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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007038
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20250109BHJP
   H01T 21/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01T13/20 E
H01T21/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108172
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】木村 順二
【テーマコード(参考)】
5G059
【Fターム(参考)】
5G059AA10
5G059CC02
5G059FF08
5G059FF14
(57)【要約】
【課題】絶縁体に設けたマークの視認性の向上と絶縁体の破壊の低減とを両立できるスパークプラグを提供する。
【解決手段】スパークプラグは、セラミック製の絶縁体を備え、絶縁体は、母材の表面が溶融した溶融部を含む。絶縁体の断面において、母材と溶融部との界面の長さを、界面の両端を結ぶ線分の長さで除した値は、1.1以上1.5以下である。絶縁体の断面において、母材と溶融部との界面が、溶融部の表面から離れる方向へ向かって突出する凸部を2つ以上含むものであると好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック製の絶縁体を備え、
前記絶縁体は、母材の表面が溶融した溶融部を含むスパークプラグであって、
前記絶縁体の断面において、
前記母材と前記溶融部との界面の長さを、前記界面の両端を結ぶ線分の長さで除した値は、1.1以上1.5以下であるスパークプラグ。
【請求項2】
前記絶縁体の断面において、前記界面は、前記溶融部の表面から離れる方向へ向かって突出する凸部を2つ以上含み、
前記凸部は、隣り合う前記凸部の谷を通る前記線分に平行な直線が前記界面を切り取る部分である請求項1記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記絶縁体の断面において、前記凸部の少なくとも1つは、前記線分の中点を通る前記線分に垂直な直線から離れた位置に存在する請求項2記載のスパークプラグ。
【請求項4】
前記絶縁体の断面において、前記凸部の少なくとも1つは、前記線分の長さの1/5の長さだけ前記界面の両端から前記線分に沿ってそれぞれ内側に入った部分を除く範囲に存在する請求項2又は3に記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
スパークプラグにマークを設ける技術として、セラミック製の絶縁体の外周に配置された主体金具にマークを付す代わりに、絶縁体にレーザビームを照射して絶縁体の表面にマークを付す先行技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-252441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術においてレーザビームのビーム強度を小さくするとマークの視認性が低下する傾向があり、ビーム強度を大きくすると絶縁体が破壊し易くなる傾向がある。先行技術はマークの視認性の向上と絶縁体の破壊の低減とを両立する点に改善の余地がある。
【0005】
本発明はこの要求に応えるためになされたものであり、マークの視認性の向上と絶縁体の破壊の低減とを両立できるスパークプラグの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のスパークプラグは、セラミック製の絶縁体を備え、絶縁体は、母材の表面が溶融した溶融部を含む。絶縁体の断面において、母材と溶融部との界面の長さを、界面の両端を結ぶ線分の長さで除した値は1.1以上1.5以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、母材の表面が溶融した溶融部を含む絶縁体の断面において、母材と溶融部との界面の長さを、界面の両端を結ぶ線分の長さで除した値が1.1以上1.5以下であるため、マークとしての溶融部の視認性の向上と絶縁体の破壊の低減とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施の形態におけるスパークプラグの片側断面図である。
図2図1の矢印II-II線における絶縁体の断面図である。
図3】第2実施の形態におけるスパークプラグの絶縁体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態におけるスパークプラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図1の紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という。スパークプラグ10は絶縁体11を備えている。
【0010】
絶縁体11は、軸線Oに沿って延びる軸孔12が設けられた円筒状の部材であり、高温下の絶縁性や機械的特性に優れるアルミナ等のセラミック製である。絶縁体11は、軸方向の先端を含む第1端部13、軸方向の後端を含む第2端部14が設けられており、径方向の外側に張り出す円環状の張出部15が、軸方向の中央の、第1端部13と第2端部14との間に設けられている。絶縁体11は、張出部15よりも第2端部14側(後端側)の外周面の、第2端部14を含む部分にガラス層16及びマーク17が設けられている。ガラス層16の表面には汚れが付き難くなり、また付いた汚れが落ち易くなる。
【0011】
マーク17は、文字、図形、数字、符号、記号または図柄が例示される。マーク17が示す情報は、スパークプラグ10の生産者や販売者、スパークプラグ10の生産国、スパークプラグ10に係る商標、スパークプラグ10の品種、スパークプラグ10が取り付けられるエンジンの識別表示、スパークプラグ10や絶縁体11等のロット番号や製造履歴が例示される。マーク17は1次元コード(バーコード)や2次元コードを含むことができる。本実施形態ではマーク17は登録商標に係る「NGK」の文字である。図1にはマーク17の一部が図示されている。
【0012】
絶縁体11の軸孔12の先端側に棒状の中心電極18が配置されている。中心電極18は、熱伝導性に優れる芯材が母材に埋設されている。母材は、Niを主体とする合金またはNiからなる金属材料で形成されている。芯材は銅または銅を主成分とする合金で形成されている。芯材は省略できる。中心電極18は、軸孔12の中で端子金具19と電気的に接続されている。端子金具19は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。
【0013】
主体金具20は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具20は絶縁体11の外周に配置されており、主に絶縁体11の第1端部13から張出部15までの間を取り囲む。接地電極21は、主体金具20に接続された棒状の金属製(例えばニッケル基合金製)の部材である。接地電極21は複数設けられていても良い。
【0014】
スパークプラグ10は例えば以下のような方法によって製造される。まずセラミック粉末を成形して得られた円筒状の成形体を焼成して焼結体を得る。焼結体の外周面に釉薬を塗布した後、焼成してガラス層16が設けられた絶縁体11を得る。絶縁体11の軸孔12に中心電極18を配置し、中心電極18と端子金具19とを電気的に接続した後、予め接地電極21を接続した主体金具20を絶縁体11に組み付け、中心電極18と接地電極21との間に火花ギャップを設ける。
【0015】
絶縁体11の第2端部14を含む部分にレーザビームを照射し、絶縁体11の表面のガラス層16とガラス層16の内側の母材22(図2参照)とを溶かす。溶けた部分がマーク17となる。レーザビームは、マーク17の種類などに応じてCWレーザ(連続波)やパルスレーザが適宜選択される。
【0016】
図2図1の矢印II-II線における絶縁体11の断面図である。図2は絶縁体11の軸線Oに垂直な切断面においてマーク17(図1参照)が付された部分が拡大して図示され、それ以外の部分の図示が省略されている(図3においても同じ)。絶縁体11は、焼結した組織からなる母材22と、母材22の表面23が溶融した溶融部24と、を含む。溶融部24は、母材22の表面23に設けられたガラス層16に隣接している。ガラス層16や母材22と色が異なって視認される溶融部24はマーク17を構成する。
【0017】
溶融部24は、表面25と、母材22と溶融部24との界面26と、を含む。溶融部24の界面26の長さを、界面26の両端27,28を結ぶ線分29の長さで除した値は1.1以上1.5以下である。界面26の両端27,28は、溶融部24の表面25と界面26との交点である。
【0018】
溶融部24の界面26の長さを線分29の長さで除した値が1.1未満であると、溶融部24が母材22に接合される面積が小さいので溶融部24が母材22から剥がれ易くなり、溶融部24の表面25と界面26との間の距離が短いのでマーク17(溶融部24)の視認性が低下する。溶融部24の界面26の長さを線分29の長さで除した値が1.5を超えると、母材22の切り欠きとして溶融部24が働くので絶縁体11の強度が低下する。一方、溶融部24の界面26の長さを線分29の長さで除した値が1.1以上1.5以下であると、マーク17(溶融部24)の剥離強度、マーク17の視認性、及び、絶縁体11の機械的強度を確保できる。
【0019】
溶融部24の界面26は、溶融部24の表面25から離れる方向へ向かって突出する複数(本実施形態では10個)の凸部30,31,32,33,34,35,36,37,38,39を含む。凸部30,31,32,33,34,35,36,37,38,39の位置は、例えば溶融部24を作るために絶縁体11に照射したレーザビームのビーム軸の位置に相当する。
【0020】
凸部30は、隣り合う凸部30,31の谷40を通る直線49によって界面26が切り取られる部分である。谷40は凸部30,31の間の凹んだ部分のうち線分29に最も近い点である。直線49は線分29に平行な直線である。直線49からの凸部30の深さDを凸部30の幅W(凸部30によって直線49が切り取られる線分の長さ)で除した値D/Wは0.1以上である。値D/Wが0.1以上のものを凸部という。凸部31,32,33,34,35,36,37,38,39も値D/Wが0.1以上である。界面26のうち値D/Wが0.1未満の部分は凸部ではない。
【0021】
凸部31は、隣り合う凸部30,31の谷40及び隣り合う凸部31,32の谷41のうち線分29から遠い方の谷40を通る直線50によって界面26が切り取られる部分である。谷41は凸部31,32の間の凹んだ部分のうち線分29に最も近い点である。直線50は線分29に平行な直線である。
【0022】
凸部32は、隣り合う凸部31,32の谷41及び隣り合う凸部32,33の谷42のうち線分29から遠い方の谷42を通る直線51によって界面26が切り取られる部分である。谷42は凸部32,33の間の凹んだ部分のうち線分29に最も近い点である。直線51は線分29に平行な直線である。
【0023】
凸部33は、隣り合う凸部32,33の谷42及び隣り合う凸部33,34の谷43のうち線分29から遠い方の谷43を通る直線52によって界面26が切り取られる部分である。谷43は凸部33,34の間の凹んだ部分のうち線分29に最も近い点である。直線52は線分29に平行な直線である。
【0024】
凸部34は、隣り合う凸部33,34の谷43及び隣り合う凸部34,35の谷44のうち線分29から遠い方の谷43を通る直線53によって界面26が切り取られる部分である。谷44は凸部34,35の間の凹んだ部分のうち線分29に最も近い点である。直線53は線分29に平行な直線である。
【0025】
凸部35は、隣り合う凸部34,35の谷44及び隣り合う凸部35,36の谷45のうち線分29から遠い方の谷45を通る直線54によって界面26が切り取られる部分である。谷45は凸部35,36の間の凹んだ部分のうち線分29に最も近い点である。直線54は線分29に平行な直線である。
【0026】
凸部36は、隣り合う凸部35,36の谷45及び隣り合う凸部36,37の谷46のうち線分29から遠い方の谷45を通る直線55によって界面26が切り取られる部分である。谷46は凸部36,37の間の凹んだ部分のうち線分29に最も近い点である。直線55は線分29に平行な直線である。
【0027】
凸部37は、隣り合う凸部36,37の谷46及び隣り合う凸部37,38の谷47のうち線分29から遠い方の谷46を通る直線56によって界面26が切り取られる部分である。谷47は凸部37,38の間の凹んだ部分のうち線分29に最も近い点である。直線56は線分29に平行な直線である。
【0028】
凸部38は、隣り合う凸部37,38の谷47及び隣り合う凸部38,39の谷48のうち線分29から遠い方の谷48を通る直線57によって界面26が切り取られる部分である。谷48は凸部38,39の間の凹んだ部分のうち線分29に最も近い点である。直線57は線分29に平行な直線である。
【0029】
凸部39は、隣り合う凸部38,39の谷48を通る直線58によって界面26が切り取られる部分である。直線58は線分29に平行な直線である。
【0030】
溶融部24の界面26の端27を起点とするクラックが界面26に沿って進展すると、クラックが最初に到達する凸部30の頂点を境に、クラックの進展する向きが、表面23から離れる方向から表面23に近づく方向へ変わるので、クラックの進展が妨げられる。凸部31,32,33,34も同様にクラックの進展を妨げるので、界面26の破壊を低減できる。
【0031】
同様に界面26の端28を起点とするクラックが界面26に沿って進展すると、クラックが最初に到達する凸部39の頂点を境に、クラックの進展する向きが、表面23から離れる方向から表面23に近づく方向へ変わるので、クラックの進展が妨げられる。凸部38,37,36,35も同様にクラックの進展を妨げるので、界面26の破壊を低減できる。溶融部24の界面26は2つ以上の凸部30,31,32,33,34,35,36,37,38,39を含むので、界面26に沿うクラックの進展を低減し、溶融部24の母材22からの剥離を低減できる。
【0032】
凸部30,31,32,33,34,35,36,37,38,39は、線分29の中点59を通る直線60から離れた位置に存在する。直線60は線分29に垂直な直線である。直線60から凸部が離れた位置に存在するというのは、直線60に交わらない凸部が在るということである。凸部30,31,32,33,34,35,36,37,38,39が直線60から離れた位置に存在するので、界面26の端27,28から界面26に沿ってクラックが進展したときに、直線60に凸部が交わる場合に比べて、凸部30,31,32,33,34,35,36,37,38,39に早くクラックが到達する。凸部30,31,32,33,34,35,36,37,38,39はクラックの進展を妨げるので、直線60に交わる凸部が存在する場合に比べ、クラックが短いうちにクラックの進展を抑制できる。従って界面26の破壊をさらに低減できる。
【0033】
界面26の端27,28を起点とするクラックは、ひずみエネルギーを解放しながら進展する。界面26のうち、線分29の長さの1/5の長さだけ界面26の端27,28から線分29に沿ってそれぞれ内側に入った部分61,62を除く範囲63は、界面26の端27,28を起点とするクラックが部分61,62を超えて進展したときに到達する。範囲63に到達したクラックがもつクラック進展の駆動力が、部分61,62を進展するクラックがもつ駆動力よりも小さい場合に、範囲63に凸部32,33,34,35,36,37が存在することにより、範囲63におけるクラックの進展が妨げられる。従って溶融部24の母材22からの剥離をさらに低減できる。
【0034】
図3を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では溶融部24の界面26が10個の凸部を含む場合について説明した。これに対し第2実施形態では、溶融部70の界面72が3個の凸部を含む場合について説明する。第2実施形態では、第1実施形態において説明した部分と同一の部分に同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0035】
図3は第2実施の形態におけるスパークプラグ10の絶縁体11の断面図である。絶縁体11は、母材22の表面23が溶融した溶融部70を含む。溶融部70は、母材22の表面23に設けられたガラス層16に隣接している。ガラス層16や母材22と色が異なる溶融部70はマーク17を構成する。
【0036】
溶融部70は、表面71と、母材22と溶融部70との界面72と、を含む。溶融部70の界面72の長さを、界面72の両端73,74を結ぶ線分75の長さで除した値は1.1以上1.5以下である。これによりマーク17(溶融部70)の剥離強度、マーク17の視認性、及び、絶縁体11の機械的強度を確保できる。界面72の両端73,74は、溶融部70の表面71と界面72との交点である。
【0037】
溶融部70の界面72は、溶融部70の表面71から離れる方向へ向かって突出する複数(本実施形態では3個)の凸部76,78,79を含む。凸部76,78,79の位置は、例えば溶融部70を作るために絶縁体11に照射したレーザビームのビーム軸の位置に相当する。
【0038】
凸部76は、凸部76に隣り合う隆起部77と凸部76との間の谷80を通る直線83によって界面72が切り取られる部分である。谷80は凸部76と隆起部77との間の凹んだ部分のうち線分75に最も近い点である。直線83は線分75に平行な直線である。
【0039】
凸部78は、凸部78に隣り合う隆起部77と凸部78との間の谷81及び隣り合う凸部78,79の谷82のうち線分75から遠い方の谷82を通る直線84によって界面72が切り取られる部分である。谷82は凸部78,79の間の凹んだ部分のうち線分75に最も近い点である。直線84は線分75に平行な直線である。
【0040】
凸部79は、隣り合う凸部78,79の谷82を通る直線85によって界面72が切り取られる部分である。直線85は線分75に平行な直線である。
【0041】
凸部76と隆起部77との間の谷80と線分75との間の距離は、隆起部77と凸部78との間の谷81と線分75との間の距離よりも長い。距離が長い方の谷80を通る直線であって線分75に平行な直線86からの隆起部77の深さDを、隆起部77によって直線86が切り取られる線分の長さ(隆起部77の幅W)で除した値D/Wは0.1未満である。従って隆起部77は、界面72のうち溶融部70の表面71から離れる方向へ向かって突出しているが、凸部ではない。
【0042】
溶融部70の界面72の端73を起点とするクラックが界面72に沿って進展すると、クラックが最初に到達する凸部76の頂点を境に、クラックの進展する向きが、表面23から離れる方向から表面23に近づく方向へ変わるので、クラックの進展が妨げられる。従って界面72の破壊を低減できる。
【0043】
同様に界面72の端74を起点とするクラックが界面72に沿って進展すると、クラックが最初に到達する凸部79の頂点を境に、クラックの進展する向きが、表面23から離れる方向から表面23に近づく方向へ変わるので、クラックの進展が妨げられる。凸部78も同様にクラックの進展を妨げるので、界面72の破壊を低減できる。溶融部70の界面72は2つ以上の凸部76,78,79を含むので、界面72に沿うクラックの進展を低減し、溶融部70の母材22からの剥離を低減できる。
【0044】
凸部76,78,79は、線分75の中点87を通る直線88から離れた位置に存在する。直線88は線分75に垂直な直線である。凸部76,78,79が直線88から離れた位置に存在するので、界面72の端73,74から界面72に沿ってクラックが進展したときに、直線88に凸部が交わる場合に比べて、凸部76,78,79に早くクラックが到達する。凸部76,78,79はクラックの進展を妨げるので、直線88に交わる凸部が存在する場合に比べ、クラックが短いうちにクラックの進展を抑制できる。従って界面72の破壊をさらに低減できる。
【0045】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0046】
実施形態では絶縁体11の軸線Oに垂直な断面における溶融部24,70の界面26,72の形を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。絶縁体11に設けた溶融部24,70の界面26,72が現出する断面であれば、様々な断面を採用できる。様々な断面は、(1)軸線Oを含む断面、(2)軸線Oに平行な断面、(3)軸線Oに直交する断面以外の、軸線Oに交わる断面が例示される。
【0047】
実施形態ではエンジンにスパークプラグ10を取り付けた場合に、中心電極18の先端と接地電極21とがエンジンの燃焼室に露出するものを説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。他のスパークプラグの絶縁体に適用することは当然可能である。他のスパークプラグとしては、エンジンに副燃焼室を設けるために、中心電極18の先端と接地電極21とを覆うキャップに貫通穴が設けられたスパークプラグが例示される。また、中心電極18と接地電極21との間に火花放電を生じさせるスパークプラグに限られるものではなく、バリア放電やアーク放電を利用して点火するスパークプラグに適用することは当然可能である。
【0048】
第1実施形態では直線60から離れた位置に10個の凸部30,31,32,33,34,35,36,37,38,39が存在する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。凸部は、直線60から離れた位置に少なくとも1つ存在すれば良い。
【0049】
第1実施形態では範囲63に6個の凸部32,33,34,35,36,37が存在する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。凸部は、範囲63に少なくとも1つ存在すれば良い。
【符号の説明】
【0050】
10 スパークプラグ
11 絶縁体
22 母材
23 母材の表面
24 溶融部
25 溶融部の表面
26 界面
27,28 界面の端
29 線分
30,31,32,33,34,35,36,37,38,39 凸部
40,41,42,43,44,45,46,47,48 谷
49,50,51,52,53,54,55,56,57,58 直線
59 中点
60 直線
61,62 部分
63 範囲
70 溶融部
71 溶融部の表面
72 界面
73,74 界面の端
75 線分
76,78,79 凸部
80,82 谷
83,84,85 直線
87 中点
88 直線
図1
図2
図3