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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007126
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】枝肉加工装置
(51)【国際特許分類】
   A22C 17/00 20060101AFI20250109BHJP
   B26D 5/34 20060101ALI20250109BHJP
   B26D 5/32 20060101ALI20250109BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20250109BHJP
   B26D 1/147 20060101ALI20250109BHJP
   B26D 3/20 20060101ALI20250109BHJP
   B25J 15/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A22C17/00
B26D5/34 Z
B26D5/32
B26D5/00 Z
B26D1/147
B26D3/20
B25J15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108318
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】日野 和睦
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 勝美
(72)【発明者】
【氏名】小山 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
【テーマコード(参考)】
3C707
4B011
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707BS10
3C707GS01
4B011EA01
(57)【要約】
【課題】枝肉を良好な品質で切断できる枝肉加工装置を提供する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係る枝肉加工装置は、右枝肉及び左枝肉を加工するための枝肉加工装置であって、右枝肉及び左枝肉の肉部を切断するためのカッタを有する第1切断装置と、右枝肉及び左枝肉の各々について肉部を切断するために背骨側から腹側に向けてカッタを移動させるためのコントローラと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
右枝肉及び左枝肉を加工するための枝肉加工装置であって、
前記右枝肉及び前記左枝肉の肉部を切断するためのカッタを有する第1切断装置と、
前記右枝肉及び前記左枝肉の各々について前記肉部を切断するために背骨側から腹側に向けて前記カッタを移動させるように前記第1切断装置を制御するためのコントローラと、
を備える枝肉加工装置。
【請求項2】
前記カッタは、ナイフ状切断刃である、
請求項1に記載の枝肉加工装置。
【請求項3】
前記ナイフ状切断刃の刃渡りの内、少なくとも前記肉部の切断に使用される領域は、前記刃渡りの延在方向に直線状に延在する直刃である、
請求項2に記載の枝肉加工装置。
【請求項4】
前記右枝肉及び前記左枝肉は、脊椎の位置で左右に半割りされた枝肉であり、
前記右枝肉及び前記左枝肉の半割りにされた切断面を撮像して得られた画像を画像処理することで仮想切断線を特定する切断位置特定装置、
を備え、
前記コントローラは、前記切断位置特定装置による前記仮想切断線の検出結果に基づき、前記刃渡りの延在方向から見たときの前記ナイフ状切断刃の傾斜角度を調整するように前記第1切断装置を制御する、
請求項3に記載の枝肉加工装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記ナイフ状切断刃で前記右枝肉及び前記左枝肉の前記肉部を切断することで前記右枝肉及び前記左枝肉の後躯体から中躯体を切断するように前記第1切断装置を制御する、
請求項2乃至4の何れか一項に記載の枝肉加工装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記ナイフ状切断刃で前記右枝肉及び前記左枝肉の前記肉部を切断することで前記右枝肉及び前記左枝肉の中躯体から前躯体を切断するように前記第1切断装置を制御する、
請求項2乃至4の何れか一項に記載の枝肉加工装置。
【請求項7】
前記第1切断装置は、ロボットアームの先端に前記カッタを装着可能な垂直多関節ロボットである、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の枝肉加工装置。
【請求項8】
前記右枝肉及び前記左枝肉の骨部を切断するための回転丸刃を有する第2切断装置、
を備える、
請求項3又は4に記載の枝肉加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、枝肉加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば豚や牛のような比較的大型な家畜の食肉屠体を対象とする食肉加工では、下処理した食肉屠体を脊椎(背骨)の位置で左右に半割りすることで一対の枝肉に切り分け、更に、各枝肉が前躯及び後躯に切り分けられる。このような切断工程は、従来、作業員が刃物を用いて人手で行っていたが、品質の均一性や作業員の安全性の確保、及び、処理効率の向上の観点から、食肉加工機械を利用した自動化が望まれている。例えば特許文献1には、枝肉の大分割工程における切断装置及び方法に関する技術が開示されている。この文献では、枝肉の大分割工程においてナイフ状の切断刃を用いて枝肉の肉部を切断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-31916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献に記載の切断装置では、例えば前躯体を中躯体から分離させる際に左枝肉に対しては胸部側から背中側に向かってナイフ状の切断刃を移動させ、右枝肉に対しては背中側から胸部側に向かってナイフ状の切断刃を移動させている。
しかし、上述した特許文献に記載の切断装置では、切断刃が肋骨を削ってしまうおそれがあり、切断後の枝肉の品質が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、枝肉を良好な品質で切断できる枝肉加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る枝肉加工装置は、
右枝肉及び左枝肉を加工するための枝肉加工装置であって、
前記右枝肉及び前記左枝肉の肉部を切断するためのカッタを有する第1切断装置と、
前記右枝肉及び前記左枝肉の各々について前記肉部を切断するために背骨側から腹側に向けて前記カッタを移動させるためのコントローラと、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、枝肉を良好な品質で切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る枝肉加工装置である枝肉分割装置の全体構成図である。
図2】左右一対の枝肉を正面から示す模式図である。
図3】正面側前中躯体切断装置及び正面側中後躯体切断装置の斜視図である。
図4】背面側前中躯体切断装置及び背面側中後躯体切断装置の斜視図である。
図5】一実施形態に係る枝肉分割装置の把持位置特定システムを周辺構成とともに示す構成図である。
図6図5の撮像装置の配置レイアウトを上方から示す模式図である。
図7】左右一対の枝肉で特定され得る特徴点の幾つかの態様を示す模式図である。
図8】一実施形態に係る切断位置特定システムの構成図である。
図9】本実施形態に係る枝肉分割装置における撮像装置の配置レイアウトを左右一対の枝肉の上方から示す模式図である。
図10】正面側前中躯体切断装置の回転丸刃、及び背面側前中躯体切断装置の切断刃の移動軌跡を単純化して示した図である。
図11】切断刃の刃渡りの延在方向から見た、切断位置の延在方向と切断刃の刃先の向きとの関係を説明するための図である。
図12】切断刃の刃渡りの延在方向から見た、切断位置の延在方向と切断刃の刃先の向きとの関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
本発明を食肉屠体(以下単に屠体とも称する)の大分割に適用した実施形態を図1図6に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る枝肉加工装置である枝肉分割装置10の全体構成図である。図2は左右一対の枝肉W及びWを正面から示す模式図である。図3は、正面側前中躯体切断装置310及び正面側中後躯体切断装置330の斜視図である。図4は、背面側前中躯体切断装置320及び背面側中後躯体切断装置340の斜視図である。
枝肉分割装置10は、前中躯体分割部A及び中後躯体分割部Bが、枝肉の搬送路を形成するレール12に対して、直列に配置されている。レール12は、水平方向に配置され、前中躯体分割部A及び中後躯体分割部Bの区画内上部領域を貫通するように配置されている。
左右一対の枝肉W及びWは、例えば豚や牛のような比較的大型である家畜の食肉屠体(以下単に屠体と称する)を脊椎7(背骨)の位置で左右に半割りされたものである。左右一対の枝肉W及びWは、両もも側足首を介して1個のギャンブレル14に懸垂される。
左右一対の枝肉W及びWの各々は、前躯体C側を下方(後躯体E側を上方)、内側に背側(外側に胸側)にし、且つ、脊椎7及び肋骨8が見える切断面4を手前側になる姿勢で、中心軸AXに対して左右対称に配置される。
【0011】
ギャンブレル14の上端には、レール12上を滑動するトロリ16が取り付けられている。ギャンブレル14は、一定時間停止した後、プッシャ15によって一定距離ずつ矢印a方向(搬送方向)に押されることで、ギャンブレル14が断続歩進する。これによって、左右一対の枝肉W、Wは、まず、前中躯体分割部Aに搬送され、前中躯体分割部Aで一定時間停止して前躯体Cが分離される。分離された前躯体Cはコンベア51上に落下し搬出される。前躯体Cが分離された枝肉W、Wは、中後躯体分割部Bに搬送され、中後躯体分割部Bで中躯体Dが分離される。分離された中躯体Dは、コンベア52上に落下し搬出される。残った後躯体Eは、そのまま後工程に搬送される。
【0012】
(切断装置300)
本実施形態に係る枝肉分割装置10は、左右一対の枝肉W及びWを切断するための切断装置300を備えている。本実施形態に係る枝肉分割装置10では、切断装置300は、正面側前中躯体切断装置310と、背面側前中躯体切断装置320と、正面側中後躯体切断装置330と、背面側中後躯体切断装置340とを含む。なお、正面側前中躯体切断装置310と正面側中後躯体切断装置330とは同様の構成を有し、背面側前中躯体切断装置320と背面側中後躯体切断装置340とは同様の構成を有する。
【0013】
図3に示すように、正面側前中躯体切断装置310は、前中躯体分割部Aの正面、すなわち、前中躯体分割部Aにおいて搬送方向と直交する水平方向の内、左右一対の枝肉W及びWの切断面4が向いている方向に位置する領域に配置された切断装置である。正面側前中躯体切断装置310は、前中躯体分割部Aのフレーム56に固定されている。
図4に示すように、背面側前中躯体切断装置320は、前中躯体分割部Aの背面、すなわち、前中躯体分割部Aにおいて搬送方向と直交する水平方向の内、左右一対の枝肉W及びWの切断面4が向いている方向とは反対の方向に位置する領域に配置された切断装置である。背面側前中躯体切断装置320は、例えばロボットアーム307の先端308に取り付けられた刃物を有する垂直多関節ロボットである。
【0014】
図3に示すように、正面側中後躯体切断装置330は、中後躯体分割部Bの正面に配置された切断装置である。正面側中後躯体切断装置330は、中後躯体分割部Bのフレーム57に固定されている。
図4に示すように、背面側中後躯体切断装置340は、中後躯体分割部Bの背面に配置された切断装置である。背面側中後躯体切断装置340は、例えばロボットアーム307の先端308に取り付けられた刃物を有する垂直多関節ロボットである。
【0015】
図3に示すように、正面側前中躯体切断装置310、及び正面側中後躯体切断装置330は、例えば刃面が水平方向に配置された回転丸刃301を鉛直方向及び水平方向に移動可能に構成された切断装置である。正面側前中躯体切断装置310、及び正面側中後躯体切断装置330は、フレーム56、57に対して回転丸刃301を鉛直方向に移動させるための鉛直方向移動装置302と、フレーム56、57に対して回転丸刃301を搬送方向と平行な方向に水平方向に移動させるための搬送方向移動装置303と、フレーム56、57に対して回転丸刃301を搬送方向と直交する水平方向に移動させるための奥行方向移動装置304とを有する。したがって、正面側前中躯体切断装置310、及び正面側中後躯体切断装置330は、回転丸刃301を鉛直方向、搬送方向と平行な方向、及び搬送方向と直交する水平方向に移動可能に構成されている。
【0016】
図4に示すように、背面側前中躯体切断装置320、及び背面側中後躯体切断装置340は、例えば6軸垂直多関節ロボット306と、ロボットアーム307の先端308に取り付けられたナイフ状の切断刃360とを有する。
本実施形態に係る枝肉分割装置10では、切断刃360は、切断刃360の刃渡り361の内、少なくとも肉部の切断に使用される領域362は、刃渡り361の延在方向Dbに直線状に延在する直刃である。本実施形態に係る枝肉分割装置10では、切断刃360は、刃渡り361の延在方向Dbと直交する方向の一方側にだけ刃先363が形成されており、この刃先363は切断刃360の両側面に刃面が形成された両刃となっている。
本実施形態に係る枝肉分割装置10では、ロボットアーム307は、先端308を回動させることで、刃渡り361の延在方向Dbから見たときの切断刃360の傾斜角度を図4の両矢印rtで示すように変更可能に構成されている。これにより、刃先363の向きを切断刃360の移動方向に合わせて変更できるとともに、後述するように刃先363の向きを切断刃360の移動方向からずらすように変更できる。
【0017】
(拘束装置100)
本実施形態に係る枝肉分割装置10は、切断装置300による左右一対の枝肉W及びWの切断に際し、左右一対の枝肉W及びWを拘束するための拘束装置100を備えている。本実施形態に係る枝肉分割装置10では、拘束装置100は、第1拘束ユニット110と、第2拘束ユニット120と、を含む。本実施形態に係る枝肉分割装置10では、拘束装置100は、前中躯体分割部Aに設けられた第3拘束ユニット130を含む。
第1拘束ユニット110は、前中躯体分割部Aと、中後躯体分割部Bに設けられる。
第2拘束ユニット120は、前中躯体分割部Aと、中後躯体分割部Bに設けられる。
【0018】
(第1拘束ユニット110)
第1拘束ユニット110は、ギャンブレル14で吊り下げられた左右一対の枝肉W及びWを第1高さ位置h1において挟み込んで拘束するための第1静止部111及び第1可動部113を含む。第1拘束ユニット110は、不図示のアクチュエータによって第1可動部113が図1の紙面奥行方向に身体可能に構成されており、不動である第1静止部111との間で左右一対の枝肉W及びWの内、後躯体Eを挟み込んで拘束するように構成されている。
【0019】
(第2拘束ユニット120)
第2拘束ユニット120は、ギャンブレル14で吊り下げられた左右一対の枝肉W及びWを第1高さ位置h1の下方の第2高さ位置h2において挟み込んで拘束するための第2静止部121及び第2可動部123を含む。第2拘束ユニット120は、不図示のアクチュエータによって第2可動部123が図1の紙面奥行方向に進退可能に構成されており、不動である第2静止部121との間で左右一対の枝肉W及びWの内、中躯体Dを挟み込んで拘束するように構成されている。
【0020】
(第3拘束ユニット130)
第3拘束ユニット130は、ギャンブレル14で吊り下げられた左右一対の枝肉W及びWを第2高さ位置h2の下方の第3高さ位置h3において挟み込んで拘束するための一方側第3可動部131及び他方側第3可動部136を含む。第3拘束ユニット130は、不図示のアクチュエータによって一方側第3可動部131及び他方側第3可動部136が図1の紙面奥行方向に進退可能に構成されており、左右一対の枝肉W及びWの内、前躯体Cを挟み込んで拘束するように構成されている。
なお、一方側第3可動部131及び他方側第3可動部136は、不図示のアクチュエータによって前躯体Cを挟み込む位置である把持位置Pを鉛直方向に調節可能に構成されている。
【0021】
(コントローラ40)
コントローラ40は、本実施形態に係る枝肉分割装置10を制御するための制御装置である。コントローラ40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0022】
(把持位置Pの特定)
続いて上記構成を有する枝肉分割装置10において第3拘束ユニット130による前躯体Cの把持位置P、すなわち第3高さ位置h3の特定について説明する。図5は一実施形態に係る枝肉分割装置10の把持位置特定システム20を周辺構成とともに示す構成図であり、図6図5の撮像装置22の配置レイアウトを上方から示す模式図である。
【0023】
図5に示すように、把持位置特定システム20は、左右一対の枝肉W及びWの把持位置Pを特定するためのシステムであり、撮像装置22と、把持位置特定装置24とを備える。尚、図5では、把持位置特定システム20とともに、前述の第3拘束ユニット130、及び、把持位置特定システム20で特定された把持位置Pを取得して第3拘束ユニット130を制御可能なコントローラ40とが示されている。
【0024】
撮像装置22は、図6に示すように、左右一対の枝肉W及びWの切断面4に対向するように配置されることで、左右一対の枝肉W及びWを撮像可能なカメラ等の装置である。撮像装置22によって取得される画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。また撮像装置22の数は、単体でもよいし、複数でもよい。
なお、撮像装置22による左右一対の枝肉W及びWの撮像は、前中躯体分割部Aよりも搬送方向の上流側(図1における図示左側)の領域に左右一対の枝肉W及びWが存在する期間中に行われるとよい。
【0025】
把持位置特定装置24は、撮像装置22で撮像された画像を用いて、左右一対の枝肉W及びWの把持位置Pを特定するための装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0026】
図5では把持位置特定システム20が備える把持位置特定装置24の機能的構成として、画像取得部28と、記憶部30と、特徴点特定部32と、把持位置算出部34とを備える。
【0027】
画像取得部28は、撮像装置22で撮像された画像を取得するための構成である。
【0028】
記憶部30は、把持位置特定装置24の演算処理に必要な各種データを記憶するための構成であり、例えば特徴点特定部32における特徴点Pcの予測に用いられる学習モデル36を記憶する。学習モデル36は、画像取得部28で取得された画像を入力して、当該画像に基づいて特徴点Pcを予測するための予測モデルであり、過去に画像取得部28で取得された画像を教師データとして学習される。
【0029】
特徴点特定部32は、画像取得部28で取得された画像における特徴点Pcを特定するための構成である。特徴点Pcは、把持位置算出部34において把持位置Pを算出する際の基準となる特徴的な点、すなわち基準位置Psとして特定される。
図5に示す把持位置特定システム20では、把持位置特定装置24の内の、画像取得部28と、記憶部30と、特徴点特定部32とは、基準位置Psを特定するための基準位置特定装置38に含まれる。
【0030】
ここで特徴点Pcに関する幾つかの態様について説明する。図7は左右一対の枝肉W及びWで特定され得る特徴点Pcの幾つかの態様を示す模式図である。
【0031】
まず図7では、比較例に係る特徴点Pc1´及びPc2´として、左右一対の枝肉W及びWの首部が示されている。但し、特徴点Pc1´及びPc2´に示されるように、枝肉W及びWの首部は、一般的に作業員の人手による頭部の切除作業によって形成されるため、個体差が生じやすい(図7では、左枝肉1Aと右枝肉1Bに残存している首部の長さが異なることで、特徴点Pc1´及びPc2´の高さ方向位置が異なっている)。そのため、特徴点Pc1´及びPc2´を基準として把持位置Pを算出すると、個体差の影響を受けやすくなってしまう。このような課題は、以下に説明する各態様に係る特徴点Pcを採用することで好適に解決できる。
【0032】
図7には、特徴点Pcの幾つかの態様として特徴点Pc1~Pc3が示されている。これらの特徴点Pc1~Pc3は、各枝肉W及びWの切断面4の輪郭Rの内側領域Arから特定される。切断面4の輪郭Rの内側領域Arは枝肉の個体差の影響を受けにくいため、当該内側領域Arから特徴点Pcを特定することで、把持位置Pの算出に適した適切な特徴点Pcが得られる。
【0033】
まず特徴点Pc1は、切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる第一肋骨と接続される脊椎を、特徴点Pcとして選択した態様である。また特徴点Pc2は、切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる胸腔の下端(いわゆるスペアリブの下端)を、特徴点Pcとして選択した態様である。また特徴点Pc3は、切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる第一肋骨を、特徴点Pcとして選択した態様である。このように切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる特徴点Pc1~Pc3を選択することにより、把持位置Pを好適に算出するための特徴点Pcを得ることができる。
【0034】
尚、内側領域Arのうち第一肋骨が胸腔に露出していない場合には、第一肋骨に関する特徴点Pc1及びPc3を特定できないことがあるため、特徴点Pc1及びPc3に比べて特徴点Pc2を採用することで精度を向上できる。また特徴点Pc2は、算出される把持位置Pに対して比較的近い位置であるため、特徴点Pc2を用いて把持位置Pを算出することで精度向上が期待できる。一方で、内臓や脂肪・肉片がスペアリブ下端に付着している場合には特徴点Pc2に比べて、特徴点Pc1及びPc3を用いることで、精度のよい把持位置Pの算出が期待できる。
また把持位置Pを算出するための特徴点Pcは、前述の特徴点Pc1~Pc3のいずれか1つを採用してもよいし、これらの組み合わせを採用してもよい。
【0035】
本実施形態では、特徴点特定部32は、記憶部30に記憶された学習モデル36に対して、画像取得部28で取得された画像を入力することにより、特徴点Pcの予測結果を求める。学習モデル36は、前述したように、過去に画像取得部28で取得された画像について特徴点Pcを指定することで作成した教師データを用いて予め学習されることで構築される。一般的に、枝肉W及びWの切断面4の輪郭Rの内側領域Ar内にある特徴点Pcは、単純な画像処理では高精度に特定することは難しいが、画像を教師データとして構築された学習モデル36を用いることで、精度のよい特徴点Pcの特定が可能となる。
【0036】
把持位置算出部34は、特徴点特定部32で予測された特徴点Pcを基準として把持位置Pを算出するための構成である。このとき把持位置算出部34は、特徴点特定部32によって特定された特徴点Pcを基準として、枝肉1のうち予め設定された切断位置とは反対側にオフセットするように、把持位置Pを算出する。このオフセット量は、適宜設定可能であるが、好ましくは、把持位置Pが特徴点Pcから離れすぎない位置(ある程度近い位置)になるように設定されるとよい。
なお、把持位置算出部34の機能をコントローラ40に担わせてもよい。
【0037】
このように把持位置算出部34で算出された把持位置Pは、把持位置特定装置24の特定結果としてコントローラ40に出力される。コントローラ40は、第3拘束ユニット130における第3高さ位置h3を取得した把持位置Pにするための制御信号を生成する。この生成された制御信号は、第3拘束ユニット130の不図示の昇降装置に送信されることで、該昇降装置が駆動することによって第3拘束ユニット130における第3高さ位置h3が把持位置Pになる。
【0038】
(切断位置特定システム210)
本実施形態に係る枝肉分割装置10は、以下で説明する切断位置特定システム210を備えている。
切断位置特定システム210は、左右一対の枝肉W及びWについて前躯体Cを切り分けるための切断位置L1、及び中躯体Dを切り分ける切断位置L2を特定するためのシステムである。切断位置L1、L2は、後述するように、切断位置特定システム210が備える撮像装置212によって撮像された画像を用いた画像解析により特定される。以下の説明では、画像解析によって、左右一対の枝肉W及びWのうち背側において特定の椎骨及び肋骨の接続部(図2では下方から4番目と5番目の接続部の間)に対応する第1特徴点P1と、左右一対の枝肉W及びWのうち胸側において特定の肋骨(図2では下方から4番目と5番目の肋骨の間)に対応する第2特徴点P2とを結ぶ直線として切断位置L1が特定される場合を例示する。また、以下の説明では、画像解析によって、左右一対の枝肉W及びWのうち腰椎に対応する第3特徴点P3を通過する水平線として切断位置L2が特定される場合を例示する。
但し、切断位置L1、L2の特定手法は画像解析によって抽出される他の特徴点に基づいて特定されてもよい。
【0039】
続いて上述の切断位置Lを特定するための切断位置特定システム210について説明する。図8は一実施形態に係る切断位置特定システム210の構成図である。
【0040】
切断位置特定システム210は、左右一対の枝肉W及びWの切断位置L1、L2を特定するためのシステムであり、少なくとも1つの撮像装置212と、切断位置特定装置214とを備える。
【0041】
撮像装置212は、左右一対の枝肉W及びWの切断面4に対向するように配置されることで、一対の枝肉1を撮像可能なカメラ等の装置である。撮像装置212によって取得される画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。また撮像装置212の数は、単体でもよいし、複数でもよい(撮像装置212の具体的な配置レイアウトについては後述する)。
【0042】
切断位置特定装置214は、撮像装置212で撮像された画像を用いて、左右一対の枝肉W及びWの切断位置L1、L2を特定するための装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0043】
図8では切断位置特定システム210が備える切断位置特定装置214の機能的構成として、画像取得部218と、記憶部220と、切断位置予測部222とを備える。
【0044】
画像取得部218は、撮像装置212で撮像された画像を取得するための構成である。
【0045】
記憶部220は、切断位置特定装置214の演算処理に必要な各種データを記憶するための構成であり、切断位置L1、L2の予測に用いられる学習モデル224を記憶する。学習モデル224は、画像取得部218で取得された画像を入力として、当該画像に基づいて切断位置L1、L2を予測するための予測モデルであり、予め教師データを用いて学習される。学習モデル224の学習は、教師データとして用意された十分なサンプル画像の各々において切断位置L1、L2を特定するための第1特徴点P1、第2特徴点P2、及び第3特徴点P3を指定することにより行われる。
【0046】
切断位置予測部222は、画像取得部218で取得された画像における切断位置L1、L2を予測するための構成である。具体的には、切断位置予測部222は、記憶部220に記憶された学習モデル224に対して、画像取得部218で取得された画像を入力することにより、切断位置Lの予測結果を求める。切断位置予測部222で予測された切断位置L1、L2は、切断位置特定装置214の特定結果として出力される。
【0047】
切断位置特定システム210では、まず撮像装置212によって左右一対の枝肉W及びWの撮像が行われ、画像取得部218によって撮像装置212で撮像された画像が取得される。
【0048】
続いて切断位置予測部222は、記憶部220にアクセスすることにより、予め教師データを用いて学習された学習モデル224を取得し、当該学習モデル224に対して、上述のように取得した画像を入力することにより、切断位置L1、L2を予測する。なお、切断位置L2の予測は、前躯体Cが分割された後の左右一対の枝肉W及びWが中後躯体分割部Bに搬入された後に、中後躯体分割部Bに搬入された左右一対の枝肉W及びWを撮像可能な不図示の撮像装置で撮像して取得した画像に基づいて行われるようにしてもよい。
【0049】
上述のようにして予測された切断位置L1は、正常範囲内であるか否かが判定される。この判定では、例えば、予測された切断位置L1を、上述のようにして撮像して取得された画像に重ねて表示することにより、オペレータが確認することで行われる。切断位置L1が正常範囲から外れている場合には、オペレータの操作によって切断位置L1が補正され、補正後の切断位置L1が特定結果として出力される。
【0050】
同様に、上述のようにして予測された切断位置L2は、正常範囲内であるか否かが判定される。この判定では、例えば、予測された切断位置L2を、上述のようにして撮像して取得された画像に重ねて表示することにより、オペレータが確認することで行われる。切断位置L2が正常範囲から外れている場合には、オペレータの操作によって切断位置L2が補正され、補正後の切断位置L2が特定結果として出力される。
【0051】
尚、切断位置L1、L2が正常範囲内である場合には、切断位置予測部222による予測結果がそのまま出力される。
【0052】
続いて切断位置特定システム210における撮像装置212の具体的な配置レイアウトについて説明する。
図9は、本実施形態に係る枝肉分割装置10における撮像装置212の配置レイアウトを左右一対の枝肉W及びWの上方から示す模式図である。
撮像装置212は、左右一対の枝肉W及びWの一方(左枝肉W)に対応する位置に配置された第1撮像装置212Aと、他方(右枝肉W)に対応する位置に配置された第2撮像装置212Bとを含む。第1撮像装置212Aは、左枝肉Wを撮像可能な位置に配置される。第2撮像装置212Bは、右枝肉Wを撮像可能な位置に配置される。
【0053】
このように構成される枝肉分割装置10では、拘束装置100は次のように動作する。
まず、左右一対の枝肉W及びWがプッシャ15によって前中躯体分割部Aよりも搬送方向の上流側まで搬送されると、把持位置特定装置24は、撮像装置22に左右一対の枝肉W及びWを撮像させて、取得された画像に基づき、上述のようにして特徴点Pcを算出し、算出した特徴点Pcに基づいて把持位置P、すなわち第3高さ位置h3の目標位置を算出する。
【0054】
その後、左右一対の枝肉W及びWがプッシャ15によって前中躯体分割部Aに搬入されると、コントローラ40は、第3拘束ユニット130における第3高さ位置h3を取得した把持位置Pにするための制御信号を出力して不図示の昇降装置を駆動させる。
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して一方側第3可動部131の不図示のアクチュエータのロッドを伸長させる。これにより、前躯前押さえ134は背面に向かいつつ下方に移動するように揺動することで前躯前押さえ134で前躯体Cを背面向かって押圧する。
【0055】
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して第1拘束ユニット110の第1可動部113の不図示のアクチュエータのロッドを伸長させる。これにより、後躯後ろ押さえ116は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動することで後躯後ろ押さえ116で後躯体Eを正面に向かって押圧して後躯体Eを第1静止部111に押し付けて、後躯体Eを拘束する。
【0056】
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して第2拘束ユニット120の第2可動部123の不図示のアクチュエータのロッドを伸長させる。これにより、中躯後ろ押さえ126は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動することで湾曲部126bで中躯体Dを正面に向かって押圧して中躯体Dを第2静止部121に押し付けて、中躯体Dを拘束する。
【0057】
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して他方側第3可動部136の不図示のアクチュエータのロッドを伸長させる。これにより、前躯後ろ押さえ139は正面に向かいつつ下方に移動するように揺動することで湾曲部139bで前躯体Cを正面に向かって押圧して前躯体Cを前躯前押さえ134に押し付けて、前躯体Cを拘束する。
枝肉分割装置10では、このようにして左右一対の枝肉W及びWを拘束装置100によって上から順に拘束することができる。
【0058】
その後、コントローラ40は、制御信号を出力して正面側前中躯体切断装置310と、背面側前中躯体切断装置320とを駆動することで、中躯体Dから前躯体Cを分割する。
具体的には、コントローラ40は、正面側前中躯体切断装置310と背面側前中躯体切断装置320とが以下のように作動するように正面側前中躯体切断装置310と背面側前中躯体切断装置320とに駆動信号を出力する。
図10は、正面側前中躯体切断装置310の回転丸刃301、及び背面側前中躯体切断装置320の切断刃360の移動軌跡を単純化して示した図である。
まず初めに、正面側前中躯体切断装置310の回転丸刃301は、図10の矢印f1で示すように、脊椎7側から腹側に向かって移動して切断位置L1で左枝肉Wの脊椎7を切断する。
次いで、正面側前中躯体切断装置310の回転丸刃301は、図10の矢印f2で示すように、腹側から脊椎7側に向かって移動して切断位置L1で左枝肉Wの胸椎3を切断する。
【0059】
次いで、正面側前中躯体切断装置310の回転丸刃301は、図10の矢印f3で示すように、脊椎7側から腹側に向かって移動して切断位置L1で右枝肉Wの脊椎7を切断する。
次いで、正面側前中躯体切断装置310の回転丸刃301は、図10の矢印f4で示すように、腹側から脊椎7側に向かって移動して切断位置L1で右枝肉Wの胸椎3を切断する。
【0060】
正面側前中躯体切断装置310の回転丸刃301による左枝肉Wの脊椎7及び胸椎3の切断が終了すると、背面側前中躯体切断装置320の切断刃360は、図10の矢印b1で示すように、脊椎7側から腹側に向かって移動して切断位置L1で左枝肉Wの肉部mを切断する。
なお、正面側前中躯体切断装置310と背面側前中躯体切断装置320とが干渉しないのであれば、回転丸刃301による左枝肉Wの脊椎7及び胸椎3の切断が終了していれば、回転丸刃301による右枝肉Wの脊椎7及び胸椎3の切断が終了する前であっても切断刃360による左枝肉Wの肉部mの切断を開始してよい。
【0061】
正面側前中躯体切断装置310の回転丸刃301による右枝肉Wの脊椎7及び胸椎3の切断が終了すると、背面側前中躯体切断装置320の切断刃360は、図10の矢印b2で示すように、脊椎7側から腹側に向かって移動して切断位置L1で右枝肉Wの肉部mを切断する。
【0062】
図11は、切断刃360の刃渡り361の延在方向Dbから見た、切断位置L1の延在方向と切断刃360の刃先363の向きとの関係を説明するための図である。
図12は、切断刃360の刃渡り361の延在方向Dbから見た、切断位置L1の延在方向と切断刃360の刃先363の向きとの関係を説明するための図である。
コントローラ40は、切断刃360の刃先363の向きが以下で説明するような向きとなるように正面側前中躯体切断装置310に駆動信号を出力する。
【0063】
例えば図11に示すように、切断刃360の刃渡り361の延在方向Dbから見た切断位置L1が脊椎7から腹側に向かって下がるように傾斜している場合、刃先363を上げ、峰364を下げて、刃先363と刃先363とは反対側の峰364とを結ぶ切断刃360の中心線Cbが刃渡り361の延在方向Dbから見た切断位置L1の延在方向、すなわち切断刃360の移動方向に対して傾斜するように刃先363の向きを変更する。
ここで、刃先363と峰364とを結ぶ切断刃360の中心線Cbと、刃渡り361の延在方向から見た切断位置L1の延在方向との角度差θについて、切断刃360を図11、12における図示右方から左方へ移動させる場合に、刃先363を時計方向へ回転させた場合の角度差θを+とし、反時計方向へ回転させた場合の角度差θを-とする。
例えば図11に示すように、切断位置L1が脊椎側から腹側に向かうにつれて下方(前躯体C側)に向かうように傾斜している場合、すなわち、切断位置L1を挟む上下の肋骨8が脊椎側から腹側に向かうにつれて前躯体C側に向かうように傾斜している場合、刃先363で下方(前躯体C側)の肋骨8が削られ難くするために角度差θを+3度以下(例えば2度)程度に設定することで刃先363の向きを切断刃360の移動方向から後躯体E側へずらすとよい。
【0064】
また、例えば図12に示すように、切断刃360の刃渡り361の延在方向Dbから見た切断位置L1が脊椎7から腹側に向かって上がるように傾斜している場合、刃先363を下げ、峰364を上げて、刃先363と峰364とを結ぶ切断刃360の中心線Cbが刃渡り361の延在方向Dbから見た切断位置L1の延在方向、すなわち切断刃360の移動方向に対して傾斜するように刃先363の向きを変更する。
例えば図12に示すように、切断位置L1が脊椎側から腹側に向かうにつれて上方(後躯体E側)に向かうように傾斜している場合、すなわち、切断位置L1を挟む上下の肋骨8が脊椎側から腹側に向かうにつれて後躯体E側に向かうように傾斜している場合、刃先363で上方(後躯体E側)の肋骨8が削られ難くするために角度差θを-3度以下(例えば2度)程度に設定することで刃先363の向きを切断刃360の移動方向から前躯体C側へずらすとよい。
これにより、切断刃360によって肉部mを切断する際に、切断刃360で肋骨8が削られ難くすることができる。
【0065】
次いで、コントローラ40は、プッシャ15を駆動させて左右一対の枝肉W及びWを中後躯体分割部Bに搬入させる。
左右一対の枝肉W及びWがプッシャ15によって中後躯体分割部Bに搬入されると、コントローラ40は、制御信号を出力して第1拘束ユニット110の第1可動部113の不図示のアクチュエータのロッドを伸長させる。これにより、後躯後ろ押さえ116は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動することで後躯後ろ押さえ116で後躯体Eを正面に向かって押圧して後躯体Eを第1静止部111に押し付けて、後躯体Eを拘束する。
【0066】
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して第2拘束ユニット120の第2可動部123の不図示のアクチュエータのロッドを伸長させる。これにより、中躯後ろ押さえ126は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動することで湾曲部126bで中躯体Dを正面に向かって押圧して中躯体Dを第2静止部121に押し付けて、中躯体Dを拘束する。
【0067】
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して正面側中後躯体切断装置330と、背面側中後躯体切断装置340とを駆動することで、後躯体Eから中躯体Dを分割する。
具体的には、コントローラ40は、正面側中後躯体切断装置330と背面側中後躯体切断装置340とが以下のように作動するように正面側中後躯体切断装置330と背面側中後躯体切断装置340とに駆動信号を出力する。
【0068】
まず初めに、正面側中後躯体切断装置330の回転丸刃301は、腹側から脊椎7側に向かって移動して切断位置L2で左枝肉Wの腰椎を切断する。
次いで、正面側中後躯体切断装置330の回転丸刃301は、腹側から脊椎7側に向かって移動して切断位置L2で右枝肉Wの腰椎を切断する。
【0069】
次いで、背面側中後躯体切断装置340の切断刃360は、脊椎7側から腹側に向かって移動して切断位置L2で左枝肉Wの肉部mを切断する。
次いで、背面側中後躯体切断装置340の切断刃360は、脊椎7側から腹側に向かって移動して切断位置L2で右枝肉Wの肉部mを切断する。
【0070】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態の枝肉分割装置10では、前中躯体分割部Aで中躯体Dから前躯体Cを分割し、中後躯体分割部Bで後躯体Eから中躯体Dを分割した。しかし、枝肉分割装置10において中後躯体分割部Bを設けず、前中躯体分割部Aで中躯体Dから前躯体Cを分割し、その後、前中躯体分割部Aで後躯体Eから中躯体Dを分割するようにしてもよい。
【0071】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る枝肉加工装置(枝肉分割装置10)は、右枝肉W及び左枝肉Wを加工するための枝肉加工装置である。本開示の少なくとも一実施形態に係る枝肉加工装置(枝肉分割装置10)は、右枝肉W及び左枝肉Wの肉部mを切断するためのカッタ(切断刃360)を有する第1切断装置(背面側前中躯体切断装置320、背面側中後躯体切断装置340)と、右枝肉W及び左枝肉Wの各々について肉部mを切断するために背骨(脊椎)7側から腹側に向けてカッタ(切断刃360)を移動させるように第1切断装置(背面側前中躯体切断装置320、背面側中後躯体切断装置340)を制御するためのコントローラ40と、を備える。
【0072】
発明者らが鋭意検討した結果、例えば前躯体Cを中躯体Dから分離させる際に枝肉W、Wに対して胸部側(腹側)から背中側(背骨7側)に向かってカッタ(切断刃360)を移動させた場合と比べて、背中側(背骨7側)から胸部側(腹側)に向かってカッタ(切断刃360)を移動させると肋骨8が削られ難くなることが判明した。また、発明者らが鋭意検討した結果、例えば吊り下げられた枝肉W、Wに関して中躯体Dを後躯体Eから分離させる際に中躯体Dからヒレが上方に突出している場合には、枝肉W、Wに対して腹側から背中側(背骨7側)に向かってカッタ(切断刃360)を移動させると、ヒレの突出の仕方によってはヒレを切断して歩留まりを低下させてしまうおそれがあることが判明した。
【0073】
上記(1)の構成によれば、肉部mを切断するために背骨(脊椎)7側から腹側に向けてカッタ(切断刃360)を移動させるようにしたので、上述したような腹側から背骨(脊椎)7側に向けてカッタ(切断刃360)を移動させた場合のような不都合が生じ難くなるので、枝肉W、Wを良好な品質で切断できる。
【0074】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、カッタ(切断刃360)は、ナイフ状切断刃(切断刃360)であるとよい。
【0075】
上記(2)の構成によれば、ナイフ状切断刃(切断刃360)で肉部mを切断することで、肉部mを回転丸刃で切断した場合と比べて肉屑の発生量を低減できるので、枝肉W、Wを良好な品質で切断できる。
【0076】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、ナイフ状切断刃(切断刃360)の刃渡り361の内、少なくとも肉部mの切断に使用される領域362は、刃渡り361の延在方向Dbに直線状に延在する直刃であるとよい。
【0077】
上記(3)の構成によれば、刃渡り361の延在方向Dbに対して刃先363が反るように湾曲している場合と比べて刃先363の再研磨が容易であるので、比較的低いコストでナイフ状切断刃(切断刃360の切れ味を維持でき、枝肉W、Wを良好な品質で切断できる。
【0078】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、右枝肉W及び左枝肉Wは、脊椎7の位置で左右に半割りされた枝肉である。幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、右枝肉W及び左枝肉Wの半割りにされた切断面4を撮像して得られた画像を画像処理することで仮想切断線(切断位置L1、切断位置L2)を特定する切断位置特定装置(切断位置特定システム210)を備えるとよい。コントローラ40は、切断位置特定装置(切断位置特定システム210)による仮想切断線(切断位置L1)の検出結果に基づき、刃渡り361の延在方向Dbから見たときのナイフ状切断刃(切断刃360)の傾斜角度を調整するように第1切断装置(背面側前中躯体切断装置320)を制御するとよい。
【0079】
上記(4)の構成によれば、刃渡り361の延在方向Dbから見たときのナイフ状切断刃(切断刃360)の傾斜角度を調整することで、例えば前躯体Cを中躯体Dから分離させる際に肋骨8が削られ難くすることができる。
【0080】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(4)の何れかの構成において、コントローラ40は、ナイフ状切断刃(切断刃360)で右枝肉W及び左枝肉Wの肉部mを切断することで右枝肉W及び左枝肉Wの後躯体Eから中躯体Dを切断するように第1切断装置(背面側中後躯体切断装置340)を制御するとよい。
【0081】
上記(5)の構成によれば、肉部mを回転丸刃で切断した場合と比べて肉屑の発生量を低減できるので、切断で得られる中躯体D及び後躯体Eの品質が良好となる。
【0082】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(5)の何れかの構成において、コントローラ40は、ナイフ状切断刃(切断刃360)で右枝肉W及び左枝肉Wの肉部mを切断することで右枝肉W及び左枝肉Wの中躯体Dから前躯体Cを切断するように第1切断装置(背面側前中躯体切断装置320)を制御するとよい。
【0083】
上記(6)の構成によれば、肉部mを回転丸刃で切断した場合と比べて肉屑の発生量を低減できるので、切断で得られる前躯体C及び中躯体Dの品質が良好となる。
【0084】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、第1切断装置(背面側前中躯体切断装置320、背面側中後躯体切断装置340)は、ロボットアーム307の先端308にカッタ(切断刃360)を装着可能な垂直多関節ロボット(6軸垂直多関節ロボット306)であるとよい。
【0085】
上記(7)の構成によれば、枝肉W、Wの所望部位を所望方向に切断可能となる。
【0086】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、右枝肉W及び左枝肉Wの骨部(胸椎3、脊椎7)を切断するための回転丸刃301を有する第2切断装置(正面側前中躯体切断装置310、正面側中後躯体切断装置330)を備えるとよい。
【0087】
上記(8)の構成によれば、骨部(胸椎3、脊椎7)を容易に切断できる。
【符号の説明】
【0088】
4 切断面
8 肋骨
7 脊椎(背骨)
10 枝肉分割装置
12 レール
14 ギャンブレル
15 プッシャ
16 トロリ
20 把持位置特定システム
22 撮像装置
24 把持位置特定装置
28 画像取得部
30 記憶部
32 特徴点特定部
34 把持位置算出部
40 コントローラ
210 切断位置特定システム
212 撮像装置
300 切断装置
301 回転丸刃
302 鉛直方向移動装置
303 搬送方向移動装置
304 奥行方向移動装置
306 6軸垂直多関節ロボット
307 ロボットアーム
308 先端
300 切断装置
310 正面側前中躯体切断装置
320 背面側前中躯体切断装置
330 正面側中後躯体切断装置
340 背面側中後躯体切断装置
360 切断刃
363 刃先
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12