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特開2025-7146ベルゲニンを含むNAD+産生促進用食品組成物
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  • 特開-ベルゲニンを含むNAD+産生促進用食品組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007146
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ベルゲニンを含むNAD+産生促進用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20250109BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20250109BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108352
(22)【出願日】2023-06-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】599098518
【氏名又は名称】株式会社ディーエイチシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】片吉 健史
(72)【発明者】
【氏名】仲條 嵩久
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 夏子
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LE02
4B018MD08
4B018ME10
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC04
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK11
4B117LK12
4B117LK15
4B117LL01
4B117LL02
(57)【要約】
【課題】本発明は、NAD+の産生を促進し、特に老化に伴って生体から減少するNAD+の産生の回復を促進する、ベルゲニンを含む組成物を提供する。
【解決手段】細胞内のNAMPTとNMNATの発現を増加させ、NAD+サルベージ経路を増強し、NAD+の産生を促進することができるNAD+産生促進用食品組成物、そして、これらのNAD+産生促進用食品組成物を含む内服剤、飲食品組成物及び生体内の抗老化用食品組成物を提供できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルゲニンを有効成分として0.0001質量%~97質量%含むNAD+産生促進用食品組成物。
【請求項2】
細胞賦活化のために用いられることを特徴とする、請求項1に記載されるNAD+産生促進用食品組成物。
【請求項3】
睡眠の質の向上のために用いられることを特徴とする、請求項1に記載されるNAD+産生促進用食品組成物。
【請求項4】
認知力の改善のために用いられることを特徴とする、請求項1に記載されるNAD+産生促進用食品組成物。
【請求項5】
骨密度の向上のために用いられることを特徴とする、請求項1に記載されるNAD+産生促進用食品組成物。
【請求項6】
筋力維持のために用いられることを特徴とする、請求項1に記載されるNAD+産生促進用食品組成物。
【請求項7】
ベルゲニンを、液状の飲食品に対し0.0001質量%~1質量%、固体状の飲食品に対し0.5質量%~85質量%、錠剤状の飲食品に対し、1.0質量%~97質量%含有する、請求項1乃至6いずれかの1つに記載されるNAD+産生促進用食品組成物を含む内服剤。
【請求項8】
ベルゲニンを、液状の飲食品に対し0.0001質量%~1質量%、固体状の飲食品に対し0.5質量%~85質量%、錠剤状の飲食品に対し、1.0質量%~97質量%含有する、請求項1乃至6いずれかの1つに記載されるNAD+産生促進用食品組成物を含む飲食品組成物。
【請求項9】
ベルゲニンを、液状の飲食品に対し0.0001質量%~1質量%、固体状の飲食品に対し0.5質量%~85質量%、錠剤状の飲食品に対し、1.0質量%~97質量%含有する、請求項1乃至6いずれかの1つに記載されるNAD+産生促進用食品組成物を含む生体内の抗老化用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルゲニンを含むNAD+産生促進用食品組成物に関する。本発明は、安全性が高く、内服剤として適用可能なNAD+産生促進用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、先進国を中心に世界の平均寿命は延び続けている一方で、健康寿命との乖離が広かる傾向がある。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間とされる。加齢で生じる機能低下、例えば、視力、聴力、認知力、運動能力、免疫機能、臓器機能の低下を軽減することは健康寿命を延ばすことに繋がるため非常に望まれている。
このような観点から、生体においてエネルギー産生に必須の補酵素であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NAD+と指称するが、NADと指称することもある)が注目されている。NAD+は、脱水素酵素の補酵素として機能することが知られており、生体内の解糖系、クエン酸回路、電子伝達系などに関与する。また、NAD+はsirtuinやpoly ADP-ribose polymerases(PARPs)、CD38などが触媒する酵素反応の基質にも使用される。
【0003】
哺乳動物において、主なNAD+の生合成は、ニコチンアミド(NAM)を主要基質とする2段階の酵素反応から成るサルベージ経路を介して進行する。第一段階では、NAMがニコチンアミドフォスフォリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)によってニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)へと変換される。第二段階では、NMNがNMNアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)によってNAD+へと合成される。
皮膚をはじめとする体内のNAD+量は年齢を重ねるごとに減少することが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。また、体内のNAD+量の一因として細胞内NAD+量の維持に必須の酵素であるNAMPTの働きが年齢とともに低下することが挙げられている(例えば、非特許文献2を参照)。一方、NAMPT遺伝子の発現を強化するなど体内のNAD+産生を高めることは、健康寿命を伸ばすことが知られている(例えば、非特許文献3を参照)。また、NAD+産生の促進は、動脈硬化、心疾患、糖尿病、神経変性疾患、認知障害、骨老化、ストレスなどの治療に有効であると考えられている。このように、NAD+産生の促進は加齢による様々な生理学的な機能低下を抑制することに繋がると考えられている。
NAD+産生を促進する化合物としては、一般にNMN及びニコチンアミドリボシドがよく知られている(例えば、非特許文献4を参照)。しかしながら、より安全性、安定性が高く、工業的に安価に入手可能な成分が望まれていた。
【0004】
ベルゲニン(Bergenin)は抗炎症作用や抗酸化作用が報告されているポリフェノールの一種である。ベルゲニンの生理作用は様々な先行研究で報告されており、大腸炎マウスでの抗炎症作用や肝障害マウスに対する肝保護作用などが知られている。特に整腸作用については数多くの報告があり、ベルゲニンを豊富に含有するトウダイグサ科の落葉樹、アカメガシワ(Mallotus japonicus)は古くから整腸作用を持つ生薬として用いられてきた。アカメガシワ樹皮の水溶性画分にはベルゲニンが11%~18%含まれており、アカメガシワエキスが便通改善効果を示すとの報告もある。ベルゲニンに関する様々な健康効果が報告されている一方で、NAD+産生作用については報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】PLos ONE.Vol.7,e42357(2012)
【非特許文献2】PLos ONE.Vol.12,e0170930(2017)
【非特許文献3】Cell Metabolism.Vol.30、pp.329-342(2019)
【非特許文献4】Front Cell Dev BiolVol.8、fcell.2020.00246(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NAD+の産生を促進し、特に老化に伴って生体から減少するNAD+の産生の回復を促進する、ベルゲニンを含む組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、ベルゲニンを使用して生体に適用することにより、細胞内のNAD+の回復を促進することができることを見出し、以下の発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は一実施形態によれば、NAD+産生促進用食品組成物であって、ベルゲニンを含む。
本発明は、別の実施形態によれば、上述に記載のNAD+産生促進用食品組成物を含む内服剤、飲食品組成物、及び生体内の抗老化用食品組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
ベルゲニンを適用したときに細胞内のNAD+産生を有意に促進することができる。それに伴い、細胞賦活化、老化抑止、睡眠の質の向上、認知力の改善、骨密度の向上、筋力維持などの効果が得られる。
本発明によれば、ベルゲニンを含むNAD+産生促進用食品組成物を提供することが可能になる。NAD+産生促進用食品組成物は、内服剤、飲食品組成物、及び生体内の抗老化用食品組成物として用いることができ、生体の老化防止に非常に有用となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ベルゲニン存在下培養によるヒト肝細胞における細胞内NAD+の増量を表す図である。Aはヒト由来のHepG2細胞を0~2μMのベルゲニンと8時間インキュベーションした後、細胞内のNAD+量を表す図である。BとCはヒト由来のHepG2細胞を0~2μMのベルゲニンを投入し、6時間インキュベーションした後、細胞内NAMPTとNMNATのそれぞれタンパク質レベルを免疫ブロッティングによって表わされた図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0012】
[第1実施形態:NAD+産生促進用食品組成物]
本発明は、第1実施形態によれば、NAD+産生促進用食品組成物に関する。当該NAD+産生促進用食品組成物は、ベルゲニンを含む。
【0013】
ベルゲニンは、アカメガシワ(Mallotus japonicus)の樹皮、葉、根などから抽出できる。また合成されるものも使用可能である。本願において、合成される市販品(東京化成工業株式会社製)を入手して使用する。
【0014】
また、ベルゲニンを含むアカメガシワエキスを使用することも可能である。アカメガシ
ワエキスに含まれるポリフェノールとしては、ベルゲニン以外に、ゲラニイン、ルチン、コリラジンなどの各種ポリフェノールが知られている。アカメガシワエキスは市販品が容易に入手可能であり、例えば、アカメガシワエキスパウダー(ポリフェノール含有率14.0質量%以上)(以上、日本粉末薬品株式会社製)が挙げられる。
【0015】
NAD+産生促進用食品組成物において、ベルゲニンが安定的に存在できるように、ベルゲニンの量またはアカメガシワエキスに含まれるベルゲニンの量は、0.0001質量%~97質量%であることが好ましく、0.001質量%~90質量%であることがより好ましい。
【0016】
本実施形態によるNAD+産生促進用食品組成物においては、ベルゲニンを含むことで、NAD+の産生を促進することができる。また、NAD+産生促進用食品組成物は、従来から知られているベルゲニンの作用である抗炎症作用や抗酸化作用をも備えている。
【0017】
NAD+産生促進用食品組成物には、任意選択的な成分として、これらに限らず、例えばプラセンタ抽出物、コラーゲンペプチド、ニコチン酸アミド、ビタミンC誘導体、アルブチン、エラグ酸、コウジ酸、トラネキサム酸、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールを含んでもよい。
【0018】
本実施形態によるNAD+産生促進用食品組成物に含まれるコラーゲンペプチドは、生体由来コラーゲンの加水分解物であってよい。より具体的には、ウシやブタなどの哺乳類や魚類の組織、例えば、皮膚、骨及び腱などの結合組織から抽出したコラーゲンタンパク、もしくはコラーゲンタンパク質の熱変性物であるゼラチンから加水分解等により得られたものを使用してもよく、また人工的に合成したものを用いても良い。
【0019】
コラーゲンペプチドは、ヒドロキシプロリン(Hyp)を少なくとも含むペプチドであることが好ましく、Hypを含むジペプチドまたはトリペプチドから選択されることが好ましい。より具体的には、Ala-Hyp-Gly、Pro-Hyp-Gly、Pro-Hyp、Leu-Hyp、Ala-Hypのジペプチドまたはトリペプチドから選択される1または2以上の混合物であってよい。中でも、Ala-Hypのジペプチドを含むことが最も好ましい。Ala-Hypはトリペプチドに比べて低分子であることから体内への吸収が良く、またこれらのペプチドのなかでも安定性が高い点で好ましい。
【0020】
NAD+産生促進用食品組成物は、ベルゲニン又はベルゲニンを含むアカメガシワエキスと、上記任意選択的な成分とを混合することにより得ることができる。得られたNAD+産生促進用食品組成物は、ベルゲニンを含む液体又は固体組成物である。NAD+産生促進用食品組成物は、冷蔵で1~3年程度にわたって安定に貯蔵することができ、生細胞のNAD+の産生を促進することができる。また、得られた組成物は、特には老化して、NAD+産生が低減した生細胞においても、NAD+の産生を促進することができるため、NAD+の回復促進剤ということもできる。
【0021】
NAD+産生促進用食品組成物は、内服剤及び飲食品組成物に添加して用いることができる。特には、老化防止効果を得るために、内服剤及び飲食品組成物等に添加して用いることができる。また、NAD+の産生促進により、生体内の老化抑止効果が得られるため、NAD+産生促進用食品組成物を含む組成物が、生体内の抗老化用食品組成物とすることができる。
【0022】
以下に、NAD+産生促進用食品組成物を添加して用いる各種の組成物について説明する。
【0023】
[第2実施形態:内服剤]
本発明は、第2実施形態によれば内服剤であって、第1実施形態によるNAD+産生促進用食品組成物を含む。内服剤は、例えば経口投与剤であってよく、茶剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、ドライシロップ剤等が挙げられる。
【0024】
これらの内服剤は、第1実施形態によるNAD+産生促進用食品組成物を含め、この分野で通常知られた慣用的な方法により製造される。内服剤には、たとえば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩などを含めることができる。調製に当っては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを配合することもできる。たとえば、錠剤または丸剤とする場合は、所望によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの糖衣または胃溶性もしくは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよい。内服剤が液体組成物からなる経口剤とする場合は、薬理学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤などとすることができ、例えば、精製水、エタノールなどが担体として利用される。また、さらに所望により湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、防腐剤などを添加してもよい。
【0025】
内服剤におけるNAD+産生促進用食品組成物の有効成分量は、ベルゲニンの質量を基準として、例えば、通常成人1日当たり2mg以上、好ましくは4mg以上を摂取するのが好ましい。投与量の上限は、1日当たり、200mg以下が好ましく、100mg以下がより好ましい。よって、NAD+産生促進用食品組成物は、各形態に応じた範囲で前述した摂取量となるように含有されれば良い。
【0026】
[第3実施形態:飲食品組成物]
本発明は、第3実施形態によれば飲食品組成物であって、第1実施形態によるNAD+産生促進用食品組成物を含む。本実施形態による飲食品組成物には、第1実施形態によるNAD+産生促進用食品組成物を、飲食品組成物において通常用いられている任意成分と共に配合することができる。このようなヒトまたは動物用の飲食品組成物としては、例えば、パン類、菓子類、麺類、肉製品・水産加工品、穀類の加工品、加工野菜・加工果実、加工卵、乳製品、粉類、即席菓子の素、食用油脂、スープの素、粉末飲料、調味料、食品添加物、飲料類、飼料等が挙げられる。
【0027】
また、飲食品組成物は、例えば、ビタミン剤などの栄養補助食品、栄養補助飲料、動物用健康食品、特定保健用食品、栄養機能食品、保健機能食品等が含まれ、通常用いられている各種形態、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、フィルム等として製品化することができる。製品化に際しては、第1実施形態によるNAD+産生促進用食品組成物とともに、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、吸着剤、滑沢剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等が配合される。
【0028】
これらの飲食品組成物は、この分野で通常知られた慣用的な方法により製造される。
【0029】
このような飲食品組成物におけるNAD+産生促進用食品組成物の有効成分量は、ベルゲニンの質量を基準として、飲食品の形態ごとに応じた範囲で所望の摂取量となるように添加されれば良く、飲食品には、0.0001質量%~97質量%の範囲内で添加することが好ましい。例えば、液状の飲食品に対し0.0001質量%~1質量%、固体状の飲食品に対し0.5質量%~85質量%、錠剤状の飲食品に対し、1.0質量%~97質量%の範囲内で添加することが好ましい。さらに具体的には、以下に限定されないが、例えば、サプリメントには、アカメガシワ粉末の乾燥重量を基準として、5質量%~90質量%の範囲内で添加することが好ましい。
【0030】
ベルゲニンの1日の摂取量は許容量を超えない限り、服用回数は特に限定されないが、通常、1日数回に分けて摂取するのが望ましい。
【実施例0031】
以下、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
(ヒト肝細胞培養)
ヒト肝細胞株HepG2(RIKEN Cell Bank)を10%ウシ胎児血清(Invitrogen)、100untis/mLストレプトマイシン、および100μg/mLペニシリンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM,Nissui Pharmaceutical)で37°C、5% COの条件で培養した。培養細胞が約50%のコンフルエンスに達するまで隔日で培地を交換し、その後は毎日交換した。細胞が80~90%の密度に達したら、細胞を継代した。全ての試験において、培地は予め無血清DMEMに置き換えた。一晩インキュベーションした後、細胞をベルゲニンの存在下または非存在下で培養した。
【0033】
(細胞内NAD+の定量)
HepG2細胞のNAD+/NADH比は、Amplite(登録商標)Colorimetric NAD+/NADH Ratio Assay Kit(AAT Bioquest)を使用して決定した。細胞を氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、10%HClOに浸した後、培養プレートから掻き取った。新しいチューブに移した後、細胞を超音波発生器Sonicstar85でホモジナイズし、氷上で10分間放置した。4°C、16,000×gで10分間遠心分離した後、上清をNAD+/NADH反応混合物に加え、暗所で4°Cで一晩インキュベートした。反応後、サンプルは-20°Cで細胞質画分として保存した。サンプルの吸光度は、マイクロプレートリーダーを使用して吸光度460nmで測定した。
【0034】
(免疫ブロッティング)
HepG2細胞は、150mM NaCl、50mM Tris(pH7.0)、1mMエチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸(EDTA)、1% NP-40、1% Triton X-100、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、0.1% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(ナカライテスク)から成る溶解液で溶解した。各細胞溶解液中のタンパク質は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、セミドライブロッティング装置(ATTO)を使用してポリフッ化ビニリデン膜へ転写した。転写後、非特異的結合を減らすために、20%Blocking One (Nacalai Tesque)を含む0.1%Tween-20を含むPBS(PBST)で膜を1時間ブロッキングした。次に、膜を一次抗体とともに4°Cで一晩インキュベートし、洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合の二次抗体とともに1時間インキュベートした。タンパク質は、化学発光試薬(EZ west Lumi One、ATTO)および蛍光スキャナー(Image Quant LAS 4000(Cytiva)を使用して検出した。次の一次抗体を使用した:抗β-アクチン(1:20,000、Santa Cruz Biotechnology、CA、USA)、抗NMNAT(1:4,000、Santa Cruz Biotechnology)、抗NAMPT(1:4,000、クサビオ テクノロジー)。バンド強度の定量は、Image Jソフト(米国メリーランド州国立衛生研究所)を使用して行った。
【0035】
(実施例1 ヒト肝細胞における細胞内NAD+の増量)
ベルゲニンがNAD+産生を高めるのかに明らかとするため、ヒト由来のHepG2細
胞を0~2μMのベルゲニンとインキュベートした。図1のAは8時間のインキュベーション後、細胞内NAD+量をAmplite(登録商標)Colorimetric NAD+/NADH Ratio Assay Kit(AAT Bioquest)を使用して測定した。結果は3回の試験結果からなる平均値±標準誤差を指す。図1のBとCは6時間のインキュベーション後、細胞内NAMPTとNMNATのタンパク質レベルを免疫ブロッティングによって分析した。β-アクチン(β-Actin)をローディングコントロールとして使用した。Image J ソフトウェアを使用して、免疫ブロッティングで得たバンドの強度を分析した。結果は3回の試験結果からなる平均値±標準誤差を指す。*p<0.05および**p<0.01は、ベルゲニン未処理コントロールとの比較(ANOVA、Dunnett の多重比較検定)を表した。
【0036】
図1のAに示すように、細胞内NAD+量は2μMのベルゲニンを添加することにより大幅に増加した。この結果から、ベルゲニンは細胞のNAD+産生を高めることが示された。
【0037】
ベルゲニンはNAD+サルベージ経路を活性化させることでNAD+産生を高めていると考えられる。そこで、ベルゲニンがNAD+サルベージ経路の2つの重要な酵素であるNAMPTとNMNATのタンパク質発現へどのような影響及ぼすのか調べた。
図1のBとCの結果により、ベルゲニンがNAD+サルベージ経路の2つの重要な酵素であるNAMPTとNMNATのタンパク質双方の発現を増加させた。これらの結果から、ベルゲニンはNAMPTとNMNATの発現を増加させることでNAD+サルベージ経路を増強し、NAD+産生の活性化させるものと推量される。
【0038】
<処方例>
【表1】
【0039】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のNAD+産生促進用食品組成物により、NAD+産生促進用食品組成物を含む内服剤及び飲食品組成物を提供することができる。内服剤として生体の老化を防止する効果が期待できると考えられる。
図1