(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006859
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】検体管理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20250109BHJP
G16H 40/00 20180101ALI20250109BHJP
【FI】
G01N35/02 C
G16H40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107886
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】519435348
【氏名又は名称】株式会社ジー・キューブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 清幸
(72)【発明者】
【氏名】森 重雄
(72)【発明者】
【氏名】田代 一真
【テーマコード(参考)】
2G058
5L099
【Fターム(参考)】
2G058CB15
2G058GC02
2G058GC05
2G058GC06
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】手作業で、効率的にかつ人的エラーを防止しつつ検体の管理が行える方法を提供する。
【解決手段】検体に二次元コードを付し、収納箱にバーコードを付す。検体を収納した収納箱をリーダーによって撮影し、検体及び収納箱の識別情報と、収納箱内での検体の位置情報を読み取り、収納箱の保管場所の情報と関係づけてデータベースに登録する。検体の保管場所からの取出し時、データベースの検索結果に基づき、該当する収納箱内の検体の配列に対応する碁盤目パターンをディスプレイに表示し、対象検体に対応する目に目印を付す。対象検体を収納箱から取り出した後、収納箱をリーダーによって撮影し、検体及び収納箱のそれぞれの識別情報と、収納箱内での検体の位置情報を読み取り、それらの情報をデータベースの検索結果と比較し、対象検体のみがすべて取り出されていないと判定したときは、検体取り出しエラーをディスプレイ表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)上面が開口し、直立した検体を碁盤目状の配列で収容可能な収納箱を準備し、前記検体の上面に前記検体の少なくとも識別情報を表す二次元コードを付す一方、前記収納箱の一側面には前記収納箱の識別情報を表すバーコードを付すステップと、
(2)前記碁盤目状に配列された少なくとも1つの二次元コード、及び前記碁盤目状の配列のエリア外に位置するバーコードを撮影して得られた画像データに基づき、それぞれの前記二次元コードのデータと前記二次元コードの前記配列内での位置のデータ、及び前記バーコードのデータを、前記画像データとともに出力するリーダーを準備するステップと、
(3)前記検体が収納された前記収納箱の前記一側面にミラーを斜め上向きに対向配置し、前記収納箱の上方の所定位置には前記リーダーを配置して、前記リーダーによって前記収納箱内の前記検体及び前記ミラーに写ったバーコードを撮影するステップと、
(4)前記リーダーから出力されたデータと前記収納箱の保管場所の情報とに基づき、前記検体の少なくとも識別情報及び前記収納箱の識別情報及び前記検体の前記収納箱内での位置情報及び前記収納箱の保管場所の情報を互いに関係づけ、前記撮影で得られた画像データとともにデータベースに登録するとともに、ディスプレイに、前記収納箱の識別情報及び保管場所の情報及び前記収納箱内の前記検体の配列を表す碁盤目パターン及び前記画像データを表示し、その後前記収納箱を前記保管場所に搬入するステップと、
(5)前記保管場所から対象となる前記検体を取り出すとき、前記対象となる検体の少なくとも識別情報を用いて、前記データベースから、関係する前記収納箱の識別情報及び前記収納箱の保管場所の情報及び当該収納箱内での前記対象となる検体の位置情報及び対応する前記画像データを抽出し、前記ディスプレイに、前記収納箱の識別情報及び保管場所の情報及び前記画像データ、及び対応する前記碁盤目パターンを表示するとともに、前記碁盤目パターンにおける前記対象となる検体に対応する目に目印を付すステップと、
(6)前記ディスプレイに表示した前記収納箱の保管場所の情報に基づき、前記収納箱を前記保管場所から搬出するステップと、
(7)前記ディスプレイに表示した前記碁盤目パターンに基づいて前記対象となる検体を前記収納箱から取り出したとき、前記収納箱の前記一側面に前記ミラーを斜め上向きに対向配置し、前記収納箱の上方の前記所定位置に前記リーダーを配置し、前記リーダーによって、前記収納箱内の前記検体及び前記ミラーに写った前記バーコードを撮影するステップと、
(8)前記リーダーから出力されたデータと前記収納箱の前記保管場所の情報とに基づき、前記検体の前記少なくとも識別情報及び前記収納箱の識別情報及び前記検体の前記収納箱内での位置情報及び前記収納箱の保管場所の情報を互いに関係づけ、前記撮影で得られた画像データとともに一時記憶装置に記録するステップと、
(9)前記一時記憶装置に記録した前記検体の少なくとも識別情報及び前記収納箱の識別情報及び前記検体の前記収納箱内での位置情報及び前記収納箱の保管場所の情報を、ステップ(5)で前記データベースから抽出した前記検体の少なくとも識別情報及び前記収納箱の識別情報及び前記検体の前記収納箱内での位置情報及び前記収納箱の保管場所の情報と比較し、前記対象となる検体のみがすべて取り出されていると判定したとき、前記一時記憶装置に記録した各情報及び画像データを前記データベースに登録した後、次のステップを実行するが、それ以外であると判定したときは、前記ディスプレイに検体取り出しエラー表示を行い、かつ前記一時記憶装置に記録した各情報及び画像データをエラー発生情報とともに前記データベースに登録するとともに、前記収納箱から取り出した検体を元の位置に戻した後、ステップ(7)に戻るステップと、
(10)前記収納箱から取り出した前記対象となる検体を処理した後、前記対象となる検体を前記収納箱に戻さないときは、前記収納箱をそのままで前記保管場所に搬入し、ステップ(5)に戻るが、前記対象となる検体のうちの少なくとも1つを前記収納箱に戻したときには、ステップ(3)に戻るステップと、を含んでいることを特徴とする検体管理方法。
【請求項2】
ステップ(7)において、前記対象となる検体を前記収納箱から取り出す工程が、前記対象となる検体を、前記収納箱から、予め準備した前記収納箱と同一の構成を有する取出箱における、ステップ(5)で前記収納箱の前記目印を付した目に対応する目の位置に収容することからなっていることを特徴とする請求項1に記載の検体管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検査機関において、医療機関等から受託した検体を管理する方法に関する。
ここで、「検体」とは、血液、尿、唾液等の試料が収容された密封容器をいう。以下同様。
【背景技術】
【0002】
通常、検体は病院や診療所等の医療機関等で作成されるが、検体の検査は医療機関等から臨床検査機関に委託され、臨床検査機関による検査の結果が、受託先の医療機関等に報告されるようになっている。
【0003】
この場合、1つの臨床検査機関が複数の医療機関等の検体検査を受託していて、臨床検査機関には日々複数の医療機関等から多数の検体が搬入されるので、臨床検査機関では、検体の取り違え等のエラーが発生しないように、検体が厳重に管理されている。
【0004】
臨床検査機関における検体の管理は、通常、主として手作業で行われ、受け入れた検体を検体ラック(検体を起立状態で支持する挿入孔の列を有する)に収納し、検体を収納した検体ラックを冷凍庫等の一定の低温度に維持された保管場所に一時的に又は一定期間保管しておき、受託先の医療機関等から依頼があるたびに、該当する検体ラックを保管場所から搬出し、対象となる検体を当該検体ラックから取り出して検査の処理(検査、追検査、再検査等)をした後、検体ラックを元の保管場所に戻し、検査の結果を医療機関等に報告することによって行われる。
【0005】
臨床検査機関では、検体の取り違え等の人的エラーの発生を防止するため、検体及び検体ラックにそれぞれ検体ID及びラックIDが付され、検体が検体ラックに収納されて、検体ラックが保管場所に保管されるとき、検体ID、ラックID及び検体ラック内での検体の位置情報が撮像器又はIDリーダーによって読み取られて互いに関係づけられ、さらに検体ラックの保管場所の情報と関係づけられてデータベースに登録される。
【0006】
そして、臨床検査機関が受託先の医療機関等から検体検査の依頼を受けたとき、処理すべき検体の検体IDを用いてデータベースが検索されて、該当する検体ラック及びその保管場所、及び当該検体ラック内での検体の位置が特定される。
【0007】
次いで、データベースの検索結果に基づいて、処理すべき検体の検体ID、対応する検体ラックのラックID、検体ラックの保管場所の情報、及び検体の検体ラック内での位置情報が記載された取出し指示書が発行され、取出し指示書に従って、該当する検体ラックが保管場所から搬出され、検体ラックから処理すべき検体が取り出される。
【0008】
この間、検体ラックの搬出時に検体ラックのラックIDがIDリーダーによって読み取られ、IDリーダーに表示されたラックIDのデータと、取出し指示書に記載されたラックIDのデータとが目視で照合され、さらに、検体の検体ラックからの取出し時に検体IDがIDリーダーによって読み取られ、IDリーダーに表示された検体IDのデータと、取出し指示書に記載され検体IDのデータとが目視で照合される。
【0009】
その後、取り出された検体の処理がなされ、処理後、当該検体ラックが元の保管場所に戻される。
【0010】
ところで、検体の取り違え等の人的エラーのほとんどが、処理すべき検体を保管場所から取り出す際に発生しており、取出し指示書の記載事項と、検体ラック及び検体をそれぞれIDリーダーで読み取った際のリーダーの表示データとの目視による照合が確実になされなかったことに起因している。
【0011】
そのため、このような人的エラーの発生を防止するため、従来技術においては、検体の保管場所への搬入及びそこからの搬出を自動的に行う装置(例えば、特許文献1参照)や、検体の管理の全体を自動的に行う装置(例えば、特許文献2参照)がこれまでに提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
しかしながら、このような装置は、高価であり、しかも大掛かりで設置コストもかかるので、導入が容易ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2022-36731号公報
【特許文献2】特開2017-116355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の課題は、手作業で、効率的にかつ人的エラーを防止しつつ検体の管理が行える方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明によれば、(1)上面が開口し、直立した検体を碁盤目状の配列で収容可能な収納箱を準備し、前記検体の上面に前記検体の少なくとも識別情報を表す二次元コードを付す一方、前記収納箱の一側面には前記収納箱の識別情報を表すバーコードを付すステップと、(2)前記碁盤目状に配列された少なくとも1つの二次元コード、及び前記碁盤目状の配列のエリア外に位置するバーコードを撮影して得られた画像データに基づき、それぞれの前記二次元コードのデータと前記二次元コードの前記配列内での位置のデータ、及び前記バーコードのデータを、前記画像データとともに出力するリーダーを準備するステップと、(3)前記検体が収納された前記収納箱の前記一側面にミラーを斜め上向きに対向配置し、前記収納箱の上方の所定位置には前記リーダーを配置して、前記リーダーによって前記収納箱内の前記検体及び前記ミラーに写ったバーコードを撮影するステップと、(4)前記リーダーから出力されたデータと前記収納箱の保管場所の情報とに基づき、前記検体の少なくとも識別情報及び前記収納箱の識別情報及び前記検体の前記収納箱内での位置情報及び前記収納箱の保管場所の情報を互いに関係づけ、前記撮影で得られた画像データとともにデータベースに登録するとともに、ディスプレイに、前記収納箱の識別情報及び保管場所の情報及び前記収納箱内の前記検体の配列を表す碁盤目パターン及び前記画像データを表示し、その後前記収納箱を前記保管場所に搬入するステップと、(5)前記保管場所から対象となる前記検体を取り出すとき、前記対象となる検体の少なくとも識別情報を用いて、前記データベースから、関係する前記収納箱の識別情報及び前記収納箱の保管場所の情報及び当該収納箱内での前記対象となる検体の位置情報及び対応する前記画像データを抽出し、前記ディスプレイに、前記収納箱の識別情報及び保管場所の情報及び前記画像データ、及び対応する前記碁盤目パターンを表示するとともに、前記碁盤目パターンにおける前記対象となる検体に対応する目に目印を付すステップと、(6)前記ディスプレイに表示した前記収納箱の保管場所の情報に基づき、前記収納箱を前記保管場所から搬出するステップと、(7)前記ディスプレイに表示した前記碁盤目パターンに基づいて前記対象となる検体を前記収納箱から取り出したとき、前記収納箱の前記一側面に前記ミラーを斜め上向きに対向配置し、前記収納箱の上方の前記所定位置に前記リーダーを配置し、前記リーダーによって、前記収納箱内の前記検体及び前記ミラーに写った前記バーコードを撮影するステップと、(8)前記リーダーから出力されたデータと前記収納箱の前記保管場所の情報とに基づき、前記検体の前記少なくとも識別情報及び前記収納箱の識別情報及び前記検体の前記収納箱内での位置情報及び前記収納箱の保管場所の情報を互いに関係づけ、前記撮影で得られた画像データとともに一時記憶装置に記録するステップと、(9)前記一時記憶装置に記録した前記検体の少なくとも識別情報及び前記収納箱の識別情報及び前記検体の前記収納箱内での位置情報及び前記収納箱の保管場所の情報を、ステップ(5)で前記データベースから抽出した前記検体の少なくとも識別情報及び前記収納箱の識別情報及び前記検体の前記収納箱内での位置情報及び前記収納箱の保管場所の情報と比較し、前記対象となる検体のみがすべて取り出されていると判定したとき、前記一時記憶装置に記録した各情報及び画像データを前記データベースに登録した後、次のステップを実行するが、それ以外であると判定したときは、前記ディスプレイに検体取り出しエラー表示を行い、かつ前記一時記憶装置に記録した各情報及び画像データをエラー発生情報とともに前記データベースに登録するとともに、前記収納箱から取り出した検体を元の位置に戻した後、ステップ(7)に戻るステップと、(10)前記収納箱から取り出した前記対象となる検体を処理した後、前記対象となる検体を前記収納箱に戻さないときは、前記収納箱をそのままで前記保管場所に搬入し、ステップ(5)に戻るが、前記対象となる検体のうちの少なくとも1つを前記収納箱に戻したときには、ステップ(3)に戻るステップと、を含んでいることを特徴とする検体管理方法が提供される。
【0016】
本発明の好ましい実施例によれば、ステップ(7)において、前記対象となる検体を前記収納箱から取り出す工程が、前記対象となる検体を、前記収納箱から、予め準備した前記収納箱と同一の構成を有する取出箱における、ステップ(5)で前記収納箱の前記目印を付した目に対応する目の位置に収容することからなっている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検体に二次元コードを付し、収納箱にはバーコードを付して、検体を収納した収納箱をリーダーによって撮影し、検体の少なくとも識別情報及び収納箱の識別情報と、収納箱内での検体の位置情報を読み取り、読み取った情報を、コンピュータを用いて、収納箱の保管場所の情報と関係づけてデータベースに登録し、その後、収納箱を保管場所に搬入する。
【0018】
それによって、検体の保管場所への搬入、及び搬入に際しての必要な情報のデータベースへの登録を手作業で効率的に行うことができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、検体の保管場所からの取り出し時、コンピュータによるデータベースの検索結果に基づき、該当する収納箱内の検体の配列に対応する碁盤目パターンをディスプレイに表示し、対象となる検体に対応する目に目印を付す。
【0020】
それによって、作業者は、ディスプレイ画面上の碁盤目パターンと対応する収納箱内の検体の配列とを見比べながら対象となる検体を取り出せばよいので、検体の取り出しを、手作業で効率的かつ確実に行うことができる。
【0021】
さらに、本発明によれば、対象となる検体を収納箱から取り出したとき、収納箱をリーダーによって撮影し、検体の少なくとも識別情報及び収納箱の識別情報と、収納箱内での検体の位置情報を読み取り、それらの情報をコンピュータによってデータベースの検索結果と比較し、対象となる検体のみがすべて取り出されていないと判定したときは、検体取り出しエラーをディスプレイ表示し、取り出した検体を元の位置に戻した後、再びディスプレイ画面上の碁盤目パターンを参照しつつ検体の取り出し工程を実行する。
【0022】
こうして、作業者の目視での確認ではなく、コンピュータを用いたデータの比較によって検体の取り違えの発生の有無を判定するようにしたことで、検体1の取り出し時の人的エラーを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による検体管理方法のフロー図である。
【
図3】(A)は検体の斜視図であり、(B)は検体が収納された収納箱の斜視図である。
【
図4】(A)はリーダーによる撮影時の状態を上方から見た図であり、(B)はリーダーによって得られた画像データを示す図である。
【
図5】(A)はデータベースへのデータの登録時にディスプレイに表示される画面を示した図であり、(B)はディスプレイの画面上の碁盤目パターンの1つの目にマウスポインタを合わせた状態を示す図である。
【
図6】検体の保管場所からの取り出し時にディスプレイに表示されるデータベースの検索結果の画面の一例を示した図である。
【
図7】(A)は、検体の収納箱からの取り出し時にディスプレイに表示されたデータベースの検索結果の画面中の、収納箱の画像と、対応する碁盤目パターンを例示した図であり、(B)は、検体が正しく収納箱から取り出された場合の収納箱の画像と、対応する碁盤目パターンを示した図であり、(C)は、検体の取り出しエラーが発生した場合の収納箱の画像と、対応する碁盤目パターンを例示した図である。
【
図8】(A)は、検体の収納箱からの取り出し時にディスプレイに表示されたデータベースの検索結果の画面中の、収納箱の画像と、対応する碁盤目パターンを例示した図であり、(B)は、検体が正しく収納箱から取り出された場合の収納箱の画像と、対応する碁盤目パターンを示した図であり、(C)は、検体の取り出しエラーが発生した場合の収納箱の画像と、対応する碁盤目パターンを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1及び
図2は、本発明による検体管理方法のフロー図である。
【0025】
図1及び
図2を参照して、本発明によれば、まず、上面が開口し、直立した検体を碁盤目状の配列で収容可能な収納箱を準備し、検体の上面に検体の少なくとも識別情報を表す二次元コードを付す一方、収納箱の一側面には収納箱の識別情報を表すバーコードを付す(
図1のステップS1)。
【0026】
図3(A)及び(B)のそれぞれに検体及び収納箱を示した。
図3(A)及び(B)に示すように、検体1は、下端開口が閉じた管状の容器1aに、血液、尿、唾液等の試料1bを収容し、容器の上端開口をキャップ1cで密封したものからなり、キャップ1cの上面に、検体1の少なくとも識別情報を表す二次元コード2が付されている。
【0027】
検体1の識別情報は、検体提供者の氏名、生年月日、年齢及び性別等からなっており、二次元コード2のデータには、検体1の識別情報に加えて、検体の種別及び検体採取日等の検体情報が含まれていてもよい。
【0028】
また、収納箱3の一側面に収納箱3の識別情報を表すバーコード4が付されており、収納箱3の識別情報は、収納箱2に付される一連の番号(箱番号)からなっている
【0029】
本発明によれば、次に、碁盤目状に配列された少なくとも1つの二次元コード2、及び碁盤目状の配列のエリア外に位置するバーコード4を撮影して得られた画像データに基づき、各二次元コード2のデータと当該二次元コード2の配列内での位置のデータ(二次元座標)、及びバーコード4のデータを、画像データとともに出力するリーダー5(この実施例では、キーエンス社製 1D/2Dコードリーダー SR-2000を使用した)を準備する(
図1のステップS2)。
【0030】
そして、
図4(A)に示すように、検体1が収納された収納箱3のバーコード4を付した側面にミラー6を斜め上向きに対向配置し、収納箱3の上方の所定位置にはリーダー5を配置して、リーダー5によって収納箱3内の検体1及びミラー6に写ったバーコード4を撮影する(
図1のステップS3)。
リーダー5によって撮影された画像データを、
図4(B)に示した。
図4(B)中、4’はミラー6に写ったバーコード4の像である。
【0031】
リーダー5によって、各二次元コード2のデータとその二次元座標(この実施例では、
図4(B)に示すように、収納箱3を、そのバーコード4が付された側面が撮影画面内左側にあるように配置した状態を基準に、碁盤目の左上の目の位置を座標原点として、碁盤目の横方向にx座標=1、・・・、10が付与され、碁盤目の縦方向にy座標=A、・・・、Jが付与される)、及びバーコード4のデータが読み取られ、取得された画像データと共に出力される。
【0032】
さらに、本発明によれば、リーダー5から出力されたデータと収納箱3の保管場所の情報とに基づき、コンピュータを用いて、検体1の少なくとも識別情報、及び収納箱3の識別情報、及び検体1の収納箱3内での位置情報、及び収納箱3の保管場所の情報を互いに関係づけ、撮影で得られた画像データとともにデータベースに登録するとともに、ディスプレイに、収納箱3の識別情報及び保管場所の情報、及び収納箱3内の検体1の配列を表す碁盤目パターン、及び画像データを表示し、その後、収納箱3を保管場所に搬入する(
図1のステップS4)。
【0033】
保管場所の位置情報は、例えば、保管場所が、それぞれ複数段の棚を有する複数の冷凍庫である場合には、冷凍庫の識別情報、及び冷凍庫内での位置情報(棚番号)からなっている。
なお、臨床検査機関が異なる場所に複数の支部を有している場合には、支部の識別情報も保管場所の情報に含まれる。
【0034】
また、上記のデータベースへの各情報及び画像データの登録時に、当該登録の日時及び作業者名もあわせて登録する。
【0035】
図5(A)は、上記のデータベースへのデータ登録時の、ディスプレイの画面を示した図である。
図5(A)において、ディスプレイ画面の「サイト」欄7、「保管庫」欄8及び「保管エリア」欄9に保管場所の情報が表示され、「箱番号」欄10に収納箱3の識別情報が表示されている。
【0036】
また、
図5(A)中、11は、リーダー5によって撮影された画像であり、12は、収納箱3内の検体1の配列を表す碁盤目パターンである。
この場合、碁盤目パターン12のうち、検体1が収容されている目には〇印が表示され、
図5(B)に示すように、〇印が表示された目にマウスポインタが合わせられると、当該目の位置に収容された検体1の少なくとも識別情報がポップアップ画面13に表示される。
【0037】
本発明によれば、保管場所から対象となる検体1を取り出すとき、対象となる検体1の少なくとも識別情報に基づき、コンピュータを用いて、データベースから、関係する収納箱3の識別情報、及び収納箱3の保管場所の情報、及び当該収納箱3内での対象となる検体1の位置情報、及び対応する画像データを抽出し、ディスプレイに、収納箱3の識別情報及び保管場所の情報、及び画像データ、及び対応する碁盤目パターン12を表示するとともに、碁盤目パターン12における対象となる検体に対応する目に目印を付す(
図1のステップS5)。
【0038】
このときのディスプレイの画面を
図6に示した。
図6において、画面の碁盤目パターン12における対象となる検体1に対応する目(座標(A,01))が、その他の目と異なる色で表示されている。
また、
図6において、ディスプレイ画面の「検体コード」欄14には、対象となる検体1の二次元コード2のデータ(検体1の識別情報も含む)が表示されている。
【0039】
本発明によれば、さらに、ディスプレイに表示した収納箱3の保管場所の情報に基づき、収納箱3を保管場所から搬出する(
図1のステップS6)。
【0040】
その後、ディスプレイに表示した碁盤目パターン12に基づいて対象となる検体1を収納箱3から取り出したとき、ステップS3で行ったのと同様に、収納箱3のバーコード4を付した側面にミラー6を斜め上向きに対向配置し、収納箱3の上方の所定位置にリーダー5を配置し、リーダー5によって、収納箱3内の検体1及びミラー6に写ったバーコード4を撮影する(
図2のステップS7)。
【0041】
ステップS7において、好ましくは、対象となる検体1を収納箱3から取り出す工程が、対象となる検体1を、収納箱3から、予め準備した収納箱3と同一の構成を有する(各目には二次元座標が表記された)取出箱における、ステップS3で収納箱3の目印を付した目に対応する目の位置に収容することからなっている。
【0042】
次いで、リーダー5から出力されたデータと収納箱3の保管場所の情報とに基づき、検体1の少なくとも識別情報、及び収納箱3の識別情報、及び検体の収納箱3内での位置情報、及び収納箱3の保管場所の情報を互いに関係づけ、撮影で得られた画像データとともに一時記憶装置に記録する(
図2のステップS8)。
【0043】
そして、一時記憶装置に記録した検体1の少なくとも識別情報、及び収納箱3の識別情報、及び検体1の収納箱3内での位置情報、及び収納箱3の保管場所の情報を、ステップS5でデータベースから抽出した検体1の少なくとも識別情報、及び収納箱3の識別情報、及び検体1の収納箱3内での位置情報、及び収納箱3の保管場所の情報と比較し、対象となる検体1のみがすべて取り出されていると判定したとき、一時記憶装置に記録した各情報及び画像データをデータベースに登録した後、次のステップを実行するが、それ以外であると判定したときは、ディスプレイに検体取り出しエラー表示を行い、かつ一時記憶装置に記録した各情報及び画像データをエラー発生情報とともにデータベースに登録するとともに、収納箱3から取り出した検体1を元の位置に戻した後、ステップS7に戻る(
図2のステップS9)。
【0044】
この場合、データベースへの各情報及び画像データの登録時、当該登録の日時及び作業者名もあわせて登録する。
【0045】
以下、ステップS9を具体的に説明する。
図7(A)は、検体1の収納箱3からの取り出し時にディスプレイに表示されたデータベースの検索結果の画面中の、収納箱3の画像と、対応する碁盤目パターン12を例示した図であり、
図7(B)は、検体1が正しく収納箱3から取り出された場合の収納箱3の画像と、対応する碁盤目パターン12を示した図であり、
図7(C)は、検体1の取り出しエラーが発生した場合の収納箱3の画像と、対応する碁盤目パターン12を例示した図である。
【0046】
図7(A)に示すように、例えば、ステップS5において、データベースの検索の結果、対象となる検体1が該当する収納箱3内に3つ存在し、それらの検体1がそれぞれ(B,02)、(D,04)、(F,06)の位置にあるとする。
【0047】
そして、作業者によって、それら3つの検体1が収納箱3から正しく取り出されれば、それらの検体1の取り出し後、収納箱3内の状態は、
図7(B)に示したようになる。
この場合には、対象となる検体1のみがすべて取り出されていると判定され、一時記憶装置に記録された各情報及び画像データがデータベースに登録される。
【0048】
これに対し、例えば、
図7(C)に示すように、3つの検体1のうち、誤って、(F,06)の位置の検体1の代わりに(F,07)の位置の検体1が取り出されれば、ディスプレイに検体取り出しエラー表示がなされ、かつ一時記憶装置に記録された各情報及び画像データがエラー発生情報とともにデータベースに登録される。
【0049】
同様に、
図8(A)は、検体1の収納箱3からの取り出し時にディスプレイに表示されたデータベースの検索結果の画面中の、収納箱3の画像と、対応する碁盤目パターン12を例示した図であり、
図8(B)は、検体1が正しく収納箱3から取り出された場合の収納箱3の画像と、対応する碁盤目パターン12を示した図であり、
図8(C)は、検体1の取り出しエラーが発生した場合の収納箱3の画像と、対応する碁盤目パターン12を例示した図である。
【0050】
図8(A)に示すように、例えば、ステップS5において、データベースの検索の結果、対象となる検体1が該当する収納箱3内に6つ存在し、それらの検体1がそれぞれ、(E,05)、(E,06)、(E,07)、(F,05)、(F,06)、(F,07)の位置にあるとする。
【0051】
そして、作業者によって、それら6つの検体1が収納箱3から正しく取り出されれば、それらの検体1の取り出し後、収納箱3内の状態は、
図8(B)に示したようになる。
この場合には、対象となる検体1のみがすべて取り出されていると判定され、一時記憶装置に記録された各情報及び画像データがデータベースに登録される。
【0052】
これに対し、例えば、
図8(C)に示すように、6つの検体1のうち、誤って、(E,05)及び(F,05)の位置の検体1の代わりに(E,08)及び(F,08)の位置の検体1が取り出されれば、ディスプレイに検体取り出しエラー表示がなされ、かつ一時記憶装置に記録された各情報及び画像データがエラー発生情報とともにデータベースに登録される。
【0053】
本発明によれば、さらに、収納箱3から取り出した対象となる検体1を処理した後、対象となる検体1を収納箱3に戻さないときは、収納箱3をそのままで保管場所に搬入し、ステップS5に戻るが、対象となる検体1のうちの少なくとも1つを収納箱3に戻したときには、ステップS3に戻る(
図2のステップS10)。
【0054】
こうして、本発明によれば、検体1に二次元コード2を付し、収納箱3にはバーコード4を付して、検体1を収納した収納箱3をリーダー5によって撮影し、検体1の少なくとも識別情報及び収納箱3の識別情報と、収納箱3内での検体1の位置情報を読み取り、読み取った情報を、コンピュータを用いて、収納箱3の保管場所の情報と関係づけてデータベースに登録し、その後、収納箱3を保管場所に搬入する。
【0055】
それによって、検体1の保管場所への搬入、及び搬入に際しての必要な情報のデータベースへの登録を手作業で効率的に行うことができる。
【0056】
さらには、検体1の保管場所からの取り出し時、コンピュータによるデータベースの検索結果に基づき、該当する収納箱3内の検体1の配列に対応する碁盤目パターン12をディスプレイに表示し、対象となる検体1に対応する目に目印を付す。
【0057】
こうして、作業者は、ディスプレイ画面上の碁盤目パターン12と対応する収納箱3内の検体1の配列とを見比べながら対象となる検体1を取り出せばよいので、検体1の取り出しを、手作業で効率的かつ確実に行うことができる。
【0058】
さらには、対象となる検体1を収納箱3から取り出したとき、収納箱3をリーダー5によって撮影し、検体1の少なくとも識別情報及び収納箱3の識別情報と、収納箱3内での検体1の位置情報を読み取り、それらの情報をコンピュータによってデータベースの検索結果と比較し、対象となる検体1のみがすべて取り出されていないと判定したときは、検体取り出しエラーをディスプレイ表示し、取り出した検体1を収納箱3の元の位置に戻した後、再びディスプレイ画面上の碁盤目パターン12を参照しつつ検体の取り出し工程を実行する。
【0059】
こうして、作業者の目視での確認ではなく、コンピュータを用いたデータの比較によって検体の取り違えの発生の有無を判定するようにしたことで、検体1の取り出し時の人的エラーを確実に防止できる。
【符号の説明】
【0060】
1 検体
1a 容器
1b 試料
1c キャップ
2 二次元コード
3 収納箱
4 バーコード
4’ バーコードの像
5 リーダー
6 ミラー
7 「サイト」欄
8 「保管庫」欄
9 「保管エリア」欄
10 「箱番号」欄
11 リーダーによって撮影された画像
12 碁盤目パターン
13 ポップアップ画面
14 「検体コード」欄