(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006982
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】流路チップ
(51)【国際特許分類】
B03B 5/00 20060101AFI20250109BHJP
B03B 5/62 20060101ALI20250109BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20250109BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20250109BHJP
C12M 1/26 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
B03B5/00 Z
B03B5/62
G01N35/08 A
G01N37/00 101
C12M1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108067
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】河原 克明
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
4D071
【Fターム(参考)】
2G058DA07
2G058DA09
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029HA05
4D071AA01
4D071AA90
4D071AB03
4D071AB04
4D071DA20
(57)【要約】
【課題】液に含まれる夾雑物を捕捉するとともに、捕捉体の下流側で粒子が滞留または付着することを抑制することが可能な流路チップを提供する。
【解決手段】HDFチップ1は、試料液供給流路15と、第1捕捉体31とを備える。試料液供給流路15には、粒子を含有する液が流れる。第1捕捉体31は、試料液供給流路15内に配置される。第1捕捉体31は、液に含まれる夾雑物900を捕捉する。第1捕捉体31は、翼形状の断面を有する。第1捕捉体31は、試料液供給流路15を流れる液の流通方向D1の上流側に配置される幅広部311と、流通方向D1の下流側に配置される幅狭部312とを有する。幅狭部312の流通方向D1に交差する交差方向の幅は、幅広部311の交差方向の幅よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含有する液が流れる第1流路と、
前記第1流路内に配置され、前記液に含まれる夾雑物を捕捉する捕捉体と
を備え、
前記捕捉体は、
翼形状の断面を有し、
前記第1流路を流れる前記液の流通方向の上流側に配置される幅広部と、前記流通方向の下流側に配置される幅狭部とを有し、
前記幅狭部の前記流通方向に交差する交差方向の幅は、前記幅広部の前記交差方向の幅よりも小さい、流路チップ。
【請求項2】
前記第1流路の下流側に配置され、前記液が流れる第2流路と、
前記第2流路から分岐し、前記粒子の一部が流れる複数の第3流路と
を備える、請求項1に記載の流路チップ。
【請求項3】
前記第1流路の流路幅は、前記第2流路の流路幅よりも大きい、請求項2に記載の流路チップ。
【請求項4】
前記捕捉体は、複数設けられ、
複数の前記捕捉体は、
前記第1流路の流路幅方向に互いに所定間隔をおいて配置される複数の第1列捕捉体を有する第1列と、
前記第1列の下流側に隣接して配置され、前記流路幅方向に互いに所定間隔をおいて配置される複数の第2列捕捉体を有する第2列と
を含み、
前記第2列捕捉体は、前記第1列捕捉体の前記幅広部の頂部と前記第1列捕捉体の前記幅狭部の頂部とを通過する直線に重ならない位置に配置される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流路チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液から特定の細胞を分離する流路チップが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、主流路と、主流路から分岐する複数の分岐流路とを含むHDF部を備えた流路チップが記載されている。流路チップは、主流路の入口に連結する2つの入口流路をさらに備える。一方の入口流路には、サンプル液として血液が流入される。他方の入口流路には、バッファ液が流入される。また、2つの入口流路の各々には、流路チップの高さ方向に延在する複数のピラーが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような流路チップでは、入口流路に複数のピラーが設けられているため、サンプル液またはバッファ液に含まれる夾雑物を捕捉することができる。
【0005】
しかしながら、本願発明者が鋭意検討した結果、特許文献1のような流路チップでは、血液に含まれる粒子(例えば、がん細胞)の一部は、複数のピラーを通過した後、ピラーの下流側で滞留または付着する場合があることが判明した。このように、ピラーの下流側で粒子が滞留または付着した場合、HDF部に到達する粒子(例えば、がん細胞)の数が減少してしまう。また、ピラーの下流側で粒子が滞留または付着した場合、ピラーの下流側で複数の粒子が集まって粒子の塊となった後、粒子の塊が下流側に流れてHDF部の主流路および/または副流路を詰まらせることがある。特に、粒子が細胞である場合、細胞同士が次々と付着して大きな塊になり、流路を詰まらせやすい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、液に含まれる夾雑物を捕捉するとともに、捕捉体の下流側で粒子が滞留または付着することを抑制することが可能な流路チップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面による流路チップは、第1流路と、捕捉体とを備える。前記第1流路には、粒子を含有する液が流れる。前記捕捉体は、前記第1流路内に配置される。前記捕捉体は、前記液に含まれる夾雑物を捕捉する。前記捕捉体は、翼形状の断面を有する。前記捕捉体は、前記第1流路を流れる前記液の流通方向の上流側に配置される幅広部と、前記流通方向の下流側に配置される幅狭部とを有する。前記幅狭部の前記流通方向に交差する交差方向の幅は、前記幅広部の前記交差方向の幅よりも小さい。
【0008】
本発明の一態様において、第2流路と、複数の第3流路とを備えてもよい。前記第2流路は、前記第1流路の下流側に配置され、前記液が流れてもよい。前記複数の副流路は、前記第2流路から分岐し、前記粒子の一部が流れてもよい。
【0009】
本発明の一態様において、前記第1流路の流路幅は、前記第2流路の流路幅よりも大きくてもよい。
【0010】
本発明の一態様において、前記捕捉体は、複数設けられてもよい。複数の前記捕捉体は、第1列と、第2列とを含んでもよい。前記第1列は、前記第1流路の流路幅方向に互いに所定間隔をおいて配置される複数の第1列捕捉体を有してもよい。前記第2列は、前記第1列の下流側に隣接して配置されてもよい。前記第2列は、前記流路幅方向に互いに所定間隔をおいて配置される複数の第2列捕捉体を有してもよい。前記第2列捕捉体は、前記第1列捕捉体の前記幅広部の頂部と前記第1列捕捉体の前記幅狭部の頂部とを通過する直線に重ならない位置に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液に含まれる夾雑物を捕捉するとともに、捕捉体の下流側で粒子が滞留または付着することを抑制することが可能な流路チップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態によるHDFチップを備える分離装置の構造を模式的に示す平面図である。
【
図2】第1実施形態のHDFチップの第1捕捉体周辺の構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】第1実施形態のHDFチップの第1捕捉体の構造を模式的に示す図である。
【
図4】HDFチップの上流側合流部周辺の構造を模式的に示す平面図である。
【
図5】HDFの動作原理を説明するための模式図である。
【
図6】第1実施形態の変形例によるHDFチップの構造を模式的に示す平面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態によるHDFチップを備える分離装置の構造を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0014】
(第1実施形態)
図1~
図5を参照して、本発明の第1実施形態によるHDFチップ1を備える分離装置100を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるHDFチップ1を備える分離装置100の構造を模式的に示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の分離装置100は、HDF(Hydrodynamic filtration)チップ1を備える。HDFチップ1は、流体力学的フィルタとしての機能を有する。例えば、HDFチップ1は、粒子の分離および/または濃縮を目的としたマイクロ流路チップである。本実施形態では、HDFチップ1は、例えば、病理診断に用いることができる。また、例えば、HDFチップ1は、透明基板等によって構成される。なお、HDFチップ1は、本発明の「流路チップ」の一例である。
【0016】
HDFチップ1は、試料液供給流路15と、第1捕捉体31とを少なくとも備える。本実施形態では、HDFチップ1は、主流路11と、複数の副流路13と、試料液供給流路15と、第1捕捉体31と、輸送液供給流路17と、第2捕捉体33と、上流側合流部19と、収集部21と、第1出口23と、第2出口25とを備える。なお、試料液供給流路15は、本発明の「第1流路」の一例である。また、第1捕捉体31は、本発明の「捕捉体」の一例である。また、主流路11は、本発明の「第2流路」の一例である。また、副流路13は、本発明の「第3流路」の一例である。
【0017】
主流路11、複数の副流路13、試料液供給流路15、第1捕捉体31、輸送液供給流路17、第2捕捉体33、上流側合流部19、収集部21、第1出口23および第2出口25は、例えば、透明基板上に配置された樹脂層等によって形成される。具体的には、主流路11、副流路13、試料液供給流路15、第1捕捉体31、輸送液供給流路17、第2捕捉体33、上流側合流部19、収集部21、第1出口23および第2出口25を構成する面の全部または一部は、例えば、金属、絶縁体、半導体、PDMS(ジメチルポリシロキサン)、ガラスおよび/またはフォトレジストによって構成されている。
【0018】
試料液供給流路15には、試料液510が流れる。試料液供給流路15は、試料液510を主流路11に供給するための流路である。なお、本実施形態では、試料液供給流路15は、主流路11に対して傾斜しているが、本発明はこれに限らない。例えば、試料液供給流路15は、主流路11に対して平行であってもよいし、主流路11に対して垂直であってもよい。
【0019】
試料液510は、粒子を含有した液である。試料液510は、特に限定されるものではないが、例えば、血液である。粒子の粒径は、例えば、数十μm以下である。本実施形態では、粒子の粒径は、例えば、1μm以上20μm以下である。
【0020】
粒子の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、球状であることが好ましい。ただし、粒子の形状は、球状以外の形状であってもよい。また、本実施形態において、粒子とは、1つの個体からなる粒子であってもよいし、複数の微粒子が集まって1つの塊となった微粒子群であってもよい。また、粒子は、点対称または線対称に形成されていてもよいし、非点対称または非線対称に形成されていてもよい。また、粒子は、表面に凹凸が形成されていなくてもよいし、表面に凹凸が形成されていてもよい。
【0021】
試料液供給流路15は、試料液入口151と、上流側流路152と、下流側流路153とを有する。試料液入口151は、試料液供給流路15の上流端に配置される。試料液入口151には、後述するように、試料液510が供給される。
【0022】
上流側流路152は、試料液入口151に接続される。上流側流路152には、試料液入口151に供給された試料液510が流入する。上流側流路152は、試料液510を上流側(試料液入口151側)から下流側(下流側流路153側)に向かって流通させる。
【0023】
下流側流路153は、上流側流路152に接続される。下流側流路153は、試料液510を上流側(上流側流路152側)から下流側(主流路11側)に向かって流通させる。
【0024】
試料液供給流路15のうちの第1捕捉体31が配置される部分(ここでは、上流側流路152)の流路幅は、主流路11の流路幅よりも大きい。また、試料液供給流路15のうちの第1捕捉体31が配置される部分(ここでは、上流側流路152)の流路幅は、下流側流路153の流路幅よりも大きい。
【0025】
図2は、第1実施形態のHDFチップ1の第1捕捉体31周辺の構造を模式的に示す平面図である。
図2に示すように、第1捕捉体31は、試料液供給流路15内に配置される。具体的には、第1捕捉体31は、上流側流路152内に配置される。第1捕捉体31は、液(ここでは、試料液510)に含まれる夾雑物900を捕捉する。つまり、第1捕捉体31は、フィルタとしての機能を有する。夾雑物900は、例えば、ゴミ、埃または塵である。
【0026】
第1捕捉体31は、翼形状の断面を有する。具体的には、第1捕捉体31は、例えば、柱状または棒状に形成されている。そして、第1捕捉体31の延びる方向と直交する方向に第1捕捉体31を切断した断面は、翼形状を有する。言い換えると、延びる方向と直交する方向に沿った第1捕捉体31の断面は、翼形状を有する。
【0027】
第1捕捉体31は、上流側流路152内を横断するように配置される。本実施形態では、第1捕捉体31は、上流側流路152の下面から上面まで延びる。つまり、第1捕捉体31は、上流側流路152内で、HDFチップ1の厚み方向(
図2の紙面に対して垂直方向)に延びる。なお、第1捕捉体31と上流側流路152の下面との間、または、第1捕捉体31と上流側流路152の上面との間に、隙間が形成されていてもよい。なお、第1捕捉体31は、上流側流路152内において、液(ここでは、試料液510)の流通方向D1に対して交差する流路幅方向に延びてもよい。
【0028】
図3は、第1実施形態のHDFチップ1の第1捕捉体31の構造を模式的に示す図である。なお、
図3では、液の流れを破線矢印で描いている。
図3に示すように、第1捕捉体31は、幅広部311と、幅狭部312とを有する。幅広部311は、試料液供給流路15を流れる液(ここでは、試料液510)の流通方向D1の上流側に配置される。つまり、幅広部311は、第1捕捉体31のうちの上流側の部分に配置される。幅狭部312は、流通方向D1の下流側に配置される。つまり、幅狭部312は、幅広部311に対して下流側に配置される。また、幅狭部312は、第1捕捉体31のうちの下流側の部分に配置される。幅狭部312の流通方向D1に交差する交差方向の幅は、幅広部311の流通方向D1に交差する方向の幅よりも小さい。
【0029】
本実施形態では、上記のように、翼形状の断面を有する第1捕捉体31を試料液供給流路15内に配置し、第1捕捉体31の幅広部311を上流側に配置し、第1捕捉体31の幅狭部312を下流側に配置する。従って、試料液供給流路15内に液を流した際に、第1捕捉体31の下流側で流れの剥離(flow separation)が生じることを抑制できる。このため、試料液510に含有される粒子が第1捕捉体31の下流側で滞留または付着することを抑制できる。
【0030】
このように、試料液510に含有される粒子が第1捕捉体31の下流側で滞留または付着することを抑制できるので、主流路11に到達する粒子(ここでは、細胞)の数が減少することを抑制できる。また、第1捕捉体31の下流側で複数の粒子が集まって粒子の塊になることを抑制できる。このため、粒子の塊が下流側に流れて主流路11および/または副流路13を詰まらせることを抑制できる。特に、主流路11に到達させたい粒子(以下、目的の粒子と記載することがある)が細胞である場合、細胞同士が次々と付着して大きな塊になるおそれがある。よって、目的の粒子が細胞である場合に、粒子が第1捕捉体31の下流側で滞留または付着することを抑制することは、特に有効である。
【0031】
上述したように、第1捕捉体31は、翼形状の断面を有する。翼形状の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、NACA4桁系、NACA5桁系、NACA6系、ジューコフスキー等を用いることができる。翼形状の種類および/またはサイズは、例えば、液の流速、液の粘性、粒子の密度、粒子のサイズ、流路幅、または、流路高さ等に応じて決められてもよい。なお、第1捕捉体31は、流線形の断面を有する。第1捕捉体31の断面全体が流線形であることが好ましいが、第1捕捉体31の断面の一部が流線形であってもよい。
【0032】
また、本実施形態では、第1捕捉体31は、第1捕捉体31の幅方向(長手方向に交差する方向)に対称に形成されている。本実施形態では、第1捕捉体31は、流路幅方向に対称に形成されている。ただし、第1捕捉体31は、第1捕捉体31の幅方向、流路幅方向または所定の方向に対称に形成されていなくてもよい。つまり、第1捕捉体31は、非対称形状であってもよい。
【0033】
また、本実施形態では、第1捕捉体31は、流通方向D1と略平行に配置される。具体的には、第1捕捉体31の上流側から下流側に向かう方向に延びる中心線は、流通方向D1と略平行に配置される。なお、第1捕捉体31の中心線は、流通方向D1に対して傾斜して配置されてもよい。
【0034】
図2に示すように、本実施形態では、第1捕捉体31は、複数設けられている。つまり、本実施形態では、複数の第1捕捉体31によってフィルタが構成されている。複数の第1捕捉体31は、特に限定されるものではないが、例えば、千鳥状に配置されている。具体的には、複数の第1捕捉体31は、複数の列状に形成されている。複数の第1捕捉体31は、第1列321と、第2列322とを含む。本実施形態では、複数の第1捕捉体31は、第1列321と、第2列322と、第3列323とを含む。第1列321は、試料液供給流路15の流路幅方向に互いに所定間隔をおいて配置される複数の第1列捕捉体3211を有する。第2列322は、流路幅方向に互いに所定間隔をおいて配置される複数の第2列捕捉体3221を有する。第3列323は、流路幅方向に互いに所定間隔をおいて配置される複数の第3列捕捉体3231を有する。従って、複数の第1捕捉体31は、複数の第1列捕捉体3211と、複数の第2列捕捉体3221と、複数の第3列捕捉体3231とを有する。なお、第1列捕捉体3211同士の間隔(所定間隔)と、第2列捕捉体3221同士の間隔(所定間隔)と、第3列捕捉体3231同士の間隔(所定間隔)とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、第1列捕捉体3211同士の間隔(所定間隔)と、第2列捕捉体3221同士の間隔(所定間隔)と、第3列捕捉体3231同士の間隔(所定間隔)とは、同じである。
【0035】
第2列322は、第1列321の下流側に隣接して配置される。第3列323は、第2列322の下流側に隣接して配置される。
【0036】
また、本実施形態では、第2列捕捉体3221は、第1列捕捉体3211の幅広部311の頂部3111(
図3参照)と第1列捕捉体3211の幅狭部312の頂部3121(
図3参照)とを通過する直線L1に重ならない位置に配置される。頂部3111は、幅広部311の上流端である。頂部3121は、幅狭部312の下流端である。また、本実施形態では、流通方向D1から見て、第1列捕捉体3211と第2列捕捉体3221とは、重ならない位置に配置される。なお、本実施形態では、直線L1は、第1捕捉体31の中心線である。
【0037】
また、本実施形態では、第3列捕捉体3231は、第2列捕捉体3221の幅広部311の頂部3111と第2列捕捉体3221の幅狭部312の頂部3121とを通過する直線L2に重ならない位置に配置される。また、本実施形態では、第2列捕捉体3221と第3列捕捉体3231とは、流通方向D1から見て重ならない位置に配置される。
【0038】
隣接する第1捕捉体31同士の間の距離は、液に含有される粒子(ここでは、細胞)よりも大きいことが好ましいが、液に含有される粒子よりも小さくてもよい。本実施形態では、隣接する第1捕捉体31同士の間の距離は、液に含有される粒子のうち最も大きい粒子(例えば、がん細胞)の粒径の1.1倍以上5倍以下であり、好ましくは、1.5倍以上3倍以下である。または、本実施形態では、隣接する第1捕捉体31同士の間の距離は、液に含有される粒子のうち最も大きい粒子(例えば、がん細胞)の粒径に比べて、1μm以上100μm以下大きく、好ましくは、5μm以上50μm以下大きい。なお、隣接する第1捕捉体31同士の間の距離は、夾雑物900に比べて小さいことが好ましいが、夾雑物900に比べて大きくてもよい。
【0039】
図1に示すように、輸送液供給流路17には、輸送液520が流れる。輸送液供給流路17は、輸送液520を主流路11に供給するための流路である。輸送液520は、例えば、所定の粒径よりも大きい粒子を輸送するための液である。本実施形態では、輸送液520は、副流路13に流れ込まない粒子を、主流路11の下流側に輸送するための液である。なお、本実施形態では、輸送液供給流路17は、主流路11に対して傾斜しているが、本発明はこれに限らない。例えば、輸送液供給流路17は、主流路11に対して平行であってもよいし、主流路11に対して垂直であってもよい。
【0040】
輸送液520は、例えば、粒子を含有しない液である。輸送液520は、特に限定されるものではないが、例えば、液状の培地である。
【0041】
輸送液供給流路17は、輸送液入口171と、上流側流路172と、下流側流路173とを有する。輸送液入口171は、輸送液供給流路17の上流端に配置される。輸送液入口171には、後述するように、輸送液520が供給される。
【0042】
上流側流路172は、輸送液入口171に接続される。上流側流路172には、輸送液入口171に供給された輸送液520が流入する。上流側流路172は、輸送液520を上流側(輸送液入口171側)から下流側(下流側流路173側)に向かって流通させる。
【0043】
下流側流路173は、上流側流路172に接続される。下流側流路173は、輸送液520を上流側(上流側流路172側)から下流側(主流路11側)に向かって流通させる。
【0044】
上流側流路172の流路幅は、主流路11の流路幅よりも大きい。また、上流側流路172の流路幅は、下流側流路173の流路幅よりも大きい。
【0045】
第2捕捉体33は、輸送液供給流路17内に配置される。具体的には、第2捕捉体33は、上流側流路172内に配置される。第2捕捉体33は、液(ここでは、輸送液520)に含まれる夾雑物900を捕捉する。つまり、第2捕捉体33は、フィルタとしての機能を有する。
【0046】
第2捕捉体33は、円形状または四角形状の断面を有する。具体的には、第2捕捉体33は、例えば、円柱状または四角柱状に形成されている。第2捕捉体33は、上流側流路172の下面から上面まで延びる。
【0047】
なお、第2捕捉体33は、第1捕捉体31とは異なり、翼形状の断面を有しないため、第2捕捉体33の下流側で流れの剥離(flow separation)が生じる。しかしながら、輸送液520には粒子が含有されていないため、第2捕捉体33の下流側で粒子が滞留または付着することはない。
【0048】
また、第2捕捉体33は、複数設けられている。つまり、本実施形態では、複数の第2捕捉体33によってフィルタが構成されている。隣接する第2捕捉体33同士の間の距離は、例えば、隣接する第1捕捉体31同士の間の距離と同じ、または、隣接する第1捕捉体31同士の間の距離よりも小さい。本実施形態では、隣接する第2捕捉体33同士の間の距離は、隣接する第1捕捉体31同士の間の距離よりも小さい。
【0049】
試料液供給流路15と輸送液供給流路17とは、上流側合流部19で合流する。上流側合流部19は、主流路11の上流端に配置される。従って、試料液供給流路15を通過した試料液510と輸送液供給流路17を通過した輸送液520とは、上流側合流部19で合流し、主流路11を流れる。
【0050】
主流路11は、例えば、所定方向に向かって一直線状に延びる。主流路11には、液が流れる。本実施形態では、主流路11には、試料液510および輸送液520が流れる。
【0051】
複数の副流路13は、主流路11から分岐する。具体的には、複数の副流路13は、例えば、主流路11の延びる方向に沿って略等ピッチで配置される。複数の副流路13は、主流路11に対して交差する方向に延びる。本実施形態では、複数の副流路13は、主流路11に対して直交する方向に延びる。本実施形態では、複数の副流路13は、主流路11に対して垂直に接続される。ただし、複数の副流路13は、主流路11に対して垂直に接続されることが好ましいが、主流路11に対して垂直でない角度で接続されてもよい。
【0052】
主流路11および複数の副流路13によって、HDF2が構成される。具体的には、複数の副流路13には、主流路11を流れる液の一部が流れ込む。また、複数の副流路13には、主流路11を流れる液に含有される粒子の一部が流れ込む。粒子が複数の副流路13に流れ込むか否かは、例えば、粒径に起因する。ただし、副流路13の流路幅に比べて粒径の小さい粒子であっても、副流路13に流れ込むとは限らない。粒径の小さな粒子ほど副流路13に流れ込みやすく、粒径の大きな粒子ほど副流路13に流れ込みにくい。例えば、試料液510として血液を用いる場合、血液の液体成分である血漿(プラズマともいう)と赤血球および血小板とを副流路13に流し、血液に含有されるがん細胞および白血球を副流路13に流さないようにすることが可能である。つまり、例えば、がん細胞および白血球等の粒径の大きな粒子を血液から分離することが可能である。なお、HDF2の動作原理については、後述する。
【0053】
図4は、HDFチップ1の上流側合流部19周辺の構造を模式的に示す平面図である。
図4に示すように、試料液供給流路15は、試料液510が主流路11のうち副流路13側の部分を流れるように配置される。一方、輸送液供給流路17は、輸送液520が主流路11のうち副流路13とは反対側の部分を流れるように配置される。本実施形態では、試料液供給流路15は、主流路11の内壁のうち副流路13側の内壁111に繋がる。一方、輸送液供給流路17は、主流路11の内壁のうち副流路13とは反対側の内壁112に繋がる。
【0054】
図1に示すように、収集部21は、複数の副流路13を通過した液を収集する。収集部21は、複数(ここでは、全て)の副流路13に繋がっている。また、収集部21は、第1出口23に繋がる。収集部21は、複数の副流路13を通過した液を収集し、第1出口23に案内する。
【0055】
複数の副流路13を通過した液は、収集部21および第1出口23を介して、図示しない第1回収部に回収される。第1回収部は、例えば、回収容器を含む。
【0056】
第2出口25は、主流路11の下流端に繋がっている。従って、主流路11を通過した液は、第2出口25に流れる。第2出口25には、少なくとも、試料液510に含有される所定の粒径よりも大きい粒子が流れる。本実施形態では、所定の粒径よりも大きい粒子を含有する輸送液520が流れる。主流路11を通過した液(ここでは、輸送液520)は、第2出口25を介して、図示しない第2回収部に回収される。第2回収部は、例えば、回収容器を含む。
【0057】
引き続き
図1を参照して、分離装置100およびHDFチップ1についてさらに説明する。分離装置100は、試料液送液部35と、輸送液送液部36とをさらに備える。分離装置100は、試料液送液部35と、輸送液送液部36とを駆動させる制御装置(図示せず)を備えてもよい。試料液送液部35および輸送液送液部36は、特に限定されるものではないが、例えば、マイクロポンプである。マイクロポンプは、機械式ポンプであってもよいし、非機械式ポンプであってもよい。
【0058】
制御装置は、例えば、制御部および記憶部を含んでもよい。制御部は、例えば、プロセッサを有する。制御部は、例えば、中央処理演算機(Central Processing Unit:CPU)、または、汎用演算機を有してもよい。記憶部は、例えば、主記憶装置と、補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリおよび/またはハードディスクドライブである。記憶部はリムーバブルメディアを含んでいてもよい。
【0059】
試料液送液部35は、試料液供給流路15に繋がっており、試料液供給流路15に試料液510を流す。具体的には、試料液送液部35は、試料液供給流路15の試料液入口151に繋がっている。試料液送液部35が試料液入口151に試料液510を供給することによって、試料液510は、試料液供給流路15および主流路11を流れる。
【0060】
輸送液送液部36は、輸送液供給流路17に繋がっており、輸送液供給流路17に輸送液520を流す。具体的には、輸送液送液部36は、輸送液供給流路17の輸送液入口171に繋がっている。輸送液送液部36が輸送液入口171に輸送液520を供給することによって、輸送液520は、輸送液供給流路17および主流路11を流れる。
【0061】
本実施形態では、試料液送液部35は、試料液510が層流になるように試料液510を供給する。輸送液送液部36は、輸送液520が層流になるように輸送液520を供給する。従って、本実施形態では、HDFチップ1において、各液は層流になる。
【0062】
次に、
図5を参照して、HDF2の動作原理について説明する。
図5は、HDF2の動作原理を説明するための模式図である。
図5に示すように、試料液送液部35が試料液510を供給し、輸送液送液部36が輸送液520を供給すると、試料液510および輸送液520は、主流路11を流れる。試料液510は、副流路13側の内壁111に沿って流れ、輸送液520は、副流路13とは反対側の内壁112に沿って流れる。このとき、各種粒子の中心は、主流路11の内壁111から粒子の半径以上離隔した位置を通過する。
【0063】
ここで、主流路11の流路幅方向の位置に応じて、流速が変化する。具体的には、主流路11のうち内壁111および内壁112の近傍では、流速が小さくなる。一方、主流路11のうち内壁111および内壁112から遠い位置(主流路11の流路幅方向の中央)では、流速が最も大きくなる。
【0064】
このため、粒径が小さく内壁111の近傍を通過する粒子は、流速が小さいので、副流路13に流れ込みやすい。その一方、粒径が大きく内壁111から遠い位置を通過する粒子は、流速が大きいので、副流路13に流れ込まず、主流路11を直進する。つまり、試料液510および輸送液520の供給量が一定である等の所定条件下において、所定サイズよりも大きい粒子は、主流路11から排出されない一方、所定サイズ以下の粒子は、主流路11から排出される。主流路11から副流路13への排出は、複数の副流路13によって繰り返されるため、所定サイズ以下の粒子は、主流路11の下流端に到達しない。なお、液体成分である血漿も、主流路11の下流端に到達しない。従って、HDFチップ1によって、例えば、血液からがん細胞および白血球等の粒径の大きな粒子を分離することが可能である。
【0065】
以上、
図1~
図5を参照して説明したように、本実施形態では、翼形状の断面を有する第1捕捉体31を試料液供給流路15内に配置する。また、第1捕捉体31の幅広部311を上流側に配置し、第1捕捉体31の幅狭部312を下流側に配置する。従って、試料液供給流路15内に液を流した際に、第1捕捉体31の下流側で流れの剥離(flow separation)が生じることを抑制できる。このため、試料液510に含有される粒子が第1捕捉体31の下流側で滞留または付着することを抑制できる。よって、粘性の高い粒子(例えば、細胞)に対しても、HDFチップ1を用いることができるので、HDFチップ1の汎用性を向上させることができる。
【0066】
また、上記のように、HDFチップ1は、試料液供給流路15の下流側に配置される主流路11と、主流路11から分岐する複数の副流路13とを備える。つまり、HDFチップ1は、第1捕捉体31が配置された試料液供給流路15の下流側にHDF2(主流路11および複数の副流路13)を備える。従って、第1捕捉体31の下流側で粒子が滞留または付着することを抑制することによって、主流路11に到達する粒子(ここでは、細胞)の数が減少することを抑制できる。また、第1捕捉体31の下流側で粒子が滞留または付着することを抑制することによって、第1捕捉体31の下流側で複数の粒子が集まって粒子の塊になることを抑制できる。このため、粒子の塊が下流側に流れて主流路11および/または副流路13を詰まらせることを抑制できる。よって、所定サイズ以下の粒子および/または試料液510の液体成分が主流路11の下流端に到達することを抑制できる。言い換えると、HDFチップ1の耐久性および/または頑健性を向上させることができる。特に、粒子が細胞である場合、細胞が次々と付着して大きな塊になるおそれがある。よって、粒子が細胞であり、かつ、試料液供給流路15の下流側にHDF2が配置される構成において、粒子が第1捕捉体31の下流側で滞留または付着することを抑制することは、特に有効である。
【0067】
また、上記のように、試料液供給流路15の流路幅は、主流路11の流路幅よりも大きい。具体的には、試料液供給流路15のうちの第1捕捉体31が配置される部分(ここでは、上流側流路152)の流路幅は、主流路11の流路幅よりも大きい。従って、例えば、第1捕捉体31を主流路11に配置する場合に比べて、流路幅のより大きい部分で夾雑物900を捕捉できる。よって、夾雑物900により流路が詰まることを抑制できる。
【0068】
また、上記のように、第2列捕捉体3221は、第1列捕捉体3211の幅広部311の頂部3111と第1列捕捉体3211の幅狭部312の頂部3121とを通過する直線L1に重ならない位置に配置される。従って、夾雑物900が隣接する第1列捕捉体3211同士の間を通過した場合であっても、第2列322の第2列捕捉体3221によって夾雑物900を容易に捕捉できる。
【0069】
(変形例)
次に、
図6を参照して、第1実施形態の変形例によるHDFチップ1を説明する。
図6は、第1実施形態の変形例によるHDFチップ1の構造を模式的に示す平面図である。
【0070】
図6に示すように、第1実施形態の変形例によるHDFチップ1では、複数の第1捕捉体31の一部は、試料液供給流路15の内壁と一体で形成されている。具体的には、流路幅方向において外側に配置される第1捕捉体31は、試料液供給流路15の内壁と一体で形成されている。つまり、流路幅方向において外側に配置される第1捕捉体31と試料液供給流路15とは、単一の部材である。また、流路幅方向において外側に配置される第1捕捉体31の外面は、試料液供給流路15の内面に連続して形成されている。本変形例では、第1列321および第3列323の各々の、流路幅方向の両端に配置される第1捕捉体31は、試料液供給流路15の内壁と一体で形成されている。
【0071】
第1実施形態の変形例のその他の構成および効果は、上記第1実施形態の構成および効果と同様である。
【0072】
(第2実施形態)
次に、
図7を参照して、本発明の第2実施形態によるHDFチップ301を備える分離装置300を説明する。
図7は、本発明の第2実施形態によるHDFチップ301を備える分離装置300の構造を模式的に示す平面図である。
【0073】
図7に示すように、本発明の第2実施形態による分離装置300では、HDFチップ301は、主流路11と、輸送液供給流路26と、分離流路27と、第1回収路51と、第2回収路53とを備える。また、HDFチップ301は、HDFチップ1と同様、複数の副流路13と、試料液供給流路15と、第1捕捉体31と、輸送液供給流路17と、第2捕捉体33と、上流側合流部19と、収集部21と、第1出口23とを備える。なお、HDFチップ301は、本発明の「流路チップ」の一例である。
【0074】
輸送液供給流路26には、輸送液530が流れる。輸送液供給流路26は、輸送液530を分離流路27に供給するための流路である。輸送液530は、例えば、後述する誘電泳動により分離された粒子を第1回収路51に輸送するための液である。輸送液530は、例えば、粒子を含有しない液である。なお、輸送液530は、特に限定されるものではないが、例えば、輸送液520と同じ成分である。
【0075】
分離流路27は、主流路11の下流端、および、輸送液供給流路26の下流端に接続される。例えば、分離流路27の流路幅は、主流路11の流路幅、および、輸送液供給流路26の流路幅よりも大きい。このように、分離流路27の流路幅を、主流路11の流路幅よりも大きくすることによって、分離流路27を流れる液の流速を低くできる。よって、後述する誘電泳動による粒子の分離を容易に行うことができる。
【0076】
第1回収路51および第2回収路53は、分離流路27の下流端に接続される。つまり、分離流路27は、第1回収路51および第2回収路53に分岐される。
【0077】
HDFチップ301では、第2出口25は、第2出口251および第2出口252を含む。第2出口251は、第1回収路51の下流端に繋がっており、第2出口252は、第2回収路53の下流端に繋がっている。
【0078】
ここで、HDFチップ301は、誘電泳動(DEP:Dielectrophoresis)によって、分離流路27を流れる粒子をさらに分離することが可能である。具体的には、HDFチップ301は、分離流路27に対して重なるように配置される電極55および電極57をさらに備える。電極55および電極57は、互いに対向する櫛歯状の電極である。電極55は、例えば、交流電源61に接続される。電極57は、例えば、接地される。第2実施形態では、分離装置300は、交流電源61を備える。なお、分離装置300は、交流電源61を備えなくてもよい。
【0079】
電極55および電極57の歯部は、分離流路27に対して例えば10°以上60°以下傾斜する。交流電源61により電極55と電極57との間に交流電圧を印加することによって、誘電泳動を生じさせることが可能である。そして、印加する交流電圧の周波数を調整することによって、分離流路27を通過する複数種類の粒子から所望の粒子を分離回収することが可能である。
【0080】
具体的には、分離流路27を通過する複数種類の粒子が誘電体粒子を含む場合、DEPによって複数種類の粒子から特定の誘電体粒子を分離することが可能である。例えば、がん細胞および白血球は、誘電体粒子である。分離流路27を通過する複数種類の粒子が、がん細胞と、がん細胞以外の所定サイズよりも大きい粒子(白血球等)とを含む場合、例えば、がん細胞に誘電泳動力が作用しやすくなるように、特定の周波数の交流電圧を電極55と電極57との間に印加する。これにより、がん細胞を電極55および電極57に沿って移動させることが可能であるため、がん細胞のみを誘電泳動により第2出口251に誘導することが可能である。よって、がん細胞と、その他の粒子(白血球等)とを分離することが可能である。
【0081】
第2実施形態による分離装置300、HDFチップ301、主流路11、複数の副流路13、試料液供給流路15、第1捕捉体31と、輸送液供給流路17、第2捕捉体33と、上流側合流部19、収集部21、第1出口23のその他の構造は、上記第1実施形態の分離装置100、HDFチップ1、主流路11、複数の副流路13、試料液供給流路15、第1捕捉体31と、輸送液供給流路17、第2捕捉体33と、上流側合流部19、収集部21、第1出口23と同様である。また、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様である。
【0082】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、上記の実施形態では、試料液510として血液を用い、輸送液520として液状の培地を用いる例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、試料液510として血液以外の液を用い、輸送液520として培地以外の液を用いてもよい。
【0084】
また、上記第1施形態では、HDFチップ1がHDF2を備える例について説明した。また、上記第2実施形態では、HDFチップ1がHDF2と、誘電泳動によって粒子を分離する分離流路27、電極55および電極57とを備える例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば、流路チップは、HDF2と、誘電泳動によって粒子を分離する分離流路27、電極55および電極57との両方を備えなくてもよい。また、流路チップは、HDF2を備えず、誘電泳動によって粒子を分離する分離流路27、電極55および電極57を備えてもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、全ての第1捕捉体31が同一の断面形状および同一の大きさを有する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、複数の第1捕捉体31のうちの一部の第1捕捉体31が、同一の断面形状および同一の大きさを有してもよい。また、例えば、複数の第1捕捉体31は、互いに異なる幅、長さまたは形状を有してもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、複数の第1捕捉体31が規則的に配置される例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、複数の第1捕捉体31は、不規則に配置されてもよい。
【0087】
また、上記の実施形態では、例えば、試料液供給流路15内に、複数の第1捕捉体31によって構成されるフィルタを1つ設ける例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、1つの流路内に、複数の第1捕捉体31によって構成されるフィルタを直列に複数設けてもよい。また、例えば、試料液供給流路15は分岐していてもよく、分岐した流路の各々に1つ以上のフィルタを設けてもよい。
【0088】
また、上記の実施形態では、試料液供給流路15が上流側流路152および下流側流路153を有する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、試料液供給流路15は、流路幅が一定の1つの流路によって構成されていてもよい。この場合、試料液供給流路15の流路幅は、主流路11の流路幅よりも大きいことが好ましいが、主流路11の流路幅と同じであってもよい。
【0089】
また、上記第1実施形態では、目的の回収物として、第2出口25から回収される粒子(例えば、がん細胞および白血球)を例に挙げたが、本発明はこれに限らない。例えば、第1出口23から回収される粒子または液体成分を目的の回収物としてもよい。
【0090】
また、上記第2実施形態では、第2出口251から目的の粒子(例えば、がん細胞)を回収する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、第2出口252から目的の粒子を回収してもよい。
【0091】
また、上記の実施形態では、粒子を含有しない液(例えば、輸送液520)を用いる例について説明した。つまり、粒子を含有する液(例えば、試料液510)に加えて、粒子を含有しない液(例えば、輸送液520)を主流路11に流す例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば、粒子を含有する液(例えば、試料液510)のみを主流路11に流してもよい。また、例えば、粒子を含有する液(例えば、試料液510)として、粒子を含有する海水を用い、海水から粒子を分離してもよい。
【0092】
また、上記の実施形態では、副流路13が主流路11の内壁111および内壁112のうち一方の内壁(内壁111)に接続する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、副流路13は、内壁111および内壁112の両方に接続してもよい。
【0093】
また、上記の実施形態では、HDFチップ1の流路(例えば、主流路11および副流路13)には、センサー等の構造物を配置しない例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、粒子を分離することが可能であれば、HDFチップ1の流路(例えば、試料液供給流路15、主流路11、副流路13または分離流路27)内に、物理的、電気的または磁気的なセンサー等の構造物を配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、流路チップの分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1、301 :HDFチップ(流路チップ)
11 :主流路(第2流路)
13 :副流路(第3流路)
15 :試料液供給流路(第1流路)
31 :第1捕捉体(捕捉体)
311 :幅広部
312 :幅狭部
321 :第1列
322 :第2列
900 :夾雑物
3111 :頂部
3121 :頂部
3211 :第1列捕捉体
3221 :第2列捕捉体
D1 :流通方向
L1 :直線