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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025069040
(43)【公開日】2025-04-30
(54)【発明の名称】電子レンジ用の食品包装用成形容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20250422BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20250422BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20250422BHJP
   B65D 1/34 20060101ALI20250422BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20250422BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/30 B
B65D1/00 110
B65D1/34
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074677
(22)【出願日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2023178543
(32)【優先日】2023-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000239138
【氏名又は名称】株式会社エフピコ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌登
(72)【発明者】
【氏名】岩藤 千英
(72)【発明者】
【氏名】中神 樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬久
【テーマコード(参考)】
3E013
3E033
4F100
【Fターム(参考)】
3E013BB06
3E013BC04
3E013BC05
3E013BC14
3E013BC15
3E013BD06
3E013BD07
3E013BD11
3E013BE01
3E033AA10
3E033BA14
3E033BA22
3E033BB08
3E033CA07
3E033DD01
3E033FA04
3E033FA05
3E033GA03
4F100AK03C
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK24B
4F100AK54B
4F100AL01B
4F100AL05B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DJ01A
4F100DJ01B
4F100EH20
4F100GB16
4F100JJ03A
4F100JN21C
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】余分な工程や資材を必要とせず経済的に優れ、容器内面の光沢度が50%以上である、電子レンジ用食品容器用途の成形容器の提供。
【解決手段】低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)は、(A)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂からなるポリスチレン系樹脂組成物、または、(B)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂89~99質量%とポリフェニレンエーテル樹脂1~11質量%とからなるポリスチレン系樹脂組成物、をベース樹脂とし、高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)は、(C)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂70~86質量%とポリフェニレンエーテル樹脂14~30質量%とからなるポリスチレン系樹脂組成物、または、(D)スチレン・(メタ)アクリル酸共重合樹脂を80質量%以上含むポリスチレン系樹脂組成物、をベース樹脂とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層とポリオレフィン系樹脂積層フィルム層とを有するポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなり、前記ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層が容器内面を構成するようにして形成された成形容器であって、
前記ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層は、前記ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層との積層面に位置する低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層と、該低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層よりも容器外側に位置する高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層との少なくとも二層を有し、
前記低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層は、以下(A)または(B)いずれかのポリスチレン系樹脂組成物をベース樹脂とし、前記高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層は、以下(C)または(D)いずれかのポリスチレン系樹脂組成物をベース樹脂としており、
(A)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂からなるポリスチレン系樹脂組成物、
(B)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂89~99質量%とポリフェニレンエーテル樹脂1~11質量%とからなるポリスチレン系樹脂組成物、
(C)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂70~86質量%とポリフェニレンエーテル樹脂14~30質量%とからなるポリスチレン系樹脂組成物、
(D)スチレン・(メタ)アクリル酸共重合樹脂を80質量%以上含むポリスチレン系樹脂組成物、
前記ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層は、容器内面に位置するポリオレフィン系樹脂フィルム層と、ポリスチレン系樹脂多層発泡シートとの積層面に位置するポリスチレン系樹脂フィルム層とを有し、
前記ポリオレフィン系樹脂フィルム層すなわち容器内面の光沢度が50%以上である、電子レンジ用の食品包装用成形容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形してなる成形容器に関する。より具体的には、ベース樹脂の組成が異なる少なくとも二層以上のポリスチレン系樹脂発泡層と、容器内面に位置するポリオレフィン系樹脂フィルム層とを有し、該ポリオレフィン系樹脂フィルム層すなわち、容器内面の光沢度が50%以上である成形容器に関する。本発明の成形容器は、電子レンジ用食品容器として使用する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットやコンビニエンスストアで魚や精肉、弁当や惣菜を販売するための食品容器として、ポリスチレン系樹脂発泡シート、または、ポリスチレン系樹脂発泡シートを基材とした積層シートを真空成形等で熱成形した成形容器が広く使われている。
【0003】
このような成形容器は、その用途によって、ポリスチレン系樹脂発泡シートのベース樹脂の使い分けがされている。
【0004】
魚や精肉が入ったトレーのように、冷蔵~常温以下で使用される成形容器には、汎用ポリスチレン(GPPS)を主成分としたビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂組成物をベース樹脂としたポリスチレン系樹脂発泡シートを使用する。
【0005】
一方、電子レンジ用食品容器として使用する場合には、容器自体の耐熱性が必要となるので、スチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とした、ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂組成物をベース樹脂としたポリスチレン系樹脂発泡シートや、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)とポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)との樹脂混合物からなるビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂組成物をベース樹脂としたポリスチレン系樹脂発泡シートを使用する(特許文献1、特許文献2)。
【0006】
さらに、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)とポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)との樹脂混合物をベース樹脂としたポリスチレン系樹脂発泡シートの応用例として、ベース樹脂の配合が異なる二層以上の発泡層を有するポリスチレン系樹脂多層発泡シートを使用する例もある(特許文献3、特許文献4)。
【0007】
また、電子レンジ用食品容器として使用する場合、ポリスチレン系樹脂発泡シートは電子レンジ加熱で温められた食品に由来する高温の油分が直接触れると溶融するおそれがあるので、それを防ぐために容器内面すなわち、食品接触面にポリオレフィン系樹脂フィルム層を設けることが一般的である(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-137911号公報
【特許文献2】特開2008-094919号公報
【特許文献3】特開2014-168861号公報
【特許文献4】特開2016-050314号公報
【特許文献5】特開2019-043076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
容器内面に位置するポリオレフィン系樹脂フィルム層の光沢度、すなわち、容器内面の光沢度は高いほど好ましい。容器内面の光沢度が高いと内容物である食品の見栄えを良くし、商品の購買意欲を上げることができる。
【0010】
ポリオレフィン系樹脂フィルム層は、ポリスチレン系樹脂発泡シートに積層される前は90%以上の光沢度を有している。しかし、ポリスチレン系樹脂発泡シートに積層されると、その光沢度が低下するという現象が生じる。それゆえ、この光沢度の低下を防ぐ方法が種々検討されてきた。
【0011】
特許文献5の段落0047および表1等に記載された発泡容器(C)は、最初にPSPシートの片面に厚さ15μmのPSフィルムを積層して積層シートを作製し、次いで、この積層シートのPSフィルム側に積層フィルム(CPP25μm/PS20μm)を熱ラミネートしたものである。特許文献5では、この例において、期待する光沢度と期待する接着強度が両立して得られたことが記載されている。しかし、この方法は、最初にPSPに積層するPSフィルムが余分に必要となり、フィルムを熱融着で積層する工程が2回必要であるので経済的観点から好ましいものではない。
【0012】
本発明の課題は、余分な工程や資材を必要とせず経済的に優れている、容器内面に位置するポリオレフィン系樹脂フィルムの光沢度、すなわち、容器内面の光沢度が50%以上である、電子レンジ用食品容器用途の成形容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記した課題を解決するため種々検討を重ねた結果、以下の構成を見出した。
【0014】
即ち、本発明にかかる電子レンジ用の食品包装用成形容器は、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層とポリオレフィン系樹脂積層フィルム層とを有するポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなり、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層が容器内面を構成するようにして形成された成形容器であって、
ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層は、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層との積層面に位置する低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層と、該低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層よりも容器外側に位置する高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層との少なくとも二層を有し、
低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層は、以下(A)または(B)いずれかのポリスチレン系樹脂組成物をベース樹脂とし、高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層は、以下(C)または(D)いずれかのポリスチレン系樹脂組成物をベース樹脂としており、
(A)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂からなるポリスチレン系樹脂組成物、
(B)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂89~99質量%とポリフェニレンエーテル樹脂1~11質量%とからなるポリスチレン系樹脂組成物、
(C)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂70~86質量%とポリフェニレンエーテル樹脂14~30質量%とからなるポリスチレン系樹脂組成物、
(D)スチレン・(メタ)アクリル酸共重合樹脂を80質量%以上含むポリスチレン系樹脂組成物、
ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層は、容器内面に位置するポリオレフィン系樹脂フィルム層と、ポリスチレン系樹脂多層発泡シートとの積層面に位置するポリスチレン系樹脂フィルム層とを有し、
ポリオレフィン系樹脂フィルム層すなわち容器内面の光沢度が50%以上である。
【0015】
尚、本発明における「ビカット軟化温度」とは、JISK7206「プラスチック-熱可塑性プラスチック-ビカット軟化温度(VST)の求め方」におけるB50法(試験荷重50Nおよび昇温速度50℃/h)に準拠して測定されるものである。
【0016】
また、本発明における「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容器内面に位置するポリオレフィン系樹脂フィルム層、すなわち、容器内面の光沢度が50%以上であり、余分な工程や材料を必要とせず経済的に優れている、電子レンジ用食品容器用途の成形容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態における包装用容器を示す断面図。
図2】(a)及び(b)は、図1のP部拡大図。
図3】(a)及び(b)は、同包装用容器に用いられるポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造工程を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における「主成分」は、次のように定義される。あるポリマーにおける主成分とは、その構成要素として50質量%以上を占めるモノマーのことである。複数のポリマーからなる樹脂組成物における主成分とは、その構成要素として50質量%以上を占めるポリマーのことである。
【0020】
図1は本発明の成形容器の一実施形態(第1実施形態)を説明するための模式図である。図1に成形容器を示した。図2に成形容器の層構成を、図3に成形容器の構成材料であるポリスチレン系樹脂多層発泡シートおよびポリオレフィン系樹脂積層フィルムの層構成を示した。以下、この図を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0021】
(成形容器の層構成および製造方法)
成形容器(1)は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(1S)を真空成形等の熱成形で容器形状に形成したものである。
【0022】
成形容器(1)を構成するポリスチレン系樹脂積層発泡シート(1S)は、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)とポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)とが積層一体化されたものであり、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)側が容器外側に、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)側が容器内側に位置するように形成される。結果、成形容器(1)は、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層(10)を容器外側に、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層(20)を容器内側に備えたものとなる。
【0023】
ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層(10)は、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層(20)との積層面に位置する低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)よりも容器外側に位置する高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)とを有している。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層(20)は、容器内面に位置するポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)と、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層(10)との積層面に位置するポリスチレン系樹脂フィルム層(22)と、両フィルム層との間に位置するドライラミネート接着剤層(23)を有している。
【0025】
ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(1S)を成形容器(1)に熱成形する方法は特に限定されるものではなく、真空成形、圧空成形、および真空圧空成形など、本発明の目的を達成し得る範囲で適宜選択することができる。熱成形時における加熱条件等についても特に制限されるものではなく、本発明の目的を達成し得る範囲で適宜設定することができる。
【0026】
(ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの層構成、層配合、および製造方法)
ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層(10)の材料であるポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)は、少なくとも一方の最外側に位置する低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と、高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)とを有する多層の発泡シートである。ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)を作製する方法は特に限定されないが、一般的には低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)とを共押出することで作製することができる。
【0027】
ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)は、ベース樹脂としてのポリスチレン系樹脂組成物に気泡調整剤および発泡剤等が添加され、溶融し押出され発泡シートとして形成される。本発明においては、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)および高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)それぞれのベース樹脂の組成に特徴がある。
【0028】
低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)は、以下に示した(A)または(B)いずれかのポリスチレン系樹脂組成物をベース樹脂とした発泡層である。
【0029】
(A)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂組成物。
(B)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂89~99質量%とポリフェニレンエーテル樹脂1~11質量%とからなるポリスチレン系樹脂組成物。
【0030】
以下、これらのポリスチレン系樹脂組成物を、ポリスチレン系樹脂組成物(A)、ポリスチレン系樹脂組成物(B)と称する。
【0031】
ポリスチレン系樹脂組成物(A)を構成するビカット軟化温度105℃以下ポリスチレン系樹脂としては、スチレンホモポリマーや、スチレンとスチレン以外のモノマーからなるコポリマーを用いることができる。具体的には、汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃ポリスチレン(HIPS)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー、スチレン・(メタ)アクリル酸共重合樹脂、スチレン・無水マレイン酸コポリマー、スチレン系エラストマー(SBS、SEBS、SIS、SEPS)等が挙げられる。これらビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂を単独または混合して使用することができる。なかでも汎用ポリスチレン(GPPS)や、汎用ポリスチレン(GPPS)と耐衝撃ポリスチレン(HIPS)との混合物が好適に用いられる。
【0032】
ポリスチレン系樹脂組成物(B)を構成するビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂としては、上記で挙げられたものから単独または混合物として使用することができる。なかでも汎用ポリスチレン(GPPS)が好適に用いられる。
【0033】
ポリスチレン系樹脂組成物(B)を構成するポリフェニレンエーテル樹脂としては、ポリ(2,6-ジメチルフェニレン-1,4-エーテル)や、ポリ(2,6-ジエチルフェニレン-1,4-エーテル)等が挙げられる。なかでも、ポリ(2,6-ジメチルフェニレン-1,4-エーテル)が好適に用いられる。
【0034】
ベース樹脂としてポリスチレン系樹脂組成物(B)を採用する場合は、ポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が低いほど、成形容器(1)におけるポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)の光沢度が高くなる。一方で、ポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が高いほど、成形容器(1)の耐熱性は高くなる。
【0035】
高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)は、以下に示したポリスチレン系樹脂組成物(C)または(D)をベース樹脂とした発泡層である。
【0036】
(C)ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂70~86質量%とポリフェニレンエーテル樹脂14~30質量%とからなるポリスチレン系樹脂組成物。
(D)スチレン・(メタ)アクリル酸共重合樹脂を80質量%以上含んでいる、ポリスチレン系樹脂組成物。
【0037】
以下、これらの樹脂組成物をポリスチレン系樹脂組成物(C)およびポリスチレン系樹脂組成物(D)と称する。
【0038】
ポリスチレン系樹脂組成物(C)を構成するビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂としては、上記で挙げられたものから単独または混合物として使用することができる。なかでも汎用ポリスチレン(GPPS)が好適に用いられる。
【0039】
ポリスチレン系樹脂組成物(C)を構成するポリフェニレンエーテル樹脂としては、上記で挙げられたものから単独または混合物として使用することができる。なかでもポリ(2,6-ジメチルフェニレン-1,4-エーテル)が好適に用いられる。
【0040】
ポリスチレン系樹脂組成物(C)の一例として、汎用ポリスチレン(GPPS)とポリフェニレンエーテル樹脂とからなるポリスチレン系樹脂組成物が挙げられる。汎用ポリスチレン(GPPS)のビカット軟化温度は102℃前後である。これに対し、汎用ポリスチレン70~86質量%とポリフェニレンエーテル樹脂14~30質量%からなるポリスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は110~155℃である。
【0041】
ポリスチレン系樹脂組成物(C)におけるポリフェニレンエーテル樹脂の濃度が14質量%未満であると、成形容器(10)の耐熱性が不足する場合がある。一方、30質量%を超えると、ポリスチレン系樹脂発泡シート(10S)を容器形状に熱成形した際に、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)それぞれの二次発泡後の気泡径とを揃えることが困難となり、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)との界面において層間剥離を生じるおそれがある。層間剥離が生じると、成形容器(10)の機械的物性の低下を引き起こす。
【0042】
ポリスチレン系樹脂組成物(D)を構成するスチレン・(メタ)アクリル酸共重合樹脂としては、スチレン・アクリル酸コポリマー、スチレン・メタクリル酸コポリマー等が挙げられ、これらを単独または混合物として使用することができる。なかでもスチレンモノマー85~95質量%とメタクリル酸モノマー5~15質量%からなるスチレン・メタクリル酸コポリマーが好適に用いられる。このようなモノマー構成からなるスチレン・メタクリル酸コポリマーは、通常110℃以上のビカット軟化温度を有する。
【0043】
ポリスチレン系樹脂組成物(D)は、スチレン・(メタ)アクリル酸系コポリマーを80質量%以上含んでいるという要件を満たしていれば、本発明の目的を損なわない範囲で、スチレン・(メタ)アクリル酸以外のポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、およびその他の熱可塑性樹脂を含んでいても良い。
【0044】
低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)のベース樹脂を構成するポリスチレン系樹脂組成物(A)または(B)と、高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)のベース樹脂を構成するポリスチレン系樹脂組成物(C)または(D)との組み合わせは、適宜、選択することができる。すなわち、(A)/(C)、(A)/(D)、(B)/(C)、(B)/(D)すべての組み合わせが可能である。
【0045】
ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)は、一般的な樹脂発泡シートと同様の製造方法を採用して作製することができる。ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)は、ベース樹脂としてのポリスチレン系樹脂組成物(A)、(B)、(C)または(D)に、発泡剤、気泡調整剤としてのフィラー、および他の添加剤等を配合して溶融し押し出され、多層の発泡シートとして作製される。
【0046】
ポリスチレン系樹脂組成物(A)~(D)に含有させる発泡剤としては、分解型発泡剤または物理的発泡剤が挙げられる。分解型発泡剤としては、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド、ホウ水素ナトリウム等の無機系分解性発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビススルホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル及びジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタンメチレンテロラミン及びN,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0047】
物理的発泡剤としては、例えば、窒素、二酸化炭素、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ノルマルへキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソヘプタン、シクロヘプタン、ベンゼン、トルエン、メチルエーテル、水などが挙げられる。なかでもブタンおよびブタンと他の脂肪族炭化水素(例えばイソブタン)との混合物が好ましい。
【0048】
気泡調整剤としては、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機化合物からなる粉末を採用させ得る。
【0049】
ポリスチレン系樹脂組成物(A)~(D)に含有させるその他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、抗菌剤、消臭剤等が挙げられる。
【0050】
ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)の坪量(単位面積あたりの質量)は、好ましくは90~400g/mであり、より好ましくは100~350g/mである。ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)のシート厚さは、好ましくは0.5~4mmであり、より好ましくは1~3mmである。ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)の発泡倍率は3~20倍が好ましい。
【0051】
ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)における低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)の発泡倍率は3~15倍が好ましく、高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)の発泡倍率は5~25倍が好ましい。低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)は高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)よりも熱成形時の加熱による二次発泡で気泡が成長しやすいので、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)の発泡倍率は高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)の発泡倍率に対して0.4~0.9にしておくことが好ましい。このようにしておくことで、熱成形後における低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)との気泡径が揃うので、低耐熱発泡層(10)と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)との界面で生じる層間剥離を防ぐことができる。
【0052】
低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)との質量比は20:80~60:40である。高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)の質量比が40を下回ると、電子レンジ加熱で容器変形が生じるおそれがある。なお、図1に示した第1実施形態のように、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)それぞれ一層ずつからなる二層構成においては、好ましくは質量比40:60~60:40であり、より好ましくは質量比50:50である。
【0053】
ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)の低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)の表面、すなわち、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)が積層される面の算術平均粗さRaは、好ましくは3~8μm、より好ましくは3~7μm、さらに好ましくは3~6μmである。算術平均粗さRaは、JISB0601:2013「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語、定義及び表面性状パラメータ」に準拠して測定した値である。算術平均粗さRaの具体的な測定方法は、後述する実施例の段落に記載した。ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)が積層される面である、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)の表面の算術平均粗さRaが小さいほど、成形容器(1)におけるポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)の光沢度、すなわち、容器内面の光沢度が高くなる。
【0054】
成形容器(1)における、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層(10)の発泡倍率は5~40倍が好ましい。成形容器(1)におけるポリスチレン系樹脂多層発泡シート層(10)の層厚さは、好ましくは1~8mmであり、より好ましくは1.5~6mmである。
【0055】
成形容器(1)における、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)および高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)の発泡倍率は5~40が好ましい。前述したように、シート状態では低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)の発泡倍率は高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)の発泡倍率よりも低めに設定してあり、結果、熱成形後の低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)の発泡倍率と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)の発泡倍率との差は少なくなる。各層の発泡倍率は、一方の発泡倍率に対してもう一方の発泡倍率が0.8~1.25の範囲におさまっていることが好ましい。
【0056】
図1に示した第1実施形態において、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層(10)は、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)との二層からなる構成だが、これを三層以上の層構成とすることもできる。
【0057】
本発明の成形容器において、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層は、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層との積層面に位置する低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層と、該低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層よりも容器外側に位置する高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層との少なくとも二層を必須の構成要件としている。したがって、高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)の容器外側に、図2(a)及び図3(a)に二点鎖線で示しているように、さらに低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(13)を備えた構成とすることができる(層構成:20/11/12/13)。
【0058】
三層構成とする場合、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(13)とは、それぞれが前述した低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の要件を満たしていれば、同じ配合であってもよいし別の配合であってもよい。
【0059】
三層構成のポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)は、二層構成のポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)と同様、共押出しで作製することができる(層構成:11/12/13)。
【0060】
三層構成のポリスチレン系樹脂多層発泡シートの坪量は、好ましくは90~400g/mであり、より好ましくは100~300g/mである。三層構成のポリスチレン系樹脂多層発泡シートにおける低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11、13)の発泡倍率は3~15倍が好ましく、高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)の発泡倍率は5~25倍が好ましい。低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11、13)は高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)よりも熱成形時の加熱による二次発泡で気泡が成長しやすいので、シート状態における低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11、13)の発泡倍率は高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)の発泡倍率に対して0.4~0.9であることが好ましい。低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の質量(11と13との合計)と、高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)との質量比は20:80~60:40である。高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)の質量比が40を下回ると、電子レンジ加熱で容器変形が生じるおそれがある。
【0061】
また、このように低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11と13)で高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)を挟みこんだ三層構成とした場合、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)と低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(13)とは、同じ配合、同じ坪量、同じ発泡倍率であることが好ましい。このようにしておくと、成形容器においてポリスチレン系樹脂多層発泡シート層が容器内外方向に対称となるので、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11、13)と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(12)との熱変形度合いの差による容器の反りを抑えやすくなる。
【0062】
(ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの層構成および製造方法)
図1に示した第1実施形態においては、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層(20)は、容器内面からポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)、ドライラミネート接着剤層(23)、ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)の順に積層された層構成を有する。容器内面すなわち、食品接触面に位置するポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)は、電子レンジで温められた食材に由来する高温になった油分からポリスチレン系樹脂多層発泡シート層(10)を保護する機能を有する。
【0063】
ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層(20)は、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)がポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)に積層されてなる層である。図1に示した実施形態において、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)は、ポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)、ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)、ドライラミネート接着剤層(23)を有している。ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)は、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)をポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)に熱融着させるため層である。ドライラミネート接着剤層(23)は、ポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)とポリスチレン系樹脂フィルム層(22)とを貼り合わせ、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)とするための層である。
【0064】
ポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)を構成するポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン、エチレンまたはα-オレフィンをモノマーとしたホモポリマーまたはコポリマーが挙げられ、これらを単独または混合物として使用することができる。なかでも耐熱性および耐油性の観点から、プロピレンを主成分とするプロピレン系重合体(プロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンランダムコポリマーおよびプロピレン・エチレンブロックコポリマー等)が好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)の厚さは、好ましくは10~80μmであり、耐油性の観点からすれば40μm以上がより好ましく、経済的な観点からすれば10~25μmがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)にはポリオレフィン系樹脂フィルムを材料として使用することができ、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)や一軸方向に微延伸されたポリプロピレン系樹脂フィルム(融解ピーク温度160℃以上のホモポリプロピレンからなるCPPフィルムを、135~140℃で熱処理しつつ、一軸方向に1.2~1.5倍延伸させたフィルム)等を好適に用いることができる。
【0065】
ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)を構成するポリスチレン系樹脂は、スチレンホモポリマー、スチレンとスチレン以外のモノマーとのコポリマー、およびこれらの混合物であり、汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃ポリスチレン(HIPS)、スチレン系エラストマー(SBS、SEBS、SIS、SEPS)等が挙げられる。なかでも汎用ポリスチレン(GPPS)を主成分としたものが好ましい。ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)の厚さは、好ましくは10~100μmである。
【0066】
ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)の厚さが厚いほど、成形容器(1)におけるポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)の光沢度、すなわち、容器内面の光沢度を高くすることができる。したがって、単純に光沢性だけの観点からすれば、ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)の厚さは、25μm以上がより好ましい。
【0067】
一方で、後述するように、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)が積層される面である低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)の表面の平滑性を向上させるといった方法や、ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)の材料として二軸延伸ポリスチレンフィルム(OPSフィルム)を使用するなどの方法を用いれば、ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)の厚さを厚くせずとも、成形容器(1)におけるポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)の光沢度、すなわち、容器内面の光沢度を上げることができるので、光沢性と経済性の両立を図るという観点からすれば、10~20μmがより好ましい。
【0068】
ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)には、ポリスチレン系樹脂フィルムを材料として使用することができる。ポリスチレン系樹脂フィルムとしては、無延伸のPSフィルムや、二軸延伸PSフィルム(OPSフィルム)等を使用することができる。特に、OPSフィルムを用いた場合、OPSフィルムの厚さを厚くすることなく、成形容器(1)におけるポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)の光沢度すなわち、容器内面の光沢度を効率的に高くすることができる。OPSフィルムを使用した場合に効率的に光沢度を高くすることができる理由については、実施例の段落で詳細に説明する。
【0069】
ドライラミネート接着剤層(23)は、ポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)とポリスチレン系樹脂フィルム層(22)とを積層するための接着剤層である。前述したように、ポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)の材料としてポリオレフィン系樹脂フィルムを使用し、ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)としてポリスチレン系樹脂フィルムを使用した場合において、両フィルムをドライラミネート接着剤で貼り合わせてポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)を作製する。ドライラミネート接着剤層(23)を構成するドライラミネート接着剤としては、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、エステル系、エーテル系または酢酸ビニル系等のドライラミネート接着剤が挙げられる。なかでも接着力に優れる点からウレタン系接着剤が好ましい。ドライラミネート接着剤層の厚さまたは塗布量は特に、限定されないが、好ましくは0.5~5g/mであり、より好ましくは1~3g/mである。
【0070】
ポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)とポリスチレン系樹脂フィルム層(22)との間には印刷層が設けられていてもよい。その場合、ポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)/印刷層/ドライラミネート接着剤層(23)/ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)という層構成か、ポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)/ドライラミネート接着剤層(23)/印刷層/ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)いずれかの層構成をとりうる。
【0071】
上記のように作製されたポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)は、ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)を熱融着層として、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)の低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(11)側に熱ラミネート法で積層され一体化し、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(1S)になる。
【0072】
本発明の成形容器(1)は、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層(10)の容器外側に、図2(b)に二点鎖線で示しているように、さらにポリスチレン系樹脂フィルム層(30)を設けることもできる(層構成:20/10/30)。この場合、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層(10)とポリスチレン系樹脂フィルム層(30)との間に印刷層を有していてもよい(層構成:20/10/印刷層/30)。
【0073】
ポリスチレン系樹脂フィルム層(30)を構成するポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン系樹脂フィルム層(22)と同様のものを使用することができ、好ましい厚さ範囲等も同様である。ポリスチレン系樹脂フィルム層(30)の材料には、ポリスチレン系樹脂フィルム(30F)を使用することができる。該ポリスチレン系樹脂フィルム(30F)は、図3(b)に二点鎖線で示しているように、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(20F)をポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)に積層するのと同様に、熱ラミネート法でポリスチレン系樹脂多層発泡シート(10S)の容器外側に積層することができる。
【0074】
(第2~第3実施形態)
本発明の電子レンジ食品容器は、図1で示した第1の実施形態以外にも次の層構成が挙げられる。以下、第2~第3の実施形態を説明する。
【0075】
第2および第3実施形態としては、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層がガスバリア層を有する実施形態である。ガスバリア層を構成するガスバリア樹脂は、ガスバリア性が得られるものであれば適宜採用することができ、例えばエチレン・ビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロン(NY)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
【0076】
第2実施形態は、以下の層構成を有する。
(ポリオレフィン系樹脂フィルム層/ドライラミネート接着剤層/ガスバリア樹脂フィルム層/ドライラミネート接着剤層/ポリスチレン系樹脂フィルム層)/ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層。
【0077】
ポリオレフィン系樹脂フィルム層、ポリスチレン系樹脂フィルム層、およびガスバリア樹脂フィルム層は、それぞれポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレン系樹脂フィルム、およびガスバリア性樹脂フィルムを使用することができる。これら3種類のフィルムをドライラミネート接着剤で貼り合わせて、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムとすることができる。このようにして作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを、ポリスチレン系樹脂フィルム層を熱融着層として、ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層に熱ラミネート法で積層し、第2実施形態の層構成とすることができる。
【0078】
また、ポリオレフィン系樹脂フィルム層とドライラミネート接着剤層との間、ドライラミネート接着剤層とガスバリア樹脂層との間、ドライラミネート接着剤層とポリスチレン系樹脂フィルム層との間には、印刷層を設けることができる。
【0079】
第3実施形態は、以下の層構成を有する。
((ポリオレフィン系樹脂層/接着樹脂層/ガスバリア樹脂層/接着樹脂層/ポリオレフィン系樹脂層)/ドライラミネート接着剤層/ポリスチレン系樹脂フィルム層)/ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層。
【0080】
第3実施形態においては、(ポリオレフィン系樹脂層/接着樹脂層/ガスバリア樹脂層/接着樹脂層/ポリオレフィン系樹脂フィルム層)の共押出しフィルムを、ポリオレフィン系樹脂フィルム層として使用することができる。このような共押出フィルムとポリスチレン系樹脂フィルムとをドライラミネート接着剤で貼り合わせ、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムとすることができる。このようにして作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、ポリスチレン系樹脂フィルム層を熱融着層として、ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層側に熱ラミネート法で積層し、第3実施形態の層構成とすることができる。
【0081】
また、ポリオレフィン系樹脂フィルム層とドライラミネート接着剤層との間、または、ドライラミネート接着剤層とポリスチレン系樹脂フィルム層との間には、印刷層を設けることができる。
【0082】
第2~第3実施形態におけるポリオレフィン系樹脂フィルム層およびポリスチレン系樹脂フィルム層は、それぞれ、第1の実施形態におけるポリオレフィン系樹脂フィルム層(21)およびポリスチレン系樹脂フィルム層(22)に相当するものであり、各層を構成する樹脂、および、好ましい厚さ範囲などは、第1実施形態で説明したものと同様である。ドライラミネート接着剤に関しても同様である。
【0083】
(成形容器の性質)
<ポリオレフィン系樹脂フィルム層の光沢度>
本発明の成形容器は、容器内面に位置するポリオレフィン系樹脂フィルムの光沢度の、すなわち、容器内面における光沢度が、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。本発明における光沢度の測定は、JISZ8741:1997「鏡面光沢度-測定方法」の60度鏡面法に準拠して測定した光沢度である。光沢度の具体的な測定方法は、実施例の段落に記載した。
【0084】
<ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層の接着強度>
本発明の成形容器における、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層とポリオレフィン系樹脂積層フィルム層との接着強度は、5.0N/15mm以上であることが好ましい。
【0085】
ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層とポリオレフィン系樹脂積層フィルム層との接着強度は、成形容器を電子レンジ加熱した際に生じることがある「バブル」の発生と関係がある。バブルとは、ポリスチレン系樹脂発泡シート層の残存気体が、電子レンジ加熱によって膨張し、ポリスチレン系樹脂発泡シートとポリオレフィン系樹脂積層フィルムとの接着界面を剥離して浮き上がらせ、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムが水膨れのように膨らむ現象である。この現象は見た目の観点から好ましくない。本発明の成形容器は、ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層とポリオレフィン系樹脂積層フィルム層とが上記した接着強度を有している結果、バブルの発生を効果的に抑えることができる。接着強度の具体的な測定方法は、実施例の段落に記載した。
【実施例0086】
以下、シート押出し方向を「流れ方向」とし、シート押出し方向と直交する方向を「幅方向」と記載した。
【0087】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例および比較例の評価結果等を表1~9に記載した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
(評価方法)
<ポリスチレン系樹脂発泡シートの発泡倍率(水中置換法)>
実施例および比較例で使用したポリスチレン系樹脂発泡シートの発泡倍率は、次のように測定した。
【0098】
シートの幅方向に、中央および各両端から5cm内側の計3か所から、10cm×10cmの切片を切り出し測定用試料とした。得られた測定試料について、JISK7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠して、見掛け全体密度(定義:成形中に形成されたすべてのスキンを含む試料の単位体積あたりの質量)を測定した。次いで、同測定試料を熱プレス機でプレスして非発泡の試料とし、JISK7112-1:2023「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の求め方-第1部:水中置換法、液体ピクノメータ法及び浮沈法」のA法:水中置換法に準拠して密度を測定した。そして、次式で発泡倍率を求めた。得られた3つの発泡倍率を、測定対象の発泡倍率とした。
発泡倍率=見掛け全体密度(kg/m)÷密度(kg/m
【0099】
<ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの各発泡層の発泡倍率(実測厚さと真密度から算出する方法)>
まず、発泡倍率を求めたい発泡層の厚さを、測長機能付きのマイクロスコープを用いた断面観察によって測定する。次いで、その発泡層が非発泡だった場合の厚さを、その発泡層を構成しているベース樹脂等の密度すなわち、真密度を基に算出する。最後に、実測した発泡層の厚さを、その発泡層が非発泡だった場合の計算厚さで割って発泡倍率を求めた。
【0100】
(具体例)
・層坪量:55g/m
・発泡層の実測厚み:0.00075m
・発泡層が非発泡だった場合の密度:1.05×10g/m
坪量55g/mにおいて、発泡層が非発泡だった場合の層厚さは、
55(g/m)÷1.05×10(g/m)≒0.00005(m)
したがって、発泡倍率は、
0.00075(m)÷0.00005(m)=15倍となる。
【0101】
<ポリスチレン系樹脂発泡シートの算術平均粗さRa>
各実施例および比較例で使用したポリスチレン系樹脂発泡シートの、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムが積層される面の算術平均粗さRaは、JISB0601:2013「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語、定義及び表面性状パラメータ」等に準拠し、ミツトヨ製算術平均粗さ測定機「SURFTEST SV-2100」を使用して、λc(測定断面曲線からうねりを除去するパラメータ):2.5mm、λs(測定断面曲線からノイズを除去するパラメータ):8μm、評価長さ:12.5mmの条件で測定した。
【0102】
サンプル採取は次のとおりである。シートの幅方向に中央および両端から各5cm内側の計3か所から2cm×2cmのサンプルを採取し、採取したそれぞれのサンプルについて、シート流れ方向と幅方向に算術平均粗さRaを測定した。得られた6つの測定値の平均値を、測定対象であるシートの測定値とした。
【0103】
<成形容器におけるポリオレフィン系樹脂フィルム層すなわち、容器内面の光沢度>
容器内面の光沢度は、JISZ8741:1997「鏡面光沢度-測定方法」の60度鏡面法に準拠して測定した。各実施例および比較例において同条件で作製された3つの成形容器の平坦部から、2cm×2cmの領域を、1容器につき1か所ずつ任意に切り出し、測定サンプルとした。なお、平坦部がない場合は曲率の大きな平面を選んで切り出した。得られたサンプルの光沢度を、日本電色工業社製光沢計「GlossMeter VG7000」を使用して測定し、3つの測定値の平均値を、測定対象の光沢度とした。
【0104】
<ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層の剥離強度>
実施例および比較例で作製した成形容器の平坦な底面部から、成形容器を構成するポリスチレン系樹脂発泡シートの押出し方向と幅方向に、幅15mm×長さ70mmの試験片をそれぞれ切り出した。サンプルは、島津製作所製「オートグラフAG-Xps」を使用して、JISK6854-1:1999「接着剤-はく離接着強さ試験方法-第1部:90度はく離」に準拠して測定した。
【0105】
具体的な方法を説明する。試験片の一端の短辺側から長辺方向に、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層を20mm剥離する。試験片をローラ式剥離装置で保持してから、剥離したフィルムをオートグラフのつかみ具で固定し、剥離角度90度を維持しながら試験速度500mm/分で50mmにわたって剥離を行い、平均荷重を剥離強度とした。なお、この測定を行うとき、ポリスチレン系樹脂発泡シート層とポリオレフィン系樹脂積層フィルム層との接着が強固であると、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムがポリスチレン系樹脂多層発泡シートの界面で剥離せず、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムがポリスチレン系樹脂多層発泡シートを破壊しながら剥離するようになる。この場合の剥離強度は、ドライラミネート接着剤によって積層されている、ポリオレフィン系樹脂フィルム層とポリスチレン系樹脂フィルム層との接着強度である5N/15mm以上であるとして、測定値を5N/15mm以上として記録することとした。
【0106】
<成形容器における、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(第1層、フィルム積層側発泡層)と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層(第2層、容器外側発泡層)との界面における層間剥離の有無>
成形容器におけるポリスチレン系樹脂多層発泡シート層の断面マイクロスコープで観察し、低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層と高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層との界面における層間剥離の有無を確認した。観察は3個の成形容器について行った。観察部位は、各成形容器の底部3箇所、底部と側壁部の接続部2箇所、側壁部2箇所、それぞれ10mm幅の断面観察を行った。層間剥離が一つも無い場合を○評価とし、層間剥離が一つでもあった場合×評価とした。目標基準を○評価とした。
【0107】
<電子レンジ加熱に対する成形容器の耐熱性>
実施例および各比較例の成形容器(開口φ184mm、底部φ140mm(面積154cm)、深さ34mmの円形容器)にナポリタンスパゲティ300gを充填し、1500W×4分間の加熱条件で3サンプル、1500W×5分間の加熱条件で3サンプル、計6サンプルで試験した。300gのナポリタンスパゲティを1500Wで加熱した場合、4分間の加熱でちょうど食べごろの熱さになるということを踏まえ、以下の基準で評価した。各条件の3サンプル中、もっとも短い時間で変形したサンプルの試験結果を、その実施例および比較例の評価結果とした。ここでの「変形」とは、容器形状をほとんどとどめておらず、シート状の平板に近い状態となっているものを「変形」と定義する。わずかな反りや捻りなどがあるだけで、食品容器としての機能を損なっていないものについては「未変形」とした。
・4分加熱サンプルに1個でも「変形」があった。:不可
・4分加熱サンプルの3個全て「未変形」で、5分加熱サンプルに1個でも「変形」があった。:可
・4分加熱サンプルの3個全て「未変形」で、5分加熱サンプルの3個全て「未変形」:適
【0108】
(ポリスチレン系樹脂発泡シートのポリフェニレンエーテル樹脂濃度の測定方法)
発泡シートの厚さ方向における各部位のビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂(GPPS、HIPS等)、ポリフェニレンエーテル樹脂、およびスチレン・(メタ)アクリル酸共重合樹脂の濃度を把握する必要がある場合には、次のような方法で把握することができる。
【0109】
ポリスチレン系樹脂発泡シートから、シートの厚さ方向に直交する方向(平面方向)に沿って発泡層をスライスして薄片試料を採取する。得られた薄片試料に必要な調整を施して、FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)で、ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂(GPPS、HIPS等)、ポリフェニレンエーテル樹脂、およびスチレン・(メタ)アクリル酸共重合樹脂スチレン・(メタ)アクリル酸共重合樹脂の有無を定性分析した後、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて定量分析を行うなどして、各樹脂成分の濃度を測定することができる。
【0110】
(ポリスチレン系樹脂多層発泡シートのベース樹脂)
最初に、各実施例および各比較例において、ポリスチレン系樹脂多層発泡シートのベース樹脂として使用した樹脂を以下に示した。
【0111】
・SABIC社製「ノリルEFN4230」
ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)と汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)との混合物、PPE/PS=質量比70/30
【0112】
・DIC製「XC-515」
汎用ポリスチレン樹脂(GPPS、ビカット軟化温度103℃)
【0113】
・東洋スチレン社製「T080」
スチレン・メタクリル酸共重合樹脂(スチレン/メタクリル酸=質量比92/8、ビカット軟化温度117℃)
【0114】
・旭化成ケミカルズ社製「タフプレン125」
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー(SBS)
【0115】
・東洋スチレン社製「E641N」
耐衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS、ビカット軟化温度105℃以下)
【0116】
・東洋スチレン社製「HRM12」
汎用ポリスチレン樹脂(GPPS、ビカット軟化温度105℃以下)
【0117】
[実施例1]
(ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの作製)
第1混合物(ベース樹脂+気泡調整剤+発泡剤)からなる第1発泡層と、第2混合物(ベース樹脂+気泡調整剤+発泡剤)からなる第2発泡層とからなる、ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの作製方法について説明する。
【0118】
上流側にスクリュー径90mmの単軸押出機、下流側にスクリュー径150mmの単軸押出機とが直列に配置されたタンデム押出機を2系統用意し、これらを一つの合流金型を介してサーキュラーダイに接続させた。以下、これら2系統のタンデム押出機を、第1押出機および第2押出機と称する。
【0119】
第1混合物を第1押出機で溶融混練し、第2混合物を第2押出機で溶融混練し、これらの押出機から吐出される溶融混練物をサーキュラーダイから共押出しして、第1発泡層と第2発泡層からなるポリスチレン系樹脂多層発泡シートを作製する準備をした。
【0120】
第1発泡層のベース樹脂として「XC-515」/「E641N」(質量比85/15)の樹脂混合物を用意した。すなわち、第1発泡層のベース樹脂は、ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂100質量%からなるポリスチレン系樹脂組成物である。
【0121】
このベース樹脂100質量部に対し、気泡調整剤として東洋スチレン製タルクマスターバッチ「DSM1401M」0.8質量部をブレンドして第1押出機の上流側押出機に供給し、途中で発泡剤としてイソブタン65質量%とノルマルブタン35質量%からなる混合ブタン4.0質量部(対ベース樹脂100質量部)を加えて溶融混練した後、下流側押出機に供給した。下流側の押出機では、溶融混錬物を発泡に適した温度まで冷却しながら、120kg/hの割合で合流金型へと供給させるようにした。
【0122】
第2発泡層のベース樹脂として「XC-515」/「ノリルEFN4230」(質量比70/30)の樹脂混合物を用意した。すなわち、第2発泡層のベース樹脂は、ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂79質量%とポリフェニレンエーテル樹脂21質量%との樹脂混合物100質量%からなるポリスチレン系樹脂組成物である。
【0123】
このベース樹脂100質量部に対し、気泡調整剤として東洋スチレン製タルクマスターバッチ「DSM1401M」1.0質量部をブレンドして第2押出機の上流側押出機に供給し、途中で発泡剤としてイソブタン65質量%とノルマルブタン35質量%からなる混合ブタン5.0質量部(対ベース樹脂100質量部)を加えて溶融混練した後、下流側押出機に供給した。下流側の押出機では、溶融混錬物を発泡に適した温度まで冷却しながら、120kg/hの割合で合流金型へと供給させるようにした。
【0124】
合流金型に供給された上記2種類の溶融混練物は、該合流金型内で合流し積層された後、口径125mmのサーキュラーダイを通して、第1発泡層(PPE無し)が内側に、第2発泡層(PPE21質量%)が外側となるように円筒形に共押出し発泡させた。その直後に、シートの内側と外側に30℃のエアーをかけて冷却するとともに、冷却装置(マンドレル)の外面に沿って引き取り、さらに押出方向に沿って2枚に切り開き、巾1050mmのポリスチレン系樹脂多層発泡シートを得た。30℃エアーの吹き付け量は、外側(第1発泡層、PPE無し)は0.09m/mとし、内側(第2発泡層、PPE21質量%)は0.07m/mとした。発泡ガスの置換のため、得られたポリスチレン系樹脂多層発泡シートは、製造後14日間養生した。
【0125】
得られたポリスチレン系樹脂多層発泡シートは、坪量110g/m、シート厚さ1.6mm、水中置換法で測定した発泡倍率は15倍であった。
【0126】
第1発泡層(PPE無し)と第2発泡層(PPE21質量%)の坪量は、シート全体の実測坪量を、第1押出機の吐出量と第2押出機の吐出量で按分して算出した。第1発泡層および第2発泡層の坪量はそれぞれ55g/mであった。
【0127】
第1発泡層(PPE無し)の厚さは0.5~0.6mmであり、その厚みから発泡倍率は9~11倍と計算された。第2発泡層(PPE21質量%)の厚さは1.0~1.1mmであり、発泡倍率は17~19倍と計算された。
【0128】
実施例1においては、第1発泡層(PPE無し)側が、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの積層面になる。第1発泡層(PPE無し)の算術平均粗さRaを測定し、表に示した。
【0129】
(ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの作製)
ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの作製方法を説明する。以下、実施例および比較例において、無延伸ポリプロピレンフィルムのことをCPPフィルム、無延伸ポリスチレンフィルムのことをPSフィルムと呼称する。
【0130】
まず、CPPフィルム(サン・トックス製「KL12」、厚さ25μm)と、PSフィルム(エフピコアルライト製、GPPS/HIPS(質量比85/15)、厚さ15μm)とを準備した。CPPフィルムの片側にグラビアインキを印刷して印刷層を形成し、次いで、該印刷層の上にウレタン系ドライラミネート接着剤(東洋モートン製「TOMOFLEX」)2g/mをグラビアロールで塗布し、これにPSフィルムを貼り合わせ、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムを得た。
【0131】
(ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの作製)
ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの第1発泡層側(PPE無し)と、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムのCPSフィルム側とを向かい合うようにして重ね合わせ、上下に対向する熱ラミネートロール(上ロール:加熱ロール、下ロール:加熱無しの押さえロール)の間を通し、ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの第1発泡層とポリオレフィン系樹脂積層フィルムのCPSフィルム層とを熱融着させ、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得た。熱ラミネート条件は、上熱ロール設定温度200℃とし、ロール送り速度14m/minとした。
【0132】
(成形容器の作製)
上記で作製したポリスチレン系樹脂積層発泡シートを、真空圧空成形機を用いて、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム側が容器内側になるようにして、開口φ184mm、底部φ140mm(面積154cm)、深さ34mmの円形容器を、光沢度および低耐熱発泡層と高耐熱発泡層との界面における層間剥離の有無の確認用(兼用)3枚、電子レンジ加熱試験用6枚、フィルム接着強度測定用3枚の、計12枚作製した。
【0133】
(成形容器の評価)
上記で作製した成形容器につき、前述の評価方法で説明した方法で、容器内面の光沢度、およびフィルム接着強度の各種測定、ならびに、電子レンジ加熱試験を行い、その評価結果を表に示した。
【0134】
[実施例2~4]
第1発泡層のPPE濃度が3質量%、5質量%、および7質量%になるようにしたことと、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの熱ラミネート条件を表に示した条件にしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂積層シートを作製し、評価用の成形容器を得た。ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの第1発泡層(フィルム積層面)の算術平均粗さRa、および、成形容器の評価結果を表に示した。以下に実施例2~4のベース樹脂配合を示した。
【0135】
・実施例2:「XC-515」/「ノリルEFN4230」(質量比95.7/4.3)
・実施例3:「XC-515」/「ノリルEFN4230」(質量比92.8/7.2)
・実施例4:「XC-515」/「ノリルEFN4230」(質量比90.0/10.0)
【0136】
[実施例5、6]
第1発泡層の算術平均粗さRaが表に示した値になるように、気泡調整剤および発泡剤の添加量、ならびにシートの冷却条件を調整したこと以外は、実施例4と同様にしてポリスチレン系樹脂積層発泡シートを作製し、評価用の成形容器を得た。ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの第1発泡層(フィルム積層面)の算術平均粗さRa、および、成形容器の評価結果を表に示した。
【0137】
[実施例7、8]
ポリオレフィン系樹脂積層フィルムを構成するPSフィルムの厚さを、25μm、40μmに変更した以外は、実施例4と同様にしてポリスチレン系樹脂多層発泡シートを作製し、評価用の成形容器を得た。評価結果を表に示した。
【0138】
[実施例9]
ポリオレフィン系樹脂積層フィルムを構成するPSフィルムとして、厚さ14μmの二軸延伸ポリスチレンフィルム(OPSフィルム)を使用したこと以外は、実施例4と同様にしてポリスチレン系樹脂多層発泡シートを作製し、評価用の成形容器を得た。評価結果を表に示した。
【0139】
[実施例10]
第2発泡層のベース樹脂を「T080」/「タフプレン125S」(質量比92/8)とした以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂積層発泡シートを作製し、評価用の成形容器を得た。ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの第1発泡層(フィルム積層面)の算術平均粗さRa、および、成形容器の評価結果を表に示した。
【0140】
[実施例11]
第2発泡層のベース樹脂を「T080」/「タフプレン125S」(質量比92/8)とした以外は、実施例4と同様にしてポリスチレン系樹脂積層発泡シートを作製し、評価用の成形容器を得た。ポリスチレン系樹脂多層発泡シートの第1発泡層(フィルム積層面)の算術平均粗さRa、および、成形容器の評価結果を表に示した。
【0141】
[実施例12~13、比較例1]
第2発泡層のベース樹脂配合が表に記載のようにしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートおよび成形容器を作製し、各種評価を行った。評価結果を表に示した。
【0142】
[実施例14~17、比較例4~11]
第1発泡層および第2発泡層のベース樹脂配合が表に記載のようにしたこと以外は、実施例2と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートおよび成形容器を作成し、各種評価を行った。評価結果を表に示した。
【0143】
[実施例18~19、比較例12]
第2発泡層のベース樹脂配合が表に記載のようにしたこと以外は、実施例10と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートおよび成形容器を作成し、各種評価を行った。評価結果を表に示した。
【0144】
[実施例20~23、比較例15~16]
第1発泡層および第2発泡層のベース樹脂配合が表に記載のようにしたこと以外は、実施例11と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートおよび成形容器を作成し、各種評価を行った。評価結果を表に示した。
【0145】
[比較例1]
基材として、ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂(GPPS)をベース樹脂とした、単層のポリスチレン系樹脂発泡シート(積水化成品工業製「OT220A-640-300」、坪量110g/m、発泡倍率17倍、シート厚さ1.8mm)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂積層発泡シートを作製し、評価用の成形容器を得た。ポリスチレン系樹脂発泡シートのフィルム積層面の算術平均粗さRa、および、成形容器の評価結果を表に示した。
【0146】
[比較例2]
第1発泡層および第2発泡層とも、ベース樹脂を「XC-515」/「ノリルEFN4230」(質量比80/20)とした以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂積層発泡シートを作製し、評価用の成形容器を得た。ポリスチレン系樹脂発泡シートのフィルム積層面の算術平均粗さRa、および、成形容器の評価結果を表に示した。
【0147】
[比較例3]
実施例1で使用したポリスチレン系樹脂多層発泡シートの第2発泡層(PPE濃度21質量%)にポリオレフィン系樹脂積層フィルムを積層した以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂積層発泡シートを作製し、評価用の成形容器を得た。ポリスチレン系樹脂発泡シートの第2発泡層(フィルム積層面)の算術平均粗さRa、および、成形容器の評価結果を表に示した。
【0148】
(評価結果)
実施例および比較例の評価結果を、表を参照しながら説明する。以下説明における呼称を次のように定義をする。基材であるポリスチレン系樹脂発泡シートを、単に「発泡シート」と呼称することがある。基材であるポリスチレン系樹脂発泡シートに積層されるポリオレフィン系樹脂積層フィルムのことを、単に「積層フィルム」と呼称することがある。基材であるポリスチレン系樹脂発泡シートの、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムが積層される積層面のことを、「フィルム積層面」と呼称することがある。基材であるポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムが積層される側の発泡層のことを、「フィルム積層側発泡層」と呼称することがある。成形容器におけるポリオレフィン系樹脂フィルム層の光沢度のことを、「容器内面の光沢度」、または、単に「光沢度」と呼称することがある。
【0149】
実施例1、実施例4、比較例2、および比較例3を比較する。これらはフィルム積層側発泡層のPPE濃度が異なり、実施例1、実施例4、比較例2、比較例3の順に、PPE濃度は0質量%(無し)、7質量%、14質量%、21質量%である。
【0150】
容器内面の光沢度は、実施例1、実施例4、比較例2、比較例3の順に、72%、52%、35%、20%であった。成形容器の耐熱性評価は、実施例1が「可」であり、実施例4、比較例2、および比較例3は「適」であった。すなわち、実施例1および実施例4は、容器内面の光沢度が50%以上であり、かつ、必要とされる容器耐熱性を備えていた。
【0151】
実施例1および実施例4の容器内面の光沢度が50%以上あり、特に実施例1の容器内面の光沢度が70%以上であった要因を考察する。上記「発明が解決しようとする課題」の段落で説明したように、発泡シートに積層される前の積層フィルムのポリオレフィン系樹脂フィルム層は本来90%以上の光沢度を有しているが、発泡シートに積層されるとその光沢度が低下する。
【0152】
これまでの知見から、このポリオレフィン系樹脂フィルム層の光沢度の低下は、積層フィルムが、発泡シートのフィルム積層面の発泡セルに起因する凹凸をひろうためであると分かっていた。換言すると、発泡シートのフィルム積層面が平滑なほど、容器内面の光沢度が高くなる。
【0153】
ところで、一般的にGPPSとPPEからなる樹脂組成物は、PPE濃度が高くなるほど気泡の制御が難しくなり、発泡シートの表面が粗くなる傾向がある。PPEは溶融時の流動性が極めて低いので、PPEの配合量が多いほど押出機の温度を上げる必要がある。しかし、PPEの流動性を確保するために押出機の温度を上げると、主成分であるGPPSの溶融粘度が必要以上に低下し、それに伴い樹脂組成物全体としての溶融粘度も低くなる。結果、溶融樹脂がダイスから出て大気圧に開放された際、期待するサイズに気泡の成長を止められず、サイズが大きい気泡が混じるなどして発泡シートの表面が粗くなる傾向があると考えられる。
【0154】
発泡シートのフィルム積層面の算術平均粗さRaは、実施例1、実施例4、比較例2、比較例3の順に、4.0μm、6.0μm、9.5μm、11.5μmであった。PPE濃度が高くなるにつれて算術平均粗さRaが大きくなり、それに伴い成形容器の光沢度も低い値を示した。
【0155】
実施例2、実施例3、および実施例4を比較する。これらはフィルム積層側発泡層のPPE濃度が異なり、実施例2、実施例3、実施例4の順に、3質量%、5質量%、7質量%である。容器内面の光沢度は、実施例2、実施例3、実施例4の順に、66%、59%、52%であり、フィルム積層側発泡層のPPE濃度が低いほど高い光沢度を示した。容器耐熱性については、実施例2が「可」であり、実施例3および実施例4は「適」評価であった。
【0156】
当初、押出シートの冷却条件が同じであれば、PPE濃度が低くなるほどフィルム積層面の算術平均粗さRaの値は小さくなると予想した。しかし、実施例2、実施例3、および実施例4の発泡シートのフィルム積層面の算術平均粗さRaは5.9~6.0μmの範囲で大きな差が無かった。これはPPE濃度がある一定量を下回ると押出時におけるベース樹脂の溶融粘度が大きく変わらないためと考えられた。
【0157】
したがって、実施例2、実施例3、および実施例4との比較から、フィルム積層面の算術平均粗さRaに関係なく、フィルム積層側発泡層のPPE濃度が低いほど容器内面の光沢度が高くなることが分かった。GPPSとPPEは完全相溶系のアロイなので、PPE濃度が低くなると相対的にビカット軟化温度が低くなる。本発明者らはフィルム積層側発泡層のPPE濃度が低いほど、すなわち、フィルム積層側発泡層のビカット軟化温度が低くなるほど熱ラミネート時に発泡シートのフィルム積層面が軟化しやすくなり、フィルム積層面の凹凸がならされ容器内面の光沢度が高い値を示したものと考えた。
【0158】
実施例4、実施例5、および実施例6を対比する。実施例4、実施例5および実施例6はフィルム積層側発泡層のPPE濃度は全て7質量%であるが、実施例5および実施例6は、気泡調整剤の添加量調整(気泡調整剤すなわち、発泡核剤の添加量を増やし、気泡数を増加させ発泡セルの微細化を図る)と、ダイスから出た発泡シートの冷却条件の調節(ダイスから出た発泡シートの冷却を急冷気味にすることで、発泡層のスキン層を厚くする)を行い、実施例4よりもフィルム積層面の平滑性を向上させたものである。
【0159】
結果、実施例4(算術平均粗さRa6.0μm)の容器内面の光沢度が52%であったのに対し、実施例5(算術平均粗さRa5.1μm)の容器内面の光沢度は55%まで向上し、実施例6(算術平均粗さRa3.0μm)では表面光沢度が63%まで向上した。容器耐熱性評価は、実施例4、実施例5および実施例6、全て「適」であり、必要十分な容器耐熱性があった。
【0160】
すなわち、低耐熱ポチスチレン系樹脂発泡層のベース樹脂のPPE濃度が7%以上であっても、フィルム積層面の平滑性を向上させることによって、60%以上の容器内面の光沢度と、必要十分な容器耐熱性を両立できることが分かった。
【0161】
実施例4、実施例7、および実施例8とを比較する。実施例4、実施例7、および実施例8は、積層フィルムのポリスチレン系樹脂フィルム層の厚さを変えたものである。実施例4、実施例7、実施例8の順に、ポリスチレン系樹脂フィルム層の厚さは13μm、25μm、40μmであり、容器内面の光沢度は52%、60%、66%であり、ポリスチレン系樹脂フィルム層の厚みが厚くなるほど光沢度は向上した。これは、ポリスチレン系樹脂フィルム層の厚さが厚くなるほど、発泡シートのフィルム積層面の凹凸が吸収され、結果、容器内面の光沢度が向上するものと推察した。また、容器耐熱性は全て「適」であった。
【0162】
このように、フィルム積層側発泡層のPPE濃度7質量%の場合において、前述した実施例5および実施例6のようにフィルム積層面の平滑性を向上させる以外に、ポリスチレン系樹脂フィルム層の厚さを25μm以上にする方法を用いても、容器内面の光沢度を60%以上に上げられることが分かった。すなわち、50%以上の容器内面の光沢度と、必要十分な容器耐熱性を両立できることが分かった。
【0163】
実施例9は、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムを構成するポリスチレン系樹脂フィルムとして、厚さ14μmの二軸延伸ポリスチレンフィルム(OPSフィルム)を使用した例である。OPSフィルムは、実施例9以外の実施例および比較例で使用した無延伸のPSフィルム(13μm)に比べて引張弾性率が高い。OPSフィルムは無延伸のPSフィルムよりも高い引張弾性率を有しているので、無延伸のPSフィルムよりも効率的に発泡シートのフィルム積層面の凹凸をならし、結果、60%以上の光沢度を発現することができると考えられる。
【0164】
実施例10および実施例11は、容器外側に位置する発泡層のベース樹脂としてスチレン・メタクリル酸共重合樹脂を使用し、フィルム積層面の発泡層におけるPPE濃度を無し(0質量%)と7質量%にしたものである。結果、実施例9は実施例1に相当する評価結果となり、実施例10は実施例4に相当する評価結果となった。
【0165】
比較例1は、ビカット軟化温度105℃以下のポリスチレン系樹脂組成物からなる単層のポリスチレン系樹脂発泡シートを使用した例である。フィルム積層面の発泡層は実質的に実施例1と同じであり光沢度は60%以上であったが、耐熱性評価において「不可」であった。
【符号の説明】
【0166】
1 成形容器
10 ポリスチレン系樹脂多層発泡シート層
11 低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層
12 高耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層
13 低耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層
20 ポリオレフィン系樹脂積層フィルム層
21 ポリオレフィン系樹脂フィルム層
22 ポリスチレン系樹脂フィルム層
23 ドライラミネート接着剤層
30 ポリスチレン系樹脂フィルム層
1S ポリスチレン系樹脂積層発泡シート
10S ポリスチレン系樹脂多層発泡シート
20F ポリオレフィン系樹脂積層フィルム
30F ポリスチレン系樹脂フィルム
図1
図2
図3