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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007117
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】医用データ処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/00 20180101AFI20250109BHJP
【FI】
G16H30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108307
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 修紀
(72)【発明者】
【氏名】竹島 秀則
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】疾患を判別する医師等のユーザが解釈可能な形で、その判別を補助する情報を提示すること。
【解決手段】実施形態に係る医用データ処理装置は、受理部と、判別部と、出力部とを備える。受理部は、医用データを入力として受理する。判別部は、前記入力データに基づき医学的判別を行う。出力部は、前記判別部による判別結果とともに判別過程に関する情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用データを入力として受理する受理部と、
前記医用データに基づき医学的判別を行う判別部と、
前記判別部による判別結果とともに判別過程に関する情報を出力する出力部と、
を備える、医用データ処理装置。
【請求項2】
前記医学的判別を行う医学的判別用モデルであって、判別過程が解釈可能な解釈可能モデルを含む医学的判別用モデルを記憶する記憶部と、
前記判別部は、前記医用データに対して前記医学的判別用モデルを適用することにより、前記医学的判別を行う、請求項1に記載の医用データ処理装置。
【請求項3】
前記医用データは、MRデータであり、
前記判別部は、前記MRデータに基づき医学的分類を含む医学的判別を行い、
前記出力部は、前記医学的分類を含む判別結果とともに判別過程に関する情報を出力する、請求項1に記載の医用データ処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記判別結果とともに前記判別過程に関する情報を表示し、
前記受理部は、前記出力部に表示された表示内容のレイアウトを変更するレイアウト変更命令を受理し、
前記出力部は、前記受理部により前記レイアウト変更命令が受理された場合、表示される表示内容のレイアウトを変更する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の医用データ処理装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記受理部により前記レイアウト変更命令が受理された場合、前記判別過程に関する情報として、判別過程が解釈可能な解釈可能モデルである決定木であって根ノードから前記判別結果を示す葉ノードまでに至る推論過程が示された決定木、及び、前記判別部が前記医学的判別を行う際に用いられる数値を表す表のいずれか一方に表示内容を切り換える、請求項4に記載の医用データ処理装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記表において複数の前記数値の間で整合性がとれない場合、前記判別結果が信頼できないことを示すメッセージを出力する、請求項5に記載の医用データ処理装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記受理部により前記レイアウト変更命令が受理された場合、前記判別過程に関する情報として、前記判別部が前記判別結果を得る際に、前記医学的判別を行う医学的判別用モデルにおいて計算された中間判別項目の確からしさを示す信頼度、及び、前記判別部が前記判別結果を得る際に前記医学的判別用モデルにおいて用いられた、前記信頼度と比較される判別基準値のいずれか一方に表示内容を切り換える、請求項4に記載の医用データ処理装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記受理部により前記レイアウト変更命令が受理された場合、前記判別過程に関する情報として、判別過程が解釈可能な解釈可能モデルである決定木であって根ノードから前記判別結果を示す葉ノードまでに至る推論過程が示された決定木、及び、前記決定木が生成される際に用いられた医学的ガイドラインのいずれか一方に表示内容を切り換える、請求項4に記載の医用データ処理装置。
【請求項9】
前記出力部は、前記受理部により前記レイアウト変更命令が受理された場合、前記判別過程に関する情報として、判別過程が解釈可能な解釈可能モデルである決定木であって根ノードから前記判別結果を示す葉ノードまでに至る推論過程が示された決定木、及び、前記決定木のうち前記根ノードから前記判別結果を示す葉ノードまでに至る推論過程のみのいずれか一方に表示内容を切り換える、請求項4に記載の医用データ処理装置。
【請求項10】
前記出力部は、前記受理部により前記レイアウト変更命令が受理された場合、前記判別過程に関する情報として、判別過程が解釈可能な解釈可能モデルである決定木であって根ノードから前記判別結果を示す葉ノードまでに至る推論過程が示された決定木、及び、前記医用データのみのいずれか一方に表示内容を切り換える、請求項4に記載の医用データ処理装置。
【請求項11】
前記出力部は、前記受理部により前記レイアウト変更命令が受理された場合、前記判別過程に関する情報として、判別過程が解釈可能な解釈可能モデルである決定木であって根ノードから前記判別結果を示す葉ノードまでに至る推論過程が示された決定木、及び、前記医用データに判断根拠情報が重畳されたデータのみのいずれか一方に表示内容を切り換える、請求項4に記載の医用データ処理装置。
【請求項12】
前記出力部は、準拠する医学的ガイドラインのバージョンを切り替える選択機能を更に備える、請求項8に記載の医用データ処理装置。
【請求項13】
医用データを入力として受理し、
前記医用データに基づき医学的判別を行い、
前記医学的判別の判別結果とともに判別過程に関する情報を出力する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用データ処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MR画像及びMRスペクトルを利用して医学的分類を提供する技術がある。この技術では、出力が「グレード」であり、その分類(判別)は、ブラックボックスで行われる。このため、疾患を判別する医師等のユーザが、ガイドラインに沿った解釈ができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-41978号公報
【特許文献2】特開2017-026482号公報
【特許文献3】特開2023-57036号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hidenori Takeshima、Deep Learning and Its Application to Function Approximation for MR in Medicine: An Overview、Magn Reson Med Sci、doi:10.2463/mrms.rev.2021-004、Published Online: September 17, 2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、疾患を判別するユーザが解釈可能な形で、その判別を補助する情報を提示することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用データ処理装置は、受理部と、判別部と、出力部とを備える。受理部は、医用データを入力として受理する。判別部は、前記入力データに基づき医学的判別を行う。出力部は、前記判別部による判別結果とともに判別過程に関する情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る医用データ処理システム及び医用データ処理装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る医用データ処理装置の判別機能が実行する医学的分類について説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る学習済モデルの一例の詳細を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る可視化機能が実行する処理の一例を説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る医用データ処理装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、第1の実施形態の変形例に係る医用データ処理装置が実行する処理の一例について説明するための図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る医用データ処理システム及び医用データ処理装置の構成例を示す図である。
図8A図8Aは、第2の実施形態に係るディスプレイに表示される表示内容の一例を示す図である。
図8B図8Bは、第2の実施形態に係るディスプレイに表示される表示内容の一例を示す図である。
図8C図8Cは、第2の実施形態に係るディスプレイに表示される表示内容の一例を示す図である。
図8D図8Dは、第2の実施形態に係るディスプレイに表示される表示内容の一例を示す図である。
図9A図9Aは、第2の実施形態に係るディスプレイに表示される表示内容の一例を示す図である。
図9B図9Bは、第2の実施形態に係るディスプレイに表示される表示内容の一例を示す図である。
図9C図9Cは、第2の実施形態に係るディスプレイに表示される表示内容の一例を示す図である。
図9D図9Dは、第2の実施形態に係るディスプレイに表示される表示内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用データ処理装置及び方法の実施形態及び変形例について詳細に説明する。なお、本願に係る医用データ処理装置及び方法は、以下に示す実施形態及び変形例によって限定されるものではない。また、実施形態は、処理内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態、変形例又は従来技術との組み合わせが可能である。同様に、変形例は、処理内容に矛盾が生じない範囲で実施形態、他の変形例又は従来技術との組み合わせが可能である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用データ処理システム100及び医用データ処理装置150の構成例を示す図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る医用データ処理システム100は、医用画像診断装置群110と、医用データ保管装置120と、端末130と、医用データ処理装置150とを含む。ここで、各装置は、ネットワーク160を介して互いに通信可能に接続されている。本実施形態に係る医用データ処理システム100及び医用データ処理装置150は、例えば、病院や診療所等の医療施設に設置され、医師等のユーザによる診断を支援する。
【0011】
医用画像診断装置群110は、複数の医用画像診断装置の集合である。かかる医用画像診断装置の一例としては、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置、X線CT(Computed Tomography)診断装置、超音波診断装置、X線診断装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、及び、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置等の各種の医用画像診断装置が挙げられる。
【0012】
MRI装置は、MR画像及びMRスペクトルを生成する。X線CT装置は、CT画像を生成する。超音波診断装置は、超音波画像を生成する。X線診断装置は、X線画像及びアンギオ画像を生成する。PET装置は、PET画像を生成する。SPECT装置は、SPECT画像を生成する。MR画像、MRスペクトル、CT画像、超音波画像、X線画像、アンギオ画像、PET画像及びSPECT画像は、いずれも医用データであり、医用画像診断装置により得られたデータである。また、MR画像、CT画像、超音波画像、X線画像、アンギオ画像、PET画像及びSPECT画像は、医用画像でもある。
【0013】
医用データ保管装置120は、各種の医用データを保管する。具体的には、医用データ保管装置120は、ネットワーク160を介して医用画像診断装置群110から医用データを取得し、取得された医用データを医用データ保管装置120内の記憶回路に記憶させて保管する。また、例えば、医用データ保管装置120は、PACS(Picture Archiving and Communication System)等によって実現され、DICOMに準拠した形式で医用データを保管する。医用データ保管装置120は、サーバやワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0014】
端末130は、ユーザにより利用される端末であり、各種の医用データを表示する。例えば、端末130は、ネットワーク160を介して医用データ保管装置120及び医用データ処理装置150から医用画像、MRスペクトルや医学的分類の結果等の各種の医用データを取得する。そして、端末130は、取得された医用データを端末130が備えるディスプレイに表示させる。端末130が備えるディスプレイは、表示部の一例である。例えば、端末130は、ワークステーションやパーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータ機器によって実現される。
【0015】
医用データ処理装置150は、医用データに基づき各種の医学的分類を含む医学的判別を行う。すなわち、医用データ処理装置150は、医用データに基づき医学的分類を行ったり、医学的判別を行ったりする。以下の説明では、医用データ処理装置150が医学的分類及び医学的判別を行うことを、包括的に、「医学的判別を行う」と表記する場合がある。例えば、医用データ処理装置150は、ネットワーク160を介して医用画像診断装置群110又は医用データ保管装置120から医用データを取得する。そして、医用データ処理装置150は、取得された医用データに基づき各種の医学的判別を行う。例えば、医用データ処理装置150は、サーバやワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。また、以下の説明では、1台の医用データ処理装置150が以下に説明する各種の処理を実行する場合について説明するが、複数の医用データ処理装置150が以下に説明する各種の処理を分散して実行してもよい。
【0016】
図1に示すように、医用データ処理装置150は、通信インタフェース151と、記憶回路152と、入力インタフェース153と、ディスプレイ154と、処理回路155とを備える。
【0017】
通信インタフェース151は、医用データ処理装置150と、医用データ処理装置150にネットワーク160を介して接続された他の装置との間で送受信される各種情報及び各種データの伝送及び通信を制御する。通信インタフェース151は、処理回路155に接続されている。通信インタフェース151は、他の装置により送信されたデータを受信する。この場合、通信インタフェース151は、受信されたデータを処理回路155に送信する。また、通信インタフェース151は、処理回路155により送信されたデータを受信する。この場合、通信インタフェース151は、受信されたデータを他の装置に送信する。例えば、通信インタフェース151は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0018】
記憶回路152は、各種データ及び各種プログラムを記憶する。記憶回路152は、処理回路155に接続されている。記憶回路152は、処理回路155による制御を受けて、処理回路155により送信されたデータを記憶する。また、記憶回路152に記憶されているデータは、処理回路155により読み出される。例えば、記憶回路152は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0019】
記憶回路152は、後述する学習済モデル172(図2参照)及び後述する決定木173(図2参照)を記憶している。記憶回路152は、例えば、記憶部の一例である。
【0020】
入力インタフェース153は、医師等のユーザから各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。入力インタフェース153は、処理回路155に接続されている。入力インタフェース153は、ユーザから受け付けた操作を電気信号に変換して処理回路155に送信する。例えば、入力インタフェース153は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで操作を受け付けるタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力インタフェース、及び音声入力インタフェース等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース153は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路155へ送信する電気信号の処理回路も入力インタフェース153の例に含まれる。
【0021】
ディスプレイ154は、各種情報及び各種データを表示する。ディスプレイ154は、処理回路155に接続されている。ディスプレイ154は、処理回路155による制御を受けて、処理回路155により送信された各種情報及び各種データを表示する。例えば、ディスプレイ154は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、タッチパネル等によって実現される。ディスプレイ154は、表示部の一例である。
【0022】
処理回路155は、医用データ処理装置150全体を制御する。例えば、処理回路155は、入力インタフェース153を介してユーザから受け付けた操作に応じて、各種の医学的分類を行う。また、例えば、処理回路155は、ネットワーク160を介して医用画像診断装置群110又は医用データ保管装置120により送信された医用データを取得する。そして、処理回路155は、取得された医用データを記憶回路152に記憶させる。
【0023】
図1に示すように、処理回路155は、受理機能155aと、判別機能155bと、可視化機能155cとを有する。
【0024】
処理回路155は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラム(医用データ処理プログラム)の形態で記憶回路152に記憶される。そして、処理回路155は、記憶回路152に記憶された各プログラムを読み出し、読み出された各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する各処理機能を実現する。換言すると、処理回路155は、各プログラムを読み出した状態で、図1に示される各処理機能を有することとなる。
【0025】
なお、処理回路155は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、処理回路155が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理回路155が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、各処理機能に対応する各プログラムが単一の記憶回路152に記憶される場合の例を説明したが、各プログラムが複数の記憶回路に分散して記憶されてもよい。例えば、各処理機能に対応する各プログラムが複数の記憶回路に分散して記憶され、処理回路155が、各記憶回路から各プログラムを読み出して実行する構成としても構わない。
【0026】
以上、本実施形態に係る医用データ処理システム100及び医用データ処理装置150の構成の一例について説明した。本実施形態に係る医用データ処理システム100及び医用データ処理装置150は、以下に説明するように、疾患を判別する医師等のユーザが解釈可能な形で、その判別を補助する情報を提示するように構成されている。
【0027】
受理機能155aは、ネットワーク160を介して医用画像診断装置群110又は医用データ保管装置120から医用データを取得する。そして、受理機能155aは、医用データを学習済モデル172の入力として受理する。受理機能155aは、例えば、受理部の一例である。
【0028】
図2は、第1の実施形態に係る医用データ処理装置150の判別機能155bが実行する医学的分類について説明するための図である。図2に示すように、判別機能155bは、医用データ171に対して、学習済モデル172及び決定木173を含む医学的判別用モデル(医学的分類用モデル)を適用することにより、医学的判別を行う。すなわち、判別機能155bは、医用データ171に基づき医学的判別を行う。医用データ171には、被検体の処理対象の組織が含まれる。
【0029】
本実施形態に係る判別機能155bは、1つ以上の医用データ171に基づいて医学的判別を行う。より詳細には、判別機能155bは、1つ以上の医用データ171を、学習済モデル172及び決定木173を含む医学的判別用モデルに適用して被検体に関する医学的判別結果(医学的分類結果)を出力する。医学的判別結果は、医用データの被検体に関する医学的判別の結果を示す情報である。医学的判別結果として、例えば、被検体が罹患している疾患のグレードが出力される。判別機能155bは、例えば、判別部の一例である。
【0030】
学習済モデル172及び決定木173を含む医学的判別用モデルに適用される医用データ171は、様々な種類のデータであってもよい。例えば、医用データ171は、上述した各種の医用画像診断装置により得られたデータであってもよい。また、医用データ171は、遺伝子検査、血液検査、病理検査及び分子検査等の各種の検査の結果であってもよい。また、医用データ171は、各種の画像診断装置による検査の結果であってもよい。
【0031】
また、医用データ171は、被検体の処理対象の形態に関する情報(形態情報)であってもよいし、被検体の処理対象の組成に関する情報(組成情報)であってもよいし、被検体の処理対象の物性に関する情報(物性情報)であってもよい。また、医用データ171は、被検体の処理対象の生理学的な情報であってもよい。
【0032】
以下、医用データ処理装置150が、医学的判別として、脳腫瘍である神経膠腫のグレードを分類するための医学的ガイドラインである世界保健機関(WHO)の脳腫瘍分類に基づく決定木173を用いて、神経膠腫のグレードを判別する場合について説明するが、医用データ処理装置150が行う医学的判別は、これに限られない。
【0033】
図2に示すように、学習済モデル172は、1つ以上の医用データ171を入力として、1つ以上の中間判別項目を出力するようにパラメータが学習された機械学習モデルである。医用データ171には、被検体の処理対象の組織として脳の神経膠細胞に関する情報が含まれる。なお、複数の医用データ171が学習済モデル172に入力される場合には、同一の被検体の脳の神経膠細胞に関する情報を含む複数の医用データ171が学習済モデル172に入力される。第1実施形態に係る学習済モデル又は機械学習モデルとしては、ニューラルネットワークや深層ニューラルネットワーク、サポートベクターマシーン、ランダムフォレスト等の分類器又は識別器が用いられる。中間判別項目は、具体的には、図2に示すように、被検体に関する組織情報、遺伝子情報及び分子情報である。
【0034】
組織情報は、被検体の処理対象の組織である脳の神経膠細胞に腫瘍(脳腫瘍、グリオーマ)が発生している否かを示す情報(腫瘍有無情報)、及び、腫瘍のグレードを暫定的に示す情報(グレード情報)を含む情報である。例えば、神経膠細胞に腫瘍が発生していると推定される場合、腫瘍有無情報は、「1」を示す。一方、神経膠細胞に腫瘍が発生していないと推定される場合、腫瘍有無情報は、「0」を示す。例えば、学習済モデル172は、神経膠細胞に腫瘍が発生している確率を計算する。この確率は、0以上1以下の範囲内の値であり、神経膠細胞に腫瘍が発生している確率が高いほど「1」に近づく値であり、神経膠細胞に腫瘍が発生している確率が低いほど「0」に近づく値である。確率は、腫瘍が発生している確からしさを示す信頼度である。そして、学習済モデル172は、確率と、所定の閾値(基準判別値)とを比較し、確率が基準判別値以上である場合、「1」を示す腫瘍有無情報を生成する。また、学習済モデル172は、確率が基準判別値未満である場合、「0」を示す腫瘍有無情報を生成する。
【0035】
また、学習済モデル172は、腫瘍有無情報が「1」を示す場合(すなわち、腫瘍が発生している場合)、腫瘍のグレードを大まかに推定し、推定されたグレードを示すグレード情報を生成する。
【0036】
そして、学習済モデル172は、腫瘍有無情報及びグレード情報が生成されると、腫瘍有無情報及びグレード情報を含む組織情報を出力する。
【0037】
遺伝子情報は、神経膠細胞のIDHをコードする遺伝子に変異が生じているか否かを示す情報である。例えば、神経膠細胞のIDHをコードする遺伝子に変異が生じていると推定される場合、遺伝子情報は、「1」を示す。一方、神経膠細胞のIDHをコードする遺伝子に変異が生じていないと推定される場合、遺伝子情報は、「0」を示す。例えば、学習済モデル172は、神経膠細胞のIDHをコードする遺伝子に変異が生じている確率を計算する。この確率は、0以上1以下の範囲内の値であり、神経膠細胞のIDHをコードする遺伝子に変異が生じている確率が高いほど「1」に近づく値であり、神経膠細胞のIDHをコードする遺伝子に変異が生じている確率が低いほど「0」に近づく値である。確率は、神経膠細胞のIDHをコードする遺伝子に変異が生じている確からしさを示す信頼度である。そして、学習済モデル172は、確率と、基準判別値とを比較し、確率が基準判別値以上である場合、「1」を示す遺伝子情報を出力する。また、学習済モデル172は、確率が基準判別値未満である場合、「0」を示す遺伝子情報を出力する。
【0038】
分子情報は、神経膠細胞において、1番染色体短腕(1q)と19番染色体長腕(19q)が共に欠失しているか否かを示す情報である。例えば、神経膠細胞において、1番染色体短腕と19番染色体長腕が共に欠失していると推定される場合、分子情報は、「1」を示す。一方、神経膠細胞において、1番染色体短腕と19番染色体長腕の少なくとも一方が欠失していないと推定される場合、分子情報は、「0」を示す。例えば、学習済モデル172は、神経膠細胞において、1番染色体短腕と19番染色体長腕が共に欠失している確率を計算する。この確率は、0以上1以下の範囲内の値であり、神経膠細胞において、1番染色体短腕と19番染色体長腕が共に欠失している確率が高いほど「1」に近づく値であり、神経膠細胞において、1番染色体短腕と19番染色体長腕が共に欠失している確率が低いほど「0」に近づく値である。確率は、1番染色体短腕と19番染色体長腕が共に欠失している確からしさを示す信頼度である。そして、学習済モデル172は、確率と、基準判別値とを比較し、確率が基準判別値以上である場合、「1」を示す分子情報を出力する。また、学習済モデル172は、確率が基準判別値未満である場合、「0」を示す分子情報を出力する。
【0039】
学習済モデル172の生成方法の一例を説明する。学習済モデル172は、被検体の神経膠細胞に関する情報を含む医用データを入力データとし、当該神経膠細胞に腫瘍が発生している否かを示す情報、当該神経膠細胞に腫瘍が発生している場合の腫瘍のグレードを示す情報、当該神経膠細胞のIDHをコードする遺伝子に変異が生じているか否かを示す情報及び神経膠細胞において1番染色体短腕と19番染色体長腕が共に欠失しているか否かを示す情報を正解データとする教師データに基づいて、モデル学習プログラムに従い機械学習モデルに機械学習を行わせることにより得られた学習済みの機械学習モデルである。学習済モデル172は、学習装置により生成される。例えば、学習装置は、医用データ処理装置150にネットワーク160を介して接続されている。そして、学習装置により生成された学習済モデル172がネットワーク160を介して医用データ処理装置150に提供される。
【0040】
学習装置は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolution Neural Network)等の機械学習モデルを含む。学習装置は、同一の被検体の神経膠細胞に関する教師データに基づく学習(教師あり学習)を行うことにより、学習済モデル172を生成する。学習済モデル172は、推論時において、入力データに相当する医用データが入力されると、正解データに相当する組織情報、遺伝子情報及び分子情報(出力データ)を出力するように機能付けられている。なお、医用データ処理装置150が学習装置の機能と同様の機能を備え、学習装置に代えて医用データ処理装置150が学習済モデル172を生成してもよい。
【0041】
機械学習モデルがCNNである場合について説明する。この場合、学習装置では、入力データが機械学習モデルであるCNNに入力される。学習装置は、入力データにCNNを適用して、出力データを生成する。そして、出力データが、CNNから出力される。学習装置において、出力データは、評価機能に入る。また、学習装置において、上記の正解データも評価機能に入力される。学習装置は、入力データに基づいてCNNで生成された出力データと、正解データとを評価機能により評価する。評価機能は、例えば、生成された出力データを正解データと比較して、誤差逆伝播法によりCNNの係数(重みとバイアス等のネットワークパラメータ)を修正する。評価機能による評価は、CNNにフィードバックされる。学習装置は、教師データに基づくこのような一連の教師あり学習を、例えば、出力データと正解データとの間の誤差が所定の閾値以下になるまで、繰り返す。学習装置は、学習した機械学習モデルを学習済モデル172として出力可能である。
【0042】
決定木173は、組織情報、遺伝子情報及び分子情報を入力として、神経膠腫のグレードを出力するように学習された機械学習モデルである。例えば、決定木173は、組織情報、遺伝子情報及び分子情報の組合せと、この組み合わせに対して脳腫瘍である神経膠腫のグレードを判別(分類)するための医学的ガイドラインである世界保健機関の脳腫瘍分類を行った結果得られる神経膠腫のグレードとを用いて、モデル学習プログラムに従い機械学習モデルに機械学習を行わせることにより得られた学習済みの機械学習モデルである。すなわち、決定木173が生成される際に上述した医学的ガイドラインが用いられる。図2に示すように、決定木173は、学習済モデル172から出力された組織情報、遺伝子情報及び分子情報が入力されると、最終判別結果として神経膠腫のグレードを出力する。
【0043】
決定木173では、組織情報、遺伝子情報及び分子情報の各種の情報に対して各種の条件が定義されており、各種の条件が「Yes」又は「No」で定義されている。このため、決定木173は、疾患を判別する医師等のユーザにとって、判別過程(分類過程、推論過程)が解釈可能なモデル(解釈可能モデル)である。なお、決定木173に代えて、決定木173と同様の機能を有するモデルを用いてもよい。例えば、ランダムフォレスト、ナイーブベイズ木、決定リスト、決定グラフ、ベイジアンネットワーク及び勾配ブースティング木等を用いてもよい。ランダムフォレスト、ナイーブベイズ木、決定リスト、決定グラフ、ベイジアンネットワーク及び勾配ブースティング木は、決定木173と同様に、疾患を判別する医師等のユーザにとって、判別過程(分類過程)が解釈可能なモデルである。
【0044】
図3は、第1の実施形態に係る学習済モデル172の一例の詳細を説明するための図である。図3に示す学習済モデル172は、3つの医用データ171a,171b,171cを入力とし、組織情報、遺伝子情報及び分子情報を出力する。図3の例では、3つの医用データ171a,171b,171cは、MRデータである。詳細については後述するが、医用データ171aは、MR画像であり、医用データ171b,171cは、MRスペクトルである。このため、以下の説明では、医用データ171aをMR画像171aと表記し、医用データ171b,171cをMRスペクトル171b,171cと表記する場合がある。
【0045】
図3に示す学習済モデル172は、例えば、ニューラルネットワークであり、入力層、中間層及び出力層を含む。なお、図3において、入力層及び出力層の図示が省略されている。図3の例では、中間層は、CNN層、全結合層及びプーリング層(図示せず)等を含む。
【0046】
図3の例では、CNN層は、3つのノード172a,172b,172cを含む。ノード172aには、入力層を介して医用データ171としてMR画像171aが入力される。MR画像171aは、被検体の神経膠細胞の形態を示す形態画像である。例えば、MR画像171aは、T1強調画像、T2強調画像、又は、FLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery)画像である。MR画像171aが2次元画像である場合には、2次元のノード172aが用いられ、MR画像171aが3次元画像である場合には、3次元のノード172aが用いられてもよい。ノード172aは、MR画像171aを入力として、特徴量aを出力する。
【0047】
ノード172bには、入力層を介して医用データ171としてMRスペクトル171bが入力される。また、ノード172cには、入力層を介して医用データ171としてMRスペクトル171cが入力される。ここで、MRスペクトル171bは、MRI装置によりPRESS法が用いられて収集されたMRスペクトルであるのに対して、MRスペクトル171cは、MRI装置によりMEGA-PRESS法が用いられて収集されたMRスペクトルである。MRスペクトル171b及びMRスペクトル171cは、1次元スペクトルであるため、1次元のノード172b及びノード172cが用いられてもよい。ノード172bは、MRスペクトル171bを入力として、特徴量bを出力する。ノード172cは、MRスペクトル171cを入力として、特徴量cを出力する。
【0048】
図3の例では、全結合層は、3つのノード172d,172e,172fを含む。ノード172dは、特徴量a及び特徴量bを入力とし、出力層を介して組織情報を出力する。ノード172eは、特徴量a、特徴量b及び特徴量cを入力とし、出力層を介して遺伝子情報を出力する。ノード172fは、特徴量a、特徴量b及び特徴量cを入力とし、出力層を介して分子情報を出力する。
【0049】
なお、図3の例において、ノード172aに入力される医用データ171として、被検体の神経膠細胞の形態を示す形態画像であるMR画像171aが用いられる場合について説明した。しかしながら、ノード172aに入力される医用データ171として、被検体の神経膠細胞の形態を示す形態画像であるCT画像、超音波画像、X線画像等の他の画像が用いられてもよい。
【0050】
また、学習済モデル172に適用される医用データ171は、医用画像診断装置等により得られたデータに限られず、人工的に生成された人工データであってもよい。例えば、人工データとして、シミュレーションや深層学習等により得られた医用データが学習済モデル172に適用されてもよい。具体的には、ブロッホシミュレータやMRシミュレータと呼ばれる物理演算でMR画像やMRスペクトルのMRデータを生成し、生成されたMRデータが学習済モデル172に適用されてもよい。また、分子動力学シミュレーションにより得られた分子の振る舞いを示すデータが学習済モデル172に適用されてもよい。また、医用画像診断装置等により得られた実測値が物理演算により変換された値が学習済モデル172に適用されてもよい。
【0051】
可視化機能155cは、判別機能155bにより行われた医学的判別(医学的分類)の判別過程(分類過程)を可視化する。図4は、第1の実施形態に係る可視化機能155cが実行する処理の一例を説明するための図である。図4には、可視化機能155cによりディスプレイ154に表示される表示内容の一例が示されている。
【0052】
例えば、可視化機能155cは、図4に示すように、決定木173の内容181をディスプレイ154に表示させる。決定木173の内容181のうち、他の矢印と比較して太い矢印で接続された各分岐条件及び葉ノードの判別結果は、決定木173による判別過程を示す情報であり、判別過程に関する情報である。具体的には、図3において『根ノードの分岐条件「Tumor?」(Yes)→ノードの分岐条件「Grade=4?」(No)→ノードの分岐条件「IDH mutant?」(Yes)→ノードの分岐条件「1p19q Co-deletion?」(No)→葉ノードの判別結果「LGG IDH mutant non co-deletion 最終グレードWHO2」』の部分は、強調表示されており、決定木173による判別過程を示す情報であり、判別過程に関する情報である。また、葉ノードの判別結果「LGG IDH mutant non co-deletion 最終グレードWHO2」は、判別結果を示す情報であり、判別結果に関する情報である。
【0053】
ここで、判別過程に関する情報を生成する方法の一例について説明する。例えば、可視化機能155cは、学習済モデル172から出力された組織情報、遺伝子情報及び分子情報を用いて決定木173の各分岐条件において「Yes」及び「No」のいずれであるのかを判別することにより決定木173における判別過程を特定する。そして、可視化機能155cは、特定された判別過程を示す情報を生成する。
【0054】
このように、可視化機能155c及びディスプレイ154は、医師等のユーザにより解釈可能な判別過程を可視化する。すなわち、可視化機能155c及びディスプレイ154は、医師等のユーザにより解釈可能な判別過程を判別結果とともに出力(表示)する。更に具体的には、可視化機能155c及びディスプレイ154は、根ノード(分岐条件「Tumor?」)から判別結果(「LGG IDH mutant non co-deletion 最終グレードWHO2」)を示す葉ノードまでに至る推論過程が示された決定木173の内容181を出力する。したがって、第1の実施形態に係る医用データ処理装置150によれば、疾患を判別する医師等のユーザが解釈可能な形で、その判別を補助する情報を提示することができる。可視化機能155c及びディスプレイ154は、例えば、出力部の一例である。
【0055】
また、可視化機能155cは、図4に示すように、学習済モデル172に入力された医用データ171(171a,171b,171c)、並びに、組織情報、遺伝子情報及び分子情報の内容が記載された表182を決定木173の内容181とともにディスプレイ154に表示させる。ここで、図4に示す組織情報の「腫瘍有」は、学習済モデル172から出力される組織情報の腫瘍有無情報が示す「1」に対応する。また、図4に示す遺伝子情報の「変異有」は、学習済モデル172から出力される遺伝子情報が示す「1」に対応する。また、図4に示す分子情報の「欠失無」は、学習済モデル172から出力される分子情報が示す「0」に対応する。なお、学習済モデル172から出力される組織情報の腫瘍有無情報が「0」を示す場合、表182には「腫瘍無」が記載される。また、学習済モデル172から出力される遺伝子情報が「0」を示す場合、表182には「変異無」が記載される。また、学習済モデル172から出力される分子情報が「1」を示す場合、表182には「欠失有」が記載される。すなわち、表182は、判別機能155bが医学的判別を行う際に用いられる数値を表す表である。このようにして、可視化機能155c及びディスプレイ154は、判別結果及び判別過程に加えて、学習済モデル172に入力された医用データ171、並びに、組織情報、遺伝子情報及び分子情報の中間判別項目をも可視化する。
【0056】
図5は、第1の実施形態に係る医用データ処理装置150が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0057】
図5に示すように、受理機能155aは、ネットワーク160を介して医用画像診断装置群110又は医用データ保管装置120から医用データを取得し、医用データを学習済モデル172の入力として受理する(ステップS101)。
【0058】
そして、判別機能155bは、医用データ171に対して、学習済モデル172及び決定木173を含む医学的判別用モデルを適用することにより、医学的判別を行う(ステップS102)。
【0059】
そして、可視化機能155c及びディスプレイ154は、判別結果とともに医師等のユーザにより解釈可能な判別過程を可視化する(ステップS103)。
【0060】
以上、第1の実施形態に係る医用データ処理装置150及び医用データ処理システム100について説明した。第1の実施形態によれば、疾患を判別する医師等のユーザが解釈可能な形で、その判別を補助する情報を提示することができる。
【0061】
(第1の実施形態の変形例)
次に、第1の実施形態の変形例に係る医用データ処理装置150について説明する。表182において、例えば、判別機能155bが医学的判別を行う際に用いられる複数の数値の間で整合性がとれない場合がある。例えば、表182において「腫瘍無」が記載されているにも関わらず、「変異有」及び「欠失有」が記載される場合がある。すなわち、表182が、腫瘍が発生していないことを示しているにも関わらず、神経膠細胞のIDHをコードする遺伝子に変異が生じていることを示したり、神経膠細胞において、1番染色体短腕と19番染色体長腕が共に欠失していることを示したりする場合がある。
【0062】
図6は、第1の実施形態の変形例に係る医用データ処理装置150が実行する処理の一例について説明するための図である。上述したような場合、表182に記載された複数の情報が想定されない組み合わせであるため、第1の実施形態の変形例に係る医用データ処理装置150の可視化機能155cは、図6に示すように、複数の情報(数値)の信頼性及び医学的判別結果の信頼性が低いことを示すメッセージ「想定されない組み合わせであるため、信頼性が低いです。」186をディスプレイ154に表示させる。すなわち、可視化機能155c及びディスプレイ154は、複数の情報の信頼性及び医学的判別結果の信頼性が低いこと、すなわち、医学的判別結果が信頼できないことを示すメッセージ186を出力する。
【0063】
これにより、ユーザは、提示される医学的判別結果が信頼できないことを把握することができる。したがって、第1の実施形態の変形例によれば、誤った医学的判別結果であるにも関わらず、正しい医学的判別結果としてユーザに認識させてしまうことを抑制することができる。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る医用データ処理装置及び医用データ処理システムについて説明する。第1の実施形態では、図4に示すように、決定木173の内容181に加え、表182が表示される。このため、ユーザは、一度に表示される情報量が多く、表示される情報を容易に把握することが困難である場合がある。そこで、第2の実施形態に係る医用データ処理装置及び医用データ処理システムは、表示される情報をユーザに容易に把握させることが可能なように構成されている。以下、第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、第2の実施形態の説明では、主に、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0065】
図7は、第2の実施形態に係る医用データ処理システム100a及び医用データ処理装置150aの構成例を示す図である。第2の実施形態に係る医用データ処理システム100aは、医用データ処理装置150に代えて医用データ処理装置150aを備えている点が、第1の実施形態に係る医用データ処理システム100と異なる。第2の実施形態に係る医用データ処理装置150aは、処理回路155に代えて処理回路156aを備えている点が、第1の実施形態に係る医用データ処理装置150と異なる。第2の実施形態に係る処理回路156aは、レイアウト変更機能155dを備えている点が、第1の実施形態に係る処理回路155と異なる。
【0066】
第2の実施形態では、受理機能155aは、入力インタフェース153を介してユーザにより入力されたレイアウト変更命令を受理(受信)する。ここで、レイアウト変更命令は、ディスプレイ154に表示された表示内容のレイアウトを変更するための命令である。受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、レイアウト変更機能155dは、ディスプレイ154に表示される表示内容のレイアウトを変更するように、可視化機能155cを制御する。したがって、可視化機能155cは、受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、レイアウト変更機能155dによる制御を受けて以下に説明する各種の処理を実行する。
【0067】
ここで、第2の実施形態において、可視化機能155cは、決定木173の内容181及び表182をディスプレイ154に同時に表示させない。具体的には、可視化機能155cは、決定木173の内容181をディスプレイ154に表示させている場合、表182をディスプレイ154に表示させない。また、可視化機能155cは、表182をディスプレイ154に表示させている場合、決定木173の内容181をディスプレイ154に表示させない。
【0068】
更に具体的には、可視化機能155cは、決定木173の内容181をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に表182を表示させる。また、可視化機能155cは、表182をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に決定木173の内容181を表示させる。すなわち、ディスプレイ154及び可視化機能155cは、受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、決定木173の内容181及び表182のいずれか一方に表示内容を切り換える。
【0069】
したがって、第2の実施形態によれば、決定木173の内容181及び表182が同時に表示されずに、異なる時間帯に表示されるので、決定木173の内容181及び表182をユーザに容易に把握させることができる。
【0070】
なお、第2の実施形態において、可視化機能155cは、決定木173の内容181及び医用データ171をディスプレイ154に同時に表示させないようにしてもよい。具体的には、可視化機能155cは、決定木173の内容181をディスプレイ154に表示させている場合、医用データ171をディスプレイ154に表示させない。また、可視化機能155cは、医用データ171をディスプレイ154に表示させている場合、決定木173の内容181をディスプレイ154に表示させない。
【0071】
更に具体的には、可視化機能155cは、決定木173の内容181をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に医用データ171を表示させる。また、可視化機能155cは、医用データ171をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に決定木173の内容181を表示させる。すなわち、ディスプレイ154及び可視化機能155cは、受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、決定木173の内容181及び医用データ171のいずれか一方に表示内容を切り換える。
【0072】
したがって、決定木173の内容181及び医用データ171が同時に表示されずに、異なる時間帯に表示されるので、決定木173の内容181及び医用データ171をユーザに容易に把握させることができる。
【0073】
以下、第2の実施形態における他の表示内容の切り替えの一例について説明する。図8A図8B図8C図8D図9A図9B図9C及び図9Dは、第2の実施形態に係るディスプレイ154に表示される各種の表示内容の一例を示す図である。
【0074】
例えば、可視化機能155cは、図8Aに示すように、医用データ171、決定木173の内容181及び表185をディスプレイ154に表示させる。表185には、中間判別項目(組織情報、遺伝子情報、分子情報)毎に、上述した確率(中間判別項目の確からしさを示す信頼度)が記載されている。
【0075】
可視化機能155cは、図8Aに示す表示内容をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に図8Bに示す表示内容を表示させる。例えば、可視化機能155cは、図8Bに示すように、医用データ171、決定木173の内容181及び表187をディスプレイ154に表示させる。表187には、中間判別項目毎に、確率と比較される上述した基準判別値が記載されている。
【0076】
また、可視化機能155cは、図8Bに示す表示内容をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に図8Aに示す表示内容を表示させる。
【0077】
すなわち、ディスプレイ154及び可視化機能155cは、受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、中間判別項目の確からしさを示す確率、及び、判別基準値のいずれか一方に表示内容を切り換える。
【0078】
したがって、第2の実施形態によれば、中間判別項目の確からしさを示す確率、及び、判別基準値が同時に表示されずに、異なる時間帯に表示されるので、中間判別項目の確からしさを示す確率及び判別基準値をユーザに容易に把握させることができる。
【0079】
また、可視化機能155cは、図8Aに示す表示内容に変えて、図8Cに示す表示内容又は図8Dに示す表示内容をディスプレイ154に表示させてもよい。例えば、可視化機能155cは、図8Cに示すように、医用データ171、決定木173の内容181及び表185aをディスプレイ154に表示させてもよい。表185aには、中間判別項目毎に、感度(True Positive Rate)が記載されている。なお、可視化機能155cは、学習済モデル172を学習させるときに計算された、中間判別項目毎の感度を上述した学習装置から取得し、取得された感度を用いて表185aを生成する。
【0080】
また、例えば、可視化機能155cは、図8Dに示すように、医用データ171、決定木173の内容181及び表185bをディスプレイ154に表示させてもよい。表185bには、中間判別項目毎に、特異度(True Negative Rate)が記載されている。なお、可視化機能155cは、学習済モデル172を学習させるときに計算された、中間判別項目毎の特異度を学習装置から取得し、取得された特異度を用いて表185bを生成する。
【0081】
学習済モデル172の推論時に、感度及び特異度等の評価指標をユーザに提示することで、ユーザに学習済モデル172の信頼性情報を提示することができる。この結果、ユーザは、学習済モデル172の性能を把握することができる。
【0082】
また、例えば、可視化機能155cは、図9Aに示すように、決定木173の内容181をディスプレイ154に表示させる。そして、可視化機能155cは、図9Aに示す表示内容をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に図9Bに示す表示内容を表示させる。例えば、可視化機能155cは、図9Bに示すように、ガイドライン188の内容をディスプレイ154に表示させる。ガイドライン188は、決定木173が生成される際に用いられた上述した医学的ガイドラインである。
【0083】
また、可視化機能155cは、図9Bに示す表示内容をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に図9Aに示す表示内容を表示させる。
【0084】
すなわち、ディスプレイ154及び可視化機能155cは、受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、決定木173の内容181、及び、ガイドライン188の内容のいずれか一方に表示内容を切り換える。
【0085】
したがって、第2の実施形態によれば、決定木173の内容181、及び、ガイドライン188の内容が同時に表示されずに、異なる時間帯に表示されるので、決定木173の内容181及びガイドライン188の内容をユーザに容易に把握させることができる。
【0086】
なお、可視化機能155cは、内容が表示されるガイドライン188のバージョンを切り換えてもよい。例えば、可視化機能155cは、選択機能を備える。そして、選択機能が、ガイドライン188の内容がディスプレイ154に表示されている状態で、入力インタフェース153を介して、準拠するガイドラインのバージョンを切り換える命令を受信した場合、ディスプレイ154に、バージョンが切り換えられたガイドラインの内容をディスプレイ154に表示させてもよい。例えば、ガイドラインは数年に1度更新されている。そこで、選択機能は、例えば、内容が表示されるガイドラインのバージョンをバージョン「WHO2016」から最新のバージョン「WHO2021」に切り換える。
【0087】
また、例えば、可視化機能155cは、図9Aに示す表示内容をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に図9Cに示す表示内容を表示させる。例えば、可視化機能155cは、図9Cに示すように、決定木173のうち、根ノード(分岐条件「Tumor?」)から判別結果(「LGG IDH mutant non co-deletion 最終グレードWHO2」)を示す葉ノードまでに至る推論過程181aのみをディスプレイ154に表示させる。
【0088】
また、可視化機能155cは、図9Cに示す表示内容をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に図9Aに示す表示内容を表示させる。
【0089】
すなわち、ディスプレイ154及び可視化機能155cは、受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、決定木173の内容181、及び、推論過程181aのいずれか一方に表示内容を切り換える。
【0090】
したがって、第2の実施形態によれば、決定木173の内容181、及び、推論過程181aの内容が同時に表示されずに、異なる時間帯に表示されるので、決定木173の内容181及び推論過程181aの内容をユーザに容易に把握させることができる。
【0091】
また、例えば、可視化機能155cは、図9Aに示す表示内容をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に図9Dに示す表示内容を表示させてもよい。例えば、可視化機能155cは、図9Dに示すように、医用データ171b,171cに、中間判別項目を判断した根拠を示す判断根拠情報171d,171eが重畳されたデータのみをディスプレイ154に表示させてもよい。可視化機能155cは、例えば、Grad-CAM等の既存手法により、中間判別項目を判断した根拠を生成することができる。
【0092】
なお、図9Dの例では、医用データ171b,171cにおいて、根拠となる部分を網掛で示しているが、根拠となる部分を色付けで示してもよいし、根拠となる部分を矢印で示してもよい。
【0093】
また、可視化機能155cは、図9Dに示す表示内容をディスプレイ154に表示させている状態で受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、ディスプレイ154に図9Aに示す表示内容を表示させる。
【0094】
すなわち、ディスプレイ154及び可視化機能155cは、受理機能155aによりレイアウト変更命令が受理された場合、決定木173の内容181、及び、医用データ171b,171cに判断根拠情報171d,171eが重畳されたデータのいずれか一方に表示内容を切り換える。
【0095】
したがって、第2の実施形態によれば、決定木173の内容181、及び、医用データ171b,171cに判断根拠情報171d,171eが重畳されたデータが同時に表示されずに、異なる時間帯に表示されるので、決定木173の内容181及び医用データ171b,171cに判断根拠情報171d,171eが重畳されたデータをユーザに容易に把握させることができる。
【0096】
上述した実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路152にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、各実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0097】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0098】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、疾患を判別する医師等のユーザが解釈可能な形で、その判別を補助する情報を提示することができる。
【0099】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
100,100a 医用データ処理システム
150,150a 医用データ処理装置
155 処理回路
155a 受理機能
155b 判別機能
155c 可視化機能
155d レイアウト変更機能
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D