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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006996
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】バイオフィルム除去剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/64 20060101AFI20250109BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20250109BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20250109BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20250109BHJP
   A01N 41/04 20060101ALI20250109BHJP
   C07C 211/62 20060101ALN20250109BHJP
   C07C 305/06 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
C11D1/64
C11D1/62
C11D3/48
A01N33/12
A01N41/04 Z
C07C211/62
C07C305/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108099
(22)【出願日】2023-06-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 詩歩
(72)【発明者】
【氏名】雉鳥 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】小寺 孝範
【テーマコード(参考)】
4H003
4H006
4H011
【Fターム(参考)】
4H003AB27
4H003AB31
4H003AE05
4H003BA12
4H003DA01
4H003DA05
4H003EA03
4H003EB14
4H003ED02
4H003FA34
4H006AA03
4H006AB03
4H006AB68
4H006AB70
4H011AA02
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB07
4H011DA13
(57)【要約】
【課題】対象物品、特に繊維製品に付着したバイオフィルムの除去性に優れる、バイオフィルム除去剤組成物、及びそれを用いたバイオフィルムの除去方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分、及び(b)成分を含有し、(b)成分として、一般式(b1)中のR1bの炭素数が14以上22以下である化合物(以下、(b-2)成分という)を含む場合、(b-2)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(a)/(b-2)が0.30以上である、バイオフィルム除去剤組成物。
(a)成分:下記一般式(a1)で表される長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩
(b)成分:下記一般式(b1)で表される化合物
1b-O-[(EO)]-SOM (b1)
[一般式(b1)中、R1bは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、rはEOの平均付加モル数であり、0以上25以下の数であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、及び(b)成分を含有し、(b)成分として、一般式(b1)中のR1bの炭素数が14以上22以下である化合物(以下、(b-2)成分という)を含む場合、(b-2)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(a)/(b-2)が0.30以上である、バイオフィルム除去剤組成物。
(a)成分:下記一般式(a1)で表される化合物
【化1】

[一般式(a1)中、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、炭素数6以上12以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Xは陰イオンである。]
(b)成分:下記一般式(b1)で表される化合物
1b-O-[(EO)]-SOM (b1)
[一般式(b1)中、R1bは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、rはEOの平均付加モル数であり、0以上25以下の数であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。]
【請求項2】
(b)成分として、一般式(b1)中のR1bの炭素数が8以上12以下である化合物(以下、(b-1)成分という)を含む、請求項1に記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項3】
(b-1)成分のrが1.5以上である、請求項2に記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項4】
(b-1)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(a)/(b-1)が1未満である、請求項2に記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項5】
繊維製品用である、請求項1~4の何れか1項に記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項にバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの除去方法。
【請求項7】
前記対象物品が繊維製品である、請求項6に記載のバイオフィルムの除去方法。
【請求項8】
下記(a)成分、及び(b)成分を含有し、(b)成分として、一般式(b1)中のR1bの炭素数が14以上22以下である化合物(以下、(b-2)成分という)を含む場合、(b-2)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(a)/(b-2)が0.30以上である、処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの除去方法。
(a)成分:下記一般式(a1)で表される化合物
【化2】

[一般式(a1)中、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、炭素数6以上12以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Xは陰イオンである。]
(b)成分:下記一般式(b1)で表される化合物
1b-O-[(EO)]-SOM (b1)
[一般式(b1)中、R1bは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、rはEOの平均付加モル数であり、0以上25以下の数であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム除去剤組成物、及びバイオフィルムの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物品へ菌が一度付着すると、対象物品に付着した菌が増殖し、バイオフィルムを形成する。バイオフィルムは生物膜又はスライムとも言われ、一般に菌などの微生物が物質の表面に付着して増殖する際に、微生物が産生する多糖、タンパク質及び核酸などの高分子物質により微生物を包み込むように形成された3次元構造体を指す。
バイオフィルムは、個々の一般生活者にとっても様々な場面で問題となっている。例えば、台所、洗面台やお風呂場の排水口近辺など家庭内の水回り環境では、不快なぬめり汚れ、悪臭などの原因となっている。またこうした直接的な水環境部位だけでなく俎板の傷部や食器洗浄用スポンジの内部や洗濯槽、更には衣服、台拭き、雑巾、足拭きマット等のファブリック製品など、水や湿気と汚れが共存する場面においてはバイオフィルムが形成され、問題を生じ易い。
また、衣料等の繊維製品の洗浄には、各種界面活性剤を配合した洗浄剤が広く用いられている。近年、生活者の衛生意識の高まりに伴い、繊維製品の表面に付着した菌やウイルスに関心も高まってきている。そのため生活者は、菌が繁殖し易い靴下や汗のかいた衣類を洗浄液にしばらく浸け置いたり、消毒剤や漂白剤を繊維製品用洗浄剤と併用したりするなど、余分な手間やコストをかけて洗浄を行っている。
【0003】
特許文献1には、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、及びアルキルエーテルカルボン酸塩を含有する、ゲルまたは液体のいずれかの殺菌性軽量食器用洗剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5728667号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象物品、特に繊維製品に付着したバイオフィルムは、バイオフィルムを構成する高分子が各種基剤から菌を守る保護バリアとして機能する為、その除去は非常に困難である。
本発明は、対象物品、特に繊維製品に付着したバイオフィルムの除去性に優れる、バイオフィルム除去剤組成物、及びそれを用いたバイオフィルムの除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分、及び(b)成分を含有し、(b)成分として、一般式(b1)中のR1bの炭素数が14以上22以下である化合物(以下、(b-2)成分という)を含む場合、(b-2)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(a)/(b-2)が0.30以上である、バイオフィルム除去剤組成物。
(a)成分:下記一般式(a1)で表される化合物
【0007】
【化1】
【0008】
[一般式(a1)中、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、炭素数6以上12以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Xは陰イオンである。]
(b)成分:下記一般式(b1)で表される化合物
1b-O-[(EO)]-SOM (b1)
[一般式(b1)中、R1bは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、rはEOの平均付加モル数であり、0以上25以下の数であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。]
【0009】
また本発明は、本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの除去方法に関する。
【0010】
また本発明は、前記(a)成分、及び(b)成分を含有し、(b)成分として、一般式(b1)中のR1bの炭素数が14以上22以下である化合物(以下、(b-2)成分という)を含む場合、(b-2)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(a)/(b-2)が0.30以上である、処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの除去方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象物品、特に繊維製品に付着したバイオフィルムの除去性に優れる、バイオフィルム除去剤組成物、及びそれを用いたバイオフィルムの除去方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物、及びそれを用いたバイオフィルムの除去方法が、対象物品、特に繊維製品に付着したバイオフィルムの除去性に優れる理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
バイオフィルムを構成する高分子の一種である細胞外多糖は、各種基剤から菌を守る保護バリアとして機能する為、バイオフィルムを除去することは非常に困難である。本発明では、(a)成分である特定のカチオン界面活性剤と(b)成分である特定のアニオン界面活性剤を併用することで、この細胞外多糖の緻密な構造を緩和し、分散させることでバイオフィルム除去を可能にしていると考えている。
しかしながら、(b-2)成分は、は、(a)成分と強いコンプレックスを形成することで互いが相殺し、バイオフィルム除去効果が消失すると考えている。このような強いイオンコンプレックスは、細胞外多糖への作用性が低下するため、バイオフィルム除去剤組成物に含まれる(b-2)成分が少ないほど、バイオフィルム除去効果が高くなると考えている。
【0013】
[バイオフィルム除去剤組成物]
<(a)成分>
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、(a)成分として、下記一般式(a1)で表される化合物を含有する。
【0014】
【化2】
【0015】
[一般式(a1)中、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、炭素数6以上12以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Xは陰イオンである。]
【0016】
(a1)成分である一般式(a1)の化合物において、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、バイオフィルム除去の観点から、炭素数6以上、好ましくは8以上、そして、12以下、好ましくは10以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、好ましくは直鎖のアルキル基である。バイオフィルム除去の観点から、R1a及びR2aは互いに同一であることが好ましい。
3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、及びプロピル基から選ばれる基が挙げられる。
は陰イオンである。陰イオンとしては、バイオフィルム除去の観点から、ハロゲンイオン又は炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオンが好ましい。ハロゲンイオンとしては、例えばクロルイオン、ブロモイオン、又はヨウ素イオンが挙げられる。Xはバイオフィルム除去の観点から、クロルイオンが好ましい。また、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオンとしては、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、又はプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0017】
(a)成分は1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0018】
<(b)成分>
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、(b)成分として、下記一般式(b1)で表される化合物を含有する。
1b-O-[(EO)]-SOM (b1)
[一般式(b1)中、R1bは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、rはEOの平均付加モル数であり、0以上25以下の数であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。]
【0019】
(b)成分は、バイオフィルム除去の観点から、一般式(b1)中のR1bの炭素数が8以上12以下である化合物(以下、(b-1)成分という)を含むことが好ましい。
(b-1)成分の一般式(b1)の化合物において、R1bは、バイオフィルム除去の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、12以下の炭化水素基、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、更に好ましくは直鎖のアルキル基である。
rはEOの平均付加モル数であり、バイオフィルム除去の観点から、0以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、そして、25以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下の数である。
Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンが挙げられ、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)としては、カルシウムイオン、又はマグネシウムイオンが挙げられ、有機アンモニウムイオンとしては、炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
【0020】
(b)成分は、一般式(b1)中のR1bの炭素数が14以上22以下である化合物(以下、(b-2)成分という)を含んでよいが、バイオフィルム除去の観点から、その含有量は制限される。
(b-1)成分の一般式(b1)の化合物において、R1bは、炭素数14以上、そして、22以下の炭化水素基、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、更に好ましくは直鎖のアルキル基である。
rはEOの平均付加モル数であり、バイオフィルム除去の観点から、0以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、そして、25以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下の数である。
Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンが挙げられ、アルカリ土類金属イオン(1/2原子)としては、カルシウムイオン、又はマグネシウムイオンが挙げられ、有機アンモニウムイオンとしては、炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
【0021】
(b)成分は1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0022】
<組成等>
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、(a)成分を、バイオフィルム除去の観点から、組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下含有する。
本発明において、(a)成分との質量は、クロル塩に換算した値を用いるものとする。
【0023】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、(b)成分を、バイオフィルム除去の観点から、組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、、より更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは12質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下含有する。
本発明において、(b)成分の質量は、ナトリウム塩に換算した値を用いるものとする。
【0024】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、バイオフィルム除去の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.06以上、より更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは1未満、より好ましくは0.99以下、更に好ましくは0.97以下、より更に好ましくは0.95以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下である。
【0025】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、(b-1)成分を、バイオフィルム除去の観点から、組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは12質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下含有する。
【0026】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、(b-2)成分を含む場合、(b-2)成分を、バイオフィルム除去の観点から、組成物中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下含有する。
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、バイオフィルム除去の観点から、(b-2)成分を含有しないことが好ましい。
【0027】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物中、(b-1)成分を含む場合、(a)成分の含有量と(b-1)成分の含有量との質量比(a)/(b-1)は、バイオフィルム除去の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.06以上、より更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.97以下、更に好ましくは0.95以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下である。
【0028】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物中、(b-2)成分を含む場合、(a)成分の含有量と(b-2)成分の含有量との質量比(a)/(b-2)は、バイオフィルム除去の観点から、0.30以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは1以上、そして、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは5以下である。
【0029】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、その他の成分として、例えば、水溶性溶剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、着色剤、香料、ハイドロトロープ剤、ポリマー等の再汚染防止剤及び分散剤、酵素、抗菌剤、酸化防止剤、消泡剤等(但し、(a)成分、(b)成分に該当するものは除かれる。)を含有するとバイオフィルム除去を促進することができる。
【0030】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、水を含有する。水は、イオン交換水、水道水、精製水などを用いることができる。水は、組成物の残部として、組成物全体の組成が100質量%となるような量で用いることができる。
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、水を、組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下含有する。
【0031】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物の25℃におけるpHは、バイオフィルム除去の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは6以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。該pHは、ガラス電極を用いて25℃で測定した値である。具体的には、以下の方法で測定されたものである。
<pHの測定方法>
Consort製multi-parameter analyser C3010にpH電極(SI Analytics製BlueLine 17 pH)をあらかじめReagecon pH4.000 High Resolution Colour Coded Buffer Solution、ReageconpH 7.000 High Resolution Colour Coded Buffer Solutionで校正し、イオン交換水で十分すすいでおく。温度を25℃に調整した洗浄剤組成物に、上記の通り校正、洗浄したpH電極を入れ、pHメーターのAUTO HOLDモードを用いて、測定値が一定になるまで測定する。
【0032】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、(a)成分、及び(b)成分を配合してなるバイオフィルム除去剤組成物であってよく、更に水、やその他成分を配合してよい。このバイオフィルム除去剤組成物には、本発明のバイオフィルム除去剤組成物で記載した事項を適宜適用することができ、前記の各成分の含有量、及び各質量比を、各成分の配合量に置き換えて適用することができる。
【0033】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、繊維製品用、又は硬質物品用として好適に用いることができ、より好ましくは繊維製品用として用いることができる。
【0034】
繊維製品の繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックスなど)、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエートなど)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレンなど)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(木綿、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)等が例示される。
本発明において繊維製品とは、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、寝具、寝具用の繊維製品(シーツ、枕カバーなど)、ニット、靴下、下着、タイツ、マスク等の製品を意味する。好ましい繊維製品は織物、編み物等の織布及び織った繊維製品であり、また、バイオフィルム除去の観点から、好ましい繊維製品は疎水性繊維を含む繊維製品である。
【0035】
硬質物品としては、食器、台所周りの硬質物品、及び/又は、浴室、トイレ周り、フロアなどの住環境の硬質物品、排水溝、配水管、食品製造または飲料製造プラント、産業用の冷却タワー等の冷却水系、内視鏡、カテーテル、人口透析等の医療機器等の硬質物品が挙げられる。
硬質物品の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチック(シリコーン樹脂などを含む)、金属、陶器、木、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
[バイオフィルムの除去方法]
本発明は、本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液(以下、本発明の処理液ともいう)を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの除去方法に関する。
本発明の処理液は、本発明のバイオフィルム除去剤組成物を水で希釈して調製されるものであるから、(a)成分と(b)成分を含有するものである。
すなわち、本発明は、(a)成分、及び(b)成分を含有し、(b)成分として、一般式(b1)中のR1bの炭素数が14以上22以下である化合物(以下、(b-2)成分という)を含む場合、(b-2)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(a)/(b-2)が0.30以上である、処理液(以下、本発明の処理液ともいう)を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる、バイオフィルムの除去方法に関する。また前記本発明の処理液は水を含有する。
本発明のバイオフィルムの除去方法は、本発明のバイオフィルム除去剤組成物又はそれを水で希釈した本発明の処理液を用いて行い、本発明のバイオフィルム除去剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。
【0037】
本発明のバイオフィルムの除去方法の対象物品は、繊維製品、又は硬質物品、好ましくは繊維製品である。
対象物品である繊維製品、及び硬質物品の態様は、本発明のバイオフィルム除去剤組成物で記載した態様と同じである。
【0038】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液をバイオフィルムが存在する対象物品に接触させる方法としては、バイオフィルムが存在する、又は存在すると考えられる対象物品に、本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、噴霧、又は塗布する方法や、本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液に対象物品、例えば繊維製品を浸漬させる方法が挙げられる。また本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を不織布に含侵させて、対象物品に接触させてもよい。
【0039】
対象物品に、本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、噴霧、又は塗布する場合、本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、スプレイヤーを具備する容器に充填して、液滴状又は泡状にして噴霧したり、容器から本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を対象物品に流して、はけ等により塗布したりすればよい。
スプレイヤーを具備する容器は、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置、噴射剤を用いるエアゾール等が挙げられる。
前記スプレイヤーを具備する容器は、内容物を液滴状又は泡状にして噴霧することができるトリガー式スプレーが好ましく、内容物を液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレー又は泡を形成する機構(泡形成機構)を備えたトリガー式スプレーがより好ましい。
【0040】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液に対象物品、例えば繊維製品を浸漬させる場合、浸漬中の対象物品と本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液は静置してもよく、撹拌してもよい。撹拌する場合には、手で撹拌してもよく、回転型攪拌機を用いてもよい。回転型攪拌機とは、対象物品と本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、ある回転軸の回りに回転させて撹拌を行う機器である。回転型攪拌機は一定方向のみの撹拌を行ってもよく反対方向の撹拌を行っても良い。また、攪拌は、連続又は間欠で行うことができる。
使用者が入手できる回転型攪拌機として、例えば、パルセーター型洗濯機、アジテータ型洗濯、又はドラム型洗濯機が挙げられる。
本発明のバイオフィルムの除去方法は、本発明のバイオフィルム除去剤組成物を水で希釈した処理液にバイオフィルムが存在する繊維製品を浸漬させて、回転型攪拌機を用いて撹拌する方法が好ましい。
【0041】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物を水で希釈して本発明の処理液を調製する場合、希釈倍率は、例えば、バイオフィルム除去の観点から、100000倍以下、更に50000倍以下、更に10000倍以下、更に3000倍以下、そして、10倍以上、更に50倍以上、更に100倍以上である。
【0042】
本発明の処理液中の(a)成分の含有量は、バイオフィルム除去の観点から、好ましくは0.001ppm以上、より好ましくは0.01ppm以上、更に好ましくは0.1ppm以上、更に1ppm以上、そして、好ましくは150000ppm以下、より好ましくは100000ppm以下、更に好ましくは50000ppm以下、更に10000ppm以下、更に5000ppm以下、更に1000ppm以下、更に500ppm以下、更に100ppm以下、更に50ppm以下である。
【0043】
本発明の処理液中の(b)成分の含有量は、バイオフィルム除去の観点から、好ましくは0.001ppm以上、より好ましくは0.01ppm以上、更に好ましくは0.1ppm以上、更に1ppm以上、そして、好ましくは5000000ppm以下、より好ましくは1000000ppm以下、更に好ましくは500000ppm以下、更に100000ppm以下、更に50000ppm以下、更に10000ppm以下、更に5000ppm以下、更に1000ppm以下、更に500ppm以下、更に100ppm以下、更に80ppm以下である。
【0044】
本発明の処理液中、(b-1)成分を含む場合、(b-1)成分の含有量は、バイオフィルム除去の観点から、好ましくは0.001ppm以上、より好ましくは0.01ppm以上、更に好ましくは0.1ppm以上、、更に1ppm以上、そして、好ましくは5000000ppm以下、より好ましくは1000000ppm以下、更に好ましくは500000ppm以下、更に100000ppm以下、更に50000ppm以下、更に10000ppm以下、更に5000ppm以下、更に1000ppm以下、更に500ppm以下、更に100ppm以下、更に80ppm以下である。
【0045】
本発明の処理液中、(b-2)成分を含む場合、(b-2)成分の含有量は、バイオフィルム除去の観点から、5000000ppm以下、より好ましくは1000000ppm以下、更に好ましくは500000ppm以下、更に100000ppm以下、更に50000ppm以下、更に10000ppm以下、更に5000ppm以下、更に1000ppm以下、更に500ppm以下、更に100ppm以下、更に50ppm以下である。
本発明の処理液は、バイオフィルム除去の観点から、(b-2)成分を含まないことが好ましい。
【0046】
本発明の処理液において、本発明のバイオフィルム除去剤組成物において記載した各成分の質量比の範囲は、本発明の処理液中の各成分の質量比の範囲にそのまま適用できる。
【0047】
本発明の処理液のpHは、バイオフィルム除去の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは6以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。このpHは、本発明の処理液の温度が25℃のpHであってよい。pHの測定方法は前記した方法と同じである。
【0048】
本発明の処理液の調製に用いる水の硬度は、バイオフィルム除去の観点から、ドイツ硬度で、好ましくは0°dH以上、より好ましくは1°dH以上、更に好ましくは3°dH以上、そして、好ましくは30°dH以下、より好ましくは25°dH以下、更に好ましくは20°dH以下、より更に好ましくは10°dH以下、更に5°dH以下である。
また、本発明の処理液の硬度が前記範囲であってよい。
【0049】
ここで、本明細書におけるドイツ硬度(°dH)とは、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°dH(1°dH=17.8ppm)で表したものを指す。
このドイツ硬度のためのカルシウム及びマグネシウムの濃度は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を使用したキレート滴定法で求められる。
本明細書における水のドイツ硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/l EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/l水溶液(滴定用溶液、0.01 M EDTA-2Na、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT、(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mlに溶解し、イオン交換水で全量を1000mlとした溶液)
〔硬度の測定〕
(1)試料となる水20mlをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2ml添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5ml添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/l EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°dH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/l EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/l EDTA・2Na溶液のファクター
【0050】
本発明の処理液にバイオフィルムが存在する繊維製品を浸漬させる場合、繊維製品を浸漬(接触)させる時間は、バイオフィルム除去の観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは1日以下、より好ましくは15時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
浸漬後は、繊維製品を水ですすぎ、乾燥させる。すすぎは、繊維製品の洗濯など、公知の方法に準じて水を用いて行えばよい。本発明のすすぎに用いられる水としては、特に限定されるものではないが、水道水、井戸水、イオン交換水、滅菌水、蒸留水等が挙げられる。
【0051】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、対象物品に噴霧、又は塗布する場合、本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液の使用量は特に限定されるものではないが、例えば、対象物品の単位面積1cmあたり、(a)成分の量として、バイオフィルム除去の観点から、好ましくは0.0001g以上、より好ましくは0.001g以上、そして、好ましくは100g以下、より好ましくは10g以下とすることができる。
【0052】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、対象物品に噴霧、又は塗布する場合、本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を、バイオフィルムが存在する対象物品に接触させる時間(放置させる時間)は、バイオフィルム除去の観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは1日以下、より好ましくは15時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
接触させた後は、そのまま乾燥させてもよいし、綺麗な布などで拭き取ってもよいし、水ですすいでもよい。すすぐ際は、スポンジなどで外力(物理的力)を掛けてもよく、単に水流ですすいでもよい。
【0053】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を不織布に含侵させて、対象物品に接触させる場合、不織布は、シート状に加工したものを用いることができ、不織布を構成する繊維は、前記した親水性繊維、及び疎水性繊維から選ばれる1種以上の繊維から構成されるものが好ましい。
対象物品に接触させる方法は、対象物品に本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を含侵させた不織布を押し当てて、対象物に損傷を与えない範囲で外力を加えて、不織布に含侵した本発明のバイオフィルム除去剤組成物、又はそれを水で希釈した処理液を対象物品に移して接触させればよく、擦る、揉む、叩く、のいずれであってもよい。
【実施例0054】
[配合成分]
実施例及び比較例では、以下の成分を用いた。
<(a)成分>
・Q-D08:ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、一般式(a1)中、R1a及びR2aが炭素数8のアルキル基であり、R3a及びR4aは、メチル基であり、Xはクロルイオンである化合物
・Q-D10ES:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、一般式(a1)中、R1a及びR2aが炭素数10のアルキル基であり、R3a及びR4aは、メチル基であり、Xはクロルイオンである化合物、商品名「コータミン D-10ES」、花王(株)製
・Q-D10ES:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、一般式(a1)中、R1a及びR2aが炭素数10のアルキル基であり、R3a及びR4aは、メチル基であり、Xはクロルイオンである化合物、商品名「コータミン D-10ES」、花王(株)製
<(b)成分>
・C12AS:ドデシル硫酸エステルナトリウム、一般式(b1)中、R1bは炭素数12のアルキル基、rが0、Mがナトリウムイオンである化合物、(b-1)成分、商品名「ドデシル硫酸ナトリウム」、東京化成工業(株)製
・C14AS:テトラデシル硫酸エステルナトリウム、一般式(b1)中、R1bは炭素数14のアルキル基、rが0、Mがナトリウムイオンである化合物、(b-2)成分、商品名「テトラデシル硫酸ナトリウム」、富士フィルム和光純薬(株)製
・C12ES(EO:1):ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、一般式(b1)中、R1bは炭素数12のアルキル基、rが1、Mがナトリウムイオンである化合物、(b-1)成分、花王(株)製
・C12ES(EO:2):ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、一般式(b1)中、R1bは炭素数12のアルキル基、rが2、Mがナトリウムイオンである化合物、(b-1)成分、花王(株)製
・C14ES(EO:1):ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸エステルナトリウム、一般式(b1)中、R1bは炭素数14のアルキル基、rが1、Mがナトリウムイオンである化合物、(b-2)成分、花王(株)製
・C14ES(EO:2):ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸エステルナトリウム、一般式(b1)中、R1bは炭素数14のアルキル基、rが2、Mがナトリウムイオンである化合物、(b-2)成分、花王(株)製
【0055】
[バイオフィルム除去剤組成物の調製]
表1~2に示すバイオフィルム除去剤組成物の調製方法は下記の通りである。200mL容量のガラス製ビーカーに長さ3cmのテフロン製スターラーピースを投入し、次にイオン交換水10g、表1~2に示す配合で(a)成分、(b)成分を投入し、100r/minで10分攪拌し、モノエタノールアミンもしくは塩酸でpHを8に調整し、全量が100gになるようにイオン交換水を追加した。100r/minで15分間撹拌した後、各バイオフィルム除去剤組成物とした。なお表1~2に各バイオフィルム除去剤組成物中、各成分の配合量はすべて有効分である。
【0056】
[バイオフィルム除去性評価]
バイオフィルム形成布の作製
Rhodotorula mucilaginosa(衣類分離株)とMethylobacterium variable(衣類分離株)のグリセロールストック液をポテトデキストロース寒天培地(Difco Laboratories社製)に塗抹し、30℃で2日間静置培養した。Moraxella osloensis(衣類分離株)のグリセロールストック液をSCD寒天培地(塩谷エムエス(株)製 SCD寒天培地「ダイゴ」、一般細菌検査用)に塗抹し、37℃で1日間静置培養した。それぞれ培養後の菌体をディスポループ(アズワン(株)製 ディスポループ10型)でかきとり、R2A培地(塩谷エムエス(株)製 R2A培地「ダイゴ」)へ懸濁させた。分光光度計((株)アペレ製 型番:PD-303S)を用いて各菌懸濁液の濁度(OD600)を測定し、R.mucilaginosaはOD600=0.2、M.variableとM.osloensisはOD600=0.01となるように菌液を希釈した。
3×3cmに裁断したヒラオリ木綿布(谷頭商店製 木綿2003)をオートクレーブ(PHC(株)製 高圧蒸気滅菌器 ラボ・オートクレーブ 型番:MLS-3781)で加圧滅菌した。滅菌後のヒラオリ木綿布をNo.6スクリュー管((株)マルエム製 スクリュー管瓶 No.6)へ入れ、上記3菌種の菌液をそれぞれ1mL、R2A培地を7mL添加した。蓋をして密栓し、小型恒温振とう培養器バイオシェーカー(TAITEC株式会社製 型番:BR-23FP)にて30℃、200rpmの条件で2日間振盪培養した。培養後のヒラオリ木綿布を新しいNo.6スクリュー管に移し、オートクレーブ滅菌済みイオン交換水10mLを添加した。小型恒温振とう培養器バイオシェーカーにて25℃、150prmで3分間振盪洗浄を行った。洗浄後のヒラオリ木綿布を安全キャビネット内で1時間風乾し、バイオフィルム形成布とした。
布上でのバイオフィルム形成は、布をピンセットで糸状にほぐし、その糸を染色し共焦点レーザスキャン顕微鏡(カールツァイス(株)製 LSM880 ZEN)で観察することで確認した。観察を行う糸は、生細胞染色用色素(株式会社同仁化学研究所製 C375-Cellstain(TM)-CFSE)、死細胞染色用色素(株式会社同仁化学研究所製 P378-Cellstain(TM)-PI solution)、セルロース染色用色素(シグマアルドリッチ社製 Calcofluor White染色液)、糖染色用色素(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 Lectin PNA From Arachis hypogaea(peanut),Alexa Fluor(TM)647 Conjugate)、糖染色用色素(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 Concanavalin Alexa Fluor(TM)647 Conjugate)で30分間染色した。
【0057】
(2)バイオフィルム除去試験
(バイオフィルム除去評価)
作製したバイオフィルム形成布を1.5×1.5cmに、滅菌済みヒラオリ木綿布を1.5×3cmに裁断した。裁断したバイオフィルム形成布1枚+滅菌済みヒラオリ布2枚の計3枚を重ね合わせ、5mLチューブ(エッペンドルフ株式会社製 エッペンドルフチューブ5.0mL 型番:0030 119.401)に入れた。そこに、表1~2の各バイオフィルム除去剤組成物をモデル水道水(4°dH)で3000倍に希釈した試験処理液3mLを加え、小型恒温振とう培養器バイオシェーカーにて25℃、150prmで10分間振盪洗浄を行い、これを洗い工程とした。洗い後の布を、モデル水道水3mLを入れた5mLチューブに移し、同様の条件で3分間振盪洗浄を行い、すすぎ工程とした。すすぎ後、バイオフィルム形成布のみを取り出し、安全キャビネット内で30分間風乾した。また各バイオフィルム除去剤組成物に代えてモデル水道水(4°dH)を試験処理液としたものについても同様の処理を行い、モデル水道水で処理後のバイオフィルム形成布を得た。
【0058】
(EPS(Extracellular Polysaccharide)の抽出)
風乾後のバイオフィルム形成布を、1.5Mの塩化ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製 塩化ナトリウム)水溶液600μLを入れた1.5mLチューブ(エッペンドルフ株式会社製 エッペンドルフチューブ1.5mL 型番:0030 125.150)に入れた。蓋を閉めて、冷氷中で2時間超音波洗浄機(日本エマソン(株)製 卓上超音波洗浄機 型番:2510JDTH)に入れ、布上に残存したEPSの抽出を行った。EPS(Extracellular Polysaccharide)はバイオフィルムの主成分である。キュートミキサー(東京理化器械(株)製 型番:CUTE MIXER CM-1000)で5分間液を撹拌した後、この液とバイオフィルム形成布をフィルター(ADVANTEC社製 型番:DISMIC-25CS)とシリンジ(テルモ(株)製 型番:SS-02SZ2.5ML)を用いて濾過した。濾液を2.0mLチューブ(エッペンドルフ(株)製 エッペンドルフチューブ2.0mL 型番:0030 121.597)に回収し、あらかじめ-30℃に冷却しておいたエタノール(富士フィルム和光純薬(株)製 エタノール(99.5))1.2mLを添加した。蓋を閉めて転倒混和し、-30℃で静置させてEPSを析出させた。冷却後、遠心分離機(エッペンドルフ社製 高速遠心機 型番:Centrifuge 5430)にて4℃、13000rpmの条件で15分間遠心分離を行い、上清を取り除いて1時間風乾した。風乾後のチューブに200μLのイオン交換水を添加し、キュートミキサーで5分間撹拌して、沈降したEPSをイオン交換水に溶解した。
【0059】
(EPSの定量)
前工程にて取得したEPS水溶液100μLをガラス試験管(コーニング社製 ディスポガラス試験管 型番:99445-16)に入れ、そこに5%のフェノール(富士フィルム和光純薬(株)製 フェノール)水溶液100μL添加した。ボルッテクスで3秒間撹拌を行った後、濃硫酸(富士フィルム和光純薬(株)製) 硫酸)500μLを加え、さらにボルテックス(アズワン(株)製 ボルテックスミキサー 型番:VTX-3000L)で3秒間撹拌を行った。30分間静置後、200μLを96wellプレート(AGCテクノグラス(株)製 型番:3815-012-MYPマイクロプレート)へ分注注し、反応液の吸光度(492nm)をマイクロプレートリーダー(TECAN社製 蛍光・吸光度・発光プレートリーダー 型番:infinite M200 PRO)で測定した。グルコース換算で定量したEPS残存量を元に、式(1)を用いてEPS除去率を算出した。EPS除去率が高い値ほどバイオフィルム除去性に優れることが言える。結果を表1、2に示す。
EPS除去率(%)=[(W1-W2)/W1]×100・・・(1)
W1:モデル水道水で処理後のバイオフィルム形成布のEPS残存量
W2:各試験処理液で処理後のバイオフィルム形成布のEPS残存量
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】