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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007040
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 23/02 20060101AFI20250109BHJP
   B28B 1/20 20060101ALI20250109BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20250109BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20250109BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B28B23/02 A
B28B1/20 E
E04C5/18 102
E04G21/12 105D
E04G21/12 105E
E04G21/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108174
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】安保 知紀
(72)【発明者】
【氏名】西村 知晃
(72)【発明者】
【氏名】土井 至朗
(72)【発明者】
【氏名】田口 隆治
(72)【発明者】
【氏名】李 志鵬
(72)【発明者】
【氏名】伴野 由佳
【テーマコード(参考)】
2E164
2E174
【Fターム(参考)】
2E164AA01
2E164BA25
2E174AA03
2E174BA03
2E174DA32
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリート構造物を構築する型枠に対する所定位置への管体の保持及び保持の解消を容易に行うことができる鉄筋コンクリート構造物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コンクリート140と、内部に配筋される鉛直方向軸鉄筋112と、鉛直方向軸鉄筋112における継手部112Xに外嵌する鋼管120とが埋設された鉄筋コンクリート構造物100は、鉛直方向軸鉄筋112を構成する下側鉛直方向軸鉄筋112aが埋設された基礎部101と、鉛直方向軸鉄筋112を構成する上側鉛直方向軸鉄筋112bが埋設された柱部102とで構成するとともに、鋼管120は基礎部101において上部が開口可能に上端に配置され、フレッシュコンクリートを打設して基礎部101を構築する型枠130に対する所定位置に鋼管固定器具1で脱着可能に鋼管120を保持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートと、該コンクリートの内部に配筋される軸方向鉄筋と、該軸方向鉄筋における継手箇所の少なくとも一部に外嵌する所定長さの管体とが埋設された鉄筋コンクリート構造物の製造方法であって、
前記鉄筋コンクリート構造物は、下方に配置され、前記軸方向鉄筋を構成する第1軸方向鉄筋が埋設された第1コンクリート部材と、前記第1コンクリート部材の上方に配置され、前記軸方向鉄筋を構成する第2軸方向鉄筋が埋設された第2コンクリート部材とで構成するとともに、前記管体は前記第1コンクリート部材において上部が開口可能に上端に配置され、
フレッシュコンクリートを打設して前記第1コンクリート部材を構築する型枠に対する所定位置に保持部材で脱着可能に前記管体を保持し、
前記保持部材で前記管体を保持した状態で前記フレッシュコンクリートを前記型枠の内部に打設し、
前記フレッシュコンクリートの硬化後に前記保持部材による前記管体の保持を解消する
鉄筋コンクリート構造物の製造方法。
【請求項2】
前記型枠の上方に支持台を設けるとともに、
前記保持部材に、
前記支持台に載置する固定部と、
前記管体を保持する保持部本体と、
前記固定部から前記保持部本体を吊り下げるアームとが備えられ、
前記支持台に載置された前記固定部から前記アームを介して吊り下げられた前記保持部本体で前記管体を吊り下げ保持する
請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造物の製造方法。
【請求項3】
前記管体の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて複数の前記保持部本体で保持する
請求項2に記載の鉄筋コンクリート構造物の製造方法。
【請求項4】
前記保持部本体は、磁気をON/OFF切り替え可能な磁石である
請求項2に記載の鉄筋コンクリート構造物の製造方法。
【請求項5】
前記保持部本体に磁気のON/OFF切り替えを操作する操作部が設けられた
請求項4に記載の鉄筋コンクリート構造物の製造方法。
【請求項6】
前記固定部に磁気のON/OFF切り替えを操作する操作部が設けられた
請求項4に記載の鉄筋コンクリート構造物の製造方法。
【請求項7】
前記保持部本体は、前記管体の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて当接する複数の当接部を有し、
複数の前記当接部を前記管体の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて当接させて保持する
請求項4に記載の鉄筋コンクリート構造物の製造方法。
【請求項8】
前記支持台は、コンクリート天端に対して所定の間隔を隔てて配置された
請求項2乃至請求項7のうちいずれかに記載の鉄筋コンクリート構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、異形鉄筋などの軸方向鉄筋が埋設された鉄筋コンクリート構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧縮力に対する耐力は高いものの、引張力に対する耐力が低いコンクリートの内部に、引張強度が高い鉄筋を配置した鉄筋コンクリート構造物がたくさん建造されている。このような鉄筋コンクリート構造物は、各鉄筋コンクリート部材で構成されている。
【0003】
鉄筋コンクリート部材では、コンクリート内部に、設計荷重によって応力が算定された、部材長手方向に延びる軸方向鉄筋(主筋ともいう)、軸方向鉄筋に対して直角に配置され、応力を分散させる配力筋、軸方向鉄筋を取り囲む横方向鉄筋であるスターラップ、あるいは軸方向鉄筋の座屈防止とせん断補強のために、軸方向鉄筋を取り囲んで直角に配置される帯鉄筋などが配筋されている。
【0004】
このような構造の鉄筋コンクリート部材において、例えば、柱部などのように高さのある鉄筋コンクリート部材の場合、鉄筋コンクリート部材を上下に分断して構築することがある。この場合、軸方向鉄筋も分断し、専用の継手部品を用いて応力伝達可能に軸方向鉄筋を接続する。
【0005】
例えば、特許文献1に記載のコンクリート部材の接合構造では、継手部分に専用品を用いることなく、鉄筋の軸方向に沿って作用する引張方向の力に対する強度を確保することが提案されている。
詳しくは、特許文献1コンクリート部材の接合構造は、開口部を有する中空状の管体(補強部材)と、管体の内側に端部が突出するように埋設された第1鉄筋とを備えた第1コンクリート部材と、第2接合面から端部が突出するように埋設された第2鉄筋を備えた第2コンクリート部材とを対向させて、第2鉄筋の端部が開口部から管体の内側に挿入され、第1鉄筋の端部と第2鉄筋の端部とが管体の軸方向に沿って重なった状態で管体の内側に充填した硬化剤が硬化することで接合するものである。
【0006】
上述の接合構造では、第2コンクリート部材の第2接合面から突出する第2鉄筋を、第1コンクリート部材に設け、第1鉄筋が埋設された中空状の管体(補強部材)に挿入するため、第1コンクリート部材に対して中空状の管体(補強部材)を所定の位置に精度よく設置する必要があった。
【0007】
そのため、フレッシュコンクリートを打設して第1コンクリート部材を構築する型枠に対して管体(補強部材)を、所定位置に配置できるように形成されたガイドプレートに溶接等であらかじめ固定していた。そして、型枠にフレッシュコンクリートを打設し、打設したフレッシュコンクリートが硬化してからガイドプレートを撤去することで、第1コンクリート部材に対する所定位置に中空状の管体(補強部材)を所定の位置に精度よく設置していた。
【0008】
しかしながら、ガイドプレートに対して溶接等で管体(補強部材)を固定する作業も、フレッシュコンクリートの硬化後に溶接部分を切断してガイドプレートを撤去する作業も、非常に手間も時間も要するため、鉄筋コンクリート部材を効率よく製造することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-29721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上述した問題を鑑み、鉄筋コンクリート構造物を構築する型枠に対する所定位置への管体の保持及び保持の解消を容易に行うことができる鉄筋コンクリート構造物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、コンクリートと、該コンクリートの内部に配筋される軸方向鉄筋と、該軸方向鉄筋における継手箇所の少なくとも一部に外嵌する所定長さの管体とが埋設された鉄筋コンクリート構造物の製造方法であって、前記鉄筋コンクリート構造物は、下方に配置され、前記軸方向鉄筋を構成する第1軸方向鉄筋が埋設された第1コンクリート部材と、前記第1コンクリート部材の上方に配置され、前記軸方向鉄筋を構成する第2軸方向鉄筋が埋設された第2コンクリート部材とで構成するとともに、前記管体は前記第1コンクリート部材において上部が開口可能に上端に配置され、フレッシュコンクリートを打設して前記第1コンクリート部材を構築する型枠に対する所定位置に保持部材で脱着可能に前記管体を保持し、前記保持部材で前記管体を保持した状態で前記フレッシュコンクリートを前記型枠の内部に打設し、前記フレッシュコンクリートの硬化後に前記保持部材による前記管体の保持を解消することを特徴とする。
【0012】
上述の保持部材による管体の保持は、磁石による磁着、負圧や吸盤による吸着、あるいは係止や粘着等で保持してもよい。
【0013】
管体は、筒状であれば、円環状断面、断面楕円環状断面、多角形断面など適宜の断面形状である筒状体が含まれる。
【0014】
この発明により、鉄筋コンクリート構造物を構築する型枠に対する所定位置への管体の保持及び保持の解消を容易に行うことができる。
詳述すると、下方に配置され、前記軸方向鉄筋を構成する第1軸方向鉄筋が埋設された第1コンクリート部材と、前記第1コンクリート部材の上方に配置され、前記軸方向鉄筋を構成する第2軸方向鉄筋が埋設された第2コンクリート部材とで構成する鉄筋コンクリート構造物を構成する際に、前記第1コンクリート部材において上部が開口可能に上端に配置される前記管体を、フレッシュコンクリートを打設して前記第1コンクリート部材を構築する型枠に対する所定位置に脱着可能に保持部材で保持するため、所定箇所に前記管体を容易に配置することができる。そして、前記保持部材で前記管体を保持した状態で前記フレッシュコンクリートを前記型枠の内部に打設し、前記フレッシュコンクリートの硬化後に前記保持部材による前記管体の保持を解消するため、前記管体が所定位置に配置された前記第1コンクリート部材を構成することができる。したがって、コンクリートと、該コンクリートの内部に配筋される軸方向鉄筋と、該軸方向鉄筋における継手箇所の少なくとも一部に外嵌する所定長さの管体とが埋設された鉄筋コンクリート構造物を容易且つ確実に製造することができる。
なお、上述の鉄筋コンクリート構造物は、構造物の一部であってもよい。
【0015】
この発明の態様として、前記型枠の上方に支持台を設けるとともに、前記保持部材に、前記支持台に載置する固定部と、前記管体を保持する保持部本体と、前記固定部から前記保持部本体を吊り下げるアームとが備えられ、前記支持台に載置された前記固定部から前記アームを介して吊り下げられた前記保持部本体で前記管体を吊り下げ保持してもよい。
この発明により、前記フレッシュコンクリートを打設する前記型枠に対して、前記フレッシュコンクリートの打設に干渉することなく、前記保持部本体で保持した前記管体を前記支持台から吊り下げ支持することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記管体の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて複数の前記保持部本体で保持してもよい。
この発明により、前記第1コンクリート部材の内部に前記保持部本体を残置させることなく、前記管体を安定して保持することができる。
【0017】
詳述すると、前記管体の内周面に対して前記保持部本体で保持するため、前記第1コンクリート部材の内部に前記保持部本体を残置させることなく、前記フレッシュコンクリートの硬化後に前記保持部本体を容易に取り外すことができる。また、前記管体の内面に対して複数の前記保持部本体を周方向に所定間隔を隔てて配置し、複数の前記保持部本体で保持するため、ひとつの前記保持部本体で前記管体を保持する場合に比べ、安定して前記管体を前記保持部材で保持することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記保持部本体は、磁気をON/OFF切り替え可能な磁石であってもよい。
上述の磁気をON/OFF切り替え可能な磁石は、ふたつの磁石を内蔵し、ふたつの磁石の相対的な向きを、極性を合わせるか逆にするかで磁気をON/OFF切り替えるように構成した磁石であってもよいし、通電と遮断で磁気をON/OFF切り替えるように構成した電磁石であってもよい。
この発明により、磁力による保持と保持の解消とを切り替えて、前記保持部材による前記管体の保持と保持の解消とを容易に切り替えでき、施工性を向上することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記保持部本体に磁気のON/OFF切り替えを操作する操作部が設けられてもよい。
この発明により、前記管体を保持する前記保持部本体に設けた前記操作部を直接操作して、前記保持部本体による前記管体の保持と保持の解消とを切り替えることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記固定部に磁気のON/OFF切り替えを操作する操作部が設けられてもよい。
この発明により、前記支持台に載置した前記固定部に設けた前記操作部を操作して、前記保持部本体による前記管体の保持と保持の解消とを切り替えることができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記保持部本体は、前記管体の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて当接する複数の当接部を有し、複数の前記当接部を前記管体の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて当接させて保持してもよい。
【0022】
この発明により、より安定して保持部本体で管体を保持することができる。
詳述すると、管体の内面に保持部本体の面を当接させて保持する場合、管体の内面と保持部本体の面とを高精度で形成しなければ面接触せず、安定した保持状態になることが困難である。これに対し、保持部本体に設けた複数の当接部が前記管体の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて当接するため、確実に複数箇所で当接し、安定した保持状態となる。そのため、フレッシュコンクリートの打設の際にも、不用意に管体が移動し、所定の位置から管体がずれることを防止できる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記支持台は、コンクリート天端に対して所定の間隔を隔てて配置されてもよい。
この発明により、支持台とコンクリート天端との間に所定の間隔の空間が形成されるため、保持部材で管体を吊り下げ保持したままの状態で押え鏝によるコンクリート天端の仕上げ作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明により、鉄筋コンクリート構造物を構築する型枠に対する所定位置への管体の保持及び保持の解消を容易に行うことができる鉄筋コンクリート構造物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】鋼管固定器具の斜視図の説明図。
図2】鋼管固定器具の説明図。
図3】鉄筋コンクリート構造物の断面図。
図4】鉄筋コンクリート構造物の構築方法のフロー図。
図5】基礎部の施工を説明する断面図。
図6】基礎部の施工を説明する断面図。
図7】柱部の施工を説明する断面図。
図8】梁部の施工を説明する断面図。
図9】梁部の施工を説明する断面図。
図10】別の実施形態の鉄筋コンクリート構造物の断面図。
図11】別の実施形態の鉄筋コンクリート構造物の施工を説明する断面図。
図12】別の実施形態の鉄筋コンクリート構造物の施工を説明する断面図。
図13】さらに別の実施形態の鉄筋コンクリート構造物の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は鋼管固定器具1の斜視図の説明図を示し、図2は鋼管固定器具1の説明図を示している。なお、図1(a)は支持盤10を透過状態で図示し、図1(b)は支持盤10で見えない鋼管120等を破線で図示している。
【0027】
図3は鉄筋コンクリート構造物100の断面図を示し、図4は鉄筋コンクリート構造物100の構築方法のフロー図を示している。
図5及び図6は基礎部101の施工を説明する断面図を示し、図7は柱部102の施工を説明する断面図を示し、図8及び図9は梁部103の施工を説明する断面図を示している。
【0028】
図3に示すように、鉄筋コンクリート構造物100は、水平な基礎部101と梁部103と、基礎部101と梁部103の間において鉛直方向に延びる柱部102とで構成し、梁部103を柱部102で支持するように構成している。
【0029】
鉄筋コンクリート構造物100には、水平方向に延びる水平方向軸鉄筋111と鉛直方向に延びる鉛直方向軸鉄筋112を埋設している。
水平方向軸鉄筋111は、基礎部101と梁部103との内部に主として配置され、鉛直方向軸鉄筋112は柱部102の内部に主として配置されている。
【0030】
基礎部101は、水平方向に延びる所定厚みの鉄筋コンクリート部材である。水平方向の鉄筋コンクリート部材である基礎部101は、水平方向の水平方向軸鉄筋111が上下方向に離間して配置されるとともに、配力筋113が水平方向軸鉄筋111と直交する向きで配置され、平面視格子状を形成している。また、上下方向に離間するように配置された水平方向軸鉄筋111をまとめて囲むスターラップ114を設けている。このように、水平方向軸鉄筋111、配力筋113及びスターラップ114を所定間隔で組み付けられた配筋に対してコンクリート140を打設して、基礎部101は構成されている。なお、基礎部101には、鉛直方向に延出されるとともに、内部に鉛直方向軸鉄筋112の継手部112Xを配置する鋼管120を埋設している。さらに、鉛直方向軸鉄筋112の下部が配置されている。なお、基礎部101は、内部に配置される鋼管120の長さ以上の高さが必要となる。
【0031】
梁部103は、水平方向に延びる所定厚みの鉄筋コンクリート部材である。水平方向の鉄筋コンクリート部材である梁部103は、水平方向の水平方向軸鉄筋111が上下方向に離間して配置されるとともに、上下方向に離間するように配置された水平方向軸鉄筋111をまとめて囲む帯鉄筋115を設けている。このように、水平方向軸鉄筋111及び帯鉄筋115を所定間隔で組み付けられた配筋に対してコンクリート140を打設して、梁部103は構成されている。
なお、梁部103の端部からは、柱部102に向かって、水平方向軸鉄筋111がコの字状で突出している。
【0032】
柱部102は、図2に示すように、平面視正方形状の鉛直方向に延びる鉄筋コンクリート部材である。鉄筋コンクリート部材である柱部102は、鉛直方向軸鉄筋112と、コンクリート140とを備えている。
【0033】
柱部102の上部には、張出部104が設けられるとともに、張出部104の上方において、水平方向軸鉄筋111が上下方向に所定間隔を隔てて配置するとともに、側方向にコの字状で突出している。
なお、張出部104に載置された柱部102と梁部103との間は、側方向にコの字状に突出した水平方向軸鉄筋111を内包するようにグラウト141を埋めて一体化している。
【0034】
鉛直方向軸鉄筋112は、図3に示すように、外周面に節が形成された異形鉄筋であり、平面視正方形状の外周面から所定のかぶり厚を確保した位置に沿って、所定間隔を隔てて複数本設けている。また、鉛直方向軸鉄筋112の上端部及び下端部は、直角方向に折り曲げられたL型部分が基礎部101及び梁部103の鉛直方向軸鉄筋112と結束されている。
【0035】
なお、上述のように構成された鉛直方向の鉛直方向軸鉄筋112は、基礎部101の内部に配置される下側鉛直方向軸鉄筋112aと、主に柱部102の内部に配置される上側鉛直方向軸鉄筋112bとを継いで構成している。
【0036】
詳述すると、上側鉛直方向軸鉄筋112bが柱部102の底部より下方に突出し、基礎部101の内部において下側鉛直方向軸鉄筋112aと上側鉛直方向軸鉄筋112bとが上下方向に所定長さラップさせて継いでいる。このように、基礎部101の内部において、下側鉛直方向軸鉄筋112aと上側鉛直方向軸鉄筋112bとの上下方向にラップするラップ部分である継手部112Xの外側を鋼管120で外嵌している。
鉛直方向軸鉄筋112の基部に外嵌する鋼管120は、所定の厚みを有する円筒状であり、継手部112Xに外嵌した鋼管120同士の間の所定の間隔を確保できる径で形成している。
【0037】
なお、鋼管120の内部に配置される継手部112Xは、図3において下側鉛直方向軸鉄筋112aが奥行き方向に所定間隔を隔てて2本並び、上側鉛直方向軸鉄筋112bは幅方向に所定間隔を隔てて2本並んでいる。
【0038】
また、鋼管120は継手部112Xの箇所数に応じた数が設けられている。そのため、柱部102の断面において、継手部112Xの箇所数に応じた複数の鋼管120が設けられている。
そして、鋼管120の内部にはグラウト141が充填されており、4本の鉛直方向軸鉄筋112で構成する継手部112Xは鋼管120の内部で拘束されている。
【0039】
鋼管120の内部にグラウト141が充填されることで拘束された継手部112Xによって下側鉛直方向軸鉄筋112aと上側鉛直方向軸鉄筋112bとは所定の強度で継いで鉛直方向軸鉄筋112を構成することができる。
そのためには、鋼管120の内部において、4本の鉛直方向軸鉄筋112が所定の間隔で配置し、グラウト141がしっかりと付着する必要がある。そのためには、下側鉛直方向軸鉄筋112aに対して鋼管120を正確な位置に配置しなければならない。
【0040】
また、鋼管120は、コンクリート140を打設して構築する基礎部101に埋設されるため、コンクリート140を打設して基礎部101を構築する型枠130に対して鋼管120を正確に配置する必要がある。
【0041】
続いて、コンクリート140を打設して基礎部101を構築する型枠130に対して、鋼管120を正確な位置且つ容易に配置できる鋼管固定器具1について説明する。
型枠130に対して鋼管120を正確な位置且つ容易に配置できる鋼管固定器具1は、型枠130の上方に所定間隔を隔てて配置される支持盤10と、脱着固定具20とで構成している。
【0042】
支持盤10は、図1及び図2に示すように、基礎部101を構築するための型枠130において、基礎部101の天端より所定間隔を隔てて配置された所定の強度を有する板厚の板材で構成されている。そして、支持盤10における鋼管120の対応する箇所には、鋼管120の外径より大径の円形開口11を備えている。
なお、円形開口11は、継手部112Xの箇所数に応じて設けた複数の鋼管120に対応する位置にそれぞれ設けている。
【0043】
このように構成された支持盤10は、型枠130に打設して構築する基礎部101の天端面Cu(本実施形態では型枠130の上端と一致)に対して、上方に所定の間隔を隔てて配置されている。
なお、上述したように、型枠130に対する所定位置に配置される支持盤10の固定は、型枠130に対して固定してもよいし、型枠130とは別の部材から固定してもよい。
【0044】
脱着固定具20は、図1及び図2に示すように、支持盤10に載置して固定する固定体30と、鋼管120の内面に磁着して鋼管120を保持する保持部本体40と、固定体30と保持部本体40を連結し、固定体30に対して保持部本体40を吊り下げるアーム体50とを備えている。
【0045】
支持盤10に載置して固定する固定体30は、直方体状の筐体31の内部に磁石(図示省略)を有し、磁石の磁力で固定体30の底面を支持盤10に固定することができ、図示省略する磁石のON/OFF操作をするための操作部32を筐体31の上面に備えている。なお、固定体30の形状は、支持盤10に載置した状態で固定できれば、上述のような形状に限定されず、適宜の形状とすることができる。
【0046】
保持部本体40は、磁性体で構成された筐体41の内部に磁石(図示省略)を有し、磁石の磁力で保持部本体40を鋼管120の内面に当接させて磁着することができる。
なお、筐体41は上下方向に長い略直方体状であり、鋼管120の内面に当接する側(筐体41において脱着固定具20に近い側)の側面に、断面三角形状に凹状となり、上下方向に延びる三角形断面溝42を備えている。そして、筐体41において三角形断面溝42が形成された、その両側を、鋼管120の内面に当接する当接部43としている。
【0047】
また、鋼管120の内面に当接部43が当接した保持状態において鋼管120から離間した側(筐体41において脱着固定具20と遠い側)の側面に、図示省略する磁石のON/OFF操作をするための操作部44を備えている。
【0048】
なお、固定体30と保持部本体40は、ふたつの磁石を内蔵し、ふたつの磁石の相対的な向きを、操作部32,44を操作して、極性を合わせるか逆にするかで磁気をON/OFF切り替えるように構成して内蔵している。
【0049】
アーム体50は、上述の支持盤10に載置した固定体30と、鋼管120の内面に当接させて保持する保持部本体40とを連結し、固定体30で保持部本体40を吊り下げ支持するものであり、正面視逆L字状に形成されている。
【0050】
詳述すると、アーム体50は、固定体30の側面から水平方向へ延びる板状の水平部51と、水平部51の端部より下方に延び、保持部本体40の上面に接続される円柱状の鉛直部52とで逆L字状に形成している。
【0051】
なお、水平部51は、脱着固定具20を支持盤10にセットした状態で、鉛直部52が延びる端部が円形開口11の径内側に延びる長さで形成されるとともに、鉛直部52及び鉛直部52の下端に接続される保持部本体40及び保持部本体40が磁着する鋼管120の重量によって撓まない厚みで形成している。
【0052】
水平部51の端部から下方に延びる鉛直部52は、脱着固定具20を支持盤10にセットした状態で、先端に接続した保持部本体40が、型枠130に対して所定の位置に配置した鋼管120の内面の上部に配置される長さで形成している。
【0053】
このように、固定体30、保持部本体40及びアーム体50を上述のように構成した脱着固定具20は、支持盤10の上面に固定体30を載置し、アーム体50の鉛直部52を、円形開口11を貫通させ、支持盤10の下方の所定位置に保持部本体40を配置することができる。
【0054】
そして、支持盤10に対して適切な位置に配置した固定体30の操作部32をON操作することで、筐体31に内蔵した磁石の磁力で、支持盤10に対して固定体30を固定することができる。
【0055】
また、鋼管120の内面に当接部43を当接した状態で操作部44をON操作することで、筐体41に内蔵した磁石の磁力で、鋼管120の内面に対して当接部43が当接して保持部本体40と鋼管120とを磁着することができる。
【0056】
したがって、脱着固定具20は、固定体30が磁着した支持盤10に対して、アーム体50を介して連結された保持部本体40が磁着する鋼管120を吊り下げ支持することができる。
【0057】
このように構成した鋼管固定器具1を用いた鉄筋コンクリート構造物100の構築方法(製造方法)について、以下で詳細に説明する。
鉄筋コンクリート構造物100は、基礎部101を構築(製造)し、構築された基礎部101に対して柱部102を組付け、柱部102に対して梁部103を組み付けて構築(製造)する。
【0058】
具体的には、基礎部101を構築するため、鉄筋(水平方向軸鉄筋111、配力筋113及びスターラップ114)を組付けるとともに、所定位置に下側鉛直方向軸鉄筋112aを組み立てる。そして組み付けた鉄筋に対して型枠130を組立てる(鉄筋・型枠組付工程:ステップs1)。このとき、型枠130の上端が基礎部101の天端面Cuとなるように、型枠130を組み立てる。
【0059】
次に、組み立てた型枠130に対して鋼管120が所定位置となるように配置し、鋼管固定器具1で鋼管120を保持する(鋼管据付工程:ステップs2)。具体的には、鋼管120を型枠130における所定の位置に保持するためにふたつの鋼管固定器具1を用いる。つまり、ひとつの鋼管120に対してふたつの鋼管固定器具1が用いられるため、全体としては、鋼管120の設置数の2倍の数の鋼管固定器具1を用いることとなる。
【0060】
そして、ひとつの鋼管固定器具1の保持部本体40を、鋼管120の上部の内面に当接部43が当接するように鋼管120に対して配置し、操作部44をON操作して鋼管120に対して保持部本体40を磁着する。これにより、ひとつの鋼管固定器具1は鋼管120に固定される。そして、残りの鋼管固定器具1の保持部本体40を、鋼管120の内部において径方向に対向するように配置し、操作部44をON操作して鋼管120に対して保持部本体40を磁着する。これにより、ふたつの鋼管固定器具1が鋼管120に固定されることとなる。
【0061】
このようにふたつの保持部本体40によってふたつの鋼管固定器具1と一体化された鋼管120を、上方から円形開口11を貫通させて、型枠130における所定位置に鋼管120を配置する。型枠130における所定位置に配置された鋼管120に保持部本体40が磁着するふたつの鋼管固定器具1の固定体30を、操作部32をON操作して、支持盤10に固定体30を磁着して固定する。
【0062】
これにより、支持盤10に固定された固定体30からアーム体50を介して吊り下げられた保持部本体40が磁着する鋼管120は、ふたつの鋼管固定器具1により支持盤10に対して所定位置に保持されることとなる。そして、鋼管120の内部には、下側鉛直方向軸鉄筋112aが奥行き方向に所定の間隔を隔てて2本配置されることとなる。
【0063】
このように、ふたつの鋼管固定器具1によって支持盤10から吊り下げ保持された鋼管120が型枠130の所定位置に配置された状態で、型枠130の内部にフレッシュコンクリートを打設する(コンクリート打設工程:ステップs3)。
打設したフレッシュコンクリートの硬化が始まると、硬化段階に応じてコンクリート140の天端面Cuを押え鏝等で押え、コンクリート140の天端面Cuを仕上げる(コンクリート仕上げ工程:ステップs4)。
【0064】
なお、コンクリート140の天端面Cuから所定間隔を隔てて支持盤10を上方に配置しているため、コンクリート140の天端面Cuと支持盤10との間に所定の高さの作業空間が形成される。したがって、当該作業空間において、コンクリート140の天端面Cuを押え鏝等で押えて仕上げることができる。
【0065】
コンクリートに所定の強度が発現すると、型枠130を脱型するとともに、鋼管120を所定位置で保持した鋼管固定器具1を撤去する(型枠脱型・鋼管固定器具撤去工程:ステップs5)。
具体的には、鋼管120の内面に磁着した保持部本体40の操作部44をOFF操作することで、鋼管120に対する保持部本体40の磁着は解消され、鋼管固定器具1による鋼管120の保持は解消される。この状態で、支持盤10ごとふたつの鋼管固定器具1を撤去してもよいし、固定体30の操作部32をOFF操作して、鋼管固定器具1を支持盤10から取り外して、支持盤10と鋼管固定器具1とをそれぞれ撤去してもよい。
【0066】
型枠脱型・鋼管固定器具撤去工程(ステップs5)によって型枠130及び鋼管固定器具1が撤去されることで基礎部101の構築は完了する。
このようして構築された基礎部101に対して柱部102を接続するためには、まず、基礎部101に埋設され、下側鉛直方向軸鉄筋112aの上部が内部に収容する鋼管120の内部にグラウト141を充填する(グラウト充填工程:ステップs6)。
【0067】
そして、鋼管120の内部に充填したグラウト141が硬化する前に、基礎部101に対して、予め工場等で製造された柱部102を組み付ける。
具体的には、底面から上側鉛直方向軸鉄筋112bの下側が下方に向かって突出した柱部102を、基礎部101の上方から降下させて組み付けて、基礎部101と柱部102とを接続する(柱部接続工程:ステップs7)。このとき、柱部102の底面より下方に突出する上側鉛直方向軸鉄筋112bが、グラウト141が充填された鋼管120の内部に収容させるように組み付ける。
【0068】
下側鉛直方向軸鉄筋112aの一部と上側鉛直方向軸鉄筋112bの一部ととともに鋼管120の内部に収容されたグラウト141が硬化することで、下側鉛直方向軸鉄筋112aと上側鉛直方向軸鉄筋112bとの継手部112Xは、鋼管120で拘束されたグラウト141によって応力が伝達可能に継がれて鉛直方向軸鉄筋112を構成することができ、基礎部101と柱部102の接続は完了する。
【0069】
さらに、柱部102の上部に設けた張出部104に対して梁部103を載置するとともに(梁部接続工程:ステップs8)、柱部102の側面と梁部103の端面との間の空間に、当該空間に配置された水平方向軸鉄筋111のコの字部分を内包するようにグラウト141を打設して、柱部102に対して梁部103を固定する(グラウト固定工程:ステップs9)。
そして、グラウト141が硬化し、所定の強度が発現すると鉄筋コンクリート構造物100の構築(製造)は完了する。
【0070】
上述したように、コンクリート140と、コンクリート140の内部に配筋される鉛直方向軸鉄筋112と、鉛直方向軸鉄筋112における継手部112Xに外嵌する所定長さの鋼管120とが埋設された鉄筋コンクリート構造物100の製造方法において、鉄筋コンクリート構造物100は、下方に配置され、鉛直方向軸鉄筋112を構成する下側鉛直方向軸鉄筋112aが埋設された基礎部101と、基礎部101の上方に配置され、鉛直方向軸鉄筋112を構成する上側鉛直方向軸鉄筋112bが埋設された柱部102とで構成する。そして、鋼管120は基礎部101において上部が開口可能に上端に配置され、フレッシュコンクリートを打設して基礎部101を構築する型枠130に対する所定位置に鋼管固定器具1で脱着可能に鋼管120を保持し(鋼管据付工程:ステップs2)、鋼管固定器具1で鋼管120を保持した状態でフレッシュコンクリートを型枠130の内部に打設し(コンクリート打設工程:ステップs3)、フレッシュコンクリートの硬化後に鋼管固定器具1による鋼管120の保持を解消する(型枠脱型・鋼管固定器具撤去工程:ステップs5)。
【0071】
そのため、鉄筋コンクリート構造物100における基礎部101を構築する型枠130に対する所定位置への鋼管120の保持及び保持の解消を容易に行うことができる。
詳述すると、下方に配置され、鉛直方向軸鉄筋112を構成する下側鉛直方向軸鉄筋112aが埋設された基礎部101と、基礎部101の上方に配置され、鉛直方向軸鉄筋112を構成する上側鉛直方向軸鉄筋112bが埋設された柱部102とで構成する鉄筋コンクリート構造物100を構成する際に、基礎部101において上部が開口可能に上端に配置される鋼管120を、フレッシュコンクリートを打設して基礎部101を構築する型枠130に対する所定位置に脱着可能に鋼管固定器具1で保持するため、所定箇所に鋼管120を容易に配置することができる。そして、鋼管固定器具1で鋼管120を保持した状態でフレッシュコンクリートを型枠130の内部に打設し、フレッシュコンクリートの硬化後に鋼管固定器具1による鋼管120の保持を解消するため、鋼管120が所定位置に配置された基礎部101を構成することができる。したがって、コンクリート140と、コンクリート140の内部に配筋される鉛直方向軸鉄筋112と、鉛直方向軸鉄筋112における継手部112Xに外嵌する所定長さの鋼管120とが埋設された鉄筋コンクリート構造物100を容易且つ確実に製造することができる。
【0072】
また、型枠130の上方に支持盤10を設けるとともに、鋼管固定器具1に、支持盤10に載置する固定体30と、鋼管120を保持する保持部本体40と、固定体30から保持部本体40を吊り下げるアーム体50とが備えられ、支持盤10に載置された固定体30からアーム体50を介して吊り下げられた保持部本体40で鋼管120を吊り下げ保持している。
【0073】
そのため、フレッシュコンクリートを打設する型枠130に対して、フレッシュコンクリートの打設に干渉することなく、保持部本体40で保持した鋼管120を支持盤10から吊り下げ支持することができる。
【0074】
また、鋼管120の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて、より詳しくは周方向に対向する位置でふたつの保持部本体40で保持しているため、基礎部101の内部に保持部本体40を残置させることなく、鋼管120を安定して保持することができる。
【0075】
詳述すると、鋼管120の内周面に対して保持部本体40で保持するため、基礎部101の内部に保持部本体40を残置させることなく、フレッシュコンクリートの硬化後に保持部本体40を容易に取り外すことができる。また、鋼管120の内面に対してふたつの保持部本体40を周方向に所定間隔を隔てて配置し、ふたつの保持部本体40で保持するため、ひとつの保持部本体40で鋼管120を保持する場合に比べ、安定して鋼管120を鋼管固定器具1で保持することができる。
【0076】
また、保持部本体40は、磁気をON/OFF切り替え可能な磁石であるため、磁力による保持と保持の解消とを切り替えて、鋼管固定器具1による鋼管120の保持と保持の解消とを容易に切り替えでき、施工性を向上することができる。
【0077】
また、保持部本体40に磁気のON/OFF切り替えを操作する操作部44が設けられているため、鋼管120を保持する保持部本体40に設けた操作部44を直接操作して、保持部本体40による鋼管120の保持と保持の解消とを切り替えることができる。
【0078】
また、保持部本体40は、鋼管120の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて当接するふたつの当接部43を有し、ふたつの当接部43を鋼管120の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて当接させて保持している。
【0079】
そのため、より安定して保持部本体40で鋼管120を保持することができる。
詳述すると、鋼管120の内面に保持部本体40の面を当接させて保持する場合、鋼管120の内面と保持部本体40の面とを高精度で形成しなければ面接触せず、安定した保持状態になることが困難である。これに対し、保持部本体40に設けたふたつの当接部43が鋼管120の内周面に対して周方向に所定間隔を隔てて当接するため、確実に二箇所で当接し、安定した保持状態となる。そのため、フレッシュコンクリートの打設の際にも、不用意に鋼管120が移動し、所定の位置から鋼管120がずれることを防止できる。
【0080】
また、支持盤10は、コンクリート140の天端面Cuに対して所定の間隔を隔てて配置されているため、支持盤10とコンクリート140の天端面Cuとの間に所定の間隔の空間が形成され、コンクリート仕上げ工程(ステップs4)において、鋼管固定器具1で鋼管120を吊り下げ保持したままの状態で押え鏝によるコンクリート140の天端面Cuの仕上げ作業を行うことができる。
【0081】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明のコンクリートはコンクリート140に対応し、
以下同様に、
軸方向鉄筋は鉛直方向軸鉄筋112に対応し、
継手箇所は継手部112Xに対応し、
管体は鋼管120に対応し、
鉄筋コンクリート構造物は鉄筋コンクリート構造物100に対応し、
第1軸方向鉄筋は下側鉛直方向軸鉄筋112aに対応し、
第1コンクリート部材は基礎部101に対応し、
第2軸方向鉄筋は上側鉛直方向軸鉄筋112bに対応し、
第2コンクリート部材は柱部102に対応し、
型枠は型枠130に対応し、
保持部材は鋼管固定器具1に対応し、
支持台は支持盤10に対応し、
固定部は固定体30に対応し、
保持部本体は保持部本体40に対応し、
アームはアーム体50に対応し、
操作部は操作部44に対応し、
当接部は当接部43に対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0082】
例えば、上述の説明の鉄筋コンクリート構造物100では、基礎部101の内部に鋼管120を配置し、基礎部101と柱部102とを接続して構築(製造)したが、図10乃至図12に示すように、柱部102の下方の一部である下方柱部102aと基礎部101aとを一体で構成し、柱部102の上方の一部である上方柱部102bと下方柱部102aとを組み付けて鉄筋コンクリート構造物100aを構成してもよい。
【0083】
この場合、鉄筋・型枠組付工程(ステップs1)では、基礎部101aと下方柱部102aの鉄筋を組み立てるとともに、基礎部101a及び下方柱部102aの型枠130aを組み立てることとなる。そして、鋼管据付工程(ステップs2)では、型枠130aにおいて下方柱部102aに対応する部分に鋼管120を配置するように鋼管固定器具1で鋼管120を保持することとなる。
【0084】
基礎部101aと下方柱部102aとを一体的に構成するとともに、内部に鋼管120を配置した下方柱部102aに対して、下方から上側鉛直方向軸鉄筋112bが突出する上方柱部102bを組み付けることで鉄筋コンクリート構造物100aは構成することができる。このように、基礎部101aと下方柱部102aとが一体化されるとともに、下方柱部102aに対して上方柱部102bを組み付けて構成する鉄筋コンクリート構造物100aの鋼管固定器具1を用いた構築方法(製造方法)であっても、上述の鉄筋コンクリート構造物100の鋼管固定器具1を用いた構築方法(製造方法)と同様の効果を奏することができる。
【0085】
さらには、基礎部101の内部に鋼管120を配置した鉄筋コンクリート構造物100に比べ、鋼管120が下方柱部102aの内部に配置されるため、基礎部101aの厚みを薄く形成することができる。したがって、鉄筋コンクリート構造物100における基礎部101としての強度が満足できる厚みで基礎部101aを構成することができる。
【0086】
仮に、鉄筋コンクリート構造物100における基礎部101としての強度が満足できる厚みで形成した基礎部101aの厚みが継手部112Xに外嵌する鋼管120の長さより短い場合は、図13に示すように、鋼管120が配置される箇所のみの厚みを厚くした基礎部101bであってもよい。これにより、鋼管120を内在することができるとともに、鉄筋コンクリート構造物100における基礎部101としての強度が満足できる厚みで基礎部101bを構成することができる。
【0087】
上述の固定体30及び保持部本体40では、内蔵するふたつの磁石の相対的な向きを、操作部32,44の操作で極性を合わせるか逆にするかで磁気をON/OFF切り替えるように構成したが、通電と遮断で磁気をON/OFF切り替えるように構成した電磁石であってもよい。
【0088】
この場合、固定体30に磁気のON/OFF切り替えを操作する操作部32を設け、固定体30に設けられた操作部32で、鋼管120に対する保持部本体40の保持及び保持の解消とを切替えるように構成するとよい。それにより、支持盤10に載置した固定体30に設けた操作部32を操作して、保持部本体40による鋼管120の保持と保持の解消とを切り替えることができる。
【0089】
さらには、磁石でなく、負圧や吸盤による吸着、あるいは係止や粘着等で鋼管120を保持部本体40で保持してもよいし、同様に負圧や吸盤による吸着、あるいは係止や粘着等で支持盤10に固定体30を固定してもよい。
【0090】
また、上述の説明では、鋼管固定器具1を用いて鉄筋コンクリート構造物100を構築(製造)したが、鉄筋コンクリート構造物の一部である鉄筋コンクリート部材を上述の鋼管固定器具1を用いた製造方法で製造してもよい。
さらに、鋼管120は、筒状であれば円環状断面だけでなく、断面楕円環状断面、多角形断面など適宜の断面形状である筒状体であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…鋼管固定器具
10…支持盤
30…固定体
40…保持部本体
43…当接部
44…操作部
50…アーム体
100…鉄筋コンクリート構造物
101…基礎部
102…柱部
112…鉛直方向軸鉄筋
112a…下側鉛直方向軸鉄筋
112b…上側鉛直方向軸鉄筋
112X…継手部
120…鋼管
130…型枠
140…コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13