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特開2025-7141ドアロック制御システム、プログラム及び工事管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007141
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ドアロック制御システム、プログラム及び工事管理方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20250109BHJP
   E05B 41/00 20060101ALI20250109BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20250109BHJP
【FI】
E05B49/00 K
E05B41/00 F
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108343
(22)【出願日】2023-06-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和5年1月16日に西松建設株式会社のウェブサイトにて公開 (2)令和5年1月16日に株式会社ファイバーゲートのウェブサイトにて公開 (3)令和5年1月16日にPR代行サービス会社のウェブサイトにて公開 (4)令和5年1月16日に日本経済新聞電子版のウェブサイトにて公開 (5)令和5年1月17日に日刊建設工業新聞に掲載 (6)令和5年1月17日に日刊建設通信新聞に掲載 (7)令和5年3月15日に建設RXコンソーシアム・相互利用可能なロボット分科会にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510252014
【氏名又は名称】株式会社ファイバーゲート
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】又市 麻梨子
(72)【発明者】
【氏名】木村 仁治
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄太
(72)【発明者】
【氏名】金子 尚
【テーマコード(参考)】
2E250
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2E250AA05
2E250BB04
2E250BB25
2E250BB43
2E250BB47
2E250BB57
2E250CC27
2E250FF36
2E250GG06
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】
集合住宅の工事現場において、膨大な戸数の玄関扉の鍵を所持せずとも、鍵の解錠・施錠の操作を行うことのできるシステム、プログラム及び工事管理方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】
集合住宅の各住戸玄関扉のドアロック制御システムであって、各住戸玄関扉の鍵操作部に着脱可能に装着されて、鍵操作部の施解錠を行う複数の施解錠装置と、前記複数の施解錠装置と直接的又は間接的に通信を行うルータと、前記ルータ及び電気通信回線を介して、前記複数の施解錠に関する集中管理制御を行う管理装置、を備え、前記管理装置は、前記複数の施解錠装置を集中及び/又は個別に制御することができるように構成されていることを特徴とするドアロック制御システムにより、課題を解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の各住戸玄関扉のドアロック制御システムであって、
各住戸玄関扉の鍵操作部に着脱可能に装着されて、鍵操作部の施解錠を行う複数の施解錠装置と、
前記複数の施解錠装置と直接的又は間接的に通信を行うルータと、
前記ルータ及び電気通信回線を介して、前記複数の施解錠に関する集中管理制御を行う管理装置、を備え、
前記管理装置は、前記複数の施解錠装置を集中及び/又は個別に制御することができるように構成されている
ことを特徴とするドアロック制御システム。
【請求項2】
前記ルータは、前記複数の施解錠装置に対応して設けられ、それぞれが前記複数の施解錠装置と直接的又は間接的に通信を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のドアロック制御システム。
【請求項3】
前記ルータは、サブギガ帯を用いて、前記複数の施解錠装置の一部に跨って共通して無線通信を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のドアロック制御システム。
【請求項4】
前記管理装置は、管理サーバであって、かつ、情報処理端末と通信を行うものであり、
前記情報処理端末が前記複数の施解錠装置を駆動するための操作を受け付ける
ことを特徴とする請求項1に記載のドアロック制御システム。
【請求項5】
前記情報処理端末は、各住戸玄関扉の施解錠の状態を報知できる
ことを特徴とする請求項4に記載のドアロック制御システム。
【請求項6】
前記集合住宅は、間仕切り工事、天井工事、床工事等が終了した後の内装工事段階のものであり、
前記施解錠装置は、内装工事中の各住戸に一時的に装着されるものである
ことを特徴とする請求項1に記載のドアロック制御システム。
【請求項7】
集合住宅の各住戸玄関扉の鍵操作部の施解錠を行う複数の施解錠装置に対して、集中管理制御を行う管理サーバとの間で通信を行う情報処理端末のコンピュータに、
複数の施解錠装置を集中及び/又は個別に施解錠する命令操作を受け付けるステップと、
前記命令操作に対応する信号を、前記管理サーバに対して、送信するステップと、
各住戸玄関扉の施解錠の状態を、前記管理サーバから、受信するステップと、
受信された施解錠の状態に応じて、当該状態を前記情報処理端末の表示装置に表示させるステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
集合住宅の建設工事終盤の内装工事段階で行われる工事管理方法であって、
各住戸玄関扉の鍵操作部に、鍵操作部の施解錠を行う複数の施解錠装置を取り付ける工程、
各住戸の必要な内装工事を行う工程、
予定された所定期間の内装工事の工程が行われた後に、前記複数の施解錠装置を集中制御する管理装置から、一括して施錠を行う工程、
を少なくとも含む工事管理方法。
【請求項9】
予定された内装工事の全ての工程が完了した後に、前記施解錠装置を各住戸玄関扉の鍵操作部から取り外す工程、
をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の工事管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅、特に、工事段階にある集合住宅の各住戸玄関扉のドアロックの集中管理に適したドアロック制御システム、プログラム及び工事管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅の建設工事は、杭工事、土留め工事、掘削、捨てコン打設、基礎コンクリート打設といった基礎工事の後、鉄筋工事、型枠工事、コンクリート打設といった躯体工事を経て、内装及び外装工事という工程を辿ることになる。ここで、基礎工事、躯体工事、また、内装工事であっても、電気配線工事、空調・配管工事、ユニットバス設置、断熱材充填、間仕切り工事といった工程迄であれば、各住戸の厳重管理というものは然程必要とはされない。しかし、天井・壁・床の仕上げ後の内装工事後半の建具とクロス張り、フローリング貼りといった仕上げ工事については、各住戸の厳重管理が必要とされる。建築資材の高騰による資材の盗難といった事態や、悪戯、毀損や破壊といった悪意を伴った行為が行われる事態が生じる可能性も考えられるからである。
このため、集合住宅の工事現場では、玄関扉が取り付けられた後、現場作業者は毎日、膨大な戸数の玄関扉の鍵を所持した上で、各戸の鍵の解錠・施錠を行っている。しかし、合鍵を不正に作成されることが懸念される。また、管理を徹底させたとしても、各戸の鍵の施解錠は、膨大な時間を要するだけでなく、鍵の閉め忘れといったリスクを抱える等、多くの問題を有している。
このことに関して、内装工事中の鍵の管理という観点で、特許文献1には、マンション等の建設工事で使用される初期の合鍵を簡単な操作で施解錠操作ができなくすることが可能な可変ピンシリンダ錠が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-111962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、結局のところ、物理的な鍵で一戸ずつ施解錠を行うものであるから、膨大な時間を要するといった問題を抜本的に解決できるものではなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、主に、集合住宅の工事現場において、膨大な戸数の玄関扉の鍵を所持せずとも、鍵の解錠・施錠の操作を行うことのできるシステム、プログラム及び工事管理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、集合住宅の各住戸玄関扉のドアロック制御システムであって、各住戸玄関扉の鍵操作部に着脱可能に装着されて、鍵操作部の施解錠を行う複数の施解錠装置と、前記複数の施解錠装置と直接的又は間接的に通信を行うルータと、前記ルータ及び電気通信回線を介して、前記複数の施解錠に関する集中管理制御を行う管理装置、を備え、前記管理装置は、前記複数の施解錠装置を集中及び/又は個別に制御することができるように構成されていることを特徴とするドアロック制御システムによって、前述の課題を解決するものである。
【0007】
また、本発明は、集合住宅の各住戸玄関扉の鍵操作部の施解錠を行う複数の施解錠装置に対して、集中管理制御を行う管理サーバとの間で通信を行う情報処理端末のコンピュータに、複数の施解錠装置を集中及び/又は個別に施解錠する命令操作を受け付けるステップと、前記命令操作に対応する信号を、前記管理サーバに対して、送信するステップと、各住戸玄関扉の施解錠の状態を、前記管理サーバから、受信するステップと、受信された施解錠の状態に応じて、当該状態を前記情報処理端末の表示装置に表示させるステップと、を実行させることを特徴とするプログラムによっても、前述の課題を解決するものである。
【0008】
さらに、本発明は、集合住宅の建設工事終盤の内装工事段階で行われる工事管理方法であって、各住戸玄関扉の鍵操作部に、鍵操作部の施解錠を行う複数の施解錠装置を取り付ける工程、各住戸の必要な内装工事を行う工程、予定された所定期間の内装工事の工程が行われた後に、前記複数の施解錠装置を集中制御する管理装置から、一括して施錠を行う工程、を少なくとも含む工事管理方法によっても、前述の課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
前述した特徴を有する本発明によれば、主に、集合住宅の工事現場において、膨大な戸数の玄関扉の鍵を所持せずとも、鍵の解錠・施錠の操作を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係るドアロック制御システムの全体構成を示す説明図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るドアロック制御システムにおける施解錠装置の構造を示す説明図であり、図2(a)が正面図、図2(b)が右側面図、図2(c)が背面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係るドアロック制御システムにおける管理装置を示す説明図である。
図4】本発明の第一実施形態に係るドアロック制御システムにおける情報処理端末の表示画面を示す説明図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るドアロック制御システムの全体構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明するが、以下の図面は説明を目的に作成されたもので、分かりやすくするため、説明に不要な部材を意図的に図示していない場合がある。また、説明のため部材を意図的に大きくまたは小さく図示している場合があり、正確な縮尺を示す図面ではない。
【0012】
<第一実施形態>
(ドアロック制御システムの全体構成)
まず、ドアロック制御システムの全体構成について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るドアロック制御システムの全体構成を示す説明図である。本発明の第一実施形態に係るドアロック制御システム101は、集合住宅の各住戸Lの玄関扉の鍵操作部(ドア鍵のサムターン)に着脱可能に装着された複数の施解錠装置1,1,…1を、ルータ2,2,…2を介して管理装置3にインターネット通信網や電話回線網等の電気通信回線を通じて接続されるように、構成されるシステムであって、複数の施解錠装置1,1,…1を集中的に制御、例えば、一括して施解錠動作させるものである。また、複数の施解錠装置1,1,…1を個別に、施解錠動作させることも可能である。
【0013】
第一実施形態に係るドアロック制御システム101は、工事中の集合住宅、特に、間仕切り工事、天井工事、床工事等が終了した後の内装工事段階の集合住宅に適用されるのに好適なシステムである。複数の施解錠装置1,1,…1は、集合住宅の各住戸Lの玄関扉の鍵操作部(ドア鍵のサムターン)に着脱可能に一時的に装着されるものであって、外部からのBluetooth(登録商標)信号を受信することによって、玄関扉の鍵操作部の施解錠を行うものである。当該Bluetooth(登録商標)信号は、中継器6から送信される。中継器6は、インターネット通信網や電話回線網等の電気通信回線を介して管理装置3から送信される玄関扉の鍵操作部の制御命令信号を、ルータ2を介して受信し、施解錠装置1に伝達する。ルータ2や中継器6は、住戸の給配電網から電力が供給されているが、電池内蔵タイプとしてもよい。ルータ2は、LTEルータであるが、5G等の他の規格によるもので構成されていてもよい。また、Bluetooth(登録商標)通信についても、赤外線通信等の所定の通信方式とすることが可能である。さらに、施解錠装置1は、中継器6を介してルータ2に接続されているが、例えば、施解錠装置1とルータ2を有線にて接続してもよい。すなわち、施解錠装置1とルータ2とは、直接的であっても間接的であっても、必要とされる通信を行うものであればよい。ただし、間接的に通信を行う中継器6にセンサ機能を持たせれば、幅広い管理を行うことが可能となる。
【0014】
中継器6は、住戸の監視や管理を行うスマートセンサとしての機能も有するものであり、室内の温度や湿度、明るさを検知する他、人感センサも備えており、管理装置3側で、これらの状況を把握することが可能とされている。これらのセンサは、入居済みの住宅で使用されることを前提にしたものであるが、人感センサは、工事中の住宅での不審者の侵入管理などにも資するといえる。なお、図1において、ルータ2と中継器6は、スマートセンサの機能との関係で、双方向通信を行う一方、施解錠装置1は、中継器6から、玄関扉の鍵操作部の制御命令信号を受信するだけの一方向通信とされている。しかし、施解錠装置1に鍵の状態を検出することのできるセンサや他のセンサ機能を具備させて、施解錠装置1と中継器6との通信が双方向通信となるように構成してもよい。
【0015】
管理装置3には、インターネット通信網や電話回線網等の電気通信回線を介して、情報処理端末4と情報処理装置5が接続されている。情報処理端末4は、操作により、集合住宅の施解錠を一斉に行ったり、部屋ごとの施解錠を行ったりすることが可能であり、現場作業者が工事作業中に携行することが想定されている。情報処理装置5は、複数の施解錠装置1,1,…1を各住戸の玄関扉の鍵操作部(ドア鍵のサムターン)に取り付ける等のドアロック制御システム101の導入時に操作して、施解錠装置1のユニークID(MACアドレス等)と各住戸との紐づけを管理装置3側で行うために操作される。この他、管理装置3での各種処理を行うために操作するものであり、現場の監督者等が操作することが想定されている。情報処理端末4と情報処理装置5は、スマートフォン、タブレット端末等の携帯通信端末であってもよいし、パーソナルコンピュータであってもよいが、第一実施形態において、情報処理端末4はスマートフォンであり、情報処理装置5は汎用PCとされている。
【0016】
この実施形態では、現場作業者が操作する情報処理端末4や、現場の監督者等が操作する汎用PC5もドアロック制御システム101を構成する要素として示されているが、情報処理端末4や汎用PC5は必須のものではない。すなわち、現場作業者の操作により、集合住宅の施解錠を一斉に行うことや、部屋ごとの施解錠を行うことが可能とされている訳であるが、管理装置3に操作者を配置して、或いは、予め決められた時刻に自動処理が行われるように構成する等して、管理装置3の装置構成のみで施解錠処理を行うようにしてもよい。
【0017】
(施解錠装置の構成)
次に、施解錠装置の構成につき、説明する。図2は、本発明の第一実施形態に係るドアロック制御システムにおける施解錠装置の構造を示す説明図であり、図2(a)が正面図、図2(b)が右側面図、図2(c)が背面図である。施解錠装置1は、遠隔から鍵操作部の施解錠操作を可能とする、いわゆるスマートロックであるが、後付けのスマートロックと言うことができる。既存設置されている錠前に扉側の追加工事が不要で取付けることが可能とされている。図2(a)~(c)から容易に理解できるように、施解錠装置1は、玄関扉のサムターン部に覆い被せるように装着させることによって、サムターンに係合させたサムターン係合部12が鍵操作部を物理的に回転させるようにしたものである。施解錠装置1は、内臓ボタン電池により駆動される。内装工事の期間内であれば、電池持続期間としては十分である。
【0018】
取付板13を、住戸内側の玄関扉の前面に両面テープ等により貼り付けた後、施解錠装置1の本体筐体部を取付板13に嵌め合わせるようにして設置する。図2(c)には、サムターンの台座部を避けるための切り欠き131と、サムターン係合部12が示されている。施解錠装置1を取付けた後であっても、施解錠を手動により行うことが可能となるように、施解錠装置1には、摘み部11が設けられている。なお、サムターン係合部は、種々の幅を有する鍵操作部に対応できるように、複数種類の幅を有するものを交換可能に取り付けることができるようにされているし、詳細は省略するが、鍵操作部の高さに対しても調整を行うことが可能とされている。
【0019】
施解錠装置1のファームウェアは、外部のBluetooth(登録商標)信号を受信することによって施解錠処理を行う他、鍵操作部の回転方向の自動設定などを行うことが可能とされている。例えば、初期設定時にサムターン係合部12の左右への回動を試行し、回転が可能である方向を判別することによって、鍵回転方向の自動判別及び自動設定が可能とされている。
【0020】
(管理装置の構成)
管理装置の構成について説明する。図3は、本発明の第一実施形態に係るドアロック制御システムにおける管理装置を示す説明図である。本発明の第一実施形態に係るドアロック制御システム101において、管理装置3は、サーバとして構成された管理サーバであるが、システム全体を管理するための装置として普通のパーソナルコンピュータを用いるようにしてもよい。管理装置(管理サーバ)3は、大きく、制御部31とDBから構成され、DBとしては、鍵タイプDB32と建築物DB33に分けられている。2つのDBであっても良いし、1つのDBの領域が分けられているものであってもよいことや、その他の情報を扱うDBを更に設けてもよいことは、言うまでもない。
【0021】
管理装置3は、インターネット通信網を介して、情報処理端末4や情報処理装置5と接続され、システムを構成するものである。システムは、SaaS(Software as a Service)として構築されても、クライアントサーバーモデルとして構築されても、どちらでも構わないが、現場作業者が工事作業中に携行する情報処理端末4を操作することによって、施解錠についての動作や管理を行うことが可能となるよう構成するのが好ましい。また、現場の監督者等が情報処理装置5を操作することによって、ドアロック制御システム101の導入時に、必要な認証処理や登録処理を行うことができるように構成されている。
【0022】
制御部31は、概略、表示制御部311、施解錠制御部312、施解錠状態判定部313、認証・登録部314から構成されている。表示制御部311は、情報処理端末4の表示画面に表示させる情報画面について必要となる描画処理などを行う。例えば、操作指示ボタンや後記する特定の住戸に対する施錠状態ないし解錠状態を示すアイコンなどを情報処理端末4の表示画面に表示させるために必要な処理を行う。施解錠制御部312は、対象となる住戸(全住戸の場合もあるし、一部の住戸の場合もある)のルータ2に施錠命令信号や解錠命令信号を送出するために必要な処理を行う。例えば、大規模な集合住宅であって、各住戸のルータ2への通信どうしが干渉を起こして通信障害を引き起こすことを防止するべく、情報処理端末4から受信した一斉解錠命令を単純に、全てのルータ2に同時送信するのではなく、タイミングを僅かにずらして分散して送信するといった負荷分散処理を行うことが考えられる。施解錠状態判定部313は、特定の住戸に対して直近で送出された制御信号や履歴情報に基づいて、特定の住戸に対する施錠状態ないし解錠状態を判別する。施解錠装置1に鍵の状態を検出することのできるセンサ機能が具備されていれば、センサの検出情報を利用することができる。鍵操作部が物理的に操作された場合であっても、施解錠の状態を正確に把握することができるし、物理的な操作のログも取れるようにすれば、なお、便利である。認証・登録部314は、施解錠装置1の玄関扉への取り付け時に必要となる登録処理や、現場作業者が携行する情報処理端末4の認証や登録処理を行う。
【0023】
(ドアロック制御システムの操作例)
第一実施形態に係るドアロック制御システム101が導入された後の操作例について、内装工事期間において施解錠等がされることを想定して説明する。図4は、本発明の第一実施形態に係るドアロック制御システムにおける情報処理端末の表示画面を示す説明図である。
(1)まず、内装工事段階に入っている建設工事現場において、作業開始時に、現場作業者が自身の携行する情報処理端末4の画面(不図示)を操作してシステムへのログインを行う。ログインは予め発行済みのログインIDとパスワードを用いて行われるが、管理装置3の認証・登録部に照会をかけて生体認証を行うように構成してもよい。
(2)図4(a)は、ログイン後の情報処理端末4の画面である。「すべての鍵を開ける」、「すべての鍵を閉める」のタッチボタンを操作すれば、全戸一斉の施解錠を行うことができる。
(3)一方、画面下の「1F」の「エリアの鍵を開ける」、「エリアの鍵を閉める」のタッチボタンを操作すれば、1階の全戸について施解錠を行うことができる。
(4)図4(a)の画面をアップ・スクロールさせれば、図4(b)の画面となり、2階や3階の全戸についての施解錠を行うことができる。なお、図4(a)の画面で「エリアを選択する」と表示された下の「1F」、「2F」、「3F」のタッチボタンを操作すれば、対象となるフロアのタッチボタンへ直接に画面遷移される。
(5)各フロアのタッチボタン(図4(b)参照)において、「部屋を確認する+」をタッチすると、例えば、図4(c)に示されるように、各住戸に対応した「開ける」や「閉める」のタッチボタンが表示されるようになる。「開ける」が表示されている場合には、部屋番号の隣の錠前のアイコンが示すように、当該住戸は施錠された状態であり、「閉める」が表示されている場合には、当該住戸は解錠された状態である。ルータ2の電源(電池)の不足や、その他、何らかのエラーが発生している場合には、「取得不可」と表示される。
【0024】
このようなシステムによれば、各戸に、ドア鍵のサムターンと連動するスマートロックを後付けで設置可能となり、スマートフォン、タブレット、汎用PCから住戸の施解錠を一括や、階別、或いは部屋別に行うことができる。工事における人員削減効果、設備盗難や無断立入り防止の効果が期待でき、建設工事現場における効率化・省力化の効果は絶大である。
【0025】
また、第一実施形態に係るドアロック制御システム101において、施解錠装置1には、鍵の状態を検出するセンサを設けていないものの、当該センサを設けて、物理的な鍵操作も認識できるようにすれば、システムの更なる発展が見込まれる。例えば、ピッキング等により、鍵が物理的に操作され、これを検出したならば、アラートを発出して、メールやSMS等で現場責任者に通知し、素早く対応することが可能となる。
【0026】
このようなシステムを、情報処理端末4側にインストールされているプログラムとしてみれば、集合住宅の各住戸玄関扉の鍵操作部の施解錠を行う複数の施解錠装置に対して、集中管理制御を行う管理サーバとの間で通信を行う情報処理端末のコンピュータに、複数の施解錠装置を集中及び/又は個別に施解錠する命令操作を受け付けるステップと、前記命令操作に対応する信号を、前記管理サーバに対して、送信するステップと、各住戸玄関扉の施解錠の状態を、前記管理サーバから、受信するステップと、受信された施解錠の状態に応じて、当該状態を前記情報処理端末の表示装置に表示させるステップと、を実行させるプログラムということになるであろう。ここで、各住戸玄関扉の施解錠の状態を認識するために、施解錠装置1がセンサを具備していることは必須ではない。既に説明したように、特定の住戸に対して直近で送出された制御信号や履歴情報に基づいても施解錠状態を認識することは可能だからである。しかし、センサを備えていた方が外部の物理的な操作が行われたことにも対応可能であるため、有利ではある。
【0027】
(集合住宅の建設工事の工事管理方法)
既に説明したように、本発明のドアロック制御システムは、集合住宅の工事現場において、膨大な戸数の玄関扉の鍵を所持せずとも、鍵の解錠・施錠の操作を行うことができるため、建設工事の管理において、効果は絶大なものとなる。以下、建設工事の管理方法という観点で説明する。
【0028】
例えば、マンション等の集合住宅の建設工事であれば、先ず、杭工事、土留め工事、掘削、捨てコン打設、基礎コンクリート打設といった基礎工事が行われる。次いで、鉄筋工事、型枠工事、コンクリート打設といった躯体工事が行われる。ここまでは、本発明の管理方法とは関係ないため、詳細な説明は割愛する。
【0029】
その後、本発明の管理方法に大いに関係する内装及び外装工事が開始される。内装工事として行われるのは、電気配線工事、空調・配管工事、ユニットバス設置、断熱材充填、間仕切り工事、天井・壁・床の仕上げ、建具とクロス張り、フローリング貼り等である。各住戸の厳重管理が必要となる時点でドアロック制御システムを導入することになる。必要な条件は、当然のことであるが、鍵の付いた玄関扉が設置された後ということになるが、第一実施形態に係るドアロック制御システム101であれば、電気配線工事も終了している必要がある。ただし、ルータ等が電池内蔵タイプのものであれば、電気が使用できない状況であっても、ドアロック制御システムを導入可能である。
【0030】
ドアロック制御システムを用いる工事管理方法は、概略、次の工程で実施されることになる。
(1)建設工事が進行して、各戸の厳重管理が必要となった時点で、各住戸玄関扉の鍵操作部に施解錠装置を取り付ける。この際、サムターンの幅や高さについての調整が必要であれば適宜行う。また、システム構成に応じて必要となるルータや中継器の設置、例えば、必要なLANケーブルの接続や電源との接続を行う。
(2)一方、監督者等が情報処理装置を操作して、このドアロック制御システムで管理される建物についての設定や登録を行う。例えば、階数やフロアごとの部屋数等の設定を行う。建築物毎に標準となる階数やフロア毎の設定がされているのであれば、建築物DBから呼び出して修正処理を行うことによって、建物の設定を簡略化することができる。
(3)部屋設定を含む建物設定が終了した後、監督者は、施解錠装置のユニークID(MACアドレス等)と各住戸との紐づけを行うための操作を行う。スマートセンサ機能を有する中継器に操作手段と7セグを設けておき、現場作業者が施解錠装置を設置する際に、部屋番号を入力するようにすれば、紐づけ処理の省力化や正確性を確保できる。
(4)さらに、情報処理端末が貸与された或いは、自身の所有するスマートフォン等にアプリをインストールした現場作業員について、監督者等は、登録手続きを行う。
(5)システム導入が完了した後、例えば、作業日の作業開始時に、玄関扉の一斉解錠を行い、内装工事が行われる。そして、作業終了時や必要な時に、一斉施錠を行う。勿論、作業の進捗度合いに応じて、フロア毎の施解錠や部屋ごとの施解錠も適宜行われることになる。
(6)予定された内装工事の全ての工程が完了した後に、施解錠装置を各住戸玄関扉の鍵操作部から取り外す。ただし、システムを住宅販売会社に引き渡して、引き続き、システム利用を行うのであれば、撤去作業は、もっと後の段階に実施されることになる。
【0031】
このように、本発明の工事管理方法によれば、建築資材の高騰による資材の盗難や悪戯、毀損や破壊といった悪意を伴った行為に対して、膨大な戸数の玄関扉の鍵を所持せずとも鍵の解錠・施錠の操作を行うことによって、問題となる行為を確実に防止することが可能となる。
【0032】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第二実施形態に係るドアロック制御システムの全体構成を示す説明図である。本発明の第二実施形態に係るドアロック制御システム102は、集合住宅の各住戸Lの玄関扉の鍵操作部(ドア鍵のサムターン)に着脱可能に装着された複数の施解錠装置1’,1’,…1’を、専用ルータ2’を介して管理装置3にインターネット通信網や電話回線網等の電気通信回線を通じて接続されるように、構成されるシステムであって、複数の施解錠装置1’,1’,…1’を集中的に制御、例えば、一括して施解錠動作させるものである。また、複数の施解錠装置1’,1’,…1’を個別に、施解錠動作させることも可能である。
【0033】
第二実施形態に係るドアロック制御システム102は、工事中の集合住宅、特に、間仕切り工事、天井工事、床工事等が終了した後の内装工事段階の集合住宅に適用されるのに好適なシステムであるが、小規模な建物に特に好適である。また、完成して入居済みの建物に対しても有効に利用できるものと考えられるが、このことについては後記する。複数の施解錠装置1’,1’,…1’は、集合住宅の各住戸Lの玄関扉の鍵操作部(ドア鍵のサムターン)に着脱可能に一時的に装着されるものであって、外部からのサブギガ帯(アンライセンスバンド)の信号を受信することによって、例えば、LoRaWAN(登録商標)信号を受信することによって、玄関扉の鍵操作部の施解錠を行うものである。当該LoRaWAN(登録商標)信号は、マンション共有部Mに設置された専用ルータ2’から送信される。LoRaWAN(登録商標)は、消費電力が小さく、長距離通信が可能で、ノイズに強く通信が安定するというメリットがある。このため、図5に示されるように、一つの専用ルータ2’によって、複数の施解錠装置1’,1’,…1’を制御することが可能となる。もちろん、LoRaWAN(登録商標)信号以外のZigBee(登録商標)等の他の規格を用いるものであってもよい。
【0034】
第二実施形態に係るドアロック制御システム102においては、施解錠装置1’に、鍵の状態を検出することのできるセンサが備えられている。このため、施解錠装置1’と専用ルータ2’とは双方向通信を行うように構成されている。専用ルータ2’は、インターネット通信網や電話回線網等の電気通信回線を介して管理装置3から送信される玄関扉の鍵操作部の制御命令信号を受信して、施解錠装置1’に伝達すると共に、施解錠装置1’から送信される施解錠状態信号を受信して、管理装置3に伝達する。
【0035】
管理装置3には、インターネット通信網や電話回線網等の電気通信回線を介して、情報処理端末4と情報処理装置5が接続されている。情報処理端末4は、操作により、集合住宅の施解錠を一斉に行ったり、部屋ごとの施解錠を行ったりすることが可能であり、現場作業者が工事作業中に携行することが想定されている。情報処理装置5は、複数の施解錠装置1’,1’,…1’を各住戸の玄関扉の鍵操作部(ドア鍵のサムターン)に取り付ける等のドアロック制御システム102の導入時に操作して、施解錠装置1’のユニークID(MACアドレス等)と各住戸との紐づけを管理装置3側で行うために操作される。この他、管理装置3での各種処理を行うために操作するものであり、現場の監督者等が操作する。
【0036】
第二実施形態によれば、システム導入時の機器の設置の省力化が期待できる。小規模な建物において、確実な通信処理を行うことができるため、建設工事現場以外に、入居済みの建物でも活用することもできる。普通の集合住宅において、全戸一斉施錠等を行うことは現実的ではないが、例えば、介護施設等においては、徘徊防止等を目的として、施設管理者がこれを行うことも可能である。施解錠装置1’は、第一実施形態のものと同様に、物理的にも解錠動作が可能であるから、入居者を不当に拘束することにはならない。その一方で、施解錠装置1’には、鍵の状態を検出することのできるセンサが備えられているため、入居者が勝手に外出したりする不測の事態を迅速に把握することが可能となる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれる。例えば、第一実施形態において施解錠装置は一方向通信を行い、第二実施形態においては双方向通信を行うものであったが、両者の態様を逆となるように構成しても構わない。また、発明の課題の説明では、集合住宅の工事現場を主眼とする説明振りとされているが、「主に」と記載しているように、工事現場でなくとも構わない。このことは、介護施設等での活用例を通じて十分に理解されるであろう。また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1 施解錠装置
2 ルータ
3 管理装置
4 情報処理端末
5 情報処理装置
11 摘み部
12 サムターン係合部
13 取付板
131 切り欠き
101 ドアロック制御システム
1’ 施解錠装置
2’ 専用ルータ
102 ドアロック制御システム
図1
図2
図3
図4
図5