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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025068839
(43)【公開日】2025-04-30
(54)【発明の名称】カルボニル基含有化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/16 20060101AFI20250422BHJP
【FI】
C08J11/16 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178874
(22)【出願日】2023-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】508067736
【氏名又は名称】マイクロ波化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】栗原 英資
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA22
4F401AA24
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401EA43
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を消費して別の物質に変換する新たな技術を提供する。
【解決手段】有機化合物を含む材料を、二酸化炭素供給源が供給された熱分解系に供し、前記有機化合物と気体状の二酸化炭素とを原料とした熱分解反応により、前記二酸化炭素をカルボニル基含有化合物混合物として変換する工程を含む、二酸化炭素の反応方法によって、二酸化炭素ガスを変換消費できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物を含む材料を、二酸化炭素源が供給された熱分解系に供し、前記有機化合物と気体状の二酸化炭素とを原料とした熱分解反応により、前記二酸化炭素を消費しカルボニル基含有化合物を得る工程を含む、カルボニル基含有化合物の製造方法。
【請求項2】
前記有機化合物を含む材料が、ポリオレフィンを含むポリマー材料である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記熱分解系を構築する加熱条件が電磁波照射により与えられる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記電磁波がマイクロ波である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記熱分解系を構築する加熱条件が200~1000℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記二酸化炭素源が、気体状の二酸化炭素を含み、前記熱分解系で前記原料として用いられる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記二酸化炭素源としての気体状の二酸化炭素が、前記熱分解系雰囲気の30体積%以上を占めるように供給される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記二酸化炭素源が、炭酸塩及び/又は二酸化炭素吸収材を含み、前記熱分解系で、前記炭酸塩を熱分解し前記原料としての気体状の二酸化炭素を発生させ、及び/又は、前記二酸化炭素吸収材から前記原料としての気体状の二酸化炭素を放出させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記熱分解反応中の前記熱分解系の雰囲気が常圧である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ポリマー材料が廃棄物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/又はポリスチレンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ポリマー材料が、さらに、ポリエステル、ポリアミド、及び多糖類からなる群より選択される他の高分子化合物を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の製造方法によって得られる、カルボニル基含有化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボニル基含有化合物の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、有機化合物の熱分解時において、原料に二酸化炭素ガスを利用し、カルボニル基が導入された低分子化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素濃度が上昇して、急激な地球温暖化が懸念されている。二酸化炭素濃度の上昇は化石燃料の燃焼によるものが大きいため、化石燃料の使用を減らすための取り組みが必要とされている。化石燃料に代わるエネルギー源として、原子力及び自然(光、風、波等)エネルギーが試みられているものの、原子力については廃棄物の処理問題が、自然エネルギーに関しては設備投資及びエネルギー供給の不安定性の問題があり、これらのエネルギーへのシフトは容易ではない。このため、多くの先進国における一次エネルギー構成比率において、化石燃料への依存度は依然として高いままである。
【0003】
このような世界的な化石燃料依存体質に鑑み、二酸化炭素を産業原料として使用する例が存在する。例えば、二酸化炭素を化学原料又は工業原料に使用する例として、尿素の製造、メタノールへの転換原料、無機炭酸塩の原料、有機炭酸塩の原料、ポリウレタンの製造等がある。また、二酸化炭素を食品原料に使用する例として、炭酸飲料の製造がある。しかしながらこれらの用途のみでは効果的な二酸化炭素の削減は期待できない。そこで、非特許文献1に、大気中の二酸化炭素を集め、回収・貯留(CCS)する試みが提案されているが、保管場所などの課題があり、まだ実用化のハードルは高い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Renewable and Sustainable Energy Reviews, (2014), 39, 426
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでの二酸化炭素の使用方法のみでは、二酸化炭素の効果的な削減は期待できない。そこで、本発明は、二酸化炭素を別の物質に変換することにより消費する(以下において、二酸化炭素の「変換消費」とも記載する。)新たな技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、有機化合物の熱分解時に二酸化炭素をガス状で接触させることにより、有機化合物の分解物にカルボニル基が導入され、これにより、二酸化炭素が消費されてカルボニル化合物に変換されることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 有機化合物を含む材料を、二酸化炭素源が供給された熱分解系に供し、前記有機化合物と気体状の二酸化炭素とを原料とした熱分解反応により、前記二酸化炭素を消費しカルボニル基含有化合物を得る工程を含む、カルボニル基含有化合物の製造方法。
項2. 前記有機化合物を含む材料が、ポリオレフィンを含むポリマー材料である、項1に記載の製造方法。
項3. 前記熱分解系を構築する加熱条件が電磁波照射により与えられる、項1又は2に記載の製造方法。
項4. 前記電磁波がマイクロ波である、項3に記載の製造方法。
項5. 前記熱分解系を構築する加熱条件が200~1000℃である、項1~4のいずれかに記載の製造方法。
項6. 前記二酸化炭素源が、気体状の二酸化炭素を含み、前記熱分解系で前記原料として用いられる、項1~5のいずれかに記載の製造方法。
項7. 前記二酸化炭素源としての気体状の二酸化炭素が、前記熱分解系雰囲気の30体積%以上を占めるように供給される、項6に記載の製造方法。
項8. 前記二酸化炭素源が、炭酸塩及び/又は二酸化炭素吸収材を含み、前記熱分解系で、前記炭酸塩を熱分解し前記原料としての気体状の二酸化炭素を発生させ、及び/又は、前記二酸化炭素吸収材から前記原料としての気体状の二酸化炭素を放出させる、項1~7のいずれかに記載の製造方法。
項9. 前記熱分解反応及び二酸化炭素導入反応中の前記熱分解系の雰囲気が常圧である、項1~8のいずれかに記載の製造方法。
項10. 前記ポリマー材料が廃棄物である、項1~8のいずれかに記載の製造方法。
項11. 前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/又はポリスチレンである、項1~10のいずれかに記載の製造方法。
項12. 前記ポリマー材料が、さらに、ポリエステル、ポリアミド、及び多糖類からなる群より選択される他の高分子化合物を含む、項1~11のいずれかに記載の製造方法。
項13. 項1~12のいずれかに記載の製造方法によって得られる、カルボニル基含有化合物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二酸化炭素を別の物質に変換することにより消費する新たな技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のカルボニル基含有化合物の製造方法は、有機化合物を、二酸化炭素源が供給された熱分解系に供し、前記有機化合物と気体状の二酸化炭素とを原料とした熱分解反応により、前記二酸化炭素を消費しカルボニル基含有化合物混合物を得る工程を含むことを特徴とする。以下、本発明のカルボニル基含有化合物の製造方法について詳述する。
【0010】
[1.有機化合物を含む材料]
本発明では、二酸化炭素をカルボニル化合物の形態で固定化することで消費するため、固定化対象源として有機化合物を用いる。
【0011】
有機化合物としては、熱分解系で分解可能なものであれば特に限定されず、ポリマー及びオリゴマーが含まれる。また、有機化合物の由来については特に限定されないため、有機化合物は、合成物であってもよいし、天然物(天然物を原料とした加工品を含む)であってもよい。
【0012】
合成物としては、合成ポリマー(プラスチックモノマーの重合度が100以上)及び合成オリゴマー(プラスチックモノマーの重合度が2以上100未満)が挙げられる。
【0013】
合成ポリマーの具体例としては、ポリオレフィン(PO)、ポリエステル(PEs)、ポリアミド(PA)等のプラスチックが挙げられる。ポリオレフィンとしては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)が挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。ポリアミドとしては、ナイロン6(Ny6)、ナイロン66(Ny66)、及びアラミド等が挙げられる。
【0014】
合成オリゴマーとしては、上記の合成ポリマーの部分分解物、及び上記合成ポリマーの材料が挙げられる。
【0015】
天然物としては、多糖類(単糖の繰り返し単位が20以上)及びオリゴ糖(単糖の繰り返し単位が2以上20未満)が挙げられる。
【0016】
多糖類としては、セルロース及びでんぷん等が挙げられる。オリゴ糖としては、当該多糖類の部分分解物等が挙げられる。
【0017】
本発明の一形態において、これらの有機化合物の中から1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明の好ましい一形態において、有機化合物にはポリマーを含む。なお、本発明において有機化合物がポリマーを含む場合、有機化合物を含む材料を特にポリマー材料とも記載する。
【0019】
ポリマー材料の好ましい態様は、廃棄物である。廃棄物は、企業から排出される産業廃棄物であってもよいし、家庭ゴミなどのいわゆる一般廃棄物であってもよい。また、廃棄物は、使用済品及び未使用品を問わない。廃棄物の具体例としては、製品の製造工程で生じるトリム(端材)、オフスペック品、市場に流通した製品の回収物、食品残渣等が挙げられる。
【0020】
従って、ポリマー材料の構成物のうち、プラスチックのより具体的な態様としては、触媒を含む純プラスチック;プラスチックコンパウンド(紫外線吸収剤等の安定剤及び/又は着色剤等の添加物を含むもの);成型加工された各種プラスチック製品(例えば、自動車のバンパー、ドアハンドル、タイヤハウス、ワイヤーハーネス、フィルム等);プラスチックボトル(さらに、ボトルと異素材のキャップが取付けられた、及び/又は、ボトルと異素材のラベルが貼り付けられた状態のものも含む);合成繊維束(表面が収束剤で処理されたものも含む);合成繊維の衣類(フリース、シャツ、ジャージ、ストッキング、手袋等)等が挙げられる。
【0021】
また、ポリマー材料の構成物のうち、多糖類のより具体的な態様としては、綿花から取り出したセルロース繊維、木材(セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含むセルロース混合体)、粉状でんぷん(とうもろこし、ジャガイモ由来)、でんぷん糊、紙(ダンボール紙、印画紙等)、残飯食品(飯、ジャガイモ等)が挙げられる。
【0022】
有機化合物を含む材料の性状は、有機化合物の分子量及び種類、並びに材料組成に応じて定まるため特に限定されず、例えば液体、半固体(ペースト状等)及び固体が挙げられる。固体のポリマー材料は、比表面積が大きくなるよう、粉砕又は裁断した形態で用いることが好ましい。粉砕又は裁断した形態の具体例としては、ポリマー材料のもとの形態が塊状の場合は、最長径20mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下の粒状が挙げられ;ポリマー材料のもとの形態がフィルム状の場合は、最長径20mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下のフレーク状が挙げられ;ポリマー材料のもとの形態が繊維状の場合は、好ましくは単繊維にほぐした状態で、繊維長10mm以下、好ましくは3mm以下が挙げられる。ポリマー材料に水分を含む食材(例えば飯、ジャガイモ等)が含まれる場合は、当該食材はペースト状に調製することが好ましい。
【0023】
ポリマー材料を複数のプラスチックを寄せ集めて構成する場合、当該複数のプラスチックを一旦一体化させ、その後、上記の形態に調製してもよい。一体化させる方法としては特に限定されず、プラスチックを熱分解させず流動化させる程度の加熱条件に供することが挙げられ、加熱の手段としては、熱源による加熱、赤外線による加熱等が挙げられ、その温度又は出力としては、プラスチックを熱分解させず流動化させる程度となるよう、当業者が適宜設定することができる。
【0024】
また、ポリマー材料は、紫外線照射により劣化したものであってもよい。
【0025】
[2.二酸化炭素源]
本発明では、カルボニル基含有化合物を製造するための原料として、二酸化炭素源を用いる。
【0026】
二酸化炭素源としては、気体状の二酸化炭素、及び後述の熱分解系中で気体状の二酸化炭素を生じる材料が挙げられる。これらの二酸化炭素源は、気体状の二酸化炭素及び上記材料のうちいずれかを用いてもよいし、両方を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
熱分解系中で気体状の二酸化炭素を生じる材料としては、炭酸塩及び二酸化炭素吸収材が挙げられる。これらの材料は、炭酸塩及び二酸化炭素吸収材のうちいずれかを用いてもよいし、両方を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
炭酸塩としては、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸カルシウム等)、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、及び炭酸アンモニウム;アルカリ金属の重炭酸塩(重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等)、アルカリ土類金属の重炭酸塩(重炭酸カルシウム等)、重炭酸亜鉛、重炭酸マグネシウム、及び重炭酸アンモニウム等が挙げられる。これらの炭酸塩は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
二酸化炭素吸収材としては、二酸化炭素を吸収させたアミンが挙げられ、当該アミンとしては、アルキルアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等)、及びアルカノールアミン(例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエキサノールアミン等)が挙げられる。これらの二酸化炭素吸収材は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、これらの二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を吸収させる方法としては、公知のアミンスクラビング法等から当業者が適宜選択することができる。
【0030】
有機化合物を含む材料に対する二酸化炭素源の使用量は特に制限されず、有機化合物の熱分解反応物に対するカルボニル基導入反応の化学量論は任意に選択することができる。
【0031】
二酸化炭素源として気体状の二酸化炭素を用いる場合、当該二酸化炭素は、熱分解系雰囲気の例えば30体積%以上、好ましくは50体積%以上、より好ましくは80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上、最も好ましくは100体積%を占めるように熱分解系に供給される。
【0032】
二酸化炭素源として炭酸塩を用いる場合、当該炭酸塩の使用量としては、有機化合物を含む材料1重量部当たり、例えば0.05重量部以上、好ましくは0.08重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、さらに好ましくは0.4重量部以上が挙げられる。炭酸塩の使用量の上限としては特に限定されないが、例えば2重量部以下、好ましくは1重量部以下が挙げられる。
【0033】
二酸化炭素源として二酸化炭素吸収材を用いる場合、当該二酸化炭素吸収材の使用量としては、有機化合物を含む材料1重量部当たり、例えば0.05重量部以上、好ましくは0.08重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、さらに好ましくは0.4重量部以上が挙げられる。二酸化炭素吸収材の使用量の上限としては特に限定されないが、例えば2重量部以下、好ましくは1重量部以下が挙げられる。
【0034】
[3.熱分解系]
有機化合物を含む材料は、二酸化炭素源が供給された熱分解系に供される。二酸化炭素源が供給されるとは、二酸化炭素源が外部から供給されて系中に仕込まれることをいい、二酸化炭素源が気体状の二酸化炭素である場合は、熱分解系中の雰囲気中に、空気にもともと含まれている濃度を超える二酸化炭素を含ませるように仕込むことをいい、二酸化炭素源が炭酸塩及び/又は二酸化炭素吸収材である場合は、熱分解系中に、炭酸塩及び/又は二酸化炭素吸収材を単純に投入して仕込むことをいう。
【0035】
熱分解系は、少なくとも、有機化合物を含む材料と、二酸化炭素源とが含まれ、且つ、加熱条件を与えることで構築される。熱分解系では、有機化合物を含む材料と気体状の二酸化炭素とを原料とした熱分解反応及びカルボニル基導入反応を進行させる。より具体的には、有機化合物が熱分解反応によりガス化し、生成したガスがラジカルを含んでいるため、二酸化炭素及び/又は二酸化炭素から生成した一酸化炭素と反応することで、ガス分子にカルボニル基が導入(二酸化炭素が変換消費)される。また、後述のマイクロ波吸収材の種類によっては(具体的には、マイクロ波吸収材が、炭化ケイ素、ピッチコークス等の場合には)、マイクロ波吸収材と二酸化炭素の一部とが反応することで一酸化炭素が生成するため、有機化合物の熱分解反応による生成ガスに一酸化炭素が反応することで、ガス分子にカルボニル基が導入(二酸化炭素が変換消費)される。これによって、二酸化炭素が消費されカルボニル基含有化合物混合物が得られる。本発明では、このような熱分解系を採用するため、触媒を用いなくとも二酸化炭素の変換消費が可能となる。
【0036】
[3-1.加熱手段]
加熱条件は、電磁波照射によって与えられることが好ましい。電磁波としては、太陽光、紫外線、赤外線、マイクロ波が挙げられるが、有機化合物を含む材料からのラジカルを含むガスへの熱分解の効率性、ひいてはカルボニル基含有化合物合成の効率性を向上させる観点から、マイクロ波が特に好ましい。
【0037】
マイクロ波の周波数としては特に限定されないが、例えば、300MHz~300GHzが挙げられ、好ましくは900MHz~6GHzが挙げられ、より好ましくは1~3GHzが挙げられる。マイクロ波は、波長が1mm~1mの電磁波であってもよい。マイクロ波の出力(強度)は特に限定されず、熱分解系の規模に応じて、具体的にはマイクロ波が照射される有機化合物を含む材料の量及び反応器のサイズ等に応じて、さらに好ましくは後述の温度条件に応じて、当業者が適宜選択することができる。
【0038】
マイクロ波の照射は、連続で行ってもよいし、照射と休止とを繰り返す間欠で行ってもよい。
【0039】
[3-2.マイクロ波吸収材]
加熱手段としてマイクロ波を用いる場合は、さらにマイクロ波吸収材を熱分解系に含ませることが好ましい。マイクロ波吸収材としては特に限定されず、例えば、金属、金属塩、金属酸化物(例えば、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化鉄と酸化アルミニウムの混合物であるFeAlO3、アルミノケイ酸塩(アルミノケイ酸塩を人工的に高温で加熱することによって形成される鉱物であるムライト等のアルミノケイ酸塩鉱物を含む)等)、金属水酸化物、炭素(例えば、膨張黒鉛等の黒鉛、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等)、炭化ケイ素、ピッチコークス等が挙げられる。これらのマイクロ波吸収材は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのマイクロ波吸収材の中でも、好ましくは、黒鉛(より好ましくは膨張黒鉛)、炭素繊維、炭化ケイ素、金属酸化物(より好ましくはFeAlO3、アルミノケイ酸塩)が挙げられる。
【0040】
マイクロ波吸収材が熱分解系に含まれる態様としては特に限定されないが、有機化合物を含む材料の表面近傍又は有機化合物を含む材料の表面上に存在していればよい。つまり、マイクロ波吸収材は、有機化合物を含む材料表面に均一に付着している必要はないため、有機化合物を含む材料と混合されていても混合されていなくてもよく、簡易には、有機化合物を含む材料の上から添加するだけでよい。
【0041】
マイクロ波吸収材の形状については特に限定されず、例えば、板状、塊状、粒状、繊維状等が挙げられる。板状、塊状のマイクロ波吸収材については、装置内で取り扱い可能なサイズであれば粉砕せずにそのまま用いることができ、あるいは、粉砕して粒子状にして用いることもできる。
【0042】
マイクロ波吸収材のサイズとしては、粒子状のものについては、平均粒子径0.05~900μm、好ましくは0.1~0.5μmが挙げられ、繊維状のものについては、平均繊維長5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは2.5mm以下が挙げられる。なお、平均粒子径及び平均繊維長は、実施例の項目[3]に示す方法で測定される値である。
【0043】
マイクロ波吸収材の使用量としては特に限定されないが、マイクロ波による加熱効率をより一層向上させる観点から、有機化合物を含む材料1重量部に対する量として、好ましくは0. 001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、さらに好ましくは0.05重量部以上、0.055重量部以上、0.065重量部以上、0.075重量部以上、0.085重量部以上、0.095重量部以上、又は0.1重量部以上が挙げられる。また、熱分解効率の低下を回避する観点から、有機化合物を含む材料1重量部に対するマイクロ波吸収材の使用量としては、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1.1重量部以下、さらに好ましくは0.6重量部以下、0.55重量部以下、0.4重量部以下、0.3重量部以下、又は0.2重量部以下が挙げられる。
【0044】
有機化合物を含む材料1重量部に対するマイクロ波吸収材の使用量の好適な例として、以下が挙げられる。
・炭素又は炭化ケイ素の場合:好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、さらに好ましくは0.05重量部以上、0.055重量部以上、0.065重量部以上、0.075重量部以上、0.085重量部以上、0.095重量部以上、0.1重量部以上、又は0.2重量部以上。好ましくは2重量部以下、1.1重量部以下、0.6重量部以下、0.55重量部以下、0.4重量部以下、0.3重量部以下、0.2重量部、0.15重量部以下、又は0.1重量部以下。
・FeAlO3の場合:好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、さらに好ましくは0.4重量部以上、一層好ましくは0.45重量部以上。好ましくは2重量部以下、1.1重量部以下、0.6重量部以下、又は0.55重量部以下。
・アルミノケイ酸塩の場合:好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、さらに好ましくは0.4重量部以上、一層好ましくは0.45重量部以上。好ましくは2重量部以下、又は1.1重量部以下。
【0045】
[3-2.温度]
熱分解系における温度については、少なくとも有機化合物の熱分解を可能にする温度であれば特に限定されない。また、二酸化炭素源として炭酸塩を用いた場合にあっては、熱分解系における温度は、有機化合物の熱分解と、炭酸塩の熱分解による気体状の二酸化炭素発生とを可能にする温度が選択される。さらに、二酸化炭素源として二酸化炭素吸収材を用いた場合にあっては、熱分解系における温度は、有機化合物の熱分解と、二酸化炭素吸収材からの気体状の二酸化炭素放出とを可能にする温度が選択される。熱分解系における具体的な温度としては、例えば200~1000℃、好ましくは230~950℃、より好ましくは290~900℃、さらに好ましくは340~850℃、一層好ましくは390~800℃、より一層好ましくは440~700℃が挙げられる。加熱開始から上記の温度まで到達させるまでにかける時間としては、有機化合物を含む材料の規模により異なりうるが、例えば5~60分が挙げられる。
【0046】
[3-3.圧力]
熱分解系は、典型的には閉鎖系である。熱分解系内の圧力については特に限定されず、減圧状態、常圧状態、及び加圧状態のいずれも選択することができる。本発明では、カルボニル基含有化合物を製造する優れた方法であるため、熱分解系内を加圧しなくても、効果的にカルボニル基含有化合物を製造することができる。このような観点から、本発明における熱分解系内の圧力の好適な例としては、常圧以下が挙げられ、この条件の中でも、カルボニル基含有化合物を効率的に製造する観点から、好ましくは常圧が挙げられる。なお、「常圧」とは、本明細書では標準大気圧(101.325kPa)を基準として高度その他の環境による通常の気圧変化の範囲の気圧であって、積極的な減圧及び加圧の気圧操作を行っていない気圧をいう。
【0047】
[3-4.操作]
熱分解系では、有機化合物を含む材料及び気体状の二酸化炭素、必要に応じてさらにマイクロ波吸収材を加熱条件下で共存させれば、有機化合物の熱分解反応及びカルボニル基導入反応が進行する。このため、熱分解系の反応中に特別な操作は要しない。
【0048】
例えば、撹拌操作についても要するわけではないが、有機化合物を含む材料の規模拡大に応じて適宜撹拌することが許容される。
【0049】
また、熱分解系中での反応は、最初に仕込んだ有機化合物が全て熱分解された時点、及び/又は、最初に仕込んだ二酸化炭素源に由来する二酸化炭素の所定の一部又は全てが消費された時点で終了し、得られたカルボニル基含有化合物混合物を回収することができる。
【0050】
一方、熱分解系中での反応中、若しくは、最初に仕込んだ有機化合物の一部又は全てが熱分解された後、並びに/若しくは、最初に仕込んだ二酸化炭素源に由来する二酸化炭素の一部又は全てが消費された後に、有機化合物を含む材料及び/又は二酸化炭素源を新たに熱分解系中に追加投入することもできる。このような追加投入は、1回又は複数回行うことができる。この場合、熱分解系中での反応は、追加投入した有機化合物が全て熱分解された時点、及び/又は、追加投入した二酸化炭素源に由来する二酸化炭素が全て消費された時点で終了し、得られたカルボニル基含有化合物混合物を回収することができる。
【0051】
熱分解系中での反応は、加熱を止め、系中での温度が上記加熱条件を下回るように冷却することで終了させることができる。また、得られたカルボニル基含有化合物混合物は、冷却することで回収することができる。本発明により得られるカルボニル基含有化合物混合物は、混合物自体を、又は混合物に含まれる個々の化合物を、新たな材料として用いることもできる。つまり、本発明によれば、二酸化炭素の消費により生成したカルボニル基含有化合物混合物を、そのままで、又は適宜分離することで、有用物に転用することもできる。
【実施例0052】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」とは重量で表した割合(重量部)を示すものとする。
【0053】
[各種測定方法]
[1]生成混合物中に変換消費された二酸化炭素量の測定方法
反応開始前の原料混合物中の二酸化炭素量と、反応終了後の生成混合物中の二酸化炭素量とを、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)を用いて定量測定し、反応前後の二酸化炭素の変化量(モル基準)を、生成混合物中に固定された二酸化炭素量とし、最初に供給した二酸化炭素量を100%とした場合の、変換消費された二酸化炭素量の割合を、二酸化炭素変換消費率(%)として導出した。
【0054】
[2]生成化合物の同定方法
反応により生成した化合物は、前述のGC-MS及び赤外分光法を用いて定性分析及び/又は定量分析を行った。なお赤外分析では、発生ガスをクロロホルムなどの溶媒に吸収させて調製した試験液、発生ガスを冷却して液化させることにより得た液体、又は発生した微細な固体を収集した固体試料を、赤外分析に供した。
【0055】
[3]平均繊維長及び平均粒子径の測定
繊維長の測定値は、目視によるゲージ測定(繊維長1ミリメートル以上の場合)又は倍率50倍の実態顕微鏡による長さ測定(繊維長1ミリメートル未満の場合)により得た。ランダムに選択された20本の繊維について得られた繊維長の測定値の算術平均を、平均繊維長とした。
粒子径の測定値は、目視によるゲージ測定(粒子径1ミリメートル以上の場合)、倍率50倍の実体顕微鏡による長さ測定(粒子径1ミリメートル未満の場合)、又は走査型電子顕微鏡(実体顕微鏡での測定が困難である場合)により得た。ランダムに選択された20個の粒子について得られた粒子径の測定値の算術平均を、平均粒子径とした。
【0056】
[4]温度測定
赤外線サーモグラフィカメラ又は熱電対を用いて反応部の温度を測定した。
【0057】
[5]圧力測定
反応により発生したガス量(モル量)を把握するため、反応器に圧力計を取り付けて反応器内の圧力を測定した。
【0058】
[実施例1]
内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管の底部に5.02部のセメント粉を敷いておいた。1粒が、長径3mm、短径2mm、長さ3mmの楕円柱状で、メルトマスフローレートが13g/10min、密度が960kg/m3のポリエチレン1.66部をセメント粉の上部に置き、さらに操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.12μmの膨張黒鉛0.15部を置いた。目視ではポリエチレン粒の一部の表面に膨張黒煙が付着しているのが認められた。そして、石英管内を二酸化炭素ガスで置換して、石英管上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は25℃であった。石英管上部のガスを採取して分析したところ、CO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの石英管を、富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに2.45GHzのマイクロ波を25分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、25分後には80Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、450℃に達した。なお、この温度は石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で測定した値である。温度上昇に伴い石英管内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。また、石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2などを主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表1に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表1に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0059】
[実施例2]
内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管の底部に5.02部のセメント粉を敷いておいた。1粒が、長径3mm、短径2mm、長さ3mmの楕円柱状で、メルトマスフローレートが13g/10min、密度が960kg/m3のポリエチレン0.83部と、使用後のラベル及びキャップを除去して水洗したPETボトルを長径3mm以下に粉砕した粉砕物0.84部とをよく混合し、ポリマー材料を調製した。この混合品をセメント粉の上部に置き、さらに操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.12μmの膨張黒鉛0.17部を置いた。目視ではポリエチレン粒やPETボトル片の一部の表面に膨張黒煙が付着しているのが認められた。そして、石英管内を二酸化炭素ガスで置換して、石英管上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は26℃であった。石英管上部のガスを採取して分析したところ、CO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの石英管を、富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに2.45GHzのマイクロ波を35分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、35分後には120Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、550℃に達した。なお、この温度は石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で測定した値である。温度上昇に伴い石英管内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。また、石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2などを主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表1に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表1に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0060】
[実施例3]
内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管の底部にアルミナ繊維束2.0部を敷いておいた。ポリエチレンからなる使用後のプラスチックグローブを集めて長径3mm以下に切り刻んだ薄片0.55部と、使用後のラベル及びキャップを除去して水洗したPETボトルを長径3mm以下に粉砕した粉砕物0.55部と、空間部を含む厚み2mmのダンボール紙を長径3mm以下に粉砕した粉砕物0.55部とをよく混合し、ポリマー材料を調製した。この混合品をアルミナ繊維束の上部に置き、さらに操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.12μmの膨張黒鉛0.20部を置いた。目視ではポリエチレン薄片やPETボトル片やダンボール薄片の一部の表面に膨張黒煙が付着しているのが認められた。さらに最上部にアルミナ繊維束1.0部を置いた。そして、石英管内を二酸化炭素ガスで置換して、石英管上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は25℃であった。石英管上部のガスを採取して分析したところ、CO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの石英管を、富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに2.45GHzのマイクロ波を35分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、30分後には150Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、650℃に達した。なお、この温度は石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で測定した値である。温度上昇に伴い石英管内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。また、石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2を主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表1に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表1に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0061】
[実施例4]
内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管の底部にアルミナ繊維束2.0部を敷いておいた。ポリプロピレンからなる径55mm高さ70mm肉厚0.8mmの廃棄されたカップを集めて長径3mm以下に切り刻んだ薄片0.10部と、ポリブチレンテレフタレートからなるワイヤーハーネスの端材を長径2mm以下に粉砕した粉砕物0.7部とをよく混合し、ポリマー材料を調製した。この混合品をアルミナ繊維束の上部に置き、さらに操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.12μmの膨張黒鉛0.20部を置いた。目視ではポリプロピレン薄片やワイヤーハーネス薄片の一部表面に膨張黒煙が付着しているのが認められた。そして、石英管内を二酸化炭素ガスで置換して、石英管上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は25℃であった。石英管上部のガスを採取して分析したところ、CO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの石英管を、富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに945MHzのマイクロ波を20分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、20分後には90Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、350℃に達した。なお、この温度は石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で測定した値である。温度上昇に伴い石英管内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。また、石英管上部および風船内のガスから、C3H4O2を主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表1に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表1に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0062】
[実施例5]
内容量300mlの丸底フラスコ下部にアルミナ繊維束3.0部を敷いた。食品を包装していたナイロン6とポリエチレンのラミネートフィルムを集めて、長径3mm以下に切り刻み、軽く指で圧縮して固めたポリマー材料の薄片2.0部をアルミナ繊維束の上に置いた。さらに操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.25μmの黒鉛0.18部を置いた。目視ではフィルムの一部表面に黒鉛が付着しているのが認められた。さらにその上に粉末状の炭酸カルシウム1.0部を置いた。そして丸底フラスコ上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。丸底フラスコ上部のガスを採取して分析したところ、CO2は1%以下であった。この膨らんでいない風船付きの丸底フラスコを、四国計測器工業(株)製のマイクロ波照射装置(商品名:μE X)内に入れて、丸底フラスコ越しに2.45GHzのマイクロ波を60分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、60分後には500Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、480℃に達した。なお、温度は丸底フラスコ内の固形物表面から10mm離れた上方に設置した熱電対により測定した。温度上昇に伴い丸俗フラスコ内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。途中で炭酸カルシウムが急激に分解したことによると思われるガス発生があった。二酸化炭素が発生したものと思われる。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。丸底フラスコ上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。丸底フラスコ内の残渣に希硫酸を滴下したところ、ガスの発生は認められず、最初に加えた炭酸カルシウム1.0部は完全に分解していた。また、丸底フラスコ上部および風船内のガスからC2H4、C2H6、C3H4O2などを主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表1に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表1に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0063】
[実施例6]
内容量300mlの丸底フラスコ下部にアルミナ繊維束3.0部を敷いた。ポリエチレンとナイロン66からなる自動車用ガソリンタンクの廃棄物10部と、ポリプロピレンからなる自動車バンバーの廃棄物10部を同時にシュレッダーにかけ、ポリマー材料を調製した。このポリマー材料を構成するシュレッダーダストは長径3mm以下であった。シュレッダーダスト3.0部をアルミナ繊維束の上に置いた。さらに炭素繊維束の長さを2mm以下に揃えて、単系にまでほぐした炭素繊維の0.18部を置いた。目視ではシュレッダーダストが暗色に着色していた。さらにその上に粉末状の炭酸マグネシウム0.5部を置いた。そして丸底フラスコ上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。丸底フラスコ上部のガスを採取して分析したところ、CO2は1%以下であった。これはフラスコ上部の残存空気の測定値と思われる。この膨らんでいない風船付きの丸底フラスコを、四国計測器工業(株)製のマイクロ波照射装置(商品名:μE X)内に入れて、丸底フラスコ越しに2.45GHzのマイクロ波を60分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、30分後には300Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、300℃に達した。なお、温度は丸底フラスコ内の固形物表面から10mm離れた上方に設置した熱電対により測定した。温度上昇に伴い丸底フラスコ内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。途中で炭酸マグネシウムが急激に分解したことによると思われるガス発生があった。二酸化炭素が発生したものと思われる。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。フラスコ上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素が10%検出された。丸底フラスコ内に空気などのガスが侵入しないように注意して、前述のシュレッダーダスト3.0部と黒鉛(膨張黒鉛でない)0.15部を追加添加した。この前後で、丸底フラスコ上部に接続した風船の容量は変化していないことを確認した。再びマイクロ波出力を10Wから徐々に上げて、30分後には5000Wまで上げた。温度は、最初は50℃であったが、急激に上昇し、650℃に達した。そして、丸底フラスコ上部に接続した風船はさらに膨らんだ。フラスコ上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。丸底フラスコ内の残渣に希硫酸を滴下したところ、ガスの発生は認められず、最初に加えた炭酸マグネシウム0.5部は完全に分解していた。また、丸底フラスコ上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2などを主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表1に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表1に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0064】
[実施例7]
内容量300mlの丸底フラスコ下部にアルミナ繊維束3.0部を敷いた。ポリエチレンからなる使用後のプラスチックグローブ1.0部と厚さ0.3μmのニ軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム0.8部を集めて長径2mm以下に切り刻みよく混合した薄片1.0部と、アラミド繊維からなる市販の耐熱性手袋を使用した後に廃棄する前の手指の部分のみを切り離した0.7部とからなるポリマー材料を調製し、アルミナ繊維束の上に載せた。さらに実体顕微鏡下で測定した平均粒子径が0.8mmの市販炭化ケイ素1.0部を置いた。目視ではポリマー材料表面の一部に炭化ケイ素粒が付着していた。丸底フラスコの上部を二酸化炭素ガスで置換して、全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は25℃であった。フラスコ上部から採取したガスはCO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの丸底フラスコを、四国計測器工業(株)製のマイクロ波照射装置(商品名:μE X)内に入れて、丸底フラスコ越しに2.45GHzのマイクロ波を60分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、30分後には500Wまで急激に上げた。温度は、最初は室温であったが、経時とともに上昇し、470℃に達した。なお、温度は丸底フラスコ内の固形物表面から10mm離れた上方に設置した熱電対により測定した。温度上昇に伴い丸俗フラスコ内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。二酸化炭素が発生したものと思われる。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。フラスコ上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。また、丸底フラスコ上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2を主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表1に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表1に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0065】
[実施例8]
内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管の底部に5.02部のセメント粉を敷いておいた。発泡ポリスチレン製のトレーに生のジャガイモが乗り、その上からトレーにかけてポリエチレン製の軟質フィルムで覆われた商品が廃棄されようとしていた。この廃棄物をロールミルで潰し、ミキサーでペースト状まで混合し、ポリマー材料のペーストを調製し、このペースト3.0部をセメント粉の上に載せた。さらに操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.12μmの膨張黒鉛0.17部を置いた。目視ではペーストの表面の一部に膨張黒煙が付着しているのが認められた。そして、石英管内を二酸化炭素ガスで置換して、石英管上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は25℃であった。石英管上部のガスを採取して分析したところ、CO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの石英管を、富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに2.45GHzのマイクロ波を50分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、35分後には120Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、400℃に達した。なお、この温度は石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で測定した値である。温度が100℃に達する前からガスが発生しはじめ、さらに温度が上昇するにつれ石英管内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。石英管内の残渣を取り出したところ、セメント粉と黒鉛とジャガイモの炭化物と思われる黒色物が認められた。石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2を主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表1に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表1に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0066】
[実施例9]
石英管内を置換するガスを二酸化炭素60容量と窒素ガス40容量の混合ガスに変更する以外は実施例1と全く同様に行った。反応後の石英管上部及び風船内のガスからは二酸化炭素は検出されなかった。石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2を主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表2に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表2に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0067】
[実施例10]
実施例1で用いた石英管内を置換するガスを、二酸化炭素50容量と空気50容量との混合ガスに変更した。さらに、用いるマイクロ波の波長を2.45GHzから5.8GHzに変更し、マイクロ波出力を10Wから徐々に上げて、20分後には80Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、500℃に達した。これら以外は実施例1と全く同様にして行った。反応後に石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。また、石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2を主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表2に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表2に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0068】
[実施例11]
あらかじめエチルアミンに二酸化炭素を吸収させた液状化合物0.8部を添加し、石英管内を二酸化炭素で置換せず、ガラス棒で石英管の内容物をゆるく攪拌する以外は実施例1と全く同様に行った。反応後に石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかったが、エチルアミンは検出された。また、石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2を主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表2に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表2に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0069】
[実施例12]
1粒が、長径3mm、短径2mm、長さ3mmの楕円柱状で、メルトマスフローレートが13g/10min、密度が960kg/m3のポリエチレン10部をガラス板の上に並べた。この上部から市販の紫外線発生ランプにより紫外線を10日間照射し、ポリマー材料を調製した。目視では少量の白粉の発生が認められたが、ガスの発生は認められなかった。触手ではポリエチレン粒の強度が低下しているのが確認できた。内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管の底部に5.02部のセメント粉を敷いておいた。紫外線を照射したポリエチレン1.66部をセメント粉の上部に置き、さらに操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.12μmの膨張黒鉛0.15部を置いた。目視ではポリエチレン粒の一部の表面に膨張黒煙が付着しているのが認められた。そして、石英管内を二酸化炭素ガスで置換して、石英管上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は25℃であった。石英管上部のガスを採取して分析したところ、CO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの石英管を、富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに2.45GHzのマイクロ波を20分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、20分後には60Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、400℃に達した。なお、この温度は石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で測定した値である。温度上昇に伴い石英管内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。また、石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2を主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表2に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表2に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0070】
[実施例13]
1粒が、長径3mm、短径2mm、長さ3mmの楕円柱状で、メルトマスフローレートが13g/10min、密度が960kg/m3のポリエチレン0.83部と、使用後のラベルやキャップを除去して水洗したPETボトルを長径3mm以下に粉砕した粉砕物0.84部とをよく混合し、ポリマー材料を調製した。この混合物をガラス板の上に並べ、上部より市販の赤外線発生器を用いて赤外線を10時間照射した。全体が一体化し、粒状物は認められない状態になった。目視ではガスの発生は認められなかった。この塊を冷凍粉砕器で粉砕して、1mm以下の粉末状にした。内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管の底部に5.02部のセメント粉を敷いておいた。冷凍粉砕した粉末0.7部をセメント粉の上部に置き、さらに操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.12μmの膨張黒鉛0.17部を置いた。目視ではポリエチレン粒やPETボトル片の一部の表面に膨張黒煙が付着しているのが認められた。そして、石英管内を二酸化炭素ガスで置換して、石英管上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は25℃であった。石英管上部のガスを採取して分析したところ、CO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの石英管を、富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに2.45GHzのマイクロ波を25分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、25分後には70Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、450℃に達した。なお、この温度は石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で測定した値である。温度上昇に伴い石英管内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。また、石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2などを主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表2に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表2に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0071】
[実施例14]
内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管の底部に5.02部のセメント粉を敷いておいた。1粒が、長径3mm、短径2mm、長さ3mmの楕円柱状で、メルトマスフローレートが13g/10min、密度が960kg/m3のポリエチレン0.83部をセメント粉の上部に置き、さらに操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.35μmのFeAlO3(酸化鉄と酸化アルミニウムの混合物)0.42部を置いた。目視ではポリエチレン粒の一部の表面にFeAlO3粒子が付着しているのが認められた。そして、石英管内を二酸化炭素ガスで置換して、石英管上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は26℃であった。石英管上部のガスを採取して分析したところ、CO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの石英管を、富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに2.45GHzのマイクロ波を15分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、15分後には60Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、急激に上昇し、550℃に達した。なお、この温度は石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で測定した値である。温度上昇に伴い石英管内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素は検出されなかった。また、石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H4O2などを主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表2に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表2に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0072】
[実施例15]
内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管の底部に、1粒が、長径3mm、短径2mm、長さ3mmの楕円柱状で、メルトマスフローレートが13g/10min、密度が960kg/m3のポリエチレン0.18部と、操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.12μmの膨張黒鉛0.002部の混合物を置いた。目視ではポリエチレン粒の一部の表面に膨張黒煙が付着しているのが認められた。そして、石英管内を二酸化炭素ガスで置換して、石英管上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は23℃であった。石英管上部のガスを採取して分析したところ、CO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの石英管を、富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに2.45GHzのマイクロ波を80分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、30分後には30Wまで、50分後に50Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、240℃に達した。なお、この温度は石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で測定した値である。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素及び少量の一酸化炭素が検出された。また、石英管上部および風船内のガスから、C24、C26、C36などを主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表2に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表2に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
【0073】
[実施例16]
内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管の底部に、1粒が、長径3mm、短径2mm、長さ3mmの楕円柱状で、メルトマスフローレートが13g/10min、密度が960kg/m3のポリエチレン0.12部と、操作型電子顕微鏡下での平均粒子径が0.12μmの膨張黒鉛0.002部の混合物を置いた。目視ではポリエチレン粒の一部の表面に膨張黒煙が付着しているのが認められた。そして、石英管内を二酸化炭素ガスで置換して、石英管上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この時の温度は23℃であった。石英管上部のガスを採取して分析したところ、CO2100%であった。この膨らんでいない風船付きの石英管を、富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに2.45GHzのマイクロ波を60分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、25分後には150Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し、230℃に達した。なお、この温度は石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で測定した値である。温度上昇に伴い石英管内で気体状物が発生し風船内にも溜まった。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。石英管上部および風船内のガスの一部を採取して分析したところ、二酸化炭素及び少量の一酸化炭素が検出された。また、石英管上部および風船内のガスからは一酸化炭素などを主要化合物として含み且つ石英かん付着物の赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表2に示す。
【0074】
[実施例17]
平均粒子径が0.12μmの膨張黒煙0.002部の代わりに、厚さ1mmで長手幅7mmの板状のアルミノケイ酸塩0.09部を用いたことを除き、実施例15と同様に行った。用いたアルミノケイ酸塩は、0.1wt%のナトリウムを含んでいた、なお、目視では反応開始前にポリエチレン粒が板状のアルミノケイ酸塩の表面の一部に付いていた。マイクロ波は出力10Wから徐々に上げ、30分後には70Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し220℃に達した。さらにマイクロ波を90W、120Wと上げて80分後には255℃に達した。マイクロ波出力を調整して温度を255℃±5℃にコントロールして50分間反応させた。なお、反応中の圧力は常に常圧であった。また、石英管上部および風船内のガスから、C2H4、C2H6、C3H6などを主要化合物として含み且つ赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表2に示す。なお、カルボニル基含有化合物混合物には、多種多様の化合物が含まれており、表2に示した主要化合物以外にも、赤外分析によりカルボニル基が検出された化合物(カルボニル基含有化合物)が存在していた。
[実施例18]
平均粒子径が0.12μmの膨張黒煙0.002部を、平均粒子径0.5mmのムライト0.05部及び長手幅3mm短手幅2mmの板状ムライト0.06部に変更したことを除き、実施例15と同様に行った。なお、目視では反応開始前にポリエチレン粒がムライト粒と混合されていた。マイクロ波出力10Wから徐々に上げて、30分後には50Wまで上げた。温度は、最初は室温であったが、徐々に上昇し200℃に達した。さらにマイクロ波を10分おきに70W、90W、100Wと上げて80分後には230℃に達した。マイクロ波出力を調整して温度を230℃から235℃の間にコントロールして15分間反応させた。15分後の到達温度は235℃であった。石英管上部および風船内のガスからは一酸化炭素などを主要化合物として含み且つ石英かん付着物の赤外分析によりカルボニル基が検出されたカルボニル基含有化合物混合物を得た。この結果を表2に示す。
【0075】
[比較例1]
石英管内を二酸化炭素ガスで置換せず空気のままで実施したこと以外は実施例1と全く同様に行った。石英管上部のガスからは、C2H4、C2H6などを含む生成混合物が検出されたが、当該生成混合物ではカルボニル基は検出されなかった。つまり、二酸化炭素を積極的に導入せず空気中に500ppm程度の希薄な濃度で存在する二酸化炭素では、熱分解混合物への二酸化炭素取り込みは認められなかった。この結果を表3に示す。
【0076】
[比較例2]
エチレンガスと二酸化炭素を室温で等容量混合したガスを内径15mm外径18mm長さ1700mmの石英管に充填して、上部に発生ガス捕集用の全く膨らんでいない風船を取り付けた。この石英管を富士電波工業(株)製のマイクロ波照射装置内に入れて、石英管越しに2.45GHzのマイクロ波を25分照射した。マイクロ波出力10Wから徐々に上げようとしたが、ほとんど反射されてしまい出力を上げることができなかった。25分経過後、石英管からガスを採取して分析したところ、エチレンと二酸化炭素のみを検出し、反応は起こっていなかったことを確認した。
【0077】
[比較例3]
石英管の底部に膨張黒鉛0.1部を置いたことを除いて比較例2と同様の操作を行った。マイクロ波出力を10Wから徐々に上げて25分後には70Wに達した。石英管の外側から日本アビオニクス株式会社製の赤外線サーモグラフィカメラG100型で温度を測定したところ425℃まで上昇した。反応中の圧力は上昇せず常圧であった。上部の風船は少し膨らんだ。このガスを採取して分析したところ、エチレン、二酸化炭素、一酸化炭素を検出し、カルボニル化合物は検出しなかった。

【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】