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特開2025-6870シートロック構造及びシートロック構造を備えた作業機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006870
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】シートロック構造及びシートロック構造を備えた作業機
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/12 20060101AFI20250109BHJP
   B60N 2/38 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60N2/12
B60N2/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107902
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】西羅 友佑
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 芳憲
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BA12
3B087BB02
3B087BB16
(57)【要約】
【課題】機体に対する運転席の固定を確実に行う。
【解決手段】
シート支持部に対して水平軸心回りに揺動自在に配置された運転席6を、シート支持部に対し揺動規制状態で固定するものであり、運転席6の底面に配備され、進出位置と退出位置との2点間を移動する固定ピン58、シート支持部の上面に配備され進出位置で固定ピン58と係合する係合部材51、固定ピン58を進出位置への移動方向に付勢する付勢部材60を備え、係合部材51は、進出位置にある固定ピン58の挿入により運転席6の上方揺動を規制する係合穴59と、運転席6を下方に揺動させたときに進出位置の固定ピン58の先端部と接触し、運転席6の下方揺動に伴って固定ピン58を付勢力に抗して退出位置の方向に移動させつつ先端部を係合穴59まで案内する傾斜状の案内面74と、を有し、固定ピン58の先端部は案内面74に対して点接触又は線接触する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート支持部に対して水平方向の軸心回りに揺動自在に配置された運転席を、前記シート支持部に対する揺動が規制された状態で固定するシートロック構造であって、
前記運転席の底面に配備され、進出位置と退出位置との2点間を移動する固定ピンと、
前記シート支持部の上面に配備され、前記進出位置で前記固定ピンと係合する係合部材と、
前記固定ピンを前記進出位置に移動する方向に付勢する付勢力を付与する付勢部材と、
を備え、
前記係合部材は、
前記固定ピンが前記進出位置にあるときに挿入されることにより前記運転席の上方への揺動を規制する係合穴と、
前記運転席を下方に揺動させたときに前記進出位置にある前記固定ピンの先端部と接触し、前記運転席の下方への揺動に伴って前記固定ピンを前記付勢力に抗して前記退出位置の方向に移動させつつ前記先端部を前記係合穴まで案内する傾斜状の案内面と、
を有しており、
前記固定ピンの前記先端部は、前記案内面に対して点接触又は線接触するシートロック構造。
【請求項2】
前記係合部材の下方に配置された支持板を備え、
前記係合部材は、
前記支持板の上面から上方に延びる第1板部と、前記第1板部の上端から前方且つ下方に向けて延びると共に前記案内面及び前記係合穴を有する第2板部と、を有し、
前記第1板部及び前記第2板部は、前記支持板の上面に固定されている請求項1に記載のシートロック構造。
【請求項3】
前記先端部は、平面状またはテーパ状の面取部を有しており、
前記シート支持部の上面に対する前記案内面の傾斜角度(θ1)と、前記固定ピンの軸心方向に沿って見たときの前記シート支持部の上面に対する前記面取部の傾斜角度(θ2)とが、前記運転席の揺動に伴って前記先端部と前記案内面とが当接する揺動範囲内において互いに異なっており、前記面取部の先端が前記案内面に当接する請求項1に記載のシートロック構造。
【請求項4】
前記先端部は、曲面状の面取部を有しており、前記面取部の一部が前記案内面に対して点接触する請求項1に記載のシートロック構造。
【請求項5】
前記固定ピンと接続され、引動操作によって前記固定ピンを前記進出位置から前記退出位置まで移動させる係合解除レバーと、
前記引動操作時において前記係合解除レバーが前記固定ピンの軸心回りに回動することを防止する回動防止機構と、
を備えている請求項1に記載のシートロック構造。
【請求項6】
前記回動防止機構は、
前記係合解除レバーに固定されて前記係合解除レバーと一体的に回動する回動板と、
前記回動板に対して面接触することにより前記回動板の回動を規制する回動規制部と、を有している請求項5に記載のシートロック構造。
【請求項7】
前記運転席の下方には、前記運転席の底面から下方に離間した位置に中間支持板が配備されており、
前記中間支持板には、前記回動規制部が形成されている請求項6に記載のシートロック構造。
【請求項8】
前記回動板の上端は、前記中間支持板の上方に突出しており、
前記回動規制部は、前記中間支持板の前端から後方に向かって切り欠かれた切欠部から構成されており、
前記回動板は、前記切欠部の下方から上方に向けて延びる第1部位と、前記第1部位の上端から後方に向けて延びる第2部位と、を有し、
前記第2部位の下面が前記中間支持板の上面と面接触している請求項7に記載のシートロック構造。
【請求項9】
前記第2部位の下面と前記中間支持板の上面とは、前記運転席と上下方向において重なる位置において面接触している請求項8に記載のシートロック構造。
【請求項10】
前記固定ピンは、前記中間支持板の下部に取り付けられており、
前記中間支持板には、前記固定ピンと係合する前記係合部材の上端を、前記中間支持板の上方に向けて露出させる上下貫通部が形成されている請求項7に記載のシートロック構造。
【請求項11】
オペレータが着座する運転席と、
前記運転席を支持するシート支持部と、
前記運転席を前記シート支持部に対する揺動が規制された状態で固定する請求項1~10のいずれか1項に記載されたシートロック構造と、
を備えている作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー等の作業機において、運転席を揺動が規制された状態で固定するシートロック構造、及びシートロック構造を備えた作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業車の運転座席が知られている。特許文献1に開示された運転座席は、シート支持部材を前端寄りの横向き軸心周りで上下揺動自在に取付け、シートをシート支持部材に取付けた作業車において、シート支持部材に付設した係止部材の先端側にカム面を形成し、シート支持部材の下降揺動に伴ってカム面によりロックピンがバネに抗して押された後、バネによりロックピンが係止部材の係合孔に嵌まるようにカム面をロックピンに対して相対配置することにより、シート支持部材を着座シート支持姿勢で固定できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-186791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートロック構造を設ける場合、運転席を機体に対して容易に固定することができる構造が必要となる。例えば、シートロック構造は、運転席の自重によって運転席が機体に対して確実に固定される構造が好ましい。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構造では、ロックピンとカム面との接触部分の具体的な構造について考慮されていないので、カム面によりロックピンをバネに抗して押しながらロックピンが係止部材の係合孔に嵌まる位置まで運転席を下方揺動させるのに大きな外力を加える必要がある。
【0006】
本発明は、前記問題点に鑑み、運転席が揺動自在に設けられた作業機において、運転席を機体に対して容易に固定することができるシートロック構造及びシートロック構造を備えた作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシートロック構造は、シート支持部に対して水平方向の軸心回りに揺動自在に配置された運転席を、前記シート支持部に対する揺動が規制された状態で固定するシートロック構造であって、前記運転席の底面に配備され、進出位置と退出位置との2点間を移動する固定ピンと、前記シート支持部の上面に配備され、前記進出位置で前記固定ピンと係合する係合部材と、前記固定ピンを前記進出位置に移動する方向に付勢する付勢力を付与する付勢部材と、を備え、前記係合部材は、前記固定ピンが前記進出位置にあるときに挿入されることにより前記運転席の上方への揺動を規制する係合穴と、前記運転席を下方に揺動させたときに前記進出位置にある前記固定ピンの先端部と接触し、前記運転席の下方への揺動に伴って前記固定ピンを前記付勢力に抗して前記退出位置の方向に移動させつつ前記先端部を前記係合穴まで案内する傾斜状の案内面と、を有しており、前記固定ピンの先端部は、前記案内面に対して点接触又は線接触する。
【発明の効果】
【0008】
上記のシートロック構造によれば、固定ピンの先端部と案内面との摺動抵抗を低減できるので、運転席を機体に対して容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】作業機の全体側面図である。
図2】右前方から見た作業機の全体斜視図である。
図3】機体の平面図である。
図4】機体及び運転席を右前方から見た斜視図である。
図5】ボンネット及び支持フレームを右前方から見た斜視図である。
図6】運転席及び支持フレームを右前方から見た斜視図である。
図7】運転席及び支持フレームを前方から見た正面図である。
図8】運転席及び支持フレームを右方から見た側面図である。
図9】固定ピン及び中間支持板を右下方から見た仰観図である。
図10】上下方向及び前後方向に沿って切断した固定ピン及び中間支持板の断面図である。
図11】支持フレームの上面を右上方から見た俯瞰図である。
図12】(a)は固定ピンの先端部が案内面に対して線接触する態様を示す断面図であり、(b)は固定ピンの先端部が案内面に対して点接触する態様を示す断面図である。
図13】(a)は回動防止機構を示す斜視図であり、(b)は回動防止機構を示す断面図である。
図14】シートロック構造を解除して、ボンネットに対して運転席を揺動させる操作を示す右側面図である。
図15】シートロック構造においてボンネットに対する運転席の揺動を規制する操作を示す右側面図である。
図16】シートロック構造においてボンネットに対する運転席の揺動規制を解除する操作を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る作業機1の全体構成を示す側面図である。図2は、本実施形態に係る作業機1の全体構成を示す斜視図である。本実施形態では、作業機1として旋回作業機であるバックホーが例示されている。作業機1は、バックホーには限定されず、トラクタ等の他の作業機であってもよい。
【0012】
図1図2に示すように、作業機1は、機体(旋回台)2と、走行装置3と、作業装置4とを備えている。機体2には、オペレータが着座する運転席6と、4柱式のロプス15とが搭載されている。ロプス15は、ルーフ19を有するキャノピ仕様である。
【0013】
本実施形態においては、作業機1の運転席6に着座したオペレータの前に向かう方向(図1の矢印A1方向)を前方、オペレータの後に向かう方向(図1の矢印A2方向)を後方、図1の矢印A3方向を前後方向として説明する。また、オペレータの左に向かう方向(図1の手前)を左方、オペレータの右に向かう方向(図1の奥)を右方として説明する。
【0014】
また、前後方向A3に直交する方向であって、かつ、水平に沿った方向を、機体幅方向として説明する。
【0015】
機体2の後部には、原動機(エンジン)等の搭載物を覆うボンネット14が設けられている。機体2の後部におけるボンネット14の下部には、作業装置4との重量バランスを図るウエイト25が配置されている。本実施形態の作業機1は、小型のバックホーであって、原動機(原動機室)の上方に運転席6が配置されている。
【0016】
図3に示すように、原動機91は、機体2の後部における幅方向中央部に搭載されている。原動機91は、運転席6の下方に配置されている。原動機91の左方には、冷却ファン100、ラジエータ92、オイルクーラ93が配置されている。原動機91の右方には、油圧ポンプ95が配置されている。原動機91、冷却ファン100、ラジエータ92、オイルクーラ93、及び油圧ポンプ95は、ボンネット14の内部に設けられた原動機ルーム91Aに格納されている。
【0017】
ボンネット14は、機体2の後部に配置されている。ボンネット14の内部には、原動機91等が格納される原動機ルーム91A(図3参照)が形成されている。ボンネット14は、板状に形成された第1カバー体101A~第4カバー体101Dの板部材を組み合わせて箱状に形成されている(図5参照)。また、ボンネット14は、第1カバー体101A~第4カバー体101Dを支持するボンネット支持フレーム98を内部に有している(図4参照)。
【0018】
図4図5に示すように、第1カバー体101Aは、原動機91の前方及び上方を覆う
。第1カバー体101Aは、原動機91の前方に位置する前壁101Aaと、原動機91の上方に位置する上壁101Abとを有する。上壁101Abには、ボンネット14に収容された原動機91を点検する点検口99が形成されている。
【0019】
図3に示すように、第2カバー体101Bは、第1カバー体101A及び原動機91の後方に配置されている。第3カバー体101Cは、原動機91、冷却ファン100、ラジエータ92、及びオイルクーラ93等を左方から覆っている。第4カバー体101Dは、原動機91及び油圧ポンプ95等を右方から覆っている。
【0020】
第1カバー体101A~第4カバー体101Dのうち、第2カバー体101B及び第3カバー体101Cの一部は開閉自在となっている。これにより、原動機ルーム91Aの内部に収容された原動機91、ラジエータ92、オイルクーラ93、及び油圧ポンプ95は、後方や左方からアプローチしてメンテナンスが可能である。
【0021】
図4に示すように、ボンネット14の内部には、第1カバー体101A~第4カバー体101Dを支持するボンネット支持フレーム98が配置されている。
【0022】
ボンネット支持フレーム98は、旋回基板5から上方に向かって起立状に形成されており、複数本の棒状のフレーム材を縦横に組み合わせた骨格構造を備えている。ボンネット支持フレーム98の前方には床部21が設けられている。ボンネット支持フレーム98は、床部21の下方に配置される下フレーム98Bと、床部21の上方に配置される上フレーム98Tとを有している。
【0023】
下フレーム98Bは、運転席6の左前部の下方に設けられる第1下フレーム98B1、運転席6の右前部の下方に設けられる第2下フレーム98B2、運転席6の左後部の下方に設けられる第3下フレーム98B3、及び運転席6の右後部の下方に設けられる第4下フレーム98B4を有している。第1下フレーム98B1~第4下フレーム98B4は、いずれも棒状のフレームであり、旋回基板5から上方に向かって起立するように配置されている。第1下フレーム98B1~第4下フレーム98B4は、互いに前後方向又は左右方向に距離をあけて配置されている。
【0024】
上フレーム98Tは、下フレーム98Bの上方に連続して配置される棒状の部材である。上フレーム98Tは、下フレーム98Bと同様に4本設けられている。4本の上フレーム98Tとは、第1上フレーム98T1、第2上フレーム98T2、第3上フレーム98T3、及び第4上フレーム98T4である。4本の上フレーム98Tは、互いに前後方向又は左右方向に距離をあけて配置されている。上フレーム98T及び下フレーム98Bは、支持フレーム98の水平方向の四隅(左前、右前、左後、右後の隅)にそれぞれ設けられている。
【0025】
第1上フレーム98T1と第2上フレーム98T2は、左右方向に間隔をあけて配置されている。第1上フレーム98T1及び第2上フレーム98T2は、上下方向に延び、上端で後方に向かって曲げられ、前後方向に沿って後端まで水平に延びる形状(側方視で略L字状)に形成されている。
【0026】
第1上フレーム98T1の下端と第2上フレーム98T2の下端との間には、左右方向に沿って水平に延びる第1連結フレーム102が設けられている。第1連結フレーム102は、第1上フレーム98T1の下端と第2上フレーム98T2の下端とを左右方向に連結している。
【0027】
第1上フレーム98T1の後方に向かって曲げられた部分(上部の前端)と、第2上フレーム98T2の後方に向かって曲げられた部分(上部の前端)との間には、左右方向に延びる第2連結フレーム103が設けられている。第2連結フレーム103は、第1上フレーム98T1の上端と第2上フレーム98T2の上端とを左右方向に連結している。
【0028】
第1上フレーム98T1の後端(上部の後端)と第2上フレーム98T2の後端(上部の後端)との間には、左右方向に延びる第3連結フレーム104が設けられている。第3連結フレーム104は、第1上フレーム98T1の後端と第2上フレーム98T2の後端とを左右方向に連結している。
【0029】
ボンネット支持フレーム98は、上下方向、前後方向、又は左右方向に延伸されたフレーム材を縦横に組み合わせることで、旋回基板5の上部に剛性が高い立体格子状の骨組み
を形成している。ボンネット支持フレーム98の上方には、ボンネット14を介して運転席6が支持されている。このような高剛性のボンネット支持フレーム98上に運転席6を支持することによって、旋回基板5の上方に運転席6を確実かつ強固に支持することができる。
【0030】
図4図5、及び図11に示すように、ボンネット支持フレーム98の上方には、第1カバー体101Aの上壁(シート支持部)101Abが配置されている。第1カバー体101Aの上壁101Abは、後述するシートロック構造50の下方に配置されて、下方よりシートロック構造50を支持している。上壁101Abは、後述する係合部材51の下方に配置されて、下方より係合部材51を支持する支持板52となっている。図4図11に示すように、支持フレーム98の上部には、上方視で四角形の開口98Hが形成されている。この開口98Hは、前後方向に延びる第1上フレーム98T1(第1上フレーム98T1の上部)、前後方向に延びる第2上フレーム98T2(第2上フレーム98T2の上部)、左右方向に延びる第2連結フレーム103及び第3連結フレーム104の4部材で囲まれている。開口98Hの上方には、第1カバー体101Aの前壁101Aa及び上壁101Abの周囲に配置された補強フレーム120が配置されている。上壁101Ab(支持板52)は、補強フレーム120に対してボルト締結などの手段で固定されている。
【0031】
シート支持部は、シートロック構造50を機体2に対して支持する部材である。なお、本実施形態のシートロック構造50は、第1カバー体101Aの上壁101Ab(支持板52)をシート支持部として用いている。しかし、本発明のシート支持部は、支持板52のような板部材に限定されないし、ボンネット14を構成する部材にも限定されない。例えば、ボンネット14とは別の部材をシート支持部として設け、別の部材を用いてシートロック構造50を機体2に対して支持してもよい。この場合、シートロック構造50を支持するシート支持部は、板部材でなくても良い。
【0032】
図4に示すように、上壁101Ab(支持板)の中央右部には、ボンネット支持フレーム98で囲まれた内部(原動機ルーム91Aの内部)を点検する点検口99が形成されている。点検口99は、蓋部材106により閉鎖されている。蓋部材106は、締結具107(図示例の場合は3個の蝶ネジ)を用いて、点検口99に着脱自在に配置されている。そのため、蓋部材106を取り外すことによって、点検口99から原動機ルーム91Aの内部を点検することができる。
【0033】
上壁101Ab(支持板52)の中央左部には、後述するシートロック構造50の係合部材51が設けられている。係合部材51は、点検口99の左方に、点検口99から左右方向に距離をあけて配置されている。
【0034】
上壁101Abの後部には、運転席6(正確には中間支持板83を介して運転席6)を弾性的に支持するマウント部材53が設けられている。マウント部材53は、ゴムなど弾性体を含む部材である。マウント部材53は、軸心を上下方向に向けた短い円筒形状に形成されている。マウント部材53は、上壁101Abの後部における左部と右部とにそれぞれ配備されている。
【0035】
次に、運転席6及び運転席6を下方より支持する中間支持板83について説明する。
【0036】
図14に示すように、運転席6は、運転席6の前部に設けられた支軸54c回りに、支持フレーム98の上壁101Abに対して水平方向の軸心回りに揺動可能とされている。運転席6は、支軸54c回りに揺動することによって、運転席6の後部が上壁101Abに対して離反又は接近する。図8及び図9に示すように、中間支持板83は、運転席6の底部に固定されており、運転席6と一体的に揺動する。中間支持板83については、後ほど改めて説明する。支持フレーム98に対して運転席6及び中間支持板83後部を揺動させると、運転席6及び中間支持板83の姿勢は変更される。
【0037】
具体的には、図14の左図から右図に向かう姿勢の変化からわかるように、運転席6及び中間支持板83の後部は前部に対して跳ね上げ方向(上方)に揺動する。なお、運転席6は、図14の右図から左図に向かうように姿勢を変更することもできる。つまり、運転席6は、跳ね上げ方向(上方)と押し下げ方向(下方)に揺動することができる。
【0038】
以降の説明では、図14の左図に示された姿勢を「水平姿勢H」、図14の右図に示された姿勢を「跳ね上げ姿勢S」と呼ぶ。図4図10は、「水平姿勢H」の運転席6を図示しており、図4図10を用いる場合は「水平姿勢H」を基準に運転席6及び中間支持板83の位置を説明する。
【0039】
図4に示すように、運転席6は、点検口99の上方に配置されている。運転席6が水平姿勢(着座姿勢)Hにあるとき、点検口99の上方が運転席6によって覆われているため、点検口99にアクセスすることはできない。運転席6の姿勢を水平姿勢Hから跳ね上げ姿勢Sに変更すると、点検口99が運転席6に覆われない状態(露出状態)となるため、点検口99にアクセスすることが可能となる。
【0040】
図4図6図8に示すように、運転席6は、座部6Aと背もたれ部6Bとを有する。座部6Aは、オペレータが着座する(臀部及び太股部を載せる)部位である。背もたれ部6Bは、着座したオペレータが背中をもたせかける部位である。背もたれ部6Bは、座部6Aの後部から上方または後部上方に延びるように設けられている。背もたれ部6Bの右側面には、背もたれ部6Bの傾斜角度を調整可能な角度調整レバー108が設けられている。座部6Aの後部の右端部には、重量調整ノブ109が設けられている。重量調整ノブ109は、座部6A内のばねの反発力などを調整する。重量調整ノブ109を回転させることで、座部6Aの座り心地が調整される。
【0041】
図7及び図8に示すように、中間支持板83は、座部6Aの底面6Cと略平行になるように、座部6Aの下方に配置された板部材である。「水平姿勢H」の中間支持板83の前端は、下方に向かって垂れ下がるように略直角に曲げられている。
【0042】
中間支持板83は、上部と下部で異なる機能を有している。中間支持板83の上部は、中間支持板83に対して運転席6を前後方向にスライドさせる機能を有する。このスライドさせる機能を実現するため、中間支持板83の上部には、スライド機構80が設けられる。中間支持板83の下面は、中間支持板83及び中間支持板83の上部に設けられる運転席6を揺動させる機能を有する。この揺動させる機能を実現するため、中間支持板83の下部には、揺動機構54が設けられる。
【0043】
図7及び図8に示すように、スライド機構80は、中間支持板83に対して運転席6を前後方向にスライド自在に支持する。スライド機構80は、座部6Aの底面6Cと中間支持板83との間に配置されている。スライド機構80は、底面6Cの左部に設けられた、第1スライドレール84、第1スライダ85、および第1ベアリング86を有する第1スライド機構81と、底面6Cの右部に設けられた、第2スライドレール87、第2スライダ88、および第2ベアリング89を有する第2スライド機構82とを有している。
【0044】
図6図11に示す揺動機構54は、中間支持板83及び中間支持板83に支持された運転席6を、左右方向を向く軸回りに揺動自在に支持している。本実施形態の揺動機構54は、運転席6の前部に設けられた左右方向に延びる支軸54c回りに、運転席6の後部を揺動させる。図9及び図11に示すように、揺動機構54は、支持フレーム98の第2連結フレーム103に設けられた基体54aと、中間支持板83の下面に設けられた揺動体54bと、基体54aと揺動体54bとを連通する支軸54cを有している。
【0045】
図11に示すように、基体54aは、第2連結フレーム103の左右方向の中途部に、左右方向に距離をあけて設けられた左基片54aLと右基片54aRを有している。左基片54aL及び右基片54aRは、側方視で略三角形状の板部材である。左基片54aLの中央には支軸54cを左右方向に挿通する左挿通孔55Lが形成されている。右基片54aRの中央には支軸54cを左右方向に挿通する右挿通孔55Rが形成されている。
【0046】
第2連結フレーム103は、左右方向に対して垂直に切断した場合に、前方上部に向かって盛り上がるように湾曲した断面を有している。左基片54aL及び右基片54aRは、いずれも第2連結フレーム103の湾曲した前面(上面)から、前方上部に向かって起立するように取り付けられる。
【0047】
図9に示すように、揺動体54bは、中間支持板83の前端における下方に向かって曲げられた部分に沿うように設けられている。揺動体54bは、中間支持板83の前端の左部に設けられた左揺動片54bLと、中間支持板83の前端の右部に設けられた右揺動片
54bRと、を有している。左揺動片54bL及び右揺動片54bRは、中間支持板83の下面から、下方に向かって起立するように取り付けられている。左揺動片54bL及び右揺動片54bRは、前後方向に沿って延びるように設けられている。左揺動片54bL及び右揺動片54bRの中央には、左右方向に沿って貫通状に挿通孔56が形成されている。挿通孔56には、支軸54cが貫通状に挿通している。
【0048】
支軸54cは、基体54aの左基片54aL、右基片54aRと、揺動体54bの左揺動片54bL、右揺動片54bRとを、左右方向に連通する軸である。支軸54cの右端には、左挿通孔55L、右挿通孔55R、及び挿通孔56の開口径よりも大径に形成された頭部が設けられている。また、支軸54cの左端には、左挿通孔55L、右挿通孔55R、及び挿通孔56から支軸54cが抜けることを規制する抜け止めピン57が設けられている。
【0049】
上述した揺動機構54は、中間支持板83の下面に設けられた揺動体54bを、ボンネット支持フレーム98の第2連結フレーム103に設けられた基体54a に対して、左右方向に延びる支軸54cを中心に揺動可能に支持している。これにより、中間支持板83及び中間支持板83に支持された運転席6は、支軸54cが設けられた前部を中心に、後部が上下方向に揺動可能となる。
【0050】
さて、図8及び図10に示すように、ボンネット支持フレーム98の上壁101Abと、中間支持板83との間には、運転席6を、ボンネット14に対する揺動(上方向の揺動)が規制された状態で固定するシートロック構造50が設けられている。
【0051】
シートロック構造50は、運転席6の底面6Cに配備された固定ピン58と、ボンネット14の上面(上壁101Ab)に配備された係合部材51を有している。固定ピン58は、進出位置P1(図15(d)参照)と退出位置P2(図16(b)参照)との2点間を移動可能とされている。係合部材51は、固定ピン58と係合する係合穴59を有している。固定ピン58を進出位置P1(図15(d)参照)まで移動させると、係合部材51の係合穴59に固定ピン58が係合する。一方、固定ピン58を退出位置P2(図16(b)参照)まで移動させると、係合部材51の係合穴59の外に出て、固定ピン58の先端部が係合穴59に係合しなくなる。つまり、図15図16に示すように、進出位置P1と退出位置P2との2点間で固定ピン58の先端部を移動させることで、シートロック構造50は、固定ピン58が係合部材51に係合する係合状態RS(図15図16参照)と、固定ピン58が係合部材51に係合しない非係合状態US(図15図16参照)とに切り換わる。
【0052】
シートロック構造50は、固定ピン58が進出位置P1に移動する方向(後方)に、固定ピン58を付勢する付勢部材60を備えている。後述するように、本実施形態の場合、付勢部材60は、コイルばねである。付勢部材60は、固定ピン58を進出位置P1に向かって付勢することで、シートロック構造50を係合状態RSに維持する。言い換えれば、シートロック構造50を非係合状態USにする場合は、付勢部材60による付勢力に抗して、固定ピン58を退出位置P2に移動させなければならない。
【0053】
シートロック構造50を係合状態RSとすると、運転席6はボンネット14に対する揺動が規制された状態で固定される。シートロック構造50を非係合状態USとすると、運転席6は、ボンネット14に対する揺動の規制が解除された状態となり、揺動が可能となる。
【0054】
次に、シートロック構造50に設けられる固定ピン58、係合部材51、及び付勢部材60について詳しく説明する。
【0055】
図9図10に示すように、固定ピン58は、前後方向に延びる棒状の部材であり、中間支持板83の下面の中央左部に取り付けられる。固定ピン58の基端部(前端部)は、中間支持板83の前端下方において上方に向かって屈曲している。上方に向かって屈曲した固定ピン58の基端(前端)は、中間支持板83の前端のさらに前方上部まで延伸されている。固定ピン58の基端(前端)は、水平方向(図示例では右方)に向かって直角状に折り曲げられている。直角状に折り曲げられた固定ピン58の基端(前端)は、引動操作によって固定ピン58を進出位置P1から退出位置P2まで移動させる係合解除レバー
61とされている。係合解除レバー61は、シートロック構造50を係合状態から非係合状態にするために、固定ピン58を前方に向けて引く際に把持する部位である。固定ピン58の基端を直角状に折り曲げた係合解除レバー61を用いることで、オペレータが固定ピン58を把持しやすくなり、進出位置P1と退出位置P2との間で固定ピン58を容易に引動することができる。
【0056】
固定ピン58の先端部(後端部)は、中間支持板83の前後方向の略中央部まで延伸している。固定ピン58の先端部(後端部)は、係合部材51の係合穴59に挿通しやすいように、先方(後方)に向かうにつれて先細りとなる形状に形成されている。固定ピン58の先端部(後端部)は、角面取り又は丸面取りされており、後述する係合部材51の案内面74に線接触又は点接触可能とされている。固定ピン58の先端部(後端部)の形状については、後ほど詳しく説明する。
【0057】
図10に示すように、固定ピン58の前後方向の中途部は、前後方向に距離をあけて配置された第1前後ガイド部62及び第2前後ガイド部63を用いて、前後方向に移動自在に案内されている。
【0058】
図10図13に示すように、中間支持板83の前部には、切欠部66が形成されている。第1前後ガイド部62は、切欠部66の後部の開口縁から垂下する第1案内片64に形成された孔である。中間支持板83の前後方向の中途部には、中間支持板83を上下方向に貫通する開口である上下貫通部67が形成されている。第2前後ガイド部63は、上下貫通部67の前部の開口縁から垂下する第2案内片65に形成された孔である。固定ピン58の前後方向の中途部は、第1前後ガイド部62及び第2前後ガイド部63に挿通されている。
【0059】
次に、切欠部66及び上下貫通部67について説明する。
【0060】
図13に示すように、切欠部66は、下方に向かって折れ曲がった中間支持板83の前端を、上下方向に切り欠いて形成されている。また、切欠部66は、中間支持板83の前端から後方に向かって水平方向に延びている。このような切欠部66を設ければ、固定ピン58の基端部(前端部)の前方に、下方に向かって折れ曲がった中間支持板83の前端が存在しなくなる。そのため、固定ピン58の基端部(前端部)を、下方に向かって折れ曲がった中間支持板83の前端との干渉を回避して、中間支持板83よりも前方まで延伸することができる。
【0061】
図9図10図13に示すように、切欠部66の後縁には、固定ピン58を前後方向に案内する第1案内片64が形成されている。第1案内片64は、切欠部66の後縁から下方に向かって垂れ下がる板部材である。第1案内片64の中央には、固定ピン58を前後方向に案内する第1前後ガイド部62が形成されている。第1前後ガイド部62は、第1案内片64の中央(第1案内片64における上下方向の中間であって、左右方向の中間の位置)に、第1案内片64を前後方向に貫通するように穿孔されている。本実施形態の第1前後ガイド部62は円形に開口している。第1前後ガイド部62の開口径は固定ピン58の外径よりも大きく形成されており、固定ピン58を前後方向に移動自在に案内している。
【0062】
図9図10図13に示すように、上下貫通部67は、中間支持板83における前後方向の中途部に形成されている。上下貫通部67は、中間支持板83における切欠部66の後方であって、中間支持板83における前後方向の中途部に、上下方向に中間支持板83を貫通するように形成されている。本実施形態の上下貫通部67は、前後方向及び左右方向に沿った開口幅が、係合部材51の前後方向及び左右方向に沿った寸法(外寸)より大きくなるように形成されており、係合部材51の上端を中間支持板83の下方から上方に向けて案内(露出)可能となっている。つまり、固定ピン58と係合する係合部材51の上端は、上下貫通部67を通して中間支持板83の上方に露出させることができる。
【0063】
図9図10に示すように、上下貫通部67の前縁には、固定ピン58を前後方向に案内する第2案内片65が形成されている。第2案内片65は、上下貫通部67の前縁から下方に向かって垂れ下がる板部材である。第2案内片65の中央(第2案内片65における上下方向の中間であって、左右方向の中間の位置)には固定ピン58を前後方向に案内
する第2前後ガイド部63が形成されている。
【0064】
第2前後ガイド部63は、第2案内片65の中央に、第2案内片65を前後方向に貫通するように穿孔されている。本実施形態の第2前後ガイド部63は円形に開口している。第2前後ガイド部63の開口径は固定ピン58の外径よりも大きく形成されており、固定ピン58を前後方向に案内自在となっている。
【0065】
固定ピン58は、前後方向に距離をあけて配備された第1前後ガイド部62及び第2前後ガイド部63の双方に挿通されることで、前後方向に沿って直線状にぶれなく案内される。
【0066】
図10図13に示すように、上述した固定ピン58には、係合解除レバー61の引動操作時に、係合解除レバー61が固定ピン58の軸心回りに回動することを防止する回動防止機構68が設けられている。
【0067】
係合解除レバー61が固定ピン58の軸心回りに回動すると、固定ピン58と共に回動する部分が中間支持板83等の他部材と摺れて塗装の剥がれの摺り跡がつき、外観が損なわれる不具合が生じるおそれがある。回動防止機構68は、この不具合の発生を防止する機能を有している。
【0068】
回動防止機構68は、係合解除レバー61に固定されて、係合解除レバー61と一体的に回動する回動板69を備えている。回動板69は、係合解除レバー61の後方に位置する固定ピン58に取り付けられている。
【0069】
回動板69は、係合解除レバー61の後方の固定ピン58に取り付けられた板部材である。回動板69は、固定ピン58に固定されて、固定ピン58と一体に回動可能となっている。回動板69は、切欠部66の下方から上方に向けて延びる第1部位69aと、第1部位69aの上端から後方に向けて延びる第2部位69bと、を有している。
【0070】
第1部位69aは、前後方向に延びる固定ピン58に対して、上下方向に沿って交差状に配置された板部材である。第1部位69aは、固定ピン58に溶接などで固定されており、固定ピン58と一体に回動可能となっている。
【0071】
第2部位69bは、前後方向に延びる板部材であり、上下の両方向に板面を向けるように設けられている。第2部位69bの前端は第1部位69aの上端に連設されており、第1部位69aが回動すると第2部位69bも第1部位69aと一体に固定ピン58の軸心回りを回動可能となっている。第2部位69bの下面70は、中間支持板83の上面83aに面状態で接触している。
【0072】
第2部位69bの下面70に面状態で接触する中間支持板83の上面83aは、回動板69(第2部位69b)に対して面接触することにより回動板69の回動を規制する回動規制部とされている。
【0073】
なお、第2部位69bの下面70と中間支持板83の上面83aとは、運転席6と上下方向において重なる位置において面接触しているのが好ましい。運転席6と上下方向において重なる位置で面接触すれば、摺り跡などが出やすい接触箇所(回動板69と中間支持板83とが接触する箇所)が外から視認しにくくなる。その結果、摺り跡などが目立たなくなり、運転席6周辺の外観を良好なものにすることが可能となる。
【0074】
図11に示すように、係合部材51は、第1カバー体101Aの上壁101Ab(支持板)の上面に、上方へ向かって突出するように形成されている。係合部材51は、上壁101Ab(支持板)の上面から上方に延びる第1板部71と、第1板部71の上端から前下方に向けて傾斜状に延びる第2板部72と、を有する。言い換えれば、係合部材51は、上端において折り曲げられた状態で(山状に)連結された第1板部71と第2板部72を有している。つまり、係合部材51は、略逆V字形の部材である。第1板部71と第2板部72との連結部分は、曲面状に形成されている。
【0075】
図10に示すように、上壁101Ab(支持板)の上面に対する第2板部72の角度αは、上壁101Ab(支持板)の上面に対する第1板部71の角度βよりも大きい。詳しくは、角度αは鈍角であり、角度βは直角又は略直角である。角度αは、例えば、100°~130°に設定することができる。
【0076】
係合部材51は、上壁101Ab(支持板)の上面に固定されている。詳しくは、第1
板部71及び第2板部72は、上壁101Ab(支持板)の上面に固定されている。このように、第1板部71と第2板部72の両方が上壁101Ab(支持板)の上面に固定されることによって、略逆V字形の係合部材51の両端が上壁101Ab(支持板)の上面に固定される。これにより、係合部材51の剛性が向上し、固定ピン58が係合部材51に接触したときに、係合部材51が変形することを防止できる。
【0077】
係合部材51の第1板部71は、固定ピン58が後方に移動することを規制可能となっている。これに対して、係合部材51の第2板部72は、固定ピン58の先端部が前後方向に挿通することを許容する係合穴59を備えている。つまり、固定ピン58の先端部は、第2板部72の係合穴59を通過し、第1板部71に接触した状態で、係合部材51に係合する。その結果、固定ピン58は、第2板部72の係合穴59に挿通されて、上下方向への移動が規制される。また、固定ピン58は、第1板部71に接触することで、後方への移動が規制される。
【0078】
固定ピン58の先端が係合穴59に挿通されることによって、固定ピン58が係合部材51に係合される。固定ピン58が係合部材51に係合されると、運転席6の上方への揺動が規制される。つまり、係合部材51は、固定ピン58の先端と係合することによって運転席6の上方への揺動を規制する係合穴59を有する。これに加えて、係合部材51は、係合部材51が設けられた位置よりも後方に固定ピン58が移動することを規制している。つまり、係合部材51は、固定ピン58の後端位置を係合部材51の設置位置に位置決めしている。
【0079】
図11に示すように、本実施形態の第2板部72は、先端(下端)に向かうにつれて2又状に分岐した板部材である。言い換えれば、第2板部72は、先端(下端)から上方に向けてU字状に切り欠かれた切り欠きを有している。第2板部72の先端(下端)が上壁101Ab(支持板)の上面に固定されることによって、この切り欠きが係合穴59となる。つまり、このような切り欠きを第2板部72に形成することによって、第1板部71に対して第2板部72を下方に折り返して、係合部材51を上壁101Abの上面に固定するだけで、上壁101Abの上面との間に固定ピン58の先端を挿入可能な係合穴59を簡単に形成することができる。
【0080】
図10に示すように、付勢部材60は、固定ピン58の前後方向の中途部に取り付けられた弾性部材である。本実施形態の付勢部材60には、ばね部材(コイルばね)が用いられている。付勢部材60は、前後方向に伸縮自在となるように配置されている。
【0081】
付勢部材60の後端は、固定ピン58に取り付けられたバネ取付具73に固定されている。バネ取付具73は、固定ピン58の前後方向の中途部に取り付けられている。これにより、付勢部材60の後端は、固定ピン58の前後方向の中途部に固定されている。
【0082】
付勢部材60の前端は、中間支持板83に垂下状に設けられた第1案内片64に固定されている。これにより、付勢部材60は、固定ピン58と第1案内片64(中間支持板83)との間に挟まれた状態で前後方向の付勢力を発生可能となっている。ここで、第1案内片64の位置は固定されているため、付勢部材60の付勢力は固定ピン58を後方に移動させる力として作用する。
【0083】
図10に示すように、付勢部材60は、付勢力が前方にも後方にも発生しない中立位置を有している。つまり、付勢部材60を構成するコイルばねは、図9に示す状態では伸縮していない自然長の状態にある。本実施形態の付勢部材60の中立位置は、固定ピン58の先端部が係合部材51の係合穴59に挿し込まれる位置(係合状態RSとなる位置)とされている。ここで、固定ピン58の先端部が係合穴59に係合した状態(係合状態RS)から、固定ピン58を前方に引き抜く場合を考える。この場合、固定ピン58の位置が中立位置の前方に遷移するので、付勢部材60を構成するコイルばねが自然長から短縮することにより、固定ピン58には後方に向かって復元する方向(進出方向)に付勢力が発生する。つまり、付勢部材60は、固定ピン58に対して係合状態RSに復元する方向の付勢力を付与している。これにより、固定ピン58は、運転席6が上方に揺動していない状態では、外力(オペレータによる引っ張り力)が加わらない限り、先端部が係合部材51の係合穴59に挿し込まれる位置(中立位置)となる。
【0084】
図10に示すように、係合部材51の第2板部72には、固定ピン58を係合状態RSに復元する方向に作用する付勢力に抗して、固定ピン58を退出位置P2の方向に移動させる案内面74が形成されている。本実施形態の場合、案内面74は、第2板部72における係合穴59の上方に、後部上方に向かって傾斜する傾斜面状に形成されている。案内面74には、固定ピン58の先端部が点接触又は線接触する。
【0085】
図12に、案内面74に対して固定ピン58の先端部が点接触又は線接触する具体例を示す。図12(a)は、固定ピン58の先端部が案内面74に対して線接触する例を示している。図12(b)は、固定ピン58の先端部が案内面74に対して点接触する例を示している。
【0086】
図12(a)に示すように、係合部材51の案内面74は、後部上方に向かって傾斜した平坦面として形成されている。シート支持部の上面(上壁101Ab)に対する案内面74の傾斜角度は、θ1とされている。角度θ1と上述した角度αとの関係は、θ1=180-αである。
【0087】
固定ピン58の先端部は、面取部75を有している。面取部75は、固定ピン58の先端部をカットすることで形成される。固定ピン58の先端部をどのような形状に沿ってカットするかによって、面取部75は複数の態様を備える。
【0088】
図12(a)に示す面取部75は、固定ピン58の先端部の下部を平面状にカットして形成されている。つまり、図12(a)の固定ピン58の先端部は平面状の面取部75を有する。図12(a)の平面状の面取部75は、先端部の下部のみを平面状にカットしたものであるが、先端部を円錐状又は円錐台状にカットしてテーパ状の面取部75を形成してもよい。
【0089】
図12(a)に示すように、平面状の面取部75は、固定ピン58の軸心に沿って見たときのシート支持部(上壁101Ab)の上面に対して、傾斜角度(θ2)を有する。なお、図12(a)には図示していないが、テーパ状の面取部75も、先端部の下部については同じ傾斜角度(θ2)である。平面状またはテーパ状の面取部75の傾斜角度(θ2)は、運転席6の揺動により変化する。つまり、運転席6が揺動すると、固定ピン58の傾斜角度が変化する。固定ピン58の傾斜角度が変わると、固定ピン58に形成された面取部75の傾斜角度(θ2)も、シート支持部(上壁101Ab)の上面に対して変化する。
【0090】
図12(a)の断面図では、面取部75の先端が、案内面74の上部における面上の一点で係合部材51の第2板部72に当接する。運転席6が「跳ね上げ姿勢S」から「水平姿勢H」に揺動すると、固定ピン58の軸心に沿って見たときのシート支持部の上面(上壁101Ab)に対する傾斜角度(θ2)は小さくなる方向に変化する。傾斜角度(θ2)の変化と同時に、面取部75の先端の位置は前方に移動し、面取部75の先端は案内面74の上部から下部に向かってスライドするように移動する。図12(a)に示すように、面取部75の先端が案内面74の上部に位置する場合、傾斜角度(θ2)が傾斜角度(θ1)より明らかに小さい。運転席6の揺動により傾斜角度(θ2)は傾斜角度(θ1)よりさらに小さくなるため、面取部75の先端は案内面74の上部から下部に向かってスライドする範囲内(固定ピン58の揺動範囲)では、傾斜角度(θ2)が傾斜角度(θ1)と一致することはない。
【0091】
図12(a)を具体例に挙げれば、傾斜角度(θ1)は45°であり、(固定ピン58の揺動前の段階で)傾斜角度(θ2)は45°より小さくなっている。固定ピン58が揺動すると、傾斜角度(θ2)が図12(a)の角度よりさらに小さく変化する。面取部75の先端が案内面74に接触する限りは、傾斜角度(θ2)は0°になることはない。つまり、傾斜角度(θ2)は、固定ピン58の先端部と案内面74とが当接する揺動範囲内において10°<θ2<45°の範囲で変化し、(θ1)≠(θ2)の関係が必ず成立する。
【0092】
このように傾斜角度(θ1)との間に「(θ1)≠(θ2)」の関係が成立するような傾斜角度(θ2)に面取部75を形成すれば、運転席6が揺動しても案内面74に対して面取部75の先端は接触し続ける。なお、平面状の面取部75が案内面74に接触している
状態を示した図12(a)の断面図では、案内面74に対して面上の一点で当接しているように見える。しかし、実際には断面の左右方向にも当接点が連なるので、案内面74と面取部75とは互いに線接触する。これは、案内面74と面取部75とが、互いに傾斜角度が異なる平面同士の接触である点を考えれば、案内面74と面取部75とが線接触することは容易に理解できる。
【0093】
また、図12(a)の断面図がテーパ状の面取部75が案内面74に接触している状態を示したものと考えた場合、案内面74と面取部75とは曲面と平面との接触であるため、案内面74と面取部75とは点接触する。この場合、図12(a)は案内面74と面取部75との接点を通る切断面に沿って切断した断面図と考えることができる。
【0094】
図12(b)に示すように、係合部材51の案内面74は、図12(a)の場合と同様に後部上方に向かって傾斜した平坦面として形成されている。図12(b)が図12(a)と異なるのは、固定ピン58の先端部が曲面状の面取部75を有している点である。つまり、図12(b)の場合、固定ピン58の先端部は、丸面取りされており、固定ピン58の先端部は半球面状に形成されている。なお、面取部75の曲面には、略円錐台状又は略円錐状の曲面も含まれる。
【0095】
このような曲面状の面取部75は、平面状の案内面74に対して、曲面の一部(面取部75の一部)で点接触する。面取部75のどの部分が案内面74に接触するかは、面取部75の曲率、案内面74の傾斜角度(θ1)などによって変化する。面取部75の曲面上の点のうち、接線の角度が案内面74の傾斜角度(θ1)と一致する点で曲面状の面取部75は平面状の案内面74と点接触する。
【0096】
図12(a)及び図12(b)に示すように固定ピン58の先端部が案内面74に対して点接触又は線接触した場合、固定ピン58の先端部と案内面74とが面接触する場合に比べて接触面積が小さくなる。その結果、面取部75と案内面74との間に生じる摩擦力を低下させることができ、傾斜した案内面74に沿って固定ピン58を支障なく移動できる。言い換えれば、固定ピン58の先端部を案内面74に沿って移動させようとしたときに、固定ピン58と案内面74との摩擦力によって移動が阻害されることがない。これにより、固定ピン58を案内面74により退出方向に押し戻しやすくなる。そのため、運転席6の自重によってシートロック構造50を非係合状態USから係合状態RSにして運転席6を機体(ボンネット14)に対して確実に固定することができる。
【0097】
次に、本実施形態のシートロック構造50を用いて運転席6をボンネット14の上面に固定する手順(言い換えれば、シートロック構造50を用いた運転席6の固定方法)、及び運転席6の固定を解除する手順(言い換えれば、シートロック構造50を用いた運転席6の固定解除方法)について説明する。
【0098】
図15(a)では、シートロック構造50は非係合状態USである。図15(a)に示すように、本実施形態のシートロック構造50を用いて運転席6をボンネット14の上面に固定する場合は、中間支持板83及び中間支持板83の上面に設けられた運転席6の後部を下方に揺動させる。この揺動は、運転席6の自重によって行われてもよいし、自重に加えてオペレータが運転席6を押し下げる力を加えて行われてもよい。運転席6の前部には、支軸54cが設けられており、運転席6の後部は左右方向を向く支軸54c回りに下方に揺動する。
【0099】
中間支持板83の後部を支軸54c回りに下方に揺動させると、固定ピン58の先端部が係合部材51の案内面74の上部に接触する。固定ピン58の先端部が案内面74に点接触する場合は、固定ピン58の先端部と案内面74との間に発生する摩擦力は面接触の場合よりも小さくなる。それゆえ、固定ピン58の先端部が傾斜した案内面74に沿って容易に前下方にスライドし、固定ピン58は付勢部材60の付勢力に抗して前方に移動する。
【0100】
なお、固定ピン58の先端部が角面取りされており、面取部75の傾斜角度(θ2)と案内面74の傾斜角度(θ1)とが異なる場合には、面取部75と案内面74とが線接触する。線接触する場合も、固定ピン58の先端部と案内面74との間に発生する摩擦力は面接触の場合よりも小さくなる。それゆえ、固定ピン58の先端部が傾斜した案内面74
に沿って容易に前下方にスライドし、固定ピン58は付勢部材60の付勢力に抗して前方に移動する。
【0101】
図15(b)に示すように、固定ピン58の先端部が傾斜した案内面74の下端までスライドし、スライドに伴って固定ピン58が前方に移動すると、付勢部材60が最も短縮した状態となるため。付勢部材60に最も大きな付勢力が発生する。
【0102】
図15(c)に示すように、固定ピン58の先端部が傾斜した案内面74の下方までスライドすると、固定ピン58を前方に移動させる案内面74が存在しなくなる。つまり、固定ピン58の先端部が係合穴59に達する。そのため、付勢部材60に発生した付勢力の作用で、固定ピン58の移動方向が切り換わる。その結果、固定ピン58は係合穴59を通って退出位置P2から進出位置P1に移動する。
【0103】
図15(d)に示すように、進出位置P1に移動した固定ピン58の先端部は、係合穴59に挿入され、固定ピン58が係合部材51の係合穴59に係合される。その結果、固定ピン58が設けられた中間支持板83と、中間支持板83に支持された運転席6とが、係合部材51が設けられた上壁101Abに固定される。このようにして、シートロック構造50は非係合状態USから係合状態RSに切り換わる。
【0104】
図16(a)では、シートロック構造50は係合状態RSであり、固定ピン58の位置は進出位置P1から少し前方に移動した位置である。図16(a)に示すように、本実施形態のシートロック構造50を用いて運転席6の固定を解除する場合は、図15(d)に示した状態から、オペレータが係合解除レバー61を前方に引き、この係合解除レバー61の引動操作によって係合解除レバー61に接続された固定ピン58を進出位置P1から退出位置P2まで移動させる。
【0105】
図16(b)に示すように、固定ピン58が退出位置P2まで移動すると、固定ピン58の先端部が係合穴59の外に抜け出る。これにより、運転席6の固定が解除される。
【0106】
図16(c)に示すように、固定ピン58の先端部が係合穴59の外に抜け出た状態で運転席6及び中間支持板83の後部を上方に揺動させると、係合穴59の外に抜け出た固定ピン58の先端部は、係合穴59の上部に隣接する案内面74に接触する。案内面74は、後方上部に向かって傾斜しており、固定ピン58の先端部は案内面74に対して点接触又は線接触している。そのため、付勢部材60の付勢力により、固定ピン58の先端部が案内面74の上を案内面74の傾斜方向に沿って(後部上方に向かって)移動する。
【0107】
図16(d)に示すように、固定ピン58の先端部が案内面74の上方に位置した状態から運転席6の後部を更に上方に揺動させると、固定ピン58は付勢部材60が自然長に戻るまで後方に移動する。このようにして、シートロック構造50は係合状態RSから非係合状態USに切り換わる。
【0108】
本発明のシートロック構造50は、シート支持部(上壁101Ab)に対して水平方向の軸心回りに揺動自在に配置された運転席6を、シート支持部に対する揺動が規制された状態で固定するシートロック構造50であって、運転席6の底面6Cに配備され、進出位置P1と退出位置P2との2点間を移動する固定ピン58と、シート支持部の上面に配備され、進出位置P1で固定ピン58と係合する係合部材51と、固定ピン58を進出位置P1に移動する方向に付勢する付勢力を付与する付勢部材60と、を備え、係合部材51は、固定ピン58が進出位置P1にあるときに挿入されることにより運転席6の上方への揺動を規制する係合穴59と、運転席6を下方に揺動させたときに進出位置P1にある固定ピン58の先端部と接触し、運転席6の下方への揺動に伴って固定ピン58を付勢力に抗して退出位置P2の方向に移動させつつ先端部を係合穴59まで案内する傾斜状の案内面74と、を有しており、固定ピン58の先端部は、案内面74に対して点接触又は線接触する。
【0109】
上記の構成によれば、固定ピン58の先端部は、案内面74に対して点接触又は線接触しているため、先端部と案内面74との間に発生する摩擦力は小さい。それゆえ、案内面74に接触した固定ピン58の先端部は、案内面74に沿って容易に移動し、係合穴59まで案内される。そのため、本発明のシートロック構造50では、運転席6を機体2に対して容易に固定することができる。また、係合部材51がシート支持部側に設けられ、固
定ピン58が運転席6側に設けられているので、係合部材51が運転席6側に設けられている場合に比べて係合部材51が他の部材と接触するなどして変形することを抑制できる。
【0110】
シートロック構造50は、係合部材51の下方に配置された支持板(上壁101Ab)を備え、係合部材51は、支持板の上面から上方に延びる第1板部71と、第1板部71の上端から前方且つ下方に向けて延びると共に案内面74及び係合穴59を有する第2板部72と、を有し、第1板部71及び第2板部72は、支持板の上面に固定されている。
【0111】
これによれば、第1板部71と第2板部72の両方が支持板(上壁101Ab)の上面に固定されることによって、係合部材51の剛性が向上し、固定ピン58が係合部材51に接触したときに、係合部材51が変形することを防止できる。
【0112】
また、係合部材51に設けられる2部材のうち、第2板部72が第1板部71の前方(退出位置P2に近い位置)に位置している。それゆえ、固定ピン58を進出位置P1(後方)に向かって水平に移動させると、固定ピン58の先端部はまず第2板部72の係合穴59に挿入される。固定ピン58をさらに後方に移動させると、固定ピン58の先端部が第1板部71に接触する。第1板部71には第2板部72のように係合穴59は設けられておらず、第1板部71により固定ピン58の前方移動が規制される。つまり、上述した係合部材51は、係合穴59に係合することで固定ピン58を上壁101Ab(支持板の上面)に上下揺動しないように固定する機能と、第1板部71に接触することで固定ピン58の前方移動を規制する機能(第1板部71に接触する位置に固定ピン58の先端部を位置決めする機能)を兼ね備えている。
【0113】
固定ピン58の先端部は、平面状またはテーパ状の面取部75を有しており、シート支持部の上面(上壁101Ab)に対する案内面74の傾斜角度(θ1)と、水平方向の軸心に沿って見たときのシート支持部の上面に対する面取部75の傾斜角度(θ2)とが、運転席6の揺動に伴って固定ピン58の先端部と案内面74とが当接する揺動範囲内において互いに異なっており、面取部75の先端が案内面74に当接する。
【0114】
これによれば、固定ピン58の先端部に設けられる接触面75は、係合部材51の案内面74に対して線接触または点接触するので、面同士が接触する場合に比べて、摩擦力が小さくなる。これにより、固定ピン58の先端部は案内面74に沿って移動が容易になる。その結果、固定ピン58の先端部が案内面74に接触した場合に、固定ピン58を進出位置P1に移動させることが容易となり、シートロック構造50の係合をスムーズ且つ簡単に行うことができる。
【0115】
固定ピン58の先端部は、曲面状の面取部を有しており、前記面取部の一部が案内面74に対して点接触していてもよい。
【0116】
これによれば、曲面状に形成された固定ピン58の先端部は、係合部材51の案内面74に対して点接触する。このような点接触は、面同士が接触する場合や線接触の場合に比べて、さらに摩擦力が小さくなる。これにより、固定ピン58の先端部は案内面74に沿って移動が容易になる。その結果、固定ピン58の先端部が案内面74に接触した場合に、固定ピン58を進出位置P1に移動させることが容易となり、シートロック構造50の係合をスムーズ且つ簡単に行うことができる。
【0117】
シートロック構造50は、固定ピン58と接続され、引動操作によって固定ピン58を進出位置P1から退出位置P2まで移動させる係合解除レバー61と、引動操作時において係合解除レバー61が固定ピン58の軸心回りに回動することを防止する回動防止機構68と、を備えている。
【0118】
これによれば、オペレータが係合解除レバー61を掴んで引動することで、付勢部材60の付勢力に抗して固定ピン58を進出位置P1から退出位置P2まで移動させることができる。また、係合解除レバー61を掴んだ際に、係合解除レバー61が固定ピン58の軸心回りに回動することを防止できる。係合解除レバー61が固定ピン58の軸心回りに回動すると、固定ピン58と共に回動する部分が中間支持板83等の他部材と摺れて塗装の剥がれの摺り跡がつき、外観が損なわれる不具合が生じるおそれがあるが、回動防止機構68によって、この不具合の発生を防止できる。
【0119】
回動防止機構68は、係合解除レバー61に固定されて係合解除レバー61と一体的に回動する回動板69と、回動板69に対して面接触することにより回動板69の回動を規制する回動規制部と、を有している。
【0120】
このような回動防止機構68を採用すれば、係合解除レバー61に固定されて係合解除レバー61と一体的に回動する回動板69が、回動規制部に対して面接触することで、回動板69の回動を確実に規制することができる。つまり、上述した回動防止機構68を用いることで、係合解除レバー61の回動を簡便且つ確実に抑制することができる。
【0121】
運転席6の下方には、運転席6の底面から下方に離間した位置に中間支持板83が配備されており、中間支持板83に回動規制部が形成されている。
【0122】
これによれば、第2部位69bの下面70に中間支持板の上面83aを面状態で接触させることで、回動板69や係合解除レバー61の回動をさらに簡便且つ確実に抑制することができる。
【0123】
回動板69の上端は、中間支持板83の上方に突出しており、回動規制部は、中間支持板83の前端から後方に向かって切り欠かれた切欠部66から構成されており、回動板69は、切欠部66の下方から上方に向けて延びる第1部位69aと、第1部位69aの上端から後方に向けて延びる第2部位69bと、を有し、第2部位69bの下面が中間支持板83の上面83aと面接触している。
【0124】
このように中間支持板83の前端に切欠部66を形成すれば、切欠部66を利用して回動板69の回動を規制することができる。つまり、回動板69として、切欠部66の下方から上方に向けて延びる第1部位69aと、第1部位69aの上端から後方に向けて延びる第2部位69bとを備えたものを用いれば、切欠部66の開口縁と第1部位69aの左右両端とが接触しあうことによって回動板69の回動をまず規制することができる。加えて、第2部位69bの下面が中間支持板83の上面83aと面接触することによっても回動板69の回動を規制することができる。これにより、回動板69の回動をより確実に規制することができる。
【0125】
第2部位69bの下面70と中間支持板83の上面83aとは、運転席6と上下方向において重なる位置において面接触している。
【0126】
このように運転席6と上下方向において重なる位置で、第2部位69bの下面70と、中間支持板83の上面83aとが面接触するのであれば、第2部位69bの下面70と中間支持板83の上面83aとが面接触する接触箇所が外から視認しにくくなる。接触箇所は摺り跡などが生じやすいため、摺り跡などが外部から視認し難くなると、運転席6の周辺の外観を良好なものに維持することが容易となる。
【0127】
固定ピン58は、中間支持板83の下部に取り付けられており、中間支持板83には、固定ピン58と係合する係合部材51の上端を、中間支持板83の上方に向けて露出させる上下貫通部67が形成されている。
【0128】
これによれば、係合部材51は上下貫通部67から上端を上方に露出させることができるため、中間支持板83の位置(設置高さ)を支持板(上壁101Ab)に近づけても、係合部材51の上端が中間支持板83に接触することがない。そのため、中間支持板83の位置(設置高さ)に関係なく、係合部材51の高さを十分に確保することができる。言い換えれば、係合部材51として、係合穴59や案内面74に十分な上下方向の寸法を確保できるので、固定ピン58の固定や固体解除を確実に行うことが可能となる。
【0129】
本発明の作業機1は、オペレータが着座する運転席6と、運転席6を支持するシート支持部(上壁101Ab)と、上述したシートロック構造50と、を備えている。
【0130】
このような作業機1であれば、運転席6をシート支持部に揺動が規制された状態で容易に固定することができる。
【0131】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0132】
1 作業機
6 運転席
6C 底面
14 ボンネット
50 シートロック構造
51 係合部材
58 固定ピン
59 係合穴
60 付勢部材
61 係合解除レバー
66 切欠部
67 上下貫通部
68 回動防止機構
69 回動板
69a 第1部位
69b 第2部位
70 下面
71 第1板部
72 第2板部
74 案内面
75 面取部
83 中間支持板
83a 上面
91 原動機
101Ab 上壁(支持板、シート支持部)
P1 進出位置
P2 退出位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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図16