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特開2025-6824作業支援方法、作業支援システム、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006824
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】作業支援方法、作業支援システム、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20250109BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107832
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将希
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】農業に関する作業を効率よく支援する。
【解決手段】作業支援方法は、複数の圃場で栽培されるべき作物について、複数の作型における収穫量及び栽培に必要なコストに関する情報を含む作型情報と、複数の圃場において作物を前記複数の作型の何れかで栽培した実績を示す実績情報と、に基づいて、複数の圃場のそれぞれにおいて、作物を前記複数の作型で栽培した場合の推定収穫量又は推定コストを決定することと、複数の圃場のそれぞれについて、決定した推定収穫量又は推定コストに基づいて、作物を栽培するにあたっての推奨作型を決定することと、推奨作型を示す推奨情報を出力することと、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圃場で栽培されるべき作物について、複数の作型における収穫量及び栽培に必要なコストに関する情報を含む作型情報と、前記複数の圃場において前記作物を前記複数の作型の何れかで栽培した実績を示す実績情報と、に基づいて、前記複数の圃場のそれぞれにおいて、前記作物を前記複数の作型で栽培した場合の推定収穫量又は推定コストを決定することと、
前記複数の圃場のそれぞれについて、決定した前記推定収穫量又は前記推定コストに基づいて、前記作物を栽培するにあたっての推奨作型を決定することと、
前記推奨作型を示す推奨情報を出力することと、
を含む、
作業支援方法。
【請求項2】
前記複数の作型が、1以上の新植えの作型と、株出しの作型と、を含む、
請求項1に記載の作業支援方法。
【請求項3】
前記推奨作型を決定することが、
前記複数の圃場と前記複数の作型の可能な組合せのうち、その組合せで前記作物を栽培した場合の前記複数の圃場における前記推定収穫量又は前記推定コストが推奨条件を満たす推奨組合せを決定することと、
決定した前記推奨組合せの作型を、前記推奨作型として決定することと、
を含む、
請求項1に記載の作業支援方法。
【請求項4】
前記推定収穫量又は前記推定コストを決定することが、前記推定収穫量及び前記推定コストの両方を決定することを含み、
前記推奨組合せを決定することが、
前記作物の単価を示す情報と、決定した前記推定収穫量及び前記推定コストと、に基づき、前記複数の圃場と前記複数の作型の可能な組合せのそれぞれで前記作物を栽培した場合の推定収益を決定することと、
前記可能な組み合わせのうち、前記推定収益が第1閾値よりも大きい組合せを、前記推奨条件を満たす組合せとして決定することと、
を含む、
請求項3に記載の作業支援方法。
【請求項5】
前記可能な組合せのうち、決定した前記推定収穫量又は前記推定コストが除外条件に該当する圃場及び作型を含む組合せを、前記推奨組合せの候補から除外することを更に含む、
請求項3に記載の作業支援方法。
【請求項6】
前記可能な組合せの圃場及び作型が前記作物を栽培した場合の前記推定収穫量が第2閾値未満であることを前記除外条件とする、
請求項5に記載の作業支援方法。
【請求項7】
前記可能な組合せの圃場及び作型で前記作物を栽培した場合の前記推定コストが第3閾値を超えることを前記除外条件とする、
請求項5に記載の作業支援方法。
【請求項8】
前記可能な組合せのうち、前記実績情報が示す前記複数の圃場において過去に採用された作型と、前記可能な組合せの作型と、が除外条件に該当する組合せを、前記推奨作型の候補から除外することを更に含む、
請求項3に記載の作業支援方法。
【請求項9】
前記可能な組合せの作型を採用した場合に、所定期間の間、同一の圃場において、同一の作型で前記作物が栽培される頻度が第4閾値よりも高いことを前記除外条件とする、
請求項8に記載の作業支援方法。
【請求項10】
前記可能な組合せのうち、前記複数の作型のうち何れかの作型が占める割合が除外条件に該当する組合せを、前記推奨作型の候補から除外することを更に含む、
請求項3に記載の作業支援方法。
【請求項11】
前記可能な組合せの作型を採用した場合に、前記複数の圃場において同一作型で前記作物が栽培される割合が第5閾値よりも高いことを前記除外条件とする、
請求項10に記載の作業支援方法。
【請求項12】
複数の圃場で栽培されるべき作物について、複数の作型における収穫量及び栽培に必要なコストに関する情報を含む作型情報と、前記複数の圃場において前記作物を前記複数の作型の何れかで栽培した実績を示す実績情報と、基づいて、前記複数の圃場のそれぞれにおいて、前記作物を前記複数の作型で栽培した場合の推定収穫量又は推定コストを決定する推定決定部と、
前記複数の圃場のそれぞれについて、決定した前記推定収穫量又は前記推定コストに基づいて、前記作物を栽培するにあたっての推奨作型を決定する推奨作型決定部と、
前記推奨作型を示す推奨情報を出力する情報出力部と、
を備える、
作業支援システム。
【請求項13】
コンピュータに、
複数の圃場で栽培されるべき作物について、複数の作型における収穫量及び栽培に必要なコストに関する情報を含む作型情報と、前記複数の圃場において前記作物を前記複数の作型の何れかで栽培した実績を示す実績情報と、基づいて、前記複数の圃場のそれぞれにおいて、前記作物を前記複数の作型で栽培した場合の推定収穫量又は推定コストを決定することと、
前記複数の圃場のそれぞれについて、決定した前記推定収穫量又は前記推定コストに基づいて、前記作物を栽培するにあたっての推奨作型を決定することと、
前記推奨作型を示す推奨情報を出力することと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援方法、作業支援システム、及び、プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場で作物を栽培するにあたり、コストや単収の異なる複数の作型のうちいずれで栽培するかについてユーザ自らが経験や勘に基づいて判断していた。近年、農業の情報化の一環として、作型の選択を支援する技術が開発されている。
【0003】
例えば特許文献1は、ユーザが入力した作物の種類や作型について、月毎に必要な労働力や資金、及び、最終的な収支の予測データを表示するシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5479770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、圃場の管理者が栽培すべき作物や作型を決定するためには、1以上の圃場のそれぞれについて候補となる作物と作型の組合せを自ら入力した後に、出力した予測データを参照していずれの作物をいずれの作型で栽培するか判断する必要があった。そのため、ユーザの作業負担が大きく、作業支援の効率が悪いという問題があった。
【0006】
上記の状況に鑑み、本開示は、農業についての作業を効率よく支援することを目的の一つとする。他の目的については、実施形態を通じて把握できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0008】
実施形態に係る作業支援方法は、複数の圃場で栽培されるべき作物について、複数の作型における収穫量及び栽培に必要なコストに関する情報を含む作型情報(D1)と、複数の圃場において作物を複数の作型の何れかで栽培した実績を示す実績情報(D2)と、に基づいて、複数の圃場のそれぞれにおいて、作物を複数の作型で栽培した場合の推定収穫量又は推定コストを決定することと、複数の圃場のそれぞれについて、決定した推定収穫量又は前記推定コストに基づいて、作物を栽培するにあたっての推奨作型を決定することと、推奨作型を示す推奨情報を出力することと、を含む。
【0009】
実施形態に係る作業支援システム(1)は、複数の圃場で栽培されるべき作物について、複数の作型における収穫量及び栽培に必要なコストに関する情報を含む作型情報(D1)と、複数の圃場において作物を複数の作型の何れかで栽培した実績を示す実績情報(D2)と、基づいて、複数の圃場のそれぞれにおいて、作物を複数の作型で栽培した場合の推定収穫量又は推定コストを決定する推定決定部(120)と、複数の圃場のそれぞれについて、決定した推定収穫量又は推定コストに基づいて、前記作物を栽培するにあたっての推奨作型を決定する推奨作型決定部(130)と、推奨作型を示す推奨情報を出力する情報出力部(150)と、を備える。
【0010】
実施形態に係るプログラム(P1、P2)は、コンピュータに、複数の圃場で栽培されるべき作物について、複数の作型における収穫量及び栽培に必要なコストに関する情報を含む作型情報(D1)と、複数の圃場において作物を複数の作型の何れかで栽培した実績を示す実績情報(D2)と、に基づいて、複数の圃場のそれぞれにおいて、作物を複数の作型で栽培した場合の推定収穫量又は推定コストを決定することと、複数の圃場のそれぞれについて、決定した推定収穫量又は前記推定コストに基づいて、作物を栽培するにあたっての推奨作型を決定することと、推奨作型を示す推奨情報を出力することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記の形態によれば、農業についての作業を効率よく支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る、作業支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る、作業支援装置の構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る、端末装置の構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る、作業支援システムの機能構成を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る、作型情報の例を示す図である。
図6】実施形態に係る、圃場実績情報の例を示す図である。
図7】実施形態に係る、作業支援システムが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態による作業支援システム1を、図面を参照して説明する。本実施形態において、図1に示すように、作業支援システム1は、作業支援装置10と、端末装置20と、を備える。作業支援システム1は、例えばサトウキビといった対象の作物が栽培される複数の圃場の情報を管理する。なお、作物の栽培は、その作物を収穫することを含む。
【0014】
複数の圃場ではそれぞれ、対象作物が、栽培時期や栽培方法が異なる複数の作型のうち何れかで栽培可能である。複数の作型は、例えば、夏植えと春植えを含む新植えの作型と、株出しの作型と、を含む。なお、新植えの作型では、春植えなら春に、夏植えなら夏に、圃場に新たに作物が植え付けられる。一方、株出しの作型では、春植えや夏植えで栽培された作物を収穫した後の残株が再び育てられる。複数の作型で対象の作物を栽培した場合、作業に必要なコスト(例えば、作業量や資材費)、及び、単位面積あたりの収穫量(単収とも言う)が異なる。栽培の開始には作業者の確保や資材の準備が必要となるため、複数の圃場全体の管理者といったユーザは、圃場での栽培実績に基づいて、対象の作物を今後(例えば、次の栽培期間)どの作型で栽培するか事前に判断する必要がある。
【0015】
本実施形態の作業支援システム1は、作型毎の収穫量とコストに関する情報(例えば、図4の作型情報D1)と、各圃場における栽培の実績を示す情報(例えば、図4の圃場実績情報D2)と、に基づいて各圃場において次期に各作型を採用した際に収穫される作物の収穫量の推定値(推定収穫量とも言う)と、必要となるコストの推定値(推定コストとも言う)と、を決定する。作業支援システム1は、決定した推定収穫量と推定コストに基づき、複数の圃場と、複数の作型と、の可能な組合せのうち、推定収益が基準を満たす推奨組合せを決定する。そして作業支援システム1は、推奨組合せに対応する推奨作型を示す情報をユーザに認識可能に表示する。このため、作業支援システム1は、ユーザがいずれの作型を選択すべきかの判断を支援するにあたって、ユーザによる操作負担や必要なデータ入力の量が少ない。
【0016】
また、本実施形態の作業支援システム1は、所定の除外条件に該当する圃場と作型の組合せについては、推奨組合せを決定する処理から除外する。除外条件は、例えば、その組合せにおいて、単収が所定の閾値未満の圃場が含まれる、作業量が所定の閾値を超えている圃場が含まれる、全体のうち特定の作型が占める割合が所定の閾値より多い、といった、圃場を担当する生産者又は圃場の管理者にとって許容できない内容をユーザが自由に設定し得る。このため、作業支援システム1は、単に収益を最大化するだけにとどまらず、複数の圃場それぞれにユーザのニーズに応じた作型を推奨し得る。
【0017】
作業支援システム1の構成を説明する。作業支援システム1に含まれる作業支援装置10は、図2に示すように、入出力装置12と、演算装置14と、通信装置16と、記憶装置18と、を備える。作業支援装置10は、例えば、クラウドを含めたサーバ機能を有するコンピュータである。
【0018】
入出力装置12には、演算装置14が処理を実行するための情報が入力される。また、入出力装置12は、演算装置14が処理を実行した結果を出力する。入出力装置12は、様々な入力装置と出力装置とを含み、例えば、キーボード、マウス、マイク、ディスプレイ、スピーカー、タッチパネルなどを含む。入出力装置12は省略されてもよい。
【0019】
通信装置16は、ネットワークNTと通信可能に接続され、ネットワークNTを介して作業支援装置10の外部の装置(例えば、端末装置20)との通信を行う。通信装置16は、1以上の端末装置20から取得した情報を演算装置14に転送する。また、演算装置14が生成した情報を端末装置20に転送する。通信装置16は、例えば、NIC(Network Interface Card)、USB(Universal Serial Bus)などの種々のインタフェースを含む。
【0020】
記憶装置18は、本実施形態の作業支援装置10が後述する処理を実行するための様々なデータ及び命令を含むプログラムP1等を記憶する。記憶装置18は、これらのデータ及び命令を記憶する非一時的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)として用いられる。プログラムP1は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体M1に記録されたコンピュータプログラム製品(computer program product)として提供されてもよい。または、記憶媒体M1は、プログラムP1を記憶した外部のサーバの記憶装置であってもよい。この場合、プログラムP1はサーバからダウンロード可能なコンピュータプログラム製品として提供され得る。
【0021】
演算装置14は、後述する処理の少なくとも一部を実行するための命令及びデータを含むプログラムP1を記憶装置18から読み出して実行する。例えば、演算装置14は、中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)などを含む。
【0022】
演算装置14は、プログラムP1を読み出し実行することで、作業支援装置10の後述する機能単位を実現する。
【0023】
作業支援システム1に含まれる端末装置20は、図3に示すように、入出力装置22と、演算装置24と、通信装置26と、記憶装置28と、を備える。端末装置20は、例えば、タブレットやスマートフォンといったモバイル機器である。なお、端末装置20は据え置き型のパーソナルコンピュータや、ノート型のコンピュータであってもよい。
【0024】
入出力装置22には、演算装置24が処理を実行するための情報が入力される。また、入出力装置22は、演算装置24が処理を実行した結果を出力する。入出力装置22は、様々な入力装置と出力装置とを含み、例えば、スピーカー、タッチパネルなどを含む。また、端末装置20がパーソナルコンピュータである場合などには、入出力装置22はキーボード、マウス、マイク、ディスプレイ等を含み得る。
【0025】
通信装置26は、ネットワークNTと通信可能に接続され、ネットワークNTを介して端末装置20の外部の装置(例えば、作業支援装置10や外部のサーバ)との通信を行う。通信装置26は、作業支援装置10や外部のサーバから取得した情報を演算装置24に転送する。また、演算装置24が生成した情報を作業支援装置10に転送する。通信装置26は、例えば、無線LAN(Local Area Network)、セルラーネットワークなどの無線通信に用いられる送受信機器、NIC、USBなどの種々のインタフェースを含む。
【0026】
記憶装置28は、本実施形態の作業支援システム1が後述する処理を実行するための様々なデータ及び命令を含むプログラムP2等を記憶する。記憶装置28は、これらのデータ及び命令を記憶する非一時的記憶媒体として用いられる。プログラムP2は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体M2に記録されたコンピュータプログラム製品として提供されてもよい。または、記憶媒体M2は、プログラムP2を記憶した外部のサーバの記憶装置であってもよい。この場合、プログラムP2はサーバからダウンロード可能なコンピュータプログラム製品として提供され得る。
【0027】
演算装置24は、後述する処理の少なくとも一部を実行するための命令及びデータを含むプログラムP2を記憶装置28から読み出して実行する。例えば、演算装置24は、中央演算処理装置(CPU)などを含む。
【0028】
演算装置24は、プログラムP2を読み出し実行することで、端末装置20の後述する機能単位を実現する。
【0029】
図2及び図3に示したような物理構成により、作業支援装置10及び端末装置20は、図4に示す機能単位を実現する。一例として、作業支援装置10の演算装置14は、プログラムP1を実行することで、情報取得部110、推定決定部120、推奨作型決定部130、除外部140、情報出力部150、及び、情報記憶部160の各機能を実現する。
【0030】
情報記憶部160は、例えば、作型情報D1、及び、圃場実績情報D2を、後述する処理の実行開始前に、予め記憶している。情報記憶部160は、記憶している情報を情報取得部110へ提供する。また、情報記憶部160は、情報取得部110、推定決定部120、推奨作型決定部130、及び、除外部140が取得又は生成した情報を一時的に記憶する場合がある。情報記憶部160は一時的に記憶した情報を、情報取得部110、推定決定部120、推奨作型決定部130、除外部140、及び、情報出力部150に提供する場合がある。
【0031】
情報記憶部160が記憶する作型情報D1は、作業支援システム1のユーザが管理する複数の圃場において対象の作物を栽培する際の複数の作型を示す情報を格納する。一例として作型情報D1は、例えば図5に示すように、各作型の名称を示す情報と、栽培スケジュールを示す情報と、標準的な収穫量を示す情報と、コストに関する情報と、を対応付けて記憶している。
【0032】
図5の作型情報D1の各行において、「作型」の列には、対象の作物(例えば、サトウキビ)の栽培時に選択し得る各作型の名前が格納されている。また、栽培スケジュールを示す情報として、「栽培開始時期」にはその作型で栽培を開始する時期(例えば、植え付け時期)が、「栽培期間」には栽培開始から収穫までにかかる期間の長さを示す情報が、「収穫時期」には収穫の時期を示す情報が、それぞれ格納されている。更に、標準的な収穫量を示す情報として、「単収」にはその作型で栽培した際の圃場の単位面積(例えば、10アール)あたりの標準的な収穫量を示す情報が格納されている。なお、単位面積あたりの収穫量の数値を単収とも言う。また、コストを示す情報として、「作業量」にはその作型で対象の作物を栽培するために必要な単位面積あたりの標準作業量(例えば、10アールあたりののべ労働時間)を示す情報が格納されている。また、コストを示す情報として、「資材費」にはその作型で対象の作物を栽培するために必要な単位面積あたりの金銭的なコスト(人件費を除く)の情報を示す情報が格納されている。
【0033】
図5の例では、新植えの作型として3月に栽培が開始され12か月後の2月に収穫される「春植え」の作型が1行目に定義されている。また、株出しの作型として3月に栽培が開始され12か月後の2月に収穫される「株出し」が4行目に定義されている。「株出し」の作型では直前に収穫された作物の再生株を栽培するため、単位面積あたりの作業量と資材費が新植えの作型よりも少ない。「株出し」の作型の「単収」は、直前の収穫における「単収」から一定比率低下する(図5の例では0.85倍)。そのため、「株出し」の作型で栽培を繰り返すと次第に単収が低下する。
【0034】
図5の例では、新植えの作型として、8月に栽培が開始され18か月後の翌年2月に収穫される「夏植え」の作型が2行目と3行目に定義されている。本実施形態の作業支援システム1は、対象の作物を栽培開始する3月から次の2月までの1年間を一期として、各期の推奨作型を決定する。これに対応して作型情報D1は、栽培期間が複数期にまたがる作型については1期毎に別の作型に分割して、その期に発生する標準的なコスト及び収量を示す情報を格納している。図5の例では、栽培期間が18か月にわたる「夏植え」の作型を示す情報として、栽培開始する1年目の8月から2年目の2月までの1期目に対応する「夏植え(1期目)」と、2年目の3月から収穫される3年目の2月までの2期目に対応する「夏植え(2期目)」の作型とがそれぞれ2行目と3行目に格納されている。収穫時期を含む「夏植え(2期目)」の「単収」として、「春植え」の単収よりも高い数値が格納されている。このため、夏植えの作型は、その後に「株出し」の作型を選択する場合に春植えの作型よりも有利な場合がある。なお、「夏植え(1期目)」は収穫期を含まないため「単収」はゼロである。しかし「夏植え(1期目)」の収穫への貢献を反映するために、作型情報D1は「単収」において括弧付けで示すように「夏植え(1期目)」と「夏植え(2期目)」で平均した場合の仮想的な単収量を示す情報を含んでもよい。また、「夏植え(1期目)」と「夏植え(2期目)」を含む1回の夏植えの作型における各期の収益を推定するために、作型情報D1は「作業量」及び「資材費」において括弧付けで示すように、1回の夏植えの作型で生じるコストを「夏植え(1期目)」と「夏植え(2期目)」で平均した場合の仮想的な作業量及び資材費を示す情報を含んでもよい。
【0035】
図4にもどって、情報記憶部160が記憶する圃場実績情報D2は、作業支援システム1のユーザが管理する複数の圃場を示す情報と、各圃場における対象の作物を以前に栽培した実績を示す情報と、を格納する。一例として圃場実績情報D2は、例えば図6に示すように、各圃場の識別子と、圃場での実作業を担当する生産者を示す情報と、圃場の面積を示す情報と、栽培している対象作物の過去及び現在の作型を示す情報と、過去の収穫実績を示す情報と、を対応付けて記憶している。
【0036】
図6の圃場実績情報D2の各行において、圃場を示す情報として、「圃場」の列には圃場の識別子が、「生産者」にはその圃場の担当生産者の名称を示す情報が、「面積」にはその圃場で対象の作物を栽培可能な有効面積を示す情報(図6の例では単位はアール)が、それぞれ格納されている。なお、「生産者」は担当生産者のメールアドレスなど、当該生産者の連作先を示す情報が含まれていてもよい。
【0037】
また、圃場実績情報D2の各行において、過去及び現在に採用された作型を示す情報として、「先期作型」の列には先期に採用された作型を、「今期作型」には今期採用された作型を、それぞれに示す情報が格納されている。なお、「先期作型」乃至「今期作型」が「株出し」である場合には、当該「株出し」の作型を示す情報に、その圃場において「株出し」の作型が連続して採用された期数の情報が更に格納される場合がある。図6の例では、識別子がF001の圃場において先期と先先期に「株出し」の作型が採用されたことに応じて「先期作型」に「株出し(2期目)」が格納され、識別子がF003の圃場において3期前~先期まで連続して「株出し」の作型が採用されたことに応じて「先期作型」に「株出し(3期目)」が格納されている。
【0038】
また、圃場実績情報D2の各行において、過去の収穫実績を示す情報として、「先期単収」の列に先期にその圃場で栽培された対象の作物の単収を示す情報が格納されている。
【0039】
図4の情報記憶部160は更に、対象の作物の単位重さ(例えば1トン)あたりの売価を示す値(単価とも言う)を示す情報と、単位作業量あたりの費用(例えば、1時間の作業を行うにあたっての人件費)を示す情報と、を含む後述の処理に必要な情報を記憶していてもよい。
【0040】
図4の情報取得部110は、例えば、情報記憶部160が記憶する作型情報D1及び圃場実績情報D2など、後述する処理に必要な情報を取得する。情報取得部110は、取得した情報を推定決定部120、推奨作型決定部130、及び、除外部140に提供する。
【0041】
推定決定部120は、複数の圃場のそれぞれについて、複数の作型のそれぞれで対象の作物を栽培した場合の推定収穫量と推定コストを決定する。
【0042】
推奨作型決定部130は、推定収穫量と推定コストに基づいて、各圃場において次期の作型として推奨される推奨作型を決定する。
【0043】
除外部140は、複数の圃場及び複数の作型の可能な組合せのうち、後述する除外条件に該当する組合せを、推奨組合せの候補から除外する。
【0044】
情報出力部150は、推奨作型決定部130が決定した推奨作型を示す推奨情報を出力する。
【0045】
端末装置20の演算装置24は、プログラムP2を実行することで、表示部210の機能を実現する。表示部210は、例えば、情報出力部150が出力した推奨情報を、入出力装置22を用いてユーザに認識可能に表示する。
【0046】
(作業支援システムの動作)
作業支援システム1は、上述した機能構成により、図7に示す処理を実行して、圃場での作業を支援する。作業支援システム1の作業支援装置10は設定により定められた時刻になると、図7の処理を開始する。例えば、作業支援装置10は、複数の圃場において対象の作物の栽培する期間が開始するよりも所定期間前(例えば、サトウキビを3月に栽培開始する場合は、先期での収穫が始まる前である1月1日)に、図7の処理を開始する。あるいは作業支援装置10は、入出力装置12により圃場の作型を推奨する情報の表示を指示するユーザ入力を受け付けたときに、図7の処理を開始してもよい。
【0047】
図7の処理では、まずステップS1002において、情報取得部110が作型情報D1と圃場実績情報D2とを取得する。例えば情報取得部110は、予めユーザによって入出力装置12を用いて入力され、情報記憶部160が記憶していた作型情報D1と圃場実績情報D2とを、情報記憶部160から取得する。
【0048】
次に、ステップS1004において、推定決定部120が、各圃場について、次期に各作型を選択した場合の推定収穫量と推定コストを決定する。推定決定部120は、例えば圃場の数がn個であり作型の数がm個である場合に、圃場n個と作型m個の組み合わせについて推定収穫量と推定コストとを決定する。なお、推定決定部120は図6の圃場実績情報D2の「今期作型」が「夏植え(1期目)」である圃場についてのみ、「夏植え(2期目)」の推定収穫量及び推定コストを算出してもよい。
【0049】
例えば推定決定部120は、図6の圃場実績情報D2に登録された複数の圃場において、図5の作型情報D1に登録された複数の作型のそれぞれで対象の作物を栽培した場合の次期の推定収穫量と推定コストを、作型情報D1と圃場実績情報D2とに基づいて決定する。例えば推定決定部120は、圃場実績情報D2のうち各圃場の面積を示す情報と、作型情報D1のうち単位面積あたりの標準の収穫量を示す情報と、に基づいて、ある圃場において次期にある作型で対象の作物を栽培した場合の推定収穫量を決定する。
【0050】
例えば春植えや夏植えのような新植えの作型は、次期にその作型で対象の作物を栽培した場合の収穫量が今期及びそれ以前におけるその圃場での収穫量の影響を受けない。そのため推定決定部120は、「春植え」、「夏植え(1期目)」、及び、「夏植え(2期目)」の作型については、図5の作型情報D1の「単収」が示す単位面積(10アール)あたりの標準の収穫量と、圃場実績情報D2の「面積」が示す各圃場の面積を乗算することで、各圃場における各作型の推定収穫量を算出する。
【0051】
本実施形態では推定決定部120は、「夏植え(1期目)」及び「夏植え(2期目)」の作型については、図5の作型情報D1の「単収」、「作業量」及び「資材費」において括弧付けで示された、2期に渡る夏植えの作型での単収及びコストを「夏植え(1期目)」及び「夏植え(2期目)」で平均した値を示す情報に基づいて、推定収穫量、推定コスト及び推定収穫量を決定する。これにより、2期にわたる夏植えにより得られる後述の推定収収益を、1期ごとに算出し得る。
【0052】
一方、「株出し」のように残株を育てる作型は、次期にその作型で対象の作物を栽培した場合の収穫量が今期の収穫量により変動する。そこで推定決定部120は、作型情報D1の「株出し」については、今期その圃場における単位面積あたりの収穫量の推定値(推定単収とも言う)に基づいて、次期の推定収穫量を算出する。例えば図5の作型情報D1では、「株出し」の作型を採用した場合には前年度(先期)の単収の0.85倍の単収が見込まれる。そのため推定決定部120は、図6の圃場実績情報D2の「今期作型」が「春植え」及び「夏植え(2期目)」である圃場については、図5の作型情報D1の「単収」が示すその作型の標準的な単収をその圃場での今期の推定単収として決定する。一方、推定決定部120は、図6の圃場実績情報D2の「今期作型」が「株出し」である圃場については、「先期単収」が示す前年度の単収に0.85倍した数値を今期の推定単収として決定する。推定決定部120は、決定した今期の推定単収を0.85倍にした値にその圃場の面積を乗算した値を、その圃場で「株出し」を次期の作型として選択した場合の推定収穫量として決定してもよい。なお、「今期作型」が「夏植え(1期目)」である場合には、次期の作型として「株出し」は選択不可能であるため、次期の推定コスト及び推定単収は計算不要である。
【0053】
例えば、推定決定部120は、図6の圃場実績情報D2の「作業量」が示す作型毎の単位面積あたりの作業量と各圃場の面積を乗算することで、各圃場において次期に各作型を選択した場合に必要となる総作業量を算出する。また、推定決定部120は、算出した総作業量に単位作業量あたりの費用を乗算することで、次期に各圃場で各作型を採用した場合の総作業費用を算出する。
【0054】
更に、推定決定部120は、図6の圃場実績情報D2の「資材費」が示す作型毎の単位面積あたりの資材費と各圃場の面積を乗算することで、各圃場において次期に各作型を選択した場合に必要となる総資材費を算出する。更に、推定決定部120は、各圃場で各作型を採用した場合について算出した総作業費用と総資材費を加算した総費用を、その圃場でその作型で対象の作物を栽培するための金銭的コストとして決定する。
【0055】
次に、ステップS1006において、推奨作型決定部130が、処理対象の候補組合せを決定する。例えば、作型を推奨する対象が次期に栽培する作型のみであり、作型がm個、圃場がn個存在する場合、理論上圃場と作型の可能な組合せとしてmのn乗個が存在する。推奨作型決定部130は、図7の処理を開始してから最初のステップS1006の処理においては、所定の初期組合せ(例えば、全ての圃場において「夏植え(1期目)」が採用される組合せ)を処理対象の候補組合せとして決定する。また、後述するステップS1006~ステップS1012のループにおいて2度目以降にステップS1006が実行される場合に、推奨作型決定部130は可能な組合せのうち今まで処理対象とされていなかった組合せを、処理対象の候補組合せとして決定する。一例として、2度目のステップS1006の処理において推奨作型決定部130は、n-1個の圃場において「夏植え(1期目)」、1つの圃場に置いて「春植え」が採用される組合せを処理対象の候補組合せとして決定してもよい。
【0056】
なお、圃場実績情報D2の「今期作型」が示す作型が「夏植え(1期目)」であるなど栽培期間が複数年度にまたがりかつ次期の開始までにその栽培が終了しない圃場については、次期の作型として後続の作型(例えば、「夏植え(2期目)」)のみが可能となる。そのため推奨作型決定部130は、その圃場についてその他の作型が選択された組合せを候補組合せから排除する。
【0057】
次に、ステップS1008において、除外部140は、ステップS1006において決定した処理対象の候補組合せが除外条件に該当するか決定する。例えば、除外部140は、処理対象の候補組合せの中にステップS1004で決定した推定単収が所定の閾値を下回る圃場が存在する場合、処理対象の候補組合せは除外条件に該当すると決定する(ステップS1008;YES)。この場合、除外部140は現在の処理対象の候補組合せを推奨組合せの候補から除外し、次の候補組合せについてステップS1006からの処理を行う。
【0058】
一方、除外部140は、処理対象の候補組合せの全ての圃場において単収が所定の閾値以上である場合、処理対象の組合せは除外条件に該当しないと決定する(ステップS1008;NO)。この場合、次にステップS1010の処理が実行される。
【0059】
次に、ステップ1010において推奨作型決定部130が、処理対象の候補組合せの推定収益を決定する。例えば推奨作型決定部130は、複数の圃場のそれぞれについて、処理対象の候補組合せの作型についてステップS1004で決定した推定収穫量及び推定コストと、情報記憶部160が記憶する対象の作物の単価と、に基づいて候補組合せの推定収益を決定する。一例として、推奨作型決定部130は、各圃場についてステップS1004で決定した推定収穫量と対象の作物の単価を乗算して算出した推定収入から、ステップS1004で決定した金銭的コストを減算して、その圃場についての推定収益を決定する。そして推奨作型決定部130は、複数の圃場について決定した推定収益を累計した数を、処理対象の候補組合せの推定収益として決定してもよい。
【0060】
次に、ステップ1012において推奨作型決定部130は、未処理の組合せが存在するか否か決定する。例えば推奨作型決定部130は、複数の圃場と複数の作型の可能な組合せのうち、図7の処理において、未だ処理対象の候補組合せとしてステップS1006~ステップS1012の処理が実行されていない組合せが存在する場合(ステップS1012;YES)、次の未処理の組合せについてステップS1006~ステップS1012のループを繰り返す。一方、全ての可能な組合せが処理済みであった場合(ステップS1012;NO)、次にステップS1014が実行される。
【0061】
ステップS1014において推奨作型決定部130は、推奨作型を決定する。例えば、推奨作型決定部130は、複数の圃場と複数の作型の可能な組合せのうち、ステップS1010で決定した推定収益が所定の基準を満たす組合せを、所定の推奨条件を満たす推奨組合せとして決定する。一例として推奨作型決定部130は、可能な圃場と作型の組合せのうち、ステップS1010で決定した推定収益が最大のものを推奨組合せとして決定する。あるいは、推奨作型決定部130は推定収益が所定の閾値よりも大きい1以上の組合せを、推奨組合せとして決定する。そして、推奨作型決定部130は、各圃場について、決定した推奨組合せの作型を推奨作型として決定する。
【0062】
次に、ステップS1016において、情報出力部150が推奨作型を示す推奨情報を出力する。例えば情報出力部150は、ステップS1014で決定された推奨作型を示す推奨情報を、複数の圃場を管理するユーザが所有する端末装置20へ出力する。
【0063】
次に、ステップS1018において、端末装置20の表示部210が、推奨作型を示す推奨情報を表示する。例えば表示部210は、端末装置20の入出力装置22を用いて、各圃場の推奨作型をユーザに認識可能な態様で表示する。
【0064】
このように、本実施形態の作業支援システム1は、複数の圃場全体での推定収益が所定の基準を満たす推奨作型を示す推奨情報を、ユーザに認識可能な態様で表示することができる。このため、作業支援システム1は、ユーザがいずれの作型を選択すべきかの判断を支援するにあたって、ユーザによる操作負担や必要なデータ入力の量が少ない。
【0065】
(変形例)
実施形態において説明した構成は一例であり、機能を阻害しない範囲で構成を変更することができる。
【0066】
例えば、作業支援システム1のハードウェア構成は、上述の実施形態と異なっていてもよい。一例として、端末装置20の表示部210に相当する機能部を作業支援装置10が有していてもよい。この場合、作業支援システム1は、作業支援装置10単独でも実現され得る。あるいは、作業支援システム1は、作業支援装置10の情報取得部110~情報記憶部160のうち1以上を有する複数の装置を含んでいてもよい。
【0067】
また、作業支援システム1が実行する処理は上記実施形態と異なっていてもよい。例えば、作業支援システム1が対象とする作物は複数であってもよい。この場合、例えば作型情報D1が、別々の作型として、複数の作物を1以上の作型で栽培した場合について必要なコスト及び単位面積当たりの収穫量を記憶している。そして、推奨作型決定部130が、図7のステップS1006において、複数の圃場と、複数の作物及び作型と、の可能な組合せから処理対象の候補組合せを決定し、ステップS1010において各作物の単価を示す情報に基づいて推定収益を決定してもよい。
【0068】
更に、作業支援システム1は、次期と次々期の作型など、将来の複数期(例えば、r期)の作型について推奨作型を決定してもよい。この場合、推定決定部120は、図7のステップS1004において、例えば次期に「春植え」の作型を、2期後に「株出し」の作型を、それぞれ選択した場合といった、複数期において複数の作型を採用した場合の各作型組合せ(例えば、作型がn個存在する場合、nのr乗個の組合せ)について、r期トータルの推定コスト及び推定収穫量を決定する。そして推奨作型決定部130が、ステップS1006において、複数の圃場と、複数期の作型の組合せと、の可能な組合せのうち未処理の組合せを処理対象の候補組合せとして決定する。推奨作型決定部130は、ステップS1008において、推奨の対象期間であるr期の推定単収の平均が閾値を下回る圃場が存在する場合に、処理対象の候補組合せを除外条件に該当すると決定してもよい。また推奨作型決定部130は、ステップS1010において、候補組合せを採用した場合にr期にわたる全圃場のトータルの推定収益を決定する。そして、推奨作型決定部130は、ステップS1014において、r期トータルの推定収益が最大となる組合せの作型を、それぞれの圃場のm期分の推奨作型として決定してもよい。
【0069】
また、情報出力部150は、圃場の管理者が有する端末装置20とは異なる他の装置へ出力してもよい。この場合、例えば情報出力部150は、ステップS1016において、図6の圃場実績情報D2の「生産者」が示す各圃場を担当するメールアドレスに、担当の圃場の推奨作型を示す推奨情報を出力してもよい。
【0070】
更に、推定決定部120は、推定収穫量を圃場毎の実績値に基づいて決定してもよい。例えば、圃場実績情報D2が、各圃場において各作型で最後に対象の作物を栽培した際の単収の実績値、又は、これまで各作型で対象の作物を栽培した際の平均の単収を示す情報を格納している場合、推定決定部120は、図7のステップS1004で、作型情報D1が示す標準の単収に代えてこの単収の実績値を用いて、推定収穫量を決定してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、除外部140は、単収が所定の閾値未満の圃場が存在する組合せを推奨組合せの候補から除外した。しかしこれに代えて、あるいはこれに加えて、除外部140は他の除外条件を満たす組合せを推奨組合せの候補から除外してもよい。一例として、除外部140は図7のステップS1008において、処理対象の候補組合せにおける金銭的な総コストが所定の閾値よりも大きい場合に、当該組合せを、除外条件を満たす組合せとして決定してもよい。あるいは、複数の圃場を同一の生産者が担当している場合、除外部140は図7のステップS1008において、処理対象の候補組合せにおいて同一の生産者が担当する圃場の作業量が所定の閾値よりも大きい場合に、当該組合せを、除外条件を満たす組合せとして決定してもよい。例えば、推定決定部120は、図7のステップS1008において、図6の圃場実績情報D2の「生産者」が示す生産者毎に、それぞれが担当する複数の圃場の累計作業量を決定する。そして、除外部140は、処理対象の候補組合せにおいて、各生産者が担当する複数の圃場についてステップS1004で決定した作業量の累計が所定の閾値よりも大きい場合に、当該組合せを、除外条件に該当すると決定してもよい。
【0072】
除外部140は、複数の圃場において過去に採用された作型と、処理対象の候補組合せの作型と、が所定の基準(例えば、同一又は対応する作型で栽培される頻度が所定の閾値よりも低い)を満たさない場合に、ステップS1008において除外条件に該当すると決定してもよい。例えば、除外部140は、圃場実績情報D2の「先期作型」及び「今期作型」が示す今まで採用された作型と、候補組合せの作型と、に基づき、その候補組合せを採用すると「株出し」の作型が所定の閾値回数(例えば、3回)を超えて連続すると決定した場合に、当該組合せを、除外条件に該当すると決定してもよい。あるいは、除外部140は候補組合せを採用した場合に、過去10期のうち新植え又は株出しの作型が所定の割合(例えば、6割)を超える圃場が存在する場合に、その組合せを除外条件に該当すると決定してもよい。
【0073】
また、除外部140は、処理対象の候補組合せについて、何れかの作型が占める割合が除外条件に該当する組合せをステップS1008において除外条件に該当すると決定してもよい。例えば除外部140は、処理対象の候補組合せにおいて「株出し」の作型を採用する圃場が全圃場の半分よりも多い場合に、その組合せを除外条件に該当すると決定してもよい。あるいは除外部140は、処理対象の候補組合せにおいて「春植え」の作型を採用する圃場が全圃場の1割未満である場合に、その組合せを除外条件に該当すると決定してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、推奨組合せは推定収益以外に基づいて決定されてもよい。例えば推奨作型決定部130は、図7のステップS1014において、推定収益を変えて金銭的なコストを減算する前の推定収入が最大の組合せを、推奨組合せとして決定してもよい。あるいは、推奨作型決定部130は、推奨組合せを、推定収益と、除外条件を満たした場合に発生するペナルティ値と、を含む指標値に基づいて決定してもよい。この場合、例えば推奨作型決定部130は、ステップS1008において処理対象の候補組合せが除外条件に該当すると決定すると、その組合せを除外する代わりに、ステップS1010において推定収益から所定のペナルティ値を減算した評価値を算出する。そして、推奨作型決定部130は、ステップS1014において、この評価値が所定の閾値よりも高い(あるいは最も大きい)組合せを推奨組合せとして決定してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、推奨作型決定部130は、可能な組合せについて総当たりで推定収益を算出して、推奨組合せを決定した。しかしこの代わりに、推奨作型決定部130は、例えば最急降下法又は確率的勾配降下法により上記の評価値の極大値を求め、当該極大値に対応する組合せを推奨組合せとして決定してもよい。
【0076】
また、情報取得部110は、ステップS1002の処理において、情報記憶部160以外から作型情報D1及び圃場実績情報D2を取得してもよい。例えば、作型情報D1及び圃場実績情報D2を提供するサービス(例えば、圃場で作業する農業機械のメーカーの情報管理サービス)を利用できる場合は、情報取得部110は、当該サービスを提供する外部サーバから作型情報D1及び圃場実績情報D2を取得してもよい。
【0077】
(付記)
各実施の形態で記載した作業支援方法と、作業支援システムと、プログラムとは以下のように言うことができる。
【0078】
第1の態様に係る作業支援方法は、
複数の圃場で栽培されるべき作物について、複数の作型における収穫量及び栽培に必要なコストに関する情報を含む作型情報と、前記複数の圃場において前記作物を前記複数の作型の何れかで栽培した実績を示す実績情報と、に基づいて、前記複数の圃場のそれぞれにおいて、前記作物を前記複数の作型で栽培した場合の推定収穫量又は推定コストを決定することと、
前記複数の圃場のそれぞれについて、決定した前記推定収穫量又は前記推定コストに基づいて、前記作物を栽培するにあたっての推奨作型を決定することと、
前記推奨作型を示す推奨情報を出力することと、
を含む。
【0079】
第2の態様に係る作業支援方法は、第1の態様に係る作業支援方法であり、
前記複数の作型が、1以上の新植えの作型と、株出しの作型と、を含む。
【0080】
第3の態様に係る作業支援方法は、第1又は第2の態様に係る作業支援方法であり、
前記推奨作型を決定することが、
前記複数の圃場と前記複数の作型の可能な組合せのうち、その組合せで前記作物を栽培した場合の前記複数の圃場における前記推定収穫量又は前記推定コストが推奨条件を満たす推奨組合せを決定することと、
決定した前記推奨組合せの作型を、前記推奨作型として決定することと、
を含む。
【0081】
第4の態様に係る作業支援方法は、第3の態様に係る作業支援方法であり、
前記推定収穫量又は前記推定コストを決定することが、前記推定収穫量及び前記推定コストの両方を決定することを含み、
前記推奨組合せを決定することが、
前記作物の単価を示す情報と、決定した前記推定収穫量及び前記推定コストと、に基づき、前記複数の圃場と前記複数の作型の可能な組合せのそれぞれで前記作物を栽培した場合の推定収益を決定することと、
前記可能な組み合わせのうち、前記推定収益が第1閾値よりも大きい組合せを、前記推奨条件を満たす組合せとして決定することと、
を含む。
【0082】
第5の態様に係る作業支援方法は、第3又は第4の態様に係る作業支援方法であり、
前記可能な組合せのうち、決定した前記推定収穫量又は前記推定コストが除外条件に該当する圃場及び作型を含む組合せを、前記推奨組合せの候補から除外することを更に含む。
【0083】
第6の態様に係る作業支援方法は、第5の態様に係る作業支援方法であり、
前記可能な組合せの圃場及び作型が前記作物を栽培した場合の前記推定収穫量が第2閾値未満であることを前記除外条件とする。
【0084】
第7の態様に係る作業支援方法は、第5又は第6の態様に係る作業支援方法であり、
前記可能な組合せの圃場及び作型で前記作物を栽培した場合の前記推定コストが第3閾値を超えることを前記除外条件とする。
【0085】
第8の態様に係る作業支援方法は、第3~第7の態様のいずれかに係る作業支援方法であり、
前記可能な組合せのうち、前記実績情報が示す前記複数の圃場において過去に採用された作型と、前記可能な組合せの作型と、が除外条件に該当する組合せを、前記推奨作型の候補から除外することを更に含む。
【0086】
第9の態様に係る作業支援方法は、第8の態様に係る作業支援方法であり、
前記可能な組合せの作型を採用した場合に、所定期間の間、同一の圃場において、同一の作型で前記作物が栽培される頻度が第4閾値よりも高いことを前記除外条件とする。
【0087】
第10の態様に係る作業支援方法は、第3~第9の態様のいずれかに係る作業支援方法であり、
前記可能な組合せのうち、前記複数の作型のうち何れかの作型が占める割合が除外条件に該当する組合せを、前記推奨作型の候補から除外することを更に含む。
【0088】
第11の態様に係る作業支援方法は、第10の態様に係る作業支援方法であり、
前記可能な組合せの作型を採用した場合に、前記複数の圃場において同一作型で前記作物が栽培される割合が第5閾値よりも高いことを前記除外条件とする。
【0089】
第12の態様に係る作業支援システムは、
複数の圃場で栽培されるべき作物について、複数の作型における収穫量及び栽培に必要なコストに関する情報を含む作型情報と、前記複数の圃場において前記作物を前記複数の作型の何れかで栽培した実績を示す実績情報と、基づいて、前記複数の圃場のそれぞれにおいて、前記作物を前記複数の作型で栽培した場合の推定収穫量又は推定コストを決定する推定決定部と、
前記複数の圃場のそれぞれについて、決定した前記推定収穫量又は前記推定コストに基づいて、前記作物を栽培するにあたっての推奨作型を決定する推奨作型決定部と、
前記推奨作型を示す推奨情報を出力する情報出力部と、
を備える。
【0090】
第13の態様に係るプログラムは、
コンピュータに、
複数の圃場で栽培されるべき作物について、複数の作型における収穫量及び栽培に必要なコストに関する情報を含む作型情報と、前記複数の圃場において前記作物を前記複数の作型の何れかで栽培した実績を示す実績情報と、基づいて、前記複数の圃場のそれぞれにおいて、前記作物を前記複数の作型で栽培した場合の推定収穫量又は推定コストを決定することと、
前記複数の圃場のそれぞれについて、決定した前記推定収穫量又は前記推定コストに基づいて、前記作物を栽培するにあたっての推奨作型を決定することと、
前記推奨作型を示す推奨情報を出力することと、
を実行させる。
【符号の説明】
【0091】
1 作業支援システム
10 作業支援装置
12 入出力装置
14 演算装置
16 通信装置
18 記憶装置
110 情報取得部
120 推定決定部
130 推奨作型決定部
140 除外部
150 情報出力部
160 情報記憶部
20 端末装置
22 入出力装置
24 演算装置
26 通信装置
28 記憶装置
210 表示部
D1 作型情報
D2 圃場実績情報
NT ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7