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2025-70614鉄心保護ケース、アモルファス鉄心モールド変圧器、およびその製造方法
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  • -鉄心保護ケース、アモルファス鉄心モールド変圧器、およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025070614
(43)【公開日】2025-05-02
(54)【発明の名称】鉄心保護ケース、アモルファス鉄心モールド変圧器、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/26 20060101AFI20250424BHJP
   H01F 27/25 20060101ALI20250424BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20250424BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20250424BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20250424BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20250424BHJP
【FI】
H01F27/26 160
H01F27/25
H01F41/02 C
H01F27/06
H01F30/10 J
H01F30/10 A
H01F30/10 G
H01F41/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181075
(22)【出願日】2023-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中島 晶
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊明
(72)【発明者】
【氏名】三本 浩司
【テーマコード(参考)】
5E059
5E062
【Fターム(参考)】
5E059KK13
5E062AA02
5E062AC05
5E062AC13
(57)【要約】
【課題】吊り上げ時に変形を生じずに、アモルファス鉄心を傷つけることなく保護することが可能な鉄心保護ケース、アモルファス鉄心変圧器、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】巻鉄心に被せられる鉄心保護ケースであって、鉄心保護ケースは、ラップ接合される巻鉄心のラップ部の両端の一端を覆う先端部を有した第1の部位と、両端の他端を覆う先端部を有した第2の部位と、第1の部位と第2の部位とをつなぐ第3の部位と、により構成され、第1の部位および第2の部位の第3の部位側と反対側の各先端部は、鉄心保護ケースの外側側面である第1の面と、当該第1の面に所定の角度をもって延伸した第2の面と、により形成され、第2の面に、ラップ部に連結される吊治具を取り付けるための穴が設けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻鉄心に被せられる鉄心保護ケースであって、
前記鉄心保護ケースは、
ラップ接合される前記巻鉄心のラップ部の両端の一端を覆う先端部を有した第1の部位と、前記両端の他端を覆う先端部を有した第2の部位と、前記第1の部位と前記第2の部位とをつなぐ第3の部位と、により構成され、
前記第1の部位および前記第2の部位の前記第3の部位側と反対側の各先端部は、
前記鉄心保護ケースの外側側面である第1の面と、当該第1の面に所定の角度をもって延伸した第2の面と、により形成され、
前記第2の面に、前記ラップ部に連結される吊治具を取り付けるための穴が設けられている、
ことを特徴とする鉄心保護ケース。
【請求項2】
前記穴は、前記各先端部の前記第2の面の中央よりも前記第1の面の側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄心保護ケース。
【請求項3】
前記鉄心保護ケースは、
前記吊治具の前記つなぐ方向の両端に設けられたボルト穴と位置合わせされた前記穴に挿入されたボルトにより、前記吊治具に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄心保護ケース。
【請求項4】
前記鉄心保護ケースは、
前記第3の部位の前記第1の面の前記つなぐ方向の両端部に、前記鉄心保護ケースの前記第3の部位側を吊り上げるための吊り穴が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄心保護ケース。
【請求項5】
前記吊り穴は、
前記吊治具の外側側面の前記つなぐ方向の両端に設けられた前記ラップ部を持ち上げるための吊治具吊り穴に対向する位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項4に記載の鉄心保護ケース。
【請求項6】
前記吊り穴は、
前記吊治具の取り付けのための前記第3の部位側の吊り上げと、前記吊治具吊り穴とによる前記鉄心保護ケースの横倒し状態での吊り上げと、に兼用される穴である、
ことを特徴とする請求項4に記載の鉄心保護ケース。
【請求項7】
前記鉄心保護ケースは、
前記第1の部位の前記第1の面と前記第3の部位の前記第1の面とにより形成される角部、および前記第2の部位の前記第1の面と前記第3の部位の前記第1の面とにより形成される角部に、前記巻鉄心の形状を補強するための補強ステーが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄心保護ケース。
【請求項8】
前記補強ステーは、
前記第3の部位側が吊り上げられた前記鉄心保護ケースに覆われた前記巻鉄心が形成する底辺の両端の外層側の部位である折曲がり部に沿う形状である、
ことを特徴とする請求項7に記載の鉄心保護ケース。
【請求項9】
請求項1に記載の前記鉄心保護ケースが被せられた前記巻鉄心に巻装されたコイルを有するアモルファス鉄心モールド変圧器。
【請求項10】
請求項9に記載のアモルファス鉄心モールド変圧器の製造方法であって、
前記第3の部位の前記第1の面の前記つなぐ方向の両端部に設けられた吊り穴に、ワイヤーを通して吊り上げおよび吊り下ろしすることにより、前記巻鉄心に被せられた前記鉄心保護ケースを横倒し状態にし、
前記吊治具の前記つなぐ方向の両端に設けられたボルト穴と位置合わせされた前記穴に挿入されたボルトにより、前記吊治具を前記鉄心保護ケースに取り付け、
取付けられた前記吊治具の外側側面の前記つなぐ方向の両端に設けられた吊治具吊り穴にワイヤーを取り付けて、前記ラップ部が上方となる縦状態に吊り上げ、
前記吊治具を取り外した前記ラップ部の先端側である上方から、前記巻鉄心に巻装されるコイルを挿入し、
ラップ部カバーにより前記ラップ部を閉じる、
ことを特徴とするアモルファス鉄心モールド変圧器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄心保護ケース、アモルファス鉄心モールド変圧器、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には「コイルとアモルファス材からなる鉄心とを備え、該鉄心は鉄心保護ケースを装着したモールド変圧器において、前記鉄心保護ケースは、穴を設けた上部片を有することを特徴とするアモルファス鉄心モールド変圧器」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-75765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄心材のアモルファス材自体が薄く、アモルファス材を積層して製作する鉄心は自立可能なほどの剛性を有していない。その為、従来、アモルファス鉄心モールド変圧器は、樹脂でモールドされた剛性の高いコイルの上から鉄心を挿入し、コイルに上記鉄心が掛かることで、形を保持している。しかし、この組立方法では鉄心のラップ部がコイルの下部に位置することになり、一度コイルを鉄心ごと水平に横倒し状態にしてからラップ部を閉じる必要がある。その為、組立作業にはコイルが挿入された状態の鉄心を反転する装置が必要になる。
【0005】
特許文献1では、ラップ前のU字状のアモルファス巻鉄心に沿ってU字状かつ断面もU字状の鉄心保護ケースを装着することで、ラップ部を上にした状態でアモルファス巻鉄心が自立し、その上からコイルを挿入、上部にてラップ部を閉じることが可能となり、コイルが挿入された状態の鉄心を反転する必要がなくなる。
【0006】
しかし、特許文献1の鉄心保護ケースのU字外側側面の上部片には起立および起立状態での移動用として吊り穴が設けられているが、距離の離れたU字外側側面の上部片の吊り穴同士で吊り上げると、起立状態での移動は不安定であるため、たわみやねじれ等により鉄心保護ケースが変形する恐れがある。
【0007】
本発明は、吊り上げ時に変形を生じずに、アモルファス鉄心を傷つけることなく保護することが可能な鉄心保護ケース、アモルファス鉄心変圧器、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる鉄心保護ケースは、巻鉄心に被せられる鉄心保護ケースであって、前記鉄心保護ケースは、ラップ接合される前記巻鉄心のラップ部の両端の一端を覆う先端部を有した第1の部位と、前記両端の他端を覆う先端部を有した第2の部位と、前記第1の部位と前記第2の部位とをつなぐ第3の部位と、により構成され、前記第1の部位および前記第2の部位の前記第3の部位側と反対側の各先端部は、前記鉄心保護ケースの外側側面である第1の面と、当該第1の面に所定の角度をもって延伸した第2の面と、により形成され、前記第2の面に、前記ラップ部に連結される吊治具を取り付けるための穴が設けられている、ことを特徴とする鉄心保護ケースとして構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吊り上げ時に変形を生じずに、アモルファス鉄心を傷つけることなく保護することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施例における鉄心保護ケースの全体図
図2】本実施例におけるアモルファス鉄心と装着前の鉄心保護ケースおよびラップ部カバーの説明図
図3】本実施例における鉄心保護ケースおよびラップ部カバー装着後のアモルファス鉄心と絶縁板の説明図
図4】本実施例における鉄心保護ケースおよびラップ部カバー装着後のアモルファス鉄心の反転作業図
図5】本実施例における鉄心保護ケースおよびラップ部カバー装着後のアモルファス鉄心とラップ部専用吊治具の説明図
図6】本実施例における鉄心保護ケースおよびラップ部カバー装着後のアモルファス鉄心の横状態での吊り上げ図
図7】本実施例における鉄心保護ケースおよびラップ部カバー装着後のアモルファス鉄心の自立状態とコイル挿入時にラップ部を直立させる治具を装着する作業図
図8】本実施例における鉄心保護ケースおよびラップ部カバー装着後のアモルファス鉄心にコイルを挿入する作業図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のアモルファス鉄心モールド変圧器及びその製造方法を適用した一実施例について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施例における組立前の鉄心保護ケース3を示す図である。鉄心保護ケース3は、図1に示すように、ラップ部専用吊治具7を取り付けるためのボルトを通す丸穴31、ラップ部専用吊治具7の取り付けおよび所定の組立位置への移動のために鉄心保護ケース3の第3の部位3c側を吊り上げるための吊り穴32、鉄心保護ケース3への装着時に横倒しにした巻鉄心であるアモルファス鉄心2の下面より長い部分である延長部33、ラップ接合されるラップ部21が第3の部位3cよりも上方に位置するような縦状態において、アモルファス鉄心2が自重により鉄心保護ケース3ごと外側に開くことを防ぐための補強ステー34を設けている。
【0013】
鉄心保護ケース3は、第1の辺を形成する第1の部位3aと、当該第1の辺に平行な第2の辺を形成する第2の部位3bと、第1の部位3aの端と第1の部位3aと対向する第2の部位3bの端とを連結する第3の部位3cとにより3方が囲まれた、いわゆるカタカナのコの字形からなるケースである。第1の部位3aの両端のうち第3の部位3cに連結していない側の端である先端E1と、第2の部位3bの両端のうち第3の部位3cに連結していない側の端である先端E2とが離間していることで、上述したコの字形における開放側の領域Rが形成される。
【0014】
第1の部位3aは、鉄心保護ケース3の外側側面を形成する第1の面30a、鉄心保護ケース3の内側側面30b、第1の面30aと内側側面30bとをつなぐ第2の面30cを有し、これらの面により3方が囲まれた、いわゆるカタカナのコの字形である。第2の部位3b、第3の部位3cについても、第1の部位3aと同様のコの字形で形成される。つまり、第1の部位3a、第2の部位3b、第3の部位3cのそれぞれは、アモルファス鉄心2に鉄心保護ケース3を被せる被せ方向に平行な第1の面30aおよび内側側面30bと、上記被せ方向に垂直(後述する横倒し状態で水平)な第2の面30cとにより形成される。上記被せ方向の下方が開放側となることでコの字形が形成され、アモルファス鉄心2が覆われて保護される。図1では、これらの面の向きを点線で示している。
【0015】
鉄心保護ケース3には、第3の部位3cの長手方向の両端に、吊り穴32が設けられている。具体的には、吊り穴32は、第3の部位3cにおいて、第1の部位3aと第2の部位3bとを連結する上記つなぐ方向の両端の第1の面30aに2箇所設けられており、鉄心保護ケース3の丸穴31が設けられる第2の面30cとは異なる面に設けられる。後述するように、吊り穴32は、ラップ部専用吊治具7の取り付けのための第3の部位3c側の吊り上げと、ラップ部専用吊治具7の吊り穴72とによる鉄心保護ケース3の横倒し状態での吊り上げと、に兼用される穴として構成されている。吊り穴32により、鉄心保護ケース3の第3の部位3c側を吊り上げることができ、吊り穴32を上方にした縦状態で容易に表裏反転させることができる。
【0016】
鉄心保護ケース3の第1の部位3aおよび第2の部位3bは、第3の部位3c側と反対側の先端部に、第1の面30aと第2の面30cとにより形成される先端部23a、23b(図2)を有する。第2の面30cは、第1の面30aに所定の角度(この例では、90度)をもって延伸した面である。先端部23a、23bは、ラップ接合されるラップ部21の幅に応じた長さの切り欠き部24a、24bを有する。第1の部位3aおよび第2の部位3bの内側側面30bの長手方向(上記つなぐ方向と垂直な方向)の長さを、第1の面30aおよび第2の面30cよりも短くすることで切り欠き部24a、24bを形成できる。ラップ部21の両端が切り欠き部24a、24bに入り込むことにより、先端部23a、23bがラップ部21の両端を覆うことができる。
【0017】
ラップ部専用吊治具7を取り付けるための丸穴31は、先端部23a、23bの第2の面30cの先端側であって、第2の面30cの中央よりも外側の位置(例えば、第1の面30aとの境界となる位置)に設けられている。丸穴31が第2の面30cの先端側かつ中央よりも外側の位置に設けられるため、アモルファス鉄心2のラップ部21と鉄心保護ケース3の丸穴31とが重ならずに、ラップ部専用吊治具7を容易に鉄心保護ケース3に取り付けることができる。
【0018】
このように、本実施例における鉄心保護ケース3は、アモルファス鉄心2のラップ部21の両端の一端を覆う先端部23aを有した第1の部位3aと、上記両端の他端を覆う先端部23bを有した第2の部位3bと、第1の部位3aと第2の部位3bとをつなぐ第3の部位3cと、により構成され、第1の部位3aおよび第2の部位3bの第3の部位3c側と反対側の各先端部は、鉄心保護ケース3の外側側面である第1の面30aと、当該第1の面に所定の角度(この例では、90度)をもって延伸した第2の面30cと、により形成され、第2の面30cに、ラップ部21に連結されるラップ部専用吊治具7を取り付けるための丸穴31が設けられている。
【0019】
図2は、本実施例における組立前のアモルファス鉄心と鉄心保護ケースの説明図である。本実施例のアモルファス鉄心2に鉄心保護ケース3を取り付ける作業について説明する。まず、図2に示すように、熱処理されたアモルファス鉄心2を、横倒し状態で添え木5の上に置く。この時、添え木5は、鉄心保護ケース3の延長部33を避けて配置される。延長部33は、鉄心保護ケース3の第1の部位3a、第2の部位3b、および第3の部位3cに、上記被せ方向に突出して形成された凸部である。つまり、熱処理されたアモルファス鉄心2に横倒し状態で装着された鉄心保護ケース3は、アモルファス鉄心2を支える添え木5が配置された部分では、アモルファス鉄心2の上記被せ方向の下面まで囲う程度の厚みを有する。一方、添え木5を配置しない部分では、添え木5が配置された部分の鉄心下面よりも自重を考慮した所定幅分だけ上記被せ方向にさらなる厚みを有する。
【0020】
このような凸部形状により、アモルファス鉄心2の自重によるたわみが生じる部分を含め、アモルファス鉄心2全体を上記被せ方向の下面まで囲んで保護するため、自重によるたわみで鉄心保護ケース3からはみ出さないように覆いつつ、アモルファス鉄心2を安定した位置に置くことができる。図2に示しているとおり、延長部33は、第1の部位3a、第2の部位3b、第3の部位3cそれぞれの、第1の面30a、内側側面30bに形成される。鉄心保護ケース3は、第1の部位3aの先端E1、第2の部位3bの先端E2が、アモルファス鉄心2のラップ部21側となるように、アモルファス鉄心2に装着される。
【0021】
アモルファス鉄心2は、絶縁と保護の為、アモルファス鉄心2のラップ部21を除いて、絶縁物ラッピング境界線22まで絶縁紙でラッピングされている。添え木5に置かれたアモルファス鉄心2に、(1)まず、ラップ部21にラップ部カバー4を被せ、続いて、(2)鉄心保護ケース3を被せる。そして、(3)ラップ部21をラップ部カバー4ごと、引張強度が十分にあるテープまたは帯で複数回巻き付けて固定する。
【0022】
次に、(4)図3の如く、鉄心保護ケース3の延長部33に、上記被せ方向の逆方向である下方側から絶縁板6を添え木5の間から挿入し、添え木5に置かれたアモルファス鉄心2の下方側の添え木5に接していない下面に当てる。絶縁板6の数量はアモルファス鉄心2の寸法によって異なる。そして、(5)絶縁板6を当てたアモルファス鉄心2の部分を、鉄心保護ケース3ごと、引張強度が十分にあるテープまたは帯で複数回巻き付けて固定する。
【0023】
さらに、ラップ部専用吊治具7を取り付けるため、(6)図4の如く、図示しない反転装置が、上記(5)までの手順により固定された鉄心保護ケース3の吊り穴32にワイヤーを通し、吊り穴32側が上方になるように90度縦状態に吊り上げた後、クレーン等の吊り上げ装置で水平に180度回転HRする。そして、(7)再度、反転装置が、回転HRした鉄心保護ケース3を吊り下げて、図3に示した状態と表裏が異なる図5のような横倒し状態に戻す。
【0024】
そして、(8)図5の如く、ラップ部専用吊治具7を、アモルファス鉄心2のラップ部21側から、ラップ部カバー4ごとアモルファス鉄心2に被せて装着する。装着の際、鉄心保護ケース3の先端部23a、23bの先端側にある丸穴31とラップ部専用吊治具7のボルト穴71の位置を合わせて、ボルトとナットで物理的に固定し、ラップ部専用吊治具7を鉄心保護ケース3に取り付ける。
【0025】
(9)鉄心保護ケース3を装着したアモルファス鉄心2を所定の組立位置に移動する際は、図6の如く、横倒し状態で鉄心保護ケース3の2つの吊り穴32とラップ部専用吊治具の2つの吊り穴72の合計4カ所をワイヤーで吊り上げる。このように、吊り穴32は、上記(6)および(9)における吊り上げに兼用されるため、鉄心保護ケース3の穴の数を減らすことができ、一定の強度を維持した吊り上げが可能となる。
【0026】
図6に示すように、アモルファス鉄心2のラップ部21に取り付けられたラップ部専用吊治具7が、鉄心保護ケース3の第3の部位3cに平行である第4の部位3dを形成し、第1の部位3aの先端E1と第1の部位3bの先端E2とにより形成されている開放された領域Rが閉じられ、ロの字形状の新たな鉄心保護ケースを形成している。その結果、新たな鉄心保護ケース3の対角線上に、吊り穴32とラップ部専用吊治具7の吊り穴72とが位置づけられる。ロの字形状の新たな鉄心保護ケースでは、ボルト穴71と位置合わせされた丸穴31に挿入されたボルトにより、ラップ部21にラップ部専用吊治具7が連結され、ラップ部21を含めてアモルファス鉄心2を覆うことができる。
【0027】
吊り穴72は、上述した新たな鉄心保護ケース3を所定の組立位置に移動するため、および所定の組立位置に移動した後にラップ部21を持ち上げるために設けられる穴である。ラップ部専用吊治具7が鉄心保護ケース3に物理的に固定されることにより、上述したロの字形状の新たな鉄心保護ケースの外側側面7aが形成される。その結果、吊り穴32は、取付けられたラップ部専用吊治具7の外側側面7aの上記つなぐ方向の両端に設けられた吊り穴72に対向する位置に設けられる。したがって、取付けられたラップ部専用吊治具7の吊り穴72と、鉄心保護ケース3の吊り穴32とにワイヤーを通すことができ、鉄心保護ケース3を横倒し状態でバランスよく水平に吊り上げることができる。ラップ部専用吊治具7が取り付けられた新たな鉄心保護ケース3は、第1の部位3a、第2の部位3b、第3の部位3cのそれぞれの第1の面30aと、第4の部位3dの外側側面7aとにより、ラップ部21を含むアモルファス鉄心2の外側側面を覆っている。
【0028】
図6では、横倒し状態にある鉄心保護ケース3を取り付けたアモルファス鉄心2を示している。この例では、ラップ部専用吊治具7が取り付けられた新たな鉄心保護ケース3の対角線上の四隅に形成された吊り穴72および吊り穴32の配置により、所定の組立位置に移動する際に、吊り穴32と吊り穴72の4か所にワイヤーを通して、鉄心保護ケース3に覆われたアモルファス鉄心2を横倒し状態で吊り上げることができる。その結果、縦状態での2点吊りよりも安定して、かつ鉄心保護ケース3に余計なたわみやねじれを生じさせずに移動させることができる。
【0029】
次に、アモルファス鉄心モールド変圧器の製造方法について説明する。(11)まず、図6に示すラップ部専用吊治具7の2つの吊り穴72のみを使用してワイヤーで吊り上げ、ラップ部21が第3の部位3cよりも上方に位置するような縦状態にする。この時、補強ステー34は、アモルファス鉄心2が自重により鉄心保護ケース3ごと外側に開くことを防ぐ役割がある。また、補強ステー34は、アモルファス鉄心2の外層側のR部(折曲がり部)に沿うような曲線で形作られている。折曲がり部は、鉄心保護ケース3に覆われた上記縦状態におけるアモルファス鉄心2が形成する底面の上記つなぐ方向の両端部である。
【0030】
このように、第1の部位3aと第3の部位3cとの連結部、第2の部位3bと第3の部位3cとの連結部に、アモルファス鉄心2の外層側で形成されるR部の形に沿った形状の補強ステー34が設けられている。図7では、補強ステー34は、第1の部位3aおよび第2の部位3bの第1の面30aと、第3の部位3cの第1の面30aとにより形成される角部Cに設けられる。補強ステー34により、アモルファス鉄心2が自重により鉄心保護ケース3の角部Cに落ち込んでしまうことを防ぐことができる。また、補強ステー34により、アモルファス鉄心2の自重による角部Cへの落ち込みを防ぐことができるため、吊り穴32が上方になるように90度縦状態にする必要が生じた場合でも、アモルファス鉄心2により塞がれていない吊り穴32に容易にワイヤーを通すことができる。また、補強ステー34が折曲がり部に沿うような曲線であるため、アモルファス鉄心2に折り目がつきづらくなり、アモルファス鉄心2の損傷を防ぐことができる。
【0031】
そして、(12)図7の如く、ラップ部21に連結されたラップ部専用吊治具7を上述した新たな鉄心保護ケース3から取り外してラップ部21を開放し、開放したラップ部21の先端側である上方から、ラップ部21を直立させるための治具8を被せ、その後、ラップ部カバー4を一時的に取り外す。
【0032】
さらに、(13)図8の如く、治具8が被せられたラップ部21の上方から、アモルファス鉄心2に巻装されるモールドコイル1を挿入する。その後、(14)再びラップ部カバー4を取り付け、ラップ部21を直立させる治具8を取り外し、アモルファス鉄心2のラップ部21を閉じる。
【0033】
このように、鉄心保護ケース3をアモルファス鉄心2のラップ部21以外の部位に被せ、ラップ部専用吊治具7をラップ部21に被せ、丸穴31とラップ部専用吊治具7のボルト穴71とを位置合わせしてラップ部専用吊治具7を固定した新たな鉄心保護ケース3を形成する。そして、ラップ部専用吊治具7に設けられた吊り穴72により上記新たな保護ケースを吊り上げて、ラップ部21が第3の部位3cよりも上方に位置するような縦状態とする。
【0034】
具体的には、まず、第3の部位3cが有する第1の面30aの、第1の部位3aと第2の部位3bとをつなぐ方向の両端部に設けられた吊り穴32にワイヤーを通して、吊り上げおよび吊り下ろしすることにより、アモルファス鉄心2に被せられた鉄心保護ケース3を横倒し状態にする。そして、ラップ部専用吊治具7の上記つなぐ方向の両端に設けられたボルト穴71と位置合わせされた丸穴31に挿入されたボルトにより、ラップ部専用吊治具7を鉄心保護ケース3に取り付ける。さらに、取付けられたラップ部専用吊治具7の外側側面7aの上記つなぐ方向の両端に設けられた吊り穴72にワイヤーを取り付けて、ラップ部21が上方となる縦状態に吊り上げる。
【0035】
そして、ラップ部専用吊治具7を取り外してラップ部21を開放したのち、開放したラップ部21の先端側である上方から、ラップ部21が開放されたアモルファス鉄心2に、巻装されるモールドコイル1を挿入し、ラップ部カバー4によりラップ部21を閉じる。
【0036】
以上説明したように、本実施例によれば、アモルファス鉄心モールド変圧器の製造時において、鉄心保護ケースによりラップ部が上部に位置した状態でアモルファス鉄心を自立させることができ、上部ラップすることが可能となる。そのため、大型反転機を必要とせず、大幅にアモルファス鉄心モールド変圧器の製造にかかる工数を低減することができる。また、変圧器本体が搬入不可能な納入先にも、鉄心とコイルを分解搬入して現地にて組み立てることが容易になる。
【0037】
具体的には、図1-4等を用いて説明したように、巻鉄心(アモルファス鉄心2)に被せられる鉄心保護ケース(鉄心保護ケース3)において、上記鉄心保護ケースは、ラップ接合される上記巻鉄心のラップ部(ラップ部21)の両端の一端を覆う先端部(先端部23a)を有した第1の部位(第1の部位3a)と、上記両端の他端を覆う先端部(先端部23b)を有した第2の部位(第2の部位3b)と、上記第1の部位と上記第2の部位とをつなぐ第3の部位(第3の部位3c)と、により構成され、上記第1の部位および上記第2の部位の上記第3の部位側と反対側の各先端部は、上記鉄心保護ケースの外側側面である第1の面(第1の面30a)と、当該第1の面に所定の角度(例えば、90度)をもって延伸した第2の面(第2の面30c)と、により形成され、上記第2の面に、上記ラップ部に連結される吊治具(ラップ部専用吊治具7)を取り付けるための穴(丸穴31)が設けられている。このような構成により、例えば、吊り上げ時にたわみやねじれ等の変形を生じずに、アモルファス鉄心2を傷つけることなく保護することができる。また、丸穴31が第2の面30cに設けられていることにより、鉄心保護ケース3をアモルファス鉄心2に被せる際に穴の位置を確認でき、ラップ部専用吊治具7の取り付けが容易となる。
【0038】
また、上記穴は、上記各先端部の上記第2の面30cの中央よりも上記第1の面の側に設けられている。このような構成により、例えば、丸穴31がラップ部21により塞がれる恐れがなくなり、ラップ部専用吊治具7を容易に鉄心保護ケース3に取り付けることができる。
【0039】
また、上記鉄心保護ケースは、上記吊治具の上記つなぐ方向の両端に設けられたボルト穴(ボルト穴71)と位置合わせされた上記穴に挿入されたボルトにより、上記吊治具に取り付けられる。このような構成により、例えば、ラップ部21にラップ部専用吊治具7が連結され、ラップ部21を含めてアモルファス鉄心2を覆う新たなロの字形状の鉄心保護ケース3を形成することができる。
【0040】
また、上記鉄心保護ケースは、上記第3の部位の上記第1の面の上記つなぐ方向の両端部に、上記鉄心保護ケースの上記第3の部位側を吊り上げるための吊り穴(吊り穴32)が設けられている。このような構成により、例えば、鉄心保護ケース3の第3の部位3c側を吊り上げることができ、吊り穴32を上方にした縦状態での表裏反転が容易となる。
【0041】
また、上記吊り穴は、上記吊治具の外側側面の上記つなぐ方向の両端に設けられた上記ラップ部を持ち上げるための吊治具吊り穴に対向する位置に設けられている。このような構成により、例えば、取付けられたラップ部専用吊治具7の吊り穴72と、鉄心保護ケース3の吊り穴32とにワイヤーを通すことができ、鉄心保護ケース3を横倒し状態でバランスよく水平に吊り上げることができる。
【0042】
また、上記吊り穴は、上記吊治具の取り付けのための上記第3の部位側の吊り上げと、上記吊治具吊り穴とによる上記鉄心保護ケースの横倒し状態での吊り上げと、に兼用される穴である。このような構成により、例えば、鉄心保護ケース3の穴の数を減らすことができるため、一定の強度を維持しつつ、鉄心保護ケース3の吊り上げが可能となる。
【0043】
また、上記鉄心保護ケースは、上記第1の部位の上記第1の面と上記第3の部位の上記第1の面とにより形成される角部(角部C)、および上記第2の部位の上記第1の面と上記第3の部位の上記第1の面とにより形成される角部(角部C)に、上記巻鉄心の形状を補強するための補強ステー(補強ステー34)が設けられている。このような構成により、例えば、アモルファス鉄心2が自重による鉄心保護ケース3の角部Cへの落ち込みを防ぐことができるとともに、吊り穴32に容易にワイヤーを通すことができる。
【0044】
また、上記補強ステーは、上記第3の部位側が吊り上げられた上記鉄心保護ケースに覆われた上記巻鉄心が形成する底辺の両端の外層側の部位である折曲がり部(R部)に沿う形状である。このような構成により、例えば、折曲がり部(R部)で折り目がつきづらくなり、アモルファス鉄心2の損傷を防ぐことができる。
【0045】
本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化したり、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 モールドコイル
2 アモルファス鉄心
21 アモルファス鉄心ラップ部
22 絶縁物ラッピング境界線
3 鉄心保護ケース
31 専用吊治具を取り付ける為のボルトを通す丸穴
32 吊り穴
33 延長部
34 補強ステー
4 ラップ部カバー
5 添え木
6 絶縁板
7 ラップ部専用吊治具
71 専用吊治具のボルト穴
72 専用吊治具の吊り穴
8 コイル挿入時にラップ部を直立させる治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8