(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006972
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】物体検知装置
(51)【国際特許分類】
G01S 15/32 20060101AFI20250109BHJP
G01S 15/931 20200101ALN20250109BHJP
【FI】
G01S15/32
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108050
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 敦俊
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AB13
5J083AC17
5J083AD01
5J083AF06
5J083BA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】検知されるべき物体が二つ存在している状況において、二つのソナーにより同時に送波され物体により反射された反射波である間接波の強め合いが生じても、二つの物体の位置を推定することができるよう改良された物体検知装置を提供する。
【解決手段】車両102の外周部に互いに隔置して配設されたソナーA~Cにおいて、ソナーA及びCは、音波を同時に送波すると共に物体により反射された直接波を受波し、ソナーBは、物体により反射された間接波を受波する物体検知装置であって、ソナーA、Cが直接波を受波し且つソナーBが間接波を受波する状況において、ソナーBが受波した間接波の波高値が、ソナーA、Cが受波した直接波の波高値に対し所定の倍率Yamax以上であるときには、ソナーA、Cが受波した直接波の飛行時間とソナーBが受波した間接波の飛行時間とに基づいて、それぞれソナーA、Cの検知範囲に存在する物体の位置を推定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一及び第二のソナーの間に第三のソナーが位置するよう車両の外周部に互いに隔置して配設された第一乃至第三のソナーと、前記第一乃至第三のソナーを制御する制御ユニットと、を含み、前記第一及び第二のソナーは、音波を同時に送波すると共に物体により反射された音波である直接波を受波するよう構成され、前記第三のソナーは、前記第一及び第二のソナーにより送波され物体により反射された音波である間接波を受波するよう構成され、前記制御ユニットは、前記直接波及び前記間接波の飛行時間に基づいて前記直接波及び前記間接波を反射した物体の位置を推定するよう構成された、物体検知装置において、
前記制御ユニットは、前記第一及び第二のソナーが直接波を受波し且つ前記第三のソナーが間接波を受波する状況において、前記第三のソナーが受波した間接波の波高値が、前記第一及び第二のソナーが受波した直接波の波高値に対し所定の倍率以上であるときには、前記第一のソナーが受波した直接波の飛行時間と前記第三のソナーが受波した間接波の飛行時間とに基づいて、前記第一のソナーの検知範囲に存在する物体の位置を推定すると共に、前記第二のソナーが受波した直接波の飛行時間と前記第三のソナーが受波した間接波の飛行時間とに基づいて、前記第二のソナーの検知範囲に存在する物体の位置を推定するよう構成された、物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検知装置において、前記制御ユニットは、前記第一及び第二のソナーが直接波を受波し且つ前記第三のソナーが間接波を受波する状況において、前記第三のソナーが受波した間接波の波高値が、前記第一及び第二のソナーが受波した直接波の波高値に対し前記所定の倍率未満であるときには、前記第一及び第二のソナーのうち前記第三のソナーが受波した間接波に対応するソナーを推定し、推定したソナーが受波した直接波の飛行時間と前記第三のソナーが受波した間接波の飛行時間とに基づいて、前記推定したソナーの検知範囲に存在する物体の位置を推定するよう構成された、物体検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の物体検知装置において、前記第一及び第二のソナーは、周波数変調により互いに異なる符号に符号化された音波を送波するよう構成され、前記制御ユニットは、前記第三のソナーが受波した間接波の符号に基づいて、前記第三のソナーが受波した間接波に対応するソナーを推定するよう構成された、物体検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の物体検知装置において、前記制御ユニットは、前記第一及び第二のソナーの一方のみが直接波を受波し且つ前記第三のソナーが間接波を受波するときには、前記一方のソナーが受波した直接波の飛行時間と前記第三のソナーが受波した間接波の飛行時間とに基づいて、前記一方のソナーの検知範囲に存在する物体の位置を推定するよう構成された、物体検知装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の物体検知装置において、前記第一のソナーが受波する直接波による探知エリアと、前記第三のソナーBが受波する間接波による探知エリアとが重複する範囲を重複範囲とし、前記重複範囲内に存在する任意の点と前記第一のソナーとの間の距離に対する前記任意の点と前記第三のソナーとの間の距離の比を所定の比として、前記所定の倍率は、前記所定の比の最大値である、物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両のための物体検知装置に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のための物体検知装置は、少なくとも二つのソナーと、それらのソナーを制御する制御ユニットと、を含んでいる。一方のソナーにより送波され物体により反射された超音波である直接波が一方のソナーにより受波され、物体により反射された超音波である間接波が他方のソナーにより受波される。制御ユニットは、直接波及び間接波の飛行時間に基づいて直接波及び間接波を反射した物体の位置、即ち物体と車両との間の距離及び車両に対する物体の方向を推定する。
【0003】
物体により反射された反射波が複数になり、複数の反射波がそれらの位相がずれて重なり合うと、反射波の打ち消し合いに起因して間接波の波高値が低くなり、物体を検知できなくなる。この問題に対処する物体検知装置の一つとして、例えば下記の特許文献1には、周波数変調により符号化された超音波とパルス圧縮処理とにより、反射波の符号識別性能が向上された物体検知装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
〔発明が解決しようとする課題〕
物体の検知範囲を広くして物体の検知効率を高くすべく、少なくとも三つのソナーを設け、二つのソナーにより同時に超音波を送波して直接波を受波すると共に、残りのソナーにより間接波を受波することが考えられる。
【0006】
しかし、二つのソナーにより送波され残りのソナーにより受波される二つの超音波の飛行時間が同一で、残りのソナーが受波する際の二つの間接波の位相が同相又は同相に近い状態になると、二つの間接波の強め合いが発生する。そのため、残りのソナーにより受波される間接波が一つになるため、検知されるべき物体が二つ存在していても、一つの物体の位置しか検知されないことがある。上記特許文献1に記載された物体検知装置のような従来の物体検知装置によっては、二つの間接波の強め合いに起因する上記問題を解消することができない。
【0007】
本発明は、検知されるべき物体が二つ存在している状況において、二つのソナーにより同時に送波され物体により反射された反射波である間接波の強め合いが生じても、二つの物体の位置を推定することができるよう改良された物体検知装置を提供する。
【0008】
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、第一及び第二のソナー(A、C)の間に第三のソナー(B)が位置するよう車両(102)の外周部に互いに隔置して配設された第一乃至第三のソナーと、第一乃至第三のソナーを制御する制御ユニット(運転支援ECU10)と、を含み、第一及び第二のソナーは、音波を同時に送波すると共に物体により反射された音波である直接波を受波するよう構成され、第三のソナーは、第一及び第二のソナーにより送波され物体により反射された音波である間接波を受波するよう構成され、制御ユニットは、直接波及び間接波の飛行時間に基づいて直接波及び間接波を反射した物体の位置を推定するよう構成された、物体検知装置(100)が提供される。
【0009】
制御ユニット(運転支援ECU10)は、第一及び第二のソナー(A、C)が直接波を受波し且つ第三のソナー(B)が間接波を受波する状況において、第三のソナーが受波した間接波の波高値が、第一及び第二のソナーが受波した直接波の波高値に対し所定の倍率(Yamax)以上であるときには(S40)、第一のソナー(A)が受波した直接波の飛行時間と第三のソナー(B)が受波した間接波の飛行時間とに基づいて、第一のソナーの検知範囲に存在する物体の位置を推定する(S60)と共に、第二のソナー(C)が受波した直接波の飛行時間と第三のソナーが受波した間接波の飛行時間とに基づいて、第二のソナーの検知範囲に存在する物体の位置を推定する(S60)よう構成される。
【0010】
上記の構成によれば、第一及び第二のソナーが直接波を受波し且つ第三のソナーが間接波を受波する状況において、第三のソナーが受波した間接波の波高値が、第一及び第二のソナーが受波した直接波の波高値に対し所定の倍率以上であるときには、以下のように物体の位置が推定される。即ち、第一のソナーが受波した直接波の飛行時間と第三のソナーが受波した間接波の飛行時間とに基づいて、第一のソナーの検知範囲に存在する物体の位置が推定される。また、第二のソナーが受波した直接波の飛行時間と第三のソナーが受波した間接波の飛行時間とに基づいて、第二のソナーの検知範囲に存在する物体の位置が推定される。
【0011】
よって、検知されるべき物体が二つ存在する状況において、第一及び第二のソナーにより送波され第三のソナーにより受波される二つの間接波が強め合いにより一つになっても、二つの物体の位置を推定することができる。
【0012】
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、制御ユニット(運転支援ECU10)は、第一及び第二のソナー(A、C)が直接波を受波し且つ第三のソナー(B)が間接波を受波する状況において、第三のソナーが受波した間接波の波高値が、第一及び第二のソナーが受波した直接波の波高値に対し所定の倍率(Yamax)未満であるときには、第一及び第二のソナーのうち第三のソナーが受波した間接波に対応するソナーを推定し(S80、S110)、推定したソナーが受波した直接波の飛行時間と第三のソナーが受波した間接波の飛行時間とに基づいて、推定したソナーの検知範囲に存在する物体の位置を推定する(S90、S120)よう構成される。
【0013】
本発明の他の一つの態様においては、第一及び第二のソナー(A、C)は、周波数変調により互いに異なる符号に符号化された音波を送波するよう構成され、制御ユニット(運転支援ECU10)は、第三のソナー(B)が受波した間接波の符号に基づいて、第三のソナーが受波した間接波に対応するソナーを推定する(S80、S110)よう構成される。
【0014】
更に、本発明の他の一つの態様においては、制御ユニット(運転支援ECU10)は、第一及び第二のソナーの一方のみが直接波を受波し且つ第三のソナーが間接波を受波するときには(S70、S100)、一方のソナーが受波した直接波の飛行時間と第三のソナーが受波した間接波の飛行時間とに基づいて、一方のソナーの検知範囲に存在する物体の位置を推定する(S90、S120)よう構成される。
【0015】
更に、本発明の他の一つの態様においては、第一のソナー(A)が受波する直接波による探知エリアと、第三のソナー(B)が受波する間接波による探知エリアとが重複する範囲を重複範囲(S)とし、重複範囲内に存在する任意の点(X)と第一のソナーとの間の距離に対する任意の点と第三のソナーとの間の距離の比を所定の比として、所定の倍率は、所定の比の最大値である。
【0016】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態にかかる物体検知装置を示す概略構成図である。
【
図2】実施形態の前端側のソナーA乃至Dの作動の順序を示す図である。
【
図3】障害物が二つの場合(A)及び障害物が一つの場合(B)について、間接波の強め合いの状況を示す図である。
【
図4】二つの間接波の波高値(A、B)及び間接波の強め合いが生じたときの波高値(C)を示す図である。
【
図5】ソナーA及びCが同時に送波した超音波の間接波が互いに強め合う場合X1(ケース1)及びソナーA及びCの一方が送波した超音波の間接波のみがソナーBにより受波される場合X2(ケース2)を示す図である。
【
図6】実施形態の物体検知制御ルーチンの前半を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態の物体検知制御ルーチンの後半を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる物体検知装置について詳細に説明する。
【0019】
図1に示されているように、本発明の実施形態にかかる物体検知装置100は、車両102に適用され、運転支援ECU10を含んでいる。車両102は、自動運転が可能な車両であってよく、駆動ECU20、制動ECU30及びメータECU40を備えている。ECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)を意味する。
【0020】
各ECUのマイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、読み書き可能な不揮発性メモリ(N/M)及びインターフェース(I/F)などを含んでいる。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。更に、これらのECUは、CAN(Controller Area Network)104を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。従って、特定のECUに接続されたセンサ(スイッチを含む)の検出値などは、他のECUにも送信されるようになっている。
【0021】
運転支援ECU10は、車両102の周囲の塀、ガードレール、他車両のような物体を検知し、物体の位置、即ち物体と車両との間の距離及び車両に対する物体の方向を推定する。実施形態においては、運転支援ECU10は、他のECUと共働して、車両が物体に過剰に接近したと判定したときには、そのことを示す警報を発し、必要に応じて車両102の駆動力及び制動力を制御することにより、車両が物体と衝突することを防止する。
【0022】
運転支援ECU10には、ソナーA乃至D及びソナーE乃至Hが接続されており、これらのソナーは運転支援ECU10により制御される。
図2に示されているように、ソナーA乃至Dは車両102の前端の外周部に配設されている。ソナーBはソナーAとソナーCとの間に位置し、ソナーCはソナーBとソナーDとの間に位置している。図には示されていないが、ソナーE乃至Hは車両102の後端の外周部に配設されている。ソナーFはソナーEとソナーGとの間に位置し、ソナーGはソナーFとソナーHとの間に位置している。
【0023】
更に、運転支援ECU10には、前端側スイッチ12F及び後端側スイッチ12Rが接続されている。運転支援ECU10は、前端側スイッチ12Fがオンであるときに、前端側のソナーA乃至Dを制御し、後端側スイッチ12Rがオンであるときに、後端側のソナーE乃至Hを制御する。なお、前端側スイッチ12F及び後端側スイッチ12Rは一つのスイッチに統合されてよく、その場合には、運転支援ECU10は、一つのスイッチオンであるときに、前端側のソナーA乃至D及び後端側のソナーE乃至Hを制御する。
【0024】
各ソナーは、車両102から離れる方向へ超音波を送波し、自身のソナーが送波し物体により反射された超音波、即ち直接波を受波すると共に、他のソナーが送波し物体により反射された超音波、即ち間接波を受波するよう構成されている。また、各ソナーは、受波した超音波に対応する受信電圧の波高値を示す信号、従って受波した超音波の波高値を示す信号を運転支援ECU10へ出力するよう構成されている。
【0025】
運転支援ECU10は、波高値が基準値以上であるときに対応するソナーが超音波を受波していると判定する。よって、運転支援ECU10は、ソナーが超音波を受波しているか否かを明確に判定することができる。また、運転支援ECU10は、直接波及び間接波の飛行時間に基づいて直接波及び間接波を反射した物体と車両102との間の距離及び車両に対する物体の方向を推定する。
【0026】
実施形態においては、物体の検知効率が高くなるよう、運転支援ECU10は、前端側のソナーA乃至D及び後端側のソナーE乃至Hの何れのソナー群においても、同時に二つのソナーが互に異なる周波数の超音波を送波するようにソナーを制御する。同時に二つのソナーが超音波を送波する作動モードは、デュアルモードと呼ばれ、一つのソナーのみが超音波を送波する作動モードは、シングルモードと呼ばれる。作動モードがデュアルモードである場合に、間接波を受波するソナーが何れのソナーから送波された超音波の間接波であるかを判定するための手段として、周波数変調による符号化によって互いに異なる符号に符号化されることによって超音波の周波数を異ならせること以外の、当技術分野において公知の手段が採用されてよい。
【0027】
特に、実施形態においては、
図2に示されているように、運転支援ECU10は、前端側スイッチ12Fがオンであるときには、第一及び第二の送受波モードが交互に繰り返されるように前端側のソナーA乃至Dを制御する。第一の送受波モードにおいては、ソナーA及びCがそれぞれ第一及び第二のソナーとして同時に超音波を送波すると共に直接波を受波し且つソナーB及びDが間接波を受波し、ソナーBは第三のソナーとして機能する。第二の送受波モードにおいては、ソナーB及びDがそれぞれ第一及び第二のソナーとして同時に超音波を送波すると共に直接波を受波し且つソナーA及びCが間接波を受波し、ソナーCは第三のソナーとして機能する。
【0028】
同様に、運転支援ECU10は、後端側スイッチ12Rがオンであるときには、第三及び第四の送受波モードが交互に繰り返されるように後端側のソナーE乃至Hを制御する。第三の送受波モードにおいては、ソナーE及びGがそれぞれ第一及び第二のソナーとして同時に超音波を送波すると共に直接波を受波し且つソナーF及びHが間接波を受波し、ソナーFは第三のソナーとして機能する。第四の送受波モードにおいては、ソナーF及びHがそれぞれ第一及び第二のソナーとして同時に超音波を送波すると共に直接波を受波し且つソナーE及びGが間接波を受波し、ソナーGは第三のソナーとして機能する。
【0029】
第一乃至第四の何れの送受波モードの場合にも、第一及び第二のソナーは、物体により反射された超音波の周波数に基づいて、直接波であるか間接波であるかを判別する。また、第三のソナーは、受波する間接波の周波数に基づいて、間接波が何れのソナーにより送波された超音波の間接波であるかを判別する。
【0030】
駆動ECU20には、
図1には示されていない駆動輪に駆動力を付与することにより車両102を加速させる駆動装置22が接続されている。駆動ECU20は、通常時には、駆動装置22により発生される駆動力が運転者による駆動操作に応じて変化するよう、駆動装置22を制御し、運転支援ECU10から指令信号を受信すると、指令信号に基づいて駆動装置22を制御する。
【0031】
なお、駆動装置22は、内燃機関及び自動変速機の組合せに限定されない。即ち、駆動装置22は、内燃機関及び無段変速機の組合せ、内燃機関及びモータの組合せである所謂ハイブリッドシステム、所謂プラグインハイブリッドシステム、燃料電池及びモータの組合せ、モータのように、当技術分野において公知の任意の駆動装置であってよい。
【0032】
制動ECU30には、
図1には示されていない車輪に制動力を付与することにより車両102を制動により減速させる制動装置32が接続されている。制動ECU30は、通常時には、制動装置32により発生される制動力が運転者による制動操作に応じて変化するよう、制動装置を制御し、運転支援ECU10から指令信号を受信すると、指令信号に基づいて制動装置32を制御することにより各車輪の制動力を制御する。
【0033】
メータECU40には、警報装置42が接続されている。警報装置42は、車両102が障害物に過剰に接近し衝突する虞があると判定されたときに作動され、警報の発出、即ち車両102が障害物に過剰に接近し衝突する虞がある旨の警報の発出を行う。警報装置42は、表示器、警報ランプのような視覚警報を発する警報装置、警報ブザーのような聴覚警報を発する警報装置、シートの振動のような体感警報を発する警報装置の何れであってもよく、それらの任意の組合せであってもよい。
【0034】
上述のように、後端側のソナーE乃至Hは前端側のソナーA乃至Dと同様に制御されるので、これ以降は前端側のソナーA乃至Dについてのみ説明する。
【0035】
図3(A)に示されているように、ソナーAが送波した超音波が障害物50により反射され、その反射波、即ち間接波をソナーBが受波し、その間接波についての受信電圧の波高値とTOF(飛行時間)との関係が
図4(A)の通りであるとする。また、ソナーCが送波した超音波が障害物52により反射され、その反射波、即ち間接波をソナーBが受波し、その間接波についての受信電圧の波高値とTOFとの関係が
図4(B)の通りであるとする。
【0036】
ソナーA及びCが同時に送波した超音波の間接波の波高値がピーク値になるTOFが同一であり、二つの間接波の位差相が0度又はそれに近い値であるときには、二つの間接波が互いに強め合う。そのため、ソナーBの受信電圧の波高値とTOFとの関係は
図4(C)のようになり、ソナーBは一つの間接波しか受波していないと判定される。
【0037】
一つの間接波が、ソナーAが送波した超音波の間接波であると推定された場合には、ソナーAが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した一つの間接波のTOFに基づく三角演算により、障害物50の位置を推定することができる。しかし、ソナーBはソナーCが送波した超音波の間接波を受波していないと判定されるので、障害物52の位置を推定することができない。
【0038】
これに対し、一つの間接波が、ソナーCが送波した超音波の間接波であると推定された場合には、ソナーCが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した一つの間接波のTOFに基づく三角演算により、障害物52の位置を推定することができる。しかし、ソナーBはソナーAが送波した超音波の間接波を受波していないと判定されるので、障害物50の位置を推定することができない。
【0039】
[本発明の原理]
ソナーA及びCが同時に超音波を送波し、ソナーBが一つの間接波しか受波しないケースは、下記のケース1及び2の何れかである。
【0040】
ケース1は、ソナーA及びCが同時に送波した超音波の間接波が互いに強め合い、ソナーBが一つの間接波しか受波しないケースである(
図5(X1))。
【0041】
これに対し、ケース2は、ソナーA及びCの一方が送波した超音波の間接波のみがソナーBにより受波され、障害物がソナーA及びCの他方の探知エリア外に存在するケースである。(
図5(X2))
【0042】
ソナーAが受波する直接波による探知エリアと、ソナーBが受波する間接波による探知エリアとが重複する範囲をSとする。下記式(1)の通り、範囲S内に存在する任意の点をXとし、点XとソナーAとの間の距離に対する点XとソナーBとの間の距離の比をYaとする。即ち点Xにおいて反射された超音波について、直接波の波高値に対する間接波の波高値の倍率の最大値を、比Yaの最大値Yamaxとして予め求めておき、これを所定の倍率とする。
Ya=点XとソナーBとの間の距離/点XとソナーAとの間の距離 …(1)
【0043】
ソナーAが受波した直接波の波高値及びソナーCが受波した直接波の波高値に対するソナーBが受波した間接波の波高値の比が、何れも所定の倍率Yamax以上である場合は、ケース2ではなく、ケース1の場合であると判定される。
【0044】
特に、実施形態においては、ソナーA及びCが同時に送波した超音波の直接波をそれぞれソナーA及びCが受波し、ソナーBが一つの間接波しか受波しない場合には、二つの間接波の互いに強め合いにより一つの間接波になったか否かを以下のように推定する。
【0045】
ソナーBが受波した間接波の波高値が、ソナーA及びCが受波した直接波の波高値に対し、所定の倍率Yamax以上である場合には、間接波の強め合いが生じている(ケース1)と判定する。そして、
図5(X1)に示されているように、ソナーAが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物Pの位置を推定する。更に、ソナーCが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物Qの位置を推定する。
【0046】
これに対し、ソナーBが受波した間接波の波高値が、ソナーA及びCが受波した直接波の波高値の少なくとも一方に対し、所定の倍率Yamax未満である場合には、間接波の強め合いが生じていない(ケース2)と判定する。そして、
図5(X2)に示されているように、ソナーBが受波した間接波が、ソナーA及びCの何れが送波した超音波の間接波であるかを、周波数変調により符号化された符号に基づいて判別する。そして、判別したソナーの直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物Pの位置を推定する。
【0047】
運転支援ECU10のROMは、物体検知制御プログラムの実施形態として、
図6及び
図7に示されたフローチャートに対応する障害物検知制御プログラムを記憶している。運転支援ECU10のCPUは、作動モードがデュアルモードに設定されている場合に間接波の強め合いが生じ、障害となる二つの物体の一方の位置を推定できないことがある問題を解消すべく、この障害物検知プログラムに従って障害物検知制御を実行する。
【0048】
<障害物検知制御プログラム>
次に、
図6及び
図7に示されたフローチャートを参照して実施形態における障害物検知制御プログラムについて説明する。
図6及び
図7に示されたフローチャートによる障害物検知制御は、前端側スイッチ12Fがオンであるときに運転支援ECU10のCPUにより繰り返し実行される。なお、障害物検知制御の開始時には、作動モードがデュアルモードに設定される。
【0049】
まず、ステップS10においては、CPUは、ソナーA及びCが同時に超音波を送波するよう、ソナーA及びCを制御する。
【0050】
ステップS20においては、CPUは、ソナーA及びCが直接波を受波し、ソナーB及びDが間接波を受波するよう、ソナーA乃至Dを制御する。
【0051】
ステップS30においては、CPUは、ソナーA及びCが直接波を受波しているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、即ちソナーA及びCの少なくとも一方が直接波を受波していないときには、本制御をステップS70へ進め、肯定判定をしたときには、本制御をステップS40へ進める。
【0052】
ステップS40においては、CPUは、ソナーBが受波した間接波の波高値が、ソナーA及びCが受波した直接波の波高値に対し、所定の倍率Yamax以上であるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、即ちソナーBが受波した間接波の波高値が、ソナーA及びCが受波した直接波の波高値の少なくとも一方に対し、所定の倍率Yamax未満であるときには、本制御をステップS70へ進める。これに対し、CPUは、肯定判定をしたときには、本制御をステップS50へ進める。
【0053】
ステップS50においては、CPUは、ソナーBが受波した間接波は、ソナーA及びCが受波した超音波の間接波であり、二つの間接波が強め合っていると判定する。
【0054】
ステップS60においては、CPUは、ソナーAが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物Pの位置を推定する。更に、CPUは、ソナーCが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物Qの位置を推定する。
【0055】
ステップS70においては、CPUは、ソナーBが間接波を受波しているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御をステップS100へ進め、肯定判定をしたときには、本制御をステップS80へ進める。
【0056】
ステップS80においては、CPUは、ソナーBが受波した間接波の符号に基づいて、間接波を形成した超音波を送波したソナーが、ソナーA及びソナーCの何れであるかを推定する。なお、ステップS30において、ソナーCが直接波を受波していないと判定されたときには、間接波を形成した超音波を送波したソナーは、ソナーAであると推定されてよい。
【0057】
ステップS90においては、CPUは、推定したソナーが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物の位置を推定する。例えば、CPUは、推定したソナーがソナーAであるときには、ソナーAが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物の位置を推定する。
【0058】
ステップS100においては、CPUは、ソナーDが間接波を受波しているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御をステップS210へ進め、肯定判定をしたときには、本制御をステップS110へ進める。
【0059】
ステップS110においては、CPUは、ソナーDが受波した間接波の符号に基づいて、間接波を形成した超音波を送波したソナーが、ソナーA及びソナーCの何れであるかを推定する。なお、ステップS30において、ソナーAが直接波を受波していないと判定されたときには、間接波を形成した超音波を送波したソナーは、ソナーCであると推定されてよい。
【0060】
ステップS120においては、CPUは、上述のステップS90と同様に、推定したソナーが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物の位置を推定する。
【0061】
次いで、CPUは、
図7に示されたステップS210乃至S330を実行する。
図7と
図6との比較から解るように、ステップS210乃至S320は、それぞれステップS10乃至S120と同様に実行される。よって、ステップS210乃至S320についての詳細な説明を省略する。
【0062】
なお、ステップS210、S230乃至S260において、ソナーA及びCがソナーB及びDに置き換わり、ステップS240乃至S260、S270、S290において、ソナーBがソナーCに置き換わる。更に、ステップS300及びS320において、ソナーDがソナーAに置き換わる。
【0063】
また、図には示されていないが、ソナーBが受波する直接波による探知エリアと、ソナーCが受波する間接波による探知エリアとが重複する範囲がSとされる。下記式(2)の通り、範囲S内に存在する任意の点がXとされ、点XとソナーBとの間の距離に対する点XとソナーCとの間の距離の比がYbとされる。比Ybの最大値Ybmaxが予め求められ、これが所定の倍率とされる。
Yb=点XとソナーCとの間の距離/点XとソナーBとの間の距離 …(2)
【0064】
また、CPUは、ステップS290においては、ステップS280において推定したソナーが受波した直接波のTOF及びソナーCが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物の位置を推定する。
【0065】
更に、CPUは、ステップS320においては、ステップS310において推定したソナーが受波した直接波のTOF及びソナーAが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物の位置を推定する。
【0066】
CPUは、ステップS260、S290又はS320を完了すると、ステップS330において、ステップS60、S90又はS120及びS260、S290又はS320において推定された障害物の位置の情報を衝突判定制御、警報制御などに使用されるよう出力する。なお、ステップS100及びS300において否定判定が行われたときには、ソナーA乃至Dの検知領域に障害物は存在しないと考えられるので、障害物の存否を判定することができなかった旨を示す信号が出力されてよい。
【0067】
また、CPUは、当技術分野において公知の要領にて、車両102が障害物に衝突する虞があるか否かを判定する。CPUは、車両が障害物に衝突する虞があると判定すると、駆動ECU20へ指令信号を出力することにより、駆動装置22の出力を零に低減すると共に、制動ECU30へ指令信号を出力することにより、制動装置32を作動させて車両を制動する。なお、警報装置42が作動されてもよく、駆動装置22の出力の低減及び又は車両の制動は省略されてもよい。
【0068】
<実施形態の作動>
前述のように、ステップS210乃至S320は、それぞれステップS10乃至S120と同様に実行されるので、ステップS10乃至S120についてのみ実施形態の作動を説明する。
【0069】
C1:ソナーA及びCが直接波を受波し且つ二つの間接波が強め合っている場合
ステップS30及びS40において、肯定判定が行われる。よって、ステップS60において、ソナーA及びCが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物の位置が推定される。従って、二つの障害物が存在し、強め合いにより間接波が一つになっていても、二つの障害物の位置を推定することができる。
【0070】
C2:ソナーA及びCが直接波を受波しているが、二つの間接波が強め合っていない場合
ステップS30において、肯定判定が行われるが、ステップS40において、否定判定が行われる。よって、ステップS70以降のステップが実行される。
【0071】
C3:ソナーA及びCの少なくとも一方が直接波を受波していない場合
ステップS30において、否定判定が行われる。よって、この場合にも、ステップS70以降のステップが実行される。
【0072】
上記C2又はC3の場合において、ソナーBが間接波を受波しているときには、ステップS70において、肯定判定が行われる。よって、ステップS80において、ソナーBが受波した間接波の符号に基づいて、間接波を形成した超音波を送波したソナーが、ソナーA及びソナーCの何れであるかが推定される。更に、ステップS90において、推定したソナーが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物の位置が推定される。
【0073】
上記C2又はC3の場合において、ソナーBが間接波を受波しておらず、ソナーDが間接波を受波しているときには、ステップS70において、否定判定が行われ、ステップS100において、肯定判定が行われる。よって、ステップS110において、ソナーDが受波した間接波の符号に基づいて、間接波を形成した超音波を送波したソナーが、ソナーA及びソナーCの何れであるかが推定される。更に、ステップS120において、推定したソナーが受波した直接波のTOF及びソナーBが受波した間接波のTOFに基づいて、障害物の位置が推定される。
【0074】
更に、上記C2又はC3の場合において、ソナーB及びDが間接波を受波していないときには、ステップS70及びS100において、否定判定が行われる。よって、ソナーA乃至Dの検知領域に障害物は存在しないと考えられるので、障害物の位置は推定されない。
【0075】
特に、実施形態においては、式(1)及び(2)により表される比Ya及びYbの最大値Yamax及びYbmaxが、所定の倍率とされる。よって、ソナーA乃至Dの検知領域に障害物が存在するときには、その障害物の位置を推定することができる。
【0076】
なお、二つの間接波の強め合いは、障害物が一つの場合、例えば
図3(B)に示されているように、ソナーA及びCにより送波された超音波が障害物54により反射され、ソナーBにより間接波として受波される場合にも生じることがある。この場合にも、例えばステップS30及びS40において、肯定判定が行われ、ステップS60が実行されるが、ステップS60において障害物の位置は同一の位置に推定される。
【0077】
以上においては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0078】
例えば、実施形態においては、式(1)及び(2)により表される比Ya及びYbの最大値Yamax及びYbmaxが、所定の倍率とされる。しかし、所定の倍率は最大値Yamax及びYbmax以外の値に設定されてもよい。
【0079】
また、実施形態においては、ステップS30において肯定判定が行われたときには、ステップS40が実行される。しかし、ステップS30において肯定判定が行われたときには、ソナーBが受波する間接波が一つのみであるか否かの判定が行われ、肯定判定が行われたときに、ステップS40が実行され、否定判定が行われたときには、ステップS70が実行されてもよい。
【0080】
同様に、ステップS230において肯定判定が行われたときには、ソナーCが受波する間接波が一つのみであるか否かの判定が行われ、肯定判定が行われたときに、ステップS240が実行され、否定判定が行われたときには、ステップS270が実行されてもよい。
【0081】
また、実施形態においては、前端側のソナーA乃至D及び後端側のソナーE乃至Hが受けられているが、前端側のソナーA乃至D又は後端側のソナーE乃至Hが省略されてもよい。
【0082】
また、実施形態においては、前端側スイッチ12Fがオンであるときに、前端側のソナーA乃至Dが制御され、後端側スイッチ12Rがオンであるときに、後端側のソナーE乃至Hが制御される。しかし、車両102が予め設定された走行状態にあるときに、スイッチの操作を要することなく、ソナーが制御されてもよい。
【0083】
更に、実施形態においては、各ソナーは超音波を送波するようになっているが、送波される音波は超音波よりも周波数が低い音波であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…運転支援ECU、A~H…ソナー、22…駆動装置、32…制動装置、42…警報装置、100…物体検知装置、102…車両