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  • 特開-車両の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006944
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20250109BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20250109BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F02D29/02 321B
F16H61/02
B60W30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108001
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
【テーマコード(参考)】
3D241
3G093
3J552
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241BA44
3D241CB02
3D241CB06
3D241CD16
3D241CE02
3D241CE04
3D241DB01Z
3D241DC41Z
3D241DC53Z
3D241DC58Z
3G093AA01
3G093AA05
3G093BA21
3G093CA03
3G093DA05
3G093DB09
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA59
3J552RA02
3J552RC03
3J552VE08W
(57)【要約】
【課題】燃費の悪化を抑制しつつ適切に暖機運転を実行することが可能な車両の制御装置を提供する。
【解決手段】駆動力源の暖機運転を行うように構成された車両の制御装置であって、暖機運転を実行するコントローラを備え、コントローラは、車両の現在位置を取得する位置情報取得部と、車両の現在位置から目的地までの走行経路を設定する経路設定部と、車両が暖機運転を実行して走行経路を走行した場合の燃料の消費量に基づいた値である第1燃料消費量、および、車両が暖機運転を禁止して走行経路を走行した場合の燃料の消費量に基づいた値である第2燃料消費量を算出する燃料消費量算出部と、第1燃料消費量から第2燃料消費量を引いた値が所定量以下である場合に、暖機運転を実行する暖機運転実行部と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源の暖機運転を行うように構成された車両の制御装置であって、
前記暖機運転を実行するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記車両の現在位置を取得する位置情報取得部と、
前記車両の前記現在位置から目的地までの走行経路を設定する経路設定部と、
前記車両が前記暖機運転を実行して前記走行経路を走行した場合の燃料の消費量に基づいた値である第1燃料消費量、および、前記車両が前記暖機運転を禁止して前記走行経路を走行した場合の燃料の消費量に基づいた値である第2燃料消費量を算出する燃料消費量算出部と、
前記第1燃料消費量から前記第2燃料消費量を引いた値が所定量以下である場合に、前記暖機運転を実行する暖機運転実行部と、を備えている
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間始動時などに駆動力源の暖機運転を行う車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、効率的に駆動力源の暖機の促進を行うことを目的とした車両の制御装置が開示されている。特許文献1の装置では、エンジンが冷間始動されたときには、歯車変速機における最高変速段の設定を禁止することにより、エンジンの回転速度を高めて暖機を促進する、暖機促進制御を実行する。また、特許文献1の装置では、エンジンの冷間始動時に、エンジンの始動時の日時や車両位置などの状況に関する情報を取得する。その情報に基づき、始動時の状況の一致する類型的な走行パターンが記憶されている場合に、走行経路を予測する。そして、予測された走行経路における走行距離または走行時間が、暖機促進制御による暖機の完了に要する走行距離または走行時間よりも、十分に長くない場合には、暖機促進制御の実行を禁止する。すなわち、特許文献1の装置では、エンジンの冷間始動時であっても、走行距離もしくは走行時間が比較的短いことが予測された場合には、暖機促進制御を禁止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003ー90420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、上述した構成により、暖機が完了せずに走行が終了することや、暖機が完了した直後に走行が終了することなどを抑制することができるので、暖機促進制御を実行することでかえって燃費が悪化することを抑制することができる、としている。しかしながら、特許文献1の装置では、走行距離もしくは走行時間の長さに基づいて暖機促進制御を実行するか否かを判定するものの、その判定のための走行距離もしくは走行時間の長さの基準が記載されていない。また、その走行距離や走行時間と燃費との関係性が記載されていない。したがって、特許文献1の装置では、燃費が悪化するか否かに基づいてその暖機促進制御を実行するか否かを精度良く判定することができない可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、燃費の悪化を抑制しつつ適切に暖機運転を実行することが可能な車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、駆動力源の暖機運転を行うように構成された車両の制御装置であって、前記暖機運転を実行するコントローラを備え、前記コントローラは、前記車両の現在位置を取得する位置情報取得部と、前記車両の前記現在位置から目的地までの走行経路を設定する経路設定部と、前記車両が前記暖機運転を実行して前記走行経路を走行した場合の燃料の消費量に基づいた値である第1燃料消費量、および、前記車両が前記暖機運転を禁止して前記走行経路を走行した場合の燃料の消費量に基づいた値である第2燃料消費量を算出する燃料消費量算出部と、前記第1燃料消費量から前記第2燃料消費量を引いた値が所定量以下である場合に、前記暖機運転を実行する暖機運転実行部と、を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両の制御装置によれば、駆動力源の暖機運転を行うように構成された車両において、現在位置から目的地までの走行経路に基づいて燃料消費量を求める。その求める燃料消費量には、暖機運転を実行してその走行経路を車両が走行した場合の第1燃料消費量と、暖機運転を禁止してその経路を車両が走行した場合の第2燃料消費量と、が含まれる。そして、第1燃料消費量から第2燃料消費量を引いた値が、所定量以下である場合に、暖機運転を実行するように構成されている。そのため、設定された走行経路を、暖機運転を実行して走行することによって、燃料の消費量が増大してしまうことを抑制することができる。また、設定された走行経路に基づいて第1燃料消費量および第2燃料消費量を求めるので、精度良く第1燃料消費量および第2燃料消費量を求めることができる。そして、第1燃料消費量の方が、第2燃料消費量に対して所定量より大きいか否かに基づいて、暖機運転を実行するか否かの判定を行うので、想定される燃料消費量に応じて暖機運転を適切に実行もしくは禁止することができ、その結果、燃料消費量の増大をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態における制御装置を搭載した車両の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態における制御装置の機能構成を説明するためのブロック図である。
図3】本発明の実施形態における制御装置によって実行される制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を具体化した場合の一例に過ぎないのであって、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1に、本発明の実施形態における制御対象である車両Veの駆動系統および制御系統の一例を示してある。図1に示す車両Veは、走行のための駆動力を出力する駆動力源として、エンジン1を有している。また、車両Veは、エンジン1の出力トルクを、トランスアクスル2やデファレンシャルギヤ(図示せず)等を介して、駆動輪3へ伝達する構成となっている。さらに、車両Veは、検出部4、および、コントローラ5(ECU)を備えている。
【0011】
なお、本発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、上述したエンジン1のような内燃機関を搭載した車両に限らず、エンジン1とモータ(図示せず)とを駆動力源とするハイブリッド車両(図示せず)であってもよい。あるいは、発電機(図示せず)を駆動するための動力源としてエンジン1を搭載したシリーズ方式のハイブリッド車両(図示せず)、もしくは、いわゆるレンジエクステンダーと称されるような電気自動車(図示せず)などであってもよく、従来知られている種々の車両であってよい。
【0012】
また、本発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、図1に示すように、駆動トルクを前輪(駆動輪)3に伝達し、前輪3で駆動力を発生させる前輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、駆動トルクを、例えばプロペラシャフト(図示せず)等を介して後輪6に伝達し、後輪6で駆動力を発生させる後輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、トランスファ機構(図示せず)を設けて、駆動トルクを前輪3および後輪6の両方に伝達し、それら前輪3および後輪6の両方で駆動力を発生させる四輪駆動車であってもよい。
【0013】
検出部4は、車両Veを制御する際に必要な各種のデータや情報を取得するための機器あるいは装置であり、例えば、電源部、マイクロコンピュータ、センサ、および、入出力インターフェース等を含んでいる。特に、本発明の実施形態における検出部4は、車両Veの外部の周辺環境の温度を検出する外気温センサ4aおよびエンジン1を冷却するための冷却水の温度を検出するエンジン水温センサ4bが設けられている。検出部4は、コントローラ5と電気的に接続されており、上記のような各種センサや機器・装置等の検出値または算出値に応じた電気信号等を検出データとしてコントローラ5に出力するように構成されている。
【0014】
コントローラ5は、例えば、マイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置である。コントローラ5には、上記の検出部4で検出または算出された各種データ等が入力される。コントローラ5は、その入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントローラ5は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上記のように車両Veを制御するように構成されている。なお、検出部4、コントローラ5および車両Veの走行のための各アクチュエータやセンサなどは、例えば、CANやワイヤーハーネス等によって互いに電気的に接続されており、取得した検出値または算出値に応じた電気信号を検出データとしてコントローラ5に出力する。また、図1では一つのコントローラ5が設けられた例を示しているが、コントローラ5は、制御する装置や機器毎に、あるいは、制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
【0015】
上述したように構成された車両Veでは、エンジン1の冷間始動時などにエンジン1の暖機運転を実行するように構成されている。暖機運転の一例としては、エンジン1を間欠的に作動させること、エンジン1の動力をトルクコンバータに選択的に伝達可能にするロックアップクラッチを備えた車両Veである場合に、そのロックアップクラッチの係合を禁止して走行すること、あるいは、二段階以上の変速段を設定可能な変速機構を備えた車両Veである場合に、その変速機構におけるアップシフトを禁止して走行することなどである。これらのような暖機運転を実行することにより、エンジン1の作動する頻度が増えたり、エンジン1の回転数が上昇したりするので、エンジン1の暖機を促進することができる。
【0016】
一方で、暖機運転を実行することにより、エンジン1の負荷が増大することになる。つまり、エンジン1の作動する頻度や時間が増大したり、エンジン1の特性に応じて設定される燃費効率の最も良好な作動状態とは異なる作動状態でエンジン1が作動したりすることになる。すなわち、暖機運転を実行することによって燃料の消費量が増大することになる。そのため、走行距離や走行時間が短い場合には、暖機運転を実行せずに車両Veが目的地まで走行するほうが、暖機運転を実行して車両Veが目的地まで走行するより、燃料消費量が少ない場合がある。つまり、暖機運転を実行することによる燃料消費量を低減する効果が小さくなるばかりか、かえって燃料消費量の増大につながってしまう可能性がある。
【0017】
そこで、本発明の実施形態における制御装置では、その燃料消費量に基づいて、冷間始動時などに暖機運転を実行するか否かを判定する制御を実行するように構成されている。そのような制御を実行するために、コントローラ5は、図2に示すように、位置情報取得部7と、経路設定部8と、燃料消費量算出部9と、暖機運転実行部10と、を備えている。
【0018】
位置情報取得部7は、例えば位置情報サービスなどから車両Veの現在位置に関する情報を取得する。そのような位置情報サービスの一例としては、衛星から発せられた信号を受信して現在位置を推定あるいは特定する衛星測位システムであるGNSSの一つであるGPSなどである。
【0019】
経路設定部8は、位置情報取得部7によって取得した車両Veの現在位置から目的地までの予定走行経路を設定する。目的地は、例えば、車両Veの乗員が図示しないカーナビゲーションシステムを操作することによって車両Veの目的地が設定される。あるいは、車両Veが、自動運転走行が可能である場合には、走行開始時などにオペレータの遠隔操作によって車両Veの目的地が設定される構成であってもよい。経路設定部8は、コントローラ5の記憶部などに予め格納されている地図情報や、路側機などのインフラ設備から道路情報および渋滞情報などを取得して、車両Veの現在位置から、上述したように設定された目的地までの予定走行経路を設定する。また、車両Veの現在位置から目的地までの経路が複数ある場合には、経路設定部8は、取得した地図情報、道路情報および渋滞情報などに基づき、走行距離や所要時間などが最も短くなる経路を予定走行経路として選択する。
【0020】
燃料消費量算出部9は、経路設定部8によって設定された車両Veの現在位置から目的地までの予定走行経路を走行することによる燃料消費量を算出する。燃料消費量算出部9は、燃料消費量を算出するときに、車両Veが暖機運転を実行して予定走行経路を走行した場合の第1燃料消費量、および、車両Veが暖機運転を禁止して予定走行経路を走行した場合の第2燃料消費量のそれぞれを算出する。
【0021】
具体的には、燃料消費量算出部9は、まず、予定走行経路における道路情報や、過去の走行データ、車両情報などを取得する。例えば、燃料消費量算出部9は、上述した予定走行経路の距離、道路の勾配、道路の交通状況(混雑状況)、自動車専用道路か否かなどの道路の種類などの道路情報を取得する。また、燃料消費量算出部9は、車両Veが過去に予定走行経路を走行したことがある場合や、予定走行経路を走行した他車両からデータを取得できる場合には、そのときの燃料消費量などの過去のデータを取得する。さらに、燃料消費量算出部9は、車両Veの性能や車種などの車両情報を取得する。これは、車種によってエネルギ効率が良くなる状況が異なるためであり、例えば、ディーゼルエンジンは高速走行時のエネルギ効率が高く、ハイブリッドや電気自動車はストップ&ゴーの多い交通状況下でエネルギ効率が高くなるためである。そして、取得したそれらの情報に基づいて車両Veの挙動を予測し、その予測した車両Veの挙動に基づいて、上述した第1燃料消費量および第2燃料消費量を算出する。
【0022】
なお、車両Veがハイブリッド車両や電気自動車などの駆動力源としてモータジェネレータを備えた車両である場合には、燃料消費量算出部9は、電力消費量を算出する。つまり、燃料消費量算出部9は、上述したような情報を取得し、車両Veが暖機運転を実行して予定走行経路を走行した場合の第1電力消費量、および、車両Veが暖機運転を禁止して予定走行経路を走行した場合の第2電力消費量のそれぞれを算出する。
【0023】
暖機運転実行部10は、燃料消費量算出部9によって算出された第1燃料消費量および第2燃料消費量の比率に基づいて、暖機運転を実行するか否かを判定する。具体的には、暖機運転実行部10は、第1燃料消費量と第2燃料消費量との差分を算出し、第2燃料消費量に対するその差分の割合である差分割合が、所定の割合以上である場合に暖機運転を実行する。つまり、暖機運転実行部10は、第2燃料消費量を基準として、第1燃料消費量と第2燃料消費量との相対的な差異の割合を算出し、その算出された差分割合に基づいて暖機運転の実行を判定している。なお、所定の割合は、任意の割合であってよく、車両Veの性能や、暖機運転を禁止することによる駆動力源を含めた車両Veへの影響などを考慮し、予め実験やシミュレーションなどを行うことによって求められている。
【0024】
図3には、本発明の実施形態における制御装置によって実行される制御の一例を説明するためのフローチャートを示してある。図3に示すフローチャートは、外気温センサ4aやエンジン水温センサ4bによって取得した外気温やエンジン水温などに基づき、冷間始動であると判定された場合などに、暖機運転を実行するか否かを判定するときに実行される制御の一例である。図3に示すように、この制御では、まず、ステップS1において目的地を取得する。ステップS1では、例えば、車両Veの乗員が図示しないカーナビゲーションシステムを操作することや、オペレータの遠隔操作などによって車両Veの目的地が設定される。そのようにして設定された目的地を取得した後、処理がステップS2に進む。
【0025】
ステップS2では、車両Veの現在位置からステップS1において取得した目的地までの経路を検索する。ステップS2では、地図情報、道路情報および渋滞情報などに基づいて車両Veの現在位置から目的地までの経路である予定走行経路を設定する。車両Veの現在位置から目的地まで複数の経路がある場合には、地図情報、道路情報および渋滞情報などに基づき、走行距離や所要時間などが最も短くなる経路が予定走行経路として選択されるように構成されている。
【0026】
予定走行経路が設定された後、処理がステップS3に進み、その予定走行経路を車両Veが走行した場合の燃料消費量が算出される。ステップS3では、道路情報や、過去の走行データ、あるいは、車両情報などを取得する。次に、その取得した情報に基づき、暖機運転を実行して予定走行経路を走行した場合と、暖機運転を禁止して予定走行経路を走行した場合と、の車両Veの挙動を予測する。そして、予測された車両Veの挙動に基づいて、暖機運転を実行した場合の燃料消費量である第1燃料消費量と、暖機運転を禁止した場合の燃料消費量である第2燃料消費量と、が算出される。第1燃料消費量および第2燃料消費量が算出された後、処理がステップS4に進む。
【0027】
ステップS4では、算出された第1燃料消費量および第2燃料消費量に基づく比率が、予め定められた所定の割合より大きいか否かが判定される。ステップS4では、まず、第1燃料消費量から第2燃料消費量を減算した差分を算出し、第2燃料消費量に対するその差分の割合である差分割合を算出する。そして、その差分割合が、予め実験やシミュレーションなどに基づいて定められた所定の割合より大きいか否かが判定される。なお、所定の割合は、燃料の消費量に基づいて決定されることに限らず、暖機運転を禁止することによる車両Veへの影響なども考慮した任意の割合であってよい。また、信号など予測の困難な理由によって車両Veが停車したり徐行したりすることになり、その結果、エンジン1の作動時間が長くなることがあるので、所定の割合は、そのような事態を考慮して設定されていてもよい。上述した差分割合が所定の割合より大きいことにより、ステップS4でYESと判定された場合には、処理がステップS5に進む。
【0028】
ステップS5に進んだ場合には、暖機運転が禁止される。すなわち、ステップS4でYESと判定されたことにより、暖機運転を実行して予定走行経路を車両Veが走行した場合には、暖機運転を禁止して予定走行経路を車両Veが走行した場合と比較して、燃料の消費量が増大することが予測される。そのため、ステップS5では、暖機運転の実行を禁止するように構成されている。
【0029】
反対に、上述した差分割合が所定の割合以下であることにより、ステップS4でNOと判定された場合には、処理がステップS6に進む。あるいは、第2燃料消費量に対する上述した差分の割合が負の値となった場合には、ステップS4でNOと判定され、処理がステップS6に進む。ステップS6に進んだ場合には、暖機運転が実行される。すなわち、ステップS4でNOと判定されたことにより、暖機運転を実行して予定走行経路を車両Veが走行した場合には、暖機運転を禁止した場合と比較して、燃料の消費量が低減する。あるいは、車両Veへの影響などから暖機を実行することによる効果を十分に得ることができることが予測されている。そのため、ステップS6では、暖機運転を実行するように構成されている。
【0030】
上述したように、本発明の実施形態における制御装置では、冷間始動時などに暖機運転を実行するように構成された車両Veにおいて、現在位置から目的地までの予定走行経路を探索する。次に、暖機運転を実行して予定走行経路を走行した場合の第1燃料消費量と、暖機運転を禁止して予定走行経路を走行した場合の第2燃料消費量と、を算出する。その後、第1燃料消費量と第2燃料消費量との差分を算出し、第2燃料消費量に対するその差分の割合である差分割合が、予め定められた所定の割合より大きいか否かを判定する。そして、差分割合が、所定の割合以下である場合には暖機運転を実行し、反対に、所定の割合が所定の割合より大きい場合には暖機運転を禁止するように構成されている。すなわち、暖機運転を実行して予定走行経路を走行することにより、燃料消費量が増大してしまうことが予測される場合には、暖機運転の実行を禁止する。そのため、暖機運転を実行することによってかえって燃料消費量が増大してしまうことを防止もしくは抑制することができる。
【0031】
また、その暖機運転を実行するか否かを、予定走行経路などに基づいて算出された燃料消費量によって判定する。すなわち、想定される燃料の消費量に基づいて差分割合を算出し、その差分割合と所定の割合とを比較しているので、暖機運転を実行するか否かの基準が明確になっている。したがって、暖機運転が実行されたとしても、車両Veの走行距離が短いことなどによって暖機が完了する前に車両Veの走行が終了したり、あるいは、暖機の完了した直後に車両Veの走行が終了したりすることによって、暖機による余分な燃料消費をより精度良く回避することができる。また、その判定を行う基準として、予定走行経路に関するデータに基づいて想定される燃料の消費量を用いているので、さらに基準が明確であり、暖機運転の実行の可否をより適切に判定することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した例に限定されないのであって、本発明の目的を達成する範囲で適宜変更してもよい。例えば、上述した実施形態では、第1燃料消費量から第2燃料消費量を減算した差分を算出し、第2燃料消費量に対するその差分の割合である差分割合に基づいて暖機運転の実行の可否を判定したが、第1燃料消費量から第2燃料消費量を差し引いた値と、予め定められた所定量とを比較して暖機運転の実行の可否を判定するように構成されていても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 エンジン
2 トランスアクスル
3 駆動輪(前輪)
4 検出部
4a 外気温センサ
4b エンジン水温センサ
5 コントローラ
6 後輪
7 位置情報取得部
8 経路設定部
9 燃料消費量算出部
10 暖機運転実行部
Ve 車両
図1
図2
図3