(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006985
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 25/00 20060101AFI20250109BHJP
B23B 1/00 20060101ALI20250109BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20250109BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20250109BHJP
G05B 19/416 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B23B25/00 A
B23B1/00 N
B23Q11/00 L
B23Q11/10 A
G05B19/416 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108078
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】391029819
【氏名又は名称】株式会社オーエム製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小越 奎輔
(72)【発明者】
【氏名】植田 孝
(72)【発明者】
【氏名】西山 晃
(72)【発明者】
【氏名】樺沢 勝則
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昭博
【テーマコード(参考)】
3C011
3C045
3C269
【Fターム(参考)】
3C011EE05
3C045AA08
3C045EA04
3C269AB01
3C269BB05
3C269CC15
3C269EF02
3C269EF14
3C269EF30
(57)【要約】
【課題】加工時間の短縮化が図られ、また、切削屑に対して高い分断性能を発揮し、さらに、切削屑が起因となる不具合が可及的に低減された工作機械を提供する。
【解決手段】ワークWを載置固定する回転テーブル1と、この回転テーブル1上に載置固定されたワークWを切削加工する切削工具2と、この切削工具2の刃先近傍に向かって高圧クーラントを噴出するクーラント噴出部3とを備え、また、切削工具2の移動が数値制御プログラムに基づいて制御されるように構成され、また、切削工具2は、数値制御プログラムにより送り移動と停止とを交互に繰り返しながら移動するように構成され、さらに、クーラント噴出部3は、高圧クーラントが切削加工中の切削工具2の刃先2a近傍の切削屑に噴射されるように構成されている工作機械。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置固定する回転テーブルと、この回転テーブル上に載置固定されたワークを切削加工する切削工具と、この切削工具の刃先近傍に向かって高圧クーラントを噴出するクーラント噴出部とを備え、前記切削工具の移動が数値制御プログラムに基づいて制御されるように構成されている工作機械であって、前記切削工具は、前記数値制御プログラムにより送り移動と停止とを交互に繰り返しながら移動するように構成され、さらに、前記クーラント噴出部は、前記高圧クーラントが切削加工中の前記切削工具の刃先近傍の切削屑に噴射されるように構成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1記載の工作機械において、前記数値制御プログラムは、設定された停止時間で前記切削工具の送り速度が所定速度から徐々に減速し、一旦停止した後、前記送り速度を徐々に増速させながら前記所定速度に達するようにプログラムされていることを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項1記載の工作機械において、前記数値制御プログラムは、前記切削工具が送り速度の減速を伴わずに即時停止し、設定された停止時間分、前記切削工具の送り移動を停止させるようにプログラムされていることを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項2記載の工作機械において、前記停止時間は、前記切削工具が送り移動される送り時間に比して長い時間に設定されていることを特徴とする工作機械。
【請求項5】
請求項3記載の工作機械において、前記停止時間は、前記切削工具が送り移動される送り時間に比して長い時間に設定されていることを特徴とする工作機械。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載の工作機械において、前記高圧クーラントの噴出圧力は、1MPa~10MPaに設定されていることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、ワークに溝入れ加工を行う場合、切削により生成される切削屑が長く繋がった状態で生成され、この長く繋がった状態の切削屑が切削工具等に絡みつき加工不良や装置の故障の原因となっている。
【0003】
従来、このような切削屑の絡みつきの問題を解決するため、特許文献1に示すような切削工具を送り方向に振動させながら加工する振動切削機能を有する工作機械や、特許文献2に示すような切削工具がワークを所定量切り込んだら一旦切削工具を戻り移動させ、この戻り移動により切削屑を分断し、切削屑の連続生成を阻止しながら加工を行う揺動切削機能を有する工作機械が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-285701号公報
【特許文献2】特開2017-182336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に示すような揺動切削機能を有する工作機械(以下、「従来例」という。)は、加工時間が長くなったり、切削屑が切削工具とワークの間に挟まりチップの破損等の不具合が生じたりするなどの問題を有し、さらに、切削屑の分断性能も高いとはいえない。
【0006】
本発明はこのような従来例が有する問題に鑑みなされたものであり、揺動切削加工に比べて加工時間の短縮化が図られ、また、切削屑に対して高い分断性能を発揮すると共に、この分断した切削屑が切削工具とワークの間に挟まり刃先(チップ)の破損等の不具合が生じることが可及的に低減された工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
ワークWを載置固定する回転テーブル1と、この回転テーブル1上に載置固定されたワークWを切削加工する切削工具2と、この切削工具2の刃先近傍に向かって高圧クーラントを噴出するクーラント噴出部3とを備え、前記切削工具2の移動が数値制御プログラムに基づいて制御されるように構成されている工作機械であって、前記切削工具2は、前記数値制御プログラムにより送り移動と停止とを交互に繰り返しながら移動するように構成され、さらに、前記クーラント噴出部3は、前記高圧クーラントが切削加工中の前記切削工具2の刃先2a近傍の切削屑に噴射されるように構成されていることを特徴とする工作機械に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の工作機械において、前記数値制御プログラムは、設定された停止時間で前記切削工具2の送り速度が所定速度から徐々に減速し、一旦停止した後、前記送り速度を徐々に増速させながら前記所定速度に達するようにプログラムされていることを特徴とする工作機械に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の工作機械において、前記数値制御プログラムは、前記切削工具2が送り速度の減速を伴わずに即時停止し、設定された停止時間分、前記切削工具2の送り移動を停止させるようにプログラムされていることを特徴とする工作機械に係るものである。
【0011】
また、請求項2記載の工作機械において、前記停止時間は、前記切削工具2が送り移動される送り時間に比して長い時間に設定されていることを特徴とする工作機械に係るものである。
【0012】
また、請求項3記載の工作機械において、前記停止時間は、前記切削工具2が送り移動される送り時間に比して長い時間に設定されていることを特徴とする工作機械に係るものである。
【0013】
また、請求項1~5いずれか1項に記載の工作機械において、前記高圧クーラントの噴出圧力は、1MPa~10MPaに設定されていることを特徴とする工作機械に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、揺動切削加工に比べて加工時間が短くなり、また、切削屑に対して高い分断性能を発揮すると共に、この分断した切削屑が切削工具とワークの間に挟まりチップの破損等の不具合が生じることが可及的に低減される工作機械となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施例の切削加工状態を示す説明図である。
【
図2】本実施例の切削加工時の要部拡大説明図である。
【
図3】
図2における点線囲み部の拡大説明平面図である。
【
図4】本実施例において生成される切削屑の厚さを示す説明図である。
【
図5】本実施例の切削送り停止機能の動作パターン例を示す図である。
【
図6】本実施例の切削送り停止機能の動作パターン例を示す図である。
【
図7】本実施例の切削送り停止機能の動作パターン例を示す図である。
【
図8】本実施例の切削加工状態(切削工具の動作)を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
本発明は、数値制御プログラムに設定された切削工具2の切削送り移動に関する送り時間と停止時間に基づき、切削加工時に切削工具2が送り移動と停止とを交互に繰り返しながら加工を行うから、送り移動の停止作用により生成される切削屑の厚さが薄くなり、この切削屑の厚さが薄くなることで切削屑が分断され易くなる。
【0018】
しかも、本発明は、上記のとおり、切削加工時に数値制御プログラムに設定された前記送り時間と前記停止時間に基づき切削工具2が送り移動と停止とを交互に繰り返しながら加工を行うが、切削工具2の刃先2aはワークWから逃げることがないので、従来例のような戻り移動のロスがなく、その分、加工時間が短縮され、生産性が向上する。
【0019】
さらに、本発明は、クーラント噴出部3から噴出される高圧クーラントが、この厚さが薄くなった切削屑に噴射されるから、切削屑に対して高圧クーラントによる切断作用が作用し、切削屑に対する分断性能が向上し、切削加工により生成される切削屑を確実に分断することができるものとなる。
【0020】
しかも、本発明は、この分断した切削屑を高圧クーラントが吹き飛ばし除去するから、切削屑が切削工具2とワークWの間に挟まり刃先2aの破損等の不具合が生じることが可及的に低減されるものとなる。
【実施例0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、
図1に示すように、ワークWを載置固定する回転テーブル1と、この回転テーブル1上に載置固定されたワークWを切削加工する切削工具2と、この切削工具2の刃先2a(チップ2a)近傍に向かって高圧クーラントを噴出するクーラント噴出部3とを備える工作機械であり、具体的には、切削工具2の移動が数値制御プログラムに基づいて制御されるように構成されているNC工作機械である。なお、図中符号4はワークWをチャッキングする(固定する)爪部、符号5はワークWを載置する正直台である。
【0023】
具体的には、クーラント噴出部3から噴出される高圧クーラントは、噴出圧力が1MPa~10MPaに設定され、クーラント噴出部3は、
図2,3に示すように、前記噴出圧に設定された高圧クーラントが切削加工中の切削工具2の刃先2a近傍の切削屑に噴射されるように構成されている。
【0024】
すなわち、本実施例は、1MPa~10MPaに設定された高圧クーラントを切削屑に打ち込む(射水する)ことで、高圧クーラントによる切削屑の切断(分断)作用が生じるように構成されている。
【0025】
また、本実施例は、前記数値制御プログラムにおいて、切削加工における切削工具2の送り移動を制御する切削送り停止機能を有し、この切削送り停止機能により、切削工具2が送り移動と停止とを交互に繰り返しながら移動するように構成されている。
【0026】
具体的には、切削送り停止機能は、Mコード(NCプログラミングで使用するアドレス)指令で機能の有効、無効を設定でき、この切削送り停止機能を有効にすることで、切削加工において切削工具2が送り移動と停止(速度0)を繰り返しながら移動し、切削工具2が停止することで、
図4に示すように、切削加工により生成される切削屑の厚さが可及的に薄くなり、切削屑を分断し易い状態とすることができる。
【0027】
すなわち、切削工具2が停止しない場合(送り移動が連続的に実施される場合)、
図4中の二点鎖線が示すように、切削屑は同じ厚さ(t1)で生成されるが、切削送り停止機能を有効化し、切削加工中に切削工具2の送り移動と停止を交互に繰り返す場合、切削工具2の停止動作に伴い切削工具2の移動速度が徐々に低下し、この移動速度の低下に伴い、
図4中の実線が示すように、生成される切削屑の厚さが徐々に薄くなり、切削工具2が停止した時点において生成される切削屑の厚さが最も薄い厚さ(t2)となり、この薄厚部が形成されることで、切削屑が分断され易い状態となる。
【0028】
また、本実施例において、切削工具2の送り速度は、送りオーバーライドの設定値により決定され、この送り速度の設定値の変更により送り速度を変更することができる。
【0029】
具体的には、送り速度は、プログラムされた送り速度と送り時間で決定し、これらはプログラムにて引数で指定されている。なお、送り移動が停止する停止時間も前記同様、プログラムにて引数で指定されている。
【0030】
また、停止時間における切削工具2の動作は、二通りから選択可能であり、一つ目は、
図5,6に示すように、設定された停止時間で切削工具2の送り速度が所定速度(指定速度)から徐々(段階的に)に減速し、一旦停止した後、送り速度を徐々(段階的に)に増速させながら所定速度(もとの送り速度)に達する動作である。
【0031】
具体的には、たとえば、
図5に示すように、指定した送り速度を100%とし、停止時間中の送り速度を、100%→95%→80%→50%→25%→5%→0%→5%→25%→50%→80%→95%→100%という具合に段階的に減速割合・増速割合を設定することで、前記動作が実行される。
【0032】
また、この動作において、
図6に示すように、示停止時間を長い時間に設定した場合、速度0の時間が長くなるだけではなく、各段階における時間も長くなり、全体として速度0になるまでの時間及び指定速度に戻るまでの時間が長くなる、すなわち、減速時間及び増速時間がそれぞれ長くなるように構成(プログラミング)されている。
【0033】
二つ目は、
図7に示すように、停止時間になると切削工具2が送り速度の減速を伴わずに即時停止し、設定された停止時間分、切削工具2の送り移動が停止し、停止時間が経過したら即時に指定速度で送り移動を開始する動作である。
【0034】
具体的には、指定した送り速度を100%とした場合、100%→0%→100%という具合に設定することで、前記動作が実行される。
【0035】
また、切削送り停止機能における送り時間と停止時間は、
図5~7に示すように、送り時間に比べて停止時間の方が長い時間に設定されている。
【0036】
すなわち、本実施例は、送り時間を短くすることで生成される切削屑の長さを短くする(切削加工により生成される切削屑の長さは送り時間に比例するから)と共に、停止時間を長くすることで切削屑の厚さが薄くなる状況が長くして分断性を向上させ、これにより、切削加工時に生成される切削屑を短い間隔で確実に分断することができるように構成されている。
【0037】
以下は、本実施例の効果を裏付ける比較評価である。
【0038】
本評価では、本実施例と従来例において、同等の切削条件でワークを切削加工した場合の加工時間の比較を行った。なお、本実施例においては、切削加工時に、クーラント噴出部3から噴出圧力を8MPaに設定した高圧クーラントを切削屑に打ち込む(射水する)処理が追加されている。
【0039】
表1は、本実施例及び従来例における切削条件と加工時間を示すものであり、また、
図8は、本実施例の作業状態(切削工具2の動作)を示すイメージ図である。
【0040】
【0041】
なお、本実施例の切削条件において、停止時間における切削工具2の動作は、
図5に示すような、送り速度が段階的に減速し、段階的に増速する動作を行うパターンを設定した。よって、上記停止時間には、減速、増速時間を含む時間となる。
【0042】
表1に示すように同等の切削条件において切削加工を行った場合、本実施例の加工時間は32分であり、一方、従来例の加工時間は76分であった。
【0043】
このように、本実施例は、従来例の加工時間に比べ、44分短くなり、加工時間を1/2以下に短縮することができることが確認された。
【0044】
また、本実施例においては、
図8に示すように、切削工具2の送り移動が停止される停止時間のタイミングごとに切削屑が分断され、短い切削屑として生成され、この生成された切削屑が高圧クーラントにより除去され(吹き飛ばされ)、切削屑が切削工具2に絡みついたり、切削工具2とワークWとの間に挟まったりすることがなく、良好な加工状態が確認された。
【0045】
このように、本実施例は、従来の揺動切削加工に比べて飛躍的に加工時間を短縮することができ、また、切削屑に対して高い分断性能を発揮すると共に、この分断した切削屑を高圧クーラントにより吹き飛ばし除去するから、生成された切削屑が切削工具とワークの間に挟まりチップの破損等の不具合が生じることが可及的に低減される生産性に優れた画期的な工作機械となる。
【0046】
しかも、本実施例は、前記のとおり、切削送り停止機能と高圧クーラントの相互作用により切削屑を分断するから、クーラントとして超高圧クーラント(14MPa~20MPa程度)を用いる必要が無く、1MPa~10MPa程度の高圧クーラントで十分効果を得ることができ、これにより、設備コストも抑えることができる。
【0047】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。