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特開2025-69907積層セラミックキャパシタおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025069907
(43)【公開日】2025-05-01
(54)【発明の名称】積層セラミックキャパシタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250423BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 201L
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046563
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】10-2023-0139604
(32)【優先日】2023-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】李 明佑
(72)【発明者】
【氏名】韓 宰旻
(72)【発明者】
【氏名】金 珍成
(72)【発明者】
【氏名】柳 龍周
(72)【発明者】
【氏名】全 炯俊
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AH09
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG54
5E082GG10
5E082PP03
5E082PP06
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】特に、自動車の電子制御技術の発展により車両用にもMLCCの需要が増加しており、電子機器の小型化および高機能化が進められるに伴い、電装MLCCに対する高容量および高温耐湿特性が要求されている。
【解決手段】誘電体層と内部電極層とを含むキャパシタボディと、前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極とを含み、前記誘電体層は、チタン酸バリウム系の主成分およびリン(P)元素を含み、前記リン(P)元素は、前記チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.006モル部~0.23モル部含まれる積層セラミックキャパシタおよびその製造方法を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と内部電極層とを含むキャパシタボディと、
前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極とを含み、
前記誘電体層は、チタン酸バリウム系の主成分およびリン(P)元素を含み、
前記リン(P)元素は、前記チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.006モル部~0.23モル部含まれる、積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒(grain)を含み、
前記誘電体結晶粒は、前記チタン酸バリウム系の主成分および前記リン(P)元素を含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記誘電体結晶粒の大きさ(D10)は100nm~140nmである、請求項2に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記誘電体結晶粒の大きさ(D50)は150nm~250nmである、請求項2に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記誘電体結晶粒の大きさ(D90)は300nm~420nmである、請求項2に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
下記数式1によって得られる前記誘電体結晶粒の大きさ変動係数は30%~45%である、請求項2に記載の積層セラミックキャパシタ。
[数式1]
大きさ変動係数(%)={大きさの標準偏差(σ)/平均}×100
(前記数式1中、大きさの標準偏差(σ)は、偏差の二乗の平均の平方根である。)
【請求項7】
前記誘電体層は、副成分をさらに含み、
前記副成分は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して、
前記ジスプロシウム(Dy)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、
前記テルビウム(Tb)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、
前記マンガン(Mn)は0.01モル部~0.5モル部含まれ、
前記バナジウム(V)は0.01モル部~0.5モル部含まれ、
前記バリウム(Ba)は0.5モル部~3.0モル部含まれ、
前記ケイ素(Si)は0.5モル部~4.0モル部含まれ、
前記アルミニウム(Al)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、
前記カルシウム(Ca)は0.01モル部~1.0モル部含まれる、請求項7に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
バリウム(Ba)前駆体およびチタン(Ti)前駆体を含むチタン酸バリウム系の主成分粉末と、リン(P)含有化合物と、を混合して誘電体粉末を製造する段階;
前記誘電体粉末を含む誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、前記誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する段階;
前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階;
前記誘電体グリーンシート積層体を焼成して誘電体層と内部電極層とを含むキャパシタボディを製造する段階;および
前記キャパシタボディの一面に外部電極を形成する段階を含み、
前記リン(P)含有化合物は、前記チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.006モル部~0.23モル部混合され、
前記誘電体層は、チタン酸バリウム系の主成分およびリン(P)元素を含む、積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項10】
前記リン(P)含有化合物は、五酸化二リン(P)、リン酸(HPO)、塩化ホスホリル(POCl)、リン含有炭化水素化合物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項11】
前記リン含有炭化水素化合物は、ホスフェート(phosphate)化合物、ホスファイト(phosphite)化合物、ホスホネート(phosphonate)化合物、ホスフィネート(phosphinate)化合物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項12】
前記誘電体粉末を製造する段階は、
前記チタン酸バリウム系の主成分粉末と前記リン(P)含有化合物とを混合する段階の後、
前記混合して得られた混合物を乾燥および乾式粉砕する段階と、
前記乾式粉砕して得られた粉砕物をか焼(calcination)する段階と、
選択的に、前記か焼して得られたか焼物を湿式粉砕する段階と、
選択的に、前記湿式粉砕して得られた粉砕物を乾燥および乾式粉砕する段階とをさらに含む、請求項9に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項13】
前記か焼は、800℃~1000℃の温度で行われる、請求項12に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項14】
前記誘電体スラリーは、副成分粉末をさらに含み、
前記副成分粉末は、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化テルビウム(Tb)、酸化マンガン(MnO)、酸化バナジウム(V)、炭酸バリウム(BaCO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、炭酸カルシウム(CaCO)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して、
前記酸化ジスプロシウム(Dy)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、
前記酸化テルビウム(Tb)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、
前記酸化マンガン(MnO)は0.01モル部~0.5モル部含まれ、
前記酸化バナジウム(V)は0.01モル部~0.5モル部含まれ、
前記炭酸バリウム(BaCO)は0.5モル部~3.0モル部含まれ、
前記二酸化ケイ素(SiO)は0.5モル部~4.0モル部含まれ、
前記酸化アルミニウム(Al)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、
前記炭酸カルシウム(CaCO)は0.01モル部~1.0モル部含まれる、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層セラミックキャパシタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料を用いる電子部品として、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタまたはサーミスタなどがある。このようなセラミック電子部品のうち、積層セラミックキャパシタ(multilayer ceramic capacitor、MLCC)は、小型でかつ高容量が保障され、実装が容易であるというメリットによって、多様な電子装置に使用可能である。
【0003】
例えば、積層セラミックキャパシタ(MLCC)は、液晶表示装置(liquid crystal display、LCD)、プラズマディスプレイパネル(plasma display panel、PDP)、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode、OLED)などの映像機器、コンピュータ、個人携帯用端末およびスマートフォンのような様々な電子製品の基板に装着されて、電気を充電させたり放電させる役割を果たすチップ状のコンデンサに使用できる。
【0004】
特に、自動車の電子制御技術の発展により車両用にもMLCCの需要が増加しており、電子機器の小型化および高機能化が進められるに伴い、電装MLCCに対する高容量および高温耐湿特性が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、高温耐湿特性のような信頼性および耐電圧特性に優れた積層セラミックキャパシタを提供する。
【0006】
他の実施形態は、前記積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、誘電体層と内部電極層とを含むキャパシタボディと、前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極とを含み、前記誘電体層は、チタン酸バリウム系の主成分およびリン(P)元素を含み、前記リン(P)元素は、前記チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.006モル部~0.23モル部含まれる積層セラミックキャパシタを提供する。
【0008】
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒(grain)を含むことができ、前記誘電体結晶粒は、前記チタン酸バリウム系の主成分および前記リン(P)元素を含むことができる。
【0009】
前記誘電体結晶粒の大きさ(D10)は100nm~140nmであってもよい。
【0010】
前記誘電体結晶粒の大きさ(D50)は150nm~250nmであってもよい。
【0011】
前記誘電体結晶粒の大きさ(D90)は300nm~420nmであってもよい。
【0012】
下記数式1によって得られる前記誘電体結晶粒の大きさ変動係数は30%~45%であってもよい。
【0013】
[数式1]
大きさ変動係数(%)={大きさの標準偏差(σ)/平均}×100
(前記数式1中、大きさの標準偏差(σ)は、偏差の二乗の平均の平方根である。)
【0014】
前記誘電体層は、副成分をさらに含むことができ、前記副成分は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0015】
前記チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して、前記ジスプロシウム(Dy)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、前記テルビウム(Tb)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、前記マンガン(Mn)は0.01モル部~0.5モル部含まれ、前記バナジウム(V)は0.01モル部~0.5モル部含まれ、前記バリウム(Ba)は0.5モル部~3.0モル部含まれ、前記ケイ素(Si)は0.5モル部~4.0モル部含まれ、前記アルミニウム(Al)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、前記カルシウム(Ca)は0.01モル部~1.0モル部含まれる。
【0016】
他の実施形態は、バリウム(Ba)前駆体およびチタン(Ti)前駆体を含むチタン酸バリウム系の主成分粉末とリン(P)含有化合物とを混合して誘電体粉末を製造する段階;前記誘電体粉末を含む誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、前記誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する段階;前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階;前記誘電体グリーンシート積層体を焼成して誘電体層と内部電極層とを含むキャパシタボディを製造する段階;および前記キャパシタボディの一面に外部電極を形成する段階を含み、前記リン(P)含有化合物は、前記チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.006モル部~0.23モル部混合され、前記誘電体層は、チタン酸バリウム系の主成分およびリン(P)元素を含む積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【0017】
前記リン(P)含有化合物は、五酸化二リン(P)、リン酸(HPO)、塩化ホスホリル(POCl)、リン含有炭化水素化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0018】
前記リン含有炭化水素化合物は、ホスフェート(phosphate)化合物、ホスファイト(phosphite)化合物、ホスホネート(phosphonate)化合物、ホスフィネート(phosphinate)化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0019】
前記誘電体粉末を製造する段階は、前記チタン酸バリウム系の主成分粉末と前記リン(P)含有化合物とを混合する段階の後、選択的に、前記混合して得られた混合物を乾燥および乾式粉砕する段階と、前記乾式粉砕して得られた粉砕物をか焼(calcination)する段階と、選択的に、前記か焼して得られたか焼物を湿式粉砕する段階と、選択的に、前記湿式粉砕して得られた粉砕物を乾燥および乾式粉砕する段階とをさらに含むことができる。
【0020】
前記か焼は、800℃~1000℃の温度で行われる。
【0021】
前記誘電体スラリーは、副成分粉末をさらに含むことができ、前記副成分粉末は、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化テルビウム(Tb)、酸化マンガン(MnO)、酸化バナジウム(V)、炭酸バリウム(BaCO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、炭酸カルシウム(CaCO)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0022】
前記チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して、前記酸化ジスプロシウム(Dy)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、前記酸化テルビウム(Tb)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、前記酸化マンガン(MnO)は0.01モル部~0.5モル部含まれ、前記酸化バナジウム(V)は0.01モル部~0.5モル部含まれ、前記炭酸バリウム(BaCO)は0.5モル部~3.0モル部含まれ、前記二酸化ケイ素(SiO)は0.5モル部~4.0モル部含まれ、前記酸化アルミニウム(Al)は0.1モル部~1.0モル部含まれ、前記炭酸カルシウム(CaCO)は0.01モル部~1.0モル部含まれる。
【発明の効果】
【0023】
一実施形態による積層セラミックキャパシタは、粒子サイズが均一な誘電体層を有することによって、高温耐湿特性などの信頼性および耐電圧特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す斜視図である。
図2図1のI-I’線に沿った積層セラミックキャパシタの断面図である。
図3図1のII-II’線に沿った積層セラミックキャパシタの断面図である。
図4】一実施形態による誘電体層の誘電体結晶粒(grain)を示す概略図である。
図5】一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法を示す工程フローチャートである。
図6】一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法のうち誘電体粉末の製造段階を示す工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例を詳細に説明する。図面において本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付した。また、添付図面において一部の構成要素は誇張されたり省略されたりまたは概略的に示され、各構成要素の大きさは実際の大きさを完全に反映するものではない。
【0026】
添付した図面は本明細書に開示された実施例を容易に理解できるようにするためのものに過ぎず、添付した図面によって本明細書に開示された技術的思想が制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物あるいは代替物を含むことが理解されなければならない。
【0027】
第1、第2などのような序数を含む用語は多様な構成要素を説明するのに使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0028】
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとする時、これは、他の部分の「直上」にある場合のみならず、その中間に他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「直上」にあるとする時には、中間に他の部分がないことを意味する。さらに、基準となる部分の「上」にあるというのは、基準となる部分の上または下に位置することであり、必ずしも重力の反対方向の「上」に位置することを意味するのではない。
【0029】
明細書全体において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。したがって、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0030】
また、明細書全体において、「平面上」とする時、これは対象部分を上から見た時を意味し、「断面上」とする時、これは対象部分を垂直に切断した断面を横から見た時を意味する。
【0031】
さらに、明細書全体において、「連結される」とする時、これは2以上の構成要素が直接的に連結されることだけを意味するのではなく、2以上の構成要素が他の構成要素を介して間接的に連結されること、物理的に連結されることだけでなく電気的に連結されること、または位置や機能により異なる名称で称されたものの一切を意味することができる。
【0032】
以下、一実施形態による積層セラミックキャパシタについて、図1~3を参照して説明する。
【0033】
図1は、一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す斜視図であり、図2は、図1のI-I’線に沿った積層セラミックキャパシタの断面図であり、図3は、図1のII-II’線に沿った積層セラミックキャパシタの断面図である。
【0034】
図1~3に表示されたL軸、W軸およびT軸はそれぞれ、キャパシタボディ110の長手方向、幅方向および厚さ方向を示す。ここで、厚さ方向(T軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に垂直な方向であってもよく、一例として、誘電体層111が積層される積層方向と同じ概念で使用できる。長手方向(L軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に並んで延びる方向で厚さ方向(T軸方向)と略垂直な方向になり、一例として、両側に第1外部電極131および第2外部電極132が位置する方向であってもよい。幅方向(W軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に並んで延びる方向で厚さ方向(T軸方向)および長手方向(L軸方向)と略垂直な方向であってもよく、シート形状の構成要素の長手方向(L軸方向)の長さは、幅方向(W軸方向)の長さよりも長い。
【0035】
図1~3を参照すれば、一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、キャパシタボディ110と、キャパシタボディ110の外側に配置される外部電極131、132とを含む。外部電極131、132は、キャパシタボディ110の長手方向(L軸方向)に対向する両端に配置される第1外部電極131および第2外部電極132を含むことができる。
【0036】
キャパシタボディ110は、一例として、略六面体形状であってもよい。
【0037】
一実施形態に関する説明の便宜のために、キャパシタボディ110において厚さ方向(T軸方向)に互いに対向する両面を第1面および第2面、第1面および第2面に連結され、長手方向(L軸方向)に互いに対向する両面を第3面および第4面、第1面および第2面に連結され、第3面および第4面に連結され、幅方向(W軸方向)に互いに対向する両面を第5面および第6面と定義する。
【0038】
一例として、下面の第1面が実装方向に向かう面になる。また、第1面~第6面は平らであってもよいが、一実施形態がこれに限定されるものではない。例えば、第1面~第6面は、中央部が凸の曲面であってもよく、各面の堺界である角部はラウンド(round)になっていてもよい。
【0039】
キャパシタボディ110の形状、寸法および誘電体層111の積層数が本実施形態の図示に限定されるものではない。
【0040】
キャパシタボディ110は、複数の誘電体層111と、内部電極層121、122とを含む。具体的には、キャパシタボディ110は、複数の誘電体層111と、誘電体層111を挟んで厚さ方向(T軸方向)に交互に配置される第1内部電極121および第2内部電極122とを含む。
【0041】
この時、キャパシタボディ110の互いに隣接するそれぞれの誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)を用いずには確認しにくいほど一体化されている。
【0042】
キャパシタボディ110は、アクティブ部を有することができる。アクティブ部は、誘電体層111と内部電極層121、122とが互いに交互に配置された領域であって、積層セラミックキャパシタ100の容量形成に寄与する部分である。具体的には、アクティブ部は、厚さ方向(T軸方向)に沿って積層される第1内部電極121または第2内部電極122が重畳(overlap)した領域であってもよい。
【0043】
また、キャパシタボディ110は、カバー部およびサイドマージン部をさらに含むことができる。
【0044】
カバー部は、厚さ方向のマージン部であって、厚さ方向(T軸方向)にアクティブ部の第1面および第2面側にそれぞれ位置することができる。このようなカバー部は、単一誘電体層111または2つ以上の誘電体層111がアクティブ部の上面および下面にそれぞれ積層されたものであってもよい。
【0045】
サイドマージン部は、側面カバー部と見なすことができ、幅方向(W軸方向)にアクティブ部の互いに対向する両側端部、つまり、第5面および第6面側にそれぞれ位置することができる。前記サイドマージン部は、誘電体グリーンシートの表面に内部電極層用導電性ペースト層を塗布する時、誘電体グリーンシート表面の一部領域にのみ導電性ペースト層を塗布し、誘電体グリーンシート表面の両側側面には導電性ペースト層を塗布しない誘電体グリーンシートを積層した後、焼成することによって形成されるが、このような形成方法に限定されるものではない。
【0046】
カバー部およびサイドマージン部は、物理的または化学的ストレスによる第1内部電極121および第2内部電極122の損傷を防止する役割を果たす。
【0047】
一実施形態による誘電体層111は、チタン酸バリウム系の主成分およびリン(P)元素を含む。
【0048】
チタン酸バリウム系の主成分は、誘電体母材であって、高い誘電率を有し、積層セラミックキャパシタ100の誘電率の形成に寄与する。
【0049】
チタン酸バリウム系の主成分は、例えば、BaTiO、Ba(Ti、Zr)O、Ba(Ti、Sn)O、(Ba、Ca)TiO、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O、(Ba、Ca)(Ti、Sn)O、(Ba、Sr)TiO、(Ba、Sr)(Ti、Zr)O、(Ba、Sr)(Ti、Sn)O、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0050】
リン(P)元素は、誘電体母材に添加されるリン(P)含有化合物に由来する成分であってもよい。
【0051】
リン(P)元素は、前記チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.006モル部~0.23モル部含まれ、例えば、0.01モル部~0.15モル部含まれる。リン(P)元素が誘電体層111内で前記含有量の範囲内に含まれる場合、リン(P)元素のイオン半径の差によって誘電体結晶粒(grain)の異常粒成長を抑制し、これによって誘電体層内に均一な大きさの誘電体結晶粒を確保できる。これによって、積層セラミックキャパシタの高温耐湿特性などの信頼性と耐電圧特性が改善できる。
【0052】
前記誘電体層111内のリン(P)元素の含有量は誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma、ICP)分析によって測定できる。具体的には、積層セラミックキャパシタの誘電体層サンプルに対して、Quartzチャンバで、ICP-OES(inductively coupled plasma-optical emission spectrometry)のAVIO500(Perkin Elmer)の装置を用いて、例えば、プラズマガスフロー(plasma gas flow)12L/min、補助ガスフロー(auxiliary gas flow)0.2L/min、ネブライザーフロー(nebulizer flow)0.5L/min、プラズマRFパワー(power)1400W、プラズマモードAxialの条件で測定できる。
【0053】
一実施形態による誘電体層111は、複数の誘電体結晶粒(grain)を含むことができる。この時、誘電体結晶粒は、前述したチタン酸バリウム系の主成分およびリン(P)元素を含むことができる。
【0054】
前記誘電体結晶粒の大きさ(D10)は100nm~140nmであってもよく、例えば、110nm~130nmであってもよい。また、誘電体結晶粒の大きさ(D50)は150nm~250nmであってもよく、例えば、180nm~220nmであってもよく、例えば、190nm~210nmであってもよい。また、誘電体結晶粒の大きさ(D90)は300nm~420nmであってもよく、例えば、310nm~350nmであってもよく、例えば、320nm~340nmであってもよい。それぞれの誘電体結晶粒の大きさ、つまり、D10、D50およびD90が前記範囲内の場合、均一な誘電体結晶粒を有する誘電体層を確保することによって、高い信頼性と優れた耐電圧特性を有することができる。
【0055】
前記誘電体結晶粒の大きさは次のような方法で測定できる。
【0056】
まず、積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディ110のW軸およびT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2地点まで研磨(polishing)し、固定後、真空雰囲気チャンバー内維持して、誘電体層111と内部電極層121、122との交差するアクティブ部を観察できるように断面サンプルを得ることができる。次に、断面サンプルのアクティブ部をイオンミリングして走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で測定できる。走査電子顕微鏡は、例えば、thermofisher scientific社のVerios G4製品を用い、測定条件は10kV、0.2nAであり、分析倍率は100倍であってもよく、少なくとも1層以上、3層以上、5層以上、または10層以上の誘電体層111が出られるように測定できる。誘電体結晶粒の大きさは、前記断面サンプルの走査電子顕微鏡イメージにおいて、少なくとも100個の誘電体結晶粒(grain)の最大長軸を測定してサイズ分布累積曲線を作成し、D10、D50およびD90をそれぞれ計算する。この時、D10、D50およびD90は、サイズ分布累積曲線においてそれぞれ10%、50%および90%となる地点での大きさを意味する。
【0057】
また、前記誘電体結晶粒の大きさ変動係数は30%~45%であってもよく、例えば、30%~43%であってもよい。誘電体結晶粒の大きさ変動係数が前記範囲内の場合、誘電体結晶粒の大きさに対するばらつき特性に優れていることによって、高温耐湿特性のような信頼性および耐電圧特性に優れた積層セラミックキャパシタを確保できる。
【0058】
前記誘電体結晶粒の大きさ変動係数は下記数式1によって得られる。
【0059】
[数式1]
大きさ変動係数(%)={大きさの標準偏差(σ)/平均}×100
【0060】
前記数式1中、大きさの標準偏差(σ)は、偏差を二乗して合計した後、測定回数で割ってその平方根を求めたもの、つまり、下記数式2のように、偏差の二乗の平均の平方根を意味する。
【0061】
【数1】
【0062】
図4は、一実施形態による誘電体層の誘電体結晶粒(grain)を示す概略図である。
【0063】
図4を参照すれば、一実施形態による誘電体層111は、誘電体結晶粒10と、隣接した誘電体結晶粒10の間に位置する結晶粒界(grain boundary)20とを含むことができる。複数の誘電体結晶粒10の少なくとも1つは、コア10aと、コア10aを囲むシェル10bとを含むコア-シェル構造を有することができる。一実施形態による誘電体層111、つまり、リン(P)元素がチタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.006モル部~0.23モル部含まれている誘電体層111は、図4のように、誘電体結晶粒10が均一に存在することができる。
【0064】
一実施形態による誘電体層111は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、またはこれらの組み合わせを含む副成分をさらに含むことができる。
【0065】
前記副成分は、誘電体母材に副成分として添加される金属酸化物に由来できる。
【0066】
ジスプロシウム(Dy)は、チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.1モル部~1.0モル部含まれ、テルビウム(Tb)は、チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.1モル部~1.0モル部含まれ、マンガン(Mn)は、チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.01モル部~0.5モル部含まれ、バナジウム(V)は、チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.01モル部~0.5モル部含まれ、バリウム(Ba)は、チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.5モル部~3.0モル部含まれ、ケイ素(Si)は、チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.5モル部~4.0モル部含まれ、アルミニウム(Al)は、チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.1モル部~1.0モル部含まれ、カルシウム(Ca)は、チタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.01モル部~1.0モル部含まれる。前記副成分がそれぞれ前記含有量の範囲内に含まれる場合、高容量を有し、高い信頼性と優れた耐電圧特性を有する積層セラミックキャパシタを確保できる。
【0067】
誘電体層111の平均厚さ(T軸方向の平均長さ)は2.0μm~8.0μmであってもよく、例えば、2.4μm~7.8μmであってもよい。誘電体層111の平均厚さが前記範囲内の場合、積層セラミックキャパシタの信頼性に優れている。
【0068】
誘電体層111の平均厚さは、積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、研磨(polishing)した後、イオンミリングして走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)分析によって測定される。走査電子顕微鏡は、例えば、thermofisher scientific社のVerios G4製品を用い、測定条件は10kV、0.2nAであり、分析倍率は100倍であってもよく、少なくとも1層以上、3層以上、5層以上、または10層以上の誘電体層111が出られるように測定できる。走査電子顕微鏡(SEM)イメージにおいて、誘電体層111の長手方向(L軸方向)または幅方向(W軸方向)の中央地点を基準点とし、基準点から所定の間隔で離れた10個の地点における、誘電体層111の厚さの算術平均値であってもよい。10個の地点の間隔は、走査電子顕微鏡(SEM)イメージのスケール(scale)により調節可能であり、例えば、1μm~100μm、1μm~50μm、または1μm~10μmの間隔であってもよい。この時、10個の地点はすべて誘電体層111内に位置しなければならず、10個の地点がすべて誘電体層111内に位置しない場合、基準点の位置を変更するか、10個の地点間の間隔を調節することができる。
【0069】
第1内部電極121と第2内部電極122は、互いに異なる極性を有する電極であって、誘電体層111を挟んでT軸方向に沿って互いに対向するように交互に配置され、一端がキャパシタボディ110の第3および第4面を介してそれぞれ露出できる。
【0070】
第1内部電極121と第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁可能である。
【0071】
キャパシタボディ110の第3および第4面を介して交互に露出する第1内部電極121および第2内部電極122の端部は、第1外部電極131および第2外部電極132にそれぞれ接続されて電気的に連結可能である。
【0072】
第1内部電極121および第2内部電極122は、導電性金属を含み、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属、またはこれらの合金、例えば、Ag-Pd合金を含むことができる。
【0073】
また、第1内部電極121および第2内部電極122は、誘電体層111に含まれるセラミック材料と同じ組成系の誘電体粒子を含んでもよい。
【0074】
第1内部電極121および第2内部電極122は、導電性金属を含む導電性ペーストを用いて形成される。導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法を用いることができる。
【0075】
第1内部電極121および第2内部電極122の平均厚さは0.1μm~2μmであってもよい。第1内部電極121および第2内部電極122の平均厚さは、走査電子顕微鏡(SEM)分析によって測定される。ここで、走査電子顕微鏡(SEM)分析は、前述した誘電体層111の平均厚さ測定時の方法と同一であるので、その説明を省略する。
【0076】
キャパシタボディ110は、複数の誘電体層111と内部電極層121、122とが積層された積層体を焼成して形成される。
【0077】
第1外部電極131および第2外部電極132は、互いに異なる極性の電圧が提供され、第1内部電極121および第2内部電極122の露出する部分にそれぞれ接続されて電気的に連結可能である。
【0078】
このような構成により、第1外部電極131および第2外部電極132に所定の電圧を印加すれば、互いに対向する第1内部電極121および第2内部電極122の間に電荷が蓄積される。この時、積層セラミックキャパシタ100の静電容量は、アクティブ部においてT軸方向に沿って互いに重畳する第1内部電極121および第2内部電極122のオーバーラップされた面積に比例する。
【0079】
第1外部電極131および第2外部電極132は、キャパシタボディ110の第3および第4面にそれぞれ配置されて第1内部電極121および第2内部電極122に接続される第1および第2接続部と、キャパシタボディ110の第3および第4面と、第1および第2面または第5および第6面との出会う角部に配置される第1および第2バンド部とをそれぞれ含むことができる。
【0080】
第1および第2バンド部は、第1および第2接続部からキャパシタボディ110の第1および第2面または第5および第6面の一部までそれぞれ延びることができる。第1および第2バンド部は、第1外部電極131および第2外部電極132の固着強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0081】
第1外部電極131および第2外部電極132はそれぞれ、キャパシタボディ110と接触する焼結金属層と、焼結金属層を覆うように配置される伝導性樹脂層と、伝導性樹脂層を覆うように配置されるメッキ層とを含むことができる。
【0082】
焼結金属層は、導電性金属およびガラスを含むことができる。
【0083】
導電性金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、これらの合金、またはこれらの組み合わせを含むことができ、例えば、銅(Cu)は、銅(Cu)合金を含むことができる。導電性金属が銅を含む場合、銅以外の金属は、銅100モル部に対して5モル部以下で含まれる。
【0084】
ガラスは、酸化物が混合された組成を含むことができ、例えば、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、遷移金属酸化物、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択された1つ以上であってもよい。遷移金属は、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)およびニッケル(Ni)からなる群より選択され、アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)からなる群より選択され、アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)からなる群より選択された1つ以上であってもよい。
【0085】
選択的に、伝導性樹脂層は、焼結金属層上に形成され、例えば、焼結金属層を完全に覆う形態に形成される。一方、第1外部電極131および第2外部電極132は、焼結金属層を含まなくてもよいし、この場合、伝導性樹脂層がキャパシタボディ110と直接接触できる。
【0086】
伝導性樹脂層は、キャパシタボディ110の第1および第2面または第5および第6面に延び、伝導性樹脂層がキャパシタボディ110の第1および第2面または第5および第6面に延びて配置された領域(つまり、バンド部)の長さは、焼結金属層がキャパシタボディ110の第1面および第2面または第5および第6面に延びて配置された領域(つまり、バンド部)の長さより長い。つまり、伝導性樹脂層は、焼結金属層上に形成され、焼結金属層を完全に覆う形態に形成される。
【0087】
伝導性樹脂層は、樹脂および導電性金属を含む。
【0088】
伝導性樹脂層に含まれる樹脂は、接合性および衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作れるものであれば特に制限されず、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂を含むことができる。
【0089】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、第1内部電極121および第2内部電極122または焼結金属層と電気的に連結されるようにする役割を果たす。
【0090】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、球状、フレーク状、またはこれらの組み合わせの形態を有することができる。つまり、導電性金属は、フレーク状のみからなるか、球状のみからなってもよく、フレーク状と球状とが混合された形態であってもよい。
【0091】
ここで、球状は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸との長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粉末は平らでかつ細長い形態を有する粉末を意味し、特に制限されるわけではないが、例えば、長軸と短軸との長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。
【0092】
第1外部電極131および第2外部電極132は、伝導性樹脂層の外側に配置されるメッキ層をさらに含むことができる。
【0093】
メッキ層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)または鉛(Pb)の単独またはこれらの合金を含むことができる。例えば、メッキ層は、ニッケル(Ni)メッキ層またはスズ(Sn)メッキ層であってもよく、ニッケル(Ni)メッキ層およびスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよく、スズ(Sn)メッキ層、ニッケル(Ni)メッキ層およびスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよい。また、メッキ層は、複数のニッケル(Ni)メッキ層および/または複数のスズ(Sn)メッキ層を含んでもよい。
【0094】
メッキ層は、積層型キャパシタ100の基板との実装性、構造的信頼性、外部に対する耐久度、耐熱性および等価直列抵抗値(equivalent series resistance、ESR)を改善することができる。
【0095】
以下、一実施形態による積層セラミックキャパシタ100の製造方法について、図5および6を参照して説明する。
【0096】
図5は、一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法を示す工程フローチャートであり、図6は、一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法のうち誘電体粉末の製造段階を示す工程フローチャートである。
【0097】
図5を参照すれば、バリウム(Ba)前駆体およびチタン(Ti)前駆体を含むチタン酸バリウム系の主成分粉末とリン(P)含有化合物とを混合して誘電体粉末を製造する段階S10;前記誘電体粉末を含む誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、前記誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する段階S20;前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階S30;前記誘電体グリーンシート積層体を焼成して誘電体層と内部電極層とを含むキャパシタボディを製造する段階S40;および前記キャパシタボディの一面に外部電極を形成する段階S50を含んで製造できる。
【0098】
まず、誘電体粉末を製造する段階S10について説明する。
【0099】
誘電体粉末は、チタン酸バリウム系の主成分粉末とリン(P)含有化合物とを混合して製造できる。チタン酸バリウム系の主成分粉末は、バリウム(Ba)前駆体およびチタン(Ti)前駆体を含むことができる。
【0100】
バリウム(Ba)前駆体は、BaO、BaTiO、BaCO、BaO、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0101】
チタン(Ti)前駆体は、チタンの酸化物、塩(salt)、アルコキシドなどであってもよく、例えば、二酸化チタン、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(TPA)、チタンアルコキシド、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0102】
バリウム(Ba)前駆体は、チタン(Ti)前駆体1モルに対して0.990モル~1.000モル含まれる。
【0103】
リン(P)含有化合物は、チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.006モル部~0.23モル部混合され、例えば、0.01モル部~0.15モル部混合される。誘電体粉末の製造時、リン(P)含有化合物が前記含有量の範囲内に混合される場合、均一なチタン酸バリウム系粉末を得ることができ、これによって誘電体層内に均一な大きさの誘電体結晶粒を確保できる。これによって、高温耐湿特性などの信頼性と耐電圧特性に優れた積層セラミックキャパシタを得ることができる。
【0104】
リン(P)含有化合物は、一例として、五酸化二リン(P)、リン酸(HPO)、塩化ホスホリル(POCl)、リン含有炭化水素化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されない。
【0105】
前記リン含有炭化水素化合物は、ホスフェート(phosphate)化合物、ホスファイト(phosphite)化合物、ホスホネート(phosphonate)化合物、ホスフィネート(phosphinate)化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0106】
図6を参照すれば、前記誘電体粉末を製造する段階S10は、バリウム(Ba)前駆体およびチタン(Ti)前駆体を含むチタン酸バリウム系の主成分粉末とリン(P)含有化合物とを混合する段階S11と、選択的に、前記混合して得られた混合物を乾燥および乾式粉砕する段階S12と、乾式粉砕して得られた粉砕物をか焼(calcination)する段階S13と、選択的に、前記か焼して得られたか焼物を湿式粉砕する段階S14と、選択的に、前記湿式粉砕して得られた粉砕物を乾燥および乾式粉砕する段階S15とを含むことができる。
【0107】
前記混合する段階S11において、混合は、湿式混合で行われる。具体的には、湿式混合は、例えば、ビーズミル、ボールミルなどの分散機を用いるか、高圧分散処理を行って溶媒と共に湿式で分散させることができる。一例として、ビーズミルを用いて分散させる場合、直径0.03mm~0.1mmのビーズを用いて5m/s~15m/sの周速で5パス~30パスで分散処理することができる。
【0108】
湿式混合に使用される溶媒としては、例えば、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水などの水系溶媒を使用するか、アルコール系溶媒、アンモニア、有機アミンなどのアミン系溶媒を水と共に使用することができる。
【0109】
選択的に、前記混合する段階S11で分散剤をさらに添加することができ、分散剤は、例えば、ポリビニルブチル系分散剤、ポリビニルアセタール系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、マレイン酸系分散剤、ポリエチレングリコール系分散剤、アリルエーテルコポリマー系分散剤などであってもよい。
【0110】
次に、選択的な段階として、前記混合して得られた混合物を乾燥および乾式粉砕することができる(S12)。
【0111】
次に、前記乾式粉砕して得られた粉砕物をか焼(calcination)する過程を進行させる(S13)。
【0112】
前記か焼は、800℃~1000℃の温度で、例えば、840℃~900℃の温度で行われる。また、か焼は、1時間~8時間、例えば、2時間~6時間行われる。また、か焼は、真空雰囲気または常圧雰囲気下、例えば、10,000Pa~1,000,000Paの雰囲気で行われる。真空雰囲気は、例えば、20,000Pa以下、または100Pa以下の雰囲気で行われる。か焼が前記温度範囲を含む条件下で行われる場合、未反応およびばらつき問題なしに均一な誘電体粉末を得ることができる。
【0113】
次に、選択的な段階として、前記か焼して得られたか焼物を湿式粉砕(S14)した後、湿式粉砕して得られた粉砕物を乾燥および乾式粉砕(S15)して誘電体粉末を得ることができる。
【0114】
得られた誘電体粉末を含む誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートおよび導電性ペースト層を形成する(S20)。
【0115】
誘電体スラリーは、副成分粉末をさらに含むことができる。副成分粉末は、有機溶媒に分散したゾル形態で使用されてもよい。
【0116】
副成分粉末は、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化テルビウム(Tb)、酸化マンガン(MnO)、酸化バナジウム(V)、炭酸バリウム(BaCO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、炭酸カルシウム(CaCO)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。副成分粉末は、有機溶媒に分散したゾル形態で使用されてもよい。
【0117】
酸化ジスプロシウム(Dy)は、チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.1モル部~1.0モル部含まれ、酸化テルビウム(Tb)は、チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.1モル部~1.0モル部含まれ、酸化マンガン(MnO)は、チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.01モル部~0.5モル部含まれ、酸化バナジウム(V)は、チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.01モル部~0.5モル部含まれ、炭酸バリウム(BaCO)は、チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.5モル部~3.0モル部含まれ、二酸化ケイ素(SiO)は、チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.5モル部~4.0モル部含まれ、酸化アルミニウム(Al)は、チタン酸バリウム系の主成分粉末モル部に対して0.1モル部~1.0モル部含まれ、炭酸カルシウム(CaCO)は、チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.01モル部~1.0モル部含まれる。副成分粉末がそれぞれ前記含有量の範囲内に含まれる場合、高容量を有し、高い信頼性と優れた耐電圧特性を有する積層セラミックキャパシタを得ることができる。
【0118】
また、誘電体スラリーは、分散剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤などの添加剤と溶媒とを追加的に混合して製造できる。
【0119】
分散剤は、例えば、リン酸エステル系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、またはこれらの組み合わせを含むことができる。分散剤は、前記誘電体粉末100重量部に対して0.1重量部~5重量部混合され、例えば、0.3重量部~3重量部混合される。分散剤が前記含有量の範囲内に混合される場合、誘電体スラリーの分散性に優れ、製造された誘電体層内に含まれる不純物の量を減少させることができる。
【0120】
バインダーは、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチルセルロース樹脂などであってもよい。バインダーは、前記誘電体粉末100重量部に対して0.1重量部~50重量部添加され、例えば、3重量部~30重量部添加される。バインダーが前記含有量の範囲内に混合される場合、誘電体スラリーの分散性に優れ、製造された誘電体層内に含まれる不純物の量を減少させることができる。
【0121】
可塑剤は、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジ(2-エチルブチル)などのフタル酸系化合物;アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)などのアジピン酸系化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール系化合物;トリエチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジ(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)などのグリコールエステル系化合物などであってもよい。可塑剤は、前記誘電体粉末100重量部に対して0.1重量部~20重量部添加され、例えば、1重量部~10重量部添加される。可塑剤が前記含有量の範囲内に混合される場合、誘電体スラリーの分散性に優れ、製造された誘電体層内に含まれる不純物の量を減少させることができる。
【0122】
溶媒は、水などの水系溶媒;エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、メトキシエタノールなどのアルコール系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのエステル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などであってもよい。溶媒は、例えば、誘電体スラリーに含まれる各種添加剤の溶解性や分散性を考慮して、アルコール系溶媒または芳香族系溶媒を使用することができる。溶媒は、前記誘電体粉末100重量部に対して50重量部~1000重量部混合され、例えば、100重量部~500重量部混合される。溶媒が前記含有量の範囲内に混合される場合、誘電体スラリー成分が十分に混合され、以後、溶媒の除去も容易である。
【0123】
誘電体粉末と副成分粉末との混合は、湿式ボールミルまたは撹拌ミルを用いることができる。湿式ボールミルでジルコニアボールを用いる場合、直径0.1mm~10mmの複数のジルコニアボールを用いて8時間~48時間、または10時間または24時間湿式混合することができる。
【0124】
製造された誘電体スラリーは、焼成後に誘電体層に形成される。
【0125】
次に、誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、前記誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する(S20)。
【0126】
製造された誘電体スラリーをシート形状に成形する方法としては、ドクターブレード法、カレンダーロール法などのテープ成形法など、例えば、ヘッド吐出方式のオンロール(on roll)成形コーター(coater)を用いることができ、以後、成形体を乾燥することによって、誘電体グリーンシートを得ることができる。
【0127】
焼成後、内部電極層になる導電性ペースト層を形成するために、導電性金属またはその合金からなる導電性粉末、バインダーおよび溶媒を混合して導電性ペーストを製造することができる。また、必要に応じて、共材としてチタン酸バリウム粉末が共に混合される。共材は、焼成過程で導電性粉末の焼結を抑制する作用を行うことができる。誘電体グリーンシートの表面にスクリーン印刷などの各種印刷法や転写法によって導電性ペーストを所定のパターンに塗布して導電性ペースト層を形成する。
【0128】
次に、内部電極パターンを形成した誘電体グリーンシートを複数層にわたって積層した後、積層方向にプレスすることによって、誘電体グリーンシート積層体を製造する(S30)。この時、誘電体グリーンシート積層体の積層方向の上面および下面には誘電体グリーンシートが位置するように誘電体グリーンシートと内部電極パターンとを積層できる。
【0129】
製造された誘電体グリーンシート積層体をダイシングなどによって所定の寸法に切断する段階を選択的に進行させることができる。
【0130】
また、誘電体グリーンシート積層体は、必要に応じて、可塑剤などを除去するために固化乾燥することができ、固化乾燥後に、水平遠心バレル機などを用いてバレル研磨することができる。バレル研磨では、誘電体グリーンシート積層体をメディアおよび研磨液と共にバレル容器内に投入し、そのバレル容器に対して回転運動や振動などを付与することによって、切断時に発生したバリ(burr)などの不要部分を研磨することができる。また、バレル研磨後、誘電体グリーンシート積層体は、水などの洗浄液で洗浄して乾燥できる。
【0131】
次に、誘電体グリーンシート積層体を脱バインダー処理および焼成してキャパシタボディを製造する(S40)。
【0132】
脱バインダー処理条件は、誘電体層の成分や内部電極層の成分により適切に調節可能である。例えば、脱バインダー処理時の昇温速度は5℃/時間~300℃/時間、支持温度は180℃~400℃、温度維持時間は0.5時間~24時間であってもよい。脱バインダー処理時の雰囲気は、空気または還元性雰囲気であってもよい。
【0133】
焼成処理の条件は、誘電体層の主成分の組成や内部電極の主成分の組成により適切に調節可能である。例えば、焼成は、1100℃~1400℃の温度で行われ、例えば、1200℃~1350℃の温度で行われる。また、焼成は、0.5時間~8時間、例えば、1時間~3時間行われる。さらに、焼成は、還元性雰囲気、例えば、窒素および水素の混合ガスを加湿した雰囲気で行われる。内部電極がニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)合金を含む場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、1.0×10-14MPa~1.0×10-10MPaであってもよい。
【0134】
焼成処理後、必要に応じてアニーリングを進行させることができる。アニーリングは、誘電体層を再酸化させるための処理であり、還元性雰囲気で焼成処理した場合、アニーリングを進行させることができる。アニーリング処理の条件も、誘電体層の成分により適切に調節可能である。例えば、アニーリング時の温度は、950℃~1150℃であってもよく、時間は、0時間~20時間であってもよく、昇温速度は、50℃/時間~500℃/時間であってもよい。アニーリング雰囲気は、加湿した窒素ガス(N)雰囲気であってもよく、酸素分圧は、1.0×10-9MPa~1.0×10-5MPaであってもよい。
【0135】
脱バインダー処理、焼成処理またはアニーリング処理において、窒素ガスや混合ガスなどを加湿するためには、例えば、ウェッター(wetter)などを使用することができ、この場合、水温は、5℃~75℃であってもよい。脱バインダー処理、焼成処理およびアニーリング処理は、連続して行ってもよく、独立して行ってもよい。
【0136】
選択的に、製造されたキャパシタボディ110の第3面および第4面に対して、サンドブラスト処理、レーザ照射、バレル研磨などの表面処理を行うことができる。このような表面処理を行うことによって、第3面および第4面の最表面に第1内部電極および第2内部電極の端部が露出し、これによって第1外部電極および第2外部電極と第1内部電極および第2内部電極との電気的接合が良好になり、合金部が形成されやすくなる。
【0137】
次に、製造されたキャパシタボディ110の一面に外部電極を形成する(S50)。
【0138】
一例として、外部電極に焼結金属層形成用ペーストを塗布した後、焼結させて焼結金属層を形成することができる。
【0139】
焼結金属層形成用ペーストは、導電性金属とガラスとを含むことができる。導電性金属とガラスに関する説明は上述した通りであるので、繰り返しの説明は省略する。また、焼結金属層形成用ペーストは、選択的に、バインダー、溶媒、分散剤、可塑剤、酸化物粉末などを含むことができる。バインダーは、例えば、エチルセルロース、アクリル、ブチラール(butyral)などを使用することができ、溶媒は、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエンなどの有機溶媒や水系溶媒を使用することができる。
【0140】
焼結金属層形成用ペーストをキャパシタボディ110の外面に塗布する方法としては、ディップ法、スクリーン印刷などの各種印刷法、ディスペンサなどを用いた塗布法、スプレーを用いた噴霧法などを使用することができる。焼結金属層形成用ペーストは、少なくともキャパシタボディ110の第3面および第4面に塗布され、選択的に第1外部電極および第2外部電極のバンド部が形成される第1面、第2面、第5面または第6面の一部にも塗布される。
【0141】
以後、焼結金属層形成用ペーストが塗布されたキャパシタボディ110を乾燥させ、700℃~1000℃の温度で0.1時間~3時間焼結させて焼結金属層を形成する。
【0142】
選択的に、得られたキャパシタボディ110の外面に、伝導性樹脂層形成用ペーストを塗布した後、硬化させて伝導性樹脂層を形成することができる。
【0143】
伝導性樹脂層形成用ペーストは、樹脂、および選択的に導電性金属または非伝導性フィラーを含むことができる。導電性金属と樹脂に関する説明は上述した通りであるので、繰り返しの説明は省略する。また、伝導性樹脂層形成用ペーストは、選択的に、バインダー、溶媒、分散剤、可塑剤、酸化物粉末などを含むことができる。バインダーは、例えば、エチルセルロース、アクリル、ブチラール(butyral)などを使用することができ、溶媒は、テルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエンなどの有機溶媒や水系溶媒を使用することができる。
【0144】
一例として、伝導性樹脂層の形成方法は、伝導性樹脂層形成用ペーストにキャパシタボディ110をディッピングして形成した後、硬化させるか、伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディ110の表面にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などで印刷するか、伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディ110の表面に塗布した後、硬化させて形成することができる。
【0145】
次に、伝導性樹脂層の外側にメッキ層を形成する。
【0146】
一例として、メッキ層は、メッキ法によって形成され、スパッタまたは電解メッキ(electric deposition)によって形成されてもよい。
【0147】
以下、実施例を通じて上述した実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、権利範囲を制限するものではない。
【0148】
(積層セラミックキャパシタの製造)
実施例1~7および比較例1~6
BaCO粉末およびTiO粉末を混合(TiO 1モル対比BaCO 0.995モル)してチタン酸バリウムの主成分粉末を準備し、チタン酸バリウムの主成分粉末と五酸化二リン(P)を共に混合した。この時、五酸化二リン(P)は前記チタン酸バリウムの主成分粉末100モル部に対して下記表1の含有量で混合した。混合は、ビーズミルを用いて水と共に湿式混合した。次に、混合して得られた混合物を乾燥させ、凝集した混合物を乾式粉砕した。次に、乾式粉砕して得られた粉砕物を常圧下で950℃で3時間か焼(calcination)した。次に、か焼して得られたか焼物を湿式粉砕した後、得られた粉砕物を乾燥させ、乾式粉砕して誘電体粉末を製造した。
【0149】
製造された誘電体粉末、そして副成分粉末として酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化テルビウム(Tb)、酸化マンガン(MnO)、酸化バナジウム(V)、炭酸バリウム(BaCO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)および炭酸カルシウム(CaCO)を下記表1の組成で混合して誘電体スラリーを製造した。この時、各副成分粉末は、前記チタン酸バリウムの主成分粉末100モル部に対する含有量で混合された。この時、混合は、ジルコニウムボール(ZrO- ball)を分散媒として用いて、エタノール/トルエンと湿潤分散剤(wetting dispersant)およびバインダーとしてポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)樹脂を共に投入した後、機械的ミリング(milling)して行われた。
【0150】
製造された誘電体スラリーをヘッド吐出方式のオンロール(on roll)成形コーター(coater)を用いて誘電体グリーンシートを製造した。
【0151】
誘電体グリーンシートの表面にニッケル(Ni)を含む導電性ペースト層を印刷し、導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシート(横×縦×高さ=3.2mm×2.5mm×2.5mm)を積層および圧着して誘電体グリーンシート積層体を製造した。
【0152】
誘電体グリーンシート積層体を400℃以下、窒素雰囲気で可塑工程を経て、焼成温度1300℃以下、水素濃度1.0%H以下の条件で焼成した。
【0153】
次に、外部電極、メッキなどの工程を経て、積層セラミックキャパシタを製造した。
【0154】
【表1】
【0155】
評価1:ICP分析
実施例1~7および比較例1~6で製造された積層セラミックキャパシタの誘電体層に対してICP(誘導結合プラズマ)分析を行って、誘電体層内のリン(P)元素の含有量を確認して、その結果を下記表2に示した。
【0156】
ICP分析は、実施例1~7および比較例1~6で製造された積層セラミックキャパシタをそれぞれ10個ずつ準備し、準備された積層セラミックキャパシタの誘電体層に対して、Quartzチャンバで、ICP-OES(inductively coupled plasma-optical emission spectrometry)のAVIO500(Perkin Elmer)の装置を用いて、例えば、プラズマガスフロー(plasma gas flow)12L/min、補助ガスフロー(auxiliary gas flow)0.2L/min、ネブライザーフロー(nebulizer flow)0.5L/min、プラズマRFパワー(power)1400W、プラズマモードAxialの条件で測定した。
【0157】
下記表2中、リン(P)元素の含有量は、誘電体層内のチタン酸バリウム系の主成分100モル部を基準として示し、最大値および最小値とこれらの平均値で示した。
【0158】
【表2】
【0159】
表2を参照すれば、一実施形態による積層セラミックキャパシタは、誘電体層内にリン(P)元素がチタン酸バリウム系の主成分100モル部に対して0.006モル部~0.23モル部含まれることを確認できる。
【0160】
評価2:SEM分析
実施例1~7および比較例1~6で製造された積層セラミックキャパシタに対してSEM(走査電子顕微鏡)分析を行って、これから誘電体層内の誘電体結晶粒(grain)の大きさおよびばらつきを確認して、その結果を下記表3に示した。
【0161】
SEM分析は次のように行われた。積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディ110のW軸およびT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2地点まで研磨(polishing)し、固定後、真空雰囲気チャンバー内維持して、誘電体層111と内部電極層121、122との交差するアクティブ部を観察できるように断面サンプルを得た。次に、断面サンプルのアクティブ部をイオンミリングしてSEMで測定した。SEMはthermofisher scientific社のVerios G4製品を用い、測定条件は10kV、0.2Na、分析倍率100倍である。
【0162】
測定された断面サンプルのSEMイメージにおいて、100個の誘電体結晶粒(grain)の最大長軸を測定してサイズ分布累積曲線を作成し、誘電体結晶粒の大きさD10、D50およびD90をそれぞれ計算した。この時、D10、D50およびD90は、サイズ分布累積曲線においてそれぞれ10%、50%および90%となる地点での大きさを意味する。
【0163】
下記表3中、誘電体結晶粒の大きさ変動係数(CV)は下記数式1によって計算された。
【0164】
[数式1]
大きさ変動係数(%)={大きさの標準偏差(σ)/平均}×100
(前記数式1中、大きさの標準偏差(σ)は、偏差の二乗の平均の平方根である。)
【0165】
【表3】
【0166】
表3を通して、一実施形態により誘電体層内にリン(P)元素が0.006モル部~0.23モル部含まれている実施例1~7の場合、誘電体結晶粒の大きさ変動係数が比較例1~6に比べて低いことが分かる。これから、一実施形態による積層セラミックキャパシタは、誘電体層内に誘電体結晶粒が均一に存在することが分かる。
【0167】
評価3:耐電圧特性
実施例1~7および比較例1~6で製造された積層セラミックキャパシタに対して絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage、BDV)を測定して、その結果を下記表4に示した。
【0168】
絶縁破壊電圧(BDV)は、実施例1~7および比較例1~6で製造された積層セラミックキャパシタをそれぞれ50個ずつ準備し、keithely測定器2410モデルを用いて、0Vから1.00000Vずつ1100Vまでスイープ(sweep)方式で電圧を印加し、電流値が20mAとなる瞬間の電圧値を絶縁破壊電圧値として測定した。絶縁破壊電圧はシリコーンオイルバス(bath)内で測定した。
【0169】
下記表4中、測定されたBDVの最小値および平均値、そしてBDVばらつきを示した。BDVばらつきは下記数式2によって計算された。
【0170】
[数式2]
ばらつき(%)={標準偏差/平均}X100
(前記数式2中、標準偏差は、偏差の二乗の平均の平方根である。)
【0171】
【表4】
【0172】
表4を通して、一実施形態により誘電体層内にリン(P)元素が0.006モル部~0.23モル部含まれている実施例1~7の場合、絶縁破壊電圧が高く、ばらつきが低くて耐電圧特性に優れていることが分かる。これに対し、比較例1および2の場合、実施例1~7の場合より絶縁破壊電圧が低く、ばらつきも高くなり、比較例6の場合、絶縁破壊電圧が低いことが分かる。一方、比較例3~5の場合、耐電圧特性には優れているが、後述する評価4に示すように、高温苛酷信頼性および耐湿信頼性が低下することが分かる。
【0173】
評価4:信頼性
実施例1~7および比較例1~6で製造された積層セラミックキャパシタに対して高温苛酷信頼性(HALT)および耐湿信頼性を測定して、その結果を下記表5に示した。
【0174】
具体的には、実施例1~7および比較例1~6で製造された積層セラミックキャパシタをそれぞれ40個ずつ準備して測定基板に実装し、高温苛酷信頼性(HALT)は、ESPEC(PV-222、HALT)装置を用いて150℃、150時間および100Vの条件で測定し、耐湿信頼性は、ESPEC(PR-3J、8585)装置を用いて85℃、相対湿度(R.H.)85%、32Vおよび24時間の条件で測定した。
【0175】
【表5】
【0176】
表5を通して、一実施形態により誘電体層内にリン(P)元素が0.006モル部~0.23モル部含まれている実施例1~7の場合、比較例1~6に比べて高温苛酷信頼性および耐湿信頼性に優れていることが分かる。
【0177】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0178】
100:積層セラミックキャパシタ
110:キャパシタボディ
111:誘電体層
121:第1内部電極
122:第2内部電極
131:第1外部電極
132:第2外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6