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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007071
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ガス吹き込み管
(51)【国際特許分類】
   B22D 1/00 20060101AFI20250109BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20250109BHJP
   B22D 41/58 20060101ALI20250109BHJP
   C21C 7/072 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B22D1/00 B
B22D45/00 B
B22D41/58
C21C7/072 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108232
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000141808
【氏名又は名称】株式会社宮本工業所
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】柿本 康宏
(72)【発明者】
【氏名】原 大介
(72)【発明者】
【氏名】今枝 孝文
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013CA12
4K013CA16
4K013CA18
(57)【要約】
【課題】先端部が脱落することを低減するガス吹き込み管を提供すること。
【解決手段】ガス吹き込み管1は、管第一端部25と管第二端部26を有する円筒状の管部材2と、管部材2の内部に形成される多孔質部材3と、管部材2の外部を覆う保護材4と、管部材2の上流側に接続されるガス管9を備える。多孔質部材3は、下流側の端部から上流側に向かう所定の範囲において、多孔質部材3の多孔質材外周36から少なくとも一部が径方向に凹む段部33を有する。管部材2は管突出部23が形成され、多孔質部材3における段部33の下流側の少なくとも一部を覆う。多孔質部材3の少なくとも一部は、管第一端部25よりも下流側に突出する。保護材4は、多孔質部材3の下流側端部である多孔質材第一端部34の少なくとも一部が下流側に露出した状態で、管部材2の管外周20及び管第一端部25を覆うよう形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯容器内の金属溶湯に浸漬させてガスを吹き込むガス吹き込み管であって、
前記ガスの流れ方向において該ガスが供給される側を上流側とし、前記金属溶湯に吹き込まれる側を下流側とし、
前記下流側に管第一端部、前記上流側に管第二端部を有する円筒状の管部材と、
前記管部材の内部に形成される多孔質部材と、
前記管部材の外部を覆う保護材と、
前記管部材の前記上流側に接続されるガス管を備え、
前記管第一端部と前記管第二端部とを結ぶ方向を軸方向とし、該軸方向の垂直方向を径方向とし、
前記多孔質部材は、前記下流側の端部から前記上流側に向かう所定の範囲において、該多孔質部材の外周の少なくとも一部が前記径方向に凹む段部を有し、
前記管部材は、外周を形成する管壁部に対し、前記管第一端部において前記軸方向に所定の厚みを有して前記径方向の内側に突出する管突出部が形成され、
前記管突出部は、前記多孔質部材における前記段部の前記下流側の少なくとも一部を覆い、
前記多孔質部材の少なくとも一部は、前記管第一端部よりも前記下流側に突出し、
前記保護材は、前記多孔質部材の下流側端部である多孔質材第一端部の少なくとも一部が前記下流側に露出した状態で、前記管部材の外周及び前記管第一端部を覆うよう形成されるガス吹き込み管。
【請求項2】
前記多孔質材第一端部は、前記保護材の下流側端部である保護材第一端部と同一面にあるか、或いは前記保護材第一端部よりも前記下流側に突出する請求項1に記載のガス吹き込み管。
【請求項3】
前記多孔質材第一端部は、前記保護材の下流側端部である保護材第一端部よりも前記上流側に凹む請求項1に記載のガス吹き込み管。
【請求項4】
前記保護材は、前記軸方向において前記保護材第一端部の側がより大きく開口するよう保護材傾斜部が形成される請求項3に記載のガス吹き込み管。
【請求項5】
前記管壁部の管外周と前記保護材の外周との間に、前記保護材の脱落防止部が形成される請求項1に記載のガス吹き込み管。
【請求項6】
前記脱落防止部は、前記管外周を囲むように形成されるラス網であり、
前記ラス網の前記下流側の端部は、前記管第一端部よりも前記下流側にまで形成される請求項5に記載のガス吹き込み管。
【請求項7】
前記脱落防止部は、前記管外周に形成された凹凸部である請求項5に記載のガス吹き込み管。
【請求項8】
前記管部材は、第一管部材と第二管部材を有し、
前記第二管部材の内径は、前記第一管部材の内径よりも小さく、
前記管突出部は前記第一管部材に形成され、
前記管突出部における前記上流側の内壁面と前記多孔質部材とは、第一シール材を介して接触し、
前記ガス管の前記下流側の端部と前記多孔質部材とは、ワッシャーの両面を挟む第二シール材を介して接触し、
前記第一管部材と前記第二管部材とは一体的に結合され、
前記ガス管は、前記第二管部材に締結された状態である請求項1から7のいずれかに記載のガス吹き込み管。
【請求項9】
前記管突出部は、周方向の全周において前記多孔質部材における前記段部の下流側を覆う請求項8に記載のガス吹き込み管。
【請求項10】
前記管突出部は、周方向の一部において前記多孔質部材における前記段部の下流側を覆う請求項8に記載のガス吹き込み管。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯容器内の金属溶湯に浸漬させてガスを吹き込むガス吹き込み管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属溶湯内に混入した酸素や水素などのガスを排除する事を目的として、不活性ガスを溶湯中に吹き込むガス吹き込みが行われている。例えば、従来例として特許文献1に記載の保持炉用ガス吹き込み装置は、溶湯保持炉内にガス吹き込み管を設置し、このガス吹き込み管の先端部を溶湯保持炉の底面近傍まで延設したものである。ガス吹き込み管の先端部には、ポーラス状の吹き出し具が連結されている。不活性ガスは、吹き込み管を介して保持炉内に流入し、この吹き出し具の細孔から金属溶湯内に拡散する。この構成によれば、不活性ガスが金属溶湯中の酸素と物理吸着し、酸素を不活性状態にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-200858
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来例では吹き出し具がガス吹き込み管の先端部のみに連結されているので、ガスを吹き込む際のガスの圧力によって吹き出し具が脱落し破損する恐れがある。その場合、先端部からガスが勢いよく吹き出す突沸が起きる恐れがある。また、保持炉内に圧力がかかっている場合、金属溶湯がガス吹き込み管内へ逆流する恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、先端部が脱落することを低減するガス吹き込み管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るガス吹き込み管は、溶湯容器内の金属溶湯に浸漬させてガスを吹き込むガス吹き込み管であって、前記ガスの流れ方向において該ガスが供給される側を上流側とし、前記金属溶湯に吹き込まれる側を下流側とし、前記下流側に管第一端部、前記上流側に管第二端部を有する円筒状の管部材と、前記管部材の内部に形成される多孔質部材と、前記管部材の外部を覆う保護材と、前記管部材の前記上流側に接続されるガス管を備え、前記管第一端部と前記管第二端部とを結ぶ方向を軸方向とし、該軸方向の垂直方向を径方向とし、前記多孔質部材は、前記下流側の端部から前記上流側に向かう所定の範囲において、該多孔質部材の外周の少なくとも一部が前記径方向に凹む段部を有し、前記管部材は、外周を形成する管壁部に対し、前記管第一端部において前記軸方向に所定の厚みを有して前記径方向の内側に突出する管突出部が形成され、前記管突出部は、前記多孔質部材における前記段部の前記下流側の少なくとも一部を覆い、前記多孔質部材の少なくとも一部は、前記管第一端部よりも前記下流側に突出し、前記保護材は、前記多孔質部材の下流側端部である多孔質材第一端部の少なくとも一部が前記下流側に露出した状態で、前記管部材の外周及び前記管第一端部を覆うよう形成される。
【0007】
これによれば、多孔質部材は、先端部である下流側において、段部が管突出部に覆われるので、ガスを吹き込む際のガスの圧力によって多孔質部材が脱落し破損することを低減できる。さらに、保護材は管第一端部を覆うよう形成されるので、管部材が金属溶湯の熱によって溶損等することを低減することができる。よって、多孔質部材が脱落して損傷することをより低減することができる。
【0008】
また、前記ガス吹き込み管は、前記多孔質材第一端部が、前記保護材の下流側端部である保護材第一端部と同一面にあるか、或いは前記保護材第一端部よりも前記下流側に突出してもよい。
【0009】
この場合、多孔質部材の下流側の端部は保護材の下流側の端部と同一面にあるか下流側に突出するので、多孔質部材から吹き込まれるガスが凝集することを低減することができる。
【0010】
また、前記ガス吹き込み管は、前記多孔質材第一端部が、前記保護材の下流側端部である保護材第一端部よりも前記上流側に凹んでもよい。この場合、多孔質材第一端部は保護材第一端部よりも上流側に凹むので、多孔質材が脱落することを低減できる。
【0011】
また、前記ガス吹き込み管は、保護材が、前記軸方向において前記保護材第一端部の側がより大きく開口するよう保護材傾斜部が形成される。この場合、多孔質材から吹き込まれるガスは保護材の傾斜面に沿って吹き込まれるので、ガスが凝集することを低減することができる。
【0012】
また、前記ガス吹き込み管は、前記管壁部の管外周と前記保護材の外周との間に、前記保護材の脱落防止部が形成されてもよい。この場合、保護材は管部材の外周から脱落することを低減できる。
【0013】
また、前記ガス吹き込み管は、前記脱落防止部が、前記管外周を囲むように形成されるラス網であり、前記ラス網の前記下流側の端部は、前記管第一端部よりも前記下流側にまで形成されてもよい。
【0014】
この場合、脱落防止部であるラス網が、管第一端部よりも下流側にまで形成されるので、保護材が管部材の外周から脱落することをより低減することができる。
【0015】
また、前記ガス吹き込み管は、前記脱落防止部が、前記管外周に形成された凹凸部でもよい。この場合、管壁部の外周面に凹凸部が形成されるので、保護材が管部材の外周から脱落することを低減することができる。
【0016】
また、前記ガス吹き込み管は、前記管部材が第一管部材と第二管部材を有し、前記第二管部材の内径は、前記第一管部材の内径よりも小さく、前記管突出部は前記第一管部材に形成され、前記管突出部における前記上流側の内壁面と前記多孔質部材とは、第一シール材を介して接触し、前記ガス管の前記下流側の端部と前記多孔質部材とは、ワッシャーの両面を挟む第二シール材を介して接触し、前記第一管部材と前記第二管部材とは一体的に結合され、前記ガス管は、前記第二管部材に締結された状態でもよい。
【0017】
この場合、多孔質部材は、下流側において第一管部材の管突出部と第一シール材を介して接触し、上流側においてガス管とワッシャーを挟む二枚の第二シール材を介して接触し、さらにガス管が第二管部材に締結される。よって、第一管部材と、多孔質部材及びガス管との間の気密性が高められ、多孔質部材以外からのガス漏れを低減することができる。
【0018】
また、前記ガス吹き込み管は、前記管突出部が、周方向の全周において前記多孔質部材における前記段部の下流側を覆ってもよい。この場合、管突出部は、周方向の全周において多孔質部材の段部を覆うので、管突出部は、多孔質部材が下流側に抜けようとする場合に周方向において均等に支持することができる。
【0019】
また、前記ガス吹き込み管は、前記管突出部が、周方向の一部において前記多孔質部材における前記段部の下流側を覆ってもよい。この場合、管突出部は、周方向の一部において多孔質部材の段部を覆うので、管突出部は、多孔質部材が下流側に抜けようとする場合に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のガス吹き込み管1を溶湯容器60内に浸漬させた状態を示す図である。
図2】本発明の第一実施形態であるガス吹き込み管1aを示し、(a)は下流側先端部を軸中心Cに沿って切断した断面図であり、(b)は(a)の下流側先端部の斜視図であり、破線によるハッチング部は多孔質部材3aが露出する部分を示す。
図3】本発明の第一実施形態であるガス吹き込み管1aの一部変形例を示し、(a)は下流側先端部を軸中心Cに沿って切断した断面図であり、(b)はA部詳細図の第一例であり、(c)はA部詳細図の第二例である。
図4】本発明の第二実施形態であるガス吹き込み管1bを示し、(a)は下流側先端部を軸中心Cに沿って切断した断面図であり、(b)は(a)の下流側先端部の斜視図であり、破線によるハッチング部は多孔質部材3bが露出する部分を示す。
図5】本発明の第三実施形態であるガス吹き込み管1cを示し、(a)は下流側先端部を軸中心Cに沿って切断した断面図であり、(b)は(a)の下流側先端部の斜視図であり、破線によるハッチング部は多孔質部材3cが露出する部分を示す。
図6】本発明の第四実施形態であるガス吹き込み管1dを示し、(a)は下流側先端部を軸中心Cに沿って切断した断面図であり、(b)は(a)の下流側先端部の斜視図であり、破線によるハッチング部は多孔質部材3dが露出する部分を示す。
図7】本発明の第五実施形態であるガス吹き込み管1eを示し、(a)は下流側先端部を軸中心Cに沿って切断した断面図であり、(b)は(a)の下流側先端部の斜視図であり、破線によるハッチング部は多孔質部材3eが露出する部分を示し、(c)は(a)のB部における別の例を示す部分図である。
図8】本発明の第六実施形態であるガス吹き込み管1fを示し、(a)は下流側先端部を軸中心Cに沿って切断した断面図であり、(b)は(a)の下流側先端部の斜視図であり、破線によるハッチング部は多孔質部材3fが露出する部分を示す。
図9】本発明の第七実施形態であるガス吹き込み管1gを示し、(a)は下流側先端部を軸中心Cに沿って切断した断面図であり、(b)は(a)の下流側先端部の斜視図であり、破線によるハッチング部は多孔質部材3gが露出する部分を示す。
図10】本発明の第八実施形態であるガス吹き込み管1hを示し、(a)は下流側先端部を軸中心Cに沿って切断した断面図であり、(b)は(a)の下流側先端部の斜視図であり、破線によるハッチング部は多孔質部材3hが露出する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明を具現化したガス吹き込み管1を説明する。なお、発明を実施するための形態、及び参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。本発明はこれらに限定されるものではない。図面に記載されている構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0022】
<各実施形態に共通の内容及び効果>
図1から図3までを代表例として参照し、本発明の態様に係るガス吹き込み管1の各実施形態に共通の構成を説明する。図1に示すように、ガス吹き込み管1は、溶湯容器60内の金属溶湯61に浸漬させてガス8を吹き込むものである。図2に示すように、ガス8の流れ方向においてガス8が供給される側を上流側とし、金属溶湯61に吹き込まれる側を下流側とする。ガス吹き込み管1は、下流側に管第一端部25、上流側に管第二端部26を有する円筒状の管部材2と、管部材2の内部に形成される多孔質部材3と、管部材2の外部を覆う保護材4と、管部材2の上流側に接続されるガス管9を備える。管第一端部25と管第二端部26とを結ぶ方向を軸方向とし、軸方向に垂直方向を径方向とする。
【0023】
図2等に示すように、多孔質部材3は、下流側の端部から上流側に向かう所定の範囲において、多孔質部材3の多孔質材外周36から少なくとも一部が径方向に凹む段部33を有する。管部材2は、管外周20を形成する管壁部29に対し、管第一端部25において軸方向に所定の厚みを有して径方向の内側に突出する管突出部23が形成される。管突出部23は、多孔質部材3における段部33の下流側の少なくとも一部を覆う。多孔質部材3の少なくとも一部は、管第一端部25よりも下流側に突出する。保護材4は、多孔質部材3の下流側端部である多孔質材第一端部34の少なくとも一部が下流側に露出した状態で、管部材2の管外周20及び管第一端部25を覆うよう形成される。
【0024】
次に、保護材4について説明する。保護材4は、例としてキャスタブルが使用される。キャスタブルは、粉粒状の不定形耐火物に水やバインダーを添加したものを型に流し込んで固めたものである。製造方法の例として、ガス吹き込み管1のうち、保護材4を除く部分を組み立てたユニットを型に挿入し、粉粒状の不定形耐火物に水やバインダーを添加して型に流し込んで固める。別の例として、粘土状にした不定形耐火物をユニットに塗布してもよい。
【0025】
次に、多孔質部材3について説明する。多孔質部材3は、例として定形耐火物が使用される。定形耐火物は、加圧成形によって成形されたレンガが一例である。
【0026】
一般に、アルミニウムや銅の溶湯は、その溶湯中にアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを吹込むことにより、溶湯中に混入している水素濃度を下げることができる。また溶湯中の酸化物等の不純物もガスの気泡により凝集してスラグとして溶湯から分離できるので、金属の性能向上をはかることができる。従来、この脱ガス処理のための装置としては、高速回転する回転翼端部からガスの気泡を細分化しつつ吹込む撹拌式のものが多く用いられていたが、高速回転に伴う装置のトラブルが発生しやすく、またガス量が多い場合は気泡の微細化は困難であった。
【0027】
ガス吹き込み管1から溶湯容器60内の金属溶湯61に吹き込むガス8は、多孔質部材3を通るので、気泡を微細化することができ、脱ガス性能が向上する。ガス吹き込み管1は、多孔質材第一端部34の少なくとも一部が下流側に露出するので、多孔質部材3によって微細化されたガス8を、多孔質部材3から金属溶湯61へ直接吹き込むことができる。ガス8は、金属溶湯61の酸化物等の不純物をガス8の気泡により凝集してスラグとして分離できる。
【0028】
溶湯容器60内の金属溶湯61は、例として約1400度の高温となる。ガス吹き込み管1は高温の金属溶湯61に晒され、例えば管部材2が金属溶湯61に対して露出すると、溶損等する可能性がある。図2に例示するように、保護材4は、管第一端部25と保護材第一端部41との間の厚みt1が10mm以上であり、保護材4の外周と管部材2の管外周20との間の厚みt2が10mm以上である。
【0029】
以上説明したガス吹き込み管1の構成によれば、以下の効果を奏する。ガス吹き込み管1は、多孔質部材3が先端部である下流側において、段部33が管突出部23に覆われる。よって、多孔質部材3は、ガス8を吹き込む際のガス8の圧力によって脱落し破損することを低減できる。さらに、保護材4は管第一端部25を覆うよう形成されるので、管部材2が金属溶湯61の熱によって溶損等することを低減することができる。よって、多孔質部材3が脱落して損傷することをより低減することができる。
【0030】
次に、保護材4の脱落を防止する脱落防止部7について説明する。図2及び図3に示すように、管壁部29の管外周20と保護材4の外周との間に、保護材4の脱落防止部7が形成される。脱落防止部7は、幾つかの構成を適用可能である。図2に示すように、脱落防止部7の第一例は、管外周20を囲むように形成されるラス網7aである。ラス網7aは、下流側の端部が管第一端部25よりも下流側にまで形成される。さらに、ラス網7aの下流側の端部は、保護材4の下流側の端部である保護材第一端部41にまで形成されてもよい。ラス網7aの網目形状及び網目サイズは、保護材4に使用する材料の粒径、その他の条件に対応して選択される。また、図2に示すように、ラス網7aは例として径方向において管外周20と保護材4の外周面との略中間位置に埋設される。なお、ラス網7aは保護材4の外周面に露出しないように埋設される。
【0031】
また、図3に示すように、脱落防止部7の第二例は、管外周20に形成された凹凸部7bである。凹凸部7bの形状は、図3(b)に示す例のように、管外周20に山と谷からなる凹凸形状が形成されてもよい。または、図3(c)に示すように、管外周20に山と谷からなる凹凸形状が形成されながら、山側である管外周20の一部に平面が形成され、谷側である凹部に平面が形成されてもよい。その他、第二例の脱落防止部7は、管外周20に凹凸形状が形成されれば他の形状でもよい。
【0032】
以上説明した脱落防止部7の構成によれば、以下の効果を奏する。ガス吹き込み管1は、管外周20と保護材4の外周との間に脱落防止部7が形成されるので、保護材4は管部材2の外周から脱落することを低減できる。よって、保護材4はより確実に管部材2を保護することができる。
【0033】
脱落防止部7が第一例のラス網7aの場合、ラス網7aは管第一端部25よりも下流側にまで形成されるので、保護材4が管部材2の外周から脱落することをより低減することができる。さらに、ラス網7aの下流側の端部が、保護材第一端部41にまで形成されると、管第一端部25よりもさらに下流側から保護材4の脱落を低減できる。
【0034】
脱落防止部7が第二例の凹凸部7bの場合、凹凸部7bは管部材2の管外周20に直接形成できる。よって、保護材4の脱落防止のために新たな部品を追加する必要が無く、コストを低減できる。
【0035】
次に、ガス吹き込み管1の構造を説明する。図2等に示すように、ガス吹き込み管1の管部材2は、第一管部材21と第二管部材22を有する。第二管部材22の内径は、第一管部材21の内径よりも小さい。管突出部23は第一管部材21に形成され、管突出部23における上流側の管突出部内側面28と多孔質部材3とは、第一シール材51を介して接触する。ガス管9の下流側の端部と多孔質部材3の多孔質材第二端部35とは、ワッシャー53の両面を挟む第二シール材52を介して接触する。第一管部材21と第二管部材22とは一体的に結合される。例として、第一管部材21と第二管部材22は、溶接部50において溶接される。ガス管9は、第二管部材22に締結された状態である。例として、ガス管9はネジ部10において第二管部材22に締結される。
【0036】
以上説明したガス吹き込み管1の構造によれば、以下の効果を奏する。多孔質部材3は、下流側において第一管部材21の管突出部23と第一シール材51を介して接触し、上流側においてガス管9とワッシャー53を挟む二枚の第二シール材52を介して接触し、さらにガス管9が第二管部材22に締結される。よって、第一管部材21と、多孔質部材3及びガス管9との間の気密性が高められ、多孔質部材3以外からのガス漏れを低減することができる。
【0037】
<<複数の実施形態に共通する内容及び効果の説明>>
<軸方向における多孔質材第一端部34と保護材第一端部41との位置関係>
次に、本発明の態様に係るガス吹き込み管1の各実施形態のうち、複数の実施形態に共通する内容を説明する。まず、軸方向における多孔質材第一端部34と保護材第一端部41との位置関係を説明する。図1から図5までと、図8から図10までに示す例では、第一実施形態のガス吹き込み管1aから第三実施形態のガス吹き込み管1cまでと、第六実施形態のガス吹き込み管1fから第八実施形態のガス吹き込み管1hまでは以下の構成である。すなわち、ガス吹き込み管1は、多孔質材第一端部34が保護材4の下流側端部である保護材第一端部41と同一面にあるか、或いは保護材第一端部41よりも下流側に突出する。図6及び図7に示す他の例は、第四実施形態のガス吹き込み管1d、及び第五実施形態のガス吹き込み管1eにて後述する。
【0038】
以上説明した構成によれば、以下の効果を奏する。多孔質部材3の下流側の端部である多孔質材第一端部34は、保護材4の下流側の端部である保護材第一端部41と同一面になるか下流側に突出する。よって、多孔質部材3から吹き込まれるガス8が凝集することを低減することができる。
【0039】
<管突出部23と段部33との関係と効果>
次に、管突出部23と段部33との関係を説明する。まず第一例として図1から図7までに示すように、第一実施形態のガス吹き込み管1aから第五実施形態のガス吹き込み管1eまでは、管突出部23が周方向の全周において多孔質部材3の段部33の下流側を覆う。
【0040】
以上説明した第一例の構成によれば、管突出部23は、周方向の全周において多孔質部材3の段部33を覆うので、管突出部23は、多孔質部材3が下流側に抜けようとする場合に周方向において均等に支持することができる。
【0041】
第二例として図8から図10までに示す例のように、第六実施形態のガス吹き込み管1fから第八実施形態のガス吹き込み管1hまでは、管突出部23が周方向の一部において多孔質部材3における段部33の下流側を覆う。
【0042】
以上説明した第二例の構成によれば、管突出部23は、周方向の一部において多孔質部材3の段部33を覆うので、多孔質部材3が下流側に抜けようとする場合に支持することができる。
【0043】
<<各実施形態に固有の内容、及び効果の説明>>
<第一実施形態のガス吹き込み管1aの内容と効果>
次に、各実施形態に固有の内容を説明する。図2を参照して、第一実施形態のガス吹き込み管1aを説明する。多孔質部材3aは、段部33を形成する円柱状の小径部31と、円柱状の大径部32とで形成される。段部33は、周方向の全周に渡って形成される。管部材2aは、多孔質部材3aの少なくとも一部を覆う第一管部材21aと、第一管部材21aに結合されてガス管9を覆う第二管部材22からなる。第一管部材21aは、管第一端部25において、周方向の全周に渡って管突出部23aが形成され、管壁部29の内径よりも小さな外径の管開口部30が形成される。管突出部23aの上流側の面である管突出部内側面28は、第一シール材51を介して、周方向の全周に渡って多孔質部材3aにおける段部33の下流側と接触する。なお、図3に示すガス吹き込み管1aは、既に説明したように脱落防止部7が凹凸部7bによって形成される別の例である。
【0044】
以上説明した第一実施形態のガス吹き込み管1aによれば、既に説明した各実施形態に共通の効果に加え以下の効果を奏する。管突出部23aの管突出部内側面28は、周方向の全周に渡って第一シール材51を介して多孔質部材3aの段部33の下流側に接触する。よって、多孔質部材3aは、ガス8を吹き込む際のガス8の圧力によって脱落し破損することをより低減できる。保護材4は、管突出部23aの下流側を周方向の全周に渡って覆うので、管部材2aが金属溶湯61によって溶損等することをより低減できる。多孔質部材3aは、段部33が周方向の全周に渡って管突出部23aに覆われるので、段部33からガス8が漏れることを低減できる。さらに、多孔質材第一端部34と保護材第一端部41とは同一面上にあるので、ガス8が吹き込まれるとき凝集することを低減できる。
【0045】
<第二実施形態のガス吹き込み管1bの内容と効果>
次に、図4を参照して、第二実施形態のガス吹き込み管1bを説明する。ガス吹き込み管1bは、ガス吹き込み管1aに対して、多孔質部材3bが保護材第一端部41よりも下流側に突出する点が異なる。管部材2bの第一管部材21bは、管突出部23bを含めてガス吹き込み管1aの管部材2aの第一管部材21aと同様の構成と形状である。保護材第一端部41よりも下流側に突出する部分の多孔質部材3bは、円柱状の形状である。
【0046】
以上説明した第二実施形態のガス吹き込み管1bによれば、既に説明した第一実施形態のガス吹き込み管1aの効果に加え以下の効果を奏する。ガス吹き込み管1bは、多孔質部材3bが保護材第一端部41よりも下流側に突出する。多孔質部材3bは、金属溶湯61に露出する表面積が増加する。よって、ガス吹き込み管1bは、ガス8の吹き込み量を増加させることができる。また、ガス8が吹き込まれるとき凝集することを低減できる。
【0047】
<第三実施形態のガス吹き込み管1cの内容と効果>
次に、図5を参照して、第三実施形態のガス吹き込み管1cを説明する。ガス吹き込み管1cは、ガス吹き込み管1bに対して、多孔質部材3cの多孔質材第一端部34の形状が異なる。管部材2cの第一管部材21cは、管突出部23cを含めてガス吹き込み管1aの第一管部材21aと同様の構成と形状である。多孔質材第一端部34は、全周に渡って端部に面取りによる多孔質材傾斜部37が形成される。
【0048】
以上説明した第三実施形態のガス吹き込み管1cによれば、ガス吹き込み管1bの効果に加え以下の効果を奏する。ガス吹き込み管1cの多孔質材第一端部34は、全周に渡って端部に面取りによる多孔質材傾斜部37が形成されるので、作業時等に多孔質部材3cが折損等することを低減できる。
【0049】
<第四実施形態のガス吹き込み管1d及び第五実施形態のガス吹き込み管1eの内容と効果>
次に、図6及び図7を参照して、第四実施形態のガス吹き込み管1dと第五実施形態のガス吹き込み管1eを説明する。軸方向における多孔質材第一端部34と保護材第一端部41との位置関係を説明する。図6及び図7に示す例である第四実施形態のガス吹き込み管1dと第五実施形態のガス吹き込み管1eは、多孔質材第一端部34が保護材4の下流側端部である保護材第一端部41よりも上流側に凹む。管部材2dの第一管部材21d及び管部材2eの第一管部材21eは、管突出部23d及び管突出部23eを含めてガス吹き込み管1aの第一管部材21aと同様の構成と形状である。
【0050】
次に、図6を参照して、第四実施形態のガス吹き込み管1dを説明する。ガス吹き込み管1dは、ガス吹き込み管1aに対して、多孔質部材3dが保護材第一端部41よりも上流側に凹む点が異なる。保護材4は、多孔質材第一端部34の下流側の位置に、多孔質材第一端部34の外径と略同一径の凹部44が形成される。
【0051】
次に、図7を参照して、第五実施形態のガス吹き込み管1eを説明する。ガス吹き込み管1eは、ガス吹き込み管1dに対して、保護材第一端部41の形状が異なる。第五実施形態のガス吹き込み管1eは、保護材4が軸方向において保護材第一端部41の側がより大きく開口するよう保護材傾斜部42が形成され、円錐台状の凹部45が形成される。保護材傾斜部42の起点は、図7(a)に示すように、多孔質部材3eの多孔質材第一端部34にあってもよいし、図7(c)に示すように、ストレート部43の径方向の外側端部にあってもよい。
【0052】
以上説明した第四実施形態のガス吹き込み管1d及び第五実施形態のガス吹き込み管1eによれば、各実施形態に共通の効果に加え以下の効果を奏する。多孔質材第一端部34は保護材第一端部41よりも上流側に凹むので、多孔質部材3が脱落することを低減できる。また、第五実施形態のガス吹き込み管1eは、多孔質材第一端部34と保護材第一端部41との間は、下流側がより大きく開口するよう保護材4による保護材傾斜部42が形成される。よって、多孔質部材3から吹き込まれるガス8は保護材4の保護材傾斜部42に沿って吹き込まれるので、ガス8が凝集することを低減することができる。
【0053】
<第六実施形態のガス吹き込み管1fの内容と効果>
次に、図8を参照して、第六実施形態のガス吹き込み管1fを説明する。ガス吹き込み管1fにおける管部材2fの第一管部材21fは、ガス吹き込み管1aに対して管第一端部25の形状が異なる。管第一端部25は、周方向の一部が上流側に向かって切除され、管突出部23fが下流側に突出した形状である。図8(b)に示す例では、管突出部23fが、周方向において180度の範囲になるよう管突出部周方向端部27が形成される。多孔質部材3fの段部33の下流側は、一部が第一シール材51を介して管突出部23fの管突出部内側面28と接触し、他の部分は保護材4と接触する。なお、管突出部23fは、必ずしも半円形状にする必要は無く、周方向における任意の範囲に形成可能である。さらに、管突出部23fは周方向の複数箇所に独立して形成されてもよい。
【0054】
以上説明した第六実施形態のガス吹き込み管1fによれば、既に説明した各実施形態に共通の効果に加え以下の効果を奏する。ガス吹き込み管1fは、管突出部23fが周方向における一部に形成される。これに対し、多孔質部材3fは、小径部31が円柱状に形成されるので、大径部32を含めて容易に製造することができる。
【0055】
<第七実施形態のガス吹き込み管1gの内容と効果>
次に、図9を参照して、第七実施形態のガス吹き込み管1gを説明する。ガス吹き込み管1gは、ガス吹き込み管1fに対して、多孔質部材3gの段部33の形状が異なる。管部材2gの第一管部材21gは、ガス吹き込み管1fの第一管部材21fと同様の構成と形状である。多孔質部材3gの段部33は、周方向において管突出部23gが形成される範囲に対応して形成され、他の部分は形成されない。図9(b)に示すように、多孔質部材3gの小径部31は周方向の一部で外径が小さく、他の部分は大径部32と同様の外径である。多孔質部材3gの段部33の下流側は、全ての領域において第一シール材51を介して管突出部23gの管突出部内側面28と接触する。
【0056】
以上説明した第七実施形態のガス吹き込み管1gによれば、既に説明した各実施形態に共通の効果に加え以下の効果を奏する。ガス吹き込み管1gは、管突出部23gが周方向の一部に形成されるが、多孔質部材3gの小径部31は管突出部23gの形状に対応して段部33が形成される。すなわち、周方向において管突出部23gが形成されない領域は、小径部31の外径が大径部32の外径と同様であり、多孔質材第一端部34にまで連続する。従って、ガス管9にガス8が供給されると、ガス吹き込み管1gの内部で多孔質部材3gからガス8が漏れることが低減される。
【0057】
<第八実施形態のガス吹き込み管1hの内容と効果>
次に、図10を参照して、第八実施形態のガス吹き込み管1hを説明する。ガス吹き込み管1hは、ガス吹き込み管1gに対して、多孔質部材3hが保護材第一端部41よりも下流側に突出する点が異なる。管部材2hの第一管部材21hは管突出部23hを含め、ガス吹き込み管1fの第一管部材21fと同様の構成と形状である。保護材第一端部41よりも下流側に突出する部分の多孔質部材3hは、図10(b)に示すように、多孔質部材3hの小径部31は、周方向の一部で外径が小さくなり、他の部分は大径部32と同様の外径である。
【0058】
以上説明した第八実施形態のガス吹き込み管1hによれば、既に説明したガス吹き込み管1gの効果に加え以下の効果を奏する。ガス吹き込み管1hは、多孔質部材3hが保護材第一端部41よりも下流側に突出する。多孔質部材3hは、金属溶湯61に露出する表面積が増加する。よって、ガス吹き込み管1hは、ガス8の吹き込み量を増加させることができる。また、ガス8が吹き込まれるとき凝集することを低減できる。
【符号の説明】
【0059】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h ガス吹き込み管
2、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h 管部材
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h 多孔質部材
4 保護材
7 脱落防止部
7a ラス網
7b 凹凸部
8 ガス
9 ガス管
21、21a、21b、21c、21d、21e、21f、21g、21h 第一管部材
22 第二管部材
23、23a、23b、23c、23d、23e、23f、23g、23h 管突出部
25 管第一端部
26 管第二端部
29 管壁部
33 段部
34 多孔質材第一端部
41 保護材第一端部
42 保護材傾斜部
51 第一シール材
52 第二シール材
53 ワッシャー
60 溶湯容器
61 金属溶湯

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10