(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025069567
(43)【公開日】2025-05-01
(54)【発明の名称】船外機
(51)【国際特許分類】
B63H 20/14 20060101AFI20250423BHJP
B63H 23/08 20060101ALI20250423BHJP
B63H 23/30 20060101ALI20250423BHJP
【FI】
B63H20/14 100
B63H23/08
B63H23/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179362
(22)【出願日】2023-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】永沼 公司
(72)【発明者】
【氏名】栄留 悠希
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将
(72)【発明者】
【氏名】西口 和也
(72)【発明者】
【氏名】上川 弘樹
(57)【要約】
【課題】シフト装置の小型化を図ると共にシフト装置の部品レイアウトの自由度を向上させる。
【解決手段】船外機は、動力伝達機構(30)と、シフト装置(50)と、を備えている。動力伝達機構には、アッパシャフト(22)に固定された上側歯車(31)と、ロアシャフト(23)に相対回転可能な下側歯車(32)と、上側歯車及び下側歯車に噛み合う中間歯車(33、34)と、が設けられている。シフト装置には、シフトシャフト(52)の回転を操作部(57)の上下動に変換するカム機構(54)と、操作部によって上下方向にスライドされるシフトスライダ(61)と、上側歯車又は下側歯車に接続可能なドグクラッチ(66)と、シフトスライダとドグクラッチを連結するコネクタピン(63)と、が設けられている。ドグクラッチがロアシャフトに一体回転可能に連結され、シフトスライダが下側歯車よりも下方に位置している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側からプロペラ側に延びるアッパシャフト及びロアシャフトと、
前記アッパシャフトと前記ロアシャフトの間に介在した動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を操作して前記プロペラを逆回転させるシフト装置と、を備えた船外機であって、
前記動力伝達機構は、
前記アッパシャフトの下端部に固定された上側歯車と、
前記上側歯車に対して下方から対向する下側歯車と、
前記上側歯車及び前記下側歯車に噛み合う中間歯車と、を有し、
前記下側歯車が前記ロアシャフトに相対回転可能に支持され、
前記シフト装置は、
アクチュエータ側から下方に延びるシフトシャフトと、
前記シフトシャフトの回転を操作部の上下動に変換するカム機構と、
前記操作部に連結して上下方向にスライド可能なシフトスライダと、
前記上側歯車と前記下側歯車の間に設置されたドグクラッチと、
前記シフトスライダと前記ドグクラッチを連結するコネクタピンと、を有し、
前記ドグクラッチは前記上側歯車又は前記下側歯車に接続可能であり、
前記ドグクラッチが前記ロアシャフトに対して一体回転可能に連結され、
前記シフトスライダが前記上側歯車よりも上方又は前記下側歯車よりも下方に位置していることを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記シフトスライダは前記ロアシャフトの外周面に移動可能に設置され、
前記コネクタピンは前記ロアシャフトの内側に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記中間歯車が前記シフトシャフトの回転軸と前記ドグクラッチの間に設置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記動力伝達機構は、
前記上側歯車及び前記下側歯車に噛み合う他の中間歯車を有し、
前記他の中間歯車が前記ドグクラッチを挟んで前記一方の中間歯車に対向していることを特徴とする請求項3に記載の船外機。
【請求項5】
前記中間歯車の上方又は下方に前記カム機構が設置されていることを特徴とする請求項3に記載の船外機。
【請求項6】
前記シフトシャフトから前記カム機構には動力が歯車で伝達されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機にはアクチュエータによってシフトポジションが切り替えられるシフト装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の船外機では、エンジンから下方にアッパシャフトが延び、アッパシャフトの下端部にはアッパベベルギアが固定されている。アッパベベルギアはミドルベベルギアを介してロアベベルギアに連結し、ロアベベルギアにはロアシャフトが相対回転可能に挿し込まれている。ロアシャフトの上端部がロアベベルギアから突き出しており、このロアシャフトの上端部に固定されたドグクラッチがアッパベベルギアとロアベベルギアの対向スペースに位置付けられている。
【0003】
シフト装置では、アクチュエータによってドグクラッチがアッパベベルギアとロアベベルギアの間で上下に動かされる。ドグクラッチが上方に動かされてアッパベベルギアに連結すると、シフトポジションが前進に切り替わってエンジンの動力がアッパシャフトからロアシャフトにダイレクトに伝えられる。ドグクラッチが下方に動かされてロアベベルギアに連結すると、シフトポジションが後退に切り替わってドグクラッチを介してロアベベルギアとロアシャフトが連結する。エンジンの動力がアッパシャフトからアッパベベルギア、ミドルベベルギア、ロアベベルギアを介して逆転してロアシャフトに伝えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アッパベベルギアとロアベベルギアの間にドグクラッチが位置しているため、シフト装置の構成部品がアッパベベルギア及びロアベベルギアと略同じ高さに設置される。このため、アッパベベルギア及びロアベベルギアよりも前方にシフト装置の各部品が位置付けられてシフト装置が大型化する。また、シフト装置の構成部品のレイアウトがアッパベベルギア及びロアベベルギアと略同じ高さに制限されて部品レイアウトの自由度が低下する。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、シフト装置の小型化を図ると共にシフト装置の部品レイアウトの自由度を向上させることができる船外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の船外機は、エンジン側からプロペラ側に延びるアッパシャフト及びロアシャフトと、前記アッパシャフトと前記ロアシャフトの間に介在した動力伝達機構と、前記動力伝達機構を操作して前記プロペラを逆回転させるシフト装置と、を備えた船外機であって、前記動力伝達機構は、前記アッパシャフトの下端部に固定された上側歯車と、前記上側歯車に対して下方から対向する下側歯車と、前記上側歯車及び前記下側歯車に噛み合う中間歯車と、を有し、前記下側歯車が前記ロアシャフトに相対回転可能に支持され、前記シフト装置は、アクチュエータ側から下方に延びるシフトシャフトと、前記シフトシャフトの回転を操作部の上下動に変換するカム機構と、前記操作部に連結して上下方向にスライド可能なシフトスライダと、前記上側歯車と前記下側歯車の間に設置されたドグクラッチと、前記シフトスライダと前記ドグクラッチを連結するコネクタピンと、を有し、前記ドグクラッチは前記上側歯車又は前記下側歯車に接続可能であり、前記ドグクラッチが前記ロアシャフトに対して一体回転可能に連結され、前記シフトスライダが前記上側歯車よりも上方又は前記下側歯車よりも下方に位置していることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様の船外機によれば、アクチュエータにシフトシャフトが回転されると、カム機構によってシフトスライダが上下方向にスライドされる。シフトスライダにはコネクタピンを介してドグクラッチが連結されているため、ドグクラッチが上側歯車と下側歯車の間で上下方向に動かされる。ドグクラッチが上側歯車に接続すると、アッパシャフトがロアシャフトと一体回転可能に連結されて、エンジンの動力がアッパシャフトからロアシャフトにダイレクトに伝えられる。ドグクラッチが下側歯車に接続すると、下側歯車がドグクラッチを介してロアシャフトと一体回転可能に連結される。エンジンの動力が上側歯車、中間歯車、下側歯車を介してロアシャフトに逆転して伝えられる。ロアシャフトの回転方向が逆転することでプロペラの回転方向が切り替えられる。また、シフトスライダが上側歯車及び下側歯車に高さ方向に位置ズレしているため、シフトシャフトとドグクラッチを水平方向に近づけてシフト装置が小型化できると共にシフト装置の部品レイアウトの自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】本実施例の第1のギア機構及びシフト装置の斜視図である。
【
図4】本実施例の第1のギア機構及びシフト装置の側面図である。
【
図5】本実施例のシフトポジションの切替動作の説明図である。
【
図6】本実施例のシフト装置及び第1のギア機構の部品レイアウトの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様の船外機では、エンジン側からプロペラ側にアッパシャフト及びロアシャフトが延び、アッパシャフトとロアシャフトの間には動力伝達機構が介在している。シフト装置によって動力伝達機構が操作されることでプロペラが逆回転されている。動力伝達機構では上側歯車に対して下方から下側歯車が対向し、上側歯車と下側歯車には中間歯車が噛み合っている。上側歯車はアッパシャフトの下端部に固定され、下側歯車はロアシャフトに相対回転可能に支持されている。シフト装置では、アクチュエータ側から下方にシフトシャフトが延び、カム機構によってシフトシャフトの回転が操作部の上下動に変換されている。操作部には上下方向にスライド可能なシフトスライダが連結され、シフトスライダにはコネクタピンを介してドグクラッチが連結されている。このドグクラッチはロアシャフトに一体回転可能に支持されている。ドグクラッチは上側歯車と下側歯車の間に設置され、ドグクラッチの上下動によってドグクラッチが上側歯車又は下側歯車に接続される。アクチュエータにシフトシャフトが回転されると、カム機構によってシフトスライダが上下方向に動かされる。シフトスライダにはコネクタピンを介してドグクラッチが連結されているため、ドグクラッチが上側歯車と下側歯車の間で上下方向に動かされる。ドグクラッチが上側歯車に接続すると、アッパシャフトがロアシャフトと一体回転可能に連結されて、エンジンの動力がアッパシャフトからロアシャフトにダイレクトに伝えられる。ドグクラッチが下側歯車に接続すると、下側歯車がドグクラッチを介してロアシャフトと一体回転可能に連結される。エンジンの動力が上側歯車、中間歯車、下側歯車を介してロアシャフトに逆転して伝えられる。ロアシャフトの回転方向が逆転することでプロペラの回転方向が切り替えられる。また、シフト装置のシフトスライダが上側歯車よりも上方又は下側歯車よりも下方に位置している。シフトスライダが上側歯車及び下側歯車に高さ方向に位置ズレしているため、シフトシャフトとドグクラッチを水平方向に近づけてシフト装置が小型化できると共にシフト装置の部品レイアウトの自由度を向上できる。
【実施例0011】
以下、添付図面を参照して、本実施例の船外機について説明する。
図1は本実施例の船外機の側面図である。
図2は本実施例の船外機の前面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0012】
図1及び
図2に示すように、船外機1は、エンジン20の駆動力を二重反転式のプロペラ27、28に伝えて船舶に推進力を発生させている。船外機1の上部のトップカウル11及びボトムカウル12の内側にはエンジン20等が収容されている。ボトムカウル12の下部にはアッパハウジング13が設けられ、アッパハウジング13の下部にはロアハウジング14が設けられている。アッパハウジング13及びロアハウジング14にはドライブシャフト21が縦向き収容されており、ロアハウジング14にはドライブシャフト21に連結するプロペラシャフト24が横向きに収容されている。
【0013】
ドライブシャフト21は、エンジン20側からプロペラ27、28側(下側)に延びるアッパドライブシャフト(アッパシャフト)22及びロアドライブシャフト(ロアシャフト)23を有している。アッパドライブシャフト22とロアドライブシャフト23は上下方向に離間しており、アッパドライブシャフト22とロアドライブシャフト23の間には第1のギア機構(動力伝達機構)30が介在されている。詳細は後述するが、第1のギア機構30はシフト装置50に連結されており、シフト装置50に第1のギア機構30が操作されてエンジン20の動力が伝達又は遮断される他、プロペラ27、28が逆回転される。
【0014】
プロペラシャフト24はドライブシャフト21に対して直交しており、プロペラシャフト24とドライブシャフト21の間には第2のギア機構40が介在されている。プロペラシャフト24は、中空のアウタプロペラシャフト25の内側にインナプロペラシャフト26が挿し込まれた二重管構造に形成されている。アウタプロペラシャフト25の前端部及び後端部からインナプロペラシャフト26が前後方向に突き出している。アウタプロペラシャフト25の後端部にはフロントプロペラ27が固定されており、インナプロペラシャフト26の後端部にはリアプロペラ28が固定されている。
【0015】
第2のギア機構40は、ロアドライブギア41、リアドリブンギア42、フロントドリブンギア43を有している。ロアドライブギア41はロアドライブシャフト23の下端部に固定され、リアドリブンギア42はアウタプロペラシャフト25の前端部に固定され、フロントドリブンギア43はインナプロペラシャフト26の前端部に固定されている。ロアドライブギア41、リアドリブンギア42、フロントドリブンギア43はベベルギアであり、ロアドライブギア41にリアドリブンギア42及びフロントドリブンギア43が噛み合っている。ロアドライブシャフト23の回転によってアウタプロペラシャフト25とインナプロペラシャフト26が互いに逆回転する。
【0016】
アウタプロペラシャフト25に固定されたフロントプロペラ27には3つのプロペラ翼が設けられており、インナプロペラシャフト26に固定されたリアプロペラ28にも3つのプロペラ翼が設けられている。アウタプロペラシャフト25とインナプロペラシャフト26が互いに逆回転することで、フロントプロペラ27及びリアプロペラ28が互いに逆回転される。フロントプロペラ27の回転で生まれる旋回流が、リアプロペラ28の逆回転によって回収されて推進効率が向上されると共に、フロントプロペラ27及びリアプロペラ28の回転によって生じるカウンタートルクが相殺される。
【0017】
ところで、ロアハウジング14のプロペラ27、28の上方には、プロペラ27、28への空気の引き込みを抑えるアンチキャビテーションプレート15が形成されている。ロアハウジング14のアンチキャビテーションプレート15よりも上側は幅広部16になっており、ロアハウジング14のアンチキャビテーションプレート15よりも下側は幅狭部17になっている。幅狭部17よりも下側には砲弾状に膨らんでプロペラシャフト24の収容部18が形成されている。ロアハウジング14は水面よりも下側に位置するため、ロアハウジング14の前面投影面積が小さければ走行抵抗が減って加速が向上される。
【0018】
ロアハウジング14には第1のギア機構30が収容されている。第1のギア機構30にはシフト装置50が連結されているが、ロアハウジング14にシフト装置50が収容されると、プロペラシャフト24が下がってロアハウジング14の前面投影面積が大きくなるおそれがある。また、ロアハウジング14の上面にはエンジン20の冷却用にウォータポンプ70が設置されており、滑走状態ではアンチキャビテーションプレート15付近の水面からウォータポンプ70までの距離が長くなる。このため、水面から水を汲み上げるために大型のウォータポンプを用意しなければならない。
【0019】
そこで、本実施例の船外機1では、第1のギア機構30のピニオンギアの小型化、シフト装置50のギア伝達構造、第1のギア機構30の下方スペースを利用したシフト装置50のレイアウトが採用されている。第1のギア機構30及びシフト装置50が小型化されると共にシフト装置50がロアハウジング14内にコンパクトに設置されて、ロアハウジング14の前面投影面積の増加が抑えられている。また、船舶の滑走状態でも水面からウォータポンプ70までの距離の増加が抑えられて、船外機1に対して小型のウォータポンプ70が利用可能になっている。
【0020】
図3から
図5を参照して、第1のギア機構及びシフト装置について説明する。
図3は本実施例の第1のギア機構及びシフト装置の斜視図である。
図4は本実施例の第1のギア機構及びシフト装置の側面図である。
図5は本実施例のシフトポジションの切替動作の説明図である。
【0021】
図3及び
図4に示すように、第1のギア機構30は、アッパドライブギア(上側歯車)31、ロアドリブンギア(下側歯車)32、一対のピニオンギア(他の中間歯車、中間歯車)33、34を有している。アッパドライブギア31はアッパドライブシャフト22の下端部に固定され、ロアドリブンギア32はロアドライブシャフト23に挿し込まれてアッパドライブギア31に下方から対向している。アッパドライブギア31、ロアドリブンギア32、一対のピニオンギア33、34はベベルギアであり、アッパドライブギア31及びロアドリブンギア32に一対のピニオンギア33、34が噛み合っている。
【0022】
アッパドライブギア31からロアドリブンギア32に回転が伝わると、ロアドリブンギア32がアッパドライブギア31に対して逆回転する。ロアドリブンギア32はロアドライブシャフト23に相対回転可能に支持されており、シフト装置50のドグクラッチ66によってロアドリブンギア32とロアドライブシャフト23が連結可能に形成されている。ロアドリブンギア32とロアドライブシャフト23の非連結時にはロアドリブンギア32からロアドライブシャフト23への動力伝達が遮断され、ロアドリブンギア32とロアドライブシャフト23の連結時にはロアドリブンギア32とロアドライブシャフト23が一体回転される。
【0023】
シフト装置50は、アクチュエータ51の動力を用いてシフトシャフト52、カム機構54、シフトスライダ61、コネクタピン63を介してドグクラッチ66を作動させている。シフトシャフト52はアクチュエータ51側から下方に延びており、シフトシャフト52の高さ方向の中間部には外周の所定領域に歯が形成されたセクターギア53が固定されている。カム機構54は、円筒カム55の外周面にシフトフォーク(操作部)57をスライド可能に取り付けて構成されている。円筒カム55の上端側には外周の所定領域に歯が形成されたセクターギア59が固定され、セクターギア59がシフトシャフト52のセクターギア53に噛み合っている。
【0024】
円筒カム55の外周面には螺旋状にカム溝が形成されており、シフトフォーク57の円筒内の従動節58(
図5参照)が円筒カム55のカム溝に入り込んでいる。シフトシャフト52の回転がセクターギア53、59を介して円筒カム55に伝えられ、円筒カム55が回転してカム溝に沿ってシフトフォーク57の従動節58が動かされる。このように、カム機構54によってシフトシャフト52の回転がシフトフォーク57の上下動に変換される。シフトフォーク57の先端側が二股に分かれており、シフトフォーク57のフォーク部分がロアドライブシャフト23の外周面に移動可能に設置されたシフトスライダ61に連結されている。
【0025】
シフトスライダ61は円筒状に形成されており、ロアドライブシャフト23の外周面にシフトスライダ61がスライド可能に設置されている。シフトスライダ61の外周面には上下2つの環状溝が形成されている。シフトスライダ61の上側の環状溝にはシフトフォーク57のフォーク部分が入り込んでおり、シフトフォーク57の上下動に伴ってシフトスライダ61がロアドライブシャフト23に沿って上下方向にスライドされる。シフトスライダ61の下側の環状溝には抜止スプリング62が装着されており、抜止スプリング62によって後述するコネクタピン63の貫通ピン64が抜け止めされている。
【0026】
ロアドライブシャフト23の内側にはコネクタピン63が収容されており、ロアドライブシャフト23の上端からコネクタピン63が突き出している。コネクタピン63の下端部には貫通ピン64が水平に挿し込まれており、ロアドライブシャフト23の上下に延びる長穴から突き出した貫通ピン64がシフトスライダ61に挿し込まれている。コネクタピン63の上端部には貫通ピン65が水平に挿し込まれており、ロアドライブシャフト23の上方で貫通ピン65がドグクラッチ66に挿し込まれている。コネクタピン63を介してシフトスライダ61とドグクラッチ66が連結されている。
【0027】
ドグクラッチ66はアッパドライブギア31とロアドリブンギア32の対向スペースに設置されている。ドグクラッチ66は円筒状に形成されており、ドグクラッチ66の外周面には環状溝が形成されている。ドグクラッチ66の環状溝には抜止スプリング67が装着されており、抜止スプリング67によってコネクタピン63の貫通ピン65が抜け止めされている。ドグクラッチ66の上面はアッパドライブギア31の下面に対向し、ドグクラッチ66の下面はロアドリブンギア32の上面に対向している。ドグクラッチ66及びアッパドライブギア31の対向面、ドグクラッチ66及びロアドリブンギア32の対向面に複数の爪部が形成されている。
【0028】
ドグクラッチ66がコネクタピン63を介してシフトスライダ61に連結されているため、ドグクラッチ66がアッパドライブギア31とロアドリブンギア32に離接可能に上下動される。ドグクラッチ66とアッパドライブギア31の爪部同士に引っ掛かることでドグクラッチ66がアッパドライブギア31に接続され、ドグクラッチ66とロアドリブンギア32の爪部同士が引っ掛かることでドグクラッチ66がロアドリブンギア32に接続される。また、ドグクラッチ66は貫通ピン65を介してロアドライブシャフト23に固定され、ドグクラッチ66がロアドライブシャフト23に一体回転可能に連結されている。
【0029】
図5(A)に示すように、シフトポジションがニュートラルポジションの場合、ドグクラッチ66がアッパドライブギア31とロアドリブンギア32の中立位置に位置付けられている。ドグクラッチ66がアッパドライブギア31及びロアドリブンギア32のいずれにも接続されていない。エンジン20(
図1参照)の動力がアッパドライブギア31、一対のピニオンギア33、34を介してロアドリブンギア32に伝達されているが、ロアドライブシャフト23に対してロアドリブンギア32が空転している。このため、エンジン20の動力がアッパドライブシャフト22からロアドライブシャフト23に伝達されることがない。
【0030】
図5(B)に示すように、アクチュエータ51によってシフトシャフト52が一方向に回転されると、カム機構54によってシフトシャフト52の回転がシフトフォーク57の上方への移動に変換される。シフトフォーク57によってシフトスライダ61がロアドライブシャフト23に沿って上方にスライドされる。シフトスライダ61のスライドに伴ってドグクラッチ66が中立位置から上方に移動し、ドグクラッチ66の爪部がアッパドライブギア31の爪部に引っ掛けられる。ドグクラッチ66がアッパドライブギア31に接続されて、ニュートラルポジションから前進ポジションにシフトポジションが切り替えられる。
【0031】
アッパドライブギア31にはアッパドライブシャフト22が固定され、ドグクラッチ66にはコネクタピン63を介してロアドライブシャフト23に連結されているため、アッパドライブシャフト22がロアドライブシャフト23に連結される。エンジン20の動力がアッパドライブシャフト22からロアドライブシャフト23に伝達され、プロペラ27、28(
図1参照)が回転されて前進方向に推力が発生する。なお、前進ポジションでもエンジン20の動力がアッパドライブギア31、一対のピニオンギア33、34を介してロアドリブンギア32に伝達されるが、ロアドライブシャフト23に対してロアドリブンギア32が空転されている。
【0032】
図5(C)に示すように、アクチュエータ51によってシフトシャフト52が他方向に回転されると、カム機構54によってシフトシャフト52の回転がシフトフォーク57の下方への移動に変換される。シフトフォーク57によってシフトスライダ61がロアドライブシャフト23に沿って下方にスライドされる。シフトスライダ61のスライドに伴ってドグクラッチ66が中立位置から下方に移動し、ドグクラッチ66の爪部がロアドリブンギア32の爪部に引っ掛けられる。ドグクラッチ66がロアドリブンギア32に接続されて、ニュートラルポジションから後退ポジションにシフトポジションが切り替えられる。
【0033】
ロアドリブンギア32がドグクラッチ66を介してロアドライブシャフト23に連結される。エンジン20の動力がアッパドライブシャフト22からアッパドライブギア31、一対のピニオンギア33、34、ロアドリブンギア32を介してロアドライブシャフト23に伝達され、プロペラ27、28(
図1参照)が逆回転されて後退方向に推力が発生する。このように、ドグクラッチ66が上下方向に移動して第1のギア機構30が操作されることで、アッパドライブシャフト22からロアドライブシャフト23に向かう伝達経路が変更されてプロペラ27、28の回転方向が切り替えられている。
【0034】
図6を参照して、シフト装置及び第1のギア機構の部品レイアウトについて説明する。
図6は本実施例のシフト装置及び第1のギア機構の部品レイアウトの説明図である。
【0035】
図6に示すように、アッパドライブシャフト22及びロアドライブシャフト23の間に第1のギア機構30が位置付けられ、アッパドライブシャフト22及びロアドライブシャフト23の前方にシフト装置50が位置付けられている。第1のギア機構30はロアハウジング14の幅広部16に収容され、シフト装置50はロアハウジング14の幅広部16及び幅狭部17に亘って収容されている。より詳細には、シフトシャフト52、カム機構54、コネクタピン63(
図5参照)の各上半部とドグクラッチ66が幅広部16に収容され、シフトシャフト52、カム機構54、コネクタピン63の各下半部とシフトスライダ61は幅狭部17に収容されている。
【0036】
シフト装置50のシフトスライダ61等が幅狭部17に設置されることで、ロアハウジング14の幅広部16の高さ寸法が抑えられる。幅広部16の高さ寸法が小さくなることで、ロアハウジング14の前面投影面積が小さくなって走行抵抗が低減される。また、シフトスライダ61がロアドリブンギア32よりも下方に位置している。シフトフォーク57でドグクラッチ66をダイレクトに操作する構成とは異なり、ドグクラッチ66からシフトフォーク57やシフトシャフト52を大きく離す必要がない。シフトシャフト52とドグクラッチ66が前後方向に近づけられてシフト装置50が小型化される。
【0037】
第1のギア機構30では、アッパドライブギア31、ロアドリブンギア32に一対のピニオンギア33、34が噛み合っている。一対のピニオンギア33、34はドグクラッチ66を挟んで前後に対向している。アッパドライブシャフト22のトルクが一対のピニオンギア33、34に分散されて伝達されるため、一対のピニオンギア33、34の強度を低くしてギアの小型化を図ることができる。ピニオンギア33、34の小型化によって第1のギア機構30が収容される幅広部16の高さ寸法が抑えられる。船外機1が小型化されると共にロアハウジング14の前面投影面積が小さくなって走行抵抗が低減される。
【0038】
ピニオンギア34はシフトシャフト52とドグクラッチ66の間に設置されている。ピニオンギア34がシフトシャフト52側に設置されても、ピニオンギア34がシフト装置50に干渉することがなく、ピニオンギア34とシフト装置50がロアハウジング14の幅広部16にコンパクトに設置されている。ピニオンギア34の下方にはカム機構54が設置されている。ピニオンギア34の下方スペースを利用してカム機構54が設置されることでシフト装置50の小型化が図られている。この場合、単一のベアリングハウジング69(
図5参照)によってピニオンギア33、34、円筒カム55が回転可能に支持されている。
【0039】
上記したように、シフトシャフト52からカム機構54には歯車で動力が伝達されている。ギア比の変更によってシフトシャフト52の回転量、ドグクラッチ66のストローク、シフト荷重が調整されている。シフトシャフト52の少ない回転量で、ドグクラッチ66のストロークが増加され、シフト装置50が小型化されてロアハウジング14にコンパクトに設置される。なお、本実施例では、シフトシャフト52のセクターギア53よりも円筒カム55のセクターギア59が少なく、シフトシャフト52のセクターギア53の歯数が「10」で、円筒カム55のセクターギア59の歯数が「9」に設定されている。
【0040】
ロアハウジング14の上面には、アッパドライブシャフト22上にウォータポンプ70が設置されている。ロアハウジング14の下側の収容部18には吸水口71が形成されており、吸水口71からロアハウジング14内に水面の高さまで水が入り込んでいる。ロアハウジング14のアンチキャビテーションプレート15よりも上方の幅広部16の高さ寸法が抑えられているため、アンチキャビテーションプレート15付近の水面からウォータポンプ70までの距離が小さくなっている。このため、小型のウォータポンプ70でも水面から水を汲み上げてエンジン20に送り出すことができる。
【0041】
以上、本実施例の船外機1によれば、ドグクラッチ66がアッパドライブギア31に接続すると、アッパドライブシャフト22がロアドライブシャフト23と一体回転可能に連結されて、エンジン20の動力がアッパドライブシャフト22からロアドライブシャフト23にダイレクトに伝えられる。ドグクラッチ66がロアドリブンギア32に接続すると、ロアドリブンギア32がドグクラッチ66を介してロアドライブシャフト23と一体回転可能に連結される。エンジン20の動力がアッパドライブギア31、一対のピニオンギア33、34、ロアドリブンギア32を介してロアドライブシャフト23に逆転して伝えられる。ロアドライブシャフト23の回転方向が逆転することでプロペラ27、28の回転方向が切り替えられる。また、シフトスライダ61がロアドリブンギア32よりも下方に位置するため、シフトシャフト52とドグクラッチ66を水平方向に近づけてシフト装置50が小型化されると共にシフト装置50の部品レイアウトの自由度が向上される。
【0042】
なお、本実施例では、シフトスライダがロアドリブンギアよりも下方に位置しているが、シフトスライダがアッパドリブンギアよりも上方に位置していてもよい。この場合、一対のピニオンギアよりもカム機構が上方に設置される。このようなレイアウトでもシフトシャフトとドグクラッチが水平方向に近づけられてシフト装置が小型化される。
【0043】
また、本実施例では、船外機が二重反転式のプロペラを備えているが、船外機は単一のプロペラを備えていてもよい。
【0044】
また、本実施例では、アッパドライブギアから一対のピニオンギアを介してロアドリブンギアに動力が伝達されているが、アッパドライブギアから単一のピニオンギアを介してロアドリブンギアに動力が伝達されてもよい。
【0045】
また、本実施例では、シフトシャフトからカム機構に歯車で動力が伝達されているが、シフトシャフトからカム機構への動力伝達機構は特に限定されない。
【0046】
以上の通り、第1態様は、エンジン(20)側からプロペラ(27、28)側に延びるアッパシャフト(アッパドライブシャフト22)及びロアシャフト(ロアドライブシャフト23)と、アッパシャフトとロアシャフトの間に介在した動力伝達機構(第1のギア機構30)と、動力伝達機構を操作してプロペラを逆回転させるシフト装置(50)と、を備えた船外機(1)であって、動力伝達機構は、アッパシャフトの下端部に固定された上側歯車(アッパドライブギア31)と、上側歯車に対して下方から対向する下側歯車(ロアドリブンギア32)と、上側歯車及び下側歯車に噛み合う中間歯車(ピニオンギア34)と、を有し、下側歯車がロアシャフトに相対回転可能に支持され、シフト装置は、アクチュエータ側から下方に延びるシフトシャフト(52)と、シフトシャフトの回転を操作部(シフトフォーク57)の上下動に変換するカム機構(54)と、操作部に連結して上下方向にスライド可能なシフトスライダ(61)と、上側歯車と下側歯車の間に設置されたドグクラッチ(66)と、シフトスライダとドグクラッチを連結するコネクタピン(63)と、を有し、ドグクラッチは上側歯車又は下側歯車に接続可能であり、ドグクラッチがロアシャフトに対して一体回転可能に連結され、シフトスライダが上側歯車よりも上方又は下側歯車よりも下方に位置している。この構成によれば、アクチュエータにシフトシャフトが回転されると、カム機構によってシフトスライダが上下方向にスライドされる。シフトスライダにはコネクタピンを介してドグクラッチが連結されているため、ドグクラッチが上側歯車と下側歯車の間で上下方向に動かされる。ドグクラッチが上側歯車に接続すると、アッパシャフトがロアシャフトと一体回転可能に連結されて、エンジンの動力がアッパシャフトからロアシャフトにダイレクトに伝えられる。ドグクラッチが下側歯車に接続すると、下側歯車がドグクラッチを介してロアシャフトと一体回転可能に連結される。エンジンの動力が上側歯車、中間歯車、下側歯車を介してロアシャフトに逆転して伝えられる。ロアシャフトの回転方向が逆転することでプロペラの回転方向が切り替えられる。また、シフトスライダが上側歯車及び下側歯車に高さ方向に位置ズレしているため、シフトシャフトとドグクラッチを水平方向に近づけてシフト装置が小型化できると共にシフト装置の部品レイアウトの自由度を向上できる。
【0047】
第2態様は、第1態様において、シフトスライダはロアシャフトの外周面に移動可能に設置され、コネクタピンはロアシャフトの内側に収容されている。この構成によれば、ロアシャフトの内側スペースを利用してコネクタピンを設置することができる。
【0048】
第3態様は、第1態様又は第2態様において、中間歯車がシフトシャフトの回転軸とドグクラッチの間に設置されている。この構成によれば、中間歯車がシフトシャフト側に設置されてもシフト装置に干渉することがなく、中間歯車とシフト装置をコンパクトに設置することができる。
【0049】
第4態様は、第3態様において、動力伝達機構は、上側歯車及び下側歯車に噛み合う他の中間歯車(ピニオンギア33)を有し、他の中間歯車がドグクラッチを挟んで一方の中間歯車に対向している。この構成によれば、アッパシャフトのトルクが分散されるため、中間歯車及び他の中間歯車の強度を低くして小型化することができる。中間歯車及び他の中間歯車の小型化によって船外機を小型化することができる。
【0050】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1態様において、中間歯車の上方又は下方にカム機構が設置されている。この構成によれば、中間歯車の上方スペース又は下方スペースを利用してカム機構を設置してシフト装置を小型化できる。
【0051】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか1態様において、シフトシャフトからカム機構には動力が歯車で伝達される。この構成によれば、ギア比の変更によってシフトシャフトの回転量、ドグクラッチのストローク、シフト荷重が調整される。シフトシャフトの少ない回転量でドグクラッチのストロークを増やしてシフト装置を小型化できる。
【0052】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0053】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。