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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006885
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】燃料電池の冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20250109BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M8/04 J
B60K11/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107924
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博道
(72)【発明者】
【氏名】松末 真明
(72)【発明者】
【氏名】青山 智
【テーマコード(参考)】
3D038
5H127
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB01
3D038AC12
5H127AB04
5H127AC07
5H127BA02
5H127BB02
5H127CC07
5H127EE20
5H127EE22
(57)【要約】
【課題】スペースの拡大を抑制しつつラジエータへの通風量を増やして冷却能力の向上を図ることができる燃料電池の冷却システムを提供する。
【解決手段】燃料電池及びラジエータを有し、燃料電池の温度を調節するための冷却水が流れる冷却水循環経路、及び、ラジエータを流れる冷却水と熱交換してラジエータを通過した空気が流れるラジエータ冷却経路、を備え、ラジエータ冷却経路は、ラジエータを通過した空気の流路であるラジエータ排出流路と、燃料電池から排出された気体を駆動流体として利用するジェットポンプと、を有し、ラジエータ排出流路がジェットポンプに接続され、ジェットポンプへの吸入流体をラジエータを通過した空気とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池及びラジエータを有し、前記燃料電池の温度を調節するための冷却水が流れる冷却水循環経路、及び、
前記ラジエータを流れる前記冷却水と熱交換して前記ラジエータを通過した空気が流れるラジエータ冷却経路、を備え、
前記ラジエータ冷却経路は、
前記ラジエータを通過した前記空気の流路であるラジエータ排出流路と、
前記燃料電池から排出された気体を駆動流体として利用するジェットポンプと、を有し、
前記ラジエータ排出流路が前記ジェットポンプに接続され、前記ジェットポンプへの吸入流体を前記ラジエータを通過した前記空気とする、
燃料電池の冷却システム。
【請求項2】
燃料電池、第一ラジエータ、及び、前記第一ラジエータに対して直列又は並列に配置された第二ラジエータを有し、前記燃料電池の温度を調節するための冷却水が流れる冷却水循環経路、及び、
前記第二ラジエータを流れる前記冷却水と熱交換して前記第二ラジエータを通過した空気が流れるラジエータ冷却経路、を備え、
前記ラジエータ冷却経路は、
前記第二ラジエータを通過した前記空気の流路であるラジエータ排出流路と、
前記燃料電池から排出された気体を駆動流体として利用するジェットポンプと、を有し、
前記ラジエータ排出流路が前記ジェットポンプに接続され、前記ジェットポンプへの吸入流体を前記第二ラジエータを通過した前記空気とする、
燃料電池の冷却システム。
【請求項3】
前記第二ラジエータは、前記第一ラジエータよりも冷却能力が低い、請求項2に記載の燃料電池の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は燃料電池を冷却するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷却ファンを用いて熱交換器を冷却することが開示されている。
特許文献2には、排出空気流の少なくとも一部を冷却構造体へ流し、ジェットポンプ原理により冷却構造体を通過する外気の質量流を増加させる点について記載されているが、ジェットポンプ自体を構成として含める点についての記載はない。
特許文献3には、燃料電池の排出エアをラジエータの冷却風として利用する際に、ジェットポンプで純水を混入させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-323862号公報
【特許文献2】特開2017-500683号公報
【特許文献3】特開2002-184419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池を冷却するシステムには、燃料電池を冷却することにより熱を取得した冷媒(冷却水)から熱を外部に放出する熱交換器であるラジエ-タが配置されていることが知られている。従ってラジエ-タによる冷媒を冷却する能力は重要である。一方で、省スペース化のためにラジエータの小型化も望まれるところ、小型化には、ラジエ-タの通風量を増やしてレジエ-タの冷却能力を上げることが効果的である。そのためにはラジエ-タ前後の空間を広く取って通風抵抗を減らすことが有効である。しかし現実には燃料電池システム全体を小型化するために様々な部品を集積化するので、そのような広い空間を取ることができない。
また、燃料電池システムが車両等の移動体に用いられる場合には、車速による通風も期待できるが、ラジエ-タ後方には部品が多数配置されているため、車速ほどの通風量を得ることは難しい。そこで移動体への設置であっても設備等の定置体への配置であってもラジエータファンが必須となるが、部品集積化による通風抵抗の上昇があり、さらなる冷却能力向上の手段が必要である。
【0005】
本開示では上記問題を鑑み、スペースの拡大を抑制しつつラジエータへの通風量を増やして冷却能力の向上を図ることができる燃料電池の冷却システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、燃料電池及びラジエータを有し、燃料電池の温度を調節するための冷却水が流れる冷却水循環経路、及び、ラジエータを流れる冷却水と熱交換してラジエータを通過した空気が流れるラジエータ冷却経路、を備え、ラジエータ冷却経路は、ラジエータを通過した空気の流路であるラジエータ排出流路と、燃料電池から排出された気体を駆動流体として利用するジェットポンプと、を有し、ラジエータ排出流路がジェットポンプに接続され、ジェットポンプへの吸入流体をラジエータを通過した空気とする、燃料電池の冷却システムを開示する。
【0007】
本願は、燃料電池、第一ラジエータ、及び、第一ラジエータに対して直列又は並列に配置された第二ラジエータを有し、燃料電池の温度を調節するための冷却水が流れる冷却水循環経路、及び、第二ラジエータを流れる冷却水と熱交換して第二ラジエータを通過した空気が流れるラジエータ冷却経路、を備え、ラジエータ冷却経路は、第二ラジエータを通過した空気の流路であるラジエータ排出流路と、燃料電池から排出された気体を駆動流体として利用するジェットポンプと、を有し、ラジエータ排出流路がジェットポンプに接続され、ジェットポンプへの吸入流体を第二ラジエータを通過した空気とする、燃料電池の冷却システムを開示する。
【0008】
第二ラジエータは、第一ラジエータよりも冷却能力が低いものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、燃料電池からの排出された気体(空気)をジェットポンプの駆動流体として利用し、ラジエータを通過した空気を駆動させて流量を増加させることができ、スペースの拡大を抑制しつつラジエータへの通風量を増やして冷却能力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は燃料電池の冷却システム10の構成の概念図である。
図2図2はジェットポンプ24の構成を模式的に示した図である。
図3図3は第二ラジエータ30の配置について説明する図である。
図4図4は第二ラジエータ30の配置について説明する図である。
図5図5は第二ラジエータ30の配置について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.形態1
図1には形態1にかかる燃料電池の冷却システム10の構成を概念的に示した。このような燃料電池の冷却システム10が具備される燃料電池システムは例えば燃料電池によりモータを駆動させる車両や、定置の発電設備に搭載される。
本形態の燃料電池の冷却システム10は、冷却水循環経路11及びラジエータ冷却経路21を有している。
【0012】
1.1.冷却水循環経路
冷却水循環経路11は燃料電池13を冷却する等、燃料電池の温度を調整するための冷却水が循環する経路であり、冷却水ポンプ12、燃料電池13、弁14、ラジエータ15を備え、これらが配管で接続されることにより冷却水が循環している。
【0013】
冷却水ポンプ12は冷却水循環経路11に冷却水を循環するためのポンプであり、公知のものを用いることができる。
【0014】
燃料電池13は、不図示の経路から水素ガスと空気の供給を受けて電気化学反応により発電する単セルを所要数積層してなる燃料電池スタックとして構成されている。燃料電池13で発生した電力が燃料電池システムの目的のために使用される。燃料電池としては公知のものを用いることができる。
【0015】
弁14は、三方弁であり信号により切替可能とされている。この弁14によりラジエータ15に冷却水を流す/流さないを切り替えることができ、特に低温起動時等の燃料電池13を暖機する際には、冷えたラジエータ15には冷却水を流さずに昇温するために有効である。
【0016】
ラジエータ15は、燃料電池13の冷却で加熱された冷却水をラジエータ冷却経路21により供給される空気との熱交換により冷却する熱交換器である。従ってラジエータ15としては公知ものを用いることができ公知の熱交換器が適用できる。
【0017】
このような冷却水循環経路11では、冷却水ポンプ12で燃料電池13に冷却水が送られて燃料電池13が冷却され、燃料電池13で加熱された冷却水は弁14を通って、ラジエータ15に達し、ラジエータ15で冷却された後に冷却水ポンプ12に戻る。このような冷却水の循環より燃料電池13の冷却が行われる。
【0018】
1.2.ラジエータ冷却経路
ラジエータ冷却経路21は、ラジエータ15に空気を送り、ラジエータ15の内部流路を流れる冷却水と空気との熱交換をさせて冷却水を冷却するための経路である。図1からわかるように、ラジエータ冷却経路21は、ラジエータ排出流路22、燃料電池オフガス流路23、及び、ジェットポンプ24を具備している。
【0019】
ラジエータ排出流路22は、ラジエータ15を通過した空気がジェットポンプ24に向けて流れる空気流路である。ラジエータ排出流路22を流れる空気はジェットポンプ24に対して吸入流体として流入し、燃料電池オフガス流路23からの駆動流体により駆動される。従ってラジエータ排出流路22はラジエータ15の空気出口側からジェットポンプ24に接続される流路である。
また、ラジエ-タ排出流路22は、ラジエ-タ15の背面(空気が流出する側)に近接するように接続されていてもよいが、実質的にラジエ-タ15を通過する空気量への影響が小さければ若干の距離を取って配置してもよい。後者の方が、部品の組付け工数低減や作業性向上が可能である。
その他、ラジエ-タ排出流路22はラジエータ15の背面の全面をカバ-するものでもよいし、部分的にカバ-するでもよい。後者の場合には、冷却水流路の入口側であったり出口側であったり、ラジエ-タ15の設計上、ラジエ-タ15を通過する空気量を増やすことが効果的であるエリアとすることが望ましい。
【0020】
燃料電池オフガス流路23は、燃料電池13へ供給された後、使用されずに排出された空気(オフガスと呼ばれる気体)がジェットポンプ24に向けて流れる流路である。燃料電池オフガス流路23を流れる空気はジェットポンプ24に対して駆動流体として流入し、ラジエータ排出流路22からの吸入流体を駆動する。従って燃料電池オフガス流路23は燃料電池13の空気排出口からジェットポンプ24に接続される(ジェットポンプ24のノズル25に接続される)流路である。
燃料電池13の空気排出側の出口には、通常、燃料電池13内における反応空気の圧力を保持するために調圧弁が備えられている。この調圧弁により、燃料電池13から排出される空気は流速が速く、これをジェットポンプ24に送ることによりジェットポンプ24でジェット流を形成できる。なお、調圧弁をジェットポンプ24に組み込んで、調圧弁自体を駆動流体のノズルとするような構成としてもよい。
ただし、ジェットポンプ24に駆動流体として供給される空気は燃料電池13からのオフガスに限定されることはなく、燃料電池13に供給する空気の配管から分岐して取り入れてもよいし、別途空気取得口を設けてもよい。上記オフガスとこれらの混合であってもよい。
【0021】
ジェットポンプ24はエジェクタと呼ばれることもあり、ノズル25及びディフューザ26を有している。図2にジェットポンプ24の構成を模式的に表した。
ジェットポンプ24では、ノズル25から噴射するガス(駆動流体)の圧力を開放することで、周りのガス(吸入流体)を随伴、吸引し、合計のガス流量を増やすことができる。本形態ではノズル25に燃料電池オフガス流路23が接続され、ノズル25からオフガスが駆動流体としてディフューザ26に向けて噴射される。これによりラジエータ排出流路22からのガス(ラジエータを通過した空気)を吸入流体として随伴、吸引し、ラジエータ15を通過する空気の流量を増やし、ラジエータ15の冷却能力を高めることができる。これによれば、従来においてラジエータの冷却に用いられていたファンを無くしたり、小型化したりすることもできる。
ノズル25、ディフューザ26の基本的な形状は公知のものを適用することができる。具体的な寸法は、駆動流体の運動エネルギで負圧を発生させ、周りの流体(吸入流体)を引き込んで流体流量を増やすことができれば特に限定されることはないが、一例としてノズル径dは4.0~4.5cm程度、ディフューザ径Dは10~15cm程度を挙げることができる。
また、ジェットポンプ24の位置は特に限定されることはなく、他の機器との関係で適宜調整することができる。ラジエータ15の空気出口側の近く(この時にはラジエータ排出流路22が短くなる。)でもよいし、燃料電池13の近く(このときには燃料電池オフガス流路23が短くなる。)でもよい。
【0022】
以上のラジエータ冷却経路21では、上記のようにジェットポンプ24によりラジエータ15を通過した空気を吸引してラジエータ15を通過する空気の流量を増やし、ラジエータ15の冷却能力を高めることができる。
このとき、ラジエータ15の前後に特別な空間を設けなくても(部品が集積配置されていても)、通風量を確保してラジエータによる冷却量を高めることができる。さらには、ラジエータの搭載位置についても例えば車速風を取り込みやすい車両前方といった制約もなく、ラジエタグリルの形状や搭載自由度を上げることが可能である。加えてラジエータファンを無くす、または小型化することもできる。
【0023】
2.形態2
形態1は1つのラジエータ15を具備した例であったが、形態2では、ラジエータ15よりも冷却能力が低い副次的な第二ラジエータ30を備え、当該第二ラジエータ30に上記したラジエータ冷却経路21を配置した例を説明する。これにより、上記した効果に加えて、冷却能力が低い第二ラジエータ30にラジエータ冷却経路21を配置することで、冷却効率を高めるのに必要な空気流量をより確実に確保することができる。
形態2の燃料電池の冷却システム10でも、ラジエータ冷却経路21が第二ラジエータ30に配置されること以外については、基本的な構成は形態1と同じであるため、同じ符号を付してここでは説明を省略する。以下では第二ラジエータ30が配置される位置の違いによる形態例について説明する。
【0024】
2.1.形態2-1
図3には、第二ラジエータ30がラジエータ15(第一ラジエータ)に対して並列に設置された形態を示した。このように並列に設置することにより冷却系の圧力損失の増加を抑えることができる。
図3(a)では第二ラジエータ30をラジエータ15の前後の配管で分岐する。これによれば第二ラジエータ30を追加する際に配管の構成変更が容易である。
図3(b)では第二ラジエータ30を燃料電池13の冷却水出口側で分岐する。
【0025】
2.2.形態2-2
図4には第二ラジエータ30がラジエータ15(第一ラジエータ)に対して直列に設置された形態を示した。直列の配置では上記した並列の配置に比べて設置のための配管の追加を短く抑えることができる。
図4(a)では第二ラジエータ30を弁14とラジエータ15との間に設置し、図4(b)では第二ラジエータ30を燃料電池13と弁14との間に設置する。
【0026】
2.3.形態2-3
図5に示した例では燃料電池13と弁14との間に絞り弁31を直列に配置し、第二ラジエータ30をこの絞り弁31に対して並列になるように設置する。絞り弁31は無段階に流量を調整することができる弁であり、絞り弁31の絞りを調整することで第二ラジエ-タ30への冷却水量を調整することが可能である。
これによれば、図3に示した並列の設置に比べて設置のための配管の追加を短く抑えることができ、第一ラジエータと第二ラジエータとを直列に設置した時に比べて冷却系の圧力損失の増加を抑えることができる。
【符号の説明】
【0027】
10…燃料電池の冷却システム、11…冷却水循環経路、12…冷却水ポンプ、13…燃料電池、14…弁、15…ラジエータ、21…ラジエータ冷却経路、22…ラジエータ排出流路、23…燃料電池オフガス流路、24…ジェットポンプ、25…ノズル、26…ディフューザ、30…第二ラジエータ
図1
図2
図3
図4
図5