(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007148
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】照明装置およびイメージセンサ
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20250109BHJP
H04N 1/028 20060101ALI20250109BHJP
F21Y 113/13 20160101ALN20250109BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250109BHJP
【FI】
F21S2/00 444
F21S2/00 433
F21S2/00 437
H04N1/028 G
F21Y113:13
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108354
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】保科 和也
(72)【発明者】
【氏名】石丸 剛志
(72)【発明者】
【氏名】橘高 重雄
【テーマコード(参考)】
3K244
5C051
【Fターム(参考)】
3K244AA08
3K244BA08
3K244BA48
3K244CA03
3K244DA01
3K244DA17
3K244EA02
3K244EA08
3K244EA12
3K244EC30
3K244EE10
5C051AA01
5C051BA04
5C051DB01
5C051DB22
5C051DB29
5C051DC04
5C051DC07
(57)【要約】
【課題】ライン状の照明装置において、放射照度の均一化を図る。
【解決手段】照明装置10は、第1端面12aと、第1端面12aに対向する第2端面12bと、光出射面12cとを有する導光体12と、導光体12の第1端面12aに向けて光を出射する発光源と、導光体12の第2端面12bに対向する対向面14aを含む壁14bを少なくとも有する、導光体12を収容する導光体ケース14とを備える。導光体12の第2端面側から照明装置10を見たときに、導光体12の第2端面12bの一部が露出している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の導光体であって、第1端面と、前記第1端面に対向する第2端面と、当該導光体の長手方向に沿った側面の少なくとも一部に形成された光出射面と、を有する導光体と、
前記導光体の前記第1端面に向けて光を出射する発光源と、
前記導光体を収容する導光体ケースであって、前記導光体の前記第2端面に対向する対向面を含む壁を少なくとも有する導光体ケースと、
を備える照明装置であって、
前記導光体の前記第2端面側から当該照明装置を見たときに、前記導光体の前記第2端面の一部が露出していることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記導光体ケースにおける前記壁の頂面が、前記光出射面からオフセットされることによって、前記導光体の前記第2端面の一部の領域が露出していることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記壁の前記頂面は、前記導光体の前記光出射面と略平行であることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記壁の前記頂面は、前記導光体の前記光出射面に対して斜めに構成されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項5】
前記壁の前記頂面は、封数の屈曲する面で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項6】
前記壁の前記頂面は、曲面を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項7】
前記壁は、貫通孔を備え、前記貫通孔を介して前記導光体の前記第2端面の一部の領域が露出していることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項8】
前記導光体の前記第2端面と前記導光体ケースの前記対向面との間隔は、0.1mm~1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項9】
前記導光体の前記第2端面の面積をS0とし、前記導光体の前記第2端面側から当該照明装置を見たときの、前記導光体の前記第2端面の露出領域の面積をS1としたとき、S0に対するS1の比S1/S0は、0.12~0.25であることを特徴とする請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記導光体の前記第2端面と前記導光体ケースの前記対向面との間隔は、0.1mm~1.0mmであり、
前記光出射面からの前記頂面のオフセット量は、0.4mm~1.0mmであることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項11】
対象物に対して照明する請求項1から10のいずれかに記載の照明装置と、
前記対象物からの反射光を集光するレンズアレイと、
前記レンズアレイで集光された光を受光する受光素子と、
を備えることを特徴とするイメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライン状の照明をする照明装置および概照明装置を組み込んだイメージセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
密着型イメージセンサは、ファクシミリ装置、複写機、イメージスキャナ装置等で原稿を読み取るための装置として用いられている。この密着型イメージセンサは、原稿面を主走査範囲に亘って線状に照明するライン照明装置を備えている。
【0003】
ライン照明装置としては棒状の導光体を用いたものが知られている。例えば、特許文献1には、光を導光するための透明な矩形柱状の導光体と、該導光体の一端(入射面)から導光体内部に向けて光を出射する発光源と、導光体をその内部に収める導光体ケースと、を備えるライン照明装置が記載されている。
【0004】
導光体は、長手方向の少なくとも一個の面にライン状に光を出射するための出射面と、到達した光を導光体内部に散乱(乱反射)もしくは反射させるための光散乱パターンが形成された面と、を備える。
【0005】
また、導光体を内部に収める導光体ケースは、導光体を伝搬する光が、導光体の出射面以外の面から外部に出射したときに、導光体に面した導光体ケースの内部の面によって導光体内部に反射させて、光の利用効率を向上させる狙いがある。
【0006】
従って、導光体の出射面と、光源からの光を導光体内部に入射せしめるための入射面を除き、導光体の全ての面は導光体ケースによって覆われていると考えられる。実際に市場に流通する同様の機能を備える照明装置も、このような導光体と導光体ケースとの関係を有している場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
導光体および導光体ケースは一方向(長手方向または主走査方向)に長く、その長さは、例えばA4用紙の表面の情報を取得するためのイメージセンサにおいては、少なくともA4用紙の短辺の長さに対応する程度の長さであり、読取対象とする原稿やワークの大きさを鑑みた長さでもある。
【0009】
導光体や導光体ケースは、プラスチック製であり、工業的に射出成形により作製されることが多いので、成形時の収縮が生じ、導光体とそれを収める導光体ケースとの間で、寸法のミスマッチが生じ得る。予期せぬ寸法上のギャップを補償するために、導光体の長さに比して、導光体の長さに対応する導光体ケースの内寸を大きくする傾向がある。
【0010】
また、プラスチック製の導光体や導光体ケースは、イメージセンサに組み込んだ後においても、環境温度によって、熱膨張や収縮が生じるため、導光体と導光体ケースとの無用な干渉を避けるために、やはり導光体の長さに比して、導光体ケースの内寸を大きくする傾向がある。
【0011】
その結果、イメージセンサの組立時、またはイメージセンサの使用時において、矩形柱状の導光体に光を入射させるための光源が配置される第1端面に対向する導光体の第2端面と、該第2端面に対向する導光体ケースの内面との間隔が大きくなる場合が生じ得る。また、導光体と、それを覆う導光体ケースの内寸との予期せぬ間隔の発生は、熱膨張や収縮の性質から、その実寸法が大きい長手方向に顕著であることも理解できる。
【0012】
導光体の第2端面と、該第2端面に対向する導光体ケースに含まれる面との間隔が一定以上大きくなることによって、照明装置において、導光体の第2端面近傍から出射される光の強度が他に比べて局所的に大きくなる現象が発生し得る。この現象は、照明装置を走査型のイメージセンサに用いる際に、読み取る対象やワークの放射照度が局所的に大きくなるので、良い性質とはいえない。
【0013】
図1(a)~
図1(c)は、照明装置において、導光体の第2端面近傍から出射される光の強度が局所的に大きくなる現象を説明するための図である。
図1(a)は、従来の照明装置の一例を示す概略断面図である。
図1(a)に示す照明装置1は、棒状の透明な導光体2と、導光体2の第1端面2aに向けて光を出射する発光源3と、導光体2をその内部に収める導光体ケース4と、を備える。
図1(a)に示す照明装置1は、紙面上の左右方向に長い。
図1(a)に示すように、第1端面2aに対向する導光体2の第2端面2bと、第2端面2bに対向する導光体ケース4の内面4aとの間隔をdとする。照明装置1においては、導光体2の紙面上側の面が光出射面2cとなる。
【0014】
図1(b)および
図1(c)は、
図1(a)に示す照明装置1における、導光体2の第2端面2b付近の拡大断面図である。
図1(b)および
図1(c)の両方とも、導光体2の第2端面2bは全て、導光体ケース4の内面4aによって覆われている。少なくとも導光体2の第2端面2bの光出射面2cに直角な方向の長さと、導光体ケース4の内面4aの同方向の長さとは、略等しく設定される。
図1(b)は、導光体2の第2端面2bと、第2端面2bに対向する導光体ケース4の内面4aとの間隔dが小さい場合を示す。
図1(c)は、導光体2の第2端面2bと、第2端面2bに対向する導光体ケース4の内面4aとの間隔dが大きい場合を示す。このような態様において、間隔dが大きい場合の紙面上側(光出射面側)に出射する光束L2は、間隔dが小さい場合の光出射面側に出射する光束L1より比較的大きいものとなる。
【0015】
このように間隔dが変わると光束の大きさが変化する理由は以下のように考察される。間隔dが小さいとき、導光体2の第2端面2bから出射した光は、第2端面2bに対向する導光体ケース4の内面4aに到達して反射し、多くの光束が導光体2内に再入射する。一方、間隔dが大きいとき、導光体2の第2端面2bから出射した光は、第2端面2bに対向する導光体ケース4の内面4aに到達して反射するものの、間隔dが大きいために、多くの光束が導光体2の第2端面2bに到達する前に、光出射面側に出射する。
【0016】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、放射照度(Irradiance)の均一化を図ることができる照明装置および当該照明装置を備えるイメージセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の照明装置は、棒状の導光体であって、第1端面と、第1端面に対向する第2端面と、当該導光体の長手方向に沿った側面の少なくとも一部に形成された光出射面と、を有する導光体と、導光体の第1端面に向けて光を出射する発光源と、導光体を収容する導光体ケースであって、導光体の第2端面に対向する対向面を含む壁を少なくとも有する導光体ケースと、を備える。導光体の第2端面側から当該照明装置を見たときに、導光体の第2端面の一部が露出している。
【0018】
本発明の別の態様は、対象物に対して照明する上述の照明装置と、対象物からの反射光を集光するレンズアレイと、レンズアレイで集光された光を受光する受光素子とを備えるイメージセンサである。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、放射照度の均一化を図ることができる照明装置および当該照明装置を備えるイメージセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)~
図1(c)は、照明装置において、導光体の第2端面近傍から出射される光の強度が局所的に大きくなる現象を説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係るイメージセンサの概略断面図である。
【
図3】実施の形態に係る照明装置の概略斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る照明装置の概略分解斜視図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、導光体を示す概略図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(c)は、実施の形態に係る照明装置の構成を説明するための概略図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、比較例に係る照明装置を示す概略図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(d)は、導光体の第2端面側から見た照明装置を模式的に示す図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、シミュレーションのために用いたイメージセンサのモデルを示す図である。
【
図10】オフセット量Lc=0mmのときの放射照度分布を示す図である。
【
図11】オフセット量Lc=0.7mmのときの放射照度分布を示す図である。
【
図12】オフセット量Lc=1.2mmのときの放射照度分布を示す図である。
【
図13】PRNU値の間隔dおよびオフセット量Lc依存性を表すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
図2は、実施の形態に係るイメージセンサ100の概略断面図である。
図2に示すように、イメージセンサ100は、筐体102と、原稿Gを載置するためのガラス板104と、原稿Gに光を照射する照明装置10と、原稿Gからの反射光を集光するロッドレンズアレイ106と、ロッドレンズアレイ106により集光された光を受けるラインイメージセンサ(受光素子)108とを備える。
図2には、実施の形態に係るイメージセンサ100の説明に必要なパーツのみが明示されており、例えば駆動系やドライバ、電子基板の詳細、各パーツの固定のための構造や付帯部品、イメージセンサを他の装置に取り付けるための構造や付帯部品などは省略している。
【0024】
図2に示すように、筐体102の上方には第1凹部102aが形成され、下方には第2凹部102bが形成されている。第1凹部102aの上面は、例えばガラスや樹脂などの透明な平行平板で覆われている。また、第1凹部102a内には、照明装置10が斜めに固定されている。照明装置10は、ロッドレンズアレイ106の光軸Axとガラス板104の上面との交点およびその近傍を適正に照明するように固定される。読取用のロッドレンズアレイ106の光軸Axを原稿Gに対して略垂直に設定するために、斜めから原稿Gを照明する必要があるので、照明装置10は光軸Axに対して斜めに設けられる。第2凹部102bには、ラインイメージセンサ108を備えた基板などの支持体が取り付けられている。さらに、筐体102の第1凹部102aと第2凹部102bの間には、ロッドレンズアレイ106が保持されている。ロッドレンズアレイ106は、原稿Gと、ラインイメージセンサ108と、の関係において正立等倍系を構成していてもよい。
【0025】
イメージセンサ100においては、照明装置10からの出射光がガラス板104を通して原稿Gに当てられ、原稿Gからの反射光をロッドレンズアレイ106を介してラインイメージセンサ108にて検出することで原稿Gを読み取る。原稿Gに対して筐体102を副走査方向(
図2で示した矢印の方向)に走査することにより、原稿Gの所望の領域の読み取りを行うことができる。
【0026】
イメージセンサ100は、
図2で表される断面を有し、紙面に直角な方向に長く、それに応じて照明装置10、ロッドレンズアレイ106、ラインイメージセンサ108、およびそれらを包含する筐体102も紙面に直角な方向に長い。一定の面積を有する原稿やワークの表面の情報を読み取る場合、
図2に示すようなイメージセンサ100を、一定方向に走査することによって、一定の面積に含まれる画像的情報を読み取ることができる。イメージセンサ100またはそれに包含されるパーツにおいて、
図2における紙面に直角な方向を「主走査方向」とし、主走査方向に直角な方向(
図2で示した矢印の方向)を「副走査方向」とする。
【0027】
図3は、実施の形態に係る照明装置10の概略斜視図である。
図4は、実施の形態に係る照明装置10の概略分解斜視図である。
図3および
図4に示すように、照明装置10においては棒状の導光体12が白色の導光体ケース14に収容されるとともに、一端に発光ユニット16が設けられている。
図3および
図4には、実施の形態に係る照明装置10の説明に必要なパーツのみ明示してあり、駆動系や電子基板、ドライバやその他固定のための構造などは省略している。
【0028】
図4に示すように、発光ユニット16は、少なくとも3個の発光素子(LED)18を備えていてよい。3個のLED18は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の発光をするLEDであってよい。
【0029】
照明装置10の導光体ケース14は、断面U字状に形成されている。導光体12は、アクリルなどの透明樹脂を射出成形して得られ、その断面は略矩形状に形成されている。導光体ケース14は、導光体12の光入射面および光出射面以外を覆うように、導光体12をその内部に収容する。
【0030】
図3および
図4に示されるように、本実施の形態において、発光ユニット16は棒状の導光体12の一方の端面(第1端面)側に配置される。
図3において、発光ユニット16は導光体12および導光体ケース14の後ろに表示上隠れている。発光ユニット16の各LED18から出射した光は、導光体12の第1端面12aから導光体12の内部に入射し、一部の光は、導光体12の側面、または当該側面を覆う導光体ケース14の内面で反射して、導光体内部を進行する。導光体12の少なくとも一つの側面は、イメージセンサ100に組み込んだときに、原稿やワーク等の対象物を照明するための光出射面12cとして機能する。光出射面12cは導光体ケース14から露出している。
【0031】
図5(a)および
図5(b)は、導光体12を示す概略図である。
図5(a)は導光体12の側面図であり、
図5(b)は導光体12の底面図である。導光体12において、光出射面12cを構成する一つの側面に対向する側面を便宜的に底面12dと称する。導光体12の底面12dも導光体ケース14の内面によって覆われている。導光体12の底面12dには、到達した光を散乱または乱反射する光散乱パターン20が形成されている。
図5(a)および
図5(b)には光散乱パターンの一例が概略的に表わされている。
【0032】
光散乱パターン20は、
図5(a)および
図5(b)に示すように、主走査方向(導光体12の長手方向)に直角な方向に延びた凹状の構造が導光体12の底面12dに複数形成されてなる。凹形状は導光体12の長手方向に直角に延びる円柱の側面を含んでおり、光散乱パターン20は、発光ユニット16から離れるにつれて、その密度が増加するように形成されている。図示の例では、光散乱パターン20は、発光ユニット16から離れるにつれて短手方向(副走査方向)に幅が長くなるように形成されてもよい。入射面12aから遠くなるに従って、光散乱パターンの密度を大きくすることで、光出射面12cから出射される光を長手方向(イメージセンサ100に設けられた際には主走査方向)の全長に亘って均一化を図ることができる。
【0033】
本実施の形態において、導光体12の光出射面12cを構成する面は、導光体12の側面の一つである長方形状の平面を含んでいてよい。本実施の形態において、照明装置10は、
図1に示すように、光出射面12cを構成する面が、原稿G側に位置するように、イメージセンサ100の筐体102に取り付けられる。
【0034】
ここで、説明のための直交座標軸を定める。
図3および
図4において、イメージセンサ100の主走査方向に対応し、照明装置10および導光体12の長手方向をx方向とし、x方向に直角で、光出射面12cを構成する面に直角な方向をz方向とし、x方向およびz方向に直角な方向をy方向とする。
【0035】
A4サイズの原稿やワークの読取に対応するイメージセンサ100を作製する場合、少なくとも一辺(または、その短辺)の長さに対応する、または、その辺の長さを超える長さの照明装置10が必要であり、必然的に、導光体12の長さ(x方向の長さ)や、導光体ケース14の長さ(x方向の長さ)も、それに応じた長さが必要となってくる。導光体12を導光体ケース14に収めることを予定した場合、導光体12と導光体ケース14の相互の寸法差の精度の確保が課題となってくる。具体的には、各パーツの設計値、金型寸法、出来上がりの実寸法などにおける生じる寸法差のコントロール、さらには、使用中における熱膨張の差による各パーツの寸法変動のコントロールを必要条件とする。特に、導光体12や導光体ケース14の長手方向の実寸法は大きい(300mm前後)ので、この方向での寸法差や寸法変動のコントロールがより重要になってくる。
【0036】
より簡便な方法としては、導光体ケース14の内寸法を導光体12の外寸法よりもある程度大きく確保することであり、このとき、各パーツの製作時に生じる寸法差や、寸法変動を補償することが可能である。導光体12において、発光ユニット16が配置される側の端面を第1端面12aとし、反対側の端面を第2端面12bとする。導光体12の第2端面12bと、第2端面12bに対向する導光体ケース14の内面(以降、第2端面の対向面とする)14aとの間隔をd[mm]とするとき、コスト、製作および組立精度のバランスから、間隔dは0.1mm~1.0mmが標準的で好ましい。間隔dが0.05mm未満であると、各パーツの設計公差が厳しくなったり、射出成形時の製造条件の余裕が著しく小さくなる。一方で間隔dが1.0mmを超えると、設計時の公差設定は容易になり、製造時の条件も緩和される傾向となるが、第2端面12bおよび第2端面12b近傍の光出射面12cから出射される光の放射照度が偏重して、放射照度の均一化を図るのが難しくなる。導光体12の第2端面12bと、第2端面の対向面14aとの間隔dは、より好ましくは、0.3mm~0.7mmであってよい。
【0037】
さらに、本実施の形態に係る照明装置10では、第2端面側からx方向に平行な方向について照明装置10を見たときに、部分的に導光体12の第2端面12bが露出している。言い換えれば、第2端面側からx方向に平行な方向から照明装置10を見たときに、導光体ケース14によって、導光体12の第2端面12bの一部の領域が覆われている(すなわち、全ての領域が完全に覆われてはいない)。
【0038】
図6(a)~
図6(c)は、実施の形態に係る照明装置10の構成を説明するための概略図である。
図6(a)は、第2端面側からx方向に平行に照明装置10を見たときの概略図である。
図6(b)は、y方向に平行に照明装置10をみたときの部分断面図である。
図6(c)は、導光体12の第2端面12bを示す側面図である。
【0039】
本実施の形態に係る照明装置10の構成を説明する前に、比較例を示す。
図7(a)および
図7(b)は、比較例に係る照明装置を示す概略図である。この比較例に係る照明装置は、
図1(a)~
図1(c)に示す照明装置1と対応するものであるため、同一の符号を用いる。
図7(a)は、第2端面側からx方向に平行に照明装置1を見たときの概略図である。
図7(b)は、y方向に平行に照明装置1をみたときの部分断面図である。
【0040】
図7(a)および
図7(b)に示すように、比較例に係る照明装置1においては、導光体ケース4の内面4aによって導光体2の第2端面2bの全ての領域が覆われている。このような場合、
図1(a)~
図1(c)を参照して説明したように、導光体2の第2端面2bと導光体ケース4の内面4aとの間隔dが一定以上のとき、導光体2の第2端面2bから出射し、導光体ケース4の内面4aによって反射した光の多くは、照明装置1の光出射面側に出射する。その結果、導光体2の第2端面2bおよびその近傍に対応した領域における照明装置1の放射照度が大きくなり、放射照度が不均一となるおそれがある。
【0041】
図6(a)および
図6(b)に示すように、本実施の形態に係る照明装置10においては、導光体ケース14における第2端面の対向面14aが、導光体12の第2端面12bを覆う領域が限定されている(第2端面12bの一部が露出している)ので、第2端面の対向面14aから反射して、光出射面側に出射する光束が低減し、結果的に第2端面12bまたはその近傍に対応する領域での放射照度の増大が抑制されるので、放射強度の均一化を図ることができる。
【0042】
導光体12の第2端面12bの面積をS0[mm2]とし、第2端面側からx方向(長手方向)に照明装置10を見たときの、導光体12の第2端面12bの露出領域の面積をS1[mm2]としたとき、S0に対するS1の比S1/S0は、0.12~0.25であることが好ましい。比S1/S0が0.1より小さいとき、間隔dが上記範囲(d=0.1mm~1.0mm)において、導光体の放射照度の均一化が十分ではない。一方、比S1/S0が0.26より大きいとき、導光体12の第2端面12bから出射された光が導光体ケース14から抜ける光束が大きくなり、光の利用効率が低下する、または導光体12の第2端面12b近傍の放射照度が比較的小さくなり、放射照度の均一化が十分ではなくなる。比S1/S0は、より好ましくは0.13~0.24であってよい。
【0043】
図6(a)および
図6(b)に示すように、本実施形態に係る照明装置10においては、第2端面の対向面14aを含む導光体ケース14の壁14bの光出射面側の面(以降、導光体ケース14の第2端面側の頂面と称する)14cが、導光体12の光出射面12cを構成する面からオフセットされることによって、導光体12の第2端面の一部の領域が露出している。導光体ケース14の壁14bとは、導光体ケース14の内と外とを隔てるものである。さらに、光出射面12cと、導光体ケース14の第2端面側の頂面14cとは、略平行となっている。
図6(a)および
図6(b)に示すように、導光体ケース14の第2端面側の頂面14cのオフセット量Lc[mm]を規定し、導光体12の第2端面12bの露出領域の特定のために用いる。オフセット量Lcは、Lc=0.4mm~1.0mmが好ましく、Lc=0.5mm~0.9mmがさらに好ましい。導光体12の第2端面側からx方向に平行に照明装置10をみたときに、導光体12の第2端面12bが上記条件を満たすように露出していればよい。
図6(a)および
図6(b)では、光出射面12cと、導光体ケース14の第2端面側の頂面14cとが略平行となっているが、これに限定されない。
【0044】
図8(a)~
図8(d)は、導光体12の第2端面側からx方向に見た照明装置10を模式的に示す。
図8(a)~
図8(d)は、導光体12の第2端面12bの露出の態様のいくつかの例を表したものである。図中、ハッチングで強調した領域が導光体12の第2端面12bの露出領域Eを示す。導光体12の第2端面12bの露出の態様はこれらに限定されない。
【0045】
図8(a)に示す照明装置10では、導光体12の光出射面12cに対して導光体ケース14の第2端面側の頂面14cが斜めに構成されている。
図8(b)に示す照明装置10では、導光体ケース14の第2端面側の頂面14cが複数の屈曲する面で構成されている。
図8(c)に示す照明装置10では、導光体ケース14の第2端面側の頂面14cが曲面を含んでいる。
図8(d)に示す照明装置10では、第2端面の対向面を含む導光体ケース14の壁14bに一個以上の貫通孔を設けて、第2端面12bの一部を露出している。
図8(a)~
図8(d)に示す導光体12の第2端面12bの露出の態様は全て例示であり、これらの一部または全部の要素を相互に組み合わせることにより、第2端面12bの一部を一定の条件を満たすように露出する態様は、本明細書による開示の範囲内である。
【0046】
本実施形態に係る照明装置の効果を、比較例とともに、シミュレーションによって検証した。シミュレーションに用いた照明装置は、
図3および
図4に示した照明装置10の態様に対応したものである。導光体12は長手方向(x方向)の長さが226mmである略矩形柱である。導光体12の第2端面12bの形状は第1端面12aと同じであり、y方向の長さが約2.8mmであり、z方向の長さが約3.9mmであり、第1端面12aと第2端面12bの面積は、それぞれ8.85mm
2である。
【0047】
導光体12の光出射面12cは、y方向の長さが約2.1mmであり、x方向の長さが226mmである平面視で長方形の平面である。
【0048】
また、導光体12は、界面での光の屈折や反射はスネルの法則に従うものとし、導光体12内部の吸収を長さ20cmあたり40%であると仮定した。
【0049】
光出射面12cに略対向する面には、
図5で示したようなy―z平面に平行な母線を有する円柱の側面形状を含む凹部からなる複数の光散乱パターン20を設けた。
【0050】
導光体ケース14は、光出射面12c以外の側面を覆う。導光体12の第2端面12bの露出は、
図6(a)および
図6(b)のように、光出射面12cからの、導光体12の第2端面12bに対向する面を含む壁14bの頂面14cのオフセットによって構成した。導光体ケース14の内面14aに到達した光は「反射などの光のふるまい」となるように条件を定めた。
【0051】
発光源は計算上、点に近い微小な面として、導光体12の第1端面12aの略中心から、波長550nmの光線を導光体内部に、2.5×106本の光線を入射させるように配置した。
【0052】
図9(a)および
図9(b)は、シミュレーションのために用いたイメージセンサ100のモデルを示す。
図9(a)は、導光体12の第1端面側からみたイメージセンサ100の長手方向に垂直な断面であり、
図9(b)は、導光体12の第2端面側からみたイメージセンサ100の長手方向に垂直な断面である。
【0053】
図9(a)および
図9(b)に示した配置により、特定の線分Li近傍の単位面積あたりに到達する光束をカウントすることによって、照明装置10による放射照度(任意単位)を算出した。なお、
図9(a)および
図9(b)では長手方向に垂直な断面を表しているので、光束をカウントするための線分Liは点で表されてることに留意する。
図9(a)および
図9(b)において、照明装置10の上側に原稿台の代わりとなる屈折率が1.46であり、厚みが2.9mmの平行平板Hが設けられ、その平行平板Hの照明装置側と反対側の面上に、上記光束をカウントする部位を含む線分Liが配置される。
【0054】
図9(a)において、導光体12の略中心に配置される発光源の位置を原点とし、紙面に垂直な方向を、照明装置のx方向に対応してx'方向とし、x'方向に垂直であり、上記平行平板Hの面に平行な方向をz'方向とし、x'方向とz'方向に垂直な方向をy'方向とした。線分Liは座標(x1',6.45,4.70)(但し、x1'=0~225)である。また、導光体12の光出射面12cの法線と、y'方向とのなす角は50°とした。なお、導光体12に設けた光散乱パターン20に関しては、放射照度分布が第1端面12aおよび第2端面12b近傍の光出射面12cに対応した領域を除き、x'方向について略均一になるように複数の凹部を配置した。
【0055】
導光体12の第2端面12bと、導光体12の第2端面12bに対向する導光体ケース14の面との間隔dを0.05mmから1.25mmまで適宜変更しながら、さらに、導光体12の光出射面12cからの、導光体ケース14の第2端面側の頂面14cのオフセット量Lc:0mm、0.3mm、0.5mm、0.7mm、0.9mmおよび1.2mmをパラメータとして、各パラメータを変化させながら放射照度を求めた。これらのオフセット量のときの、第2端面12bの全面積S
0に対する、第2端面12bの露出領域の面積S
1の比S
1/S
0を以下の表1に示す。
【表1】
【0056】
図10は、オフセット量Lc=0mmのときの放射照度分布を示す。
図11は、オフセット量Lc=0.7mmのときの放射照度分布を示す。
図12は、オフセット量Lc=1.2mmのときの放射照度分布を示す。
図10~
図12において、横軸は
図9(a)に示すx’y’z’座標系における原点からのx'方向の距離を表し、縦軸は線分Liを含む単位面積あたりの放射照度(任意単位)を表す。
【0057】
さらに、間隔dおよびオフセット量Lcのバリエーションにより、放射照度分布を求め、以下の式から放射照度分布の均一性を評価するためのPRNU値(Photoresponse Nonuniformity値)を求めた。
PRNU=(照度の最大値-照度の最小値)/(照度の最大値+照度の最小値)×100[%]
【0058】
図13は、PRNU値の間隔dおよびオフセット量Lc依存性を表すグラフを示す。PRNU値は、
図10~
図12に示される200mm≦x’≦218mmの範囲で算出した。
図13において、各パラメータの組の算出値について、各オフセット量の組を仮想線で結べると仮定する。
【0059】
図13から、オフセット量Lc=0mm(S
1/S
0=0、すなわち第2端面12bの露出領域がゼロ)のとき、導光体12の第2端面12bと第2端面12bに対向する導光体ケース14の内面14aとの間隔dが増加するにつれて、PRNU値も単調に増加することが分かる。また、オフセット量Lc=0mmのとき、間隔dが0.3mmより大きくなるとPRNU値が10%を超える。
【0060】
また、
図13から、オフセット量Lc=0.5mm(S
1/S
0=0.08)のとき、間隔d=0.5mm近傍で最小値を有することが推測され、間隔d=0.2mm~0.7mmの範囲内でPRNU値が10%以下となることが示唆される。
【0061】
また、
図13から、オフセット量Lc=0.7mm(S
1/S
0=0.18)のとき、間隔d=0.3mm~0.7mmの範囲内に最小値を有することが推測され、少なくとも間隔d=0.5mm~0.8mmの範囲内で、PRNU値が10%以下となることが示唆される。
【0062】
また、
図13から、オフセット量Lc=0.9mm(S
1/S
0=0.23)のとき、間隔d=0.3mm~0.7mmの範囲内に最小値を有することが推測され、少なくとも間隔d=0.5mm~0.8mmの範囲内で、PRNU値が10%以下となることが示唆される。
【0063】
また、
図13から、オフセット量Lc=1.2mm(S
1/S
0=0.32)のとき、少なくとも間隔d=0.3mm~0.7mmの範囲内において、PRNU値が10%以下となることは確認できない。
【0064】
イメージセンサの一般的な使用方法と、求められる仕様において、PRNU値は少なくとも12%以下、好ましくは10%以下であることが求められる。従って、間隔dが0.3mm~0.7mmの範囲内で変動しうる場合を加味すると、S1/S0の値は、0.12~0.25であることが好ましく、0.13~0.23であることがより好ましい。導光体12の第2端面12bに対向する導光体ケース14の内面14aを含む壁14bの頂面14cが、導光体12の光出射面12cと略平行である場合、光出射面12cと当該頂面14cとの距離を表すオフセット量Lcは、Lc=0.4mm~1.0mmが好ましく、Lc=0.5mm~0.9mmがさらに好ましい。
【0065】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0066】
10 照明装置、 12 導光体、 14 導光体ケース、 16 発光ユニット、 18 LED、 20 光散乱パターン、 100 イメージセンサ、102 筐体、 104 ガラス板、 106 ロッドレンズアレイ、 108 ラインイメージセンサ。