入力装置203は一体となった構成である。表示装置202と入力装置203は、別の位置に配置される別個の形態であってもよい。ここでは、医師端末としてのクライアント装置200及びサーバ250はコンピュータであるため、入力装置としてキーボード及びマウスを備え、表示装置として液晶ディスプレイを備えるものとする。
【0026】
記憶装置204、254は、揮発性メモリであるRAM及び不揮発性メモリであるeMMC、UFS、SSDのようなフラッシュメモリを用いた記憶装置及び磁気記憶装置等を含む、一般的なスマートフォン及びコンピュータが備える記憶装置である。記憶装置204、254は、外部メモリを含むこともできる。
【0027】
例えば、クライアント装置200を患者端末として使用する場合には、治療アプリのプログラムを記憶装置204に記憶させてインストールすることで、治療アプリを実行可能な患者端末として機能させることができる。クライアント装置200を医師端末として使用する場合には、医師端末用のプログラムを記憶装置204に記憶させてインストールする。サーバ250の記憶装置においても同様に、決定サーバ用に決定処理のためのサーバ用プログラムが記憶される。治療アプリのためのサーバ用プログラムは、クライアントである各患者端末や医師端末において実行される治療アプリを適切に動作させるように情報処理を行うための機能及び各種データを含む。また、記憶装置として、クライアント装置200及びサーバ250から物理的に分離されたデータベースを用いることもできる。
【0028】
通信装置205、255は、ネットワーク101(
図2においては省略)を介して他の装置との間でデータの授受を行う。例えば通信装置205は、移動体通信や無線LAN等の無線通信を行い、ネットワーク101へ接続する。クライアント装置200は通信装置205をそれぞれ用いることで、ネットワーク101を介してサーバ250と通信を行う。通信装置205、255は、イーサネット(登録商標)ケーブル等を用いた有線通信を行ってもよい。
【0029】
図3~5はそれぞれ本発明の一実施形態による決定サーバ102、患者端末103、及び医師端末104の機能ブロック図の一例を示す。決定サーバ102は、制御部301、表示部302、入力部303、取得部304、記憶部305、決定部306、比較部307、及び通信部308を備える。患者端末103は、制御部401、表示部402、入力部403、記憶部404、通信部405、及び位置判定部406を備える。医師端末104は、制御部501、表示部502、入力部503、記憶部504、及び通信部505を備える。
【0030】
本実施形態においては、処理装置201、251が記憶装置204、254に記憶された決定サーバ用プログラム、患者端末用治療アプリ及び医師端末用治療アプリ等を実行することによりこれらの機能が実現される。各種機能がプログラム読み込みにより実現されるため、1つのパート(機能)の一部又は全部を他のパートが有していてもよい。各機能の一部又は全部を実現するための電子回路等を構成することによりハードウェアによってこれらの機能を実現してもよい。またこれらの機能部は一つの物理的な情報処理装置上に実現されている必要はない。複数の情報処理装置上によって実現されていてもよいし、各記憶部の全部又は一部がデータベースとして実現されていてもよい。いずれかの機能部が他の装置上において実現されてもよい。
【0031】
制御部301、401、及び501は、本実施形態の治療アプリによる治療のための情報処理、決定部306における本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度の決定処理及び比較部307における本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度の比較処理を実行するにあたっての制御処理を行う。記憶部305、404、及び504は、これらの処理に必要なデータ及びこれらの処理によって取得されたデータを記憶する。表示部302、402、及び502は、表示装置202、252を用いて構成されるものであり、各装置のユーザに対して情報を提示する。なお、表示部に加えて、又はこれに代えて、音声や触覚等によって情報を提示する提示部を備えるようにしてもよい。入力部303、403、及び503は、入力装置203、253を用いて構成されるものであり、各装置のユーザからの入力を受け付ける。本実施形態では、患者端末103においてはタッチパネルを備えるスマートフォンが一般的に有しているタッチ検出機能を用いることができる。通信部308、405、及び505は、通信装置205、255を用いて構成されるものであり、他のサーバ、患者端末、医師端末等との間で情報の送受信を行う。
【0032】
決定サーバ102の取得部304は、通信装置255を用いて実現され、治療アプリを用いて治療を行う患者のユーザ関連データを取得する。記憶部404は、取得されたユーザ関連データを、当該ユーザ関連データを取得した患者を識別することができる情報(ユーザ識別情報)と関連付けて記憶する。例えば、取得されたユーザ関連データを、当該ユーザ関連データを取得した患者が用いる治療アプリのアプリ識別情報と関連付けて記憶する。
【0033】
ここで、ユーザ関連データについて説明する。ユーザ関連データは、血圧値データ及び行動記録データを含む。血圧値データは測定された血圧値を示すデータであり、収縮期の血圧値及び拡張期の血圧値のうち少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。血圧値データは血圧測定器105等を用いて測定することができる。行動記録データは患者が行った行動を示すデータを含む。行動記録データは例えばユーザの運動量、体重及び塩分摂取量を含むことができる。ユーザ関連データは複数の日の血圧値データ及び行動記録データを含み、各血圧値データ及び各行動記録データは各データが関連する日付に関連付けて記憶される。血圧値データは血圧が測定された日に関連付けられ、行動記録データは当該行動記録データが示す行動を患者が行った日に関連付けられることができる。
【0034】
行動記録データは、主観データ及び客観データを含んでいてもよい。行動記録データにおける主観データは例えば、患者の運動の取り組みや減塩の取り組みに関して患者自身が主観で評価したデータを含んでいてもよい。また、行動記録データにおける客観データは例えば、気温のデータ、体重のデータを含んでいてもよい。気温のデータは、ユーザ関連データに関連付けられた日付における、取得可能な、代表的な場所の代表的な時刻の気温のデータとしてもよい。患者が行動していた地域の気温を入力してもよいし、地域ごとの気温データを管理する天気情報サーバから取得するようにしてもよい。患者の行動地域は患者端末103から位置情報を取得するようにしてもよいし、患者によって入力させるようにしてもよいし、患者のプロフィール情報等に含まれる患者の住所が含まれる地域としてもよい。患者の運動の取り組みや減塩の取り組みに関して、患者自身が主観で評価したデータに加えて、又はこれに代えて、客観データを用いてもよい。例えば、歩数測定器によって測定された患者の一日の歩数やウェアラブルデバイスを用いて推定された患者の一日の消費カロリーを患者の運動の取り組みを示すデータとしてもよい。計量して患者が一日に摂取した塩分量を減塩の取り組みを示すデータとしてもよい。
【0035】
患者端末103はインストールされた治療アプリを介して患者によって入力されたユーザ関連データを受け付けることができる。患者は、単一の日のユーザ関連データを入力することや、複数の日のユーザ関連データを毎日又は一括で入力することができる。患者端末103は患者によって入力されたユーザ関連データを決定サーバ102へ送信する。患者端末103から決定サーバ102へのユーザ関連データの送信は、所定のタイミングで行うことができる。例えば、毎日所定の時間に送信するようにしてもよいし、1週間に一回送信するようにしてもよいし、二次性高血圧の可能性の程度を決定する処理を実行するタイミングで送信するようにしてもよい。
【0036】
ユーザ関連データに関して、本発明の一実施形態におけるユーザ関連データの一例を
図7に示す。
図7で示す例では、i日目の収縮期の血圧値BP
i、気温T
i、及び行動スコアBS
iが示されており、これらの値を30日間(i=1~30)にわたって患者によって入力されたユーザ関連データに基づいている。例えば1日目(i=1)の収縮期の血圧値は146、気温は13、及び行動スコアは2である。ここで、行動スコアは、ユーザ関連データに含まれる行動記録データに基づいている。例えば行動スコアは、後述する
図12の画面1200において患者の主観によって点数付けられた「減塩の取り組み」及び「運動の取り組み」の点数に基づいて決定することができる。
【0037】
図3の決定サーバ102の機能ブロック図の説明に戻る。決定部306は、取得部304で取得したユーザ関連データに基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する。一つの実施形態として、取得部304で取得したユーザ関連データと、本態性高血圧予測モデル及び二次性高血圧予測モデルとに基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する。本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定することは、取得部304で取得したユーザ関連データと、本態性高血圧予測モデル及び二次性高血圧予測モデルとに基づいて計算された本態性高血圧であると仮定した際の尤度及び二次性高血圧であると仮定した際の尤度に基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定するようにしてもよい。
【0038】
比較部307は、決定部306において決定された本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を両者で比較して、本態性高血圧の可能性と比較した二次性高血圧の可能性の程度を決定する。本実施形態においては比較部307を含むものとするが、一つの変形例においては比較部307を含まなくてもよい。
【0039】
患者端末103の表示部402又は医師端末104の表示部502において、本態性高血圧の可能性と比較して決定された二次性高血圧の可能性の程度を示す情報を表示する。比較部307を含まない場合には、本態性高血圧であると仮定した際の尤度及び二次性高血圧であると仮定した際の尤度に基づいて決定された、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を示す情報を表示するようにしてもよい。
【0040】
図6に、一実施形態での本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定するためのシステム100によって実行されるフローチャートを示す。高血圧の患者が治療アプリを用いて治療を開始し、血圧を測定し、治療アプリを介してユーザ関連データを患者端末に入力する。ステップS602において、このように患者によって入力されたユーザ関連データを取得する。
【0041】
ステップS604ではステップS602で取得したユーザ関連データに基づいて、取得した血圧値の変化量に対する、本態性高血圧予測モデル及び二次性高血圧予測モデルの誤差を計算する。ここで、血圧値の変化量は、例えば収縮期及び拡張期の血圧値が30日間測定された場合に、ある日における血圧値からの他のある日における血圧値への変化量としてもよく、例えば1日目における収縮期の血圧値からの30日目における収縮期の血圧値への変化量としてもよいし、複数の日の収縮期の平均血圧値からの他の複数の日の収縮期の平均血圧値への変化量としてもよく、例えば1~4日目の4日間における収縮期の平均血圧値からの27~30日目の4日間における収縮期の平均血圧値への変化量としてもよい。ここでの血圧値は平均血圧値に限定されず、中央値であってもよいし、所定期間の血圧値からその他の統計的手法によって算出される値を用いてもよい。
【0042】
本態性高血圧予測モデル及び二次性高血圧予測モデルの説明をする。患者が本態性高血圧である場合、取得した血圧値の変化量に対する本態性高血圧予測モデルの誤差は小さくなり、取得した血圧値の変化量に対する二次性高血圧予測モデルの誤差は大きくなる。一方で、患者が二次性高血圧である場合、取得した血圧値の変化量に対する本態性高血圧予測モデルの誤差は大きくなり、取得した血圧値の変化量に対する二次性高血圧予測モデルの誤差は小さくなる。
【0043】
本態性高血圧は、食事や生活習慣などの患者の行動による影響を受けるものであると考えられるから、本実施形態において本態性高血圧予測モデルは、行動スコアに基づくモデルとし、より具体的には行動スコアに関する項を含むモデルとする。二次性高血圧は疾患に基づくものであって、患者の行動の影響を受けにくいものであると考えられるから、本実施形態において二次性高血圧予測モデルは、行動スコアに基づかないモデルとし、より具体的には行動スコアに関する項を含まないモデルとする。二次性高血圧であっても一定の患者の行動による影響を受けると考えられる場合には行動スコアに基づくものとしてもよい。その場合、本態性高血圧予測モデルよりも行動スコアに与える係数を小さくすることができる。また二次性高血圧に対して影響を与えると考えられる行動に関連する行動スコアに限定してもよい。
【0044】
一実施形態での本態性高血圧予測モデルを下記の数1に示す。数1の各項について以下に説明する。ΔBP
eは取得した血圧値の変化量を示し、一実施例においては
図7に示す1~4日目の4日間における収縮期の平均血圧値からの27~30日目の4日間における収縮期の平均血圧値への収縮期の平均血圧値の変化量であり、
図8Bに示されるように2.0である。α
eは本態性高血圧予測モデルにおける行動スコア平均値の回帰係数を示し、一実施例においては
図8Bに示されるように-1.8である。BS
aveは1日目からn日目までにおける行動スコアの平均値を示し、一実施例においては下記の数2により求められ、
図7の1日目から30日目までにおける行動スコアの平均値で
図8Bに示されるように3.9である。β
eは本態性高血圧予測モデルにおける気温差の回帰係数を示し、一実施例においては
図8Bに示されるように0.5である。
【0045】
ΔTは取得した気温の変化量を示す。ここで、気温の変化量は、例えば気温が30日間取得された場合に、ある日における気温からの他のある日における気温への変化量としてもよく、例えば1日目における気温からの30日目における気温への変化量としてもよい。また、気温の変化量は、x日目から(x+n
0-1)日目のn
0日間を始期と、(y-n
1+1)日目からy日目のn
1日間を終期とそれぞれ定義したときに、始期のn
0日間の平均気温からの終期のn
1日間の平均気温への平均気温の変化量としてもよい。この場合のΔTは数3によって求めることができる。例えば1日目から4日目の4日間を始期と、27日目から30日目の4日間を終期とそれぞれ定義したときに、始期の1日目から4日目までの4日間の平均気温からの終期の27日目から30日目までの4日間の平均気温への平均気温の変化量としてもよい。
図7の例では、
図8Bに示されるように、ΔTは-0.8である。ε
eは取得した血圧値の変化量ΔBP
eに対するα
eBS
aveとβ
eΔTの和の誤差を示し、一実施例においては13.02である。
【数1】
【0046】
ここで、数2及び数3について説明する。1日目からn日目までにおける行動スコアの平均値は下記の数2より求められる。BS
kはk日目の行動スコアを示す。一実施例において、nは30である。
【数2】
【0047】
1日目の気温からのn日目の気温への気温の変化量は下記の数3より求められる。n
0は始期であるx日目から(x+n
0-1)日目のn
0日間の平均気温を求めるために用いるサンプル数を示す。一実施例においては
図7の1日目~4日目の気温から始期の平均気温を求めることとし、
図8Aに示すようにn
0は4である。n
1は終期である(y-n
1+1)日目からy日目のn
1日間の平均気温を求めるために用いるサンプル数を示す。一実施例においては
図7の27日目~30日目の気温から終期の平均気温を求めることとし、
図8Aに示すようにn
1は4である。したがって、ΔTは、一実施例においては下記の数4より求められ、
図8Bに示すように-8.0である。
【数3】
【0048】
次に、一実施形態での二次性高血圧予測モデルを下記の数4に示す。数4の各項について以下に説明する。ΔBP
sは取得した血圧値の変化量を示し、一実施例においては
図7に示す1~4日目の4日間における収縮期の平均血圧値からの27~30日目の4日間における収縮期の平均血圧値への収縮期の平均血圧値の変化量であり、
図8Bに示されるように2.0である。β
sは二次性高血圧予測モデルにおける気温差の回帰係数を示し、一実施例においては
図8Bに示されるように0.2である。ΔTは始期の平均気温からの終期の平均気温への平均気温の変化量を示し、一実施例においては上記の数3により求められ、
図8Bに示されるように-0.8である。ε
sは取得した血圧値の変化量ΔBP
sに対するβ
sΔTの誤差を示し、一実施例においては3.6である。
【数4】
【0049】
ステップS606では、ステップS604で計算された、取得した血圧値の変化量に対する本態性高血圧予測モデルにおける誤差に基づいて、本態性高血圧であると仮定した際の尤度を計算する。本態性高血圧の可能性の程度は例えば、一実施形態では計算された誤差ε
eに基づいた、本態性高血圧であると仮定した際の尤度で示す。一実施例においては、誤差ε
eは本態性高血圧予測モデルの正規分布N(0,σ
e
2)に従うものとし、標準偏差σ
e=6とすると、本態性高血圧であると仮定した際の尤度は下記の数5により求められ、0.0178である。
【数5】
【0050】
ステップS608では、ステップS604で計算された、取得した血圧値の変化量に対する二次性高血圧予測モデルにおける誤差に基づいて、二次性高血圧であると仮定した際の尤度を計算する。二次性高血圧の可能性の程度は例えば、一実施形態では計算された誤差ε
sに基づいた、二次性高血圧であると仮定した際の尤度で示す。一実施例においては、誤差ε
sは二次性高血圧予測モデルの正規分布N(0,σ
s
2)に従うものとし、標準偏差σ
s=6とすると、二次性高血圧であると仮定した際の尤度は下記の数6により求められ、0.2742である。
【数6】
【0051】
ステップS610では、ステップS606及びS608で計算された本態性高血圧であると仮定した際の尤度及び二次性高血圧であると仮定した際の尤度に基づいて、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を決定する。ここでは、本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度は、各計算された本態性高血圧であると仮定した際の尤度及び二次性高血圧であると仮定した際の尤度そのものとする。
【0052】
ステップS612では、ステップS610で決定された本態性高血圧の可能性と比較した二次性高血圧の可能性の程度を決定する。ここではステップS610で決定された本態性高血圧であると仮定した際の尤度に対する二次性高血圧であると仮定した際の尤度の尤度比(以下、二次性高血圧の尤度比)を計算することによって、本態性高血圧の可能性と比較した二次性高血圧の可能性の程度を決定する。
【0053】
二次性高血圧の尤度比は、ステップS608で計算された二次性高血圧であると仮定した際の尤度をステップS606で計算された本態性高血圧のであると仮定した際の尤度で除算して求められる。例えば、一実施例においては二次性高血圧の尤度比は、二次性高血圧であると仮定した際の尤度0.2742を本態性高血圧であると仮定した際の尤度0.0178で除算した約15.4である。この尤度比の値から二次性高血圧の可能性の程度は本態性高血圧の可能性の15.4倍と決定できる。なお、二次性高血圧の可能性と比較した本態性高血圧の可能性の程度を、二次性高血圧であると仮定した際の尤度に対する本態性高血圧であると仮定した際の尤度の尤度比(以下、本態性高血圧の尤度比)で示してもよい。本態性高血圧の尤度比は、本態性高血圧であると仮定した際の尤度を二次性高血圧であると仮定した際の尤度で除算して求めてもよい。
【0054】
上記で説明した本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度の決定は、機械学習モデルに基づいた本態性高血圧及び二次性高血圧予測モデルを用いて決定してもよい。
【0055】
決定サーバ102は上述のようにして決定された二次性高血圧の可能性の程度を示す情報を、医師端末104によって医師に提示してもよいし、患者端末103によって患者に提示してもよい。
【0056】
本実施形態においては、ステップS612の比較する処理を含むものとするが、他の実施形態では比較する処理を含まなくともよい。この場合、患者端末103及び医師端末104においては、決定された本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度を提示することができる。本態性高血圧及び二次性高血圧の可能性の程度は、数5及び数6によって算出された本態性高血圧であると仮定した際の尤度及び二次性高血圧であると仮定した際の尤度そのものとしてもよいし、本態性高血圧であると仮定した際の尤度及び二次性高血圧であると仮定した際の尤度に対して所定の計算処理を実行して得られた数値としてもよい。当該尤度や当該得られた数値は幅のない値であってもよいし、幅を持たせた値でもよい。また、本態性高血圧であると仮定した際の尤度及び二次性高血圧であると仮定した際の尤度に基づいて決定される指標としてもよい。例えば、算出された本態性高血圧であると仮定した際の尤度及び二次性高血圧であると仮定した際の尤度が予め設定された閾値以上である場合には、可能性の程度が高いことを示す指標を提示し、閾値未満である場合は可能性の程度が低いことを示す指標を提示することができる。
【0057】
図9は、医師端末への要求操作入力に応じて、上述のようにして決定された二次性高血圧の可能性の程度を示す情報を医師端末104において提示するシーケンスチャートを示す。治療アプリを処方された患者は、患者端末103に治療アプリをインストールし、治療アプリを介して、患者のプロフィール等のユーザ情報を患者端末103に入力する。決定サーバ102は当該ユーザ識別を取得し、ユーザ識別情報に対応付けて記憶する。ユーザ識別情報は患者のユーザ名としてもよいし、患者が用いる治療アプリのアプリ識別情報としてもよい。次に、患者は治療アプリを介して、血圧値データ及び行動記録データを示すユーザ関連データを患者端末103に入力する。患者は、ユーザ関連データは毎日入力してもよいし、複数の日のユーザ関連データを一括で入力してもよい。
【0058】
患者端末103は患者によって入力されたユーザ関連データを決定サーバ102へ送信し、決定サーバ102は、治療アプリを用いて治療を行う患者のユーザ関連データを患者端末103から受信して、取得する。決定サーバ102は取得したユーザ関連データを、当該データを取得した患者のユーザ識別情報と関連付けて記憶する。取得したユーザ関連データを、取得した患者のプロフィール情報等と関連付けて記憶してもよいし、取得した患者が用いる治療アプリのアプリ識別情報と関連付けて記憶してもよい。
【0059】
次に、患者は、例えば治療アプリを処方されてから30日後に医療機関を受診する。医師の入力に応答して医師端末104は決定サーバ102に記憶されたユーザ関連データを含む患者情報の提示要求を送信する。決定サーバ102は、当該受診した患者に関する、記憶したユーザ識別情報に関連付けられたユーザ関連データに基づいて、二次性高血圧である可能性の程度を決定する。決定サーバ102は、決定した二次性高血圧である可能性の程度を示す情報を含む患者情報を医師端末104へ送信する。医師端末104は、決定サーバ102から取得した、決定された二次性高血圧である可能性の程度を示す情報を含む患者情報を医師に提示する。
【0060】
図10は、患者端末への要求操作入力に応じて、上述のようにして決定された二次性高血圧の可能性の程度を示す情報を患者端末103において提示するシーケンスチャートを示す。治療アプリを処方された患者は、患者端末103にインストールされた治療アプリを介して、患者のプロフィール等のユーザ情報を患者端末103に入力する。決定サーバ102は当該ユーザ情報を取得して、ユーザ識別情報と関連付けて記憶する。ユーザ識別情報は患者が用いる治療アプリのアプリ識別情報としてもよい。次に、患者は治療アプリを介して、血圧値データ及び行動記録データを示すユーザ関連データを患者端末103に入力する。患者は、ユーザ関連データを毎日入力してもよいし、複数の日のユーザ関連データを一括で入力してもよい。決定サーバ102は、治療アプリを用いて治療を行う患者のユーザ関連データを患者端末103から取得する。決定サーバ102は取得したユーザ関連データを、当該データをユーザ識別情報と関連付けて記憶する。取得したユーザ関連データを、取得した患者のプロフィール等と関連付けて記憶してもよいし、取得した患者が用いる治療アプリのアプリ識別情報と関連付けて記憶してもよい。
【0061】
次に、患者は、例えば降圧が得られず悩んでいるときに患者端末103において治療アプリの相談機能を実行する。患者端末103は相談機能の実行を示す情報をサーバへ送信し、決定サーバ102は当該患者に対して対応可能な相談選択肢を、患者端末103を介して患者に提示する。患者は提示された対応可能な相談選択肢から「血圧が下がらない」を選択する。決定サーバ102は、当該患者に関する、記憶したユーザ識別情報に関連付けられたユーザ関連データに基づいて、二次性高血圧である可能性の程度を決定する。患者端末103は、決定サーバ102から取得された、決定された二次性高血圧である可能性の程度を示すデータと、医師に相談する提案を示す情報とを患者に提示する。
【0062】
図11~14はそれぞれ、本発明の一実施形態による治療アプリをインストールした患者端末に表示される画面の一例を示す。
【0063】
図11は、患者が治療アプリにおける相談機能を使用するときに表示される画面の一例である。画面1100には、「どんな相談をしますか?」という質問が表示される。また、画面1100には、患者が相談したいと考えられる項目が表示され、例えば、「がんばっているのに血圧が下がらない」の項目が表示される。この患者が相談したいと考えられる項目は、1つであっても複数であってもよい。
【0064】
図12は、患者が治療アプリにおいてユーザ関連データを記録するときに表示される画面の一例である。画面1200には、「日付」及び実施した行動として「減塩の取り組み」、「運動の取り組み」、並びに「血圧」の項目が表示される。画面1200の「減塩の取り組み」の項目において、患者が自身の減塩の取り組みに関して主観で点数付けすることができ、例えば患者が、「0点 何も気をつけることはなかった」、「1点 少し気をつけることができた」、及び「2点 たくさん気をつけることができた」の選択肢から選択する。画面1200の「運動の取り組み」の項目において、患者が自身の運動の取り組みについて主観で点数付けすることができ、例えば患者が、「0点 何も気をつけることはなかった」、「1点 少し気をつけることができた」、及び「2点 たくさん気をつけることができた」の選択肢から選択する。画面1200の「血圧」の項目において、収縮期血圧値及び拡張期血圧値が入力される。収縮期血圧値及び拡張期血圧値は、血圧測定器によって測定された血圧値を、患者によって入力されてもよいし、血圧測定器に接続された患者端末によって入力されてもよい。
【0065】
図13は、
図11の画面1100において患者が、「がんばっているのに血圧が下がらない」の項目を選択したときに表示される画面の一例である。画面1300には、「○○(例えば、患者の名前)さんの記録をみましたが、以下が考えられます」と表示される。また、画面1300には、
図11の画面1100で入力されたユーザ関連データに基づいて、対応可能な相談選択肢が表示され、例えば、「1.適切な減塩、運動ができていない可能性」、「2.別な病気が原因で高血圧になっている可能性」の項目が表示される。また、それぞれの項目について詳しく確認するための選択肢が表示され、例えば、「これについて詳しく確認」と表示される。
【0066】
図14は、
図13において患者が、「2.別な病気が原因で高血圧になっている可能性」の項目で詳しく確認することを選択したときに表示される画面の一例である。画面1400には、上述のようにして決定された二次性高血圧の可能性の程度を示す情報が表示される。一実施形態では、画面1400には、本態性高血圧の可能性と比較して決定された二次性高血圧の可能性の程度を示す情報が表示される。本態性高血圧の可能性と比較して決定された二次性高血圧の可能性の程度は例えば、「○○さん(例えば、患者の名前)が別の病気で血圧が高くなっている可能性は、この1か月の行動や季節、年齢、性別もあわせて考えて、そうでない可能性の15.4倍です」と表示される。また、受診するよう患者に促すようなメッセージが表示される。メッセージは例えば、「ぜひ一度先生に相談してみて下さい」と表示される。
【0067】
図15は、本発明の一実施形態による医師端末用プログラムをインストールした医師端末104に表示される画面の一例を示す。画面1500には患者に関する情報が表示される。患者に関する情報は例えば、患者に割り当てられた識別情報や、横軸が日付で縦軸が血圧値の折れ線グラフにおいて収縮期血圧値及び拡張期血圧値が表示される。また、画面1500には医師に警告を促すようなメッセージが表示され、メッセージは例えば、「行動に比べて血圧降下度が少ないです」と表示される。メッセージは、例えば上述のように決定された二次性高血圧の可能性の程度があらかじめ設定された閾値より大きいときに表示されてもよい。メッセージを選択すると、画面1501が表示される。画面1501には、上述のように決定された二次性高血圧の可能性の程度が表示される。一実施形態では、画面1501には、本態性高血圧の可能性と比較して決定された二次性高血圧の可能性の程度が表示される。本態性高血圧の可能性と比較して決定された二次性高血圧の可能性の程度は例えば、「・・・2.二次性高血圧である 日々の記録から推定される二次性高血圧の確率は、推定される本態性高血圧の確率の15.4倍(95%CI(CI:信頼区間))と計算されます。精査をすすめます。」と表示される。
【0068】
図14のような患者への受診するよう促すようなメッセージや
図15のような医師への警告を促すようなメッセージにより、患者の精密検査を促すことができ、実際に患者が二次性高血圧症であった場合、二次性高血圧症を引き起こす原因となっている病気の特定につなげることができる。
【0069】
以上に説明した処理又は動作において、あるステップにおいて、そのステップではまだ利用することができないはずのデータを利用しているなどの処理又は動作上の矛盾が生じない限りにおいて、処理又は動作を自由に変更することができる。また以上に説明してきた各実施例は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
100:システム、101:ネットワーク、102:決定サーバ、103:患者端末、104:医師端末、105:血圧測定器、200:クライアント装置、201:処理装置、202:表示装置、203:入力装置、204:記憶装置、205:通信装置、210:バス、250:サーバ、251:処理装置、252:表示装置、253:入力装置、254:記憶装置、255:通信装置、260:バス、
301:制御部、302:表示部、303:入力部、304、取得部、305:記憶部、306:決定部、307:比較部、308:通信部、
401:制御部、402:表示部、403:入力部、404:記憶部、405:通信部
501:制御部、502:表示部、503:入力部、504:記憶部、505:通信部
1100:画面、1200:画面、1300:画面、1400:画面、1500:画面、1501:画面