(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007032
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】浴槽及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47K 3/02 20060101AFI20250109BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20250109BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20250109BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20250109BHJP
B29K 101/10 20060101ALN20250109BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
A47K3/02
B29C44/00 A
B29C44/12
B29C44/36
B29K101:10
B29K105:04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108164
(22)【出願日】2023-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】523250496
【氏名又は名称】ワエストロ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108661
【氏名又は名称】タカラスタンダード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】古屋 民雄
(72)【発明者】
【氏名】村松 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】白井 秀紀
【テーマコード(参考)】
2D132
4F214
【Fターム(参考)】
2D132AA02
2D132AB02
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD05
4F214AG06
4F214AH49
4F214AR15
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB12
4F214UC02
(57)【要約】
【課題】浴槽本体の外表面に熱硬化性樹脂組成物を反応射出成型して断熱層を形成した浴槽を提供する。
【解決手段】浴槽本体と、前記浴槽本体の外表面上に形成された断熱層とを有する浴槽の製造方法であって、前記浴槽の外表面の形状に沿って形成された凹部を有する下型上に、前記浴槽本体を配置する工程と、前記浴槽本体上に、前記浴槽本体の内表面の形状に沿って形成された凸部を有する上型を配置する工程と、前記下型と前記浴槽本体の間に存在するキャビティ内に、熱硬化性樹脂組成物を射出する工程と、前記熱硬化性樹脂組成物を硬化させることで、前記浴槽本体の外表面上に、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる前記断熱層を形成する工程とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽本体と、前記浴槽本体の外表面上に形成された断熱層とを有する浴槽の製造方法であって、
前記浴槽の外表面の形状に沿って形成された凹部を有する下型上に、前記浴槽本体を配置する工程と、
前記浴槽本体上に、前記浴槽本体の内表面の形状に沿って形成された凸部を有する上型を配置する工程と、
前記下型と前記浴槽本体の間に存在するキャビティ内に、熱硬化性樹脂組成物を射出する工程と、
前記熱硬化性樹脂組成物を硬化させることで、前記浴槽本体の外表面上に、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる前記断熱層を形成する工程と
を有する
浴槽の製造方法。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物が、熱硬化性フォームである
請求項1に記載の浴槽の製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性フォームの発泡密度が、130~190kg/m3である
請求項2に記載の浴槽の製造方法。
【請求項4】
前記熱硬化性フォームが、硬質ウレタンフォームである
請求項2又は3に記載の浴槽の製造方法。
【請求項5】
前記下型の表面の少なくとも前記キャビティを形成する領域に、スチレン系樹脂を溶媒に溶解させた熱可塑性樹脂溶液を塗布する工程と、
前記下型を乾燥させて熱可塑性樹脂被膜を形成する工程と
をさらに有する
請求項1に記載の浴槽の製造方法。
【請求項6】
前記スチレン系樹脂が、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合樹脂(SAN樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、又はアクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合樹脂(AES樹脂)である
請求項5に記載の浴槽の製造方法。
【請求項7】
浴槽本体と、前記浴槽本体の外表面上に形成された熱硬化性フォームからなる断熱層とを有し、
前記熱硬化性フォームの発泡密度が、130~190kg/m3である
浴槽。
【請求項8】
前記熱硬化性フォームが、硬質ウレタンフォームである
請求項7に記載の浴槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バスルームの浴槽に入ったお湯が冷めてしまうと追い焚きをすることになるため、省エネルギー化の観点から、できるだけお湯を冷めにくくすることが求められている。その方法としては、バスルーム全体を保温する方法、浴槽の上に保温性の蓋を置くする方法などが考えられる。ただし、バスルーム全体を保温する方法では、全体として省エネルギー化を図ることは難しい。また、浴槽の上に保温性の蓋を置くする方法は、利用者の意識に頼ることになるので、効果が限定的である。そこで、これらの代わりに、又はこれらに加えて、浴槽本体の周囲に断熱材を設ける方法が検討されている。
【0003】
特許文献1には、浴槽本体をターンテーブル上に逆さに伏せた状態で、その浴槽本体裏面に、ポリウレタンフォーム等の保温材を成形する液状発泡原液を吹き付けることにより、当該浴槽本体裏面に保温材を形成する方法であって、上記テーブル上に伏せた浴槽本体の内面側空間の空気を、このテーブルに設けた吸引口を通じて排気して、浴槽本体を当該テーブルに対して吸着した状態で上記の吹き付け作業を行うことを特徴とする浴槽保温材の形成方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、上部周縁にフランジが一体形成された浴槽本体を台上に逆さに伏せた状態で、その浴槽本体裏面に、ポリウレタンフォーム等の保温材を成形する液状発泡原液を吹き付けることにより、当該浴槽本体裏面に保温材を形成する方法であって、吹き付けの作業台として、載置面が平面のパレットを使用し、かつ、そのパレット上に伏せた浴槽本体のフランジ部を、当該パレットに設けたクランプを用いて上記載置面に向けて押さえ付けた状態で、上記の吹き付け作業を行うことを特徴とする浴槽保温材の形成方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、熱硬化性樹脂によって形成された浴槽本体を準備する浴槽本体準備ステップと、未硬化の状態を有する熱硬化性樹脂が表面に設けられた断熱材を準備する断熱材準備ステップと、前記浴槽本体と前記断熱材とを、保持型に対し、前記浴槽本体の外側面が前記断熱材を介して前記保持型に対向する状態にセットするセットステップと、前記熱硬化性樹脂が硬化する温度を前記断熱材に付与しながら、前記浴槽本体と前記断熱材とを互いに加圧する状態に接触させることにより接合する接合ステップと、前記断熱材と接合された前記浴槽本体を前記保持型から脱型する脱型ステップと、を含むことを特徴とする浴槽の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-343567号公報
【特許文献2】特開平6-343568号公報
【特許文献3】特開2021-30615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1~2に記載された方法のように、浴槽本体にポリウレタンフォームを吹き付ける方法では、仕上がりにバラツキが生じやすく、保温性が安定しないことがあった。また、特許文献3に記載された方法のように、浴槽本体と断熱材をそれぞれ準備した後に両者を加圧接着させる方法では、工程が多いため生産効率が低く、また浴槽本体が内側に変形してしまう恐れもあった。
【0008】
そこで、本発明は、浴槽本体の外表面に熱硬化性樹脂組成物を反応射出成型して断熱層を形成した浴槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、浴槽本体と、前記浴槽本体の外表面上に形成された断熱層とを有する浴槽の製造方法であって、
前記浴槽の外表面の形状に沿って形成された凹部を有する下型上に、前記浴槽本体を配置する工程と、
前記浴槽本体上に、前記浴槽本体の内表面の形状に沿って形成された凸部を有する上型を配置する工程と、
前記下型と前記浴槽本体の間に存在するキャビティ内に、熱硬化性樹脂組成物を射出する工程と、
前記熱硬化性樹脂組成物を硬化させることで、前記浴槽本体の外表面上に、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる前記断熱層を形成する工程と
を有する
浴槽の製造方法である。
【0010】
本発明は、浴槽本体と、前記浴槽本体の外表面上に形成された熱硬化性フォームからなる断熱層とを有し、
前記熱硬化性フォームの発泡密度が、130~190kg/m3である
浴槽である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浴槽本体の外表面に熱硬化性樹脂組成物を反応射出成型して断熱層を形成した浴槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る浴槽を示す模式的斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る浴槽を示す模式的断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る浴槽の製造方法において、下から下型/浴槽本体/上型の順に配置される途中の状態を示す模式的断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る浴槽の製造方法において、下から下型/浴槽本体/上型の順に配置された状態を示す模式的断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る浴槽の製造方法において、下型と浴槽本体の間に存在するキャビティ内に断熱層を形成した状況を示す模式的断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る浴槽の製造方法において、浴槽本体と断熱層とを有する浴槽を脱型した状況を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る浴槽を
図1(斜視図)及び
図2(断面図)に示す。浴槽1は、
図1及び
図2に示すように、浴槽本体2と、浴槽本体2の外表面上に形成された断熱層3とを有する。
【0014】
浴槽本体2は、一般に、内部にお湯を貯めるための凹状の槽部2cと、槽部2cの上部から外側に向かって庇状に形成されたフランジ部2dを有している。浴槽本体2は、通常、強化繊維プラスチック(FRP)、人工大理石、ステンレス、ホーロー、木などで形成される。特に、強化繊維プラスチック又は人工大理石は、他の材料に比べて保温性が低いことから、強化繊維プラスチック又は人工大理石で形成された浴槽本体2の場合に、本発明を適用する効果が大きい。
【0015】
断熱層3は、浴槽本体2の外表面2b上に形成され、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。熱硬化性樹脂組成物は、反応射出成型(RIM成型)可能な液状物であればよく、その具体例としては、ウレタン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ポリエステル樹脂組成物、フェノール樹脂組成物等が挙げられる。高い保温性を実現する観点から、熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、軟質又は硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の熱硬化性フォームであることが好ましく、硬質ウレタンフォームがより好ましい。
【0016】
断熱層3を形成する熱硬化性フォーム(特に硬質ポリウレタンフォーム)の発泡密度は、130~190kg/m3であることが好ましい。熱硬化性フォームの発泡密度が130kg/m3以上であれば、機械的強度が高まることから、浴槽1の継続使用による変形が起きにくくなる。熱硬化性フォームの発泡密度が190kg/m3以下であれば、断熱性が高まることから、浴槽1の保温性能が向上する。熱硬化性フォームの発泡密度は155~185kg/m3であることがより好ましい。なお、熱硬化性フォームの発泡密度は、ウレタン材料のポリオール整泡剤の量により調整できる。
【0017】
次に、本発明の一実施形態に係る浴槽1の製造方法における工程について、
図3~
図6(いずれも断面図)を用いて説明する。
【0018】
まず、
図3(配置途中)及び
図4(配置後)に示すように、下型12/浴槽本体2/上型11が、下からこの順に配置される。より具体的には、下型12上に浴槽本体2を配置し、その浴槽本体2上に上型11を配置する。ここで、下型12は、その上面に、最終的に製造される浴槽1の外表面1bの形状に沿って形成された凹部12bを有する。したがって、
図4に示すように、下型12と浴槽本体2の間には、断熱層3を形成するためのキャビティ13が形成される。
【0019】
一方、上型11は、その下面に、浴槽本体2の内表面2a(=浴槽1の内表面1a)の形状に沿って形成された凸部11aを有する。すなわち、上型11と浴槽本体2の内表面2aは接触する。こうすることで、下型12と浴槽本体2の間に形成されたキャビティ13に熱硬化性樹脂組成物を射出・硬化させた場合に、熱硬化性樹脂組成物からの圧力により浴槽本体2が内側に変形してしまうことを抑えることができる。
【0020】
上型11及び下型12は、反応射出成型をするための金型となるものであり、アルミニウムのような金属製でもよく、合成樹脂製でもよい。下型12の凹部12bを形成する側面部は、その下部に位置する平面部と一体となっていてもよく、反応射出成型をするための金型として機能する限りにおいて分離していてもよい。また、上型11の凸部11aは、その上部に位置する平面部と一体となっていてもよく、反応射出成型をするための金型として機能する限りにおいて分離していてもよい。
【0021】
上型11及び下型12の表面(特に、下型12の表面の少なくともキャビティ13を形成する領域)は、複合メッキ皮膜(不図示)で覆われていることが好ましい。こうすることで、キャビティ13内に熱硬化性樹脂組成物を射出した際に、熱硬化性樹脂組成物の流れが良好になり、得られる断熱層3の表面に傷が付きにくくなり、断熱層3の型離れが容易になる。複合メッキ皮膜の厚さは、5~20μmであることが好ましい。
【0022】
複合メッキとしては、無電解ニッケル-PTFE複合メッキが好ましい。無電解ニッケル-PTFE複合メッキは、いわゆるテフロン(登録商標)メッキのことであり、無電解ニッケル皮膜中にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の微粒子を均一に分散共析させた皮膜が形成される。PTFEは、フッ素原子と炭素原子のみからなるフッ素樹脂(フッ化炭素樹脂)であり、化学的に安定で、耐熱性及び耐薬品性に優れる。また、PTFEの微粒子一個一個をマトリックスが固く保持し、そのマトリックスが金属であるため、素地とPTFEメッキの密着性は強固となる。なお、メッキ液に占めるPTFEの含有量は25~40容積%とすることが好ましい。
【0023】
さらに、下型12の表面の少なくともキャビティ13を形成する領域には、スチレン系樹脂からなる熱可塑性樹脂被膜(不図示)が形成されていることが好ましい。こうすることで、断熱層3の表面に熱可塑性樹脂被膜が転写され、熱可塑性樹脂被膜は下型12と容易に離型するため、下型12の表面に離型剤を塗布する必要がなくなる。もちろん、下型12の表面に離型剤を塗布しても構わないが、離型剤を塗布しなければ、断熱層3の脱脂、ペーパーやすりによるサンディング、及び発生したピンホールの修正加工をする必要がなくなる。
【0024】
熱可塑性樹脂被膜を形成する方法としては、下型12の表面の少なくともキャビティ13を形成する領域に、スチレン系樹脂を溶媒に溶解させた熱可塑性樹脂溶液を塗布し、下型13を乾燥させて熱可塑性樹脂被膜を形成することが好ましい。なお、熱可塑性樹脂溶液を塗布して熱可塑性樹脂被膜を形成する領域は、下型12の表面のキャビティ13を形成する領域のみでもよく、下型12の表面の全面でよい。また、上型11の表面に熱可塑性樹脂被膜が形成されていてもよい。熱可塑性樹脂被膜の厚さは、10~100μmが好ましく、20~60μmがより好ましい。
【0025】
スチレン系樹脂としては、溶媒に溶解しやすいことから、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合樹脂(SAN樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、アクリロ二トリル-エチレン-スチレン共重合樹脂(AES樹脂等が挙げられるが、中でもABS樹脂が好ましく、メッキグレードタイプのABS樹脂がより好ましい。溶媒としては、乾燥が容易であることから、メチルエチルケトン(MEK)やアセトン等のケトンが好ましい。熱可塑性樹脂溶液は、例えば、粉末状又はペレット状のABS樹脂をMEKに溶解させることで調製することができる。さらに、トルエン(シンナー)などにより、熱可塑性樹脂溶液の粘度を調整することもできる。
【0026】
その後、上型11と下型12を型締めし、下型12と浴槽本体2の間に存在するキャビティ13内に、熱硬化性樹脂組成物を射出し、その熱硬化性樹脂組成物を硬化させることで、浴槽本体2の外表面2b上に熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる断熱層3を形成する(
図5)。熱硬化性樹脂組成物の硬化は、例えば、図示しない加熱手段により上型11及び下型12を加熱することにより行うことができる。上型11及び下型12の温度は、40~80℃とすることが好ましい。
【0027】
その後、上型11と下型12の型開きして、浴槽本体2の外表面2b上に断熱層3が形成された浴槽1を取り出す(
図6)。特に、下型12の表面の少なくともキャビティ13を形成する領域に熱可塑性樹脂被膜を形成した場合、熱可塑性樹脂被膜は下型12と容易に離型するので、浴槽1を容易に取り出すことができる。その後、必要に応じてバリ取りを行う。
【0028】
以上のような本発明によれば、浴槽本体2の外表面に熱硬化性樹脂組成物を反応射出成型して断熱層3を形成した浴槽1が得られ、成形時に浴槽本体2が内側に変形してしまうことを抑えることができる。
【実施例0029】
<実施例1>
図1及び
図2に示す構造の浴槽1を、
図3~
図6に示す方法により製造した。具体的には、浴槽本体2として、市販の浴槽(タカラスタンダード製、商品名:キープクリーン浴槽)で用いている人工大理石製の浴槽本体2を準備し、凸部11aを有する上型11及び凹部12bを有する下型12の間に浴槽本体2を配置した。そして、下型12と浴槽本体2の間に形成されたキャビティ13に硬質ウレタンフォーム原液(三井化学製、商品名:アクトコールSK-2304/コスモネートCG-3200)を射出・硬化させることで、浴槽本体2の外表面2b上に厚さ20mmの断熱層3を形成した。断熱層3を形成する硬質ウレタンフォームの発泡密度は、130kg/m
3であった。
<実施例2>
断熱層3を形成する硬質ウレタンフォームの発泡密度を155kg/m
3としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、浴槽1を製造した。
<実施例3>
断熱層3を形成する硬質ウレタンフォームの発泡密度を180kg/m
3としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、浴槽1を製造した。
<実施例4>
断熱層3を形成する硬質ウレタンフォームの発泡密度を190kg/m
3としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、浴槽1を製造した。
<実施例5>
断熱層3を形成する硬質ウレタンフォームの発泡密度を200kg/m
3としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、浴槽1を製造した。
<比較例1>
凸部11aのない平板状の上型11を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、浴槽1を製造した。
<比較例2>
浴槽本体2の外表面2b上に硬質ウレタンフォームを吹き付けることで、厚さ約20mmの断熱層3を形成して浴槽1を製造した。なお、断熱層3を形成する硬質ウレタンフォームの発泡密度は30kg/m
3であった。
【0030】
<浴槽本体の変形>
実施例1~5及び比較例1~2で得られた浴槽1を目視にて観察し、浴槽本体2の変形の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0031】
<保温試験>
実施例1~5及び比較例1~2で得られた浴槽1の内部に、深さ約70%まで44℃程度のお湯を入れて、専用の蓋で塞いで20分以上放置した。その後、浴槽1内の湯温が40±2℃になった時点から2時間後における湯温を測定し、その温度変化(℃)を求めた。結果を表1に示す。
【0032】
<煮沸試験>
実施例1~5及び比較例1~2で得られた浴槽1で得られた浴槽1の内部に、深さ約80%まで水を入れた。その後、浴槽1内の水を投げ込みヒーターで加熱し、90℃以上で8時間保持した。なお、保持中の水位を一定に保つように適宜給水した。その後、浴槽1内のお湯を排水し、浴槽1の温度が常温になるまで放置した。これを12サイクル行った後の浴槽1の底面における変形量(mm)を求めた。結果を表1に示す。
【0033】
【0034】
以上のように、凸部11aを有する上型11を用いた実施例1~5で得られた浴槽1では、浴槽本体2の変形は見られなかったが、凸部11aのない平板状の上型11を用いた比較例1では、浴槽本体2の変形は見られた。また、断熱層3を構成する硬質ウレタンフォームの発泡密度が190kg/m3以下である実施例1~4で得られた浴槽1は、従来の吹き付け法で断熱層3を形成した比較例2で得られた浴槽1と、保温性能が同等以上であった。また、断熱層3を構成する硬質ウレタンフォームの発泡密度が130kg/m3以上である実施例1~5で得られた浴槽1は煮沸試験における変形が起きにくく、特に、断熱層3を構成する硬質ウレタンフォームの発泡密度が155kg/m3以上である実施例2~5で得られた浴槽1は、従来の吹き付け法で断熱層3を形成した比較例2で得られた浴槽1に比べて、煮沸試験における変形が起きにくかった。
前記スチレン系樹脂が、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合樹脂(SAN樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、又はアクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合樹脂(AES樹脂)である
請求項3に記載の浴槽の製造方法。
前記スチレン系樹脂が、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合樹脂(SAN樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、又はアクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合樹脂(AES樹脂)である
請求項3に記載の浴槽の製造方法。