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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006886
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】圧力調整装置、及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20250109BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20250109BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20250109BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/18
B41J2/175 121
B41J2/01 451
B41J2/175 171
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107925
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佑希
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 裕稔
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB15
2C056EB29
2C056EC15
2C056EC28
2C056FA13
2C056KB16
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】2つのタンク間に差圧を生じさせることによって2つのタンク間で液体を流通させる機構を備え、当該機構において2つのタンクからの液体の漏れ出しを検出可能な圧力調整装置を提供する。
【解決手段】
圧力調整装置は、第1インクジェットヘッドに流体接続される第1供給タンク及び第1回収タンクと、第2インクジェットヘッドに流体接続される第2供給タンク及び第2回収タンクと、前記第1及び第2供給タンクにそれぞれ流体接続される第1及び第2供給側エア流路と、前記第1及び第2供給側エア流路に流体接続される第1センサアセンブリと、前記第1センサアセンブリに流体接続される第1エアレギュレータと、前記第1及び第2回収タンクにそれぞれ流体接続される第1及び第2回収側エア流路と、前記第1及び第2回収側エア流路に流体接続される第2センサアセンブリと、前記第2センサアセンブリに流体接続される第2エアレギュレータとを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1供給ポートと第1回収ポートとを繋ぐ循環流路を有する第1インクジェットヘッドの、前記第1供給ポートに流体接続される第1供給タンク、及び、前記第1回収ポートに流体接続される第1回収タンクと、
第2供給ポートと第2回収ポートとを繋ぐ循環流路を有する第2インクジェットヘッドの、前記第2供給ポートに流体接続される第2供給タンク、及び、前記第2回収ポートに流体接続される第2回収タンクと、
前記第1供給タンクに流体接続される第1供給側エア流路、及び、前記第2供給タンクに流体接続される第2供給側エア流路と、
前記第1供給側エア流路及び前記第2供給側エア流路に流体接続される第1センサアセンブリと、
前記第1センサアセンブリに流体接続される第1エアレギュレータと、
前記第1回収タンクに流体接続される第1回収側エア流路、及び、前記第2回収タンクに流体接続される第2回収側エア流路と、
前記第1回収側エア流路及び前記第2回収側エア流路に流体接続される第2センサアセンブリと、
前記第2センサアセンブリに流体接続される第2エアレギュレータとを備え、
前記第1センサアセンブリは、前記第1センサアセンブリ内に第1液体が存在するか否かを検知する第1センサを有し、
前記第2センサアセンブリは、前記第2センサアセンブリ内に第2液体が存在するか否かを検知する第2センサを有する、圧力調整装置。
【請求項2】
前記第1センサアセンブリは、第1空間を形成する第1容器を有し、
前記第1センサは、前記第1空間内の前記第1液体の液面の位置が前記第1空間における第1位置以上である場合、前記第1センサアセンブリ内に前記第1液体が存在することを検知し、
前記第1容器は、前記第1供給側エア流路と流体接続される第1供給側接続部と、前記第2供給側エア流路と流体接続される第2供給側接続部とを有し、
前記第1供給側接続部及び前記第2供給側接続部は、前記第1空間における前記第1位置よりも上方に位置し、
前記第2センサアセンブリは、第2空間を形成する第2容器を有し、
前記第2センサは、前記第2空間内の前記第2液体の液面の位置が前記第2空間における第2位置以上である場合、前記第2センサアセンブリ内に前記第2液体が存在することを検知し、
前記第2容器は、前記第1回収側エア流路と流体接続される第1回収側接続部と、前記第2回収側エア流路と流体接続される第2回収側接続部とを有し、
前記第1回収側接続部及び前記第2回収側接続部は、前記第2空間における前記第2位置よりも上方に位置する、請求項1に記載の圧力調整装置。
【請求項3】
前記第1容器は、前記第1空間を形成する上壁を有し、
前記第1供給側接続部及び前記第2供給側接続部は、前記第1容器の前記上壁に形成されており、
前記第2容器は、前記第2空間を形成する上壁を有し、
前記第1回収側接続部及び前記第2回収側接続部は、前記第2容器の前記上壁に形成されている、請求項2に記載の圧力調整装置。
【請求項4】
前記第1容器の前記上壁は円形であり、
前記第1供給側接続部及び前記第2供給側接続部は、前記第1容器の前記上壁の円周に沿って並んでおり、
前記第1センサは、上から見たとき、前記第1容器の前記上壁の円周に対して、前記第1供給側接続部及び前記第2供給側接続部よりも内側に位置し、
前記第2容器の前記上壁は円形であり、
前記第1回収側接続部及び前記第2回収側接続部は、前記第2容器の前記上壁の円周に沿って並んでおり、
前記第2センサは、上から見たとき、前記第2容器の前記上壁の円周に対して、前記第1回収側接続部及び前記第2回収側接続部よりも内側に位置する、請求項3に記載の圧力調整装置。
【請求項5】
前記第1容器の前記上壁は、前記第1供給側接続部と前記第2供給側接続部との間に位置し、且つ、前記第1容器の前記上壁の下面から下方に延びる、リブを有し、
前記第2容器の前記上壁は、前記第1回収側接続部と前記第2回収側接続部との間に位置し、且つ、前記第2容器の前記上壁の下面から下方に延びる、リブを有する、請求項3に記載の圧力調整装置。
【請求項6】
前記第1容器は、前記第1エアレギュレータに流体接続され、前記第1空間における前記第1位置よりも上方に位置する、供給側接続部をさらに有し、
前記第2容器は、前記第2エアレギュレータに流体接続され、前記第2空間における前記第2位置よりも上方に位置する、回収側接続部をさらに有する、請求項2に記載の圧力調整装置。
【請求項7】
前記第1容器は、前記第1空間を形成する上壁を有し、
前記供給側接続部は、前記第1容器の前記上壁に位置し、
前記第2容器は、前記第2空間を形成する上壁を有し、
前記回収側接続部は、前記第2容器の前記上壁に位置する、請求項6に記載の圧力調整装置。
【請求項8】
前記第1容器はさらに、フランジと、円環状プレートと、前記第1空間を形成する底板とを備え、
前記第1容器の前記フランジは、前記第1容器の前記底板と前記第1容器の前記円環状プレートとによって挟まれており、
前記第2容器はさらに、フランジと、円環状プレートと、前記第2空間を形成する底板とを備え、
前記第2容器の前記フランジは、前記第2容器の前記底板と前記第2容器の前記円環状プレートとによって挟まれている、請求項2に記載の圧力調整装置。
【請求項9】
前記第1容器はさらに、前記第1空間を形成する底板と、前記第1容器の前記底板に形成された前記第1液体の排出口と、前記第1容器の前記排出口を塞ぐ第1キャップとを有し、
前記第2容器はさらに、前記第2空間を形成する底板と、前記第2容器の前記底板に形成された前記第2液体の排出口と、前記第2容器の前記排出口を塞ぐ第2キャップとを有する、請求項2に記載の圧力調整装置。
【請求項10】
前記第1エアレギュレータと、前記第2エアレギュレータと、前記第1センサと、前記第2センサとに接続された、コントローラをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1センサアセンブリ内に前記第1液体が存在することを前記第1センサにより検知した場合、及び/又は、前記第2センサアセンブリ内に前記第2液体が存在することを前記第2センサにより検知した場合、前記第1エアレギュレータ及び前記第2エアレギュレータを停止するよう構成されている、請求項1に記載の圧力調整装置。
【請求項11】
前記第1センサアセンブリは第1空間を形成する第1容器を有し、
前記第1センサは前記第1空間内に位置し、
前記第1容器は、前記第1供給側エア流路と流体接続される第1供給側接続部と、前記第2供給側エア流路と流体接続される第2供給側接続部とを有し、
前記第1供給側接続部及び前記第2供給側接続部は、前記コントローラが前記第1エアレギュレータ及び前記第2エアレギュレータを停止させた際の、前記第1空間内の前記第1液体の液面よりも上方に位置し、
前記第2センサアセンブリは第2空間を形成する第2容器を有し、
前記第2センサは前記第2空間内に位置し、
前記第2容器は、前記第1回収側エア流路と流体接続される第1回収側接続部と、前記第2回収側エア流路と流体接続される第2回収側接続部とを有し、
前記第1回収側接続部及び前記第2回収側接続部は、前記コントローラが前記第1エアレギュレータ及び前記第2エアレギュレータを停止させた際の、前記第2空間内の前記第2液体の液面よりも上方に位置する、請求項10に記載の圧力調整装置。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の圧力調整装置と、
前記第1インクジェットヘッド及び前記第2インクジェットヘッドに対して媒体を搬送する搬送装置とを備える、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調整装置、及び圧力調整装置を備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給するインクを貯留する加圧タンクと、インクジェットヘッドから戻されたインクを貯留する負圧タンクと、加圧タンクからインクジェットヘッドを経て負圧タンクへインクが循環するための循環経路と、負圧タンクから加圧タンクにインクを送るインクポンプとを備える、インクジェット印刷装置が知られている。このインクジェット印刷装置はさらに、加圧タンクの気層部分と連通された加圧気室と、負圧タンクの気層部分と連通された負圧気室とを備える。そして、加圧気室には、加圧ポンプと加圧側圧力センサとが連通されている。加圧ポンプは加圧気室を介して加圧タンクの気層部分の圧力を調整する。加圧側圧力センサは加圧気室内の圧力を検出する。また、負圧気室には、負圧ポンプと負圧側圧力センサとが連通されている。負圧ポンプは負圧気室を介して負圧タンクの気層部分の圧力を調整する。負圧側圧力センサは負圧気室内の圧力を検出する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-068327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインクジェット印刷装置において、例えば、加圧タンクの気層部分の圧力と負圧タンクの気層部分の圧力とのバランスが崩れた場合、加圧タンク内のインクが加圧気室内に流れ込む可能性や、負圧タンク内のインクが負圧気室内に流れ込む可能性がある。しかしながら、加圧側圧力センサは、加圧気室内の空気の圧力を検出するものであり、加圧気室内に流れ込んだインクを検出することはできない。同様に、負圧側圧力センサは、負圧気室内の空気の圧力を検出するものであり、負圧気室内に流れ込んだインクを検出することはできない。そして、加圧タンク内のインクが加圧側圧力センサで検出されることなく加圧気室を通過して加圧ポンプに流れ込むと、加圧ポンプが故障する原因となり得る。また、負圧タンク内のインクが負圧側圧力センサで検出されることなく負圧気室を通過して負圧ポンプに流れ込むと、負圧ポンプが故障する原因となり得る。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、2つのタンク間に差圧を生じさせることによって2つのタンク間で液体を流通させる機構を備え、当該機構において2つのタンクからの液体の漏れ出しを検出可能な、圧力調整装置、及び当該圧力調整装置を備える印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、第1供給ポートと第1回収ポートとを繋ぐ循環流路を有する第1インクジェットヘッドの、前記第1供給ポートに流体接続される第1供給タンク、及び、前記第1回収ポートに流体接続される第1回収タンクと、
第2供給ポートと第2回収ポートとを繋ぐ循環流路を有する第2インクジェットヘッドの、前記第2供給ポートに流体接続される第2供給タンク、及び、前記第2回収ポートに流体接続される第2回収タンクと、
前記第1供給タンクに流体接続される第1供給側エア流路、及び、前記第2供給タンクに流体接続される第2供給側エア流路と、
前記第1供給側エア流路及び前記第2供給側エア流路に流体接続される第1センサアセンブリと、
前記第1センサアセンブリに流体接続される第1エアレギュレータと、
前記第1回収タンクに流体接続される第1回収側エア流路、及び、前記第2回収タンクに流体接続される第2回収側エア流路と、
前記第1回収側エア流路及び前記第2回収側エア流路に流体接続される第2センサアセンブリと、
前記第2センサアセンブリに流体接続される第2エアレギュレータとを備え、
前記第1センサアセンブリは、前記第1センサアセンブリ内に第1液体が存在するか否かを検知する第1センサを有し、
前記第2センサアセンブリは、前記第2センサアセンブリ内に第2液体が存在するか否かを検知する第2センサを有する、圧力調整装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、第1の態様に従う圧力調整装置と、
前記第1インクジェットヘッド及び前記第2インクジェットヘッドに対して媒体を搬送する搬送装置とを備える、印刷装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1及び第2の態様によれば、2つのインクタンク間に差圧を生じさせることによって2つのインクタンク間でインクを流通させる機構を備え、当該機構において2つのインクタンクからのインクの漏れ出しを検出可能な、圧力調整装置、及び当該圧力調整装置を備える印刷装置
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のプリンタ1000の概略的な構成図である。
図2】ヘッドシステム100の斜視図である。
図3】サブタンク20の分解斜視図である。
図4】サブタンク20の底面図である。
図5】ヘッド機構40の斜視図である。
図6】ヘッド43の平面図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
図8】HPM(Hydraulic Pneumatics Module)500の流路構成、並びに、第1エアレギュレータAR1及び第2エアレギュレータAR2と第1センサアセンブリSA1及び第2センサアセンブリSA2とヘッドシステム100との接続を説明するための図である。
図9】(a)は第1センサアセンブリSA1の斜視図であり、(b)は第1センサアセンブリSA1の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るプリンタ(印刷装置)1000について、図1図9(b)を参照しつつ説明する。
【0011】
<プリンタ1000>
図1に示すように、プリンタ1000は、6個のヘッドシステム100、プラテン200、2個の搬送ローラ301、302、6個のインクタンク400、第1エアレギュレータAR1、第1センサアセンブリSA1、第2エアレギュレータAR2、第2センサアセンブリSA2、コントローラ700、及びこれらを収容する筐体900を主に備える。
【0012】
プリンタ1000に関しては、2個の搬送ローラ301、302が並ぶ方向、即ち画像形成時に媒体PMが搬送される方向を「搬送方向」と呼ぶ。また、水平面内に延び且つ搬送方向と直交する方向を「媒体幅方向」と呼ぶ。
【0013】
6個のヘッドシステム100の各々は、いわゆるラインタイプのヘッド(ヘッドバー)であり、媒体幅方向の両端部においてフレーム100aに支持されている。ヘッドシステム100の具体的な構造、機能は後述する。
【0014】
フレーム100aは、6個のヘッドシステム100の各々の前後方向(後述)をプリンタ1000の搬送方向に一致させ、且つ6個のヘッドシステム100のノズル面40n(後述)をプラテン200の上面に対向させて支持する。
【0015】
プラテン200は、6個のヘッドシステム100から媒体PMに向けてインクを吐出する際に、媒体PMをヘッドシステム100とは反対側(下方)から支持する板状部材である。
【0016】
2個の搬送ローラ301、302は、プラテン200を搬送方向に挟むように位置する。2個の搬送ローラ301、302は、6個のヘッドシステム100が媒体PMに画像を形成する際に、媒体PMを所定の態様で搬送方向に送る搬送装置として機能する。
【0017】
6個のインクタンク400の各々は、HPM(Hydraulic Pneumatics Module)500(図8参照)により6個のヘッドシステム100のうちの1個のヘッドシステム100に接続されている。
【0018】
HPM500は1個のインクタンク400と1個のヘッドシステム100とを接続するために1個設けられている。つまり、プリンタ1000は、合計で6個のHPM500を有する。HPM500の具体的な構造、機能は後述する。
【0019】
本実施形態では、6個のインクタンク400にそれぞれ互いに異なる6種類のインクが貯蔵され、6個のヘッドシステム100の各々が互いに異なる6種類のインクのいずれかを吐出する。この6種類のインクは、一例としてブラックインク、シアンインク、ライトシアンインク、マゼンタインク、ライトマゼンタインク、及びイエローインクである。
【0020】
第1エアレギュレータAR1は、管路T1、第1センサアセンブリSA1、及び6個の供給側エア流路AT1を介して、6個のヘッドシステム100と流体接続されている。第2エアレギュレータAR2は、管路T2、第2センサアセンブリSA2、及び6個の回収側エア流路AT2を介して、6個のヘッドシステム100と流体接続されている。第1エアレギュレータAR1及び第2エアレギュレータAR2は、例えば電空レギュレータであり、各ヘッドシステム100において差圧を生じさせることにより、各ヘッドシステム100内でインクを循環させる。第1センサアセンブリSA1及び第2センサアセンブリSA2の具体的な構造、機能は後述する。
【0021】
コントローラ700は、プリンタ1000が備える各部を全体的に制御することで、各部に媒体PMへの画像形成等を行わせる。コントローラ700は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、EEPROM(Electrically Eracable Programmable Read-Only Memory、登録商標)、RAM(Random Access Memory)等を備える。なお、コントローラ700はCPU(Central Processing Unit)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備えてもよい。コントローラ700は、PC等の外部装置EAとデータ通信可能に接続されており、当該外部装置EAから送られた印刷データに基づいてプリンタ1000の各部を制御する。
【0022】
<ヘッドシステム100>
図2に示すように、6個のヘッドシステム100の各々は、筐体10、サブタンク20、千鳥状に並ぶ10個のヘッド機構40、中継基板50、及び制御基板部60を主に備える。6個のヘッドシステム100は互いに同一の構成を有するため、以下では6個のヘッドシステム100のうちの1個のヘッドシステム100に着目して説明する。
【0023】
以下の説明においては、10個のヘッド機構40が千鳥状(ジグザグ状)に並ぶ方向をヘッドシステム100の幅方向と呼び、10個のヘッド機構40とサブタンク20とが並ぶ方向を上下方向と呼ぶ。また、幅方向及び上下方向に直交する方向をヘッドシステム100の前後方向と呼ぶ。
【0024】
前後方向については、図2の紙面手前側、奥側を前後方向の前側、後側とする。幅方向については前後方向の前側から見た際の左側、右側を、幅方向の左側、右側とする。上下方向については、10個のヘッド機構40に対してサブタンク20が位置する側を上側、その反対側を下側とする。
【0025】
なお、ヘッドシステム100がプリンタ1000に搭載された状態においては、ヘッドシステム100の幅方向がプリンタ1000の媒体幅方向に一致し、ヘッドシステム100の前後方向がプリンタ1000の搬送方向に一致する。
【0026】
<筐体10>
筐体10は、例えば金属により形成し得る。筐体10は、第1筐体11と、第1筐体11に対して着脱可能な第2筐体12とを含む。
【0027】
第1筐体11は、天板、底部、前壁(図2では第1筐体11の内部を示すために図示を省略している)、後壁、左壁、及び右壁を有する。第1筐体11の内部には、天板、底部、前壁、後壁、左壁、及び右壁に囲まれた空間が画定されている。
【0028】
第1筐体11の天板は、第1筐体11の左壁の上端から右に延びる第1領域と、第1領域の右端から下に延びる垂直領域と、垂直領域の下端から第1筐体11の右壁の上端まで右に延びる第2領域とを有する。
【0029】
第1筐体11の左壁には、前後方向に並ぶ2個のエア流通口AP10と、前後方向に並ぶ2個のインク流通口IP10が形成されている。2個のインク流通口IP10は2個のエア流通口AP10の下方に位置する。
【0030】
図2に示すように、第2筐体12は、天板、底板、前壁、後壁、左壁、及び右壁を有する。第2筐体12が第1筐体11に取り付けられた状態においては、第2筐体12の底板が第1筐体11の天板の第2領域に当接する。
【0031】
<サブタンク20>
サブタンク20は、インクタンク400からヘッドシステム100に供給されたインクを貯留する。サブタンク20に貯留されたインクは、10個のヘッド機構40に分配される。
【0032】
図2に示すように、サブタンク20は長尺形状を有する。サブタンク20は、長手方向とヘッドシステム100の幅方向とを一致させた状態で、第1筐体11内の空間に位置付けられる。
【0033】
図3図4に示すように、サブタンク20は、本体部21と、天板22と、底板23とにより構成されている。図4に示すように、底板23の下面にはシートヒータ24が貼り付けられている。
【0034】
本体部21は、一例として樹脂により形成されている。本体部21は、ヘッドシステム100の前後方向と直交する面に沿って延びる前壁21c、後壁21dと、ヘッドシステム100の幅方向と直交する面に沿って延びる左壁21e、右壁21fを有する。本体部21の内部には、前壁21c及び後壁21dと平行な分離壁21wが位置する。
【0035】
天板22は、一例として金属により形成された平板である。天板22の平面視形状は、上方から見た本体部21の輪郭の形状と同一である。天板22は、不図示のシールゴムを挟んで本体部21の上端部に固定されている。
【0036】
底板23は、金属により形成された平板である。底板23の平面視形状は、上方から見た本体部21の輪郭の形状と同一である。底板23は、不図示のシールゴムを挟んで本体部21の下端部に固定されている。
【0037】
図3に示すように、サブタンク20においては、本体部21の前壁21c、分離壁21w、左壁21e及び右壁21fと、天板22と、底板23とにより、フィルタンクFTが構成されている。また、本体部21の後壁21d、分離壁21w、左壁21e及び右壁21fと、天板22と、底板23とにより、ドレインタンクDTが構成されている。フィルタンクFTの内部空間INFTとドレインタンクDTの内部空間INDTはそれぞれ閉空間であり互いに対して分離されている。サブタンク20は、フィルタンクFTの内部空間INFTに収容されたインクの液面を検知する不図示の液面センサと、ドレインタンクDTの内部空間INDTに収容されたインクの液面を検知する不図示の液面センサとを有する。
【0038】
左壁21eには、2つのインク流通口IP20が前後方向に並んで形成されている。前方のインク流通口IP20はフィルタンクFTの内部空間INFTに連通している。後方のインク流通口IP20はドレインタンクDTの内部空間INDTに連通している。
【0039】
天板22には、2つのエア流通口AP20が前後方向に並んで形成されている。前方のエア流通口AP20はフィルタンクFTの内部空間INFTに連通している。後方のエア流通口AP20はドレインタンクDTの内部空間INDTに連通している。また、前方のエア流通口AP20は、後述する1個の供給側エア流路AT1によって、第1筐体11の前方のエア流通口AP10と流体接続されている。後方のエア流通口AP20は、後述する1個の回収側エア流路AT2によって、第1筐体11の後方のエア流通口AP10と流体接続されている。
【0040】
図4に示すように、底板23の下面には、10個のインク流通口セットSが形成されている。インク流通口セットSの各々は、1個のインク供給口SPと1個のインク回収口DPとを含む。10個のインク流通口セットSはヘッドシステム100の幅方向に沿って千鳥状(ジグザグ状)に配置されている。各インク流通口セットSにおいては、インク供給口SPとインク回収口DPとが幅方向に並んでいる。
【0041】
本体部21の内側の下部に形成された流路(不図示)により、フィルタンクFTの内部空間INFTが各インク流通口セットSのインク供給口SPと連通しており、ドレインタンクDTの内部空間INDTが各インク流通口セットSのインク回収口DPと連通している。
【0042】
<ヘッド機構40>
10個のヘッド機構40はそれぞれ、同一の構成を有する。以下では、1個のヘッド機構40の構成について説明する。図5に示すように、ヘッド機構40は、上から順番に、接続プレート41、本体部42、ヘッド43を有する。ヘッド機構40は更に、接続プレート41の上方とヘッド43との間に渡って上下方向に延びる配線接続部WCを有する。
【0043】
接続プレート41には、インク供給口ISP、インク回収口IDPが形成されている。
【0044】
本体部42は、接続プレート41の下面に固定されている。本体部42の内部には、インク供給口ISPに供給されたインクをヘッド43に供給するための不図示の供給用分岐流路と、ヘッド43において吐出されなかったインクをインク回収口IDPに戻すための不図示の回収用分岐流路とが形成されている。
【0045】
ヘッド43は、本体部42の下面に固定されている。ヘッド43は、流路ユニット431と、圧電アクチュエータ432とを備える(図6図7参照)。
【0046】
図7に示すように、流路ユニット431は、インク封止膜431A、プレート431B~431E、及びノズルプレート431Fが、上からこの順に積層された積層構造体である。図6に示すように、流路ユニット431の内部には、流路CHが形成されている。
【0047】
流路CHは、8個のインク流通口IP43と、4本のマニホールド流路M1、M2、M3、M4と、48個の個別流路iCHとを含む。4本のマニホールド流路M1~M4の各々は、左右方向に沿って延びる直線状の流路であり、両端部においてインク流通口IP43に連通している。4本のマニホールド流路M1~M4の各々には12個の個別流路iCHが接続している。
【0048】
個別流路iCHの各々は、図7に示すように、圧力室1、ディセンダ流路2、ノズル3を含む。圧力室1の上面はインク封止膜431Aにより形成されている。ディセンダ流路2は圧力室1からノズル3に向けて、上下方向に延びている。ノズル3は、インクを媒体PMに向けて吐出する微小開口であり、ノズルプレート431Fに形成されている。ノズルプレート431Fの下面がヘッド機構40の下面であり、ノズル面40nである。図6に示すように、ノズル面40nには、前後方向に並ぶ4列のノズル列Lが形成される。各ノズル列Lは、左右方向に沿って並ぶ12個のノズル3によって形成されている。
【0049】
圧電アクチュエータ432は、図7に示すように、流路ユニット431の上面に位置する第1圧電層L1と、第1圧電層L1の上方の第2圧電層L2と、第1圧電層L1、第2圧電層L2に挟まれた共通電極cETと、第2圧電層L2の上面に位置する複数の個別電極iETにより構成されている。複数の個別電極iETはそれぞれ、複数の個別流路iCHの複数の圧力室1の上方に位置する。第2圧電層L2のうち、共通電極cETと複数の個別電極iETの各々とに挟まれた部分は、厚み方向に分極した活性部ACとなる。
【0050】
圧電アクチュエータ432の個別電極iETの各々は、FPC(Flexible Printed Circuits)441を介してドライバICが実装された制御基板442に接続されている。制御基板442は本体部42の内部に位置する。
【0051】
配線接続部WCは基板状である。配線接続部WCの上端部は、接続プレート41の上方に突出している。配線接続部WCは不図示のフレキシブル基板を介して中継基板50(図2参照)に接続されている。配線接続部WCの下端部は制御基板442に接続されている。
【0052】
10個のヘッド機構40は、第1筐体11の底部に固定されている(図2参照)。この状態において、各ヘッド機構40のノズル面40nが筐体10の下方に向けて露出する。また、ノズル面40nの各ノズル列Lはヘッドシステム100の幅方向に沿って延びる。10個のヘッド機構40は、幅方向に沿って千鳥状(ジグザグ状)に配置されている。
【0053】
ヘッド機構40の各々とサブタンク20とは、インク管セットITS(図2参照)により接続されている。インク管セットITSは1本のインク供給管ISTと1本のインク回収管IDTとを含む。
【0054】
各インク供給管ISTの上端はサブタンク20の各インク流通口セットSのインク供給口SPに接続されている。各インク供給管ISTの下端はヘッド機構40のインク供給口ISPに接続されている。各インク回収管IDTの上端はサブタンク20の各インク流通口セットSのインク回収口DPに接続されている。各インク回収管IDTの下端はヘッド機構40のインク回収口IDPに接続されている。つまり、サブタンク20のフィルタンクFTは、各ヘッド機構40のインク供給口ISPに流体接続されており、サブタンク20のドレインタンクDTは、各ヘッド機構40のインク回収口IDPに流体接続されている。
【0055】
各ヘッド機構40において、サブタンク20のフィルタンクFTからインク供給口ISPに流入したインクは、本体部42の供給用分岐流路及びヘッド43の4個のインク流通口IP43を介して、4本のマニホールドM1~M4に流れ込む。4本のマニホールドM1~M4内のインクのうち、ノズル3から吐出されなかったインクは、ヘッド43の残りの4個のインク流通口IP43、本体部42の回収用分岐流路、及びインク回収口IDPを介して、サブタンク20のドレインタンクに回収される。つまり、供給用分岐流路、8個のインク流通口IP43、4本のマニホールドM1~M4、及び回収用分岐流路によって、各ヘッド機構40内の循環流路が形成されている。
【0056】
<中継基板50>
中継基板50は、制御基板部60(後述)とヘッド機構40の制御基板442との中継を主に行う。中継基板50は不図示のフレキシブル基板により、10個のヘッド機構40の各々の配線接続部WCに接続されている。
【0057】
中継基板50はまた、不図示の配線により筐体10の電気コネクタに接続されており、電気コネクタから供給された電力を制御基板部60等に分配する。
【0058】
図2に示すように、中継基板50は、第1筐体11の天板の第2領域の下面に、第2領域と平行に取り付けられている。
【0059】
<制御基板部60>
制御基板部60は、プリンタ1000のコントローラ700から印刷データ信号を受け取り、中継基板50を介して各ヘッド機構40の制御基板442に送る。制御基板部60は、筐体10の第2筐体12の内部に設けられている(図2)。
【0060】
第2筐体12の底板に設けられた開口(不図示)を介して、制御基板部60の端子(不図示)が下方に突出している。第1筐体11の天板の第2領域に設けられた開口(不図示)を介して、制御基板部60の端子を中継基板50のコネクタ(不図示)に着脱することにより、第2筐体12の第1筐体11に対する着脱が行われる。
【0061】
<HPM500>
上述したように、各HPM500(図8参照)は、1個のインクタンク400と、1個のヘッドシステム100とを接続する。6個のHPM500は互いに同一の構成を有するため、以下では6個のうちの1個に着目して説明する。
【0062】
図8に示すように、HPM500は、ポンプPと、脱気ユニットDUと、5個の流路(流路CH1~CH5)と、5個のバルブ(バルブV1~V5)とを主に備える。
【0063】
流路CH1はインクタンク400とポンプPの吸入口PAとを繋ぐ。流路CH2は、筐体10の一方のインク流通口IP10とサブタンク20の一方のインク流通口IP20とを介して、ポンプPの排出口PBとフィルタンクFTとを繋ぐ。流路CH3は、流路CH2から分岐J1で分岐した流路である。流路CH3は、筐体10の他方のインク流通口IP10とサブタンク20の他方のインク流通口IP20とを介して、流路CH2の分岐J1とドレインタンクDTとを繋ぐ。流路CH4は、流路CH1から分岐J2で分岐して流路CH3に合流する流路である。流路CH4は、流路CH1の分岐J2と流路CH3の分岐J3とを繋ぐ。流路CH5は流路CH2から分岐J4で分岐した流路である。流路CH5は流路CH2の分岐J4とインクタンク400とを繋ぐ。
【0064】
バルブV1は、流路CH1の、インクタンク400と分岐J2との間に位置する。バルブV2は、流路CH2の、分岐J1とフィルタンクFTとの間に位置する。バルブV3は、流路CH3の、分岐J1と分岐J3との間に位置する。バルブV4は流路CH4に位置する。バルブV5は流路CH5に位置する。
【0065】
脱気ユニットDUは、流路CH2の、分岐J1と分岐J4との間に位置する。本実施形態の脱気ユニットDUは、公知の脱気モジュールであり、脱気ユニットDUを通過するインクに含まれるエアなどのガスを取り除く。
【0066】
一例として、コントローラ700は、HPM500の第1バルブV1、第2バルブV2を開き且つ第3バルブV3~第5バルブV5を閉じた状態で、ポンプPを駆動することにより、インクタンク400からフィルタンクFTのみにインクを供給する。他の例として、コントローラ700は、HPM500の第1バルブV1~第3バルブV3を開き且つ第4バルブV4、第5バルブV5を閉じた状態でポンプPを駆動することにより、インクタンク400からフィルタンクFT及びドレインタンクDTの両方にインクを供給する。
【0067】
一方、コントローラ700は、HPM500の第4バルブV4、第5バルブV5を開き且つ第1バルブV1~第3バルブV3を閉じた状態でポンプPを駆動することにより、ドレインタンクDTからインクタンク400にインクを回収する。
【0068】
<圧力調整装置>
本発明の圧力調整装置は主に、各ヘッドシステム100が備えるフィルタンクFT及びドレインタンクDTと、6個の供給側エア流路AT1及び6個の回収側エア流路AT2と、第1センサアセンブリSA1及び第2センサアセンブリSA2と、第1エアレギュレータAR1及び第2エアレギュレータAR2と、コントローラ700とから構成される。図1に示すように、第1センサアセンブリSA1は、6個の供給側エア流路AT1を介して、6個のヘッドシステム100と連通している。第2センサアセンブリSA2は、6個の回収側エア流路AT2を介して、6個のヘッドシステム100と連通している。より詳細には、図8に示すように、第1センサアセンブリSA1は、6個の供給側エア流路AT1のうちの1個を介して、1個のヘッドシステム100のフィルタンクFTと連通している。また、第2センサアセンブリSA2は、6個の回収側エア流路AT2のうちの1個を介して、当該1個のヘッドシステム100のドレインタンクDTと連通している。なお、図8では、第1センサアセンブリSA1及び第2センサアセンブリSA2が連通する1個のヘッドシステム100のみを代表的に示し、残りの5個のヘッドシステム100については図示を省略している。
【0069】
図8に示すように、ヘッドシステム100のフィルタンクFTには1個の供給側エア流路AT1が流体接続されており、当該供給側エア流路AT1に第1センサアセンブリSA1が流体接続されている。ヘッドシステム100のドレインタンクDTには1個の回収側エア流路AT2が流体接続されており、当該回収側エア流路AT2に第2センサアセンブリSA2が流体接続されている。つまり、1個の供給側エア流路AT1は、サブタンク20の前方のエア流通口AP20及び第1筐体11の前方のエア流通口AP10を介して、フィルタンクFTの内部空間INFTと第1センサアセンブリSA1とを連通させている。また、1個の回収側エア流路AT2は、サブタンク20の後方のエア流通口AP20及び第1筐体11の後方のエア流通口AP10を介して、ドレインタンクDTの内部空間INDTと第2センサアセンブリSA2とを連通させている。
【0070】
次に、第1センサアセンブリSA1及び第2センサアセンブリSA2の具体的な構造について、図9(a)及び図9(b)を参照しつつ説明する。なお、第1センサアセンブリSA1と第2センサアセンブリSA2とは接続先がそれぞれ異なるが、同じ構造を有している。このため、図9(a)及び図9(b)は第1センサアセンブリSA1を代表的に示している。
【0071】
図9(a)、図9(b)に示すように、第1センサアセンブリSA1及び第2センサアセンブリSA2の各々は、容器600とセンサ800とを主に備える。第1センサアセンブリSA1の容器600は、6個のフィルタンクFTのいずれかから漏れ出し且つ供給側エア流路AT1を通過したインクが第1エアレギュレータAR1に流れ込まないようにするための、バッファとして機能する。第2センサアセンブリSA2の容器600は、6個のドレインタンクDTのいずれかから漏れ出し且つ回収側エア流路AT2を通過したインクが第2エアレギュレータAR2に流れ込まないようにするための、バッファとして機能する。
【0072】
第1センサアセンブリSA1のセンサ800及び第2センサアセンブリのセンサ800としては、例えば公知のフロートセンサを用いることができる。各センサ800は、シャフト800aと、シャフト800aに挿通されたフロート800bと、図示しない信号出力機とを備える。フロート800bは、容器600内のインクの量、換言すると容器600内のインクの液面の位置に応じて、シャフト800aに沿って上下動する。信号出力機は、シャフト800aに沿って上下動するフロート800bの位置、つまり、容器600内のインクの液面の位置に応じた信号を、コントローラ700に出力する。第1センサアセンブリSA1において、容器600内に貯留されたインクの液面の位置が、容器600の内部空間670における所定位置(例えば、図9(b)の破線で示される位置)以上である場合、センサ800の信号出力機は、容器600内にインクが存在することを示すオン信号をコントローラ700に出力する。一方、容器600内に貯留されたインクの液面の位置が所定位置に到達していない場合、センサ800の信号出力機はオフ信号をコントローラ700に出力する。つまり、コントローラ700は、第1センサアセンブリSA1の信号出力機からの信号に基づき、第1センサアセンブリSA1の容器600内に6個のフィルタンクFTのいずれかから漏れ出したインクが存在するか否かを検知する。第2センサアセンブリSA2においても同様に、容器600内に貯留されたインクの液面の位置が、容器600の内部空間670における所定位置(例えば、図9(b)の破線で示される位置)以上である場合、センサ800の信号出力機は、容器600内にインクが存在することを示すオン信号をコントローラ700に出力する。一方、容器600内に貯留されたインクの液面の位置が所定位置に到達していない場合、センサ800の信号出力機はオフ信号をコントローラ700に出力する。つまり、コントローラ700は、第2センサアセンブリSA2の信号出力機からの信号に基づき、第2センサアセンブリSA2の容器600内に6個のドレインタンクDTのいずれかから漏れ出したインクが存在するか否かを検知する。
【0073】
容器600は、上壁610、側壁620、フランジ630、円環状プレート640、底板650、及びキャップ660を有する。上壁610、側壁620、底板650、及びキャップ660によって、容器600の内部空間670が形成されている。
【0074】
上壁610、側壁620、及びフランジ630は、例えば、ポリオキシメチレン(POM)樹脂によって一体成型されている。上壁610は一例として円形であり、フランジ630は一例として円環状である。側壁620は、上壁610の円周とフランジ630の内周縁とを接続している。
【0075】
上壁610には、内部空間670と連通する7個の円管状の接続部CPと、センサ800を挿通するための1個の貫通孔THとが形成されている。7個の接続部CPは上壁610の円周に沿って並んでいる。1個の貫通孔THは、上壁610の中央部に位置する。1個の貫通孔THには、センサ800のシャフト800aが挿通される。容器600の内部空間670には円環状のフロート800bが位置し、シャフト800aのうち内部空間670に位置する部分が、円環状のフロート800bの中央の孔に挿通されている。センサ800が貫通孔THに挿通された状態で上から見たとき、センサ800は、上壁610の円周に対して7個の接続部CPよりも内側に位置する。
【0076】
第1センサアセンブリSA1において、6個の接続部CPはそれぞれ、6個の供給側エア流路AT1と流体接続され、1個の接続部CPは管路T1を介して第1エアレギュレータAR1と流体接続される。第2センサアセンブリSA2において、6個の接続部CPはそれぞれ、6個の回収側エア流路AT2と流体接続され、1個の接続部CPは管路T2を介して第2エアレギュレータAR2と流体接続される。つまり、第1エアレギュレータAR1は、管路T1を介して第1センサアセンブリSA1の1個の接続部CPに流体接続されている。第2エアレギュレータAR2は、管路T2を介して第2センサアセンブリSA2の1個の接続部CPに流体接続されている。
【0077】
上壁610の下面には、それぞれが下方に延びる7個のリブ610aが形成されている。7個のリブ610aは、上壁610の円周に沿って並んでいる。各リブ610aは、隣り合う2個の接続部CPの間に位置する。各リブ610aは、隣り合う2個の接続部CPのうちの一方の接続部CPから内部空間670に流入するインクが、上壁610の下面を伝って他方の接続部CPに流入するのを防ぐ。
【0078】
円環状プレート640及び底板650はそれぞれ、例えばステンレス鋼(SUS)で形成されている。底板650は、円環状プレート640をフランジ630の上面に配置した状態で、フランジ630の下面に複数のボルトBTで固定されている。つまり、フランジ630は、円環状プレート640と底板650とによって上下に挟まれている。
【0079】
底板650には底板650を貫通する排出口650aが形成されている。キャップ660は、排出口650aを塞ぐために、底板650の下面に取り付けられている。容器600の内部空間670に溜まったインクは、キャップ660を底板650から取り外すことにより、排出口650aから排出される。
【0080】
<本実施形態の作用効果>
第1センサアセンブリSA1のセンサ800、第2センサアセンブリSA2のセンサ800、第1エアレギュレータAR1、及び第2エアレギュレータAR2はいずれも、コントローラ700と電気的に接続されている。
【0081】
各ヘッドシステム100内で、フィルタンクFTからヘッド機構40を介してドレインタンクDTにインクを流す場合、コントローラ700は、フィルタンクFT内の圧力がドレインタンクDT内の圧力よりも高くなるように、第1エアレギュレータAR1及び第2エアレギュレータAR2を駆動する。なお、この場合、ヘッド機構40の複数のノズル3からインクが漏れるのを防ぐため、コントローラ700は、フィルタンクFT内及びドレインタンクDT内が負圧に維持されるように、第1エアレギュレータAR1及び第2エアレギュレータAR2を駆動する。
【0082】
ここで、例えばフィルタンクFT及びドレインタンクDTにインクタンク400からインクを供給している最中に、フィルタンクFTの不図示の液面センサ及び/又はドレインタンクDTの不図示の液面センサに不具合が発生する場合が考えられる。このような場合、フィルタンクFT及び/又はドレインタンクDTへのインクの供給が止まらず、フィルタンクFT及び/又はドレインタンクDTからインクが漏れ出る可能性がある。そして、フィルタンクFT及び/又はドレインタンクDTから漏れ出たインクは、供給側エア流路AT1及び/又は回収側エア流路AT2を介して、第1センサアセンブリSA1の容器600内及び/又は第2センサアセンブリSA2の容器600内に流入する可能性がある。
【0083】
コントローラ700は、第1センサアセンブリSA1のセンサ800からの信号により容器600内にインクが存在することを検知した場合、及び/又は、第2センサアセンブリSA2のセンサ800からの信号により容器600内にインクが存在することを検知した場合、第1エアレギュレータAR1、第2エアレギュレータAR2、及びHPM500のポンプPの駆動を停止する。これにより、ヘッドシステム100のフィルタンクFT及びドレインタンクDTからのインクの漏れ出しを検知することができるとともに、漏れ出したインクが、第1エアレギュレータAR1及び第2エアレギュレータAR2に流れ込むのを防ぐことができる。
【0084】
また、第1センサアセンブリSA1及び第2センサアセンブリSA2の各々において、7個の接続部CPは、容器600の上壁610に形成されている。このため、例えば1個の接続部CPから流入し容器600の内部空間670に貯留されたインクが、他の接続部CPに流れ込みにくい。
【0085】
また、フィルタンクFT内及びドレインタンクDT内が負圧に維持されるように、コントローラ700が第1エアレギュレータAR1及び第2エアレギュレータAR2を駆動する場合、第1センサアセンブリSA1の内部空間670及び第2センサアセンブリSA2の内部空間670も負圧に維持される。このため、第1センサアセンブリSA1の容器600及び第2センサアセンブリSA2の容器600が円環状プレート640を備えない場合、樹脂製のフランジ630が底板650から離れるように変形するおそれがある。この点、本実施形態では、樹脂製のフランジ630が、樹脂よりも剛性の高いステンレス鋼製の円環状プレート640及び底板650によって上下方向に挟まれているので、上記のフランジ630の変形を抑制することができる。
【0086】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能である。
【0087】
上記実施形態の第1センサアセンブリSA1及び第2センサアセンブリSA2の各々において、容器600の接続部CPは上壁610に形成されていたが、これには限られない。例えば、接続部CPは容器600の側壁620に形成されていてもよい。この場合、接続部CPは、容器600内にインクが存在することをセンサ800が検知した際の容器600内のインクの液面の位置よりも上方に位置すればよい。あるいは、接続部CPは、コントローラ700が第1エアレギュレータAR1、第2エアレギュレータAR2、及びHPM500のポンプPの駆動を停止させた際の容器600内のインクの液面の位置よりも上方に位置すればよい。
【0088】
上記実施形態の第1センサアセンブリSA1及び第2センサアセンブリSA2の各々は、センサ800としてフロートセンサを有していたが、これには限られない。センサ800は、少なくとも容器600内にインクが存在するか否かを検知することができればよく、例えば、発光部と受光部とを備える公知の光学式液面検知センサであってもよく、公知の静電容量式あるいは電極式の液面検知センサ等であってもよい。
【0089】
上記実施形態のプリンタ1000は、6色のインクを吐出する6個のヘッドシステム100を有していたが、これには限られない。例えば、プリンタ1000は、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの4色のみのインクを吐出する4個のヘッドシステム100を有してもよい。この場合、第1センサアセンブリSA1及び第2センサアセンブリSA2の各々は、4個のエア流路を介して4個のヘッドシステムに流体接続される。あるいは、プリンタ1000は、6個のヘッドシステム100の他に、他の複数の色のインクを吐出する複数のヘッドシステムを有してもよい。この場合、プリンタ1000は、複数のヘッドシステムの複数のフィルタンクFTに流体接続される第3センサアセンブリと、複数のヘッドシステムの複数のドレインタンクDTに流体接続される第4センサアセンブリとをさらに有してもよい。
【0090】
上記実施形態において、第1エアレギュレータAR1、第2エアレギュレータAR2、及びHPM500のポンプPの駆動を停止した後、コントローラ700は、容器600のキャップ660を取り外して容器600内に流れ込んだインクを排出口650aから排出することを促す表示を、プリンタ1000の不図示の表示部に表示してもよい。
【0091】
ノズル11aから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0092】
印刷媒体PMは、紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0093】
上記実施形態及びその変形例は、全ての点で例示であって、限定的なものではないと考えられるべきである。例えば、ヘッド機構40の数、構成等は変更し得る。プリンタ1000が同時に印刷可能な色の数も限定はされず、複数のヘッドシステム100を備えつつ単色印刷のみが可能な構成であってもよい。また、各種流路の数、形状、位置等も適宜変更し得る。
【符号の説明】
【0094】
10 筐体
20 サブタンク
40 ヘッド機構
100 ヘッドシステム
400 インクタンク
500 HPM
600 容器
700 コントローラ
800 センサ
1000 プリンタ
AR1 第1エアレギュレータ
AR2 第2エアレギュレータ
AT1 供給側エア流路
AT2 回収側エア流路
CP 接続部
DT ドレインタンク
FT フィルタンク
SA1 第1センサアセンブリ
SA2 第2センサアセンブリ
T1、T2 管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9