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  • 特開-床版の保持構造および保持方法 図1
  • 特開-床版の保持構造および保持方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007140
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】床版の保持構造および保持方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/045 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
E02D29/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108342
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰斗
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 正裕
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AA05
2D147AB04
(57)【要約】
【課題】構真柱や中間杭を用いないで床版を保持可能な床版の保持構造および保持方法を提供する。
【解決手段】対向して配置される土留め壁12の間に架設される床版14を前記土留め壁12に保持する構造10であって、前記土留め壁12から側方に突出し、前記床版14の側端部32に接続して前記床版14を前記土留め壁12に保持する第一接続材16と、前記床版14の斜め上方の前記土留め壁12から前記床版14の上側部34に接続して前記床版14を前記土留め壁12に保持する第二接続材18とを備えるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置される土留め壁の間に架設される床版を前記土留め壁に保持する構造であって、
前記土留め壁から側方に突出し、前記床版の側端部に接続して前記床版を前記土留め壁に保持する第一接続材と、前記床版の斜め上方の前記土留め壁から前記床版の上側部に接続して前記床版を前記土留め壁に保持する第二接続材とを備えることを特徴とする床版の保持構造。
【請求項2】
対向して配置される土留め壁の間に架設される床版を前記土留め壁に保持する方法であって、
前記土留め壁に第一接続材の一方側を固定し、第一接続材の他方側に前記床版の側端部を接続するステップと、前記床版の斜め上方の前記土留め壁に第二接続材の一方側を固定し、第二接続材の他方側に前記床版の上側部を接続するステップを有することを特徴とする床版の保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆巻き工法で構築される逆巻きスラブなどの床版の保持構造および保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下構造物の構築方法として、掘削と躯体構築を上部から交互に繰り返す逆巻き工法が知られている。この逆巻き工法においては、地中に打設した構真柱や中間杭を逆巻きスラブ(床版)と一体化することにより、逆巻きスラブを保持することが一般的に行われている(例えば、特許文献1~4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-223084号公報
【特許文献2】特開2012-211439号公報
【特許文献3】特開2011-246910号公報
【特許文献4】特開平11-6164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、逆巻きスラブ下の掘削作業や躯体の構築作業を行う場合、逆巻きスラブの下側にある構真柱や中間杭が干渉するため、作業効率(歩掛り)が低下し、作業に要する工程が長くなるという問題があった。このため、構真柱や中間杭を用いない逆巻きスラブの保持技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構真柱や中間杭を用いないで床版を保持可能な床版の保持構造および保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る床版の保持構造は、対向して配置される土留め壁の間に架設される床版を前記土留め壁に保持する構造であって、前記土留め壁から側方に突出し、前記床版の側端部に接続して前記床版を前記土留め壁に保持する第一接続材と、前記床版の斜め上方の前記土留め壁から前記床版の上側部に接続して前記床版を前記土留め壁に保持する第二接続材とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る床版の保持方法は、対向して配置される土留め壁の間に架設される床版を前記土留め壁に保持する方法であって、前記土留め壁に第一接続材の一方側を固定し、第一接続材の他方側に前記床版の側端部を接続するステップと、前記床版の斜め上方の前記土留め壁に第二接続材の一方側を固定し、第二接続材の他方側に前記床版の上側部を接続するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る床版の保持構造によれば、対向して配置される土留め壁の間に架設される床版を前記土留め壁に保持する構造であって、前記土留め壁から側方に突出し、前記床版の側端部に接続して前記床版を前記土留め壁に保持する第一接続材と、前記床版の斜め上方の前記土留め壁から前記床版の上側部に接続して前記床版を前記土留め壁に保持する第二接続材とを備えるので、構真柱や中間杭を用いないで床版を保持することができるという効果を奏する。構真柱や中間杭を設置する必要がなくなるため、構真柱や中間杭の干渉を回避して床版の下の地盤を掘削することができ、逆巻き施工による躯体の構築を効率よく行うことができる。
【0009】
また、本発明に係る床版の保持方法によれば、対向して配置される土留め壁の間に架設される床版を前記土留め壁に保持する方法であって、前記土留め壁に第一接続材の一方側を固定し、第一接続材の他方側に前記床版の側端部を接続するステップと、前記床版の斜め上方の前記土留め壁に第二接続材の一方側を固定し、第二接続材の他方側に前記床版の上側部を接続するステップを有するので、構真柱や中間杭を用いないで床版を保持することができるという効果を奏する。構真柱や中間杭を設置する必要がなくなるため、構真柱や中間杭の干渉を回避して床版の下の地盤を掘削することができ、逆巻き施工による躯体の構築を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に係る床版の保持構造および保持方法の実施の形態を示す図である。
図2図2は、本実施の形態の第一接続材の一例を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る床版の保持構造および保持方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る床版の保持構造10は、逆巻き工法で土留め壁12の間に架設される逆巻きスラブ14(床版)を土留め壁12に保持するものであり、第一接続材16および第二接続材18を備える。なお、図の例では、逆巻きスラブ14の下側の領域まで地盤Gの掘削を済ませた状態を示している。
【0013】
土留め壁12は、地盤G中の支持地盤まで鉛直方向に打ち込まれた地中壁であり、例えば鋼矢板、鋼管矢板などで構成される。この土留め壁12は、地下構造物の構築予定領域の地盤Gを包囲するように配置される。土留め壁12の配置形状は、平面視で矩形状を想定しているが、本発明はこれに限るものではなく、他の形状でもよい。土留め壁12の上端には、仮設構台20が設置される。仮設構台20は、H形鋼22を介して中間杭24に支持される。
【0014】
掘削を済ませた領域のうち、逆巻きスラブ14の上側の土留め壁12の表面には、ブラケット26を介して腹起し28が設置され、対向する腹起し28の間には、切梁30が中間杭24を介して掛け渡される。切梁30および腹起し28は、土留め支保工として機能する。図の例では、上下2段の切梁30A、30Bが設置される場合を示している。各段の切梁30A、30Bは、所定の深度まで掘削が完了した段階でそれぞれ施工される。
【0015】
中間杭24は、切梁30A、30Bの座屈を防止するために地盤G中に施工される。図の例では、中間杭24の平面位置および設置本数は、両側の土留め壁12の間の領域を略三等分する位置に2本設置される場合を示しているが、要求される荷重条件に応じて変更可能である。
【0016】
逆巻きスラブ14は、鉄筋コンクリート製の床版であり、地下構造物の躯体の一部(例えば、躯体の上床版)を構成する。逆巻きスラブ14の側端部32は、対向する土留め壁12に第一接続材16を介して固定される。また、逆巻きスラブ14の上面34を略三等分する2箇所の位置36は、斜め上方の土留め壁12に第二接続材18を介して固定される。したがって、逆巻きスラブ14は、土留め支保工としても機能する。なお、逆巻きスラブ14は、中間杭24の下部に一体化している。図の例では、中間杭24の下部は、逆巻きスラブ14を構築するまでの間、仮設構台20を支持可能となるように、破線で示すように逆巻きスラブの下面38から下側に突き出され、地盤に根入されている。中間杭24は、逆巻きスラブ14の下側の領域を掘削する際に、逆巻きスラブ14の下面38から下側の部分を撤去する。
【0017】
第一接続材16は、逆巻きスラブ14の荷重を土留め壁12側に伝達するために設けられ、土留め壁12から側方に突出し、逆巻きスラブ14の側端部32に接続して逆巻きスラブ14を土留め壁12に保持する。第一接続材16は、一端側を土留め壁12の表面に溶接等により固定してもよいし、土留め壁12の内部に埋め込み配置してもよい。また、第一接続材16の他端側は、逆巻きスラブ14の内部に埋め込み配置することが好ましい。図2に、逆巻きスラブ14の施工前において、土留め壁12から張り出した第一接続材16の一例を示す。この第一接続材16には、後の工程で逆巻きスラブ14が施工される。この図に示すように、第一接続材16は、上下方向および前後方向にそれぞれ間隔をあけて配置された複数の鉄筋や鋼棒などの鋼材やジベルなどで構成することができる。
【0018】
第二接続材18は、逆巻きスラブ14の斜め上方の土留め壁12から逆巻きスラブ14の上面34(上側部)に接続して、逆巻きスラブ14を土留め壁12に保持する引っ張り斜材であり、逆巻きスラブ14の曲げスパン軽減のために設けられる。具体的には、第二接続材18の上端は、土留め壁12に設けられた下段側の腹起し28Bにブラケット40を介して固定される。第二接続材18の下端は、H形鋼42を介して逆巻きスラブ14の上面34を略三等分する位置36に固定される。この位置36は、第二接続材18の上端に近い側に位置する中間杭24の近傍の位置である。第二接続材18は、例えば、鋼材などの高張力材などで構成することができる。
【0019】
次に、本実施の形態の床版の保持方法について説明する。
まず、地盤G中に土留め壁12を施工する。次に、土留め壁12に囲まれた領域の地盤Gを掘削し、露出した土留め壁12にブラケット26A、腹起し28Aを施工し、その後、上段(1段目)の切梁30Aを架設する。中間杭24は、土留め壁12の施工前後から上段の切梁30Aの架設前の段階で設置することができる。仮設構台20は、中間杭24の設置後に施工することができる。その後、上段の切梁30Aの下の領域を所定の深度まで掘削し、下段(2段目)の切梁30Bを架設する。
【0020】
逆巻きスラブ14の構築予定位置まで掘削を終えたら、土留め壁12に第一接続材16の一方側を取り付ける。その後、逆巻きスラブ14を施工する。その際、第一接続材16の他端側が逆巻きスラブ14の側端部32に埋め込まれるように、さらに、中間杭24が巻き込まれるようにコンクリートを打設する。その後、逆巻きスラブ14の上面34と、土留め壁12に設けられた下段側の腹起し28Bとの間に第二接続材18を掛け渡す。これにより、逆巻きスラブ14は、第一接続材16および第二接続材18を介して土留め壁12に保持される。その後、逆巻きスラブ14の下側の地盤Gの掘削を進め、床付け面を形成し、この床付け面上に均しコンクリート44を施工する。
【0021】
このように、構真柱や中間杭24の代わりに土留め壁12に設置した第一接続材16と第二接続材18を用いて逆巻きスラブ14を保持する。したがって、本実施の形態によれば、構真柱や中間杭24を用いないで逆巻きスラブ14を土留め壁12に保持することができる。構真柱や中間杭24を逆巻きスラブ14の下側に設置する必要がなくなるため、逆巻きスラブ14下の空間が確保される。このため、構真柱や中間杭24の干渉を回避して逆巻きスラブ14の下の地盤Gを掘削することができ、逆巻き工法による躯体の構築を効率よく行うことができる。これにより、掘削・躯体構築の施工歩掛が向上し、工程短縮を図ることができる。また、本実施の形態によれば、掘削底面下に構造物(例えば、シールドトンネル等)が存在する場合でも、構造物との干渉を回避することができ、逆巻き工法による地下躯体の構築を効率的に行うことができる。
【0022】
以上説明したように、本発明に係る床版の保持構造によれば、対向して配置される土留め壁の間に架設される床版を前記土留め壁に保持する構造であって、前記土留め壁から側方に突出し、前記床版の側端部に接続して前記床版を前記土留め壁に保持する第一接続材と、前記床版の斜め上方の前記土留め壁から前記床版の上側部に接続して前記床版を前記土留め壁に保持する第二接続材とを備えるので、構真柱や中間杭を用いないで床版を保持することができる。構真柱や中間杭を設置する必要がなくなるため、構真柱や中間杭の干渉を回避して床版の下の地盤を掘削することができ、逆巻き施工による躯体の構築を効率よく行うことができる。
【0023】
また、本発明に係る床版の保持方法によれば、対向して配置される土留め壁の間に架設される床版を前記土留め壁に保持する方法であって、前記土留め壁に第一接続材の一方側を固定し、第一接続材の他方側に前記床版の側端部を接続するステップと、前記床版の斜め上方の前記土留め壁に第二接続材の一方側を固定し、第二接続材の他方側に前記床版の上側部を接続するステップを有するので、構真柱や中間杭を用いないで床版を保持することができる。構真柱や中間杭を設置する必要がなくなるため、構真柱や中間杭の干渉を回避して床版の下の地盤を掘削することができ、逆巻き施工による躯体の構築を効率よく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明に係る床版の保持構造および保持方法は、逆巻き工法における床版に有用であり、特に、構真柱や中間杭を用いないで床版を保持するのに適している。
【符号の説明】
【0025】
10 床版の保持構造
12 土留め壁
14 逆巻きスラブ(床版)
16 第一接続材
18 第二接続材
20 仮設構台
22,42 H形鋼
24 中間杭
26,26A,26B,40 ブラケット
28,28A,28B 腹起し
30,30A,30B 切梁
32 側端部
34 上面(上側部)
36 位置
38 下面
44 均しコンクリート
G 地盤
図1
図2