(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006845
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】定量排出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/06 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B65D83/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107863
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】落合 皐汰朗
(57)【要約】
【課題】全て合成樹脂製の部材で構成することが可能な定量排出容器を提供する。
【解決手段】定量排出容器1は、粉体内容物を収める収容空間S1と、収容空間S1に通じる連通口M1と、排出口M2とを有する容器と、容器との間で区画される計量空間S2を有し、計量空間S2が連通口M1に通じる計量位置と計量空間S2が排出口M2に通じる排出位置との間で容器に対してスライド可能に保持されるスライド部材4と、弾性片5aを有し、容器に対して閉位置と開位置との間で回転可能に保持される回転部材5と、を備え、閉位置に回転させた状態において弾性片5aはスライド部材4から離隔した位置にあり、開位置へ回転させた状態において弾性片5aがスライド部材4に接触してスライド部材4を計量位置へスライドさせ且つスライド部材4を排出位置へ移動させると弾性片5aが弾性変形してスライド部材を計量位置に向けて付勢する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体内容物を収める収容空間と、該収容空間に通じる連通口と、該粉体内容物を外界に排出させる排出口とを有する容器と、
前記容器との間で区画される計量空間を有し、該計量空間が前記連通口に通じる計量位置と該計量空間が前記排出口に通じる排出位置との間で該容器に対してスライド可能に保持されるスライド部材と、
弾性変形可能な弾性片を有し、前記容器に対して閉位置と開位置との間で回転可能に保持される回転部材と、を備え、
前記閉位置に回転させた状態において、前記弾性片は前記スライド部材から離隔した位置にあり、前記開位置へ回転させた状態において、該弾性片が該スライド部材に接触して該スライド部材を前記計量位置へスライドさせ且つ該スライド部材を前記排出位置へ移動させると該弾性片が弾性変形して該スライド部材を該計量位置に向けて付勢する定量排出容器。
【請求項2】
前記回転部材は、前記閉位置へ回転させた際に前記排出口とともに前記スライド部材を覆うカバー部を有し、
前記スライド部材は、前記回転部材を前記閉位置に回転させた際に前記カバー部に接触して該スライド部材を前記排出位置へ誘導する傾斜部を有する、請求項1に記載の定量排出容器。
【請求項3】
前記弾性片は、前記回転部材の回転中心を中心とする円弧状であって、
前記容器は、少なくとも前記弾性片の径方向内側又は径方向外側に位置する円弧状ガイド壁を有する、請求項1に記載の定量排出容器。
【請求項4】
前記容器は、前記連通口とは別異に前記収容空間に通じる第二排出口と、該第二排出口を開閉可能に覆う蓋壁部とを有する請求項1に記載の定量排出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体内容物を一定量ずつ排出することができる定量排出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば化粧料、医薬品、各種の調味料、食料品等の粉体内容物を収容する容器においては、所定の操作により内容物を一定量ずつ排出させることができる定量排出容器が既知である。
【0003】
このような定量排出容器に関係するものとして特許文献1には、計量室を有するとともにキャップに対してスライド可能な操作筒を備え、操作筒を押圧する前は計量室に粉体内容物が導入され、操作筒を押圧すると計量室が流出口に連通し、計量室に導入された一定量の内容物が流出口から排出される計量キャップが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1の計量キャップは、粉体内容物が計量室に導入される位置まで操作筒を付勢させるものとして金属製のコイルバネを使用している。しかしこのような金属製の部品を用いる場合は、使用後に廃棄するにあたり、分解して金属製の部品を取り外さなければ樹脂品としてリサイクルすることができない。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであって、全て合成樹脂製の部材で構成することが可能な定量排出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、粉体内容物を収める収容空間と、該収容空間に通じる連通口と、該粉体内容物を外界に排出させる排出口とを有する容器と、
前記容器との間で区画される計量空間を有し、該計量空間が前記連通口に通じる計量位置と該計量空間が前記排出口に通じる排出位置との間で該容器に対してスライド可能に保持されるスライド部材と、
弾性変形可能な弾性片を有し、前記容器に対して閉位置と開位置との間で回転可能に保持される回転部材と、を備え、
前記閉位置に回転させた状態において、前記弾性片は前記スライド部材から離隔した位置にあり、前記開位置へ回転させた状態において、該弾性片が該スライド部材に接触して該スライド部材を前記計量位置へスライドさせ且つ該スライド部材を前記排出位置へ移動させると該弾性片が弾性変形して該スライド部材を該計量位置に向けて付勢する定量排出容器である。
【0008】
前記回転部材は、前記閉位置へ回転させた際に前記排出口とともに前記スライド部材を覆うカバー部を有し、
前記スライド部材は、前記回転部材を前記閉位置に回転させた際に前記カバー部に接触して該スライド部材を前記排出位置へ誘導する傾斜部を有することが好ましい。
【0009】
前記弾性片は、前記回転部材の回転中心を中心とする円弧状であって、
前記容器は、少なくとも前記弾性片の径方向内側又は径方向外側に位置する円弧状ガイド壁を有することが好ましい。
【0010】
前記容器は、前記連通口とは別異に前記収容空間に通じる第二排出口と、該第二排出口を開閉可能に覆う蓋壁部とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の定量排出容器は、コイルバネを使用せず、回転部材に設けた弾性片によってスライド部材を付勢しているため、全て合成樹脂製の部材で構成することが可能であって、リサイクル性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明に係る定量排出容器の一実施形態に関し、
図1BのA-Aに沿う断面図である。
【
図3】回転部材を開位置へ回転させた状態を示した図である。
【
図4】
図3に示した状態の後、スライド部材を排出位置へ移動させた状態を示した図である。
【
図5A】
図1Aに示した定量排出容器の変形例に関する背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る定量排出容器の一実施形態である定量排出容器1について説明する。なお以下の説明において「前」とは、後述する前方壁4fが位置する側であり、「後」とは、後述する後方壁4gが位置する側である。また「上」とは、後述する第一ガイド壁2dに対して第二ガイド壁2hが位置する側であり、「下」とは、その逆側である。なお以下の説明における向きは、説明の便宜上用いたものであって、定量排出容器1がその向きのみで使用されることを意味するものではない。
【0014】
定量排出容器1は、容器本体2と、蓋体3と、スライド部材4と、回転部材5を備えている。これらの部材は全て合成樹脂で形成されている。なお容器本体2と蓋体3は、本明細書等の「容器」に相当するものである。また定量排出容器1は比較的サイズが小さく、持ち運んで使用するのに好適である。
【0015】
容器本体2は、
図1A、
図1Bに示すように、背面壁2aと、背面壁2aの外縁部から立ち上がる周壁2bとを備えている。
図1Bに示すように背面壁2aの内側には、周壁2bから横方向に延在した後、円弧を描くように延在し、更に縦方向に延在する仕切壁2cが設けられている。仕切壁2cの上端部には、前方から後方に向かって横方向に延在する第一ガイド壁2dがつながっている。また第一ガイド壁2dの後端部には円弧状に延在する外側円弧状ガイド壁2eがつながっている。そして外側円弧状ガイド壁2eの内側には、外側円弧状ガイド壁2eと同一の中心を持ち、外側円弧状ガイド壁2eとの間に隙間を有する内側円弧状ガイド壁2fが設けられている。なお、外側円弧状ガイド壁2eと内側円弧状ガイド壁2fは、それぞれが本明細書等における「円弧状ガイド壁」に相当する。内側円弧状ガイド壁2fの内側には、外側円弧状ガイド壁2eと内側円弧状ガイド壁2fと同一の中心になる軸部2gが設けられている。
【0016】
また容器本体2は、背面壁2aから立ち上がり、第一ガイド壁2dとの間に所定の隙間をあけて横方向に延在する第二ガイド壁2hと、所定の隙間をあけて縦方向に延在する一対の排出壁2jを備えている。第一ガイド壁2dと第二ガイド壁2hの間には、背面壁2aを切り欠いて横方向に延在するガイド溝2kが設けられている。
【0017】
蓋体3は、背面壁2aと略同形状になる平板状の正面壁3aを備えている。図示は省略するが、正面壁3aには周壁2bの内側に入り込んで周壁2bに嵌合保持される嵌合部が設けられていて、蓋体3は容器本体2に保持されている。
【0018】
ここで、容器本体2に蓋体3を取り付けた状態で、背面壁2a、周壁2b、仕切壁2c、及び正面壁3aで区画された空間を収容空間S1と称する。収容空間S1には粉体内容物が収容される。また仕切壁2cにおける縦方向に延在する部位と周壁2bとの間に区画される隙間の出口を連通口M1と称する。そして一対の排出壁2jの間に区画される隙間の出口を排出口M2と称する。
【0019】
スライド部材4は、背面壁2aに重ねられるように設けられるスライド背面壁4aを備えている。スライド背面壁4aの裏側には、ガイド溝2kに挿入されるガイド突起4bが設けられている。そしてスライド背面壁4aの表側には、第一ガイド壁2dと第二ガイド壁2hの内側に位置して横方向に延在する一対のスライド周壁4cが設けられている。スライド周壁4cの中央部は切り欠かれていて、この切り欠かれた部位には、一対のスライド周壁4c同士をつなぐ一対の区画壁4dが設けられている。ここで、スライド部材4を容器本体2と蓋体3に取り付けた状態で、スライド背面壁4a、一対の区画壁4d、及び正面壁3aで区画された空間を計量空間S2と称する。また下側に位置するスライド周壁4cには、前方に位置する区画壁4dから下方に向けて延在するストッパー4eが設けられている。
【0020】
またスライド部材4は、前方において一対のスライド周壁4c同士をつなぐ前方壁4fを備えている。前方壁4fは、下方から上方に向かうにつれて前方から後方に傾くように傾斜して延在している。なお前方壁4fは、本明細書等の「傾斜部」に相当する部位である。またスライド部材4は、後方において一対のスライド周壁4c同士をつなぐ後方壁4gを備えている。後方壁4gの下部は、円弧状に延在している。
【0021】
回転部材5は、
図2A~
図2Cに示すように円弧状をなす弾性片5aを備えている。弾性片5aは、径方向内側に向けて弾性変形可能である。なお弾性片5aは、
図1Bに示すように外側円弧状ガイド壁2eと内側円弧状ガイド壁2fの間の隙間に収まるように形作られている。弾性片5aの径方向内側には、板状の基部壁5bが設けられている。基部壁5bには、弾性片5aと中心を同じくする概略円形状の軸孔5cが設けられている。また弾性片5aの上部には、縦方向に延在する連結壁5dが設けられている。そして連結壁5dには、カバー部5eがつながっている。本実施形態のカバー部5eは、連結壁5dよりも前方においては、横方向に延在した後、円弧状に延在し、更に縦方向に延在する形状で形作られていて、連結壁5dよりも後方においては、横方向に延在した後、弾性片5aの径方向外側を円弧状に延在する形状で形作られている。
【0022】
このような部材により構成される定量排出容器1は、
図1Bに示すように軸部2gに軸孔5cを挿通させ、ガイド溝2kにガイド突起4bを挿入し、更に容器本体2に対して蓋体3を嵌め合わせることで組み立てられる。ここで
図1Bに示すようにスライド部材4が後方に向けて移動していて計量空間S2が排出口M2に通じている位置を「排出位置」と称し、
図3に示すようにスライド部材4が前方に向けて移動していて計量空間S2が連通口M1に通じている位置を「計量位置」と称する。また
図1Bに示すように回転部材5のカバー部5eが排出口M2とスライド部材4を覆う位置を「閉位置」と称し、
図3に示すように「閉位置」から約90°回転してカバー部5eが排出口M2とスライド部材4から離れた位置を「開位置」と称する。
【0023】
図1Bに示すようにスライド部材4が排出位置にあり、回転部材5が閉位置にある状態では、スライド部材4はカバー部5eに覆われているため、スライド部材4が不用意に操作されることはない。またこの状態では、収容空間S1に通じる連通口M1はスライド部材4で閉鎖されているため、収容空間S1に収容した粉体内容物が定量排出容器1から溢れ落ちる不具合を防止することができる。なおこの状態において、弾性片5aは
図1Bに示すようにスライド部材4から離隔した位置にある。
【0024】
そして
図3に示すように回転部材5を開位置に向けて回転させると、弾性片5aがスライド部材4の後方壁4gに接触し、これによりスライド部材4が計量位置へ移動する。なお、後方壁4gの下部は円弧状に延在しているため、弾性片5aは後方壁4gに対して引っ掛かり無く接触する。また弾性片5aは、外側円弧状ガイド壁2eと内側円弧状ガイド壁2fの間の隙間に収まっているため、回転部材5を安定的に回転させることができる。またスライド部材4が計量位置へ移動した際は、ストッパー4eが周壁2bに接触するため、スライド部材4が過剰に前方へ移動することはない。
【0025】
図3に示す状態においては、計量空間S2が連通口M1に通じている。このため、計量空間S2が収容空間S1よりも下方に位置するように定量排出容器1の姿勢を変更することにより、収容空間S1に収容した粉体内容物を計量空間S2に移動させることができる。
【0026】
次いで、
図4に示すようにスライド部材4を前方から後方に向けて押し込んでこれを排出位置へ移動させると、計量空間S2は排出口M2に通じるため、計量空間S2に収容された所定量の粉体内容物を排出口M2から排出することができる。なおスライド部材4が排出位置に移動した際は、
図4に示すように連通口M1は閉鎖されているため、収容空間S1の粉体内容物が外部に排出されることはない。
【0027】
なお
図4に示す状態においては、押し込まれたスライド部材4によって弾性片5aは弾性変形していて、スライド部材4は後方から前方に向けて付勢されている。従ってスライド部材4への押圧を解除すると、スライド部材4は
図3に示した計量位置へ移動する。このため、再び計量空間S2が収容空間S1よりも下方に位置するように定量排出容器1の姿勢を変更すれば、収容空間S1に収容した粉体内容物を計量空間S2に移動させることができ、再度スライド部材4を押し込むことにより、所定量の粉体内容物を排出口M2から再び排出することができる。このように本実施形態の定量排出容器1によれば、スライド部材4を押圧する毎に所定量の粉体内容物を排出することができる。
【0028】
粉体内容物の排出が終了した後は、
図1Bに示すように回転部材5を閉位置に向けて回転させる。このとき弾性片5aはスライド部材4から離隔している。またスライド部材4の前方壁4fは、下方から上方に向かうにつれて前方から後方に傾くように傾斜して延在している。すなわち、スライド部材4が前方に向けて移動していても、カバー部5eが前方壁4fに接触してスライド部材4を後方に向けて移動させることができる。
【0029】
次に、
図5A、
図5Bを参照しながら定量排出容器1の変形例である定量排出容器1Aについて説明する。定量排出容器1Aは、上述した蓋体3に換えて蓋体3Aを備えている。
【0030】
蓋体3Aは、連通口M1とは別異に収容空間S1に通じる第二排出口M3を備えている。本実施形態の第二排出口M3は、蓋体3Aを貫通する円形状の孔であって、合計5個設けられている。また蓋体3Aは、蓋体3Aに対して屈曲可能に連結する蓋壁部3bを備えている。蓋壁部3bには、閉蓋時に第二排出口M3に挿入される突起部3cが設けられている。
【0031】
このような定量排出容器1Aによれば、上述した定量排出容器1と同様にスライド部材4を操作することによって所定量の粉体内容物を排出することができる。また蓋壁部3bを開蓋させることによって、第二排出口M3から任意の量の粉体内容物を排出することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0033】
例えば本実施形態では、「円弧状ガイド壁」として外側円弧状ガイド壁2eと内側円弧状ガイド壁2fの両方を設けたが、何れか一方のみでもよい。
【符号の説明】
【0034】
1:定量排出容器
1A:定量排出容器
2:容器本体
2a:背面壁
2b:周壁
2c:仕切壁
2d:第一ガイド壁
2e:外側円弧状ガイド壁(円弧状ガイド壁)
2f:内側円弧状ガイド壁(円弧状ガイド壁)
2g:軸部
2h:第二ガイド壁
2j:排出壁
2k:ガイド溝
3:蓋体
3A:蓋体
3a:正面壁
3b:蓋壁部
3c:突起部
4:スライド部材
4a:スライド背面壁
4b:ガイド突起
4c:スライド周壁
4d:区画壁
4e:ストッパー
4f:前方壁(傾斜部)
4g:後方壁
5:回転部材
5a:弾性片
5b:基部壁
5c:軸孔
5d:連結壁
5e:カバー部
M1:連通口
M2:排出口
M3:第二排出口
S1:収容空間
S2:計量空間