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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006910
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】水素燃料供給システム
(51)【国際特許分類】
   B64D 37/30 20060101AFI20250109BHJP
   B64D 37/34 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B64D37/30
B64D37/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107957
(22)【出願日】2023-06-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/次世代航空機の開発/水素航空機向けコア技術開発」委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠本 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】大島 遼祐
(72)【発明者】
【氏名】朝長 賢志
(72)【発明者】
【氏名】田口 秀之
(57)【要約】      (修正有)
【課題】超臨界相の水素燃料を用いるエンジンの運転を安定化する。
【解決手段】水素燃料供給システム10は、エンジンを備えた航空機の水素燃料供給システム10であって、水素燃料を液相で貯留する燃料タンク21と、前記燃料タンク21を前記エンジンに接続する燃料供給路22と、前記燃料供給路22に設けられ、前記水素燃料を臨界圧力以上の圧力に加圧する加圧ポンプ26と、前記燃料供給路22において前記加圧ポンプ26よりも下流に設けられ、前記加圧ポンプ26を通過した水素燃料の圧力を測定するセンサ29と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを備えた航空機の水素燃料供給システムであって、
水素燃料を液相で貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンクを前記エンジンに接続する燃料供給路と、
前記燃料供給路に設けられ、前記水素燃料を臨界圧力以上の圧力に加圧する加圧ポンプと、
前記燃料供給路において前記加圧ポンプよりも下流に設けられ、前記加圧ポンプを通過した水素燃料の圧力を測定するセンサと、を備える、水素燃料供給システム。
【請求項2】
前記燃料供給路において前記加圧ポンプよりも下流に設けられ、前記水素燃料を臨界温度以上の温度に加熱する熱交換器を更に備える、請求項1に記載の水素燃料供給システム。
【請求項3】
前記燃料供給路において前記加圧ポンプよりも下流に設けられ、前記加圧ポンプを通過した水素燃料の流量を制御する制御弁を更に備える、請求項1に記載の水素燃料供給システム。
【請求項4】
前記センサは、前記燃料供給路において前記熱交換器よりも上流に設けられ、前記加圧ポンプを通過した水素燃料の圧力及び温度を測定する、請求項2に記載の水素燃料供給システム。
【請求項5】
前記センサは、前記燃料供給路において前記熱交換器よりも下流に設けられ、前記熱交換器を通過した水素燃料の圧力及び温度を測定する、請求項2に記載の水素燃料供給システム。
【請求項6】
前記センサは、前記加圧ポンプに隣接している、請求項1に記載の水素燃料供給システム。
【請求項7】
前記センサは、前記加圧ポンプ、及び、前記熱交換器の少なくとも1つに隣接している、請求項1又は2に記載の水素燃料供給システム。
【請求項8】
前記センサは、前記加圧ポンプ、前記熱交換器、及び、前記制御弁の少なくとも1つに隣接している、請求項3に記載の水素燃料供給システム。
【請求項9】
前記センサは、前記加圧ポンプを通過した水素燃料の流量を更に測定する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水素燃料供給システム。
【請求項10】
前記センサの圧力の測定信号に応じて前記加圧ポンプを制御するように構成された処理回路を更に備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水素燃料供給システム。
【請求項11】
前記センサの流量の測定信号に応じて前記制御弁の開度を制御するように構成された処理回路を更に備える、請求項9に記載の水素燃料供給システム。
【請求項12】
前記航空機は、胴体と、前記胴体に接続された主翼と、前記主翼に接続された前記エンジンとを備え、
前記燃料タンクは、前記胴体又は前記主翼に配置され、
前記熱交換器は、前記エンジンに配置され、
前記燃料供給路は、前記胴体又は前記主翼に設けられて前記熱交換器の上流にある第1領域と、前記エンジンに設けられて前記熱交換器の下流にある第2領域と、を含み、
前記第1領域は、断熱材に被覆されており、前記第2領域は、断熱材に被覆されていない、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水素燃料供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンを備えた航空機の水素燃料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、航空機における水素燃料供給システムが開示されている。当該システムでは、燃料タンクの液体水素がポンプによる加圧及び熱交換器による加熱を経て、気相又は超臨界相でエンジンに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0145801号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素燃料は、燃料供給時に、燃料供給路内で液相から気相に変化すると、体積が大きく変化するなどの影響が生じる。水素燃料が超臨界相であれば、液相から気相への相変化を避け、エンジンに安定して水素燃料を供給することができる。
【0005】
水素燃料は、臨界圧力以上の圧力に加圧した後、臨界温度以上の温度に加熱することで、超臨界相にすることができる。この方法で水素燃料を超臨界相に変化させる場合、まず水素燃料を臨界圧力以上の圧力にすることが要求される。
【0006】
本開示の一態様は、超臨界相の水素燃料を用いるエンジンの運転を安定化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る水素燃料供給システムは、エンジンを備えた航空機の水素燃料供給システムであって、水素燃料を液相で貯留する燃料タンクと、前記燃料タンクを前記エンジンに接続する燃料供給路と、前記燃料供給路に設けられ、前記水素燃料を臨界圧力以上の圧力に加圧する加圧ポンプと、前記燃料供給路において前記加圧ポンプよりも下流に設けられ、前記加圧ポンプを通過した水素燃料の圧力を測定するセンサと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、加圧ポンプにより水素燃料を臨界圧力以上の圧力に加圧したときに、加圧ポンプの下流のセンサで水素燃料の圧力を測定できる。よって、水素燃料の圧力に応じて、加圧ポンプの動作を制御できるようになり、超臨界相の水素燃料を用いるエンジンの運転を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る水素燃料供給システムを備えた航空機の平面図である。
図2図2は、水素の相と温度-圧力との関係を示す状態図である。
図3図3は、図1の水素燃料供給システムのブロック図である。
図4図4は、第2実施形態に係る水素燃料供給システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、本開示において航空機は、空中を移動可能な機器を指し、例えば、固定翼航空機、回転翼航空機、無人の飛翔体である。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る水素燃料供給システム10を備えた航空機1の平面図である。図1に示すように、航空機1は、例えば、胴体2、主翼3、水平尾翼4、垂直尾翼5、及び、ガスタービンエンジン6を備える。胴体2は、航空機1の前後方向に延び、内部に乗員空間が画定されている。主翼3は、胴体2の前後方向の中間部に接続され、胴体2から航空機1の左右方向にそれぞれ突出している。水平尾翼4は、胴体2の後部から航空機1の左右方向にそれぞれ突出している。垂直尾翼5は、胴体2の後部から上方に突出している。ガスタービンエンジン6は、一対の主翼3にそれぞれ接続されている。胴体2、主翼3及びガスタービンエンジン6には、水素燃料供給システム10が搭載されている。燃料タンク21は、胴体2に配置されているが、主翼3に配置されてもよい。即ち、燃料タンク21の全部又は一部は、胴体2又は主翼3に配置される。
【0012】
図2は、水素の相と温度-圧力との関係を示す状態図である。図2に示すように、水素の状態図では、昇華線L1を境界として固相と気相とが区分けされ、溶融線L2を境界として固相と液相とが区分けされ、沸騰線L3を境界として液相と気相とが区分けされている。昇華線L1、溶融線L2及び沸騰線L3の交点Rは、三重点と称する。水素は、臨界圧力Pcよりも高圧で且つ臨界温度Tcよりも高温であるとき超臨界相となる。状態図において臨界圧力Pc及び臨界温度Tcの点を臨界点Qと称する。臨界圧力Pcは約1.3MPaであり、臨界温度Tcは約-240℃である。
【0013】
本実施形態では、図2の状態図において、水素燃料が液相から沸騰線L3を横切って気相に変わることを避ける。即ち、水素燃料が液相の状態において水素燃料が臨界圧力Pc以上の圧力になるように水素燃料を加圧し、その後に水素燃料が昇温して臨界温度Tc以上の温度になったときに液相から超臨界相に遷移させる。
【0014】
液相から超臨界相への遷移を実現するために、後述の図3に示すように、燃料タンク21から燃料供給路22に流れた液相の水素燃料は、加圧ポンプ26によって臨界圧力Pc以上の圧力になるように加圧される。加圧ポンプ26からガスタービンエンジン6に向けて流れる水素燃料が熱交換器28等によって昇温して臨界温度Tc以上の温度になったときには液相から超臨界相に遷移する。これにより、燃料供給路22の水素燃料が液相から気相に遷移する沸騰現象が防がれる。
【0015】
図3は、図1の水素燃料供給システム10のブロック図である。図3に示すように、水素燃料供給システム10は、燃料タンク21を備える。燃料タンク21は、水素燃料を液相で貯留する。燃料タンク21は、燃料供給路22によってガスタービンエンジン6に接続されている。燃料タンク21が胴体2に配置される場合、燃料供給路22は、胴体2から主翼3を通ってガスタービンエンジン6まで延びる。燃料タンク21が主翼3に配置される場合、燃料供給路22は、主翼3からガスタービンエンジン6まで延びる。ガスタービンエンジン6は、圧縮機11、燃焼器12及びタービン13を備える。燃料供給路22は、燃焼器12に接続されている。
【0016】
燃料供給路22には、燃料タンク21の水素燃料を燃料供給路22に送り出すフィードポンプ23が設けられている。燃料供給路22には、燃料タンク21とフィードポンプ23との間に遮断弁24が設けられている。燃料供給路22には、フィードポンプ23の下流に逆止弁25が設けられている。
【0017】
燃料供給路22には、逆止弁25の下流に加圧ポンプ26が設けられている。加圧ポンプ26は、燃料供給路22の水素燃料を水素の臨界圧力Pc以上の圧力に加圧する。例えば、加圧ポンプ26は、燃料供給路22を流れる水素燃料が後述の制御弁30に到達したときに水素の臨界圧力Pc以上の圧力であるように、燃料タンク21から供給された液相の水素燃料を加圧する。なお、加圧ポンプ26により、水素燃料を臨界圧力Pc以上の圧力に加圧した時点では、水素燃料は、臨界温度Tc未満の温度である。燃料供給路22には、逆止弁25と加圧ポンプ26との間に遮断弁27が設けられている。
【0018】
燃料供給路22には、加圧ポンプ26の下流に熱交換器28が設けられている。熱交換器28は、燃料供給路22を流れる水素燃料を水素の臨界温度Tc以上の温度に加熱する。熱交換器28は、ガスタービンエンジン6に熱的に接続されている。即ち、熱交換器28は、ガスタービンエンジン6の熱を利用して燃料供給路22の水素燃料を加熱する。
【0019】
燃料供給路22には、加圧ポンプ26の下流にセンサ29が設けられている。本実施形態では、燃料供給路22には、加圧ポンプ26の下流、かつ、熱交換器28の上流にセンサ29が設けられている。センサ29は、加圧ポンプ26、熱交換器28、又は、これらの両方に隣接していることが望ましい。なお、本開示において、「隣接」とは、2つの機器の間に、弁、ポンプ等のような他の流体機器が介在していないことを指す。センサ29は、流量計41、圧力計42及び温度計43を含む。即ち、センサ29は、加圧ポンプ26を通過した水素燃料の流量、圧力、及び温度を測定する。
【0020】
燃料供給路22には、センサ29の下流に制御弁30が設けられている。制御弁30は、センサ29に隣接していることが望ましい。制御弁30は、センサ29を通過した水素燃料の流量を調節する。燃料供給路22には、制御弁30の下流に遮断弁31が設けられている。なお、遮断弁24,27,31の有無及び配置は任意である。
【0021】
燃料供給路22には、センサ29の上流、又は、センサ29の下流及び上流に、制御弁30が設けられてもよい。いずれの場合も、制御弁30は、センサ29に隣接していることが望ましい。
【0022】
水素燃料供給システム10は、コントローラ32を備える。コントローラ32は、処理回路33を含む。処理回路33は、プロセッサ、システムメモリ及びストレージメモリを含む。プロセッサは、例えばCPUである。システムメモリは、例えばRAMである。ストレージメモリは、ハードディスク、フラッシュメモリ又はそれらの組合せである。ストレージメモリが記憶するプログラムをシステムメモリに読み出してプロセッサが実行する構成は、処理回路33の一例である。処理回路33は、センサ29の測定信号に応じて、加圧ポンプ26又は制御弁30を制御するように構成されている。処理回路33は、フィードポンプ23を制御するように構成されていてもよい。処理回路33は、加圧ポンプ26、制御弁30及びフィードポンプ23に対して、個別に又は同時に制御するように構成されてもよい。なお、センサ29の測定信号は、例えば、水素燃料の圧力又は流量である。
【0023】
処理回路33は、エンジン始動指令を受けるとフィードポンプ23を駆動する。処理回路33は、燃料供給路22の水素燃料を臨界圧力Pc以上の圧力に加圧するように加圧ポンプ26を制御する。処理回路33は、センサ29で測定される流量が目標流量になるように制御弁30を制御する。処理回路33は、センサ29で測定される圧力が臨界圧力Pcよりも小さい場合、又は、センサ29で測定される流量が所定の流量よりも少ない場合には、アラートを出力する。処理回路33は、センサ29で測定される温度が臨界温度Tcよりも低い場合にも、アラートを出力する。
【0024】
処理回路33は、センサ29で測定される圧力が臨界圧力Pcよりも小さくなると、センサ29で測定される圧力が臨界圧力Pc以上の圧力になるように加圧ポンプ26を制御する。例えば、処理回路33は、センサ29が測定した水素燃料の圧力に関する測定信号に応じて、加圧ポンプ26をフィードバック制御することができる。
【0025】
また、処理回路33は、センサ29で測定される流量が所定の流量よりも少なくなると、センサ29で測定される流量が所定の流量になるように制御弁30を制御する。例えば、処理回路33は、センサ29が測定した水素燃料の流量に関する測定信号に応じて、制御弁30の開度を制御することができる。
【0026】
また、処理回路33は、センサ29で測定される温度が臨界温度Tcよりも低くなると、センサ29で測定される温度が臨界温度Tc以上の温度になるように熱交換器28における単位密度あたりの液体水素への入熱量を制御してもよい。例えば、熱交換器28がエンジン6の熱源を媒体として利用する場合、熱交換器28の上流に熱シールドを設け、熱シールドが熱交換器28を覆う面積を変えるように熱シールドのアクチュエータを制御してもよい。
【0027】
燃料供給路22は、熱交換器28の上流にある第1領域A1と、ガスタービンエンジン6に設けられて熱交換器28の下流にある第2領域A2と、を含む。燃料供給路22の第1領域A1は、胴体2又は主翼3に配置されている。燃料供給路22の第2領域A2は、ガスタービンエンジン6に配置されている。燃料供給路22の第1領域A1は、断熱材に被覆されている。これにより、燃料タンク21から熱交換器28まで水素燃料が低温に保たれる。他方、燃料供給路22の第2領域A2は、断熱材に被覆されていない。これにより、ガスタービンエンジン6における重量増加が防止され、スペース減少が抑制される。
【0028】
以上に説明した構成において、加圧ポンプ26の下流にセンサ29が設けられているため、センサ29の水素燃料の圧力に関する測定信号に応じて、処理回路33が加圧ポンプ26を制御することにより、水素燃料の圧力を適切な範囲に保持することができる。よって、超臨界相の水素燃料を用いるエンジンの運転を安定化することができる。
【0029】
また、加圧ポンプ26の下流にセンサ29に加えて、制御弁30が設けられている場合、センサ29の水素燃料の流量に関する測定信号に応じて、処理回路33が制御弁30を制御することにより、水素燃料の流量を適切な範囲に保持することができる。よって、エンジンの出力を安定化することができる。
【0030】
センサ29の下流に制御弁30が設けられた場合、制御弁30により調整する前の水素燃料の流量を測定できる。また、センサ29の上流に制御弁30が設けられた場合、制御弁30により調整した後のガスタービンエンジン6への燃料供給状態を測定できる。
【0031】
センサ29が加圧ポンプ26、熱交換器28、制御弁30の少なくとも1つの機器に隣接している場合、その隣接する機器とセンサ29との間に他の流体機器が介在しないことにより、水素燃料の圧力、温度、及び流量を精度良く測定できるとともに、加圧ポンプ26、熱交換器28、及び制御弁30の異常を迅速に発見できる。
【0032】
(第2実施形態)
また、図4は、第2実施形態に係る水素燃料供給システム110のブロック図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図4に示すように、第2実施形態の水素燃料供給システム110では、第1実施形態の水素燃料供給システム10に比べてセンサ29の配置が異なる。本実施形態では、加圧ポンプ26及び熱交換器28の下流にセンサ29が設けられている。センサ29は、熱交換器28に隣接していることが望ましい。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0033】
また、制御弁30は、センサ29の下流に設けられている。なお、制御弁30は、センサ29の上流に設けられてもよいし、センサ29の下流及び上流に設けられてもよい。いずれの場合も、制御弁30は、センサ29に隣接していることが望ましい。
【0034】
以上に説明した構成において、センサ29が熱交換器28の下流に設けられているため、センサ29は、ガスタービンエンジン6に近い位置で水素燃料の圧力等を測定できる。センサ29の水素燃料の圧力等に関する測定信号に応じて、処理回路33が加圧ポンプ26を制御することにより、水素燃料の圧力等を適切な範囲に保持することができる。よって、超臨界相の水素燃料を用いるエンジンの運転を安定化することができる。
【0035】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0036】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0037】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0038】
[項目1]
エンジンを備えた航空機の水素燃料供給システムであって、
水素燃料を液相で貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンクを前記エンジンに接続する燃料供給路と、
前記燃料供給路に設けられ、前記水素燃料を臨界圧力以上の圧力に加圧する加圧ポンプと、
前記燃料供給路において前記加圧ポンプよりも下流に設けられ、前記加圧ポンプを通過した水素燃料の圧力を測定するセンサと、を備える、水素燃料供給システム。
【0039】
この構成によれば、加圧ポンプにより水素燃料を臨界圧力以上の圧力に加圧したときに、加圧ポンプの下流のセンサで水素燃料の圧力を測定できる。よって、水素燃料の圧力に応じて、加圧ポンプの動作を制御できるようになり、超臨界相の水素燃料を用いるエンジンの運転を安定化することができる。
【0040】
[項目2]
前記燃料供給路において前記加圧ポンプよりも下流に設けられ、前記水素燃料を臨界温度以上の温度に加熱する熱交換器を更に備える、項目1に記載の水素燃料供給システム。
【0041】
この構成によれば、加圧ポンプにより水素燃料を臨界圧力以上の圧力に加圧した後に熱交換器により水素燃料を臨界温度以上の温度に加熱でき、水素燃料を円滑に超臨界相にすることができる。
【0042】
[項目3]
前記燃料供給路において前記加圧ポンプよりも下流に設けられ、前記加圧ポンプを通過した水素燃料の流量を制御する制御弁を更に備える、項目1又は2に記載の水素燃料供給システム。
【0043】
この構成によれば、エンジンに供給する水素燃料の流量を制御弁により調節できる。
【0044】
[項目4]
前記センサは、前記燃料供給路において前記熱交換器よりも上流に設けられ、前記加圧ポンプを通過した水素燃料の圧力及び温度を測定する、項目2又は3に記載の水素燃料供給システム。
【0045】
この構成によれば、加圧ポンプを通過した水素燃料の圧力及び温度をセンサで測定できる。よって、加圧ポンプの下流の水素燃料の圧力及び温度に応じて、加圧ポンプの動作を制御できるようになり、超臨界相の水素燃料を用いるエンジンの運転を安定化することができる。
【0046】
[項目5]
前記センサは、前記燃料供給路において前記熱交換器よりも下流に設けられ、前記熱交換器を通過した水素燃料の圧力及び温度を測定する、項目2又は3に記載の水素燃料供給システム。
【0047】
この構成によれば、加圧ポンプ及び熱交換器を通過した水素燃料の圧力及び温度をセンサで測定できる。よって、熱交換器の下流の水素燃料の圧力及び温度に応じて、加圧ポンプの動作を制御できるようになり、超臨界相の水素燃料を用いるエンジンの運転を安定化することができる。
【0048】
[項目6]
前記センサは、前記加圧ポンプに隣接している、項目1乃至5のいずれか1項に記載の水素燃料供給システム。
【0049】
この構成によれば、センサが加圧ポンプに隣接しているため、加圧ポンプが吐出する水素燃料の圧力及び温度を更に精度良く測定できる。
【0050】
[項目7]
前記センサは、前記加圧ポンプ、及び、前記熱交換器の少なくとも1つに隣接している、項目1乃至5のいずれか1項に記載の水素燃料供給システム。
【0051】
この構成によれば、加圧ポンプ及び熱交換器の少なくとも1つに直接的に関連する水素燃料の圧力及び温度を更に精度良く測定できる。
【0052】
[項目8]
前記センサは、前記加圧ポンプ、前記熱交換器、及び、前記制御弁の少なくとも1つに隣接している、項目3乃至5のいずれか1項に記載の水素燃料供給システム。
【0053】
この構成によれば、加圧ポンプ、熱交換器及び制御弁の少なくとも1つに直接的に関連する水素燃料の圧力及び温度を更に精度良く測定できる。
【0054】
[項目9]
前記センサは、前記加圧ポンプを通過した水素燃料の流量を更に測定する、項目1乃至8のいずれか1項に記載の水素燃料供給システム。
【0055】
この構成によれば、水素燃料の流量を精度良く測定できる。よって、エンジンの出力を精度良く制御できる。
【0056】
[項目10]
前記センサの圧力の測定信号に応じて前記加圧ポンプを制御するように構成された処理回路を更に備える、項目1乃至9のいずれか1項に記載の水素燃料供給システム。
【0057】
この構成によれば、制御弁の開度変化に伴って燃料供給路に圧力変動が生じようとしても、加圧ポンプを制御することで圧力変動を低減できる。よって、エンジンに供給される水素燃料の圧力を適切な範囲に維持することができる。
【0058】
[項目11]
前記センサの流量の測定信号に応じて前記制御弁の開度を制御するように構成された処理回路を更に備える、項目9に記載の水素燃料供給システム。
【0059】
この構成によれば、センサで測定される流量に応じて制御弁が制御されるため、エンジンに供給される水素燃料の流量を精度良く調節できる。
【0060】
[項目12]
前記航空機は、胴体と、前記胴体に接続された主翼と、前記主翼に接続された前記エンジンとを備え、
前記燃料タンクは、前記胴体又は前記主翼に配置され、
前記熱交換器は、前記エンジンに配置され、
前記燃料供給路は、前記胴体又は前記主翼に設けられて前記熱交換器の上流にある第1領域と、前記エンジンに設けられて前記熱交換器の下流にある第2領域と、を含み、
前記第1領域は、断熱材に被覆されており、前記第2領域は、断熱材に被覆されていない、項目1乃至11のいずれか1項に記載の水素燃料供給システム。
【0061】
この構成によれば、熱交換器まで水素燃料を低温に保ちながらも、エンジン回りにおいて断熱材を省略して重量増加を防止し、エンジン回りのスペース減少を防止できる。
【符号の説明】
【0062】
1 航空機
2 胴体
3 主翼
6 ガスタービンエンジン
10 水素燃料供給システム
21 燃料タンク
22 燃料供給路
26 加圧ポンプ
28 熱交換器
29 センサ
30 制御弁
33 処理回路
41 流量計
42 圧力計
43 温度計
A1 第1領域
A2 第2領域
図1
図2
図3
図4