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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006942
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】シール装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20250109BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20250109BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F16J15/08 J
F16J15/14 C
F16J15/08 B
F02F11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107997
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】小山 智幸
(72)【発明者】
【氏名】相原 主弥
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA01
3J040AA12
3J040BA04
3J040BA07
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA39
3J040FA01
3J040FA05
3J040HA03
3J040HA04
3J040HA16
(57)【要約】
【課題】製造工数を減らし、製造の簡略化を図ることができるシール装置を得る。
【解決手段】シール装置11は、金属製の分割ガスケット31を挟んで、二つの部材51であるケース51Aとカバー51Bとを接合させて構成されている。分割ガスケット31は、弾性体32がコーティングされた平坦なシール面33を表裏面に有する複数のピースP1、P2に分割され、全体として環状形状をなしている。ケース51Aとカバー51Bとは、分割ガスケット31のシール面33を挟んで互いに接合されている。ケース51Aには、分割ガスケット31の二つのピースP1、P2が互いに隣接する領域に、ガスケット結合部54を設けられている。ガスケット結合部54は、シール面33に対面する位置に凹部55、例えば格子パターンの凹部55を有している。ガスケット結合部54には液状ガスケット71が充填され、分割ガスケット31との間や凹部55に回りこんでいる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体を被覆した平坦なシール面を表裏面に有する複数のピースに分割され、全体として環状形状をなす金属製の分割ガスケットと、
前記分割ガスケットのシール面を挟んで互いに接合される二つの部材と、
を備え、
前記二つの部材の少なくとも一方のうち、前記分割ガスケットの二つのピースが互いに隣接する領域に設けられ、前記シール面に対面する位置に凹部を有するガスケット結合部と、
前記ガスケット結合部に充填された液状ガスケットと、
を備えるシール装置。
【請求項2】
前記ガスケット結合部は、前記凹部にパターンを与えている、
請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記パターンは、格子パターンである、
請求項2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記格子は、斜め格子である、
請求項3に記載のシール装置。
【請求項5】
前記弾性体は、前記シール面にコーティングされている、
請求項2に記載のシール装置。
【請求項6】
前記二つの部材の一つはケースであり、
前記二つの部材の他の一つは、前記ケースの開口部を覆うカバーである、
請求項2ないし5のいずれか一に記載のシール装置。
【請求項7】
前記ガスケット結合部は、前記ケースに設けられている、
請求項6に記載のシール装置。
【請求項8】
前記ガスケット結合部は、前記カバーに設けられている、
請求項6に記載のシール装置。
【請求項9】
前記ガスケット結合部は、前記ケースと前記カバーとの双方に設けられている、
請求項6に記載のシール装置。
【請求項10】
前記ガスケットをなす二つのピースの互いに隣接する端部は、前記ガスケット結合部の方向に屈曲し、
前記ガスケット結合部は、前記二つのピースの互いに隣接する屈曲した先端部をともに受け入れる位置に前記凹部を設けている、
請求項1に記載のシール装置。
【請求項11】
前記凹部は、溝の形状を有している、
請求項10に記載のシール装置。
【請求項12】
前記凹部は、穴の形状を有している、
請求項10に記載のシール装置。
【請求項13】
前記弾性体は、前記シール面にコーティングされている、
請求項10に記載のシール装置。
【請求項14】
前記二つの部材の一つはケースであり、
前記二つの部材の他の一つは、前記ケースの開口部を覆うカバーである、
請求項10ないし13のいずれか一に記載のシール装置。
【請求項15】
前記ガスケット結合部は、前記ケースに設けられている、
請求項14に記載のシール装置。
【請求項16】
前記ガスケット結合部は、前記カバーに設けられている、
請求項14に記載のシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスケットは、接合される二つの部材、例えばケースとカバーとの間に介在し、二つの部材をシールする。使用用途としては、内燃機関に用いられるオイルパン(ケース)と、オイルパンの開口部を遮蔽するシリンダブロック(カバー)との間のシール、あるいは各種配管の接合部分のシールなどである。いずれにしてもガスケットは、二つの部材をシールするという目的から、環状形状を有している。
【0003】
ところがオイルパンなどの比較的面積が大きい部材をシールする用途では、ガスケットも大型化し、その製造から組付けにいたる過程での取り扱いが煩雑になる。またガスケットは、一枚の金属板を打ち抜き加工して製造するわけであるが、環状をなす内側部分の材料は廃却材となるため、ガスケットが大きくなればなるほど、コスト面からも環境面からも望ましくない。
【0004】
そこでガスケットを複数のピースに分割し、全体として環状形状をなすようにした分割ガスケットが案出されている。
【0005】
特許文献1は、自動車用エンジンのオイルパンガスケットに適用されるガスケットの例を開示している(段落0014、図1参照)。このガスケットは、二つのピース(構成材5a、5b)に分割され、レーザスポット溶接によって二つのピースを接合している(段落0015、図2-3参照)。二つのピースは、接合後に加圧処理されて平滑化され(段落0016、図3図7(a)(b)参照)、その後に弾性体(ゴムコンパウンドシート30)を接着固定されて(段落0017、図3図6参照)、ガスケット(オイルパンガスケット1)となる。
【0006】
特許文献2も、第1分割片(100A)と第2分割片(100B)という二つのピースにガスケットを二分割し、各ピースを接合してガスケット(ガスケット100)としている(段落0020-0021、図1-2参照)。特許文献1に記載されたガスケットと相違するのは、各ピースの接合手法、それに弾性体を各ピースに固定する手法である。
【0007】
特許文献2では、ガスケットを構成する二つのピース、つまり第1分割片(100A)と第2分割片(100B)とは、液状ガスケット(FIPG)によってそれぞれ固定されている(段落0020参照)。特許文献1のように、レーザスポット溶接によって接合されたものではない。
【0008】
また第1分割片(100A)及び第2分割片(100B)は、金属板の両面にゴム製の膜が設けられたラバーコーテッドメタル(RCM)を打ち抜き加工することによって得られた材料である(段落0022参照)。したがって弾性体は、接合後の二つのピースに固定されるのではなく、二つのピースに予め成膜されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-155043号公報
【特許文献2】特開2020-076467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1、2に記載されたガスケットは、いずれも各ピースを接合して環状のガスケットを製造し、その後互いに接合される二つの部材の間に配置される。このため二つの部材の間にガスケットを介在させたシール装置として見たとき、ガスケットを挟んで二つの部材を接合する工程に先立ち、二つのピースを連結してガスケットを製造する工程が必要になり、製造工程が繁雑である。改善が求められる。
【0011】
本開示の課題は、製造工数を減らし、製造の簡略化を図ることができるシール装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
シール装置の一態様は、弾性体を被覆した平坦なシール面を表裏面に有する複数のピースに分割され、全体として環状形状をなす金属製の分割ガスケットと、前記分割ガスケットのシール面を挟んで互いに接合される二つの部材と、を備え、前記二つの部材の少なくとも一方のうち、前記分割ガスケットの二つのピースが互いに隣接する領域に設けられ、前記シール面に対面する位置に凹部を有するガスケット結合部と、前記ガスケット結合部に充填された液状ガスケットと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
シール装置の製造工数を減らし、製造の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態として、分割ガスケットとケースとを示す分解斜視図。
図2】ガスケット結合部の配置位置を示すケースの斜視図。
図3】ガスケット結合部の各種パターンとして、(A)(B)はひし形の格子パターンを、(C)は碁盤状の格子パターンをそれぞれ示す平面図。
図4】ガスケット結合部の位置で、シール装置を拡大して示す垂直断面図。
図5】ガスケット結合部の位置で、シール装置の変形例を拡大して示す垂直断面図。
図6】ガスケット結合部の位置で、シール装置の別の変形例を拡大して示す垂直断面図。
図7】第2の実施の形態として、分割ガスケットを示す平面図。
図8】分割ガスケットの隣接する各ピースの端部を拡大して示す平面図。
図9】分割ガスケットの隣接する各ピースの端部を拡大して示す正面図。
図10】ガスケット結合部の位置で、ケースとカバーとを拡大して示す平面図。
図11図10中のA-A線断面図。
図12】ガスケット結合部の位置で、組み立て前のシール装置を拡大して示す正面図。
図13】ガスケット結合部の位置で、シール装置を拡大して示す正面図。
図14】変形例として、分割ガスケットの隣接する各ピースの端部を拡大して示す正面図。
図15】変形例として、ガスケット結合部の位置で、ケースとカバーを拡大して示す平面図。
図16図15中のA´-A´線断面図。
図17】変形例として、ガスケット結合部の位置で、組み立て前のシール装置を拡大して示す正面図。
図18】変形例として、ガスケット結合部の位置で、シール装置を拡大して示す正面図。
図19】第3の実施の形態として、分割ガスケットを示す平面図。
図20】分割ガスケットの隣接する各ピースの端部を拡大して示す平面図。
図21】分割ガスケットの隣接する各ピースの端部を拡大して示す正面図。
図22】ガスケット結合部の位置で、ケースとカバーとを拡大して示す平面図。
図23図22中のB-B線断面図。
図24】ガスケット結合部の位置で、組み立て前のシール装置を拡大して示す垂直断面図。
図25】ガスケット結合部の位置で、シール装置を拡大して示す垂直断面図。
図26】変形例として、分割ガスケットの隣接する各ピースの端部を拡大して示す正面図。
図27】変形例として、ガスケット結合部の位置で、ケースとカバーとを拡大して示す平面図。
図28図27中のB´-B´線断面図。
図29】変形例として、ガスケット結合部の位置で、組み立て前のシール装置を拡大して示す垂直断面図。
図30】変形例として、ガスケット結合部の位置で、シール装置を拡大して示す垂直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
シール装置の実施の形態を説明する。説明項目はつぎの通りである。

[概要]
[第1の実施の形態]
1.構成
(1)分割ガスケット
(2)ガスケット結合部
(3)液状ガスケット
2.シール装置の組み立て
3.作用効果
4.変形例
[第2の実施の形態]
1.構成
(1)分割ガスケット
(2)ガスケット結合部
(3)液状ガスケット
2.シール装置の組み立て
3.作用効果
4.変形例
[第3の実施の形態]
1.構成
(1)分割ガスケット
(2)ガスケット結合部
(3)液状ガスケット
2.シール装置の組み立て
3.作用効果
4.変形例
【0016】
[概要]
図1及び図4に示すように、本実施の形態のシール装置11は、分割ガスケット31を介して互いに接合される二つの部材51(51A、51B)によって構成されている。二つの部材51は、例えばケース51Aとカバー51Bとである。
【0017】
シール装置11は、一例として、内燃機関に用いられるオイルパンとシリンダブロックとの間のシールに用いられる。この場合にはオイルパンがケース51A、シリンダブロックがカバー51Bとなる。ケース51Aは、二つの部材51のうちの一つであり、図示しないオイルをためるオイル溜り52を内部に設け、開口部53を上面に有している。カバー51Bは、二つの部材51のうちの他の一つであり、ケース51Aに設けられた開口部53を覆う。
【0018】
シール装置11は、別の一例として、電気自動車用のバッテリーを収容するバッテリー収容ケースと、バッテリー収容ケースの蓋との間のシールに用いることもできる。この場合にはバッテリー収容ケースがケース51A、バッテリー収容ケースの蓋がカバー51Bとなる。ケース51Aは、二つの部材51のうちの一つであり、符号52で示す内部空間は、バッテリーの収容空間となる。バッテリーの収容空間は、上面に有する開口部53を入口とする。カバー51Bは、二つの部材51のうちの他の一つであり、ケース51Aに設けられた開口部53を覆う。
【0019】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態を図1ないし図6に基づいて説明する。
【0020】
1.構成
(1)分割ガスケット
図1及び図4に示すように、分割ガスケット31は、弾性体32を被覆した平坦なシール面33を表裏面に有する二つのピースP1、P2に分割されている。
【0021】
分割ガスケット31を構成する個々のピースP1、P2は、例えばステンレス、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム合金などの金属を材料としており、例えばコーティングによって弾性体32を予めコーティングしている。
【0022】
弾性体32は、ゴムを主成分とするゴム配合物である。例えばニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコンゴムのうち、少なくとも一種類の合成ゴムを弾性体32の材料として用いることができる。これらの材料を用いたゴム配合物は、発泡ゴムであってもよい。
【0023】
分割ガスケット31を構成する個々のピースP1、P2は、互いの端部E1、E2を対面させ、環状形状をなしている。
【0024】
(2)ガスケット結合部
図2に示すように、二つの部材51のうちの一方の部材51Aには、分割ガスケット31の二つのピースP1、P2が互いに隣接する領域に、ガスケット結合部54が設けられている。図2中、ガスケット結合部54が設けられている位置を丸印Cで囲って示す。
【0025】
ガスケット結合部54は、分割ガスケット31のシール面33に対面する位置に、凹部55を有している。ガスケット結合部54は、凹部55にパターンPTを与えている。
【0026】
図3(A)~(C)に例示するように、凹部55に与えられたパターンPTは、例えば格子パターンである。図3(A)(B)に示すのは、斜め格子のパターンPTである。図3(C)に示すのは、碁盤格子のパターンPTである。いずれのパターンPTも、凹部55は細長い溝状に形成され、ガスケット結合部54中、凹部55が形成されていない領域を正四角形(図3(A)(C))、又はひし形(図3(B))に区切っている。
【0027】
一例として、凹部55によって区切られる正四角形(図3(A)(C))、又はひし形(図3(B))の領域の面積は、1mm以上である。
【0028】
(3)液状ガスケット
図4に示すように、シール装置11は、ガスケット結合部54に液状ガスケット71を充填している。液状ガスケット71は、FIPG(Formed In Place Gasket)と呼ばれている一液常温硬化型シリコンを用いたガスケットである。液状ガスケット71は、当初は流動性を有しており、各部に塗布することが可能である。大気中の湿気と反応すると、液状ガスケット71は硬化する。
【0029】
ガスケット結合部54には凹部55が設けられているので、ガスケット結合部54に充填された液状ガスケット71は、凹部55に、そして互いに隣接する各ピースP1、P2の端部E1、E2の間に入り込む。図4では図示していないが、分割ガスケット31のシール面33とケース51Aとの間、シール面33とカバー51Bとの間にも回り込む。こうして各部に入り込み、回り込んだ液状ガスケット71は、大気中の湿気と反応して硬化する。
【0030】
2.シール装置の組み立て
分割ガスケット31を介して二つの部材51(51A、51B)を接合するには、ケース51Aに設けられたガスケット結合部54に液状ガスケット71を塗布する。必要に応じて、カバー51Bにも、ガスケット結合部54に対面する位置に液状ガスケット71を塗布する。
【0031】
この状態で分割ガスケット31の各ピースP1、P2を用意し、ケース51A上の所定の位置に置く。そしてケース51Aの開口部53を覆うように、ケース51Aとカバー51Bとを位置合わせし、分割ガスケット31を挟んで両者を接合する。この作業は、液状ガスケット71が流動性を維持している状態の硬化前の段階で遂行する。
【0032】
その後液状ガスケット71が硬化すれば、シール装置11が完成する。
【0033】
3.作用効果
硬化した液状ガスケット71は、硬化後にもある程度の弾性を有し、ケース51A及びカバー51Bと分割ガスケット31とを結合状態に維持する。このときシール装置11では、互いに接合するケース51Aとカバー51Bとの間に挟み込まれた分割ガスケット31の弾性体32がシール作用を発揮する。硬化した液状ガスケット71も、分割ガスケット31の各ピースP1、P2の端部E1、E2に生ずる隙間をシールする。これによって互いに接合するケース51Aとカバー51Bとがシールされる。
【0034】
本実施の形態によれば、分割ガスケット31を間に挟んで二つの部材51(51A、51B)を接合する工程と、二つのピースP1、P2を連結して分割ガスケット31を製造する工程とを、一度の工程によって完遂することができる。したがってシール装置11の製造工数を減らし、製造の簡略化を図ることができる。
【0035】
本実施の形態によれば、ガスケット結合部54は、凹部55にパターンPT、例えば斜め格子(図3(A)(B))や碁盤格子(図3(C))などの格子のパターンPTを与えている。このためガスケット結合部54では、分割ガスケット31と液状ガスケット71とを満遍なく結合させることができ、強固で安定したシール作用を生じさせることができる。
【0036】
本実施の形態によれば、弾性体32をシール面33にコーティングしたので、弾性体32を被覆したシール面33を容易に得ることができ、製造の容易化を図ることができる。
【0037】
4.変形例
実施に際しては、各種の変形や変更が可能である。
【0038】
例えば図5に示すように、ガスケット結合部54は、ケース51Aの側ではなく、カバー51Bの側に設けるようにしてもよい。この場合には、分割ガスケット31の上面側のシール面33とカバー51Bとが結合される。
【0039】
あるいは図6に示すように、ガスケット結合部54は、ケース51Aとカバー51Bとの双方に設けるようにしてもよい。この場合には、分割ガスケット31の下面側のシール面33とケース51Aとが結合され、分割ガスケット31の上面側のシール面33とカバー51Bとが結合される。
【0040】
別の一例として、分割ガスケット31の各ピースP1、P2が有するシール面33と液状ガスケット71との間には、下地処理層が設けられていてもよい。
【0041】
その他あらゆる変形や変更が可能である。
【0042】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態を図7ないし図18に基づいて説明する。第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0043】
1.構成
(1)分割ガスケット
図7に示すように、分割ガスケット31は、八つのピースP1~P8に八分割され、全体として矩形形状をした環状をなしている。八つのピースP1~P8は、長辺側と短辺側に四つ、角部に四つ設けられている。
【0044】
図7ないし図9に示すように、分割ガスケット31の個々のピースP1~P8は、互いに隣接する端部E1~E8に屈曲部34を設けている。屈曲部34は、個々のピースP1~P8の端部E1~E8をガスケット結合部54の方向に屈曲させている。本実施の形態では、ガスケット結合部54はカバー51Bの側に設けられているため、屈曲部34は、カバー51Bの方向に向けて屈曲している。
【0045】
屈曲部34の屈曲度合いは、例えば90度である。もっとも実施に際しては、屈曲部34は、必ずしも90度の角度で屈曲している必要はなく、例えば70度、80度、100度、110度などであってもよい。
【0046】
本実施の形態では、分割ガスケット31をなす八つのピースP1~P8の互いに隣接する端部E1~E8を一つの対とする。より詳細には、
(a)ピースP1の端部E1とピースP2の端部E2
(b)ピースP2の端部E2とピースP3の端部E3
(c)ピースP3の端部E3とピースP4の端部E4
(d)ピースP4の端部E4とピースP5の端部E5
(e)ピースP5の端部E5とピースP6の端部E6
(f)ピースP6の端部E6とピースP7の端部E7
(g)ピースP7の端部E7とピースP8の端部E8
(h)ピースP8の端部E8とピースP1の端部E1
という八種類の端部E1~E8の対が発生する。
【0047】
これに対して図8及び図9では、(a)の対を代表させて示している。以下の説明も、これに倣ってピースP1、P2を例に挙げて説明する。これは説明の便宜上、(a)の対を代表例としているにすぎない。(b)~(h)の対については、図示及び説明を省略するが、(a)の対についての図示及び説明をそのまま適用することが可能である。
【0048】
(2)ガスケット結合部
図10及び図11に示すように、ガスケット結合部54は、カバー51Bの側に設けられている。ガスケット結合部54が有する凹部55は、溝の形状を有している。
【0049】
ガスケット結合部54は、分割ガスケット31をなす複数のピースP1~P8のうち、二つのピース(例えばピースP1、P2)が互いに隣接する領域に配置されている。本実施の形態では、二つのピースが互いに隣接する領域は八か所存在するので、ガスケット結合部54も八個設けられている。
【0050】
ガスケット結合部54に設けられた凹部55は、互いに隣接して対をなす一対の屈曲部34を受け入れることができる溝幅及び溝深さを有している。このような凹部55は、一つのガスケット結合部54に一本だけ設けられている。もっとも実施に際しては、一つのガスケット結合部54に二本以上の凹部55を設けることは差し支えない。ただし互いに隣接して対をなす一対の屈曲部34を受け入れる凹部55は、一つのガスケット結合部54について一本だけである。
【0051】
(3)液状ガスケット
図12及び図13に示すように、ケース51Aとカバー51Bとの接合に際して、分割ガスケット31のピースP1、P2の端部E1、E2にそれぞれ設けられた一対の屈曲部34は、互いに対をなして凹部55に差し込まれる。この際、カバー51Bに設けられた凹部55と、ケース51A側の凹部55に対面する部分とには、予め液状ガスケット71が塗布されている。ガスケット結合部54に充填された液状ガスケット71は、凹部55に、そして互いに隣接する各ピースP1、P2の端部E1、E2の間に入り込む。分割ガスケット31のシール面33とケース51Aとの間、シール面33とカバー51Bとの間にも回り込む。こうして各部に入り込み、回り込んだ液状ガスケット71は、大気中の湿気と反応して硬化する。
【0052】
2.シール装置の組み立て
分割ガスケット31を介して二つの部材51(51A、51B)を接合するには、カバー51Bに設けられたガスケット結合部54に液状ガスケット71を塗布する。液状ガスケット71は、ガスケット結合部54が有する凹部55の内部に充填されるように塗布する。必要に応じて、ケース51Aにも、ガスケット結合部54に対面する位置に液状ガスケット71を塗布する。
【0053】
この状態で分割ガスケット31の各ピースP1~P8を用意し、ケース51A上の所定の位置に置く。そしてケース51Aの開口部53を覆うように、ケース51Aとカバー51Bとを位置合わせし、分割ガスケット31を挟んで両者を接合する。このとき分割ガスケット31をなす各ピースP1~P8のうち、互いに隣接して対をなす端部E1~E8に設けられた一対の屈曲部34は、ガスケット結合部54が有する凹部55に差し込まれ、凹部55に充填されている液状ガスケット71内に挿入される。この作業は、液状ガスケット71が流動性を維持している状態の硬化前の段階で遂行する。
【0054】
その後液状ガスケット71が硬化すれば、シール装置11が完成する。
【0055】
3.作用効果
硬化した液状ガスケット71は、硬化後にもある程度の弾性を有し、ケース51A及びカバー51Bと分割ガスケット31とを結合状態に維持する。このときシール装置11では、互いに接合するケース51Aとカバー51Bとの間に挟み込まれた分割ガスケット31の弾性体32がシール作用を発揮する。硬化した液状ガスケット71も、分割ガスケット31の各ピースP1~P8の端部E1~E8に生ずる隙間をシールする。これによって互いに接合するケース51Aとカバー51Bとがシールされる。
【0056】
本実施の形態によれば、分割ガスケット31を間に挟んで二つの部材51(51A、51B)を接合する工程と、複数のピースP1~P8を連結して分割ガスケット31を製造する工程とを、一度の工程によって完遂することができる。したがってシール装置11の製造工数を減らし、製造の簡略化を図ることができる。
【0057】
本実施の形態によれば、分割ガスケット31をなす複数のピースP1~P8の端部E1~E8のうち、互いに隣接して対をなす一対の屈曲部34を凹部55に差し込み、液状ガスケット71で固定する。したがってカバー51Bに設けたガスケット結合部54と個々のピースP1~P8とを強固に結合することが可能である。その結果強固で安定したシール作用を生じさせることができる。
【0058】
4.変形例
実施に際しては、各種の変形や変更が可能である。
【0059】
例えば図14ないし図16に示すように、ガスケット結合部54は、カバー51Bの側ではなく、ケース51Aの側に設けるようにしてもよい。この場合には、個々のピースP1~P8の端部E1~E8をケース51Aの方向に向けて屈曲させた屈曲部34とする。
【0060】
図17及び図18に示すように、分割ガスケット31を介してケース51Aとカバー51Bとを接合し、シール装置11を組み立てるに際しては、ケース51Aに設けられたガスケット結合部54に液状ガスケット71を塗布する。液状ガスケット71は、ガスケット結合部54が有する凹部55の内部に充填されるように塗布する。必要に応じて、カバー51Bにも、ガスケット結合部54に対面する位置に液状ガスケット71を塗布する。
【0061】
この状態で分割ガスケット31の各ピースP1~P8を用意し、ケース51A上の所定の位置に置く。そしてケース51Aの開口部53を覆うように、ケース51Aとカバー51Bとを位置合わせし、分割ガスケット31を挟んで両者を接合する。この作業は、液状ガスケット71が流動性を維持している状態の硬化前の段階で遂行する。
【0062】
その後液状ガスケット71が硬化すれば、シール装置11が完成する。
【0063】
別の一例として、分割ガスケット31の各ピースP1~P8が有するシール面33と液状ガスケット71との間には、下地処理層が設けられていてもよい。
【0064】
その他あらゆる変形や変更が可能である。
【0065】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態を図19ないし図30に基づいて説明する。第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0066】
1.構成
(1)分割ガスケット
図19に示すように、分割ガスケット31は、八つのピースP1~P8に八分割され、全体として矩形形状をした環状をなしている。八つのピースP1~P8は、長辺側と短辺側に四つ、角部に四つ設けられている。
【0067】
図19ないし図21に示すように、分割ガスケット31の個々のピースP1~P8は、互いに隣接する端部E1~E8に屈曲部34を設けている。屈曲部34は、個々のピースP1~P8の端部E1~E8をガスケット結合部54の方向に屈曲させている。本実施の形態では、ガスケット結合部54はカバー51Bの側に設けられているため、屈曲部34は、カバー51Bの方向に向けて屈曲している。
【0068】
屈曲部34の屈曲度合いは、例えば90度である。もっとも実施に際しては、屈曲部34は、必ずしも90度の角度で屈曲している必要はなく、例えば70度、80度、100度、110度などであってもよい。
【0069】
本実施の形態では、分割ガスケット31をなす八つのピースP1~P8の互いに隣接する端部E1~E8を一つの対とする。より詳細には、
(a)ピースP1の端部E1とピースP2の端部E2
(b)ピースP2の端部E2とピースP3の端部E3
(c)ピースP3の端部E3とピースP4の端部E4
(d)ピースP4の端部E4とピースP5の端部E5
(e)ピースP5の端部E5とピースP6の端部E6
(f)ピースP6の端部E6とピースP7の端部E7
(g)ピースP7の端部E7とピースP8の端部E8
(h)ピースP8の端部E8とピースP1の端部E1
という八種類の端部E1~E8の対が発生する。
【0070】
これに対して図20及び図21では、(a)の対を代表させて示している。以下の説明も、これに倣ってピースP1、P2を例に挙げて説明する。これは説明の便宜上、(a)の対を代表例としているにすぎない。(b)~(h)の対については、図示及び説明を省略するが、(a)の対についての図示及び説明をそのまま適用することが可能である。
【0071】
(2)ガスケット結合部
図22及び図23に示すように、ガスケット結合部54は、カバー51Bの側に設けられている。ガスケット結合部54が有する凹部55は、穴の形状を有している。
【0072】
ガスケット結合部54は、分割ガスケット31をなす複数のピースP1~P8のうち、二つのピース(例えばピースP1、P2)が互いに隣接する領域に配置されている。本実施の形態では、二つのピースが互いに隣接する領域は八か所存在するので、ガスケット結合部54も八個設けられている。
【0073】
ガスケット結合部54に設けられた凹部55は、互いに隣接して対をなす一対の屈曲部34を受け入れることができる直径及び深さを有している。このような凹部55は、一つのガスケット結合部54に一つだけ設けられている。もっとも実施に際しては、一つのガスケット結合部54に二つ以上の凹部55を設けることは差し支えない。ただし互いに隣接して対をなす一対の屈曲部34を受け入れる凹部55は、一つのガスケット結合部54について一つだけである。
【0074】
(3)液状ガスケット
図24及び図25に示すように、ケース51Aとカバー51Bとの接合に際して、分割ガスケット31のピースP1、P2の端部E1、E2にそれぞれ設けられた一対の屈曲部34は、互いに対をなして凹部55に差し込まれる。この際、カバー51Bに設けられた凹部55と、ケース51A側の凹部55に対面する部分とには、予め液状ガスケット71が塗布されている。ガスケット結合部54に充填された液状ガスケット71は、凹部55に、そして互いに隣接する各ピースP1、P2の端部E1、E2の間に入り込む。分割ガスケット31のシール面33とケース51Aとの間、シール面33とカバー51Bとの間にも回り込む。こうして各部に入り込み、回り込んだ液状ガスケット71は、大気中の湿気と反応して硬化する。
【0075】
2.シール装置の組み立て
分割ガスケット31を介して二つの部材51(51A、51B)を接合するには、カバー51Bに設けられたガスケット結合部54に液状ガスケット71を塗布する。液状ガスケット71は、ガスケット結合部54が有する凹部55の内部に充填されるように塗布する。必要に応じて、ケース51Aにも、ガスケット結合部54に対面する位置に液状ガスケット71を塗布する。
【0076】
この状態で分割ガスケット31の各ピースP1~P8を用意し、ケース51A上の所定の位置に置く。そしてケース51Aの開口部53を覆うように、ケース51Aとカバー51Bとを位置合わせし、分割ガスケット31を挟んで両者を接合する。このとき分割ガスケット31をなす各ピースP1~P8のうち、互いに隣接して対をなす端部E1~E8に設けられた一対の屈曲部34は、ガスケット結合部54が有する凹部55に差し込まれ、凹部55に充填されている液状ガスケット71内に挿入される。この作業は、液状ガスケット71が流動性を維持している状態の硬化前の段階で遂行する。
【0077】
その後液状ガスケット71が硬化すれば、シール装置11が完成する。
【0078】
3.作用効果
硬化した液状ガスケット71は、硬化後にもある程度の弾性を有し、ケース51A及びカバー51Bと分割ガスケット31とを結合状態に維持する。このときシール装置11では、互いに接合するケース51Aとカバー51Bとの間に挟み込まれた分割ガスケット31の弾性体32がシール作用を発揮する。硬化した液状ガスケット71も、分割ガスケット31の各ピースP1~P8の端部E1~E8に生ずる隙間をシールする。これによって互いに接合するケース51Aとカバー51Bとがシールされる。
【0079】
本実施の形態によれば、分割ガスケット31を間に挟んで二つの部材51(51A、51B)を接合する工程と、複数のピースP1~P8を連結して分割ガスケット31を製造する工程とを、一度の工程によって完遂することができる。したがってシール装置11の製造工数を減らし、製造の簡略化を図ることができる。
【0080】
本実施の形態によれば、分割ガスケット31をなす複数のピースP1~P8の端部E1~E8のうち、互いに隣接して対をなす一対の屈曲部34を凹部55に差し込み、液状ガスケット71で固定する。したがってカバー51Bに設けたガスケット結合部54と個々のピースP1~P8とを強固に結合することが可能である。その結果強固で安定したシール作用を生じさせることができる。
【0081】
4.変形例
実施に際しては、各種の変形や変更が可能である。
【0082】
例えば図26ないし図28に示すように、ガスケット結合部54は、カバー51Bの側ではなく、ケース51Aの側に設けるようにしてもよい。この場合には、個々のピースP1~P8の端部E1~E8をケース51Aの方向に向けて屈曲させた屈曲部34とする。
【0083】
図29及び図30に示すように、分割ガスケット31を介してケース51Aとカバー51Bとを接合し、シール装置11を組み立てるに際しては、ケース51Aに設けられたガスケット結合部54に液状ガスケット71を塗布する。液状ガスケット71は、ガスケット結合部54が有する凹部55の内部に充填されるように塗布する。必要に応じて、カバー51Bにも、ガスケット結合部54に対面する位置に液状ガスケット71を塗布する。
【0084】
この状態で分割ガスケット31の各ピースP1~P8を用意し、ケース51A上の所定の位置に置く。そしてケース51Aの開口部53を覆うように、ケース51Aとカバー51Bとを位置合わせし、分割ガスケット31を挟んで両者を接合する。この作業は、液状ガスケット71が流動性を維持している状態の硬化前の段階で遂行する。
【0085】
その後液状ガスケット71が硬化すれば、シール装置11が完成する。
【0086】
別の一例として、分割ガスケット31の各ピースP1~P8が有するシール面33と液状ガスケット71との間には、下地処理層が設けられていてもよい。
【0087】
その他あらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
11 シール装置
31 分割ガスケット
32 弾性体
33 シール面
34 屈曲部
51 二つの部材
51A ケース
51B カバー
52 オイル溜り
53 開口部
54 ガスケット結合部
55 凹部
71 液状ガスケット
C 丸印
E1、E2 端部
E1~E8 端部
P1、P2 ピース
P1~P8 ピース
PT パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30